説明

寸法測定器

【課題】義肢装具士が義肢装具を製作するために、上肢・下肢障害者身体の寸法測定を行う場合、作業性が良く、片手で作業できる携帯型寸法測定器を提供する。
【解決手段】スライド孔6を有する凹型枠2と、弱い圧力バネ10を介し測定時に該圧力バネ10を圧縮して該スライド孔6をスライドする測定棒7、該スライド棒7に計測用定規5を取付けて該測定棒7の凹型枠2内側の先端に取付けた測定子3と、該測定子3と対向する凹型枠2に、円盤の中心をスライド孔6の中心軸線と一致して取付けた測定子3とほぼ同じ直径の測定円盤4と、該測定棒7の凹型枠2の外側端に取付けた初期間隔設定用ストッパー9を有し、該測定子3と測定円盤4間に初期間隔Lを設定してあり、前記凹型枠2のスライド孔6を有する側の外側に定規5の目盛読取り基点8を有し、前記初期間隔より大きい寸法を測定する寸法測定器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義肢装具士、医療従事者等が患者の上肢・下肢身体部位の寸法を測定する際に使用する寸法測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
身体部位の寸法測定器には一般的にMLゲージ(図6)や巻尺などのメジャー(図7)が使用されている。然しこれらの測定器を使用した測定作業において作業者は両手を使用して測定することが要求されるので著しく作業性がわるい。
【0003】
携帯型の寸法測定器の例としては、特許文献1、特許文献2に見るような、測定手段としてマイクロメーターを用いた精密測定用の例がある。しかし、義肢装具士等が使用する寸法測定器においては、測定作業の簡便性がより求められている。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−2820
【特許文献2】特開2006−17665
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した既存技術はいずれも義肢装具士が、障害者の上下肢を計測する寸法測定器としては作業性が悪く使い勝手が悪い。
【0006】
一般的に使用されているMLゲージ(図6)を用いて測定するには、ゲージ本体41とスライド式測定子42を広げて測定部位を挟み込んでゲージの目盛を読取るので片手作業は出来ない。
【0007】
巻き尺(図7)等紐状のメジャーで測定する場合も、メジャーの両端を測定部位に当てて測るために片手作業には適さない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図1に基づいて、本発明の概要を説明する。厚板材で出来た凹型枠2の一方の突起部にスライド孔6を明け、該スライド孔6に、先端に測定子3を取り付けた測定棒7をスライド自在に組付け、測定棒7の他端に初期間隔設定用ストッパー9により、測定子3と測定円盤4の間に初期間隔Lを設定して片手で測定部位を容易に挟み込めるようにする。
【0009】
前記測定棒7は、採寸作業を容易にするために弱い圧力バネ10を介して凹型枠の内側からスライド孔に通し凹型枠の外側に初期間隔設定用ストッパー9で止めて組付ける。測定をしない初期状態では、圧力バネの働きで初期間隔設定用ストッパー9に当たるまで測定棒7を押し戻し、初期間隔Lを設定する。
【0010】
請求項1では、スライド孔6を有する凹型枠2と、該スライド孔6をスライド自在に組付けた測定棒7、該測定棒7の凹型枠内側先端に取付けた測定子3と、該測定子と対向する凹型枠に、スライド孔の中心軸線XX’を円盤の中心と一致して取付けた測定円盤4と、該測定棒7の測定子3側に計測用定規5を取付けて該測定子3と測定円盤4間に初期間隔Lを設定してあり、前記凹型枠2のスライド孔6を有する凹型枠外側に定規の目盛読取り基点8を有する図1に示す寸法測定器1を記述している。
【0011】
これにより障害者身体部位の寸法測定を行う場合に、片手で作業できる義肢装具士用の携帯型の寸法測定器を提供できる。
【0012】
請求項2では、スライド孔6を有する凹型枠22と、弱い圧力バネ10を介し測定時に該圧力バネ10を圧縮して該スライド孔6をスライドする測定棒7、該測定棒7の凹型枠内側の先端に取付けた測定子3と、該測定子3と対向する凹型枠に、測定円盤4を取付けた凹型枠の上縁14をスライド孔6の中心軸線XX’よりも凹型枠2の底部11方向に短く変位して取付けた測定円盤4を有する図2に示す寸法測定器21を記述している。
【0013】
これにより測定子を測定ポイントに正確に設定出来るうえに測定部位を片手で挟み込んで測定する作業が容易となる。
【0014】
請求項3では、図1における測定子3の一部が凹型枠の底部11と反対方向に、測定円盤4及び該測定円盤4をとりつけた凹型枠上縁13より長く伸び出していることを特徴とする請求項1に記載の寸法測定器1を記述している。
【0015】
これにより義肢装具士が障害者身体の測定部位を片手で容易に測定できる携帯に便利な寸法測定器を提供できる。
【0016】
請求項4では、請求項1及び請求項3に記載の寸法測定器を実現するに当たり図1における寸法測定器のスライド孔6の中心軸線XX’から凹型枠2の底辺11までの寸法を4〜20cm、測定円盤4の直径を1.5〜4.0cm、円盤の厚さ2mm以上、測定子3は測定円盤4とほぼ同じ直径の円盤とし、測定子3と測定円盤4間の初期間隔Lを3〜25cm、測定範囲を3〜35cmとすることを特徴とする寸法測定器を記述している。
【0017】
請求項4において、スライド孔6の中心軸線XX’と凹型枠底部11の寸法、測定子3と測定円盤4間の初期間隔L、測定範囲の各下限値は肘専用の測定器を想定し、上限値は大腿部の計測を想定して、しかも携帯の簡便性を考慮して設定した。
【0018】
測定子3及び測定円盤4の直径並びに円盤の厚さに関しては、測定の作業性と測定精度を考慮して設定した。
【0019】
即ち直径に関して、小さすぎると衣服や肌に引っ掛かりやすくなるし、大きすぎると接触面積が大きくなって測定点を特定できなくなる。又厚さに関して、薄すぎると直径同様に衣服や肌に引っ掛かりやすくなる上に凹型枠が測定に支障をきたす。
【0020】
請求項1〜請求項4における本件発明の寸法測定器を実現する際に、測定器の本体部分を構成する凹型枠は板材料を削り出した一体構造で表示しているが、材料どりや携帯の簡便性を考慮して分割組立て構造で実現することも可能である。
【発明の効果】
【0021】
前記請求項1〜請求項4の発明により、具体的な大きさ、寸法、構造が明確となり義肢装具士が障害者の上肢・下肢の測定作業を片手で出来る上に携帯にも便利な寸法測定器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明(請求項1)になる寸法測定器見取り図
【図2】本発明(請求項2)になる寸法測定器見取り図
【図3】本発明(請求項1)になる寸法測定器による測定状況説明図
【図4】本発明(請求項3)における測定子のバリエーション図 (a)一部が凹型枠底部と反対方向にはみ出す構造の測定子の例 (b)180度回転して凹型枠底部と反対方向にはみ出す回転式測定子の例
【図5】計測用目盛付測定棒を採用した寸法測定器の見取り図
【図6】従来から使われているMLゲージ
【図7】巻き尺
【発明を実施するための形態】
【0023】
請求項1では、スライド孔6を有する凹型枠2と、弱い圧力バネ10を介し測定時に該圧力バネ10を圧縮して該スライド孔6をスライドする測定棒7、該スライド棒7に計測用定規5を取付けて該測定棒7の凹型枠内側の先端に取付けた測定子3と、該測定子と対向する凹型枠に、円盤の中心をスライド孔の軸線と一致して取付けた測定円盤4と、該測定子3と測定円盤4間に初期間隔を設定してあり、前記凹型枠2のスライド孔6を有する外側に定規の目盛読取り基点8を有する寸法測定器1を記述している。
【0024】
図1に示す如く、測定子3と測定円盤4の間に初期間隔Lを設けて、測定棒7は弱い圧力バネ10を介してスライド自在に組付けられているために、凹型枠の底部11を片手で握って体の測定部位の片側に測定子3を当てて測定ギャップを広げて測定円盤4との間に測定部位を挟み込み測定位置にセットして測定することが出来る。
【0025】
寸法測定には図1に示すように、測定前に読取基点8が定規の初期間隔値Lを指示するようにセットしていて、測定部位を挟み込むことで測定棒がスライドして測定部位の寸法Lを表示する。(図3参照)
【0026】
請求項2では、スライド孔6を有する凹型枠22と、弱い圧力バネ10を介し測定時に該圧力バネ10を圧縮して該スライド孔6をスライドする測定棒7、該測定棒7に計測用定規5を取付けて該測定棒7の凹型枠内側の先端に取付けた測定子3と、該測定子3と対向する凹型枠に、測定円盤4を取付けた凹型枠の上縁14をスライド孔6の軸線XX’よりも凹型枠22の底部11方向に変位して取付けた測定円盤4と、該測定子3と測定円盤4間に初期間隔Lを設定してあり、前記凹型枠2のスライド孔6を有する外側に定規の目盛読取り基点8を有する寸法測定器21を記述している。
【0027】
図2に示すように、測定円盤4を組付けた凹型枠の上縁14をスライド孔6の軸線よりも凹型枠22の底部11方向に変位して取付けた測定円盤4と、測定子3の間に初期間隔Lを設定しているので片手で凹型枠2の底部を握って一方の測定点に測定子を当てて測定棒をスライドさせて測定円盤との間に測定部位を挟込んで測定することが容易にできる。
【0028】
請求項3では、測定子の一部が凹型枠の底部11と反対方向に、測定円盤4及び測定円盤をとりつけた凹型枠上縁13より長く伸び出すことを特徴とする請求項1に記載の寸法測定器1を記述している。
【0029】
図4(a)に示すように、測定子の一部が凹型枠上縁12及び13より凹型枠底部11と反対方向に長く伸び出すことにより、片手作業で容易に測定子3’を測定点に当てることが可能となる。
【0030】
図4(b)に示すように、測定子3’’を測定棒7に取付け鋲16で180度回転自在に取付け、測定時に180度外側に回転して測定子3’’を容易に測定点に当てることができる。
測定子3’’は、長さ1.5〜10cmで凹型枠2の底部方向を向いてバネで止まっており、計測時に回転させて使用する。
【0031】
請求項4では、凹型枠2を貫通する前記スライド孔の軸線から凹型枠の底辺11までの寸法を4〜20cmとし、前記測定円盤4は直径1.5〜4.0cmで厚さ2mm以上の円盤であり、測定棒7先端に取付ける測定子3は、該測定円盤4の直径と同じ円盤で、該測定子3と測定円盤4間との初期間隔Lを3〜25cmとし、測定範囲3〜35cmであることを特徴とした請求項1又は請求項3に記載の寸法測定器1を記述している。これにより寸法測定器1の具体的な設計が可能となる。
【0032】
寸法測定用定規としては、市販の定規を加工して貼りつける方法、特別に専用の定規を作って取りつける方法等が考えられる。
【0033】
測定棒7’に目盛を直接刻み込むことも可能で、その場合には凹型枠32の測定棒7’のスライド孔6の上に読取り窓15を設け、該読取り窓の縁に読取基点8’を設定する等の方法で測定値を読取ることが可能である。(図5参照)
【符号の説明】
【0034】
1 本発明になる寸法測定器(請求項1)
2 凹型枠(請求項1)
3 測定子
3’ 測定子の一部が凹型枠底部と反対方向に飛び出す例
3’’回転式測定子が180度回転して凹型枠底部と反対方向に飛び出す例
4 測定円盤
5 計測用定規
6 測定棒スライド孔
7 測定棒
7’ 寸法目盛付測定棒
8 定規の目盛読取り基点
8’ 寸法目盛付測定棒の目盛読取り基点
9 初期寸法設定用ストッパー
10 弱い圧力バネ
初期間隔
L 測定寸法
11 凹型枠の底部
12 凹型測定枠上縁(1)
13 凹型測定枠上縁(2)
14 凹型測定枠上縁(3)
15 寸法目盛読取り窓
16 回転式測定子の取付け鋲
21 本発明になる寸法測定器(請求項2)
22 寸法測定器(請求項2)の凹型枠
31 測定棒に寸法計測用の目盛を刻んだ寸法測定器
32 測定棒に寸法計測用の目盛を刻んだ寸法測定器の凹型枠
41 MLゲージの本体
42 MLゲージのスライド式測定子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド孔を有する凹型枠と、弱い圧力バネを介し測定時に該圧力バネを圧縮して該スライド孔をスライドする測定棒、該測定棒の凹型枠内側先端に取付けた測定子と、該測定子と対向する凹型枠に、円盤の中心をスライド孔の軸線上にして取付けた測定子とほぼ同じ直径の測定円盤と、該測定棒の測定子側に測定棒と一緒にスライド自在に取付けた計測用定規と、該測定棒の凹型枠の外側端に取付けた初期間隔設定用ストッパーと、該測定子と測定円盤間に初期間隔を設定してあり、前記凹型枠のスライド孔を有する側の外側に定規の目盛読取り基点を有する寸法測定器。
【請求項2】
スライド孔を有する凹型枠と、弱い圧力バネを介し測定時に該圧力バネを圧縮して該スライド孔をスライドする測定棒、該測定棒の凹型枠内側先端に取付けた測定子と、該測定子と対向する凹型枠に取付けた測定円盤と、該凹型枠の上縁がスライド孔の軸線よりも凹型枠の底部方向に短くなっており該凹型枠の上縁より上に出ないように取付けた測定子とほぼ同じ直径の測定円盤と、該測定棒の測定子側に測定棒と一緒にスライド自在に取付けた計測用定規と、該測定棒の凹型枠の外側端に取付けた初期間隔設定用ストッパーと、該測定子と測定円盤間に初期間隔を設定してあり、前記凹型枠のスライド孔を有する側の外側に定規の目盛読取り基点を有する寸法測定器。
【請求項3】
測定子の一部が凹型枠の底部と反対方向に、測定円盤及び測定円盤をとりつけた凹型枠上縁より長く伸び出すことを特徴とする請求項1に記載の寸法測定器。
【請求項4】
凹型枠を貫通する前記スライド孔の軸線から凹型枠の底辺までの寸法を4〜20cmとし、前記測定円盤は直径1.5〜4.0cmで厚さ2mm以上の円盤であり、測定棒先端に取付ける測定子は、該測定円盤の直径とほぼ同じ直径の円盤で、該測定子と測定円盤間との初期間隔を3〜25cmとし、測定範囲3〜35cmであることを特徴とした請求項1又は請求項3に記載の寸法測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−132888(P2012−132888A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294813(P2010−294813)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(511015010)
【出願人】(598081676)
【Fターム(参考)】