説明

対人保護装置

【課題】フロントフード上に展開されるエアバッグを用いなくても、歩行者や自転車乗員などの頭部への衝撃を軽減する。
【解決手段】本発明の対人保護装置10は、車両幅方向に延在された棒状の保護部材14と、アーム状に形成されて、一端が車体前部に回動可能に連結され、他端が保護部材14に連結された支持アーム16とを備えている。支持アーム16は、保護部材14がフロントフード20の前方に位置する通常使用位置にある状態で保護部材14に対して車両前方からの衝突荷重が入力された場合には、保護部材14が通常使用位置からフロントフード20の上方に位置する作動位置に移動されるように、保護部材14を車体に対して支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対人保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体前部に設けられた接触体と、この接触体を車体に対して支持する前進保持機構と、前進保持機構が上方に回転された場合にフロントフード上に展開されて歩行者の頭部を保護するエアバッグとを備えた歩行者保護装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−234462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、フロントフード上に展開されるエアバッグを備えた分、コストアップとなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、フロントフード上に展開されるエアバッグを用いなくても、歩行者や自転車乗員などの頭部への衝撃を軽減することができる対人保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の対人保護装置は、車両幅方向に延在された棒状の保護部材と、アーム状に形成されて、一端が車体前部に回動可能に連結され、他端が前記保護部材に連結されると共に、前記保護部材がフロントフードの前方に位置する通常使用位置にある状態で前記保護部材に対して車両前方からの衝突荷重が入力された場合に、前記保護部材が前記通常使用位置から前記フロントフードの上方に位置する作動位置に移動されるように、前記保護部材を車体に対して支持する支持アームと、を備えている。
【0007】
この対人保護装置によれば、保護部材がフロントフードの前方の通常使用位置に位置されている状態で、この保護部材に歩行者や自転車乗員の腰部が衝突し、保護部材に対して車両前方からの衝突荷重が入力されると、この衝突荷重によって生じる回転力により支持アームが上方に回動される。そして、この支持アームの回動に伴って保護部材が通常使用位置からフロントフードの上方に位置する作動位置に移動され、この保護部材によって腰部が上方に持ち上げられる。
【0008】
従って、腰部が上方に持ち上げられることにより、腰部の位置エネルギを増加でき、また、腰部が高い位置に移動された分、頭部の落下を軽減できるので、頭部のフロントフードへの移動速度を低減することができる。この結果、フロントフード上に展開されるエアバッグを用いなくても、頭部への衝撃を軽減することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上詳述したように、本発明によれば、フロントフード上に展開されるエアバッグを用いなくても、歩行者や自転車乗員などの頭部への衝撃を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る対人保護装置が適用された車両の前部を示す側面図である。
【図2】図1に示される対人保護装置により自転車乗員を保護する様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
なお、図1において示される矢印UP、矢印FRは、車両上下方向上側、車両前後方向前側をそれぞれ示している。
【0013】
図1に示されるように、発明の一実施形態に係る対人保護装置10は、車両12の車体前部に装備されており、保護部材14と、支持アーム16とを備えている。
【0014】
保護部材14は、車両幅方向に延在する棒状に形成されている。なお、この保護部材14は、エネルギ吸収性を有していても良い。
【0015】
支持アーム16は、アーム状に形成されている。この支持アーム16の一端は、回動軸18によって車体前部に回動可能に連結されており、支持アーム16の他端は、保護部材14の長手方向端側に連結されている。
【0016】
なお、この対人保護装置10では、保護部材14の長手方向両端側に支持アーム16が設けられている。つまり、各図では、車両左側の支持アーム16が図示されており、車両右側の支持アームは不図示とされている。
【0017】
そして、この対人保護装置10では、図1,図2(A)に示されるように、通常、保護部材14は、フロントフード20の前方に位置する通常使用位置に位置されている。
【0018】
一方、保護部材14が通常使用位置にある状態で保護部材14に対して車両前方からの衝突荷重が入力された場合には、図2(A)〜(D)に示されるように、この衝突荷重によって生じる回転力により支持アーム16が上方に回動され、保護部材14が通常使用位置からフロントフード20の上方に位置する作動位置に移動される構成となっている。
【0019】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0020】
この対人保護装置10によれば、保護部材14がフロントフード20の前方の通常使用位置に位置されている状態で、この保護部材14に自転車乗員22の腰部24が衝突し、保護部材14に対して車両前方からの衝突荷重が入力されると、この衝突荷重によって生じる回転力により支持アーム16が上方に回動される。
【0021】
そして、この支持アーム16の回動に伴って保護部材14が通常使用位置からフロントフード20の上方に位置する作動位置に移動され、この保護部材14によって腰部24が上方に持ち上げられる。
【0022】
従って、腰部24が上方に持ち上げられることにより、腰部24の位置エネルギを増加でき、また、腰部24が高い位置に移動された分、頭部26の落下を軽減できるので、頭部26のフロントフード20への移動速度を低減することができる。
【0023】
この結果、フロントフード20上に展開されるエアバッグを用いなくても、自転車乗員22の頭部26への衝撃を軽減することができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、衝突対象を自転車乗員22として説明したが、歩行者でも良い。
【0025】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
10 対人保護装置
14 保護部材
16 支持アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に延在された棒状の保護部材と、
アーム状に形成されて、一端が車体前部に回動可能に連結され、他端が前記保護部材に連結されると共に、前記保護部材がフロントフードの前方に位置する通常使用位置にある状態で前記保護部材に対して車両前方からの衝突荷重が入力された場合に、前記保護部材が前記通常使用位置から前記フロントフードの上方に位置する作動位置に移動されるように、前記保護部材を車体に対して支持する支持アームと、
を備えた対人保護装置。

【図1】
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【図2】
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