説明

寸法安定性を有する厚い赤外線吸収発泡体

第1及び第2ポリマー発泡体を一緒に層状の配向を成すように貼り合わせて少なくとも50ミリメートル厚の物品を製造することにより、寸法安定性を有するポリマー物品を調製する。少なくとも第1発泡体は赤外吸収剤を含有し、二酸化炭素を含有する発泡剤を用いて調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2009年8月5日付けで出願された米国仮出願番号61/231,440号明細書の優先権を主張する。前記明細書は、参照することにより本明細書中に組み入れられる。
【0002】
本発明は、赤外線吸収剤を含有するポリマー発泡体物品を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
構造物のエネルギー効率を高めるために、建築及び建設の用途において断熱ポリマー発泡体物品を使用するのが一般的である。しかし、発泡剤組成に対する規制事項が増えていることにより、高い断熱能力を有するポリマー発泡体を調製するのがますます難しくなっている。
【0004】
環境的に許容し得る発泡剤からポリマー発泡体を調製することが、環境保全のために望ましい。長年にわたって、ハロゲン化発泡剤は、断熱ポリマー発泡体を製造する業界において標準であった。ハロゲン化発泡剤は、ポリマーを発泡させて発泡体を形成し、また発泡体セル内に存在する断熱体を形成する能力において利益をもたらす。ハロゲン化発泡剤の使用を制限する規制が、環境に有害な影響を及ぼす懸念に基づいて世界的に増大している。天然素材化合物、例えば二酸化炭素が、天然に生じ、且つ非ハロゲン化発泡剤として特に関心を集めている。
【0005】
発泡剤として二酸化炭素を使用することは、望ましい寸法安定性を有するポリマー発泡体を達成する上での問題となる。二酸化炭素は、空気がセル内へ充満するよりも速くポリマー発泡体セルから抜け出る。結果として、二酸化炭素を含有するポリマー発泡体は、二酸化炭素が抜け出て、これにより、空気が充満して二酸化炭素と置き換わることができるまで発泡体セル内に真空を形成するのに伴って、時間とともに収縮し、歪み、曲がり、潰れるか、又はこれらのいずれかの組み合わせを生じさせる傾向がある。この影響は、発泡体が厚くなるに伴って特に明らかになる。このような寸法不安定性は、ポリマー発泡体の歪み、曲げ、収縮、又はこれらの組み合わせのいずれかを生じさせるので望ましくない。このような望ましくない影響は、炎天下の現場に置かれた二酸化炭素含有発泡体にとって特に厄介であることがある。二酸化炭素透過率は温度とともに高くなる。従って、発泡体が日なたで温まるにつれて、加熱された発泡体部分は、より低温の発泡体部分よりも高速で真空になり、その結果歪み又は曲げが生じる。
【0006】
赤外減衰剤、例えば赤外線吸収添加剤が、断熱ポリマー発泡体物品への望ましい添加剤である。なぜならば、これらは発泡体の断熱特性を増強するからである。しかしながら、赤外線吸収剤、例えばカーボンブラック及びグラファイトを発泡体内に含むと、発泡体が赤外線を吸収する傾向が高まり、このことは発泡体の温度を高くする。ポリマー発泡体の温度を高くすることは、特に、発泡体がそのセル内に二酸化炭素を含有する場合、発泡体の寸法安定性にとって特に問題をはらむ。発泡体を速く加熱すればすれほど、又は高い温度に加熱すればするほど、二酸化炭素が発泡体セルから逃げるのが容易になり、そして特に日光が発泡体の一方の表面に当たり、他方の表面に当たらない場合のように加熱が不均一である場合、寸法不安定性を招く。結果として、発泡体の赤外線吸収特性と寸法安定性とのバランスをとるのに苦心することになる。
【0007】
ポリマー発泡体厚を増大させることも、断熱ポリマー発泡体にとって望ましい場合がある。なぜならば、厚さを増大させると、断熱バリアが大きくなるからである。しかし厚さを増大させると、特に、日光が一方の側に当たるのに対して冷たい地面が反対側に接触している場合には、発泡体の一方の側から他方の側への温度勾配が大きくなるおそれがある。発泡体が二酸化炭素を含有する場合には、二酸化炭素は、低温側よりも速く高温側から速く抜け出す傾向があり、その結果発泡体が曲がることになる。
【0008】
欧州特許第1754745号明細書は、ポリマー発泡体の表面を高反射被膜で被覆することによる、赤外線の存在におけるポリマー発泡体の寸法安定性を得るための解決手段を提供する。
【0009】
ドイツ国特許第2710402号明細書は、低密度発泡体の寸法安定性を安定化させるために、高密度ポリマー発泡体を低密度ポリマー発泡体に積層することにより、寸法不安定性を低減することを提案している。しかし、構造内に高密度発泡体を含むことは、高密度発泡体が典型的にはコストを増大させるので、断熱構造にとって望ましくない。
【0010】
欧州特許第1213118号明細書には、結合された2つの発泡体パネル間の拡散性を高めるために、スキン及びこれらの付着表面なしで、押出しポリマー発泡体を互いに積層することが開示されている。
【0011】
寸法不安定を経験することなしに断熱特性を最大化するように、赤外線吸収剤を含む、二酸化炭素を有する厚い(少なくとも50ミリメートル厚)断熱発泡体を製造することが可能であることが望ましい。表面に高反射被膜を有しない、そして/又は高密度及び低密度のポリマー発泡体の組み合わせを含まないような断熱発泡体を製造できることが特に望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に導く研究における驚くべき発見は、二酸化炭素を吹き込まれた断熱発泡体の寸法安定性の問題点が、発泡体の厚さが50ミリメートル以上である場合に最も明らかになることである。本発明は、目立った歪み、収縮、又は曲げ(すなわち寸法不安定性がある)のない、赤外線吸収剤を含有する、二酸化炭素で形成された少なくとも50ミリメートル厚の断熱発泡体を調製することの問題に対して予想外の解決手段をもたらす。本発明は、少なくとも1枚が赤外線吸収剤を含有するポリマー発泡体シートを、層状の配向を成すように貼り合わせることによりこの問題を解決する。赤外線吸収剤を含有するポリマー発泡体の寸法安定性は、赤外線吸収剤を含有しないポリマー発泡体の寸法安定性よりも達成するのが難しい。赤外線吸収剤が存在することによって、ポリマー発泡体は露出面で赤外線を容易に吸収するようになり、このことはポリマー発泡体の温度勾配を容易にもたらし得る。本発明は、反射被膜又は高密度発泡体と低密度発泡体との組み合わせに頼ることなしに、この問題を解決することができる。
【0013】
本発明の驚くべき解決手段は、複数の薄い断熱発泡体ボードを層状の配向を成すように互いに化学的又は機械的に貼り合わせることにより、少なくとも50ミリメートル厚の断熱発泡体を調製することであり、この場合、発泡体の少なくとも1つは二酸化炭素を用いて形成されており、そして赤外線吸収剤を含有している。
【0014】
第1の態様では、本発明は、ポリマー発泡体物品を調製する方法であって、(a)二酸化炭素を含む発泡剤を使用して調製された、赤外線吸収剤を含有する第1ポリマー発泡体を用意する工程;そして(b)第2ポリマー発泡体を用意する工程;そして(c)寸法安定性を有する、厚さが少なくとも50ミリメートルのポリマー発泡体物品を製造するために、第1発泡体と第2発泡体とを、層状の配向を成すように貼り合わせる工程を含む、ポリマー発泡体物品を調製する方法である。
【0015】
本発明の方法は、赤外線吸収剤を含有し、そして断熱用途に適した寸法安定性を有するポリマー発泡体を調製するのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
用語
発泡体及び発泡体物品は、互いに直交する長さ、幅、及び厚さ次元を有する。長さは、最大規模を有する寸法に等しい規模を有し、押し出された発泡体の場合には典型的には発泡体の押出し方向にある。幅は、厚さに等しいか又は厚さよりも大きい規模を有し、長さに等しくなることもある。
【0017】
「主要面」は、発泡体又は発泡体物品の任意の表面のうち最大平面状表面積を有する表面に相当する。平面状表面積は、表面積規模において表面テクスチャ(例えば凹部、突起、波状部)を勘定に入れるのを避けるように、一平面上へ表面を投影したその表面積である。一般に、長さ及び幅は、ポリマー発泡体物品の主要面を画定する。厚さは主要面を対向する面(これもまたポリマー発泡体物品の主要面となることができる)から分離することが多い。
【0018】
ポリマー発泡体の「表面スキン」は、ポリマー発泡体、具体的には押出しポリマー発泡体の表面を覆う連続的なポリマー膜である。表面スキンは、スカイビング(Skiving)のような方法によって除去することができる。
【0019】
「層状の配向」は、1つの構成部分の表面が別の構成部分の表面に隣接している配向状態に相当する。例えば1つの発泡体の表面が別の発泡体の表面に隣接している場合に、2つの発泡体は層状配向を成している。望ましくは、層状配向を成す発泡体は互いに隣接する主要面を有している。
【0020】
「発泡性接着剤」は、基板に又は基板間に塗布すると発泡して発泡体になる接着剤である。
【0021】
「寸法安定性を有する」は、ポリマー発泡体物品を特徴づけ、平坦度の経時的な逸脱が特定の範囲未満であるポリマー発泡体物品に適用する。ポリマー発泡物品が寸法安定性を有するかどうかは、2つの条件、すなわち(1)23+/−5℃及び50+/−5パーセント相対湿度;並びに(2)ボードの主要面に関して、それぞれの1日間に最大周囲温度45℃である2日間にわたる日光曝露に対して十分に曝される、という条件下で、prEN 13164(06−2009)に従って決定する。ECN825に従って測定して物品の幅及び長さの両方における平坦性からの逸脱(Smax)が1メートル当たり6ミリメートル以下である場合に、その物品は「寸法安定性を有する」。長さのSmaxは物品長さに従って正規化される。
【0022】
試験法は、試験法番号のハイフンの後に付け加えられた数字で示される年度の試験法、又はハイフンの後に付け加えられた数字が存在しない場合には、本明細書の優先日前の最新の試験法を意味する。「ASTM」は米国材料試験協会を意味する。「EN」は欧州規格を意味する。「DIN」はドイツ規格協会を意味する。「ISO」は国際標準化機構を意味する。
【0023】
「及び/又は」は、「及び、又は別の手段として」を意味する。「複数」は「2つ又は3つ以上」を意味する。
【0024】
プロセス
本発明のプロセスは、第1ポリマー発泡体と第2ポリマー発泡体とを用意することを必要とする。第1ポリマー発泡体と第2ポリマー発泡体とは、同一であってよく、或いは組成及び/又は物理特性が互いに異なっていてもよい。同様の点において、第1ポリマー発泡体及び第2ポリマー発泡体の両方は同一の形式で又は異なる方法で調製することができる。1つの望ましい態様の場合、第1ポリマー発泡体と第2ポリマー発泡体とは同等の組成及び物理特性を有し、そして同様の形式で調製されている。
【0025】
第1ポリマー発泡体、及び必要に応じて第2ポリマー発泡体は、二酸化炭素を含む発泡剤を使用して調製される。望ましくは第1ポリマー発泡体、より望ましくは第1ポリマー発泡体及び第2ポリマー発泡体の両方は、押出しポリマー発泡体である。一般に、押出しポリマー発泡体は連続的な、継ぎ目のないポリマーマトリックスである。このマトリックスはマットリックス内部にセルを画定し、そして発泡して単一の押出し発泡体構造になる単一の発泡性組成物を生じる。しかし、押出し発泡体の1つの態様は「ストランド発泡体」を含む。ストランド発泡体は、連続的なポリマースキンによって画定された複数の押出しストランドを含む。この場合、隣接する発泡体のスキンは互いに接着されている。ストランド発泡体のポリマースキンは、押出しビード発泡体とは異なり、ストランドの押出し方向にのみ延びる。押出しビード発泡体は、全ての次元に延びるポリマースキン網状構造を含有する。下記プロセスは、押出しポリマー発泡体を調製する方法について記述するが、第1及び第2のポリマー発泡体は独立して、押出し、発泡、及び成形を含む発泡体のタイプのうちの任意のタイプとなることができる。
【0026】
押出し機内部に初期の圧力(発泡を阻止するのに十分に高い)及び温度で発泡性ポリマー組成物を提供し、この発泡性ポリマー組成物を、発泡ダイを通して、より低い圧力及び温度の大気中に押出し、そして発泡性ポリマー組成物を発泡させて冷却することにより押出しポリマー発泡体にすることによって、押出しポリマー発泡体を調製する。この発泡性ポリマー組成物は、連続(continuous)熱可塑性ポリマー組成物と発泡剤とを含む。発泡剤は、第1ポリマー発泡体のための、そして必要に応じて第2ポリマー発泡体のための二酸化炭素を含む。
【0027】
熱可塑性ポリマー組成物は、1種又は2種以上の連続熱可塑性ポリマーを含有することができる。熱可塑性ポリマーは、1種又は2種以上の非晶質ポリマー、半結晶性ポリマー、又は非晶質ポリマーと半結晶性ポリマーとの組み合わせである。好適な熱可塑性ポリマーは、アルケニル芳香族ポリマー及びオレフィン系ポリマーを含む。望ましくはスチレンホモポリマー及びコポリマー、エチレンホモポリマー及びコポリマー、及びプロピレンホモポリマー及びコポリマーから、熱可塑性ポリマーを選択する。具体的に望ましいアルケニル芳香族ポリマーはスチレンホモポリマー及びスチレン−アクリロニトリルコポリマーである。1つの態様の場合、連続ポリマー組成物は、85重量パーセント(wt%)以上のポリスチレンホモポリマーである。別の態様の場合、連続ポリマー組成物は、85重量パーセント(wt%)以上のスチレン−アクリロニトリルコポリマーである。wt%は、熱可塑性ポリマー組成物中の熱可塑性ポリマー総重量を基準としたものである。
【0028】
熱可塑性ポリマー組成物は軟化温度を有し、発泡性ポリマー組成物の初期温度は、熱可塑性ポリマー組成物の軟化温度よりも高い。軟化温度は、連続非晶質ポリマーの最高ガラス転移温度、又は連続半結晶性ポリマーの最高溶融温度、又は熱可塑性ポリマーが連続非晶質ポリマー及び連続半結晶性ポリマーの両方を含む場合、連続ポリマーによって示される最高溶融温度及び最高ガラス転移温度のうちの最高の温度に等しい。
【0029】
発泡性ポリマー組成物はさらに発泡剤を含む。典型的には、発泡性ポリマー組成物中に存在する発泡剤の総量は、発泡性ポリマー組成物中のポリマー樹脂総重量を基準として、3wt%以上、好ましくは4wt%以上であり、また典型的に10wt%以上、好ましくは6wt%以下である。
【0030】
第1ポリマー発泡体、及び必要に応じて第2ポリマー発泡体を製造するための発泡剤は、二酸化炭素を含む。望ましくは、二酸化炭素の濃度は、発泡性ポリマー組成物中のポリマー樹脂総重量を基準として、2wt%以上、好ましくは3wt%以上であり、そして同時にほぼ6wt%以下、好ましくは5wt%以下であり、そしてもっとも好ましくは4.5wt%以下である。望ましくは、発泡剤総重量を基準として、発泡剤の少なくとも40wt%が二酸化炭素である。
【0031】
発泡剤はさらに、1種又は2種以上の追加の発泡剤を含むことができる。好適な追加の発泡剤は、下記のもののうちのいずれか1種、又は2種以上の任意の組み合わせを含む:無機ガス、例えばアルゴン、窒素、及び空気;有機発泡剤、例えば水、炭素数1〜9の脂肪族及び環状炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロブタン、及びシクロペンタン;炭素数1〜5の完全及び部分ハロゲン化アルカン及びアルケン、好ましくは無塩素のもの{例えばジフルオロメタン(HFC−32)、ペルフルオロメタン、エチルフルオリド(HFC−161)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、ペルフルオロエタン、2,2−ジフルオロプロパン(HFC−272fb)、1,1,1−トリフルオロプロパン(HFC−263fb)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)};完全及び部分ハロゲン化ポリマー及びコポリマー、望ましくはフッ素化ポリマー及びコポリマー、さらにより好ましくは無塩素のフッ素化ポリマー及びコポリマー;炭素数1〜5の脂肪族アルコール、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及びイソプロパノール;カルボニル含有化合物、例えばアセトン、2−ブタノン、及びアセトアルデヒド;エーテル含有化合物、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル;カルボキシレート化合物、例えばメチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート;カルボン酸及び化学的発泡剤、例えばアゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、ベンゼンスルホ−ヒドラジド、4,4−オキシベンゼンスルホニルセミ−カルバジド、p−トルエンスルホニルセミ−カルバジド、バリウムアゾジカルボキシレート、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、トリヒドラジノトリアジン、及び重炭酸ナトリウム。
【0032】
特に望ましい発泡剤の特に望ましい組み合わせは、二酸化炭素、又は二酸化炭素と、イソ−ブタン、水、及び炭素数2〜3のアルコールのうちの1種、又は2種以上の組み合わせとを含み、そしてこれらから成ることができる。
【0033】
一般に、発泡ダイを通して押し出す前に、初期温度よりも低いが、ポリマー組成物軟化温度をまだ上回る温度まで発泡性ポリマー組成物を冷却することが望ましい。発泡性ポリマー組成物を、発泡ダイを通して、周囲温度(ほぼ25℃)及び大気圧(ほぼ760ミリメートル水銀)中に押し出すのが普通である。
【0034】
発泡性ポリマー組成物は添加剤を含むこともできる。典型的な添加剤は赤外減衰剤(例えば赤外線吸収剤、例えばカーボンブラック及びグラファイト、並びに反射材料、例えば金属フレーク及び二酸化チタン);粘土、例えば天然吸収性粘土(例えばカオリナイト及びモンモリロナイト)、及び合成粘土;核形成剤(例えばタルク及びケイ酸マグネシウム);難燃剤(例えば臭素化難燃剤、例えばヘキサブロモシクロドデカン及び臭素化ポリマー、リン難燃剤、例えばトリフェニルホスフェート、及び相乗剤、例えばジクミル及びポリクミルを含んでよい難燃剤パッケージ;潤滑剤(例えばステアリン酸カルシウム及びステアリン酸バリウム);及び酸スカベンジャー(例えば酸化マグネシウム及びテトラナトリウムピロホスフェート、又は有機系酸スカベンジャー)を含む。望ましくは、発泡性ポリマー組成物は赤外減衰剤、特に赤外線吸収剤を含む。発泡性ポリマー組成物中に存在する赤外減衰剤は最後には、結果として生じる押出しポリマー発泡体中に分散される。発泡体中の総添加剤濃度は、ポリマー総重量を基準として最大10重量パーセントである。
【0035】
第1ポリマー発泡体は赤外線吸収剤を含む。望ましくは、第1及び第2のポリマー発泡体の両方が赤外線吸収剤を含む。好ましくは、第1ポリマー発泡体、及び望ましくは、第2ポリマー発泡体は、少なくとも1wt%の赤外線吸収剤を含む。本発明の物品を構成するポリマー発泡体のいずれかにおける赤外線吸収剤の濃度は、1wt%以上、好ましくは2wt%以上であってよく、また3wt%以上、さらに4wt%以上であってもよい。一般には、赤外線吸収剤の量は、熱可塑性ポリマー組成物総重量を基準として5wt%以下である。
【0036】
第1ポリマー発泡体の密度は、1立方メートル当たり55キログラム(kg/m3)以下、好ましくは48kg/m3以下、より好ましくは40kg/m3以下、さらにより好ましくは35kg/m3以下、そしてより好ましくは32kg/m3以下である。典型的には、第1ポリマー発泡体、及び望ましくは第2ポリマー発泡体の密度は、発泡体が取扱中に機械的完全性を有することを保証するために、16kg/m3以上を有している。同様に、第2ポリマー発泡体は、これらの範囲のいずれかに密度を有する第1ポリマー発泡体との組み合わせにおいて、これらの範囲のいずれかに密度を有することができる。望ましくは、第1及び第2のポリマー発泡体の密度は、互いから5kg/m3以内、好ましくは互いから2kg/m3以内にあり、同じ密度であってもよい。DIN ISO 845又はEN 1602に従って密度を測定する。
【0037】
第1ポリマー発泡体は連続気泡又は独立気泡となることができる。望ましくは、第1ポリマー発泡体の連続気泡含有率は30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下であり、そして5%以下、又はゼロ%であってもよい。連続気泡含有率は低いほど、最適な耐熱性を達成するために典型的には望ましい。第1ポリマー発泡体と同様に、第2ポリマー発泡体も、これらの範囲のいずれかに連続気泡含有率を有する第1ポリマー発泡体との組み合わせにおいて、これらの範囲のいずれかに連続気泡含有率を有することができる。EN ISO 4590に従って、連続気泡含有率を測定する。
【0038】
第1ポリマー発泡体の望ましい平均セルサイズは、2ミリメートル以下、好ましくは1ミリメートル以下、より好ましくは0.5ミリメートル以下、さらにより好ましくは0.25ミリメートル以下、そしてより好ましくは0.15ミリメートル以下である。0.25ミリメートル以下、具体的には0.15ミリメートル以下のセルサイズが断熱発泡体のために好ましい。典型的には、第1ポリマー発泡体の平均セルサイズは0.05ミリメートル以上、好ましくは0.1ミリメートル以上である。セルサイズが0.1ミリメートルを大きく下回る場合には、熱伝導率が増大し始める。第1ポリマー発泡体と同様に、第2ポリマー発泡体も、これらの範囲のいずれかに平均セルサイズを有する第1ポリマー発泡体との組み合わせにおいて、これらの範囲のいずれかに平均セルサイズを有することができる。ASTM D3576に従って平均セルサイズを測定する。
【0039】
第1ポリマー発泡体と第2ポリマー発泡体とを、機械的ファスナー及び/又は接着剤を含めた考えられる方法で貼り合わせる。望ましくは、ポリマー発泡体を貼り合わせるために接着剤を使用する。好適な接着剤は、DIN 4108−3に従って水蒸気拡散に対して開いていても閉じていてもよい。ポリマー発泡体を貼り合わせるための接着剤の1つの望ましいタイプは、発泡性接着剤、例えば発泡性ポリウレタン接着剤(例えばINSTA STIK(登録商標)ブランドの接着剤、INSTA STIKはDow Chemical Companyの登録商標である)である。
【0040】
1つの望ましい態様の場合、第1及び第2のポリマー発泡体はそれぞれ主要面を有しており、第1ポリマー発泡体の主要面は、第2ポリマー発泡体の主要面に貼り合わされる。さらに別の望ましい態様の場合、第1及び第2のポリマー発泡体は、互いに貼り合わされる平面状の主要面を有している。互いに貼り合わされる表面は、互いに係合する溝を有することができ、且つ/又は、表面上のスキンを有することができ、又は表面から完全又は部分的に除去されるスキンを有することができる。
【0041】
別のポリマー発泡体に貼り合わされる第1及び/又は第2のポリマー発泡体の表面には、ポリマー発泡体上に典型的には存在する表面スキンのいくらか又は全てがなくてもよい。表面スキンは、ポリマー発泡体の表面に対する透過性を阻害する傾向がある。例えば表面スキンを剥離することによって表面スキンを除去すると、発泡体のセルが発泡体表面に露出され、これにより表面の透過性に対するバリアが取り除かれる。また表面スキンを除去すると、よりテクスチャ化された表面が形成される。このような表面は、接着剤とともに機械的付着を促進することによって、別の表面との付着を増強することができる。1つの態様の場合、第1及び第2のポリマー発泡体の主要面が互いに貼り合わされ、そして一方又は両方の貼り合わされた主要面の少なくとも50%、好ましくは75%、又はさらにより好ましくは95%、及び100%さえもが、表面スキンを有さない。このような態様の場合、発泡体表面を貼り合わせる前に表面スキンを除去する。
【0042】
このプロセスはさらに、第1ポリマー発泡体、第2ポリマー発泡体、又は第1及び第2両方のポリマー発泡体に追加のポリマー発泡体を付着させることを含む。追加の発泡体は、第1ポリマー発泡体、第2ポリマー発泡体、又は第1及び第2両方のポリマー発泡体と同じか又はこれらと異なることが可能である。追加の発泡体は、本明細書中に記載された第2発泡体の特徴を有している。望ましくは、第1ポリマー発泡体は発泡体物品において露出したままである。望ましくは、第1及び第2のポリマー発泡体、好ましくは物品内のポリマー発泡体の全てが赤外線吸収剤を含有する。或いは、第1ポリマー発泡体が赤外線吸収剤を含有するのであれば、物品内のポリマー発泡体のうちの1つ又は2つ以上に赤外線吸収剤がなくてもよい。物品内のポリマー発泡体の全ては同一であることが可能である。
【0043】
第2ポリマー発泡体に層状に貼り合わされた第1ポリマー発泡体を含むポリマー発泡体物品の厚さが50ミリメートル以上であるならば、第1及び第2のポリマー発泡体は任意の厚さを有することができる。ポリマー発泡体物品には、第1及び第2のポリマー発泡体以外のポリマー発泡体を有しなくてもよい。この場合、第1及び第2のポリマー発泡体の厚さの合計は、少なくとも50ミリメートルである。このポリマー発泡体物品は、第1及び第2のポリマー発泡体に加えてポリマー発泡体を含むこともできる。ポリマー発泡体物品が第1及び第2のポリマー発泡体に加えてポリマー発泡体を含む場合、この追加のポリマー発泡体は、ように、第1及び/又は第2ポリマー発泡体に層状に貼り付けられ、厚さ50ミリメートル以上のポリマー発泡体物品を形成する。ポリマー発泡体物品は厚さ75ミリメートル以上、100ミリメートル以上、120ミリメートル以上、又は150ミリメートル以上、200ミリメートル以上であってよく、そしてなおも寸法安定性を有することができる。一般に、ポリマー発泡体物品は、取り扱い易いように厚さが400ミリメートル以下である。第1ポリマー発泡体は、ポリマー発泡体物品において露出したままであることが望ましい。
【0044】
本発明の方法は、硬質の非ポリマー発泡体層、例えば木材又は金属シート又はボードに付着されたポリマー発泡体を有しなくてよく、又は硬質の非ポリマー発泡体層にポリマー発泡体を付着するプロセス工程を含まなくてよい。さらに、第1及び第2のポリマー発泡体、実際には物品内のいずれの発泡体も同様又は同一の密度を有することができ、そしてなおも、寸法安定性を有する物品をもたらす。
【0045】
本発明の方法は、反射被膜を有するポリマー発泡体を有しなくてよく、又はポリマー発泡体へ反射被膜を適用するプロセス工程を含まなくてよく、しかも寸法安定性を有するポリマー発泡体物品をなおも製造することができる。このことは、本発明によって製造される物品が反射被膜を含まなくてよく、それでもなお寸法安定性を有することを意味している。
【0046】
本発明の方法は、反射被膜がないのと同時に、ポリマー発泡体以外の硬質の層もないポリマー発泡体物品であって、同様又は同一の密度を有するポリマー発泡体を含み、しかも寸法安定性を有する物品を製造することができる。
【0047】
驚くべきことに、第1ポリマー発泡体と第2ポリマー発泡体とを互いに付着させると、二酸化炭素が逃げて空気が発泡体セル内に充満するのに従って、ポリマー発泡体物品と同等の厚さの第1又は第2のポリマー発泡体を上回る寸法安定性を有するポリマー発泡体物品が形成される。例えば、50ミリメートル厚のポリマー発泡体物品を形成するように貼り合わされた、二酸化炭素発泡剤を使用して調製された同一の第1及び第2のポリマー発泡体から成るポリマー発泡体物品は、第1及び第2のポリマー発泡体と同じ発泡剤で調製された厚さ50ミリメートルの単一ポリマー発泡体よりも大きい寸法安定性を有する。このような結果は、寸法安定性を達成するのをより難しくすることが知られている赤外線吸収剤を、第1ポリマー発泡体、及び必要に応じて第2ポリマー発泡体が含有していても、より大きい寸法安定性が達成されるという事実に照らして特に驚くべきことである。本発明の方法によって形成されたポリマー発泡体物品は、これらが赤外線吸収剤を含有し、二酸化炭素発泡剤で形成され、そして厚さが50ミリメートル以上であっても、「寸法安定性」を有することができる。
【0048】
さらに驚くべきことには、本発明のポリマー発泡体物品は、いかなる露出面にも反射被膜を必要とすることなしに、寸法安定性を有する。発泡体物品は、露出面に反射被膜を有することができ、或いは反射被膜なしでもよく、それでもなお寸法安定性を有することができる。
【実施例】
【0049】
下記例は本発明の態様を示している。
【0050】
単一層の比較例
次の4種類の厚さ、つまり50mm、100mm、120mm、及び140mmの押出しポリマー発泡体ボード10枚を用意する。それぞれの厚さにおいて赤外線吸収剤を含む1枚と、含まない1枚とを用意する。それぞれのボードは幅寸法600mm、及び長さ寸法1250mmである。赤外減衰剤を含有するボードは、ポリマー重量を基準として3wt%のカーボンブラックを含有している。それぞれの発泡体ボードは平均密度がほぼ34〜35kg/m3、平均セルサイズ0.15〜0.25mmであり、二酸化炭素を含む発泡剤を使用して形成され、そして反射被膜を含まない。使用するのに適した商業的に入手可能な発泡体は、赤外線吸収剤を含まない試料に対してはROOFMATE(登録商標) SLブランドの屋根用断熱材を、そして赤外線吸収剤を含む試料に対してはROOFMATE(登録商標) XENERGY(登録商標) SLブランドの屋根用断熱材を含む(ROOFMATE及びXENERGYはDow Chemical Companyの登録商標である)。
【0051】
それぞれの発泡ボードの主要面を日光に2日間にわたって暴露し、その際に2日間のそれぞれの最大周囲温度をほぼ45℃とし、そしてEN 825の方法に従って寸法変化(Smax)を測定する。表1は、ボード長さに対して正規化され、発泡ボード1メートル当たりのミリメートル単位(mm/m)で表されたSmax値を含んでいる。
【0052】
【表1】

【0053】
表1のデータが示すように、赤外線吸収剤を含有する寸法安定な押出しポリマー発泡体を達成することは、赤外線吸収剤を含有しない寸法安定な押出しポリマー発泡体を達成するよりも著しく難しい問題である。
【0054】
表1のデータはさらに、赤外線吸収剤を含有する押出しポリマー発泡体が、50mmよりも大きい厚さではもはや寸法安定性を有することはなく、発泡体ボード厚が増大するにつれて寸法安定性が悪化することを示している。データはさらに、赤外線吸収体がなくても、ポリマー発泡体は120mmよりも大きい厚さでもはや寸法安定性を有さなくなることを示している。
【0055】
積層発泡体ボード
前の試料の100mm厚及び120mm厚の発泡体ボードと、前の試料と同様の組成及び調製から形成された80mm厚の発泡体ボードとを使用して、積層発泡体ボード物品を用意する。1平方メートル当たり200グラムの塗布重量でINSTA-STIK(登録商標)ブランドの接着剤を使用して、隣接するボードの主要面を互いに付着させた(INSTA-STIKはDow Chemical Companyの登録商標である)。表2は、積層ボードのための発泡体ボードの組み合わせ、及び3日間の試験後の積層ボードのSmax値を示している。3日間の試験では、積層発泡体ボードの主要面に日光を当て、3日間のそれぞれにおいてピーク周囲温度をほぼ45℃とする。なお、この寸法安定性試験は、寸法安定性テストよりも要求が高い。なぜならば、3日目の日光曝露を必要としているからである。23℃及び50%相対湿度における寸法安定性試験のSmax値は含まれていない。なぜならば、これらは報告値よりも小さいので、もしも物品が日光曝露中により厳しい条件下で寸法安定性を有するならば、これらの物品は23℃及び50%相対湿度においても寸法安定性を有することになるからである。
【0056】
【表2】

【0057】
発明例のそれぞれの厚さは、表1の個々のボードのいずれをも上回る。特に試験が日光に曝露する追加の1日を含む場合であっても、発明例は表1のものよりも寸法安定性が低いと予想されるであろう。驚くべきことに、発明例の全ては寸法的に安定であるといえる。実際には、寸法安定性は、赤外線吸収剤なしの発泡体ボードとほぼ同じである。
【0058】
これらの発明例は、より薄い発泡体ボードを互いに積層することによって、厚さが50nmを超える、120nmを超える、200mmを超える、そして300mmを超える、赤外線吸収剤を含有するポリマー発泡体ボードによって、寸法安定性を達成するという驚くべき結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー発泡体物品を調製する方法であって、
a. 二酸化炭素を含む発泡剤を使用して調製された、赤外線吸収剤を含有する第1ポリマー発泡体を用意する工程;そして
b. 第2ポリマー発泡体を用意する工程;そして
c. 寸法安定性を有する、厚さが少なくとも50ミリメートルのポリマー発泡体物品を製造するために、該第1発泡体と第2発泡体とを、層状の配向を成すように貼り合わせる工程
を含む、ポリマー発泡体物品を調製する方法。
【請求項2】
工程(a)が、二酸化炭素を含む発泡剤を使用して、該赤外線吸収剤を含む発泡性ポリマー組成物を発泡させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該第1ポリマー発泡体が、該発泡体物品において露出したままである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該第1及び第2の発泡体がそれぞれ主要面を有しており、該第1発泡体の主要面が第2の発泡体の主要面に貼り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
互いに付着させられた該第1及び第2の発泡体の主要面の少なくとも50%が表面スキンを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該第1及び第2の発泡体の両方が、赤外線吸収剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該第1発泡体中の赤外線吸収剤の量が、該第1発泡体の全重量に対して少なくとも1重量パーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)が、押出し法を用いて該第1ポリマー発泡体を調製することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
二酸化炭素が該発泡剤の重量の少なくとも40重量パーセントを構成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該第2ポリマー発泡体が、工程(a)で該第1ポリマー発泡体と同様に調製することにより用意される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)が、該第1発泡体と該第2発泡体とを、接着剤を使用して貼り合わせる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
該接着剤が、該第1発泡体と該第2発泡体との間に接着剤発泡体を形成する発泡性接着剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
一方のポリマー発泡体の溝間の突起が他方のポリマー発泡体の溝と係合するように、該第1発泡体と該第2発泡体とがそれぞれ溝を有している、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2013−500891(P2013−500891A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523644(P2012−523644)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/043325
【国際公開番号】WO2011/017076
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】