説明

密封装置

【課題】取付孔100aと、その内側に配置された一対のチューブ101,101との間に設けられる密封装置1において、基部11の圧入に起因する基部11の損傷や、前記取付孔100a及びチューブとの間に隙間が発生するのを防止する。
【解決手段】ゴム状弾性材料からなり、それぞれチューブ101が圧入される一対の開口部11a,11aが開設された基部11と、この基部11に前記各開口部11aを別個に包囲するように互いに離間して埋設された一対の補強環12,12と、前記基部11の一端から外周側へ漸次開くように延び、ハウジング100に開設された取付孔100aの外周側を包囲するように前記ハウジング100の内側面100bに密接されるシールリップ13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付孔と、その内周に配置された一対のチューブとの間に設けられる密封装置であって、例えば内燃機関におけるシリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間を密封するために用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の点火システムには、一対の点火プラグ(ツインプラグ)を用いるものがあり、この場合は、シリンダヘッドカバーに開設された取付孔には、それぞれ点火プラグが挿入された一対のプラグチューブが並んで配置される。そして、このような一対のプラグチューブと、シリンダヘッドカバーに開設された取付孔との間を密封する従来の密封装置としては、下記の特許文献1に記載のものが知られている。
【特許文献1】WO2006/033197
【0003】
図6は、上記特許文献に記載された従来の密封装置を示す装着状態の断面図である。すなわち、内燃機関のシリンダヘッドカバー100には、開口形状が長円状の取付孔100aが開設されており、この取付孔100aに、それぞれ不図示の点火プラグが挿入された一対のプラグチューブ101,101が並んで配置されている。そして、前記取付孔100aと、各プラグチューブ101,101との間を密封する密封装置200は、ゴム状弾性材料で成形されたものであって、前記取付孔100aに密嵌され金属製の補強環201が埋設された長円状の基部202と、各プラグチューブ101,101の外周面に密接される一対のシールリップ203,203とを有する。
【0004】
しかしながら、従来の密封装置200によると、補強環201は、取付孔100aの開口形状と相似の長円状に成形されているが、取付孔100a及び補強環201は、双方の寸法精度が低く、したがって密封装置200を装着する際に、基部202を取付孔100aに圧入する過程で、基部202のゴムの一部がむしり取られて損傷したり、あるいは逆に、取付孔100aとの間に隙間が生じてしまうおそれがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、取付孔と、その内側に配置された一対のチューブとの間に設けられる密封装置において、寸法精度に起因する基部の損傷や、前記取付孔及びチューブとの間に隙間が発生するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る密封装置は、ゴム状弾性材料からなり、それぞれチューブが圧入される一対の開口部が開設された基部と、この基部に前記各開口部を別個に包囲するように互いに離間して埋設された補強環と、前記基部の一端から外周側へ漸次開くように延び、ハウジングに開設された取付孔の外周側を包囲するように前記ハウジングの端面に密接されるシールリップとを備える。
【0007】
上記構成によれば、補強環が、基部における一対の開口部をそれぞれ別個に包囲するように一対設けられているので、各開口部に圧入されるチューブに位置ずれがあっても、両開口部(補強環)の間で、ゴム状弾性材料からなる基部の一部が変形することによって、チューブの位置ずれが有効に吸収される。また、基部がハウジングに開設された取付孔に圧入されるものではないので、基部の一部がむしり取られて損傷したり、あるいは逆に、取付孔との間に隙間が生じてしまうこともなく、前記取付孔との間は、この取付孔の外周側を包囲するようにハウジングの端面に密接されるシールリップによって密封されるので、その密封性は、前記取付孔の寸法精度やチューブの位置ずれ等による影響を受けない。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る密封装置によれば、チューブの位置ずれが、基部に埋設された一対の補強環の間で、ゴム状弾性材料からなる基部の一部が弾性変形することによって有効に吸収され、基部を取付孔に圧入しないので、圧入による基部の損傷や、取付孔及びチューブとの間で隙間が発生することもなく、装着性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る密封装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、本発明に係る密封装置の第一の形態を示す平面図、図2は、図1におけるII−II断面図、図3は、装着状態を図1におけるII−IIと同位置で切断して示す断面図である。
【0010】
まず図3において、参照符号100は、内燃機関のシリンダヘッドカバーで、このシリンダヘッドカバー100には、開口形状が長円状の取付孔100aが開設されており、この取付孔100aの内側に、それぞれ不図示の点火プラグが挿入された一対のプラグチューブ101,101の上端部が並んで配置されている。なお、シリンダヘッドカバー100は、請求項1に記載されたハウジングに相当し、プラグチューブ101は、請求項1に記載されたチューブに相当する。
【0011】
そして、密封装置1は、シリンダヘッドカバー100における取付孔100aの外周側の内側面100bと、各プラグチューブ101,101の外周面との間を密封するものであって、図1及び図2にも示されるように、ゴム状弾性材料からなり、それぞれプラグチューブ101が圧入される一対の開口部11a,11aが開設された基部11と、この基部11に前記各開口部11a,11aを別個に包囲するように互いに離間して埋設された一対の補強環12,12と、前記基部11の一端(上端)から延び、シリンダヘッドカバー100に開設された取付孔100aの外周側を包囲するように前記シリンダヘッドカバー100の内側面100bに密接されるシールリップ13とを備える。基部11は、シリンダヘッドカバー100の取付孔100aの開口形状に対応して、図1に示される平面形状が長円状に形成されている。
【0012】
補強環12は、金属からなるものであって、基部11の開口部11aの外周に沿って延びる円環状に形成され、円筒部12aと、その上端から内周側へ屈曲した内向き鍔部12bとからなる。内向き鍔部12bは、前記開口部11a内に露出しており、また、円筒部12aの内周側には、基部11のゴム状弾性材料の一部が廻りこんで形成されプラグチューブ101の外周面に適当なつぶし代で密接されるシール突条14が設けられている。
【0013】
シールリップ13は、その外周縁をシリンダヘッドカバー100に投影した形状が、このシリンダヘッドカバー100に開設された取付孔100aより大きく、外周側へ漸次開いた漏斗状又は円錐筒状に形成され、平面形状が長円状をなす基部11の外郭に沿って形成されている。
【0014】
上記構成を備える第一の形態の密封装置1は、図3に示されるように、基部11の開口部11a,11aを、補強環12の内向き鍔部12bがプラグチューブ101,101の上端と衝合して位置決めされるまで、それぞれプラグチューブ101,101の上端部外周に圧入することによって、各補強環12,12における円筒部12aの内周に形成されたシール突条14,14を、前記プラグチューブ101,101の上端部外周面に適当なつぶし代で密接させると共に、シールリップ13を、シリンダヘッドカバー100に開設された取付孔100aの外周側を包囲するように、このシリンダヘッドカバー100の内側面100bに、適当に変形させた状態で密接させる。そしてこの装着状態では、各プラグチューブ101の内腔101aが、密封装置1の開口部11aを介して、シリンダヘッドカバー100に開設された取付孔100aに連通している。
【0015】
ここで、プラグチューブ101,101のピッチPのばらつき等による位置ずれがあった場合には、基部11に埋設された一対の補強環12,12の間で、ゴム状弾性材料からなる基部11の一部11bが変形を受け、その変形量は、前記ピッチPによって変化し、言い換えれば、プラグチューブ101,101の位置ずれが、有効に吸収される。
【0016】
なお、基部11は、補強環12,12の間の部分(参照符号11bで示される部分)を抉った形状(すぐりを設けた形状)とすることによって、プラグチューブ101,101のピッチPのばらつき等による位置ずれの吸収を、一層良好にすることができる。
【0017】
一方、シリンダヘッドカバー100に開設された取付孔100aとの間は、この取付孔100aの外周側を包囲するように、シリンダヘッドカバー100の内側面100bに密接されたシールリップ13によって密封されるので、その密封性は、前記取付孔の寸法精度やチューブの位置ずれ等による影響を受けず、シリンダヘッドカバー100の内部空間Sの圧力が、シリンダヘッドカバー100の内側面100bに対するシールリップ13の面圧を増大させるように作用するので、良好な密封性を奏する。しかも、基部11が取付孔100aに圧入されるものではないので、基部11のゴムの一部が、取付孔100aへの圧入によってむしり取られて損傷したり、あるいは逆に、取付孔100aとの間に隙間が生じてしまうようなことが生じ得ない。
【0018】
次に、図4は、本発明に係る密封装置の第二の形態を示す平面図、図5は、図4におけるV−Vと同位置で切断して示す断面図である。この第二の形態において、先に説明した第一の形態と異なるところは、補強環の形状にある。
【0019】
すなわち、基部11に埋設された補強環12,12は、図4に示されるようにそれぞれ平面形状がU字形をなすものであって、基部11の外郭に沿って延びる長円状の環状体をその長軸方向中間位置で分割した形状を呈し、図5に示されるように、側壁部12cと、その上端から内周側へ屈曲した内向き鍔部12dとからなる。そして、この補強環12,12の湾曲部12Aと反対側の端部12B同士は、前記長軸方向へ互いに対向している。その他の部分は、先に説明した第一の形態と同様に構成されている。
【0020】
したがって、第二の形態による密封装置1も、基本的に、第一の形態と同様の作用・効果を実現し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る密封装置の第一の形態を示す平面図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明に係る密封装置の第一の形態の装着状態を、図1におけるII−IIと同位置で切断して示す断面図である。
【図4】本発明に係る密封装置の第二の形態を示す平面図である。
【図5】本発明に係る密封装置の第二の形態の装着状態を、図4におけるV−Vと同位置で切断して示す断面図である。
【図6】従来の密封装置を示す装着状態の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 密封装置
11 基部
11a 開口部
11b 基部の一部
12 補強環
13 シールリップ
14 シール突条
100 シリンダヘッドカバー(ハウジング)
100a 取付孔
101 プラグチューブ(チューブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性材料からなり、それぞれチューブが圧入される一対の開口部が開設された基部と、この基部に前記各開口部を別個に包囲するように互いに離間して埋設された補強環と、前記基部の一端から外周側へ漸次開くように延び、ハウジングに開設された取付孔の外周側を包囲するように前記ハウジングの端面に密接されるシールリップとを備えることを特徴とする密封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−19671(P2009−19671A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181904(P2007−181904)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】