説明

密封装置付き転がり軸受

【課題】密封装置付き転がり軸受における外輪の外周面の変化を無くして他部材との嵌め合いを良好にする。
【解決手段】外輪11と内輪10との間に転動体13が転動自在に保持されるとともに、前記外輪11の内径側端縁に設けられた環状の係止溝20に密封装置の外周端部が嵌合して密着固定される密封装置付き転がり軸受1に於いて、前記外輪11の外周面11aの、外周端部から前記係止溝20の直上部分を含む領域がテーパ状30aまたは段状に欠落していることを特徴とする密封装置付き転がり軸受1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外輪にシールド板やシール等の密封装置を装着した密封装置付き転がり軸受に関し、より詳細には密封装置を装着したときの外輪の外周面の変形を抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受では、内輪と外輪との隙間を、外輪の軸方向両端部にシールド板やシール等の密封装置を装着して塞ぎ、外部から軸受内に塵埃が侵入したり、軸受内の潤滑剤が外部に流出したりすることを防止することが行われている。
【0003】
しかしながら、密封装置を装着するには、通常は、外輪の軸方向端部の内輪側全周にわたり形成された環状の係止溝に、密封装置端部の係止爪を加締めにより固定しているため、このときの押し込み力が周方向で不均一になり易く、外輪の真円度が低下することがある。外輪の真円度が損なわれると軸受の音響・振動特性の低下を招くことから、密封装置の係合爪に切欠を設けたり(特許文献1参照)、特定の形状にする(特許文献2、3参照)等の対策が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−314575号公報
【特許文献2】特開2003−287041号公報
【特許文献3】特開2006−283907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献においても密封装置の係止爪を外輪の係止溝に加締めることに変わりはなく、密封装置を外輪に装着すると、外輪の外周面の係止溝の直上部分が外側に変形(拡径)する。外輪を他部材に固定する場合、外輪の外径と他部材の内径との設定嵌め合いが決められているため、設定嵌め合いよりも緊密になるため軸受内部隙間の減少による軸受仕様の変化や、軸受組み込み性が悪化する等の問題が起こります。
【0006】
そこで本発明は、密封装置付き転がり軸受における外輪の外周面の変化を無くして他部材との嵌め合いを良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、外輪と内輪との間に転動体が転動自在に保持されるとともに、前記外輪の内径側端縁に設けられた環状の係止溝に密封装置の外周端部が嵌合して密着固定される密封装置付き転がり軸受に於いて、前記外輪の外周面の、外周端部から前記係止溝の直上部分を含む領域がテーパ状または段状に欠落していることを特徴とする密封装置付き転がり軸受を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の密封装置付き転がり軸受は、外輪の外周面の外周端部から係止溝の直上部分を含む領域がテーパ状または段状に欠落しているため、密封装置を係止溝に装着する際に外輪の外周面が外側に変形しても、他部材への外輪固定に支障を来たすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態を説明するための断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態を説明するための断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態を説明するための断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、密封装置付き転がり軸受1は、内輪10と外輪11との間に、保持器12により転動体(玉)13を転動自在に保持し、更に内輪10と外輪11との隙間をシールド板やシール等の密封装置14で密封して構成されている。また、外輪11の内径側端縁には環状の係止溝20が形成されており、密封装置14の一方の端部14aが嵌入される。ここで、外輪11の係合溝20及び密封装置14の端部14aは、それぞれ従来と同様の構造で構わない。また、図示は省略するが、内輪10、外輪11、転動体12及び密封装置14で形成される空間には、グリースや潤滑油等の潤滑剤が充填されている。
【0012】
以上の構成は従来の密封装置付き転がり軸受と同様であるが、本発明では更に外輪11の外周面11aに、外周端部11bから係止溝20の直上部分を含む領域にかけてテーパ状の欠落部30が形成されている。尚、欠落部30の幅L及び深さDは、外輪11の幅や厚さ(外径と内径との差)に応じて適宜設定されるが、幅Lについては係止溝20よりも内側まで延出している必要がある。
【0013】
このような構成によれば、密封装置14を係止溝20に嵌入した際に、外輪11の外周面11aの係止溝20の直上部分が変形しても、欠落部30のテーパ面30aが変形するだけである。そのため、外輪11を他部材に固定する場合、外周面11aの欠落部30を除いた平坦部を利用して設定嵌め合い通りに他部材に固定できる。
【0014】
(第2実施形態)
図2に示すように、第1実施形態における欠落部30を段状に形成することもできる。段の幅や段差は、同様に、外輪11の幅や厚さに応じて適宜設定される。
【0015】
段状の欠落部30においても、密封装置14を係止溝20に嵌入した際に欠落部30の平坦部30bが変形するだけであるため、外周面11aの欠落部30を除いた平坦部を利用して設定嵌め合い通りに他部材に固定できる。
【0016】
(第3実施形態)
図3に示すように、本実施形態は、第1実施形態において密封装置14を自動車のハブ用軸受のシールとした場合を示している。このハブ軸受のシールは、内輪側に固定される第1のスリンガ15aと、外輪側に固定される第2のスリンガ15bとの間に、第2のスリンガ15bに接合した弾性材料からなるシール15cを配設したものである。本実施形態では、第2のスリンガ15bを固定するための係止溝20の直上部分を含むようにテーパ状の欠落部30を形成する。
【0017】
このような構成により、第1実施形態と同様に、外周面11aの欠落部30を除いた平坦部を利用して設定嵌め合い通りに他部材に固定できる。
【0018】
(第4実施形態)
図4に示すように、本実施形態は、第3実施形態において欠落部30を第2実施形態のように段状に形成したものである。従って、第2実施形態と同様に、外周面11aの欠落部30を除いた平坦部を利用して設定嵌め合い通りに他部材に固定できる。
【0019】
以上本発明に関して実施形態を挙げて説明したが、本発明は種々の変更が可能である。例えば、密封装置を備える限りころ軸受等の他の転がり軸受への応用も可能であり、軸受の用途も自動車や工作機械、電子機器、家電製品等、特に制限はない。
【符号の説明】
【0020】
1 密封装置付き転がり軸受1
10 内輪
11 外輪
12 保持器
13 転動体(玉)
14 密封装置
20 係止溝
30 欠落部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と内輪との間に転動体が転動自在に保持されるとともに、前記外輪の内径側端縁に設けられた環状の係止溝に密封装置の外周端部が嵌合して密着固定される密封装置付き転がり軸受に於いて、
前記外輪の外周面の、外周端部から前記係止溝の直上部分を含む領域がテーパ状または段状に欠落していることを特徴とする密封装置付き転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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