密度可変柄出し装置並びに密度可変柄出し織物の製造方法
【課題】緯糸の織込密度が変化した独特な密度可変柄を有する織物を製織できる密度可変柄出し装置並びに密度可変柄出し織物の製造方法を提供すること。
【解決手段】筬部3を分割して複数の筬羽30を一体とした分割筬羽群3Aが横方向に多数並設する構成とし、緯糸2筬打ち時にその筬打ち度を小さくする凹所4を各分割筬羽群3Aに設け、各分割筬羽群3Aを上動させる多数のアクチュエータ装置6を筬部3に設けて、各アクチュエータ装置6の駆動により縦方向位置線Sで各分割筬羽群3Aが緯糸2を通常通り筬打ちする状況と、凹所4が小さい筬打ち度で筬打ちする状況とを切り替え可能に設けると共に、各アクチュエータ装置6の選択駆動によりどの分割筬羽群3Aを上下動させるかを制御する制御プログラムを備えた制御部を設ける。
【解決手段】筬部3を分割して複数の筬羽30を一体とした分割筬羽群3Aが横方向に多数並設する構成とし、緯糸2筬打ち時にその筬打ち度を小さくする凹所4を各分割筬羽群3Aに設け、各分割筬羽群3Aを上動させる多数のアクチュエータ装置6を筬部3に設けて、各アクチュエータ装置6の駆動により縦方向位置線Sで各分割筬羽群3Aが緯糸2を通常通り筬打ちする状況と、凹所4が小さい筬打ち度で筬打ちする状況とを切り替え可能に設けると共に、各アクチュエータ装置6の選択駆動によりどの分割筬羽群3Aを上下動させるかを制御する制御プログラムを備えた制御部を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機に設けることで、緯糸の織込密度が変化した独特な密度可変柄を有する織物を製織できる密度可変柄出し装置並びにこの密度可変柄出し装置を設けた織機を用いた密度可変柄出し織物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
織物Oは、例えば、図1に示したような織機Aを用いて製織される。
【0003】
簡単に説明すると、織機Aには、例えば14枚の綜絖8が備えられていて、そのうちの7枚(のヘルド)には多数の経糸1のうちの偶数番の経糸1が通され、あとの7枚には奇数番の経糸1が通されていて、この偶数番の経糸1を通した一若しくは複数の綜絖8と、奇数番の経糸1を通した一若しくは複数の綜絖8とを互い違いに上下動させて偶数と奇数の経糸1を開口し、この開口に緯糸2を通した後、経糸1に沿って可動する多数の筬羽30を備えた筬部3(多数の筬羽30)により緯糸2を筬打ちすることで、経糸1と緯糸2とが密に織り込まれて織物O(織地)が製織される構成である。
【0004】
また、従来の織機Aによる織り柄の作成は、ドビー機(例えば、特許文献1参照。)やジャカード機によって経糸1と緯糸2の組み合わせを変化させて柄を織り上げていく。
【0005】
具体的には、例えばドビー機によって、偶数番の経糸1を通した綜絖8と、奇数番の経糸1を通した綜絖8とを上げ下げ制御して、予め作成された紋柄データに基づいた紋柄が形成されることになる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−299481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ドビー機やジャカード機によって柄を形成するのではなく、織機に設けることにより、予め設定した柄データに基づいて緯糸を筬打ちする際にねらった位置を通常の筬打ち位置まで筬打ちしなかったり通常よりも強く筬打ちしたりするように制御可能で、製織物に並設する緯糸間の密度が通常より粗になったり密になったりする部分を形成することができ、設定した柄データに基づいた例えば透き目模様などを製織物に簡単に製織することができる画期的な密度可変柄出し装置並びにこの密度可変柄出し装置を設けた織機を用いた密度可変柄出し織物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
経糸1に沿って可動して上下の経糸1間に通された緯糸2を筬打ちする筬羽30を備えた筬部3を有する織機Aに設ける密度可変柄出し装置であって、前記筬部3を分割して一若しくは複数の筬羽30を一体とした分割筬羽群3Aが横方向に多数並設する構成とすると共に、この各分割筬羽群3Aの夫々を個別に上下動可能に設け、この各分割筬羽群3Aが緯糸2を筬打ちする位置に設定した縦方向位置線Sで筬打ち位置Iまで筬打ちするに際して、その筬打ち度を小さくして若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしないで緯糸2間を通常より粗にする凹所4を各分割筬羽群3Aに設けるか又はその筬打ち度を大きくして若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちして緯糸2間を通常より密にする凸所5を各分割筬羽群3Aに設け、この多数の各分割筬羽群3Aを上動若しくは下動せしめる多数のアクチュエータ装置6を前記筬部3に設けて、この各アクチュエータ装置6の駆動による各分割筬羽群3Aの上動若しくは下動により前記縦方向位置線Sで各分割筬羽群3Aが緯糸2を通常通り筬打ちする状況と、前記凹所4が小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしない状況又は前記凸所5が大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちする状況とを切り替え可能に設けると共に、この各アクチュエータ装置6の選択駆動によりどの分割筬羽群3Aを上下動させるかを制御する制御プログラムを備えた制御部を設けたことを特徴とする密度可変柄出し装置に係るものである。
【0010】
また、前記各分割筬羽群3Aの、前記縦方向位置線Sで通常通り筬打ちする通常筬打ち部分30Aの上部近傍若しくは下部近傍に前記凹所4若しくは前記凸所5を設け、この各分割筬羽群3Aを前記各アクチュエータ装置6の駆動により上動若しくは下動させると、前記縦方向位置線Sで前記通常筬打ち部分30Aが緯糸2を通常通り筬打ちする状況と、前記凹所4が小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしない状況又は前記凸所5が大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちする状況とが切り替えられる構成としたことを特徴とする請求項1記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0011】
また、前記各分割筬羽群3Aの筬打ち表面に凹部4A若しくは凸部5Aを形成して、この凹部4Aを前記凹所4とし若しくはこの凸部5Aを前記凸所5としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0012】
また、前記筬部3は、前記織機Aに備えられている筬取付部7に対して着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0013】
また、前記筬部3の筬打ち運動の運転基準となる前記織機Aのクランク機構の回転軸の回転位置を検出する回転検出手段を備え、この回転検出手段により織り込んだ緯糸2の番数若しくは次に織り込む番数をカウント表示する製織番数表示手段と、前記製織番数を変更して開始操作することでその変更番数若しくはその次の番数から改めて予め設定された柄データに基づいて前記各アクチュエータ装置6を駆動制御する再開運転開始番数変更手段を前記制御プログラムに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0014】
また、糸切れなどで製織の修正を要する際に、前記織機Aの前記クランク機構の回転に同期して前記製織番数表示手段の緯糸2の番数を逆カウント表示する修正時逆カウント手段を前記制御プログラムに備えたことを特徴とする請求項5記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0015】
また、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置を設けた織機Aを使用し、制御プログラムに基づいた制御部の制御により各アクチュエータ装置6を上動若しくは下動させて緯糸2に小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしない部分又は大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちする部分を形成して、織物Oに緯糸2間の密度が通常より粗な個所又は緯糸2間の密度が通常より密な個所を有する密度可変柄Gを織込することを特徴とする密度可変柄出し織物の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、複雑な製織処理を行って製織物に組織変化を生じさせるのではなく、本発明の密度可変柄出し装置を織機に設けて単に柄データを制御部に入力して織機による通常の製織を行うだけで緯糸の織込密度変化を応用した特殊な密度変化柄の製織が可能となり、また、柄データは、例えば既存の技術を応用してパソコンで簡易に作成可能な構成にできるし制御部へのこの柄データの変更も例えば記憶媒体の交換などによって容易に変更可能な構成にでき、柄データの管理が電子データになるので保管場所もとらず、再度使用する際の探す手間も少ないなど取扱性に秀れる。しかも、本発明の密度可変柄出し装置は、筬部として織機に設けるため、既存のドビー機やジャカード機を問題なく併用できてそれらでの柄出し方法を阻害することもないので、ドビー機やジャカード機との併用により様々な応用柄の製織も期待できるなど、極めて実用性に秀れた画期的な密度可変柄出し装置並びに密度可変柄出し織物の製造方法となる。
【0017】
また、請求項2記載の発明においては、アクチュエータ装置による分割筬羽群の上動若しくは下動により筬打ち状況の切り替え作用が確実に発揮される構成を簡易に設計実現可能となり、しかも、分割筬羽群の通常筬打ち部分の上部近傍若しくは下部近傍に凹所若しくは凸所を設けたため、アクチュエータ装置による分割筬羽群の上動若しくは下動ストロークを可及的に小さくできると共に、ストロークを小さくすることで始動から駆動完了までの動作速度も速くなるので、筬部の筬打ち運動に遅延することなく的確に連動した分割筬羽群の動作制御が簡易に可能となるなど、一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【0018】
また、請求項3記載の発明においては、前記作用・効果を確実に発揮する凹所若しくは凸所を簡易に設計実現可能となる一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【0019】
また、請求項4記載の発明においては、筬部に上下動する多数の分割筬羽群と多数のアクチュエータ装置とを備えた構成でありながら、この筬部を織機の筬取付部に対して着脱可能であるため、既存の織機の筬部と同様に、使用する経糸の太さに応じて多数の筬羽の並設間隔を異ならせた分割筬羽群を備えた本発明の密度可変柄出し装置に付け替えて使用することも可能となる一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【0020】
また、請求項5記載の発明においては、回転検出手段によって織機の製織と同期したカウント表示が確実に行われるから、通常の運転時はもちろん、例えば糸切れなどのトラブル発生時にその発生位置まで緯糸を解いてその解いた数分再開運転開始番数変更手段により製織番数を変更して運転を再開しても、カウント表示間違いがなく、これにより織り間違いのない正確な密度可変柄を確実に形成可能となる一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【0021】
また、請求項6記載の発明においては、糸切れなどのトラブル発生時にその発生位置まで解く緯糸の番数が少ない場合には、一般的に織機を動作させて経糸を開口させながら(クランク機構を回転させながら)問題のある糸のところまで緯糸を一本ずつ解いていくという作業が行われるが、この際、修正時逆カウント手段によりクランク機構の回転に同期して製織番数表示手段の緯糸の番数が逆カウント表示されることになるため、確実に糸を解いた番数分を差し引いた番数表示がなされて運転再開時の織り間違いがない一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
本発明の密度可変柄出し装置を織機Aに設けて織機Aの運転を開始すると、柄データに基づいた制御部(制御プログラム)の制御により多数の各アクチュエータ装置6のうちの指示されたものが駆動する。
【0024】
すると、横方向に多数並設する各分割筬羽群3Aのうちの駆動した各アクチュエータ装置6に対応するものが上動若しくは下動し、この各分割筬羽群3Aの上動若しくは下動により、例えば各分割筬羽群3Aが筬打ちする位置に設定した縦方向位置線Sで(通常筬打ち部分30Aが)緯糸2を通常通り筬打ちする状況から、この縦方向位置線Sに凹所4が位置してこの凹所4が緯糸2を小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしない状況、又は縦方向位置線Sに凸所5が位置してこの凸所5が緯糸2を大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちする状況へと切り替えられる。
【0025】
即ち、上動若しくは下動されていない分割筬羽群3Aにおいては、縦方向位置線Sで各分割筬羽群3A(の通常筬打ち部分30A)が緯糸2を通常通り筬打ちするが、アクチュエータ装置6によって上動若しくは下動された分割筬羽群3Aにおいては、前記縦方向位置線Sで前記凹所4が緯糸2を通常より弱く筬打ちするか若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしないか、又は前記凸所5が緯糸2を通常より強く筬打ちするか若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちすることになるので、これにより製織物Oには、並設する緯糸2の間隔が通常の製織状態より離れて粗となる部分、若しくは並設する緯糸2の間隔がなく通常の製織状態より緯糸2がその並設方向に強く圧縮されて密となる部分が形成されることになる。
【0026】
即ち、並設する緯糸2間の密度が、通常より粗な個所若しくは通常より密な個所が存在する密度可変柄Gを有する織物Oが製織されることになる。
【0027】
尚、アクチュエータ装置6が駆動しない状態の時に縦方向位置線Sに凹所4若しくは凸所5が位置していて、アクチュエータ装置6の駆動(分割筬羽群3Aの上動若しくは下動)により通常通りの筬打ちがなされる状況に切り替えられる構成であっても良い。
【0028】
このようにして製織された織物Oの密度可変柄Gは、緯糸2の密度が通常の製織個所より粗な個所は透き目模様となって通常の製織個所とは視覚的に異なった見え方をするものになり、また、緯糸2の密度が通常の製織個所よりも密な個所も通常の製織個所とは視覚的に異なった見え方をするものになる。
【0029】
また、この密度可変柄Gは、制御プログラムへの柄データの設定により自由自在に製織柄を変更可能であるので、例えば、文字や文章や図柄を象った密度可変柄Gを形成して独特な見え方をする文字や文章や図柄が表出するような製織物Oを製織することが、経糸1や緯糸2の色を変更したりすることなしに容易に可能となる。
【0030】
従って、本実施例の密度可変柄出し装置を設けた織機Aによれば、複雑な製織処理を行って製織物に組織変化を生じさせるのではなく、例えば、単にパソコンで柄データを作成してそのデータを制御部に入力して織機Aによる通常の製織を行うだけで、例えば平織物に織密度変化を応用した従来のドビー機やジャカード機では決して表現できない密度変化柄Gの製織が可能である。
【0031】
また、柄データは、例えば既存の技術を応用してパソコンで簡易に作成可能であるし、柄データの変更も例えば記憶媒体の交換によって容易に可能であり、しかも、柄データの管理が電子データになるので保管場所もとらないし、再度使用する際の探す手間も少ない。
【0032】
また、織機Aに筬部3として本発明の密度可変柄出し装置が設けられる構成のため、織機Aに既存のドビー機やジャカード機を問題なく併用できる上にそれらでの柄出し方法を阻害することもないので、ドビー機やジャカード機との併用により様々な応用柄を製織できることが期待される。
【0033】
また、例えば、各分割筬羽群3Aを筬部3の前後方向に動かして筬打ち状況を前述のように切り替えるような構造であると、前後厚のある筬部3に構造変更したり、筬ガイド33にも構造変更を伴うものになると考えられるが、本発明では、各分割筬羽群3Aを上下方向に動かす構造のため、筬部3の前後幅をほとんど変更することなしに構成できるし、既存の筬ガイド33を使用して上下動する構成を実現可能であるなど、容易に設計実現可能である。
【実施例1】
【0034】
本発明の具体的な実施例1について図1〜図11に基づいて説明する。
【0035】
図1は、織機A(和装織機A)を示している。この織機Aを概略的に説明すると、詳細な図示は省略しているが、複数枚の綜絖8が図1に示すように奥行き方向に並設されていて、例えばそのうちの半数には多数の経糸1のうちの偶数番の経糸1が通され、あとの半数には奇数番の経糸1が通されて、図2に示すようにこの偶数番の経糸1を通した一若しくは複数の綜絖8と、奇数番の経糸1を通した一若しくは複数の綜絖8とを図中矢印Y1のように互い違いに上下動させて偶数と奇数の経糸1を開口し、この開口に図中矢印Y2のようにシャトル9によって緯糸2を通した後、図中矢印Y3のように経糸1に沿って可動する筬羽30(筬部3)により緯糸2を筬打ちして織物Oを製織する構成である。
【0036】
本実施例は、例えばこの図1に示したような和装織機Aに、筬部3として設けて使用する密度可変柄出し装置である。
【0037】
具体的には、筬部3を分割して一若しくは複数の筬羽30を一体とした分割筬羽群3Aが横方向に多数並設する構成とすると共に、この各分割筬羽群3Aの夫々を個別に上下動可能に設けている。
【0038】
更に詳しくは、既存の織機Aの筬部には、通常縦長帯板状の筬羽30が経糸1を通すことができる小間隔を置いて多数並設状態に設けられているが、本実施例では、この多数枚の筬羽30を目的(製織したい柄)の幅(例えば10mm)に応じた枚数分に分割し、この分割した複数の筬羽30を一まとめ(一体)にして並設すると共に、この一体にした複数枚の各筬羽30の上下端部に支持部材31を当接状態に配設したものを前記分割筬羽群3Aとしている。そして、この各分割筬羽群3Aを図4に示すように横方向に多数並設して筬部3を構成している。また、本実施例では、目的に応じ、この支持部材31の幅を変更することで異なる枚数の筬羽30を一まとめとした分割筬羽群3Aを構成することもできる。
【0039】
また、本実施例の筬部3は、図5に示した横長板状の取付基体32の上部寄りの一箇所と中程の上下二箇所とに横長の取付溝32Aを凹設し(図6参照。)、この各取付溝32Aに、多数の前記分割筬羽群3Aを装備した(分割筬羽群3Aの各筬羽30を挿通した)横長の筬ガイド33を着脱自在に嵌合し、この嵌合した三箇所の各筬ガイド33の前側(図5の手前側,図6の左側)に配したカバー体34の左右両端部を夫々取付基体32にボルト11止めすることで、各筬ガイド33をカバー体34と共に取付基体32に固定している。尚、筬ガイド33は、図3に示すように既存の織機Aの筬部に設けられるものと同等の構成を有するものとしている。図中符号13は、分割筬羽群3Aと取付基体32との間に介存させて筬打ちする時の衝撃を吸収する衝撃緩衝材である。
【0040】
従って、この取付基体32に取付られた三箇所の筬ガイド33に対して各分割筬羽群3Aが抜け止め状態に装着されると共に、この三箇所の筬ガイド33にガイドされて各分割筬羽群3Aが上下方向にスライド移動可能となるように設けている。また、カバー体34を、前記ボルト11止めを解除して取り外すことで、筬ガイド33と共に各分割筬羽群3Aを取付基体32から取り外しでき、筬ガイド33からバラした多数の筬羽30を、異なる筬ガイド33(筬羽30を異なる並設間隔でガイド装着する別の筬ガイド33)を用いて組み直すことができる(使用する経糸1の太さに応じて筬羽30の並設間隔が異なる分割筬羽群3Aを有する筬部3に組み直すことがきる)構成としている。
【0041】
また、前記各分割筬羽群3Aの上端側の前記支持部材31に、上方へ立設する支持部材31より径小なガイド杆部31Aを突設すると共に、下端側の支持部材31にも下方へ垂設する支持部材31より径小なガイド杆部31Aを突設し、前記取付基体32の前記上部寄りの筬ガイド33より上方位置に設けた上側ガイド部35に上端側の支持部材31のガイド杆部31Aをスライド自在に挿通すると共に、取付基体32の中程の下側の筬ガイド33より下方位置に設けた下側ガイド部36に下端側の支持部材31のガイド杆部31Aをスライド自在に挿通している。
【0042】
従って、この上下の支持部材31が上側ガイド部35と下側ガイド部36とにぶつかることで分割筬羽群3Aが上下方向に抜け止め状態となる構成とすると共に、上側ガイド部35と下側ガイド部36間で分割筬羽群3Aが上下方向にスライド移動可能となるように構成している。
【0043】
また、上側ガイド部35内には、抗縮弾性を有する弾性体10(コイルバネ)を多数の分割筬羽群3Aと同数内装すると共に、この各弾性体10を各分割筬羽群3Aの上端に位置する前記ガイド杆部31Aに当接した構成とし、この弾性体10の付勢力によって各分割筬羽群3Aが常に下方へ付勢されると共に、上端側の支持部材31と下端側の支持部材31とが多数の筬羽30の上下端部に圧接する状態に維持される構成としている。
【0044】
また、この各分割筬羽群3Aには、この各分割筬羽群3Aが緯糸2を筬打ちする位置に設定した縦方向位置線Sで緯糸2を筬打ち位置Iまで筬打ちするに際して、その筬打ち度を小さくして若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしないで緯糸2間を通常より粗にする凹所4を設けている。尚、筬打ち位置Iとは、分割筬羽群3A(の通常筬打ち部分30A)が緯糸2を通常通り筬打ちする際に、(筬部3が筬打ち方向の可動限位置に達して)緯糸2を最大限打ちつけした位置を示している(図8参照。)。
【0045】
具体的には、図7に示すように前記各分割筬羽群3Aを構成する各筬羽30のひとつひとつの筬打ち表面(各筬羽30の前側の長手方向縁)であって、前記縦方向位置線Sで通常通り筬打ちする通常筬打ち部分30Aの下部近傍位置を略台形状に凹設して凹部4Aを形成し、この各凹部4Aを前記凹所4としている。
【0046】
また、この凹部4Aは、分割筬羽群3Aが通常の状態(前記弾性体10によって下動限位置に付勢維持されて上動していない状態)では、前記縦方向位置線Sに前記通常筬打ち部分30Aが位置して通常の筬打ちがなされ(図8の(a)参照。)、分割筬羽群3Aが通常の状態から弾性体10の付勢力に抗して上動した状態(図7,図8の(b)参照。)へと移動すると、縦方向位置線Sに凹部4A(凹所4)が位置してこの凹所4により筬打ち時に緯糸2が筬打ち位置Iまで筬打ちされない状態となるように分割筬羽群3A(各筬羽30)への形成位置を設定している。
【0047】
また、この凹所4は、図8の(b)に示すように、筬打ち方向の深さを、筬打ち時にこの凹所4が緯糸2に接触することのない深さに設定して、筬打ち時に緯糸2が筬打ち位置Iまで筬打ちされない構成としている。尚、本実施例より凹所4(凹部4A)の深さを浅く設定して、筬打ち時に凹所4が緯糸2に接触し弱く筬打ちする構成でも良い。即ち、凹所4が筬打ちするがその筬打ち度(筬打ち量(長))を小さくする構成でも良い。
【0048】
尚、凹所4を深く形成しても、この凹所4の深さ分だけ緯糸2の間隔が広くなる訳ではなく、実際は通常通り筬打ちされている緯糸2箇所につられて凹所4の個所も間隔はある程度まで狭まってしまうため、この凹所4は、既存の筬羽に対してその前後幅を広げなければならない程まで深く形成する必要はない。即ち、既存の筬羽の構成部品を用いて本実施例の凹部4A付の筬羽30は構成可能である。
【0049】
本実施例では、多数の各分割筬羽群3Aを前記弾性体10の付勢力に抗して上動させる多数のアクチュエータ装置6を前記筬部3に設けて、この各アクチュエータ装置6の駆動による各分割筬羽群3Aの上動により、前記縦方向位置線Sで通常筬打ち部分30Aが緯糸2を筬打ちする状況が、縦方向位置線Sに前記凹所4が位置してこの凹所4が緯糸2を筬打ち位置Iまで筬打ちしない状況へと切り替えられる構成としている。
【0050】
具体的には、アクチュエータ装置6は、エアシリンダを採用して構成し、前記多数の各分割筬羽群3Aと同数を有すると共に、この各分割筬羽群3Aの下部近傍に配置して、この多数のアクチュエータ装置6の一つ一つが分割筬羽群3Aを一つ一つ上動移動させる構成とし、エアシリンダを駆動停止すると前記弾性体10の付勢力により各分割筬羽群3Aは自動的に下動する(元の位置に戻る)構成としている。
【0051】
また、この多数のアクチュエータ装置6は、前記取付基体32の前記下側ガイド部36の下方に設けた固定部材37によって各分割筬羽群3Aの下部近傍に配置固定した構成とし、このアクチュエータ装置6を構成するエアシリンダのピストン6Aの先端を、下側ガイド部36に挿通した各分割筬羽群3Aの下端側の支持部材31より垂設する前記ガイド杆部31Aの下端に当接若しくは接続してこのエアシリンダの駆動(ピストン6A)の上動に連動して分割筬羽群3Aが上動移動する構成としている(図3参照。)。
【0052】
そして、分割筬羽群3Aがアクチュエータ装置6によって上動すると、それまで縦方向位置線Sに位置していた通常筬打ち部分30Aの下部近傍に存する凹所4が縦方向位置線Sへと移動(上動)して位置することになり、この状況で筬打ち動作がなされても、凹所4は緯糸2を筬打ち位置Iまで筬打ちせず、よって並設する緯糸2間が詰まらず僅かに隙間が生じた状態になる。即ち、筬打ち位置Iまで筬打ちしないことによって緯糸2の密度が通常より粗な個所が形成されることになる構成としている。
【0053】
また、このアクチュエータ装置6を備えた筬部3の、織機Aへの取付構造について説明すると、織機Aに備えられた既存の筬取付部7に筬部3の前記取付基体32の中程と上部左右部とを着脱自在にボルト12止めした構成としている(図1,図6参照。)。
【0054】
従って、本実施例の筬部3は、ボルト12止めを解除することで筬取付部7に対して取り外し可能であるので、既存の織機Aの筬部と同様に、使用する経糸1の太さに応じて多数の筬羽30の並設間隔を異ならせた(異なる筬ガイド33を装備した)多数の分割筬羽群3Aを有する筬部3を付け替えて使用することが可能である。また、前述したように筬部3の筬ガイド33を取付基体32から取り外しできるので、筬取付部7から筬部3を取り外し、筬ガイド33を取付基体32から取り外して別の筬ガイド33と共に多数の筬羽30の並設間隔を異なるように組み直すこともでき、この組み直した筬部3を筬取付部7に再び付け直すようにして使用することも可能である。
【0055】
また、本実施例では、前記各アクチュエータ装置6の選択駆動によりどの分割筬羽群3Aを上下動させるかを制御する制御プログラムを備えた制御部を設けている。
【0056】
具体的には、制御部(図示省略)は、前記筬部3とは別体に設けられた演算処理装置(例えば、PLC(プログラマブルロジックコントローラー))によって構成している。
【0057】
本実施例では、汎用ソフトウェアのエクセル(登録商標)VBAを用いて柄を作成するデータ作成手段(ソフト)を開発し、このソフトを使用してパソコンで柄データを作成して入力する。このソフトについて詳しく説明すると、ディスプレイ画面に表示される意匠紙(升目)に柄を書き込むだけで製織データが作成されるもので、この製織柄データが各分割筬羽群3Aの上動駆動データとなり、前記多数のアクチュエータ装置6を駆動制御して指示した個所で分割筬羽群3Aの上動を実行させ、緯糸2を打ち込みながら密度差のある柄(密度可変柄G)を製織する。
【0058】
また、本実施例では、前記筬部3の筬打ち運動の運転基準となる織機Aのクランク機構(図示省略)の回転軸の回転位置を検出する回転検出手段を備え、この回転検出手段により織り込んだ緯糸2の番数若しくは次に織り込む番数をカウント表示する製織番数表示手段と、前記製織番数を変更して開始操作することでその変更番数若しくはその次の番数から改めて予め設定された柄データに基づいて前記各アクチュエータ装置6を駆動制御する再開運転開始番数変更手段を前記制御プログラムに備えている。
【0059】
また、糸切れなどで製織の修正を要する際に、前記クランク機構の回転に同期して前記製織番数表示手段の緯糸2の番数を逆カウント表示する修正時逆カウント手段を前記制御プログラムに備えている。
【0060】
具体的には、回転検出手段はロータリーエンコーダー(センサー)を採用し、このロータリーエンコーダーによりクランク機構の回転軸が360度回転したことが検出される構成としている。即ち、クランク機構の回転軸が360度回転する度に偶数番の経糸1と奇数番の経糸1との開口に緯糸2が通るので、これを1カウントする構成である。
【0061】
また、この回転検出手段としてのロータリーエンコーダーは、クランク機構の回転軸の回転位置を8領域に区分けして回転軸がどの回転位置にあるのかを検出する構成とし、このロータリーエンコーダーによる領域検出信号を前記制御部に取り込み、この信号に合わせて各アクチュエータ装置6を各々駆動させるように制御部が信号を出すことにより制御プログラムの柄データ通りに多数の分割筬羽群3Aを上動させて密度変化柄Gを織り込むと共に、このロータリーエンコーダーによる領域検出により後述するトラブル発生時のカウント戻し時にカウント間違いを生じない構成としている。
【0062】
また、この回転検出手段による緯糸2のカウントは、緯糸2数を1からカウントするか、0からカウントするか、即ち、現在織り込んだ緯糸2の番数をカウントする構成か、次に織り込む緯糸2の番数をカウントする構成かのどちらを採用しても良いが、本実施例では、次に織り込む緯糸2の番数をカウントする構成を採用している。
【0063】
また、前記制御部にディスプレイ装置(図示省略)を設け、前記製織番数表示手段によりこのディスプレイ装置に緯糸2の番数がデジタル数字で表示される構成としている。
【0064】
また、このディスプレイ装置には、タッチパネル式の入力機能を設け、このディスプレイ装置をタッチ操作することで運転開始番数を変更でき、この変更番数に基づいて前記再開運転開始番数変更手段により、改めてアクチュエータ装置6が正しく駆動制御される構成としている。
【0065】
また、このディスプレイ装置には、正転ボタンと逆転ボタンとが表示される構成とし、逆転ボタンを押すと前記クランク機構の回転に同期して前記修正時逆カウント手段により前記製織番数表示手段の緯糸2の番数が逆カウント表示される構成とし、この逆カウント表示状態から正転ボタンを押すと、カウント表示が通常通りに戻る構成としている。
【0066】
また、このディスプレイ装置には、アクチュエータ装置6と同数の絵柄が表示され、現在どのアクチュエータ装置6がどのように制御されているのかを目視確認できるように構成している。
【0067】
また、このディスプレイ装置には、織機Aの運転開始ボタン、運転停止ボタンが表示される構成としている。
【0068】
以上のように構成した本実施例の密度可変柄出し装置を設けた織機Aの作動を説明する。
【0069】
先ず、準備作業として、制御部へ入力する柄データをパソコンで作成し、これを入力する。
【0070】
織機Aを運転開始位置に移動し、ディスプレイ装置に開始したい緯糸2の番号を入力した後、ディスプレイ装置の運転開始ボタンを押し、織機Aを作動させる。
【0071】
製織運転中は、回転検出手段によって緯糸2の本数がカウントされる。
【0072】
また、製織運転中は、回転検出手段の信号と次の緯糸2のデータから、制御プログラムに基づいた制御部の制御より織機Aの動作に対応したタイミングでアクチュエータ装置6の制御、緯糸2の本数を数える処理を行う(同期運転が行われる。)。
【0073】
各アクチュエータ装置6が上動制御されていないところでは、図9の(a),(b)に示すように、各分割筬羽群3Aの通常筬打ち部分30Aで筬打ちがなされて通常通りの緯糸2間が均一に密になる製織が行われる。
【0074】
各アクチュエータ装置6が上動制御されると、緯糸2に筬打ち位置Iまで筬打ちしない部分が形成され、織物Oに並設する緯糸2間の密度が通常より粗な個所を有する密度可変柄Gが織込されることになる。
【0075】
例えば、図10の(a),(b)では、アクチュエータ装置6が一つおきに駆動するように制御されて分割筬羽群3Aが一つおきに上動している状態を説明しており、上動していない分割筬羽群3Aは、縦方向位置線Sに通常筬打ち部分30Aが位置して通常通りの筬打ちがなされ、上動している分割筬羽群3Aは、縦方向位置線Sに前記凹所4が位置して緯糸2を通常の筬打ち位置Iまで筬打ちしない。つまり、この筬打ちしない緯糸2部位は、その前に織り込まれている緯糸2より離れた状態となっており、この部位の緯糸2は並設する緯糸2間が通常より粗となる透き目柄になる。尚、図9,図10では、各分割筬羽群3Aを構成する筬羽30の枚数を、図3に示したものとは異ならせた場合を示している。
【0076】
このような動作を連続して行い、例えば図11に示すような密度可変柄Gを有する織物Oを製織することが可能である。
【0077】
また、製織途中で織物Oの修正を要する場合、即ち、製織運転中に、織物Oに糸切れなどのトラブルが発生(作業者が目視確認)した場合は、作業者が織機Aの運転を停止してディスプレイ装置の運転停止ボタンを押す。
【0078】
そして、問題のある糸のところまで緯糸2を解いてその問題の糸を取り除くが、この際、解かなければならない緯糸2の番数が少ない場合には、ディスプレイ装置の前記逆転ボタンを押し、織機Aを動作させて経糸1を開口させながら(クランク機構を回転させながら)問題のある糸のところまで緯糸2を一本ずつ解いていくと、前記修正時逆カウント手段によりクランク機構の回転に同期して前記製織番数表示手段の緯糸2の番数が逆カウント表示されることになる。
【0079】
そして、問題のある糸を取り除いた後、前記正転ボタンを押し、運転開始ボタンを押して織機Aを運転再開すると、カウント表示が解いた緯糸2の番数分正しく戻っているので織り間違いがなく引き続いて製織がなされ、且つ引き続いて正しいカウント表示がなされることになる。
【0080】
一方、解かなければならない緯糸2の番数が多い場合には、前述のようにして織機Aを動作させながら一本づつ糸を解いていくと時間がかかって作業効率が悪いので、緯糸2の両端部を切断して多数の糸を一気に取り除く。
【0081】
そして、取り除いた糸の本数分緯糸2のカウント数を戻してディスプレイ装置に入力し、運転開始ボタンを押して織機Aを運転再開すると、織り間違いなく引き続いて製織がなされることになる。
【0082】
従って、このような糸切れ時には、解かなければならない緯糸2の本数に応じて二通りの修正手段を選択することができるので非常に実用的となると共に、いずれの修正手段を採用した場合においても、運転再開時に織り間違いなく引き続いて製織を行うことができる。
【0083】
以上のように構成した本実施例によれば、実質的に、既存の織機Aの筬部を本実施例の多数の分割筬羽群3Aと多数のアクチュエータ装置6とを備えた筬部3に付け替えするだけで密度可変柄Gを有する織物Oを製織できる。
【0084】
尚、本実施例の可変柄出し装置は、和装織機Aに限らず、本実施例と異なる緯入れ方式の織機Aにも適用可能である。
【実施例2】
【0085】
本発明の具体的な実施例2について図12,図13に基づいて説明する。
【0086】
本実施例は、前記実施例1において、前記各分割筬羽群3Aの構成を異ならせた場合である。
【0087】
即ち、本実施例の各分割筬羽群3Aは、各筬羽30の通常筬打ち部分30Aの下部近傍に、前記実施例1のような凹所4を設ける構成でなく、図12に示すような縦方向位置線Sで、筬打ち時にその筬打ち度を大きくして若しくは筬打ち位置Iを超えて強く筬打ちして並設する緯糸2間を通常より密にする凸所5を設けている。
【0088】
具体的には、前記各分割筬羽群3Aを構成する各筬羽30のひとつひとつの筬打ち表面であって、前記縦方向位置線Sで通常通り筬打ちする通常筬打ち部分30Aの下部近傍位置を略台形状に凸設して凸部5Aを形成し、この各凸部5Aを前記凸所5としている。
【0089】
また、この凸部5Aは、分割筬羽群3Aが通常の状態(上動していない状態)では、前記縦方向位置線Sに前記通常筬打ち部分30Aが位置して通常の筬打ちがなされ、分割筬羽群3Aが通常の状態から上動した状態へと移動すると、縦方向位置線Sに凸部5A(凸所5)が位置してこの凸所5により筬打ち時に緯糸2が筬打ち位置Iを超えて強く筬打ちされる状態となるように分割筬羽群(各筬羽30)への形成位置を設定している。
【0090】
従って、このように各分割筬羽群3Aを構成した本実施例の密度可変柄出し装置を設けた織機Aによれば、制御プログラムに基づいた制御部の制御により各アクチュエータ装置6を上動させて緯糸2に通常よりも強く筬打ちする部分を形成して、織物Oに並設する緯糸2間の密度が通常より密な個所を有する密度可変柄Gを織込することができる。
【0091】
例えば、図13の(a),(b)では、アクチュエータ装置6が一つおきに駆動して分割筬羽群3Aが一つおきに上動している状態を示しており、上動していない分割筬羽群3Aは、縦方向位置線Sに通常筬打ち部分30Aが位置して通常通りの筬打ちがなされ、上動している分割筬羽群3Aは、縦方向位置線Sに前記凸所5が位置して緯糸2を通常の筬打ち位置Iを超えて強く筬打ちする。つまり、この強く筬打ちされる緯糸2部位は、その前に織り込まれている緯糸2に対して間隔がなく通常の製織状態より緯糸2がその並設方向に強く圧縮された状態となっており、この部位の緯糸2は並設する緯糸2間が通常より密となって密度可変柄Gが製織される。尚、図13では、各分割筬羽群3Aを構成する筬羽30の枚数を、図3に示したものとは異ならせた場合を示している。
【0092】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【実施例3】
【0093】
本発明の具体的な実施例3について図14に基づいて説明する。
【0094】
本実施例も、前記実施例1において、前記各分割筬羽群3Aの構成を異ならせた場合である。
【0095】
即ち、本実施例の各分割筬羽群3Aは、各筬羽30の通常筬打ち部分30Aの下部近傍に前記実施例1と同様の構成の凹所4(凹部4A)を設け、更にこの凹所4の下部近傍に前記実施例2と同様の構成の凸所5(凸部5A)を設けた構成としている。
【0096】
また、本実施例の各アクチュエータ装置6は、各分割筬羽群3Aを異なる二段階の高さに上動させることができるように制御され、この制御により通常筬打ち部分30Aが前記縦方向位置線Sに位置する状況(図14の想像線)と、前記凹所4が縦方向位置線Sに位置する状況(図14の(a))と、前記凸所5が縦方向位置線Sに位置する状況(図14の(b))とを、三段階に切り替えできる構成としている。
【0097】
即ち、このように構成した本実施例の密度可変柄出し装置を設けた織機Aによれば、並設する緯糸2間が通常より粗となる透き目柄と、並設する緯糸2間が通常より密となる柄とが混在する密度可変柄Gを有する織物Oを製織することができる。
【0098】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【0099】
尚、本発明は、実施例1〜3に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例1の織機を示す斜視図である。
【図2】実施例1の概略説明斜視図である。
【図3】実施例1の分割筬羽群を示す部分拡大説明図である。
【図4】実施例1の作動を示す概略説明図である。
【図5】実施例1を示す一部を切り欠いた説明正面図である。
【図6】実施例1と織機(筬取付部)との取付構造を示す説明側面図である。
【図7】実施例1の分割筬羽群の作動を示す概略説明側面図である。
【図8】実施例1の分割筬羽群の通常筬打ち部分での筬打ち状態と、凹所での筬打ち状態とを示す拡大説明側面図である。
【図9】実施例1の分割筬羽群の通常筬打ち部分による筬打ちを示した説明図である。
【図10】実施例1の分割筬羽群の凹所による筬打ちを示した説明図である。
【図11】実施例1を設けた織機で製織した密度可変柄を有する織物を示す説明図である。
【図12】実施例2の分割筬羽群の作動を示す概略説明側面図である。
【図13】実施例2の分割筬羽群の凸所による筬打ちを示した説明図である。
【図14】実施例3の分割筬羽群の作動を示す概略説明側面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 経糸
2 緯糸
3 筬部
3A 分割筬羽群
4 凹所
4A 凹部
5 凸所
5A 凸部
6 アクチュエータ装置
7 筬取付部
30 筬羽
30A 通常筬打ち部分
A 織機
G 密度可変柄
I 筬打ち位置
O 織物
S 縦方向位置線
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機に設けることで、緯糸の織込密度が変化した独特な密度可変柄を有する織物を製織できる密度可変柄出し装置並びにこの密度可変柄出し装置を設けた織機を用いた密度可変柄出し織物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
織物Oは、例えば、図1に示したような織機Aを用いて製織される。
【0003】
簡単に説明すると、織機Aには、例えば14枚の綜絖8が備えられていて、そのうちの7枚(のヘルド)には多数の経糸1のうちの偶数番の経糸1が通され、あとの7枚には奇数番の経糸1が通されていて、この偶数番の経糸1を通した一若しくは複数の綜絖8と、奇数番の経糸1を通した一若しくは複数の綜絖8とを互い違いに上下動させて偶数と奇数の経糸1を開口し、この開口に緯糸2を通した後、経糸1に沿って可動する多数の筬羽30を備えた筬部3(多数の筬羽30)により緯糸2を筬打ちすることで、経糸1と緯糸2とが密に織り込まれて織物O(織地)が製織される構成である。
【0004】
また、従来の織機Aによる織り柄の作成は、ドビー機(例えば、特許文献1参照。)やジャカード機によって経糸1と緯糸2の組み合わせを変化させて柄を織り上げていく。
【0005】
具体的には、例えばドビー機によって、偶数番の経糸1を通した綜絖8と、奇数番の経糸1を通した綜絖8とを上げ下げ制御して、予め作成された紋柄データに基づいた紋柄が形成されることになる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−299481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ドビー機やジャカード機によって柄を形成するのではなく、織機に設けることにより、予め設定した柄データに基づいて緯糸を筬打ちする際にねらった位置を通常の筬打ち位置まで筬打ちしなかったり通常よりも強く筬打ちしたりするように制御可能で、製織物に並設する緯糸間の密度が通常より粗になったり密になったりする部分を形成することができ、設定した柄データに基づいた例えば透き目模様などを製織物に簡単に製織することができる画期的な密度可変柄出し装置並びにこの密度可変柄出し装置を設けた織機を用いた密度可変柄出し織物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
経糸1に沿って可動して上下の経糸1間に通された緯糸2を筬打ちする筬羽30を備えた筬部3を有する織機Aに設ける密度可変柄出し装置であって、前記筬部3を分割して一若しくは複数の筬羽30を一体とした分割筬羽群3Aが横方向に多数並設する構成とすると共に、この各分割筬羽群3Aの夫々を個別に上下動可能に設け、この各分割筬羽群3Aが緯糸2を筬打ちする位置に設定した縦方向位置線Sで筬打ち位置Iまで筬打ちするに際して、その筬打ち度を小さくして若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしないで緯糸2間を通常より粗にする凹所4を各分割筬羽群3Aに設けるか又はその筬打ち度を大きくして若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちして緯糸2間を通常より密にする凸所5を各分割筬羽群3Aに設け、この多数の各分割筬羽群3Aを上動若しくは下動せしめる多数のアクチュエータ装置6を前記筬部3に設けて、この各アクチュエータ装置6の駆動による各分割筬羽群3Aの上動若しくは下動により前記縦方向位置線Sで各分割筬羽群3Aが緯糸2を通常通り筬打ちする状況と、前記凹所4が小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしない状況又は前記凸所5が大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちする状況とを切り替え可能に設けると共に、この各アクチュエータ装置6の選択駆動によりどの分割筬羽群3Aを上下動させるかを制御する制御プログラムを備えた制御部を設けたことを特徴とする密度可変柄出し装置に係るものである。
【0010】
また、前記各分割筬羽群3Aの、前記縦方向位置線Sで通常通り筬打ちする通常筬打ち部分30Aの上部近傍若しくは下部近傍に前記凹所4若しくは前記凸所5を設け、この各分割筬羽群3Aを前記各アクチュエータ装置6の駆動により上動若しくは下動させると、前記縦方向位置線Sで前記通常筬打ち部分30Aが緯糸2を通常通り筬打ちする状況と、前記凹所4が小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしない状況又は前記凸所5が大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちする状況とが切り替えられる構成としたことを特徴とする請求項1記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0011】
また、前記各分割筬羽群3Aの筬打ち表面に凹部4A若しくは凸部5Aを形成して、この凹部4Aを前記凹所4とし若しくはこの凸部5Aを前記凸所5としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0012】
また、前記筬部3は、前記織機Aに備えられている筬取付部7に対して着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0013】
また、前記筬部3の筬打ち運動の運転基準となる前記織機Aのクランク機構の回転軸の回転位置を検出する回転検出手段を備え、この回転検出手段により織り込んだ緯糸2の番数若しくは次に織り込む番数をカウント表示する製織番数表示手段と、前記製織番数を変更して開始操作することでその変更番数若しくはその次の番数から改めて予め設定された柄データに基づいて前記各アクチュエータ装置6を駆動制御する再開運転開始番数変更手段を前記制御プログラムに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0014】
また、糸切れなどで製織の修正を要する際に、前記織機Aの前記クランク機構の回転に同期して前記製織番数表示手段の緯糸2の番数を逆カウント表示する修正時逆カウント手段を前記制御プログラムに備えたことを特徴とする請求項5記載の密度可変柄出し装置に係るものである。
【0015】
また、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置を設けた織機Aを使用し、制御プログラムに基づいた制御部の制御により各アクチュエータ装置6を上動若しくは下動させて緯糸2に小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしない部分又は大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちする部分を形成して、織物Oに緯糸2間の密度が通常より粗な個所又は緯糸2間の密度が通常より密な個所を有する密度可変柄Gを織込することを特徴とする密度可変柄出し織物の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、複雑な製織処理を行って製織物に組織変化を生じさせるのではなく、本発明の密度可変柄出し装置を織機に設けて単に柄データを制御部に入力して織機による通常の製織を行うだけで緯糸の織込密度変化を応用した特殊な密度変化柄の製織が可能となり、また、柄データは、例えば既存の技術を応用してパソコンで簡易に作成可能な構成にできるし制御部へのこの柄データの変更も例えば記憶媒体の交換などによって容易に変更可能な構成にでき、柄データの管理が電子データになるので保管場所もとらず、再度使用する際の探す手間も少ないなど取扱性に秀れる。しかも、本発明の密度可変柄出し装置は、筬部として織機に設けるため、既存のドビー機やジャカード機を問題なく併用できてそれらでの柄出し方法を阻害することもないので、ドビー機やジャカード機との併用により様々な応用柄の製織も期待できるなど、極めて実用性に秀れた画期的な密度可変柄出し装置並びに密度可変柄出し織物の製造方法となる。
【0017】
また、請求項2記載の発明においては、アクチュエータ装置による分割筬羽群の上動若しくは下動により筬打ち状況の切り替え作用が確実に発揮される構成を簡易に設計実現可能となり、しかも、分割筬羽群の通常筬打ち部分の上部近傍若しくは下部近傍に凹所若しくは凸所を設けたため、アクチュエータ装置による分割筬羽群の上動若しくは下動ストロークを可及的に小さくできると共に、ストロークを小さくすることで始動から駆動完了までの動作速度も速くなるので、筬部の筬打ち運動に遅延することなく的確に連動した分割筬羽群の動作制御が簡易に可能となるなど、一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【0018】
また、請求項3記載の発明においては、前記作用・効果を確実に発揮する凹所若しくは凸所を簡易に設計実現可能となる一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【0019】
また、請求項4記載の発明においては、筬部に上下動する多数の分割筬羽群と多数のアクチュエータ装置とを備えた構成でありながら、この筬部を織機の筬取付部に対して着脱可能であるため、既存の織機の筬部と同様に、使用する経糸の太さに応じて多数の筬羽の並設間隔を異ならせた分割筬羽群を備えた本発明の密度可変柄出し装置に付け替えて使用することも可能となる一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【0020】
また、請求項5記載の発明においては、回転検出手段によって織機の製織と同期したカウント表示が確実に行われるから、通常の運転時はもちろん、例えば糸切れなどのトラブル発生時にその発生位置まで緯糸を解いてその解いた数分再開運転開始番数変更手段により製織番数を変更して運転を再開しても、カウント表示間違いがなく、これにより織り間違いのない正確な密度可変柄を確実に形成可能となる一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【0021】
また、請求項6記載の発明においては、糸切れなどのトラブル発生時にその発生位置まで解く緯糸の番数が少ない場合には、一般的に織機を動作させて経糸を開口させながら(クランク機構を回転させながら)問題のある糸のところまで緯糸を一本ずつ解いていくという作業が行われるが、この際、修正時逆カウント手段によりクランク機構の回転に同期して製織番数表示手段の緯糸の番数が逆カウント表示されることになるため、確実に糸を解いた番数分を差し引いた番数表示がなされて運転再開時の織り間違いがない一層実用性に秀れた構成の密度可変柄出し装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
本発明の密度可変柄出し装置を織機Aに設けて織機Aの運転を開始すると、柄データに基づいた制御部(制御プログラム)の制御により多数の各アクチュエータ装置6のうちの指示されたものが駆動する。
【0024】
すると、横方向に多数並設する各分割筬羽群3Aのうちの駆動した各アクチュエータ装置6に対応するものが上動若しくは下動し、この各分割筬羽群3Aの上動若しくは下動により、例えば各分割筬羽群3Aが筬打ちする位置に設定した縦方向位置線Sで(通常筬打ち部分30Aが)緯糸2を通常通り筬打ちする状況から、この縦方向位置線Sに凹所4が位置してこの凹所4が緯糸2を小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしない状況、又は縦方向位置線Sに凸所5が位置してこの凸所5が緯糸2を大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちする状況へと切り替えられる。
【0025】
即ち、上動若しくは下動されていない分割筬羽群3Aにおいては、縦方向位置線Sで各分割筬羽群3A(の通常筬打ち部分30A)が緯糸2を通常通り筬打ちするが、アクチュエータ装置6によって上動若しくは下動された分割筬羽群3Aにおいては、前記縦方向位置線Sで前記凹所4が緯糸2を通常より弱く筬打ちするか若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしないか、又は前記凸所5が緯糸2を通常より強く筬打ちするか若しくは筬打ち位置Iを超えて筬打ちすることになるので、これにより製織物Oには、並設する緯糸2の間隔が通常の製織状態より離れて粗となる部分、若しくは並設する緯糸2の間隔がなく通常の製織状態より緯糸2がその並設方向に強く圧縮されて密となる部分が形成されることになる。
【0026】
即ち、並設する緯糸2間の密度が、通常より粗な個所若しくは通常より密な個所が存在する密度可変柄Gを有する織物Oが製織されることになる。
【0027】
尚、アクチュエータ装置6が駆動しない状態の時に縦方向位置線Sに凹所4若しくは凸所5が位置していて、アクチュエータ装置6の駆動(分割筬羽群3Aの上動若しくは下動)により通常通りの筬打ちがなされる状況に切り替えられる構成であっても良い。
【0028】
このようにして製織された織物Oの密度可変柄Gは、緯糸2の密度が通常の製織個所より粗な個所は透き目模様となって通常の製織個所とは視覚的に異なった見え方をするものになり、また、緯糸2の密度が通常の製織個所よりも密な個所も通常の製織個所とは視覚的に異なった見え方をするものになる。
【0029】
また、この密度可変柄Gは、制御プログラムへの柄データの設定により自由自在に製織柄を変更可能であるので、例えば、文字や文章や図柄を象った密度可変柄Gを形成して独特な見え方をする文字や文章や図柄が表出するような製織物Oを製織することが、経糸1や緯糸2の色を変更したりすることなしに容易に可能となる。
【0030】
従って、本実施例の密度可変柄出し装置を設けた織機Aによれば、複雑な製織処理を行って製織物に組織変化を生じさせるのではなく、例えば、単にパソコンで柄データを作成してそのデータを制御部に入力して織機Aによる通常の製織を行うだけで、例えば平織物に織密度変化を応用した従来のドビー機やジャカード機では決して表現できない密度変化柄Gの製織が可能である。
【0031】
また、柄データは、例えば既存の技術を応用してパソコンで簡易に作成可能であるし、柄データの変更も例えば記憶媒体の交換によって容易に可能であり、しかも、柄データの管理が電子データになるので保管場所もとらないし、再度使用する際の探す手間も少ない。
【0032】
また、織機Aに筬部3として本発明の密度可変柄出し装置が設けられる構成のため、織機Aに既存のドビー機やジャカード機を問題なく併用できる上にそれらでの柄出し方法を阻害することもないので、ドビー機やジャカード機との併用により様々な応用柄を製織できることが期待される。
【0033】
また、例えば、各分割筬羽群3Aを筬部3の前後方向に動かして筬打ち状況を前述のように切り替えるような構造であると、前後厚のある筬部3に構造変更したり、筬ガイド33にも構造変更を伴うものになると考えられるが、本発明では、各分割筬羽群3Aを上下方向に動かす構造のため、筬部3の前後幅をほとんど変更することなしに構成できるし、既存の筬ガイド33を使用して上下動する構成を実現可能であるなど、容易に設計実現可能である。
【実施例1】
【0034】
本発明の具体的な実施例1について図1〜図11に基づいて説明する。
【0035】
図1は、織機A(和装織機A)を示している。この織機Aを概略的に説明すると、詳細な図示は省略しているが、複数枚の綜絖8が図1に示すように奥行き方向に並設されていて、例えばそのうちの半数には多数の経糸1のうちの偶数番の経糸1が通され、あとの半数には奇数番の経糸1が通されて、図2に示すようにこの偶数番の経糸1を通した一若しくは複数の綜絖8と、奇数番の経糸1を通した一若しくは複数の綜絖8とを図中矢印Y1のように互い違いに上下動させて偶数と奇数の経糸1を開口し、この開口に図中矢印Y2のようにシャトル9によって緯糸2を通した後、図中矢印Y3のように経糸1に沿って可動する筬羽30(筬部3)により緯糸2を筬打ちして織物Oを製織する構成である。
【0036】
本実施例は、例えばこの図1に示したような和装織機Aに、筬部3として設けて使用する密度可変柄出し装置である。
【0037】
具体的には、筬部3を分割して一若しくは複数の筬羽30を一体とした分割筬羽群3Aが横方向に多数並設する構成とすると共に、この各分割筬羽群3Aの夫々を個別に上下動可能に設けている。
【0038】
更に詳しくは、既存の織機Aの筬部には、通常縦長帯板状の筬羽30が経糸1を通すことができる小間隔を置いて多数並設状態に設けられているが、本実施例では、この多数枚の筬羽30を目的(製織したい柄)の幅(例えば10mm)に応じた枚数分に分割し、この分割した複数の筬羽30を一まとめ(一体)にして並設すると共に、この一体にした複数枚の各筬羽30の上下端部に支持部材31を当接状態に配設したものを前記分割筬羽群3Aとしている。そして、この各分割筬羽群3Aを図4に示すように横方向に多数並設して筬部3を構成している。また、本実施例では、目的に応じ、この支持部材31の幅を変更することで異なる枚数の筬羽30を一まとめとした分割筬羽群3Aを構成することもできる。
【0039】
また、本実施例の筬部3は、図5に示した横長板状の取付基体32の上部寄りの一箇所と中程の上下二箇所とに横長の取付溝32Aを凹設し(図6参照。)、この各取付溝32Aに、多数の前記分割筬羽群3Aを装備した(分割筬羽群3Aの各筬羽30を挿通した)横長の筬ガイド33を着脱自在に嵌合し、この嵌合した三箇所の各筬ガイド33の前側(図5の手前側,図6の左側)に配したカバー体34の左右両端部を夫々取付基体32にボルト11止めすることで、各筬ガイド33をカバー体34と共に取付基体32に固定している。尚、筬ガイド33は、図3に示すように既存の織機Aの筬部に設けられるものと同等の構成を有するものとしている。図中符号13は、分割筬羽群3Aと取付基体32との間に介存させて筬打ちする時の衝撃を吸収する衝撃緩衝材である。
【0040】
従って、この取付基体32に取付られた三箇所の筬ガイド33に対して各分割筬羽群3Aが抜け止め状態に装着されると共に、この三箇所の筬ガイド33にガイドされて各分割筬羽群3Aが上下方向にスライド移動可能となるように設けている。また、カバー体34を、前記ボルト11止めを解除して取り外すことで、筬ガイド33と共に各分割筬羽群3Aを取付基体32から取り外しでき、筬ガイド33からバラした多数の筬羽30を、異なる筬ガイド33(筬羽30を異なる並設間隔でガイド装着する別の筬ガイド33)を用いて組み直すことができる(使用する経糸1の太さに応じて筬羽30の並設間隔が異なる分割筬羽群3Aを有する筬部3に組み直すことがきる)構成としている。
【0041】
また、前記各分割筬羽群3Aの上端側の前記支持部材31に、上方へ立設する支持部材31より径小なガイド杆部31Aを突設すると共に、下端側の支持部材31にも下方へ垂設する支持部材31より径小なガイド杆部31Aを突設し、前記取付基体32の前記上部寄りの筬ガイド33より上方位置に設けた上側ガイド部35に上端側の支持部材31のガイド杆部31Aをスライド自在に挿通すると共に、取付基体32の中程の下側の筬ガイド33より下方位置に設けた下側ガイド部36に下端側の支持部材31のガイド杆部31Aをスライド自在に挿通している。
【0042】
従って、この上下の支持部材31が上側ガイド部35と下側ガイド部36とにぶつかることで分割筬羽群3Aが上下方向に抜け止め状態となる構成とすると共に、上側ガイド部35と下側ガイド部36間で分割筬羽群3Aが上下方向にスライド移動可能となるように構成している。
【0043】
また、上側ガイド部35内には、抗縮弾性を有する弾性体10(コイルバネ)を多数の分割筬羽群3Aと同数内装すると共に、この各弾性体10を各分割筬羽群3Aの上端に位置する前記ガイド杆部31Aに当接した構成とし、この弾性体10の付勢力によって各分割筬羽群3Aが常に下方へ付勢されると共に、上端側の支持部材31と下端側の支持部材31とが多数の筬羽30の上下端部に圧接する状態に維持される構成としている。
【0044】
また、この各分割筬羽群3Aには、この各分割筬羽群3Aが緯糸2を筬打ちする位置に設定した縦方向位置線Sで緯糸2を筬打ち位置Iまで筬打ちするに際して、その筬打ち度を小さくして若しくは筬打ち位置Iまで筬打ちしないで緯糸2間を通常より粗にする凹所4を設けている。尚、筬打ち位置Iとは、分割筬羽群3A(の通常筬打ち部分30A)が緯糸2を通常通り筬打ちする際に、(筬部3が筬打ち方向の可動限位置に達して)緯糸2を最大限打ちつけした位置を示している(図8参照。)。
【0045】
具体的には、図7に示すように前記各分割筬羽群3Aを構成する各筬羽30のひとつひとつの筬打ち表面(各筬羽30の前側の長手方向縁)であって、前記縦方向位置線Sで通常通り筬打ちする通常筬打ち部分30Aの下部近傍位置を略台形状に凹設して凹部4Aを形成し、この各凹部4Aを前記凹所4としている。
【0046】
また、この凹部4Aは、分割筬羽群3Aが通常の状態(前記弾性体10によって下動限位置に付勢維持されて上動していない状態)では、前記縦方向位置線Sに前記通常筬打ち部分30Aが位置して通常の筬打ちがなされ(図8の(a)参照。)、分割筬羽群3Aが通常の状態から弾性体10の付勢力に抗して上動した状態(図7,図8の(b)参照。)へと移動すると、縦方向位置線Sに凹部4A(凹所4)が位置してこの凹所4により筬打ち時に緯糸2が筬打ち位置Iまで筬打ちされない状態となるように分割筬羽群3A(各筬羽30)への形成位置を設定している。
【0047】
また、この凹所4は、図8の(b)に示すように、筬打ち方向の深さを、筬打ち時にこの凹所4が緯糸2に接触することのない深さに設定して、筬打ち時に緯糸2が筬打ち位置Iまで筬打ちされない構成としている。尚、本実施例より凹所4(凹部4A)の深さを浅く設定して、筬打ち時に凹所4が緯糸2に接触し弱く筬打ちする構成でも良い。即ち、凹所4が筬打ちするがその筬打ち度(筬打ち量(長))を小さくする構成でも良い。
【0048】
尚、凹所4を深く形成しても、この凹所4の深さ分だけ緯糸2の間隔が広くなる訳ではなく、実際は通常通り筬打ちされている緯糸2箇所につられて凹所4の個所も間隔はある程度まで狭まってしまうため、この凹所4は、既存の筬羽に対してその前後幅を広げなければならない程まで深く形成する必要はない。即ち、既存の筬羽の構成部品を用いて本実施例の凹部4A付の筬羽30は構成可能である。
【0049】
本実施例では、多数の各分割筬羽群3Aを前記弾性体10の付勢力に抗して上動させる多数のアクチュエータ装置6を前記筬部3に設けて、この各アクチュエータ装置6の駆動による各分割筬羽群3Aの上動により、前記縦方向位置線Sで通常筬打ち部分30Aが緯糸2を筬打ちする状況が、縦方向位置線Sに前記凹所4が位置してこの凹所4が緯糸2を筬打ち位置Iまで筬打ちしない状況へと切り替えられる構成としている。
【0050】
具体的には、アクチュエータ装置6は、エアシリンダを採用して構成し、前記多数の各分割筬羽群3Aと同数を有すると共に、この各分割筬羽群3Aの下部近傍に配置して、この多数のアクチュエータ装置6の一つ一つが分割筬羽群3Aを一つ一つ上動移動させる構成とし、エアシリンダを駆動停止すると前記弾性体10の付勢力により各分割筬羽群3Aは自動的に下動する(元の位置に戻る)構成としている。
【0051】
また、この多数のアクチュエータ装置6は、前記取付基体32の前記下側ガイド部36の下方に設けた固定部材37によって各分割筬羽群3Aの下部近傍に配置固定した構成とし、このアクチュエータ装置6を構成するエアシリンダのピストン6Aの先端を、下側ガイド部36に挿通した各分割筬羽群3Aの下端側の支持部材31より垂設する前記ガイド杆部31Aの下端に当接若しくは接続してこのエアシリンダの駆動(ピストン6A)の上動に連動して分割筬羽群3Aが上動移動する構成としている(図3参照。)。
【0052】
そして、分割筬羽群3Aがアクチュエータ装置6によって上動すると、それまで縦方向位置線Sに位置していた通常筬打ち部分30Aの下部近傍に存する凹所4が縦方向位置線Sへと移動(上動)して位置することになり、この状況で筬打ち動作がなされても、凹所4は緯糸2を筬打ち位置Iまで筬打ちせず、よって並設する緯糸2間が詰まらず僅かに隙間が生じた状態になる。即ち、筬打ち位置Iまで筬打ちしないことによって緯糸2の密度が通常より粗な個所が形成されることになる構成としている。
【0053】
また、このアクチュエータ装置6を備えた筬部3の、織機Aへの取付構造について説明すると、織機Aに備えられた既存の筬取付部7に筬部3の前記取付基体32の中程と上部左右部とを着脱自在にボルト12止めした構成としている(図1,図6参照。)。
【0054】
従って、本実施例の筬部3は、ボルト12止めを解除することで筬取付部7に対して取り外し可能であるので、既存の織機Aの筬部と同様に、使用する経糸1の太さに応じて多数の筬羽30の並設間隔を異ならせた(異なる筬ガイド33を装備した)多数の分割筬羽群3Aを有する筬部3を付け替えて使用することが可能である。また、前述したように筬部3の筬ガイド33を取付基体32から取り外しできるので、筬取付部7から筬部3を取り外し、筬ガイド33を取付基体32から取り外して別の筬ガイド33と共に多数の筬羽30の並設間隔を異なるように組み直すこともでき、この組み直した筬部3を筬取付部7に再び付け直すようにして使用することも可能である。
【0055】
また、本実施例では、前記各アクチュエータ装置6の選択駆動によりどの分割筬羽群3Aを上下動させるかを制御する制御プログラムを備えた制御部を設けている。
【0056】
具体的には、制御部(図示省略)は、前記筬部3とは別体に設けられた演算処理装置(例えば、PLC(プログラマブルロジックコントローラー))によって構成している。
【0057】
本実施例では、汎用ソフトウェアのエクセル(登録商標)VBAを用いて柄を作成するデータ作成手段(ソフト)を開発し、このソフトを使用してパソコンで柄データを作成して入力する。このソフトについて詳しく説明すると、ディスプレイ画面に表示される意匠紙(升目)に柄を書き込むだけで製織データが作成されるもので、この製織柄データが各分割筬羽群3Aの上動駆動データとなり、前記多数のアクチュエータ装置6を駆動制御して指示した個所で分割筬羽群3Aの上動を実行させ、緯糸2を打ち込みながら密度差のある柄(密度可変柄G)を製織する。
【0058】
また、本実施例では、前記筬部3の筬打ち運動の運転基準となる織機Aのクランク機構(図示省略)の回転軸の回転位置を検出する回転検出手段を備え、この回転検出手段により織り込んだ緯糸2の番数若しくは次に織り込む番数をカウント表示する製織番数表示手段と、前記製織番数を変更して開始操作することでその変更番数若しくはその次の番数から改めて予め設定された柄データに基づいて前記各アクチュエータ装置6を駆動制御する再開運転開始番数変更手段を前記制御プログラムに備えている。
【0059】
また、糸切れなどで製織の修正を要する際に、前記クランク機構の回転に同期して前記製織番数表示手段の緯糸2の番数を逆カウント表示する修正時逆カウント手段を前記制御プログラムに備えている。
【0060】
具体的には、回転検出手段はロータリーエンコーダー(センサー)を採用し、このロータリーエンコーダーによりクランク機構の回転軸が360度回転したことが検出される構成としている。即ち、クランク機構の回転軸が360度回転する度に偶数番の経糸1と奇数番の経糸1との開口に緯糸2が通るので、これを1カウントする構成である。
【0061】
また、この回転検出手段としてのロータリーエンコーダーは、クランク機構の回転軸の回転位置を8領域に区分けして回転軸がどの回転位置にあるのかを検出する構成とし、このロータリーエンコーダーによる領域検出信号を前記制御部に取り込み、この信号に合わせて各アクチュエータ装置6を各々駆動させるように制御部が信号を出すことにより制御プログラムの柄データ通りに多数の分割筬羽群3Aを上動させて密度変化柄Gを織り込むと共に、このロータリーエンコーダーによる領域検出により後述するトラブル発生時のカウント戻し時にカウント間違いを生じない構成としている。
【0062】
また、この回転検出手段による緯糸2のカウントは、緯糸2数を1からカウントするか、0からカウントするか、即ち、現在織り込んだ緯糸2の番数をカウントする構成か、次に織り込む緯糸2の番数をカウントする構成かのどちらを採用しても良いが、本実施例では、次に織り込む緯糸2の番数をカウントする構成を採用している。
【0063】
また、前記制御部にディスプレイ装置(図示省略)を設け、前記製織番数表示手段によりこのディスプレイ装置に緯糸2の番数がデジタル数字で表示される構成としている。
【0064】
また、このディスプレイ装置には、タッチパネル式の入力機能を設け、このディスプレイ装置をタッチ操作することで運転開始番数を変更でき、この変更番数に基づいて前記再開運転開始番数変更手段により、改めてアクチュエータ装置6が正しく駆動制御される構成としている。
【0065】
また、このディスプレイ装置には、正転ボタンと逆転ボタンとが表示される構成とし、逆転ボタンを押すと前記クランク機構の回転に同期して前記修正時逆カウント手段により前記製織番数表示手段の緯糸2の番数が逆カウント表示される構成とし、この逆カウント表示状態から正転ボタンを押すと、カウント表示が通常通りに戻る構成としている。
【0066】
また、このディスプレイ装置には、アクチュエータ装置6と同数の絵柄が表示され、現在どのアクチュエータ装置6がどのように制御されているのかを目視確認できるように構成している。
【0067】
また、このディスプレイ装置には、織機Aの運転開始ボタン、運転停止ボタンが表示される構成としている。
【0068】
以上のように構成した本実施例の密度可変柄出し装置を設けた織機Aの作動を説明する。
【0069】
先ず、準備作業として、制御部へ入力する柄データをパソコンで作成し、これを入力する。
【0070】
織機Aを運転開始位置に移動し、ディスプレイ装置に開始したい緯糸2の番号を入力した後、ディスプレイ装置の運転開始ボタンを押し、織機Aを作動させる。
【0071】
製織運転中は、回転検出手段によって緯糸2の本数がカウントされる。
【0072】
また、製織運転中は、回転検出手段の信号と次の緯糸2のデータから、制御プログラムに基づいた制御部の制御より織機Aの動作に対応したタイミングでアクチュエータ装置6の制御、緯糸2の本数を数える処理を行う(同期運転が行われる。)。
【0073】
各アクチュエータ装置6が上動制御されていないところでは、図9の(a),(b)に示すように、各分割筬羽群3Aの通常筬打ち部分30Aで筬打ちがなされて通常通りの緯糸2間が均一に密になる製織が行われる。
【0074】
各アクチュエータ装置6が上動制御されると、緯糸2に筬打ち位置Iまで筬打ちしない部分が形成され、織物Oに並設する緯糸2間の密度が通常より粗な個所を有する密度可変柄Gが織込されることになる。
【0075】
例えば、図10の(a),(b)では、アクチュエータ装置6が一つおきに駆動するように制御されて分割筬羽群3Aが一つおきに上動している状態を説明しており、上動していない分割筬羽群3Aは、縦方向位置線Sに通常筬打ち部分30Aが位置して通常通りの筬打ちがなされ、上動している分割筬羽群3Aは、縦方向位置線Sに前記凹所4が位置して緯糸2を通常の筬打ち位置Iまで筬打ちしない。つまり、この筬打ちしない緯糸2部位は、その前に織り込まれている緯糸2より離れた状態となっており、この部位の緯糸2は並設する緯糸2間が通常より粗となる透き目柄になる。尚、図9,図10では、各分割筬羽群3Aを構成する筬羽30の枚数を、図3に示したものとは異ならせた場合を示している。
【0076】
このような動作を連続して行い、例えば図11に示すような密度可変柄Gを有する織物Oを製織することが可能である。
【0077】
また、製織途中で織物Oの修正を要する場合、即ち、製織運転中に、織物Oに糸切れなどのトラブルが発生(作業者が目視確認)した場合は、作業者が織機Aの運転を停止してディスプレイ装置の運転停止ボタンを押す。
【0078】
そして、問題のある糸のところまで緯糸2を解いてその問題の糸を取り除くが、この際、解かなければならない緯糸2の番数が少ない場合には、ディスプレイ装置の前記逆転ボタンを押し、織機Aを動作させて経糸1を開口させながら(クランク機構を回転させながら)問題のある糸のところまで緯糸2を一本ずつ解いていくと、前記修正時逆カウント手段によりクランク機構の回転に同期して前記製織番数表示手段の緯糸2の番数が逆カウント表示されることになる。
【0079】
そして、問題のある糸を取り除いた後、前記正転ボタンを押し、運転開始ボタンを押して織機Aを運転再開すると、カウント表示が解いた緯糸2の番数分正しく戻っているので織り間違いがなく引き続いて製織がなされ、且つ引き続いて正しいカウント表示がなされることになる。
【0080】
一方、解かなければならない緯糸2の番数が多い場合には、前述のようにして織機Aを動作させながら一本づつ糸を解いていくと時間がかかって作業効率が悪いので、緯糸2の両端部を切断して多数の糸を一気に取り除く。
【0081】
そして、取り除いた糸の本数分緯糸2のカウント数を戻してディスプレイ装置に入力し、運転開始ボタンを押して織機Aを運転再開すると、織り間違いなく引き続いて製織がなされることになる。
【0082】
従って、このような糸切れ時には、解かなければならない緯糸2の本数に応じて二通りの修正手段を選択することができるので非常に実用的となると共に、いずれの修正手段を採用した場合においても、運転再開時に織り間違いなく引き続いて製織を行うことができる。
【0083】
以上のように構成した本実施例によれば、実質的に、既存の織機Aの筬部を本実施例の多数の分割筬羽群3Aと多数のアクチュエータ装置6とを備えた筬部3に付け替えするだけで密度可変柄Gを有する織物Oを製織できる。
【0084】
尚、本実施例の可変柄出し装置は、和装織機Aに限らず、本実施例と異なる緯入れ方式の織機Aにも適用可能である。
【実施例2】
【0085】
本発明の具体的な実施例2について図12,図13に基づいて説明する。
【0086】
本実施例は、前記実施例1において、前記各分割筬羽群3Aの構成を異ならせた場合である。
【0087】
即ち、本実施例の各分割筬羽群3Aは、各筬羽30の通常筬打ち部分30Aの下部近傍に、前記実施例1のような凹所4を設ける構成でなく、図12に示すような縦方向位置線Sで、筬打ち時にその筬打ち度を大きくして若しくは筬打ち位置Iを超えて強く筬打ちして並設する緯糸2間を通常より密にする凸所5を設けている。
【0088】
具体的には、前記各分割筬羽群3Aを構成する各筬羽30のひとつひとつの筬打ち表面であって、前記縦方向位置線Sで通常通り筬打ちする通常筬打ち部分30Aの下部近傍位置を略台形状に凸設して凸部5Aを形成し、この各凸部5Aを前記凸所5としている。
【0089】
また、この凸部5Aは、分割筬羽群3Aが通常の状態(上動していない状態)では、前記縦方向位置線Sに前記通常筬打ち部分30Aが位置して通常の筬打ちがなされ、分割筬羽群3Aが通常の状態から上動した状態へと移動すると、縦方向位置線Sに凸部5A(凸所5)が位置してこの凸所5により筬打ち時に緯糸2が筬打ち位置Iを超えて強く筬打ちされる状態となるように分割筬羽群(各筬羽30)への形成位置を設定している。
【0090】
従って、このように各分割筬羽群3Aを構成した本実施例の密度可変柄出し装置を設けた織機Aによれば、制御プログラムに基づいた制御部の制御により各アクチュエータ装置6を上動させて緯糸2に通常よりも強く筬打ちする部分を形成して、織物Oに並設する緯糸2間の密度が通常より密な個所を有する密度可変柄Gを織込することができる。
【0091】
例えば、図13の(a),(b)では、アクチュエータ装置6が一つおきに駆動して分割筬羽群3Aが一つおきに上動している状態を示しており、上動していない分割筬羽群3Aは、縦方向位置線Sに通常筬打ち部分30Aが位置して通常通りの筬打ちがなされ、上動している分割筬羽群3Aは、縦方向位置線Sに前記凸所5が位置して緯糸2を通常の筬打ち位置Iを超えて強く筬打ちする。つまり、この強く筬打ちされる緯糸2部位は、その前に織り込まれている緯糸2に対して間隔がなく通常の製織状態より緯糸2がその並設方向に強く圧縮された状態となっており、この部位の緯糸2は並設する緯糸2間が通常より密となって密度可変柄Gが製織される。尚、図13では、各分割筬羽群3Aを構成する筬羽30の枚数を、図3に示したものとは異ならせた場合を示している。
【0092】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【実施例3】
【0093】
本発明の具体的な実施例3について図14に基づいて説明する。
【0094】
本実施例も、前記実施例1において、前記各分割筬羽群3Aの構成を異ならせた場合である。
【0095】
即ち、本実施例の各分割筬羽群3Aは、各筬羽30の通常筬打ち部分30Aの下部近傍に前記実施例1と同様の構成の凹所4(凹部4A)を設け、更にこの凹所4の下部近傍に前記実施例2と同様の構成の凸所5(凸部5A)を設けた構成としている。
【0096】
また、本実施例の各アクチュエータ装置6は、各分割筬羽群3Aを異なる二段階の高さに上動させることができるように制御され、この制御により通常筬打ち部分30Aが前記縦方向位置線Sに位置する状況(図14の想像線)と、前記凹所4が縦方向位置線Sに位置する状況(図14の(a))と、前記凸所5が縦方向位置線Sに位置する状況(図14の(b))とを、三段階に切り替えできる構成としている。
【0097】
即ち、このように構成した本実施例の密度可変柄出し装置を設けた織機Aによれば、並設する緯糸2間が通常より粗となる透き目柄と、並設する緯糸2間が通常より密となる柄とが混在する密度可変柄Gを有する織物Oを製織することができる。
【0098】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【0099】
尚、本発明は、実施例1〜3に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例1の織機を示す斜視図である。
【図2】実施例1の概略説明斜視図である。
【図3】実施例1の分割筬羽群を示す部分拡大説明図である。
【図4】実施例1の作動を示す概略説明図である。
【図5】実施例1を示す一部を切り欠いた説明正面図である。
【図6】実施例1と織機(筬取付部)との取付構造を示す説明側面図である。
【図7】実施例1の分割筬羽群の作動を示す概略説明側面図である。
【図8】実施例1の分割筬羽群の通常筬打ち部分での筬打ち状態と、凹所での筬打ち状態とを示す拡大説明側面図である。
【図9】実施例1の分割筬羽群の通常筬打ち部分による筬打ちを示した説明図である。
【図10】実施例1の分割筬羽群の凹所による筬打ちを示した説明図である。
【図11】実施例1を設けた織機で製織した密度可変柄を有する織物を示す説明図である。
【図12】実施例2の分割筬羽群の作動を示す概略説明側面図である。
【図13】実施例2の分割筬羽群の凸所による筬打ちを示した説明図である。
【図14】実施例3の分割筬羽群の作動を示す概略説明側面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 経糸
2 緯糸
3 筬部
3A 分割筬羽群
4 凹所
4A 凹部
5 凸所
5A 凸部
6 アクチュエータ装置
7 筬取付部
30 筬羽
30A 通常筬打ち部分
A 織機
G 密度可変柄
I 筬打ち位置
O 織物
S 縦方向位置線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸に沿って可動して上下の経糸間に通された緯糸を筬打ちする筬羽を備えた筬部を有する織機に設ける密度可変柄出し装置であって、前記筬部を分割して一若しくは複数の筬羽を一体とした分割筬羽群が横方向に多数並設する構成とすると共に、この各分割筬羽群の夫々を個別に上下動可能に設け、この各分割筬羽群が緯糸を筬打ちする位置に設定した縦方向位置線で筬打ち位置まで筬打ちするに際して、その筬打ち度を小さくして若しくは筬打ち位置まで筬打ちしないで緯糸間を通常より粗にする凹所を各分割筬羽群に設けるか又はその筬打ち度を大きくして若しくは筬打ち位置を超えて筬打ちして緯糸間を通常より密にする凸所を各分割筬羽群に設け、この多数の各分割筬羽群を上動若しくは下動せしめる多数のアクチュエータ装置を前記筬部に設けて、この各アクチュエータ装置の駆動による各分割筬羽群の上動若しくは下動により前記縦方向位置線で各分割筬羽群が緯糸を通常通り筬打ちする状況と、前記凹所が小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置まで筬打ちしない状況又は前記凸所が大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置を超えて筬打ちする状況とを切り替え可能に設けると共に、この各アクチュエータ装置の選択駆動によりどの分割筬羽群を上下動させるかを制御する制御プログラムを備えた制御部を設けたことを特徴とする密度可変柄出し装置。
【請求項2】
前記各分割筬羽群の、前記縦方向位置線で通常通り筬打ちする通常筬打ち部分の上部近傍若しくは下部近傍に前記凹所若しくは前記凸所を設け、この各分割筬羽群を前記各アクチュエータ装置の駆動により上動若しくは下動させると、前記縦方向位置線で前記通常筬打ち部分が緯糸を通常通り筬打ちする状況と、前記凹所が小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置まで筬打ちしない状況又は前記凸所が大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置を超えて筬打ちする状況とが切り替えられる構成としたことを特徴とする請求項1記載の密度可変柄出し装置。
【請求項3】
前記各分割筬羽群の筬打ち表面に凹部若しくは凸部を形成して、この凹部を前記凹所とし若しくはこの凸部を前記凸所としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置。
【請求項4】
前記筬部は、前記織機に備えられている筬取付部に対して着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置。
【請求項5】
前記筬部の筬打ち運動の運転基準となる前記織機のクランク機構の回転軸の回転位置を検出する回転検出手段を備え、この回転検出手段により織り込んだ緯糸の番数若しくは次に織り込む番数をカウント表示する製織番数表示手段と、前記製織番数を変更して開始操作することでその変更番数若しくはその次の番数から改めて予め設定された柄データに基づいて前記各アクチュエータ装置を駆動制御する再開運転開始番数変更手段を前記制御プログラムに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置。
【請求項6】
糸切れなどで製織の修正を要する際に、前記織機の前記クランク機構の回転に同期して前記製織番数表示手段の緯糸の番数を逆カウント表示する修正時逆カウント手段を前記制御プログラムに備えたことを特徴とする請求項5記載の密度可変柄出し装置。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置を設けた織機を使用し、制御プログラムに基づいた制御部の制御により各アクチュエータ装置を上動若しくは下動させて緯糸に小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置まで筬打ちしない部分又は大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置を超えて筬打ちする部分を形成して、織物に緯糸間の密度が通常より粗な個所又は緯糸間の密度が通常より密な個所を有する密度可変柄を織込することを特徴とする密度可変柄出し織物の製造方法。
【請求項1】
経糸に沿って可動して上下の経糸間に通された緯糸を筬打ちする筬羽を備えた筬部を有する織機に設ける密度可変柄出し装置であって、前記筬部を分割して一若しくは複数の筬羽を一体とした分割筬羽群が横方向に多数並設する構成とすると共に、この各分割筬羽群の夫々を個別に上下動可能に設け、この各分割筬羽群が緯糸を筬打ちする位置に設定した縦方向位置線で筬打ち位置まで筬打ちするに際して、その筬打ち度を小さくして若しくは筬打ち位置まで筬打ちしないで緯糸間を通常より粗にする凹所を各分割筬羽群に設けるか又はその筬打ち度を大きくして若しくは筬打ち位置を超えて筬打ちして緯糸間を通常より密にする凸所を各分割筬羽群に設け、この多数の各分割筬羽群を上動若しくは下動せしめる多数のアクチュエータ装置を前記筬部に設けて、この各アクチュエータ装置の駆動による各分割筬羽群の上動若しくは下動により前記縦方向位置線で各分割筬羽群が緯糸を通常通り筬打ちする状況と、前記凹所が小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置まで筬打ちしない状況又は前記凸所が大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置を超えて筬打ちする状況とを切り替え可能に設けると共に、この各アクチュエータ装置の選択駆動によりどの分割筬羽群を上下動させるかを制御する制御プログラムを備えた制御部を設けたことを特徴とする密度可変柄出し装置。
【請求項2】
前記各分割筬羽群の、前記縦方向位置線で通常通り筬打ちする通常筬打ち部分の上部近傍若しくは下部近傍に前記凹所若しくは前記凸所を設け、この各分割筬羽群を前記各アクチュエータ装置の駆動により上動若しくは下動させると、前記縦方向位置線で前記通常筬打ち部分が緯糸を通常通り筬打ちする状況と、前記凹所が小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置まで筬打ちしない状況又は前記凸所が大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置を超えて筬打ちする状況とが切り替えられる構成としたことを特徴とする請求項1記載の密度可変柄出し装置。
【請求項3】
前記各分割筬羽群の筬打ち表面に凹部若しくは凸部を形成して、この凹部を前記凹所とし若しくはこの凸部を前記凸所としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置。
【請求項4】
前記筬部は、前記織機に備えられている筬取付部に対して着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置。
【請求項5】
前記筬部の筬打ち運動の運転基準となる前記織機のクランク機構の回転軸の回転位置を検出する回転検出手段を備え、この回転検出手段により織り込んだ緯糸の番数若しくは次に織り込む番数をカウント表示する製織番数表示手段と、前記製織番数を変更して開始操作することでその変更番数若しくはその次の番数から改めて予め設定された柄データに基づいて前記各アクチュエータ装置を駆動制御する再開運転開始番数変更手段を前記制御プログラムに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置。
【請求項6】
糸切れなどで製織の修正を要する際に、前記織機の前記クランク機構の回転に同期して前記製織番数表示手段の緯糸の番数を逆カウント表示する修正時逆カウント手段を前記制御プログラムに備えたことを特徴とする請求項5記載の密度可変柄出し装置。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の密度可変柄出し装置を設けた織機を使用し、制御プログラムに基づいた制御部の制御により各アクチュエータ装置を上動若しくは下動させて緯糸に小さい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置まで筬打ちしない部分又は大きい筬打ち度で筬打ちする若しくは筬打ち位置を超えて筬打ちする部分を形成して、織物に緯糸間の密度が通常より粗な個所又は緯糸間の密度が通常より密な個所を有する密度可変柄を織込することを特徴とする密度可変柄出し織物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−179921(P2008−179921A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15510(P2007−15510)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(592102940)新潟県 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(592102940)新潟県 (41)
【Fターム(参考)】
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