説明

対向流式熱交換器

対向流式熱交換器は、チューブ11、21とフィン12、22とが交互に多数連結配置され、厚み方向に並列に配置された一対の熱交換器コア1、2を有する。流入側熱交換器コア1および流出側熱交換器コア2は、これらの両チューブ11、21の一方端側が1つのUターン用中間タンク3に接続され、チューブ11、21の他端側がそれぞれ別体形成された流入側タンク4と流出側タンク5とにそれぞれ接続される。また、両熱交換器コア1、2が中間タンク3を中心としてそれぞれ独立して伸縮可能に流入側タンク4と流出側タンク5および中間タンク3が車体側に対し取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の熱交換器コアが厚み方向に並設され、これらに接続された中間タンクにて冷却水がUターンして一方の熱交換器コアから他方の熱交換器コアに流れるようにした対向流式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の対向流式熱交換器は、特開2002−393498号公報に記載されている。すなわち、この対向流式熱交換器は、交互に多数連結配置されたチューブとフィンとを有し、厚み方向に並列配置された一対の熱交換器コアと、一方の熱交換器コアのチューブの一端側に連結された流入側タンクと、他方の熱交換器コアのチューブの一端側に連結された流出側タンクと、これら両チューブの他端側に連結されたUターン用中間タンクとを備えている。流入側タンクと流出側タンクとは一体形成され、これらの間が仕切壁により仕切られて冷却水流路が分離されている。
【0003】
しかしながら、上記対向流式熱交換器では、流入側タンクと流出側タンクとが、これらの間に設けられた仕切壁だけで仕切られた一体形成構造となっていたため、以下に述べるような問題があった。
【0004】
即ち、流入側タンクに接続された熱交換器コア側を流れる冷却水と、流出側タンクに接続された熱交換器コア側を流れる冷却水との温度差は約40℃と極めて大きいため、流入側タンクと流出側タンクとが一体に形成された構造では、両熱交換器コアに発生する熱膨張差によりチューブや流入側タンクおよび流出側タンク等に大きな熱応力が作用し、これにより、これらの各部に歪み、亀裂、破損等を生じさせる虞がある。
【0005】
また、流入側タンクと流出側タンクとの間が一枚の仕切壁で仕切られただけの構造であるため、流入側タンク内を流れる高温の冷却水の熱が仕切壁を通じて熱伝導され、流出側タンク内を流れる冷却水を加温するため、熱交換効率が悪くなる。
【特許文献1】特開2002−393498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、両熱交換器コアを流れる冷却水の温度差に基づく熱応力によって対向流式熱交換器各部の歪み、亀裂、破損等が発生することを防止し、かつ、熱交換効率を高めることができる対向流式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の対向流式熱交換器は、交互に多数連結配置したチューブおよびフィンを有し、厚み方向に並列に配置した一対の熱交換器コアと、両熱交換器コアに設けた各チューブの一方端側をそれぞれ接続したUターン用中間タンクと、熱交換器コアの一方に設けたチューブの他端側を接続した流入側タンクと、流入側タンクとは別体として分離し、熱交換器コアの他方に設けたチューブの他端側を接続した流出側タンクと、を備え、両熱交換器コアが中間タンクを中心としてそれぞれ独立して伸縮変位可能になるように流入側タンクと流出側タンクと中間タンクとを車体側部材に取り付けて構成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の対向流式熱交換器では、両熱交換器コアを、中間タンクを中心としてそれぞれ独立して伸縮変位可能となるように、流入側タンクと流出側タンクと中間タンクとを車体側部材に対し回動可能に取り付けた構成としたことにより、両熱交換器コアを流れる冷却水の温度差に基づく熱応力によって各部の歪み、亀裂、破損等が発生することを防止することができるようになるという効果が得られる。
【0009】
また、流入側タンクと流出側タンクをそれぞれ別体に形成したことにより、流入側タンク側を流れる冷却水の熱が流出側タンクに伝わることが防止されるため、熱交換効率を高めることができるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の第1実施例の対向流式熱交換器を示す一部切欠正面図である。
【図2】図2は図1に示した実施例の対向流式熱交換器の斜視図である。
【図3】図3は図1に示した実施例の対向流式熱交換器の拡大上面図である。
【図4】図4は、図1に示した実施例の対向流式熱交換器の一部切欠拡大側面図である。
【図5】図5は、図1の対向流式熱交換器のブラケット周辺を一部変更したものを示す部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0011】
RA エンジン冷却水用ラジエータ(第1ラジエータ)
RB 電気系冷却水用ラジエータ(第2ラジエータ)
1 流入側熱交換器コア
11 チューブ
12 フィン
2 流出側熱交換器コア
21 チューブ
22 フィン
3 Uターン用中間タンク
3a 第1ラジエータ用中間タンク
3b 第2ラジエータ用中間タンク
31 ドレンパイプ
32 ドレンパイプ
4 流入側タンク
4a 第1ラジエータ用流入側タンク
4b 第2ラジエータ用流入側タンク
41 流入パイプ
42 流入パイプ
43 エア抜きパイプ
5 流出側タンク
5a 第1ラジエータ用流出側タンク
5b 第2ラジエータ用流出側タンク
51 流出パイプ
52 流出パイプ
53 エア抜きパイプ
6 ブラケット
6a 熱交換器側取付部
6b 車体側取付部
6c ボルト穴
6d ウエルドナット
61 ボルト
7 ゴムブッシュ(弾性支持部材)
8 ラジエータコアサポート(車体側部材)
8a 長孔
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、この発明の実施例による対向流式熱交換器を添付の図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1はこの実施例の対向流式熱交換器を示す一部切欠正面図、図2は同斜視図、図3は同拡大上面図、図4は同拡大側面図である。
この実施例の対向流式熱交換器は、流入側熱交換器コア1と、流出側熱交換器コア2と、両熱交換器コア1、2間を接続するUターン用中間タンク3と、流入側熱交換器コア1に接続された流入側タンク4と、流出側熱交換器コア2に接続された流出側タンク5と、熱交換器を車体側に支持するブラケット6と、中間タンク3を車体側に支持するゴムブッシュ7と、を備えている。なお、上記ゴムブッシュ7は、本発明の弾性支持部材に相当する。
【0014】
上記対向流式熱交換器の構造につきさらに詳述すると、流入側熱交換器コア1と流出側熱交換器コア2とは、それぞれ冷却水が流通するチューブ11、21と冷却用のフィン12、22とを交互に横方向に多数連結配置した構造としている。これらの両熱交換器コア1、2はそれらの厚み方向に並設された状態で車体に搭載配置している。
【0015】
両熱交換器コア1、2は、これらの両チューブ11、21の下端側をUターン用中間タンク3にそれぞれ接続するとともに、両チューブ11、21の上端側をそれぞれ別体として形成した流入側タンク4と流出側タンク5とにそれぞれ接続している。
【0016】
ブラケット6、6は、流入側タンク4と流出側タンク5とをラジエータコアサポート8に取り付けるための金具であり、流入側タンク4と流出側タンク5の長手方向両端部に設けている。なお、ラジエータコアサポート8は、本発明の車体側部材に相当する。
【0017】
即ち、これらの各ブラケット6は、その熱交換器側取付部6aを流入側タンク4と流出側タンク5の長手方向両端面部に対しそれぞれ1本のボルト61、61によりこれらのボルト61、61を中心としてそれぞれ回動可能になるように、取り付けている。また、これらの垂直な熱交換器側取付部6a、6aからそれぞれ内向き略水平方向に折曲形成された車体側取付部6b、6bには、車体側に取り付け固定するためのボルト穴6c、6cをそれぞれ1箇所設けると共に、これらのボルト穴6c、6cの下面側には、ウエルドナット6d、6dを溶接にて予め固定しておき、ラジエータコアサポート8側から挿通したボルト62、62を、ブッシュを介してウエルドナット6dにねじ込むことにより、流入側タンク4と流出側タンク5とをラジエータコアサポート8側に取り付け固定している。
【0018】
一方、Uターン用中間タンク3は、この下部に配置した複数のゴムブッシュ7、7を介してラジエータコアサポートに弾性支持している。
【0019】
流入側タンク4と流出側タンク5とUターン用中間タンク3との各内部は、それらの長手方向の途中で仕切って分割することにより、大容量の第1ラジエータRAと、小容量の第2ラジエータRBとが幅方向に一体化された構造となるようにしている。
【0020】
第1ラジエータRA側の流入側タンク4aと流出側タンク5aとには、流入パイプ41と流出パイプ51とをそれぞれ接続している。また、第2ラジエータRB側の流入側タンク4bと流出側タンク5bとにも、流入パイプ42と流出パイプ52とをそれぞれ接続している。なお、流入側タンク4a、4bにはエア抜きパイプ43、53を、または中間タンク3a、3bにはドレンパイプ31、32をそれぞれ設けてある。
【0021】
なお、一般の内燃機関車両においては、大容量の第1ラジエータRAがエンジン冷却水を冷却し、小容量の第2ラジエータRBは電気系冷却水を冷却するため等に用いることができ、また、ファンコイルユニット(FCU)を用いる燃料電池車(FCV)に適用される場合は、大容量の第1ラジエータRAがエアコンのヒータ回路やフュエルセルスタック等を冷却し、小容量の第2ラジエータRBは冷却水(LLC)を用いる燃料電池車(FCV)におけるインバータのモータやその回路等を冷却するため等に用いることができる。
【0022】
次に、この実施例の対向流式熱交換器の作用・効果を説明する。
上記のように構成された対向流式熱交換器では、第1ラジエータRAおよび第2ラジエータRBにおいて、流入パイプ41、42からそれぞれ各流入側タンク4a、4b内に流入した加熱冷却水は、それぞれ流入側熱交換器コア1、1のチューブ11、11内を流れる間に冷却された後、Uターン用中間タンク3a、3b内に流入し、この中間タンク3a、3b内からそれぞれ流出側熱交換器コア2、2のチューブ21、21内を流れる間にさらに冷却されて流出側タンク5a、5b内に流入し、流出パイプ51、52からそれぞれ排出される。
【0023】
流入側タンク4a、4bに接続される流入側熱交換器コア1、1側を流れる冷却水と、流出側タンク5a、5bに接続される流出側熱交換器コア2、2側を流れる冷却水とは、これら間の温度差が、第1ラジエータRA側では約40℃と極めて大きく、また、第2ラジエータRB側でも約20℃の温度差があるため、流入側熱交換器コア1、1と流出側熱交換器コア2、2との熱膨張差が大きくなる。しかしながら、本対向流式熱交換器では、流入側タンク4と流出側タンク5とをそれぞれ別体に分離して形成すると共に、流入側タンク4と流出側タンク5とを車体側であるラジエータコアサポート8に取り付けるためのブラケット6、6を、流入側タンク4と流出側タンク5との長手方向両端面に対しそれぞれ1本のボルト61、61により、これらの各ボルト61、61を中心として回動可能になるように、取り付けた構造としている。このため、本対向流式熱交換器では、温度変化によりUターン用中間タンク3を中心として流入側熱交換器コア1と流出側熱交換器コア2とがこれらの長手方向(上下方向)に伸縮し、その際、温度差によって両熱交換器コア1、2間に伸縮長さの差が生じても、流入側タンク4a、4bおよび流出側タンク5a、5bに対しブラケット6、6が両ボルト61、61を中心としてそれぞれ相対回動することで、伸縮長さの差を吸収することができる。
【0024】
また、Uターン用中間タンク3は、複数のゴムブッシュ7、7を介してラジエータコアサポート8に弾性支持した構成としたため、流入側熱交換器コア1と流出側熱交換器コア2との長手方向伸縮をゴムブッシュ7の弾性により吸収することができる。
【0025】
従って、流入側熱交換器コア1と流出側熱交換器コア2とを流れる冷却水の温度差に基づく熱応力によって各部の歪み、亀裂、破損等が発生することを防止することができるようになるという効果が得られる。
【0026】
また、流入側タンク4と流出側タンク5がそれぞれ別体に形成されることにより、流入側タンク側4を流れる冷却水の熱が直接、流出側タンク5に伝わり、流出側の冷却水が加熱されるのを防止することができる。従って、本対向流式熱交換器の熱交換効率を高めることができるという効果が得られる。
【0027】
以上、本発明を実施例に基づき説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0028】
例えば、上記実施例では、ブラケット6、6をそれぞれ1本のボルト61、61によりこれらのボルト61、61を中心としてそれぞれ回動可能に取り付けるようにしたが、図5に示すように、ブラケット6側のボルト挿通孔を長孔8aに形成することにより、ブラケット6に対し流入側タンク4a、4bおよび流出側タンク5a、5bがそれぞれ独立して相対摺動して変位可能となるよう構成してもよい。なお、ボルト61、61とブラケット6、6とは、いずれか一方を流入側タンク4a、4bと流出側タンク5a、5bとに、また他方を車体側に取り付けるようにすればよい。
【0029】
また、上記実施例では、1つのブラケット6に流入側タンク4と流出側タンク5を取り付けるようにしたが、それぞれ別体のブラケットにより取り付けるようにしてもよい。
【0030】
また、上記実施例では、Uターン用中間タンク3側を弾性支持する弾性支持部材としてゴムブッシュ7を用いたが、これに代えて板ばねやコイルスプリング等を用いることもできる。
【0031】
また、上記実施例では、流入側タンク4と流出側タンク5とUターン用中間タンク3との各内部をその長手方向の途中で仕切って分割することにより、大容量の第1ラジエータRAと、小容量の第2ラジエータRBとが幅方向に一体化された構造のものを例に取ったが、このように分割することなく全体を1つのラジエータとして用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の対向流式熱交換器は、一対の熱交換器を並列配置して用いるものであれば、自動車等の熱交換器へ適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に多数連結配置されたチューブとフィンとを有し、厚み方向に並列に配置された一対の熱交換器コアと、
該両熱交換器コアに設けられた各チューブの一方端側がそれぞれ接続されたUターン用中間タンクと、
前記熱交換器コアの一方に設けられたチューブの他端側が接続された流入側タンクと、
前記流入側タンクとは別体として分離形成され、前記熱交換器コアの他方に設けられたチューブの他端側が接続された流出側タンクと、を備え、
前記両熱交換器コアが前記中間タンクを中心としてそれぞれ独立して伸縮可能になるように前記流入側タンクと前記流出側タンクと中間タンクとを車体側部材に取り付けたことを特徴とする対向流式熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の対向流式熱交換器において、
前記流入側タンクと流出側タンクとを車体側に取り付けるためのブラケットを前記流入側タンクと前記流出側タンクの長手方向両端部に設け、
前記各ブラケットを前記流入側タンクと前記流出側タンクの長手方向両端面部に対しそれぞれボルトにより各ボルトを中心としてそれぞれ回動可能となるように車体側に取り付けたことを特徴とする対向流式熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の対向流式熱交換器において、
前記流入側タンクと前記流出側タンクとを車体側に取り付けるためのブラケットを前記流入側タンクと前記流出側タンクの長手方向両端部に設け、
前記各ブラケットに長孔を形成し、該長孔にボルトを摺動可能に挿入することにより、前記流入側タンクと前記流出側タンクとを車体側に相対変位可能に取り付けたことを特徴とする対向流式熱交換器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の対向流式熱交換器において、
前記中間タンクを弾性支持部材を介して車体側に取り付けたことを特徴とする対向流式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/038380
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514755(P2005−514755)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015052
【国際出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】