説明

密封構造及びガスケット

【課題】ガスケットの姿勢の安定化を図り、シール性の向上を図った密封構造及びガスケットを提供する。
【解決手段】スロットルボディ20とインテークマニホールド30が組み立てられる際には、ガスケット10がスロットルボディ20の環状溝21に装着された状態で、かつガスケット10がインテークマニホールド30の装着面34を摺動するように構成された密封構造であって、ガスケット10における装着面34に対する締め代が、ガスケット10が装着面34を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造及びガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットが知られている。例えば、自動車に備えられたインテークマニホールドとスロットルボディとの対向面間の隙間を封止するために環状のガスケットが用いられる。
【0003】
かかるガスケットは、2部材により圧縮されることで、その反発力によってシール性を発揮する。ここで、2部材を組み付ける際に、2部材の対向面が当該対向面に垂直な方向に距離が狭くなっていく場合には、ガスケットは所望の形状となるように圧縮変形され易い。
【0004】
しかしながら、2部材の組み付け方によっては、2部材を組み付ける過程で、2部材のうちの他方の部材に対してガスケットが摺動して、2部材を組み付け後のガスケットの状態が不安定になってしまうことがある。この点について、図10及び図11を参照して説明する。図10は従来例に係る密封構造において2部材を組み付ける過程を示す模式的断面図である。図11は従来例に係る密封構造を示す模式的断面図である。
【0005】
図示の従来例においては、不図示のスロットルバルブを有するスロットルボディ200が、インテークマニホールド300の側面側(吸気通路301の側面側)からスライドして装着されるように構成されている。すなわち、インテークマニホールド300には、吸気通路301の内周面の一部にスロットルボディ200の先端が挿入される凹部302が設けられ、また、この凹部302に対向する位置に、スロットルボディ200が挿通される挿通孔303が設けられている。かかる構成により、スロットルボディ200を、その先端側から挿通孔303を突き抜けるように挿入させて、その先端部を凹部302内に挿入させることによって、スロットルボディ200をインテークマニホールド300に装着させることができる。
【0006】
ここで、スロットルボディ200には、その両面(図中左右の面)にそれぞれ環状溝201が設けられており、これらの環状溝201にそれぞれガスケット100が装着される。これらのガスケット100は、予め、各環状溝201に装着させておき、その状態で、スロットルボディ200をインテークマニホールド300に装着させる(図10中、矢印S方向に装着させる)。
【0007】
このように、スロットルボディ200の両面にそれぞれガスケット100が設けられることによって、吸気通路301からインテークマニホールド300に設けられた挿通孔303を通って、吸気された気体が外部に漏れてしまうことを抑制することが可能となる。
【0008】
このように構成された従来例に係る密封構造においては、スロットルボディ200をインテークマニホールド300に装着させる過程で、ガスケット100は、インテークマニホールド300における装着面304に対して摺動する。この摺動によって、ガスケット100は、摺動方向とは反対方向(図11中矢印K方向)に引きずられる。そのため、スロットルボディ200を挿入する際の荷重は、ガスケット100を圧縮するシール荷重の数倍になることもあり、ガスケット100が倒れるように変形しやすくなってしまう。
【0009】
そして、ガスケット100は、装着過程において、ガスケット100における前記摺動方向の前方側ではガスケット100の内周側に引きずられ、後方側ではガスケット100の外周側に引きずられるといったように、部位によって引きずられる方向が異なる。そのため、スロットルボディ200をインテークマニホールド300に装着させた状態で、ガスケット100の姿勢が不安定になり易く、シール性の低下の原因となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−3130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ガスケットの姿勢の安定化を図り、シール性の向上を図った密封構造及びガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0013】
すなわち、本発明の密封構造は、
組み立てられた状態で、互いに対向する面を有する2部材と、
前記2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットと、
を備え、
前記2部材が組み立てられる際には、前記ガスケットが前記環状溝に装着された状態で、かつ該ガスケットが前記2部材のうちの他方の部材の表面を摺動するように構成された密封構造であって、
前記ガスケットにおける前記他方の部材に対する締め代が、前記ガスケットが該他方の部材の表面を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように設定されていることを特徴とする。
【0014】
ここで、「締め代」とは、ガスケットが他方の部材によって圧縮される寸法である。
【0015】
本発明によれば、ガスケットは、締め代が大きい部位から摺動及び2部材による圧縮が始まり、徐々に締め代が小さい部位に向かって摺動及び圧縮が進んでいく。従って、2部材を組み付ける過程におけるガスケットの摺動抵抗に伴う荷重を抑制することができる。また、ガスケットは、その部位に応じて、順次摺動及び圧縮されるため、部位に応じた圧縮変形のバラツキを抑制することができ、ガスケットの姿勢の安定化を図ることができる。
【0016】
ここで、前記ガスケットの高さが、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように構成されているとよい。
【0017】
これにより、前記ガスケットにおける前記他方の部材に対する締め代が、前記ガスケットが該他方の部材の表面を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように設定できる。
【0018】
また、前記装着溝の深さが、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように構成されていることも好適である。
【0019】
こうすることによっても、前記ガスケットにおける前記他方の部材に対する締め代が、
前記ガスケットが該他方の部材の表面を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように設定できる。
【0020】
前記ガスケットは、該ガスケットの本体部から前記他方の部材に向かい、かつ前記2部材の対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備えており、
該環状突起部の内周面が前記他方の部材側に向くように構成されており、
前記環状突起部における前記他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されているとよい。
【0021】
これにより、ガスケットにおける環状突起部の内周面が他方の部材側に向くように構成されていることと、環状突起部における他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されていることとが相俟って、装着状態において、環状突起部を、その全周に亘って安定的に外周側に向かって倒れるように変形させることが可能となる。
【0022】
また、前記ガスケットは、該ガスケットの本体部から前記他方の部材に向かい、かつ前記2部材の対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備えており、
該環状突起部の外周面が前記他方の部材側に向くように構成されており、
前記環状突起部における前記他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に小さくなるように設定されていることも好適である。
【0023】
これにより、ガスケットにおける環状突起部の外周面が他方の部材側に向くように構成されていることと、環状突起部における他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に小さくなるように設定されていることとが相俟って、装着状態において、環状突起部を、その全周に亘って安定的に内周側に向かって倒れるように変形させることが可能となる。
【0024】
また、本発明のガスケットは、
2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットにおいて、
前記2部材が組み立てられる際には、前記環状溝に装着された状態で、かつ前記2部材のうちの他方の部材の表面を摺動するように構成されたガスケットであって、
前記他方の部材に対する締め代が、該他方の部材の表面を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように設定されていることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、ガスケットは、締め代が大きい部位から摺動及び2部材による圧縮が始まり、徐々に締め代が小さい部位に向かって摺動及び圧縮が進んでいくようにすることが可能となる。従って、2部材を組み付ける過程におけるガスケットの摺動抵抗に伴う荷重を抑制することができる。また、ガスケットは、その部位に応じて、順次摺動及び圧縮されるため、部位に応じた圧縮変形のバラツキを抑制することができ、ガスケットの姿勢の安定化を図ることができる。
【0026】
前記2部材の対向面に垂直な方向の高さが、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように構成されているとよい。
【0027】
これにより、前記他方の部材に対する締め代が、該他方の部材の表面を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように設定できる。
【0028】
ガスケット本体部から前記他方の部材に向かい、かつ前記2部材の対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備え、
該環状突起部の内周面が前記他方の部材側に向くように構成されており、
前記環状突起部における前記他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されているとよい。
【0029】
これにより、ガスケットにおける環状突起部の内周面が他方の部材側に向くように構成されていることと、環状突起部における他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されていることとが相俟って、装着状態において、環状突起部を、その全周に亘って安定的に外周側に向かって倒れるように変形させることが可能となる。
【0030】
また、ガスケットの本体部から前記他方の部材に向かい、かつ前記2部材の対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備え、
該環状突起部の外周面が前記他方の部材側に向くように構成されており、
前記環状突起部における前記他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に小さくなるように設定されていることも好適である。
【0031】
これにより、ガスケットにおける環状突起部の外周面が他方の部材側に向くように構成されていることと、環状突起部における他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に小さくなるように設定されていることとが相俟って、装着状態において、環状突起部を、その全周に亘って安定的に内周側に向かって倒れるように変形させることが可能となる。
【0032】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、ガスケットの姿勢の安定化を図り、シール性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1に係るガスケットの平面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るガスケットの断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係るガスケットをスロットルボディに装着した状態を示す、スロットルボディの側面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る密封構造において組立途中の様子を示す模式的断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係るガスケットの装着状態を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係る密封構造の各部の寸法関係を説明する説明図である。
【図7】本発明の実施例2に係る密封構造の各部の寸法関係を説明する説明図である。
【図8】本発明の実施例3に係る密封構造の模式的断面図である。
【図9】本発明の実施例4に係る密封構造の模式的断面図である。
【図10】図10は従来例に係る密封構造において2部材を組み付ける過程を示す模式的断面図である。
【図11】図11は従来例に係る密封構造を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定
する趣旨のものではない。
【0036】
(実施例1)
図1〜図6を参照して、本発明の実施例1に係る密封構造及びガスケットについて説明する。なお、本実施例においては、組み立てられた状態で、互いに対向する面(本実施例では平面)を有する2部材としてのスロットルボディ20及びインテークマニホールド30と、スロットルボディ20に設けられた環状溝21に装着され、スロットルボディ20とインテークマニホールド30の対向面間の隙間を封止する環状のガスケット10とを備える密封構造を例にして説明する。
【0037】
<ガスケット>
特に、図1及び図2を参照して、本発明の実施例1に係るガスケットについて説明する。図1は本実施例に係るガスケット10の平面図であり、図2は図1中のAA断面図である。本実施例に係るガスケット10は、環状の部材で構成されており、外周側に位置決め用の突起11が設けられている。
【0038】
また、ガスケット10は、インテークマニホールド30に密着する第1シール突起部12と、スロットルボディ20に設けられた環状溝21の溝底に密着する一対の第2シール突起部13,14とを備えている。なお、第1シール突起部12及び第2シール突起部13,14はガスケット10の全周に亘って連続的に設けられている。
【0039】
ここで、第1シール突起部12の先端の角度は90°以上となるように設定している。これにより、第1シール突起部12の倒れを抑制し、スロットルボディ20とインテークマニホールド30との対向面間の微小隙間に噛み込まれてしまうことを抑制している。また、環状溝21の溝底に密着する側は一対の第2シール突起部13,14により構成することで、圧縮時の反発力を低減するようにしている。更に、本実施例に係るガスケット10においては、ガスケット本体の内周面及び外周面に、全周に亘って凹部15を設けることによって、圧縮された際の環状溝21内での充填率を低減するようにしている。
【0040】
<密封構造>
特に、図3〜図5を参照して、本発明の実施例1に係る密封構造について説明する。図3はガスケット10をスロットルボディ20に装着した状態を示す、スロットルボディ20の側面図である。図4は本実施例に係る密封構造の模式的断面図である。この図4は、スロットルボディ20をインテークマニホールド30に装着する際の各部材の位置関係を説明するための図であり、便宜上、各部材について簡略化または省略している。なお、図3は、図4において図中矢印V方向に見た図に相当する。図5はスロットルボディ20をインテークマニホールド30に装着した際のガスケット10の状態を示した模式的断面図である。
【0041】
本実施例に係る密封構造は、上記の通り、スロットルボディ20及びインテークマニホールド30と、スロットルボディ20に設けられた環状溝21に装着され、スロットルボディ20とインテークマニホールド30の対向面間の隙間を封止する環状のガスケット10と、を備えている。
【0042】
スロットルボディ20は、スロットバルブ22を備えている。そして、このスロットルボディ20は、インテークマニホールド30の側面側(吸気通路31の側面側)からスライド(図4中矢印S方向にスライド)して装着される(組み立てられる)ように構成されている。
【0043】
すなわち、インテークマニホールド30には、吸気通路31の内周面の一部にスロット
ルボディ20の先端が挿入される凹部32が設けられ、また、この凹部32に対向する位置に、スロットルボディ20が挿通される挿通孔33が設けられている。かかる構成により、スロットルボディ20を、その先端側から挿通孔33を突き抜けるように挿入させて、その先端部を凹部32内に挿入させることによって、スロットルボディ20をインテークマニホールド30に装着させることができる。
【0044】
ここで、スロットルボディ20には、その両面にそれぞれ環状溝21が設けられており、これらの環状溝21にそれぞれガスケット10が装着される。これらのガスケット10は、予め、各環状溝21に装着させておき、その状態で、スロットルボディ20をインテークマニホールド30に装着させる(図4中、矢印S方向に装着させる)。また、本実施例においては、図3に示すように、ガスケット10の外周側に設けられた突起11を、環状溝21の外周側面側に設けられた位置決め用の凹部21aに嵌まるようにガスケット10を装着することで、回転方向に対して位置決めがなされる。
【0045】
そして、スロットルボディ20をインテークマニホールド30に装着させた状態においては、図5に示すように、ガスケット10は、スロットルボディ20における環状溝21の溝底面(本実施例では平面)と、インテークマニホールド30における装着面34(吸気通路31の開口部の周囲の面(本実施例では平面))とによって圧縮された状態となる。これにより、スロットルボディ20とインテークマニホールド30の対向面間の隙間が封止される。
【0046】
以上のように、スロットルボディ20の両面にそれぞれガスケット10が設けられることによって、吸気通路31からインテークマニホールド30に設けられた挿通孔33を通って、吸気された気体が外部に漏れてしまうことを抑制することが可能となる。
【0047】
そして、本実施例に係る密封構造においては、スロットルボディ20をインテークマニホールド30に装着させる過程で、ガスケット10の第1シール突起部12が、インテークマニホールド30における装着面34に対して摺動する。図1において、矢印Tはガスケット10の摺動方向を示し、矢印Uは第1シール突起部12が摺動時に引きずられる方向を示している。
【0048】
<ガスケットにおけるインテークマニホールドの装着面に対する締め代>
図6を参照して、ガスケット10におけるインテークマニホールド30の装着面34に対する締め代について詳細に説明する。
【0049】
本実施例においては、ガスケット10(の第1シール突起部12)における装着面34に対する締め代が、ガスケット10(の第1シール突起部12)が装着面34を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されている。
【0050】
図6は環状溝21とガスケット10と装着面34との寸法関係を示した図であり、図6中左側は摺動方向の前方(図4中A)における寸法関係を示し、図6中右側は摺動方向の後方(図4中B)における寸法関係を示したものである。なお、図6においては、ガスケット10は簡略化して示しており、かつ装着面34によって圧縮されていない状態を示している。また、装着面34については、その表面の位置を点線にて示している。
【0051】
本実施例においては、環状溝21の溝の深さは全周に亘って同一となるように構成されている。そして、環状溝21の溝底と装着面34は平行、つまり、環状溝21の溝底と装着面34との距離は環状溝21の全周に亘って一定となるように構成されている。これに対して、ガスケット10は、その高さ(図2中H)が、摺動方向における前方の高さHfよりも後方の高さHbの方が高くなるように構成されている。また、ガスケット10の高
さHは摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に高くなるように構成されている。
【0052】
このように構成されることで、ガスケット10における装着面34に対する締め代は、ガスケットの摺動方向における前方での締め代Xfよりも後方における締め代Xbのほうが大きくなる。また、当該締め代は、ガスケット10(の第1シール突起部12)が装着面34を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなる。
【0053】
<本実施例に係る密封構造及びガスケットの優れた点>
本実施例に係る密封構造によれば、スロットルボディ20をインテークマニホールド30に装着させる過程で、ガスケット10に関しては、締め代が大きい後方の部位から装着面34に対する摺動、及び環状溝21の溝底と装着面34による圧縮が始まる。そして、徐々に締め代の小さな前方に向かって摺動及び圧縮が進んでいくことになる。従って、スロットルボディ20をインテークマニホールド30に装着させる過程におけるガスケット10の摺動抵抗に伴う荷重を抑制することができる。
【0054】
また、ガスケット10(の第1シール突起部12)は、締め代が大きい後方の部位から摺動が始まる。このとき、当該部位においては、ガスケット10の外周側に向かって引きずられる。従って、当該部位は、外周側に向かって傾くように圧縮変形される。そして、スロットルボディ20の装着(挿入)が進むにつれて、ガスケット10(の第1シール突起部12)における摺動する部位が徐々に前方に移行していく。この場合、既に摺動が始まっている部位は外周側に向かって傾くように変形しているため、摺動する部位が前方に移行していく場合、新たに摺動が始まる部位も外周側に向かって傾くように圧縮変形する。
【0055】
このように、本実施例の場合、ガスケット10(の第1シール突起部12)の摺動部位が徐々に移行する。従って、ガスケット10の摺動時においては、摺動方向の前方側ではガスケット10の内周側に引きずられるように摺動し、摺動方向の後方側ではガスケット10の外周側に引きずられるように摺動するものの、全体が同時に摺動する場合に比べて、部位に応じた圧縮変形のバラツキを抑制することができる。従って、ガスケット10の姿勢の安定化を図ることができる。
【0056】
なお、本実施例においては、ガスケット10の高さHが6mm程度の場合、締め代の高低差α、すなわちXb−Xf=Hb−Hfは、0.05mm以上1.0mm以下、より好ましくは、0.1mm以上0.5mm以下に設定するとよい。高低差αがこの範囲よりも小さいと、上述したような本実施例の効果が少なく、この範囲よりも大きいと、周方向のシール性の偏りが生じ易くなってしまう。
【0057】
ここで、本実施例においては、吸気通路31が負圧になるため、ガスケット10の第1シール突起部12が外周側に向かって傾くように変形させる構成を採用した。しかしながら、用途によっては、ガスケット10のシール突起部12を内周側に向かって傾くように変形させたほうが望ましい場合もある。この場合には、ガスケット10(の第1シール突起部12)における装着面34に対する締め代が、ガスケット10(の第1シール突起部12)が装着面34を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に小さくなるように設定すればよい。すなわち、ガスケット10の高さHを摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に低くなるように構成すればよい。
【0058】
このような構成を採用すれば、ガスケット10の第1シール突起部12は、締め代が大きい前方の部位から摺動が始まる。このとき、当該部位においては、ガスケット10の内周側に向かって引きずられる。従って、当該部位は、内周側に向かって傾くように圧縮変形される。そして、スロットルボディ20の装着(挿入)が進むにつれて、ガスケット1
0の第1シール突起部12における摺動する部位が徐々に後方に移行していく。この場合、既に摺動が始まっている部位は内周側に向かって傾くように変形しているため、摺動する部位が後方に移行していく場合、新たに摺動が始まる部位も内周側に向かって傾くように圧縮変形する。
【0059】
(実施例2)
図7には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1では、ガスケットの高さの変化によって、締め代を変化させる場合を示した。これに対し、本実施例では、ガスケットが装着される環状溝の深さの変化によって、締め代を変化させる場合の構成を示す。基本的な構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0060】
図7を参照して、本発明の実施例2に係るガスケット10aにおけるインテークマニホールド30の装着面34に対する締め代について詳細に説明する。本実施例に係るガスケット10aについては、その基本的な構成は上記実施例1と同一であり、ガスケット10aの高さに関してのみ、上記実施例1の場合と異なっている。
【0061】
そして、本実施例においても、実施例1の場合と同様に、ガスケット10a(の第1シール突起部)における装着面34に対する締め代が、ガスケット10(の第1シール突起部12)が装着面34を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されている。
【0062】
図7はスロットルボディの環状溝21aとガスケット10aと装着面34との寸法関係を示した図であり、図7中左側は摺動方向の前方における寸法関係を示し、図7中右側は摺動方向の後方における寸法関係を示したものである。なお、図7においては、ガスケット10aは簡略化して示しており、かつ装着面34によって圧縮されていない状態を示している。また、装着面34については、その表面の位置を点線にて示している。
【0063】
本実施例においては、ガスケット10aは、その高さが全周に亘って同一となるように構成されている。これに対して、環状溝21aの溝の深さは、ガスケット10aの摺動方向における前方の深さDfよりも後方の深さDbの方が浅くなるように構成されている。また、環状溝21aの深さは上記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に浅くなるように構成されている。
【0064】
このように構成されることで、ガスケット10aにおける装着面34に対する締め代は、上記実施例1の場合と同様に、ガスケット10aの摺動方向における前方での締め代Xfよりも後方における締め代Xbのほうが大きくなる。また、当該締め代は、ガスケット10a(の第1シール突起部)が装着面34を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなる。
【0065】
以上の構成を採用することにより、本実施例の場合においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、ガスケット10aの第1シール突起が外周側に向かって傾くように変形するが、内周側に向かって傾くように変形させたい場合には、環状溝21aの深さを、上記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に深くなるように構成すればよい。
【0066】
なお、ガスケットの高さ、及び環状溝の深さの両者を変化させることによって、締め代を徐々に変化させる構成を採用することも可能である。
【0067】
(実施例3)
図8には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、組み立てられた状態で、互いに対向する面(本実施例では平面)を有する2部材としてのインテークマニホールド50及びシリンダーブロック60と、インテークマニホールド50に設けられた環状溝51に装着され、インテークマニホールド50とシリンダーブロック60の対向面間の隙間を封止する環状のガスケット40とを備える密封構造を例にして説明する。
【0068】
本実施例に係るガスケット40は、環状溝51の溝底面に密着する突起部41と、シリンダーブロック60の表面61に密着する環状突起部42とを備えている。この環状突起部42は、ガスケット40の本体部からシリンダーブロック60の表面61に向かい、かつインテークマニホールド50とシリンダーブロック60との対向面に対して垂直な方向に対して傾いた方向に伸びるように構成されている。より具体的には、環状突起部42は外周側に傾いた方向に伸びるように構成されている。また、この環状突起部42の内周面43が、シリンダーブロック60の表面61側に向くように構成されている。
【0069】
以上の構成を採用したことによって、環状突起部42がシリンダーブロック60の表面61に密着する場合には、環状突起部42は外周側に向かって傾くように変形し易くなっている。
【0070】
そして、本実施例においては、インテークマニホールド50とシリンダーブロック60とを組み付ける過程で、ガスケット40の環状突起部42が、シリンダーブロック60の表面61に対して摺動する。図8において、矢印Tはガスケット40の摺動方向を示し、矢印Kは環状突起部42が摺動時に引きずられる方向を示している。
【0071】
また、本実施例においては、ガスケット40の環状突起部42におけるシリンダーブロック60の表面61に対する締め代が、ガスケット40の環状突起部42が当該表面61を摺動する際の摺動方向Tの前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されている。
【0072】
なお、当該締め代の設定に関しては、実施例1で示したように、ガスケット40の高さの変化を利用してもよいし、実施例2で示したように、環状溝51の深さの変化を利用してもよいし、両者を利用してもよい。
【0073】
以上のように、本実施例の場合にも、締め代に変化を持たせたことにより、上記実施例1及び2と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、ガスケット40における環状突起部42の内周面43がシリンダーブロック60の表面61側に向くように構成されていることと、環状突起部42における当該表面61に対する締め代が、上記のように設定されていることとが相俟って、装着状態において、環状突起部42を、その全周に亘って安定的に外周側に向かって倒れるように変形させることが可能となる。
【0074】
(実施例4)
図9には、本発明の実施例4が示されている。本実施例においては、上記実施例3と同様に、組み立てられた状態で、互いに対向する面(本実施例では平面)を有する2部材としてのインテークマニホールド50及びシリンダーブロック60と、インテークマニホールド50に設けられた環状溝51に装着され、インテークマニホールド50とシリンダーブロック60の対向面間の隙間を封止する環状のガスケット40aとを備える密封構造を例にして説明する。
【0075】
本実施例に係るガスケット40aは、環状溝51の溝底面に密着する突起部41aと、シリンダーブロック60の表面61に密着する環状突起部42aとを備えている。この環状突起部42aは、ガスケット40aの本体部からシリンダーブロック60の表面61に
向かい、かつインテークマニホールド50とシリンダーブロック60との対向面に対して垂直な方向に対して傾いた方向に伸びるように構成されている。より具体的には、環状突起部42aは内周側に傾いた方向に伸びるように構成されている。また、この環状突起部42aの外周面43aが、シリンダーブロック60の表面61側に向くように構成されている。
【0076】
以上の構成を採用したことによって、環状突起部42aがシリンダーブロック60の表面61に密着する場合には、環状突起部42aは内周側に向かって傾くように変形し易くなっている。
【0077】
そして、本実施例においては、インテークマニホールド50とシリンダーブロック60とを組み付ける過程で、ガスケット40aの環状突起部42aが、シリンダーブロック60の表面61に対して摺動する。図9において、矢印Tはガスケット40aの摺動方向を示し、矢印Kは環状突起部42aが摺動時に引きずられる方向を示している。
【0078】
また、本実施例においては、ガスケット40aの環状突起部42aにおけるシリンダーブロック60の表面61に対する締め代が、ガスケット40aの環状突起部42aが当該表面61を摺動する際の摺動方向Tの前方から後方に向かうにつれて徐々に小さくなるように設定されている。
【0079】
なお、当該締め代の設定に関しては、実施例1で示したように、ガスケット40aの高さの変化を利用してもよいし、実施例2で示したように、環状溝51の深さの変化を利用してもよいし、両者を利用してもよい。
【0080】
以上のように、本実施例の場合にも、締め代に変化を持たせたことにより、上記実施例1及び2と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、ガスケット40aにおける環状突起部42aの外周面43aがシリンダーブロック60の表面61側に向くように構成されていることと、環状突起部42aにおける当該表面61に対する締め代が、上記のように設定されていることとが相俟って、装着状態において、環状突起部42aを、その全周に亘って安定的に内周側に向かって倒れるように変形させることが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
10,10a ガスケット
11 突起
12 第1シール突起部
13,14 第2シール突起部
15 凹部
20 スロットルボディ
21 環状溝
21a 凹部
21a 環状溝
22 スロットバルブ
30 インテークマニホールド
31 吸気通路
32 凹部
33 挿通孔
34 装着面
40 ガスケット
40a ガスケット
41,41a 突起部
42,42a環状突起部
43 内周面
43a 外周面
50 インテークマニホールド
51 環状溝
60 シリンダーブロック
61 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立てられた状態で、互いに対向する面を有する2部材と、
前記2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットと、
を備え、
前記2部材が組み立てられる際には、前記ガスケットが前記環状溝に装着された状態で、かつ該ガスケットが前記2部材のうちの他方の部材の表面を摺動するように構成された密封構造であって、
前記ガスケットにおける前記他方の部材に対する締め代が、前記ガスケットが該他方の部材の表面を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように設定されていることを特徴とする密封構造。
【請求項2】
前記ガスケットの高さが、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
前記装着溝の深さが、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項4】
前記ガスケットは、該ガスケットの本体部から前記他方の部材に向かい、かつ前記2部材の対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備えており、
該環状突起部の内周面が前記他方の部材側に向くように構成されており、
前記環状突起部における前記他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項5】
前記ガスケットは、該ガスケットの本体部から前記他方の部材に向かい、かつ前記2部材の対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備えており、
該環状突起部の外周面が前記他方の部材側に向くように構成されており、
前記環状突起部における前記他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項6】
2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットにおいて、
前記2部材が組み立てられる際には、前記環状溝に装着された状態で、かつ前記2部材のうちの他方の部材の表面を摺動するように構成されたガスケットであって、
前記他方の部材に対する締め代が、該他方の部材の表面を摺動する際の摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように設定されていることを特徴とするガスケット。
【請求項7】
前記2部材の対向面に垂直な方向の高さが、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に変化するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のガスケット。
【請求項8】
ガスケット本体部から前記他方の部材に向かい、かつ前記2部材の対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備え、
該環状突起部の内周面が前記他方の部材側に向くように構成されており、
前記環状突起部における前記他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項6に
記載のガスケット。
【請求項9】
ガスケットの本体部から前記他方の部材に向かい、かつ前記2部材の対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備え、
該環状突起部の外周面が前記他方の部材側に向くように構成されており、
前記環状突起部における前記他方の部材に対する締め代が、前記摺動方向の前方から後方に向かうにつれて徐々に小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項6に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−67869(P2012−67869A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214264(P2010−214264)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】