説明

対物レンズ、光ピックアップ及び光ディスク装置

【課題】 プラスチック製で且つ環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときの3次コマ収差の補償を実現する対物レンズ並びにこれを用いた光ピックアップ及び光ディスク装置を提供する。
【解決手段】
光ピックアップ1に用いられ光源3から出射された光ビームを光ディスクの一又は複数のレイヤーのそれぞれに集光するプラスチック製の対物レンズ4であり、開口数が0.8以上であり、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲における、当該対物レンズのレンズチルトで発生する3次コマ収差の符号がチルト角度方向に対して同じとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の光記録媒体に対して、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ、光ディスク装置等に用いられる対物レンズ、並びに、これを用いた光ピックアップ及び光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、情報信号の記録媒体として、波長785nm程度の光ビームを用いるCD(Compact Disc)や、CDより高密度記録を実現した波長660nm程度の波長の光ビームを用いるDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクがある。さらに、光ディスクには、DVDより高密度記録が実現された青紫色半導体レーザによる波長405nm程度の光ビームを用いて信号の記録再生を行う高密度記録が可能な光ディスク(以下、「高密度記録光ディスク」という。)がある。この高密度記録光ディスクとして、例えばBD(Blu-ray Disc(登録商標))のような、信号を記録する記録層を保護するカバーレイヤー(保護層)の厚さを薄くした構造のものが提案されている。
【0003】
上述のCD、DVD、BD等の光ディスクに情報信号の記録を行い、あるいは光ディスクに記録された情報信号の再生を行うために光ピックアップが用いられている。かかる光ピックアップ用の対物レンズとしては、量産性向上や軽量化等のために、その材料を、従来広く用いられていたガラスからプラスチック(合成樹脂)へ置き換えることが望まれる。
【0004】
しかしながら、ガラス製の対物レンズに比べて、プラスチック製の対物レンズを用いる場合には、そのプラスチックとしての特性を考慮して光学特性の劣化を避ける必要がある。プラスチック製のレンズを用いる際に最も懸念すべき事項は、プラスチックがガラスに比べて温度変化により屈折率が大きく変化するという特性を有することである。
【0005】
例えば、図15に示すように、一般のガラス材料としてのL−BAL42は、Lgに示すように温度によらず略一定の屈折率を有している。これに対して例えばZeonex340R等のプラスチック材料は、Lpに示すように温度変化に応じて大きくその屈折率が変化する特性を有しており、すなわち、屈折率の温度依存性が大きい材料である。尚、L−BAL42の屈折率の温度に対する変化率を示すdn/dTは、dn/dT=−3.30×10−6[/℃]であり、Zeonex340Rの屈折率の温度に対する変化率を示すdn/dTは、dn/dT=−1.29×10−4[/℃]である。そして、かかるプラスチック材料を光ピックアップ用の対物レンズに用いた場合には、温度変化に対して各種の光学特性が劣化することが懸念される。
【0006】
その劣化する光学特性の一つとして、対物レンズを傾斜(以下、「レンズチルト」ともいう。)させたときに発生する3次コマ収差の変化の感度の劣化が問題となる。以下では、レンズチルト1degree当たりで発生する3次コマ収差量を「レンズチルト感度」という。
【0007】
ここで、プラスチック製の対物レンズにおいてレンズチルト感度の劣化が問題となることについて説明する。光ピックアップは、様々な環境で用いられており、例えば、0℃〜75℃の範囲で正常に動作することが要求される。この温度変化によって、プラスチック製の対物レンズを用いた場合には、レンズチルト感度が変動してしまうこととなる。また、レンズチルト感度は、カバーレイヤー厚さが変化した際にも変動することとなる。
【0008】
また、BD等の高密度記録光ディスクに対する光ピックアップにおいては、対物レンズの高開口数化、使用光ビームの短波長化等の要因から収差に対する管理が厳しいといった前提条件がある。この場合、カバーレイヤーの誤差等により発生する3次球面収差を低減させるため対物レンズへの入射倍率を変動させるという手法が採用されつつある。さらに、記録層を2つ又は3つ以上有する所謂2層光ディスクや多層光ディスクに対する光ピックアップにおいても対物レンズへの入射倍率を変動させるという手法が用いられている。上述のレンズチルト感度は、対物レンズへの入射倍率が変動する場合にも劣化するという問題がある。また、上述のような温度変化があった場合には対物レンズの屈折率変化等により3次球面収差が発生することとなり、この場合にも、かかる3次球面収差を低減させるため対物レンズへの入射倍率を変動させる必要がある。この温度変化により対物レンズへの入射倍率を変動させる場合にも、レンズチルト感度が劣化するという問題がある。
【0009】
そして、一般的なレンズチルト感度を有するガラス製の対物レンズと同様の指針でプラスチック製の対物レンズを形成した場合には、この温度変化やカバーレイヤー厚さ変化等の要因からレンズチルト感度の劣化が致命的となるような場合がある。具体的に、設計中心状態として温度35℃、カバーレイヤー厚さ87.5μmとして従来の指針で対物レンズを形成した場合に以下のような問題がある。すなわち、かかる対物レンズでは、温度75℃、カバーレイヤー厚さ100μmという設定条件において、例えば図16(a)に示すようにレンズチルト感度がほぼ0となってしまうという問題があった。尚、図16(a)は、温度75℃、カバーレイヤー厚さ100μmの状態におけるレンズチルト角度の変化に対して発生する3次コマ収差の発生量、すなわち、レンズチルト特性を示すための図である。そして、図16(a)中LJLTは、従来の指針で対物レンズを形成した場合の上述の75℃、100μmの設定条件におけるレンズチルト感度を示すものである。
【0010】
さらに、このレンズチルト感度の劣化による問題をディスクチルト特性を示す図16(b)等を用いて説明する。上述のような各種光ディスクに対する光ピックアップでは、光ディスクの反りや傾きで生じるコマ収差を、対物レンズを傾斜させることでキャンセルするという補償手法が一般的に用いられている。
【0011】
すなわち、光ディスクが傾斜した場合、そのディスクチルト角度に応じて、例えば図16(b)に示すような3次コマ収差が発生することとなる。図16(b)中LDTは、ディスクチルト特性、すなわち、ディスクチルト角度に対する発生する3次コマ収差の量を示し、横軸は、ディスクチルト角度[degree]、縦軸は、3次コマ収差[mλrms]を示す。図16(b)に示すような例においては、ディスクチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差量を示すディスクチルト感度が、98.7程度存在している。従来の補償手法では、このディスクチルト角度に応じて発生する3次コマ収差を打ち消す3次コマ収差を対物レンズを傾斜させることにより発生させることでキャンセルするものである。
【0012】
そして、上述のようなレンズチルト感度が劣化した場合、特に0付近となった場合には、対物レンズを傾斜させても、光ディスクの傾斜により発生する3次コマ収差を打ち消すことができず、かかるコマ収差の残留による各種信号劣化が問題となる。換言すると、光ディスクの傾斜により発生するコマ収差を低減できず、記録再生特性の劣化を招来するといった問題があった。
【0013】
【特許文献1】特開2008−112575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、対物レンズをプラスチック製とすることによる量産性や軽量化を向上させるとともに、光ピックアップに用いられた場合に環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにも、3次コマ収差の補償を実現可能として良好な記録再生特性を実現する対物レンズ、並びにこれを用いた光ピックアップ及び光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するため、本発明に係る対物レンズは、開口数が0.8以上であり、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲における、当該対物レンズのレンズチルトで発生する3次コマ収差の符号が同じであるプラスチック製の対物レンズである。
【0016】
また、本発明に係る対物レンズは、開口数が0.8以上であり、温度変化量をΔTとし、光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化量をΔLとし、当該対物レンズの屈折率温度係数をdn/dTとし、当該対物レンズの焦点距離をfとしたとき、設計中心状態における当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が、1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)[mλrms]以上であるプラスチック製の対物レンズである。
【0017】
また、本発明に係る光ピックアップは、光源から出射された光ビームを光ディスクの一又は複数のレイヤーのそれぞれに集光する対物レンズを備え、上記対物レンズには、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率で光ビームが入射される光ピックアップであり、この光ピックアップに用いる対物レンズとして、上述したようなものを用いたものである。
【0018】
さらに、本発明に係る光ディスク装置は、光源から出射された光ビームを光ディスクの一又は複数のレイヤーのそれぞれに集光する対物レンズを有する光ピックアップを備え、上記対物レンズには、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率で光ビームが入射される光ディスク装置であり、この光ディスク装置に用いる対物レンズとして、上述したようなものを用いたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、対物レンズをプラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、レンズチルト感度の変動を考慮した構成とすることにより、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにも3次コマ収差の補償を実現する。すなわち、本発明は、量産性や軽量化を実現させるとともに、設定条件において良好なレンズチルト感度を保持することにより良好な収差補正を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、発明を実施するための最良の形態を以下の順で説明する。
1.光ピックアップ及び光ディスク装置の全体構成
2.光ピックアップによる3次球面収差の補正について
3.対物レンズによる3次コマ収差の補償について
4.対物レンズの構成例及び比較例について
【0021】
〔1.光ピックアップ及び光ディスク装置の全体構成〕
以下、本発明が適用された光ピックアップ1及びこれを用いた光ディスク装置について、図面を参照して説明する。
【0022】
本発明が適用された光ピックアップ1は、光記録媒体としての光ディスク2に対して情報の記録再生を行うものである。そして、光ピックアップ1は、この光ディスク2を回転する駆動部となるスピンドルモータ、この光ピックアップ1を光ディスクの径方向に移動させる送りモータ等とともに光ディスク装置を構成する。そして、光ピックアップ1は、スピンドルモータによって回転操作された光ディスク2に対して情報の記録再生を行う。
【0023】
ここで用いられる光ディスク2は、例えば、発光波長が405nm程度(青紫色)の半導体レーザを用いた高密度記録が可能な高密度記録光ディスク等である。尚、本発明は、上述の光ディスクのみならず光学的に記録及び/又は再生が可能な光記録媒体に対して記録及び/又は再生を行う光ピックアップ及び光ディスク装置にも適用される。また、本発明は、光ビームの入射方向に一又は複数の記録層(「レイヤー」ともいう。)が積層化された光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップにも適用される。
【0024】
本発明を適用した光ピックアップ1は、図1に示すように、波長が略405nmの光ビームを出射する光源部3と、光源部3から出射された光ビームを光ディスク2の信号記録面に集光する対物レンズ4とを備える。また、光ピックアップ1は、光源部3及び対物レンズ4の間に設けられるコリメータレンズ5を備える。
【0025】
また、光ピックアップ1は、光ディスク2で反射された戻りの光ビームを検出する光検出器6と、光ディスク2で反射された戻りの光ビームを光検出器6に導くビームスプリッタ7とを備える。
【0026】
光源部3は、例えば、半導体レーザ等からなり、設計波長が405nm程度とする所定波長の光ビームを出射する発光部を有する。尚、光源部3から出射される光ビームの波長は、これに限られるものではない。
【0027】
ビームスプリッタ7は、光源部3とコリメータレンズ5との間の光路上に配置され、光源部3からの光ビームを透過してコリメータレンズ5に導くと共に、光ディスク2で反射された戻りの光ビームを反射して光検出器6に導く。すなわち、ビームスプリッタ7は、戻りの光ビームの光路を、往路の光ビームの光路から分岐する光学素子である。
【0028】
コリメータレンズ5は、ビームスプリッタ7と対物レンズ4との間に配置され、通過する光ビームの発散角を変換する発散角変換手段であり、光源部3から出射されビームスプリッタ7に反射された光ビームの発散角を変換して略平行光等の所望の角度にする。
【0029】
また、このコリメータレンズ5は、例えば、光ディスク2のカバーレイヤー厚さの誤差や温度変化等の要因により発生する3次球面収差を補正するために、移動されることにより、その位置に応じて、対物レンズ4に入射する光ビームの発散角を変換する。すなわち、コリメータレンズ5は、光軸方向に移動可能とされており、光ピックアップ1には、このコリメータレンズ5を光軸方向に駆動して移動させるコリメータレンズ駆動部11が設けられている。コリメータレンズ駆動部11は、例えば送りモータによってリードスクリューを回転させて移動させる構成としてもよいし、その他の構成であってもよい。すなわち、コリメータレンズ駆動部は、対物レンズ駆動部のように、マグネットとコイルに流れる電流の作用により、コリメータレンズ5を移動させる構成としても良い。さらに、リニアモータ等を用いてもよい。そして、コリメータレンズ5は、移動されることにより、例えば平行光より僅かに収束された状態である収束光の状態で、又は僅かに発散された状態である発散光の状態で対物レンズ4に入射させることで、発生する球面収差を低減することができる。
【0030】
また、コリメータレンズ5は、光ピックアップ1が、記録層が複数設けられている多層型タイプの光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップであった場合には、各記録層毎に適切な位置に移動される。その際、コリメータレンズ5は、各記録層(各記録レイヤー)に応じた位置に移動されることで、各記録層から光ディスクの光入射側の表面までの厚さ(「カバーレイヤー厚さ」ともいう。)の違いに起因する球面収差を低減できる。すなわち、コリメータレンズ5及びコリメータレンズ駆動部11は、複数の記録層のそれぞれに対して適切に光ビームのビームスポットを形成することができる。このように、コリメータレンズ5等は、温度変化やカバーレイヤー厚さ変化により発生する3次球面収差を低減でき、適切なビームスポットを形成することを可能とする。
【0031】
以上のように、コリメータレンズ5及びコリメータレンズ駆動部11は、対物レンズ4への光ビームの入射倍率を変換する入射倍率可変部として機能する。ここで、本発明を適用した光ピックアップ1を構成する入射倍率可変部は、これに限られるものではなく、所謂ビームエキスパンダや液晶素子等であってもよい。
【0032】
対物レンズ4は、コリメータレンズ5により発散角を変換された光ビームを光ディスク8の記録面に集光させる。対物レンズ4の入射側には、開口絞り8が設けられ、この開口絞り8は、対物レンズ4に入射する光ビームの開口数を所望の開口数となるように開口制限を行う。
【0033】
対物レンズ4は、光ピックアップ1に設けられる対物レンズ駆動部12により移動自在に保持されている。そして、この対物レンズ4は、光検出器6で検出された光ディスク2からの戻り光により生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズ駆動部12により変位される。これにより、対物レンズ4は、図2に示す光ディスク2に近接離間する方向(フォーカス方向F)及び光ディスク2の径方向(トラッキング方向T)の2軸方向へ変位される。対物レンズ4は、光源部3からの光ビームが光ディスク2の記録面上で常に焦点が合うように、この光ビームを集束するとともに、この集束された光ビームを光ディスク2の記録面上に形成された記録トラックに追従させる。また、対物レンズ4は、上述の2軸方向のみならず、対物レンズ4のチルト方向に傾斜可能とされ、光検出器6で検出された信号等に基づいて当該チルト方向に対物レンズ駆動部12により移動操作される。このように、対物レンズ駆動部12は、フォーカス方向、トラッキング方向及びチルト方向に対物レンズ4を駆動するものであり、所謂3軸アクチュエータである。かかる対物レンズ4は、チルト方向に傾斜されることにより、コマ収差を低減することが可能である。
【0034】
ここで、チルト方向としては、図2に示すように、上述のフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに直交するタンジェンシャル方向Tzを軸とした軸回り方向である所謂ラジアルチルト方向Tirを意味するが、これに限られるものではない。すなわち、当該対物レンズ4は、トラッキング方向を軸とした軸回り方向である所謂タンジェンシャルチルト方向に駆動可能なように構成しても良い。また、ラジアルチルト方向及びタンジェンシャルチルト方向に駆動可能とした4軸方向に駆動可能なように構成しても良い。このように、タンジェンシャルチルト方向にも駆動可能な構成とした場合には、後述の対物レンズ4の効果により、タンジェンシャルチルト方向のコマ収差についても、温度やカバーレイヤー厚さの設定状態によらず常に低減することを実現する。
【0035】
対物レンズ駆動部12は、固定部と、対物レンズ4を保持するとともに固定部に対して可動とされた可動部とから構成されるとともに、各駆動方向に駆動力を発生させるコイルやマグネットを有して構成される。対物レンズ駆動部12は、例えば、フォーカス方向に駆動力を発生させるフォーカスコイルや、トラッキング方向に駆動力を発生させるトラッキングコイルや、チルト方向に駆動力を発生させるチルトコイルや、各コイルに対応したマグネットを有している。ここで、単独してチルト駆動用として、単独してコイルを設けることなく、フォーカスコイルの内、トラッキング方向やタンジェンシャル方向に並んで配置されるフォーカスコイルに発生する駆動力に差異を設けるようにしてもよい。かかる場合には、この駆動力の差異により、チルト方向に駆動力を発生させることができる。
【0036】
この対物レンズ4は、開口数(NA)が0.8以上とされたプラスチック製の単玉対物レンズであり、その入射側の第1面4a及び出射側の第2面4bの両面が非球面形状とされている。
【0037】
具体的に、対物レンズ4の第1面4a及び第2面4bの非球面形状は、以下の式(1)によって与えられるものとする。尚、式(1)中においては、rは、光軸からの距離(mm)を示し、f(r)は、光軸からの距離がrの位置における非球面の面頂点の接平面からの距離(mm)を示す。また、Kは、円錐定数を示し、A〜Jは、それぞれ4次、6次、8次、10次、12次、14次、16次、18次、20次の非球面係数を示すものである。
【0038】
【数1】

【0039】
対物レンズ4は、プラスチック製であることにより、従来のガラス製に比べて量産性や軽量化を向上させる。
【0040】
また、この対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにも、当該対物レンズ4への入射倍率を変化させることにより、常に3次球面収差を補正する、すなわち低減することを実現する。かかる対物レンズ4による「3次球面収差を補正する手法」については後述する。
【0041】
また、対物レンズ4は、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率における、当該対物レンズ4のレンズチルトで発生する3次コマ収差の符号がチルト角度に対して同じとなるように構成されている。
【0042】
かかる構成とされた対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにも常に3次コマ収差の補償を実現する。この「3次コマ収差の補償」については、後述する。
【0043】
光検出器6は、光ディスク1の信号記録面で反射された光ビームのそれぞれを受光するためのフォトディテクタを有し、RF信号とともにトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号等の各種信号を検出する。
【0044】
以上のように構成された光ピックアップ1は、この光検出器6により検出された戻り光により生成されたフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づいて、対物レンズ4を駆動して、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行う。対物レンズ4が駆動されることにより、光ディスク2の信号記録面に対して合焦する合焦位置に移動されて、光ビームが光ディスク2の記録面上に合焦されて、光ディスク2に対して情報の記録又は再生を行う。また、光ピックアップ1は、光ディスクの反り等により発生するコマ収差を対物レンズ4を対物レンズ駆動部12によりチルト方向に傾斜させることにより相殺するコマ収差を発生させることで低減することができる。これにより、光ピックアップ1及びこれを用いた光ディスク装置は、良好な記録再生特性を有する。
【0045】
本発明を適用した光ピックアップ1及び光ディスク装置は、上述のコリメータレンズ5及びコリメータレンズ駆動部11等の入射倍率可変部を有することにより、温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があった場合にも、球面収差を低減することができる。また、かかる光ピックアップ1及び光ディスク装置は、上述の対物レンズ4を備えることにより、温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があった場合にも、光ディスクの反り等により発生するコマ収差を低減することができる。この点について以下に詳細に説明する。
【0046】
〔2.光ピックアップによる3次球面収差の補正について〕
次に、本発明を適用した光ピックアップの対物レンズ4等による「3次球面収差を補正する手法」について詳細に説明する。すなわち、以下では、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときに発生する球面収差を補正する手法について説明する。尚、BD用対物レンズのようにレンズの開口数が高く設定されている場合、カバーレイヤー(記録カバー層)の厚さ変化によって発生する球面収差の量は大きい。またさらに、材料をガラスからプラスチックとすることにより、上述した図15の例に示すように、屈折率の温度依存性が高いことに起因して、温度変化によって発生する球面収差の量も大きい。
【0047】
本発明を適用した対物レンズ4及びこれを用いた光ピックアップ1等では、かかるカバーレイヤー厚さや環境温度の変化により発生する球面収差を補正するため、対物レンズ4への光ビームの入射倍率を変化させている。すなわち、当該対物レンズ4及び光ピックアップ1は、上述したように、コリメータレンズ5を光軸方向に駆動させ、対物レンズ4への光ビームの入射倍率を変化させることで球面収差を補正する。
【0048】
これは、対物レンズ4の入射倍率変化により発生する球面収差が、カバーレイヤー厚さ変化により発生する球面収差や、温度変化により発生する球面収差と逆の極性となるようコリメータレンズ5の駆動量を調整することで、収差をキャンセルさせる手法である。ここで、温度変化により発生する球面収差とは、温度変化によるレンズ形状の膨張収縮変化、温度変化によるレンズ材料屈折率変化、及び温度変化による入射光の波長変化により発生する球面収差をいう。尚、かかるコリメータレンズ5の駆動量、すなわち移動される位置は、例えば、ディテクタにより検出される信号に応じて決定されるようにしてもよい。また、環境温度を検出し、カバーレイヤー厚さを検出することにより、当該環境温度やカバーレイヤー厚さに応じて決定されるようにしてもよい。
【0049】
以下に球面収差補正状態における光学系の配置について説明するが、その説明に先立ち対物レンズ4への入射倍率について図3を用いて説明する。図3に示すように、対物レンズ4への光ビームの入射倍率βは、β=S’/Sで定義される。ここで、Sは、物点Oを含む物面SO1から対物レンズ4の物側主面SM1までの光軸方向の距離を示し、S’は、対物レンズ4の像側主面SM2から像点Iを含む像面SI2までの光軸方向の距離を示す。また、S,S’は、光ビームの進行方向に向けた値を正の値とする。尚、図3に示す状態は、対物レンズ4へ発散光が入射した場合の図であり、この状態の入射倍率を正の入射倍率とする。すなわち、対物レンズ4へ収束光が入射した場合には、物面SO1が物側主面SM1より光ビーム進行方向側に位置することとなり、Sが負の値となるため、入射倍率を示すβが負の値となる。換言すると、対物レンズ4へ収束光が入射した場合の入射倍率は、負の入射倍率となる。
【0050】
そして、具体的に、図4及び図5に球面収差補正状態における光学系配置の概念図を、それぞれ温度が変化した場合、カバーレイヤー厚さが変化した場合について示す。図4(a)及び図5(a)は、温度及びカバーレイヤー厚さが設計中心状態である場合のコリメータレンズ5及び対物レンズ4の配置関係を概念的に示す模式図である。尚、以下では、設計中心状態の温度をTといい、設計中心状態のカバーレイヤー厚さをLという。一般的に、設計中心状態では、コリメータレンズにより平行光とされた光ビームが対物レンズに入射させることが多い。そのため、当該光ピックアップ1においても、温度T、カバーレイヤー厚さLのときには、図4(a)及び図5(a)に示すように、平行光の状態で対物レンズ4に入射されるように構成されているものとして説明する。すなわち、かかる図4(a)及び図5(a)に示す場合、対物レンズ4に入射する光ビームの倍率は0の状態とされている。但し、本発明はこれに限られるものではない。
【0051】
図4(b)は、カバーレイヤー厚さがLの場合に、最大温度Tmaxのときのコリメータレンズ5及び対物レンズ4の配置関係を示す模式図である。図4(b)の場合には、図4(a)の場合の位置P(T,L)と比べてコリメータレンズ5が光源側の位置P(Tmax,L)に位置し、平行光の状態よりやや発散光の状態で対物レンズ4に入射することとなる。すなわち、かかる図4(b)に示す場合、対物レンズ4に入射する光ビームの倍率は、正の状態とされている。
【0052】
図5(b)は、温度がTの場合に、最大カバーレイヤー厚さLmaxのときのコリメータレンズ5及び対物レンズ4の配置関係を示す模式図である。図5(b)の場合には、図5(a)の場合の位置P(T,L)と比べてコリメータレンズ5が光源側の位置(T,Lmax)に位置し、平行光の状態よりやや発散光の状態で対物レンズ4に入射することとなる。すなわち、かかる図5(b)に示す場合、対物レンズ4に入射する光ビームの倍率は、正の状態とされている。尚、図4,図5中、カバーレイヤー2aは、設計中心状態におけるカバーレイヤーLであることを、カバーレイヤー2bは、最大カバーレイヤー厚さLmaxであることを示している。
【0053】
次に、対物レンズ4の入射倍率と3次球面収差との関係について図6及び図7に示す。ここで、後述の本発明の対物レンズ4の構成例(設計例)についての関係を図6(a)及び図7(a)に示し、この本発明の構成例と比較するための比較例についての関係を図6(b)及び図7(b)に示す。図6及び図7の横軸は、入射倍率を示し、縦軸は、3次球面収差[mλrms]を示す。
【0054】
また、図6(a)及び図6(b)は、カバーレイヤー厚さを87.5μmに固定し、温度が0℃、35℃、75℃の場合における入射倍率と3次球面収差との関係について示す図である。図6(a)中L1PTLは、0℃の場合の関係を示し、L1PTCは、35℃の場合の関係を示し、L1PTHは、75℃の場合の関係を示す。図6(b)中L1CTLは、0℃の場合の関係を示し、L1CTCは、35℃の場合の関係を示し、L1CTHは、75℃の場合の関係を示す。
【0055】
また、図7(a)及び図7(b)は、温度を35℃に固定し、カバーレイヤー厚さが75μm、87.5μm、100μmの場合における入射倍率と3次球面収差との関係について示す図である。図7(a)中L2PLLは、75μmの場合の関係を示し、L2PLCは、87.5μmの場合の関係を示し、L2PLHは、100μmの場合の関係を示す。図7(b)中L2CLLは、75μmの場合の関係を示し、L2CLCは、87.5μmの場合の関係を示し、L2CLHは、100μmの場合の関係を示す。
【0056】
例えば、図6(a)に示したカバーレイヤー厚さ87.5μmで温度75℃の場合においては、入射倍率0の状態では200mλrms程度の3次球面収差が発生することとなる。したがって、上述したように、入射倍率を0.0072に変更し3次球面収差が最小値となるように補正された状態で使用することとなる。
【0057】
また、図7(a)に示した温度35℃でカバーレイヤー厚さ100μmの場合においては、入射倍率0の状態では103.7mλrmsの3次球面収差が発生することとなる。したがって、上述したように、入射倍率を0.0040に変更し3次球面収差が最小値となるように補正された状態で使用することとなる。
【0058】
以上のような、各設定状態における3次球面収差が最小となる対物レンズ4への入射倍率の一覧を表1及び表2に示す。表1は、本発明の対物レンズ4の構成例についての一覧であり、表2は、比較例についての一覧である。かかる表1及び表2は、図6、図7、及び後述の図8〜図11等に対応するものである。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
〔3.対物レンズによる3次コマ収差の補償について〕
次に、対物レンズ4のレンズチルト感度について説明するが、かかるレンズチルト感度を、入射倍率との関係を考慮して図8及び図9を用いて説明する。尚、レンズチルト感度とは、レンズチルト1degree当たりで発生する3次コマ収差量を意味するものとする。
【0062】
すなわち、対物レンズ4のレンズチルト感度と入射倍率の関係を図8及び図9に示す。ここで、本発明の対物レンズ4の構成例についての関係を図8(a)及び図9(a)に示し、この本発明の構成例と比較するための比較例についての関係を図8(b)及び図9(b)に示す。図8及び図9の横軸は、入射倍率を示し、縦軸は、レンズチルト感度[mλrms/degree]を示す。
【0063】
また、図8(a)及び図8(b)は、カバーレイヤー厚さを87.5μmに固定し、温度が0℃、35℃、75℃の場合における入射倍率と3次球面収差との関係について示す図である。図8(a)中L3PTLは、0℃の場合の関係を示し、L3PTCは、35℃の場合の関係を示し、L3PTHは、75℃の場合の関係を示す。図8(b)中L3CTLは、0℃の場合の関係を示し、L3CTCは、35℃の場合の関係を示し、L3CTHは、75℃の場合の関係を示す。
【0064】
また、図9(a)及び図9(b)は、温度を35℃に固定し、カバーレイヤー厚さが75μm、87.5μm、100μmの場合における入射倍率と3次球面収差との関係について示す図である。図9(a)中L4PLLは、75μmの場合の関係を示し、L4PLCは、87.5μmの場合の関係を示し、L4PLHは、100μmの場合の関係を示す。図9(b)中L4CLLは、75μmの場合の関係を示し、L4CLCは、87.5μmの場合の関係を示し、L4CLHは、100μmの場合の関係を示す。
【0065】
図8及び図9に示すように、レンズチルト感度の値が最も小さくなるのは、倍率が正方向に最も大きくなる必要がある設定状態のときであり、つまり「温度75℃・カバーレイヤー厚さ100μm」の場合であることが示されている。
【0066】
図8及び図9で説明した事項を整理するため、図10に、実際の使用状態として想定される代表的な6状態についての入射倍率と3次球面収差との関係のグラフを、使用倍率範囲とともに示す。ここで、本発明の対物レンズ4の構成例について図10(a)に示し、比較例について図10(b)に示す。ここで、代表的な6状態とは、所謂2層光ディスクで使用される各記録レイヤーL1,L0までのカバーレイヤー厚さ75μm、100μmのそれぞれにおける最高温度75℃、設計温度35℃、最低温度0℃の状態を意味する。
【0067】
図10の横軸は、入射倍率を示し、縦軸は、レンズチルト感度[mλrms/degree]を示す。図10(a)及び後述の図11(a)中L5PL1TLは、所謂L1記録層までのカバーレイヤー厚さ75μmで温度0℃の状態を示す。また、L5PL0TLは、所謂L0記録層までのカバーレイヤー厚さ100μmで温度0℃の状態を示す。また、L5PL1TCは、カバーレイヤー厚さ75μmで温度35℃の状態を示す。また、L5PL0TCは、カバーレイヤー厚さ100μmで温度35℃の状態を示す。また、L5PL1THは、カバーレイヤー厚さ75μmで温度75℃の状態を示す。また、L5PL0THは、カバーレイヤー厚さ100μmで温度75℃の状態を示す。
【0068】
図10(b)及び後述の図11(b)中L5CL1TLは、カバーレイヤー厚さ75μmで温度0℃の状態を示す。また、L5CL0TLは、カバーレイヤー厚さ100μmで温度0℃の状態を示す。また、L5CL1TCは、カバーレイヤー厚さ75μmで温度35℃の状態を示す。また、L5CL0TCは、カバーレイヤー厚さ100μmで温度35℃の状態を示す。また、L5CL1THは、カバーレイヤー厚さ75μmで温度75℃の状態を示す。また、L5CL0THは、カバーレイヤー厚さ100μmで温度75℃の状態を示す。
【0069】
また、図10(a)中RPTLは、温度0℃の場合の入射倍率の使用範囲を示し、RPTCは、温度35℃の場合の入射倍率の使用範囲を示し、RPTHは、温度75℃の場合の入射倍率の使用範囲を示す。また、図10(b)中RCTLは、温度0℃の場合の入射倍率の使用範囲を示し、RCTCは、温度35℃の場合の入射倍率の使用範囲を示し、RCTHは、温度75℃の場合の入射倍率の使用範囲を示す。図10(a)及び図10(b)によれば、上述したように、「温度75℃・カバーレイヤー厚さ100μm」の場合にレンズチルト感度の値が最も小さくなることが示されている。
【0070】
図10(b)に示すように、従来例の対物レンズにおいては、使用範囲内において、レンズチルト感度の最小値がほぼ0となる値を含むこととなっている。これに対し、図10(a)に示すように、本発明の対物レンズ4の構成例においては、レンズチルト感度全体が持ち上がっているとともに、最小値も48.3となっている。このように、使用範囲内において大きいレンズチルト感度を確保することができる。このように、本発明の対物レンズ4の構成例は、全使用設定範囲においてレンズチルト感度を持ち、上述した問題を解決したレンズである。換言すると、本発明を適用した対物レンズ4は、全使用設定範囲において、適切なレンズチルト感度を確保して、3次コマ収差を良好に補正すること、すなわち3次コマ収差の補償を実現する。
【0071】
また、図10では、温度0℃、35℃、75℃の場合の入射倍率の使用範囲を示したが、同様に、図11にカバーレイヤー厚さ毎の入射倍率の使用範囲を示す。図11(a)中RPL1は、カバーレイヤー厚さ75μmの場合の入射倍率の使用範囲を示し、RPL0は、カバーレイヤー厚さ100μmの場合の入射倍率の使用範囲を示す。図11(a)中RCL1は、カバーレイヤー厚さ75μmの場合の入射倍率の使用範囲を示し、RCL0は、カバーレイヤー厚さ100μmの場合の入射倍率の使用範囲を示す。図11(a)及び図11(b)によれば、上述したように、「温度75℃・カバーレイヤー厚さ100μm」の場合にレンズチルト感度の値が最も小さくなることがより明確に示されている。
【0072】
図11(b)に示すように、従来例の対物レンズにおいては、使用範囲内において、レンズチルト感度の最小値がほぼ0となる値を含むこととなっている。これに対し、図11(a)に示すように、本発明の対物レンズ4の構成例においては、レンズチルト感度全体が持ち上がっており、使用範囲内においてレンズチルト感度を持ち、上述した問題を解決したレンズである。換言すると、本発明を適用した対物レンズ4は、全使用設定範囲において、適切なレンズチルト感度を確保して、3次コマ収差を良好に補正すること、すなわち3次コマ収差の補償を実現する。
【0073】
次に、上述した対物レンズ4におけるレンズチルト感度の最小値として適切な値を説明する。上述の図16(a)及び後述の図14は、レンズチルト感度が最小値をとる「温度75℃・カバーレイヤー厚さ100μm」の状態におけるレンズチルト感度と発生する3次コマ収差の関係を示すものである。また、上述の図16(b)は、ディスクチルト感度と発生する3次コマ収差の関係(ディスクチルト特性)を示したものである。この図16(b)に示す特性は、対物レンズ4の開口数と、光ディスクの特性とにのみ依存する値であり、レンズ設計には依存しない。
【0074】
ここで、光ディスクの特性は、ディスク構成材料の屈折率及びカバーレイヤー厚さを意味する。光ディスクの反りの最大値は、BD−ROM規格により規定されており、最大0.4degreeである。したがって、図16(b)に示したディスクチルト特性から、光ディスクの反りにより最大39.5mλrmsの3次コマ収差が発生することとなる。
【0075】
上述したように、光ピックアップシステムにおいては一般に、このようなディスクチルトにより発生した3次コマ収差を、対物レンズ自体をチルトさせることにより補正する。したがって、原理的には0より大きなレンズチルト感度をもつ対物レンズであれば、この補正が可能である。
【0076】
すなわち、上述の対物レンズ4は、温度やカバーレイヤー厚さ等の設定状態の変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲において、レンズチルトで発生する3次コマ収差が0を含まない構成により、3次コマ収差補償を実現する。
【0077】
換言すると、対物レンズ4は、温度及び光ディスクのカバーレイヤー厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲における、対物レンズ4のレンズチルトで発生する3次コマ収差の符号がチルト角度方向に対して同じ構成とされればよい。ここで、対物レンズ4のレンズチルトで発生する3次コマ収差の符号がチルト角度方向に対して同じとは、チルト角度方向におけるレンズチルト感度の符号が同じことを意味する。さらに換言すると、レンズチルト角度に対して発生する3次コマ収差を示す線分(例えば後述の図13のL7βTCLC等)の傾きの符号が各入射倍率の範囲において同じことを意味する。ここで、レンズチルト角度とは、対物レンズ4が光ディスクに正対した状態(平行とされた状態)を基準状態として、かかる基準状態に対して対物レンズ4がチルト方向に傾斜した角度を意味する。また、チルト方向とは、ここでは、所謂ラジアルチルト方向を意味する。かかる本発明を適用した対物レンズ4は、かかる構成により、3次コマ収差補償を実現し、これによりプラスチックにより形成された場合にも、プラスチックの屈折率特性にかかわらず良好な収差補正を実現する。
【0078】
また、対物レンズ4を駆動する対物レンズ駆動部12としてのアクチュエータの構成や、BD等のワーキングディスタンスを考慮すると、対物レンズのレンズチルトの最大角度は以下のように決定される。すなわち、レンズチルト最大角度θmaxは、対物レンズの回転中心からレンズホルダの突端部までの水平方向の距離Lと、レンズホルダの突端部と光ディスクの間の垂直方向の距離であるワーキングディスタンスWDを用いて表すことができる。すなわち、θmaxは、関係式(θmax=tan−1(WD/L))で決定される。ここで、Lは、一般的に5.90mm程度とされる。また、WDは、光ディスクとレンズホルダの突端部の厚み設計値により決定される値であるが、さらにそれぞれの部品の製造公差を勘案して、計算される。
【0079】
ここで、考慮すべき公差の値としては、まず、光ディスクのカバーレイヤー厚さの公差等の光ディスク側の要因による公差(±34μm)がある。さらに、考慮すべき公差の値としては、対物レンズ自体の動作距離の公差(±40μm)、レンズプロテクタの厚み公差(±20μm)等の対物レンズ側の要因による公差がある。これらの光ディスク側の要因による公差と、対物レンズ側の要因による公差との積み上げによりWD、θmax等を決定すべきである。これらの複数の公差を考慮する際には、公差内でそれぞれの要因値がどのような分布を持つかによって、単純に和をとる、若しくは2乗和の平方根の和をとる、等公差積み上げのロジックの種類が存在しており、それぞれ以下のような値が決定される。
【0080】
すなわち、設計中心値による場合は、WD=0.270[mm]である。また、設計中心値から、光ディスク側単純和公差と対物レンズ側2乗和平方根公差との和を引いた場合は、WD=0.168[mm](=設計中心値−(ディスク側単純和公差+レンズ側2乗和平方根公差))である。さらに、設計中心値から、光ディスク側2乗和平方根公差と対物レンズ側2乗和平方根公差との和を引いた場合は、WD=0.085[mm](=設計中心値−(ディスク側2乗和平方根公差+レンズ側2乗和平方根公差))である。
【0081】
よって、これらの3種類のWDのそれぞれの場合に、θmaxは、以下のように決定される。すなわち、WD=0.270の場合に、θmaxは、θmax=tan−1(0.270/5.90)=2.62degreeである。また、WD=0.168の場合に、θmaxは、θmax=tan−1(0.168/5.90)=1.63degreeである。また、WD=0.085の場合に、θmaxは、θmax=tan−1(0.085/5.90)=0.83degreeである。
【0082】
したがって、これらの値のそれぞれの場合に、必要なレンズチルト感度は、補正すべきディスクチルトにより発生する3次コマ収差をθmaxで除算することにより、以下のように決定される。すなわち、θmax=2.62の場合に、レンズチルト感度は、39.5[mλrms]/2.62[degree]=15.1[mλrms/degree]である。また、θmax=1.63の場合に、レンズチルト感度は、39.5[mλrms]/1.63[degree]=24.2[mλrms/degree]である。また、θmax=0.83の場合に、レンズチルト感度は、39.5[mλrms]/0.83[degree]=47.9[mλrms/degree]である。
【0083】
よって、使用波長が405nm程度の光ディスクに対するものであって、開口数が0.85程度の対物レンズ4は、15.1mλrms/degree以上のレンズチルト感度を有していれば、3次コマ収差の最大値である39.5mλrms程度の収差を補償可能である。また、24.2mλrms/degree以上のレンズチルト感度を有していれば、より確実に、且つより少ないチルト角で3次コマ収差を補償可能である。さらに、47.9mλrms/degree以上のレンズチルト感度を有していれば、さらに確実に、且つさらに少ないチルト角で3次コマ収差を補償可能である。かかる対物レンズ4は、プラスチック製とすることにより、量産性や軽量化を向上させるとともに、使用条件のいずれの範囲においても良好な収差補正を実現してBD等の高密度記録光ディスクに対して良好な記録再生特性を実現する。
【0084】
以上では、使用波長が405nm程度で開口数0.85程度のBD等の高密度記録光ディスクの一般的な使用条件について説明した。具体的には、温度0℃〜75℃で、記録層が光ビーム入射表面から75μm及び100μmの位置に設けられた2層光ディスクの場合についての適切なレンズチルト感度の範囲について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、使用温度を変更しても良く、さらに、3つ以上の記録層を有する光ディスクに対する対物レンズに用いても良い。以下に各種設計条件における適したレンズチルト感度の範囲について説明する。
【0085】
以下では、各種条件の自由度を高めた場合の対物レンズの構成条件の場合の、開口数を固定した前提でレンズチルト感度の変動を考慮可能な条件について図12及び図13を用いて説明する。
【0086】
図12は、3次球面収差と入射倍率の関係を示すものであり、図13は、3次コマ収差とレンズチルト角度の関係を示すものである。図12中横軸は、対物レンズ4への入射倍率を示し、縦軸は、3次球面収差[a.u.]を示す。図13中横軸は、対物レンズ4のレンズチルト角度[degree]を示し、縦軸は、3次コマ収差[a.u.]を示す。
【0087】
図12中L6TCLCは、設計中心温度Tで且つ設計中心カバーレイヤー厚さLの状態における関係を示す。また、L6TmaxLccは、設計最大温度Tmaxで且つ設計中心カバーレイヤー厚さLの状態における関係を示す。また、L6TmaxLmaxは、設計最大温度Tmaxで且つ設計最大カバーレイヤー厚さLmaxの状態における関係を示す。
【0088】
また、図12においては、各状態において3次球面収差を最小とする入射倍率は、記号βに温度とカバーレイヤー厚さを括弧内に表示して表すものとする。また、同様に、3次球面収差は、記号SAに温度、カバーレイヤー厚さ、上述で定義した倍率βを括弧内に表示して表すものとする。
【0089】
例えば、温度Tmax且つカバーレイヤー厚さLにおいて3次球面収差を最小とする入射倍率はβ(Tmax,L)とする。また、その入射倍率においてカバーレイヤー厚さをLmaxへ変動した際に発生する3次球面収差は、SA(Tmax,Lmax,β(Tmax,L))とする。またさらに、これら3つの設定状態におけるグラフの傾きを、それぞれの設定状態を表す記号を用いて、g(T,L)、g(Tmax,L)、g(Tmax,Lmax)と表すこととする。
【0090】
なお、ここで一般化のために上述のような記号を用いて説明することとするが、本構成例においては、T=35℃、Tmax=75℃、L=87.5μm、Lmax=100μmをそれぞれ表している。
【0091】
また、図13は、各設定状態において図6〜図10等で決定される3次球面収差を最小とする倍率β(T,L)、β(Tmax,L)、β(Tmax,Lmax)に設定した上でのレンズチルト特性を示している。すなわち、図13中L7βTcLcは、設計中心における温度及びカバーレイヤー厚さにおける3次球面収差を最小とする倍率β(T,L)の場合のレンズチルト特性を示す。L7βTmaxLcは、温度Tmax及び設計中心のカバーレイヤー厚さにおける3次球面収差を最小とする倍率β(Tmax,L)の場合のレンズチルト特性を示す。L7βTmaxLmaxは、温度Tmax及びカバーレイヤー厚さLmaxにおける3次球面収差を最小とする倍率β(Tmax,Lmax)の場合のレンズチルト特性を示す。そして、LTAは、設計中心における温度及びカバーレイヤー厚さにおけるレンズチルト感度を示し、LTBは、温度変化によるレンズチルト感度の減少量を示し、LTCは、カバーレイヤー厚さ変化によるレンズチルト感度の減少量を示す。換言すると、レンズチルト感度LTA,LTB,LTCは、この図13に示す各線L7βTcLc,L7βTmaxLc,L7βTmaxLmaxのレンズチルト角度1.0degreeでの3次コマ収差量を表していることになる。
【0092】
ここで、図13に示したLTA,LTB,LTCの記号を用いれば、レンズチルト感度の最小値は、LTA−LTB−LTCと表すことができる。このレンズチルト感度の最小値を大きく保つためには、LTAを大きく、LTB,LTCを小さく設定することが必要である。
【0093】
ここで、まずLTB,LTCを小さくするための手法について説明する。上述したように、これらレンズチルト感度の減少量LTB,LTCは、各状態で3次球面収差を最小に抑えて使用するため、対物への入射倍率βを変化させることに依存する部分が大きいことを見出した。したがって、これらLTB,LTCを小さくするためには、倍率変化量を小さくするような設計とする必要がある。
【0094】
つまり、LTBを小さくするためには、β(Tmax,L)−β(T,L)を小さくする必要があり、LTCを小さくするためには、β(Tmax,Lmax)−β(Tmax,L)を小さくする必要がある。
【0095】
まず、LTBに関するβ(Tmax,L)−β(T,L)であるが、これは、図12のβLTBで示す部分である。かかるβLTBを小さくするためには、SA(Tmax,L,β(T,L))を小さくするか、若しくは、傾きg(Tmax,L)を大きくする必要があることを意味する。ここで、SA(Tmax,L,β(T,L))は、温度変化量ΔT(=Tmax−T)と、材料の屈折率温度依存性の絶対値(|dn/dT|)と、対物レンズ4の焦点距離fに比例する。また、g(Tmax,L)は、ほぼ焦点距離fに比例する。このことから、LTB及びβLTBは、ΔTと、|dn/dT|とに比例する値であり、fに対する依存性がない。
【0096】
上述の構成例においては、ΔT=40、|dn/dT|=−1.29×10−4において、LTB=70.4mλrms、βLTB=β(Tmax,L)−β(T,L)=0.0072であった。この関係からLTBの値は、ΔTとdn/dTの関数として、LTB=1.4×10−4×ΔT×(|dn/dT|)の関係を導き出すことができる。また、βLTBの値は、βLTB=β(Tmax,L)−β(T,L)=1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)の関係を導き出すことができる。尚、上述のΔTは、設計中心状態における温度に対する温度変化量を示している。また、dn/dTは、所謂対物レンズ4の屈折率温度係数であり、すなわち対物レンズ4を構成する材質の温度変化に対する屈折率の変化を示す割合である。
【0097】
次に、β(Tmax,Lmax)−β(Tmax,L)について検討するに、これは、図12のβLTCで示す部分である。かかるβLTCを小さくするためには、SA(Tmax,Lmax,β(Tmax,L))を小さくするか、若しくは、傾きg(Tmax,Lmax)を大きくする必要があることを意味する。ここで、SA(Tmax,Lmax,β(Tmax,L))は、対物レンズ4の開口数と光ディスクの特性である屈折率とカバーレイヤー厚さにのみ依存する値である。すなわち、SA(Tmax,Lmax,β(Tmax,L))は、カバーレイヤー厚さの変化量ΔL=(Lmax−L)に比例する値であり、焦点距離fに対する依存性はない。また、g(Tmax,Lmax)は、上述のg(Tmax,L)と同様に、ほぼ焦点距離fに比例する。このことから、LTC及びβLTCは、ΔLに比例し、fに反比例する値である。上述のΔLは、設計中心状態におけるカバーレイヤー厚さに対する変化量を示している。
【0098】
上述の構成例においては、ΔL=12.5、f=1.41においてLTC=17.3mλrms、βLTC=β(Tmax,Lmax)−β(Tmax,L)=0.0039であった。この関係からLTCの値は、ΔLとfの関数として、LTC=2.0×(ΔL)×(1/f)の関係を導き出すことができる。また、βLTCの値は、βLTC=β(Tmax,Lmax)−β(Tmax,L)=8.1×10−4×(ΔL)×(1/f)の関係を導き出すことができる。
【0099】
次に、LTAを大きくする手法について考察する。LTAは、焦点距離fにも依存せず、レンズ面形状の設計によっていかようにも設定することが可能な値であり、LTA,LTB,LTCの中でもっとも設計自由度が高い。
【0100】
以上のことから、LTA−LTB−LTC=LTA−1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)−2.0×(ΔL)×(1/f)となる。
【0101】
したがって、(LTA−LTB−LTC)の最小値を0より大きくするためには、LTA−1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)−2.0×(ΔL)×(1/f)>0を満足する必要がある。換言すると、設計中心状態(温度Tc、カバーレイヤー厚さLc)におけるレンズチルト感度LTAが、LTA>1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)[mλrms]の関係を満たす必要がある。
【0102】
そして、(LTA−LTB−LTC)の最小値を上述の15.1[mλrms]以上とするためには、LTA−1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)−2.0×(ΔL)×(1/f)>15.1を満足する必要がある。換言すると、設計中心状態(温度Tc、カバーレイヤー厚さLc)におけるレンズチルト感度LTAが、LTA>1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)+15.1[mλrms]の関係を満たす必要がある。
【0103】
同様に、(LTA−LTB−LTC)の最小値を上述の24.2[mλrms]以上とするためには、LTAが、LTA>1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)+24.2[mλrms]の関係を満たす必要がある。
【0104】
また、(LTA−LTB−LTC)の最小値を上述の47.9[mλrms]以上とするためには、LTAが、LTA>1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)+47.9[mλrms]の関係を満たす必要がある。
【0105】
以上のように、対物レンズ4は、設計中心状態におけるレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差を示すLTAが、LTA>1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)の関係を満たすことにより、以下の利点を有する。かかる対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにも3次コマ収差の補償を実現する。これにより、かかる対物レンズ4やこれを用いた光ピックアップ1は、設定条件において良好なレンズチルト感度を保持することを可能とし、すなわち、良好な収差補正を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【0106】
また、対物レンズ4は、設計中心状態におけるレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差を示すLTAが、LTA>1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)+15.1の関係を満たすことにより、以下の利点を有する。かかる対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにもより高いレンズチルト感度を保持して3次コマ収差の補償を実現する。また、かかる対物レンズ4は、アクチュエータの製造公差等を考慮したものであるので、アクチュエータ等の構成を簡素化し製造公差等を緩和して製造を容易にできる。これにより、かかる対物レンズ4やこれを用いた光ピックアップ1は、設定条件において良好なレンズチルト感度を保持することを可能とし、すなわち、良好な収差補正を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【0107】
また、対物レンズ4は、設計中心状態におけるレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差を示すLTAが、LTA>1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)+24.2の関係を満たすことにより、以下の利点を有する。かかる対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにもより高いレンズチルト感度を保持して3次コマ収差の補償を実現する。また、かかる対物レンズ4は、アクチュエータの製造公差等をより考慮したものであるので、アクチュエータ等の構成を簡素化し製造公差等を緩和して製造を容易にできる。これにより、かかる対物レンズ4やこれを用いた光ピックアップ1は、設定条件において良好なレンズチルト感度を保持することを可能とし、すなわち、良好な収差補正を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【0108】
また、対物レンズ4は、設計中心状態におけるレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差を示すLTAが、LTA>1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)+47.9の関係を満たすことにより、以下の利点を有する。かかる対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにもより高いレンズチルト感度を保持して3次コマ収差の補償を実現する。また、かかる対物レンズ4は、アクチュエータの製造公差等をより考慮したものであるので、アクチュエータ等の構成を簡素化し製造公差等を緩和して製造を容易にできる。これにより、かかる対物レンズ4やこれを用いた光ピックアップ1は、設定条件において良好なレンズチルト感度を保持することを可能とし、すなわち、良好な収差補正を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【0109】
また、以上のような説明の課程で得られた図12に示すβLTB及びβLTCは、これを用いることにより、上述した「温度やカバーレイヤー厚さ等の設定状態の変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率」を一般式として規定することを可能とする。換言すると、(βLTB+βLTC)は、設計中心状態(T,L)の入射倍率に対する、設定状態(Tmax,Lmax)の入射倍率の倍率差を示す。そして、上述の記載と同様に、設計中心状態(Tc,Lc)に対する、設定状態(Tmin,Lmin)の入射倍率の倍率差は、−(βLTB+βLTC)である。一般的に、設定中心状態では、入射倍率を0、すなわち、対物レンズ4への入射光ビームを平行光と設定される。このことに鑑みれば、設定中心状態の入射倍率が略0であれば、−(βLTB+βLTC)〜+(βLTB+βLTC)の範囲において、上述のような「レンズチルトで発生する3次コマ収差が0を含まない」ように対物レンズ4を構成すればよい。かかる構成により、各種条件の自由度を高めた場合にも、上述のような効果を得ることができるものである。
【0110】
よって、対物レンズ4は、入射倍率が±(βLTB+βLTC)の範囲において、レンズチルトで発生する3次コマ収差がチルト角度方向に対して同じであることにより、以下の利点を有する。ここで、入射倍率が±(βLTB+βLTC)の範囲とは、−(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))〜+(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))の範囲である。
【0111】
かかる対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにも3次コマ収差の補償を実現する。これにより、かかる対物レンズ4やこれを用いた光ピックアップ1は、設定条件において良好なレンズチルト感度を保持することを可能とし、すなわち、良好な収差補正を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【0112】
同様に、対物レンズ4は、入射倍率が±(βLTB+βLTC)の範囲において、0.0151λrms/degree以上のレンズチルト感度を有することにより、以下の効果を有する。尚、上述の範囲において、0.0151λrms/degree以上のレンズチルト感度を有することは、レンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が0.0151λrms以上であることと同じ意味である。
【0113】
かかる対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにもより高いレンズチルト感度により3次コマ収差の補償を実現する。また、かかる対物レンズ4は、アクチュエータの製造公差等を考慮したものであるので、アクチュエータ等の構成を簡素化し製造公差等を緩和して製造を容易にできる。これにより、かかる対物レンズ4やこれを用いた光ピックアップ1は、設定条件において良好なレンズチルト感度を保持することを可能とし、すなわち、良好な収差補正を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【0114】
また、対物レンズ4は、入射倍率が±(βLTB+βLTC)の範囲において、0.0242λrms/degree以上のレンズチルト感度を有することにより、以下の効果を有する。かかる対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにもより高いレンズチルト感度により3次コマ収差の補償を実現する。また、かかる対物レンズ4は、アクチュエータの製造公差等を考慮したものであるので、アクチュエータ等の構成を簡素化し製造公差等を緩和して製造を容易にできる。これにより、かかる対物レンズ4やこれを用いた光ピックアップ1は、設定条件において良好なレンズチルト感度を保持することを可能とし、すなわち、良好な収差補正を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【0115】
また、対物レンズ4は、入射倍率が±(βLTB+βLTC)の範囲において、0.0479λrms/degree以上のレンズチルト感度を有することにより、以下の効果を有する。かかる対物レンズ4は、環境温度変化やカバーレイヤー厚さ変化があったときにもより高いレンズチルト感度により3次コマ収差の補償を実現する。また、かかる対物レンズ4は、アクチュエータの製造公差等を考慮したものであるので、アクチュエータ等の構成を簡素化し製造公差等を緩和して製造を容易にできる。これにより、かかる対物レンズ4やこれを用いた光ピックアップ1は、設定条件において良好なレンズチルト感度を保持することを可能とし、すなわち、良好な収差補正を実現して良好な記録再生特性を実現する。
【0116】
〔4.対物レンズの構成例及び比較例について〕
以下に、本発明に係る対物レンズ4の構成例(設計例)としての設計データとともに、これと比較するための比較例の対物レンズの設計データを示す。尚、いずれの例においても、焦点距離f=1.41[mm]、開口数NA=0.85、レンズ中心厚さ=1.80[mm]、構成材料の屈折率=1.5246で共通である。
【0117】
「比較例」
以下に、比較例の光源側レンズ面S1の形状を示す上述の式(1)におけるR,K,A〜Jは、以下の通りである。
【0118】
<光源側レンズ面S1>
R = 0.92557
K = -0.60684
A = 0.02141
B = -0.00050
C = 0.00808
D = 0.00647
E = -0.00382
F = -0.00705
G = 0.00371
H = 0.00852
J = -0.00580
【0119】
また、以下に、比較例の光ディスク側レンズ面S2の形状を示す上述の式(1)におけるR,K,A〜Jは、以下の通りである。
【0120】
<光ディスク側レンズ面S2>
R = -1.21100
K = -27.13926
A = 0.23133
B = -0.18987
C = -0.26925
D = 0.37981
E = -0.00964
F = -0.10854
G = -0.00587
H = -0.03997
J = 0.04787
【0121】
「構成例」
以下に、本発明に係る対物レンズ4の構成例の光源側レンズ面S1、すなわち、第1面4aの形状を示す上述の式(1)におけるR,K,A〜Jは、以下の通りである。S1は、図1における第1面4aを示す。
【0122】
<光源側レンズ面S1>
R = 0.92889
K = -0.60519
A = 0.01771
B = 0.00694
C = 0.12831
D = -0.67249
E = 1.61889
F = -2.12102
G = 1.56419
H = -0.60521
J = 0.09398
【0123】
また、以下に、本発明に係る対物レンズ4の構成例の光ディスク側レンズ面S2、すなわち、第2面4bの形状を示す上述の式(1)におけるR,K,A〜Jは、以下の通りである。S2は、図1における第2面4bを示す。
【0124】
<光ディスク側レンズ面S2>
R = -1.23347
K = -30.3168
A = 0.22086
B = -0.21581
C = -0.23610
D = 0.37238
E = 0.00720
F = -0.17558
G = 0.04437
H = 0.00434
J = 0.00000
【0125】
以上のような構成例の対物レンズによれば、上述した図6(b)、図7(b)、図8(b)、図9(b)、図10(b)、図11(b)のような比較例の対物レンズに比べて、上述のような効果を奏するものである。すなわち、本発明の構成例の対物レンズによれば、図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)、図11(a)に示すように、レンズチルト感度の変動を考慮した構成とすることができる。換言すると、かかる構成例の対物レンズは、温度変化やカバーレイヤー厚さ変化によらず3次コマ収差の補償を実現するものである。
【0126】
具体的に、上述した図16(a)と同様に、上述の構成例及び比較例の対物レンズのレンズチルト特性を図14に示す。図14中横軸は、レンズチルト角度[degree]を示し、縦軸は、3次コマ収差[mλrms]を示す。そして、L8Pは、上述の構成例の対物レンズの最も小さいレンズチルト特性である温度75℃且つカバーレイヤー厚さ100μmの場合のレンズチルト角度に対する3次コマ収差の変化量を示す。L8Cは、上述の比較例の対物レンズの最も小さいレンズチルト特性である温度75℃カバーレイヤー厚さ100μmの場合のレンズチルト角度に対する3次コマ収差の変化量を示す。
【0127】
以上のように、本発明を適用した対物レンズ4は、使用設定状態の最も厳しい条件においてもレンズチルト感度を確保できる。よって、本発明を適用した対物レンズ4並びにこれを用いた光ピックアップ1及び光ディスク装置は、光ディスクシステムの使用設定状態の範囲内において、レンズチルト感度が常に存在し、光ディスクの反りにより発生するコマ収差を、対物レンズ4のレンズチルトにより補正することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明が適用された光ピックアップの光学系を示す光路図である。
【図2】本発明が適用された光ピックアップを構成する対物レンズの駆動操作される3軸方向について説明するための図であり、対物レンズと光ディスクとの関係を示す模式図である。
【図3】対物レンズへの入射倍率について説明するための図である。
【図4】温度変化があった場合に発生する球面収差を対物レンズへの入射倍率を変更することで補正することを説明するための図である。(a)は、温度及びカバーレイヤー厚さが設計中心状態であるときのコリメータレンズ及び対物レンズの配置関係を説明するための図である。(b)は、(a)の状態に対して温度が最高温度に変わった場合のコリメータレンズ及び対物レンズの配置関係を説明するための図である。
【図5】カバーレイヤー厚さに変化があった場合に発生する球面収差を対物レンズへの入射倍率を変更することで補正することを説明するための図である。(a)は、温度及びカバーレイヤー厚さが設計中心状態であるときのコリメータレンズ及び対物レンズの配置関係を説明するための図である。(b)は、(a)の状態に対してカバーレイヤー厚さが最も厚い状態に変わった場合のコリメータレンズ及び対物レンズの配置関係を説明するための図である。
【図6】対物レンズへの入射倍率と3次球面収差との変化の関係を温度毎に異なることを説明するための図である。(a)は、本発明の対物レンズの構成例における温度が75℃、35℃、及び0℃のそれぞれの場合の入射倍率と3次球面収差との関係を示す図である。(b)は、上述の構成例と比較するための対物レンズの比較例における温度が75℃、35℃、及び0℃のそれぞれの場合の入射倍率と3次球面収差との関係を示す図である。
【図7】対物レンズへの入射倍率と3次球面収差との変化の関係をカバーレイヤー厚さ毎に異なることを説明するための図である。(a)は、本発明の対物レンズの構成例におけるカバーレイヤー厚さが100μm、87.5μm、75μmのそれぞれの場合の入射倍率と3次球面収差との関係を示す図である。(b)は、対物レンズの比較例におけるカバーレイヤー厚さが100μm、87.5μm、75μmのそれぞれの場合の入射倍率と3次球面収差との関係を示す図である。
【図8】対物レンズへの入射倍率とレンズチルト感度との変化の関係を温度毎に異なることを説明するための図である。(a)は、本発明の対物レンズの構成例における温度が75℃、35℃、及び0℃のそれぞれの場合の入射倍率とレンズチルト感度との関係を示す図である。(b)は、対物レンズの比較例における温度が75℃、35℃、及び0℃のそれぞれの場合の入射倍率とレンズチルト感度との関係を示す図である。
【図9】対物レンズへの入射倍率とレンズチルト感度との変化の関係を温度毎に異なることを説明するための図である。(a)は、本発明の対物レンズの構成例におけるカバーレイヤー厚さが100μm、87.5μm、75μmのそれぞれの場合の入射倍率とレンズチルト感度との関係を示す図である。(b)は、対物レンズの比較例におけるカバーレイヤー厚さが100μm、87.5μm、75μmのそれぞれの場合の入射倍率とレンズチルト感度との関係を示す図である。
【図10】対物レンズの入射倍率とレンズチルト感度との関係を、温度及びカバーレイヤー厚さを変えた6状態のそれぞれの場合について示すとともに、各温度における入射倍率の使用範囲を示す図である。(a)は、本発明の対物レンズの構成例におけるそれぞれの場合の入射倍率とレンズチルト感度との関係を示す図である。(b)は、対物レンズの比較例におけるそれぞれの場合の入射倍率とレンズチルト感度との関係を示す図である。
【図11】対物レンズの入射倍率とレンズチルト感度との関係を、温度及びカバーレイヤー厚さを変えた6状態のそれぞれの場合について示すとともに、各カバーレイヤー厚さにおける入射倍率の使用範囲を示す図である。(a)は、本発明の対物レンズの構成例におけるそれぞれの場合の入射倍率とレンズチルト感度との関係を示す図である。(b)は、対物レンズの比較例におけるそれぞれの場合の入射倍率とレンズチルト感度との関係を示す図である。
【図12】温度とカバーレイヤー厚さを変化させた3つの状態の場合における3次球面収差と入射倍率の関係を示す図である。
【図13】温度とカバーレイヤー厚さを変化させた3つの状態の場合におけるレンズチルト角度と3次コマ収差との関係を示す図である。
【図14】本発明の対物レンズの構成例と、対物レンズの比較例とにおけるレンズチルト特性を示す図である。
【図15】プラスチック材料がガラス材料に比べて屈折率の温度に対する依存性が大きいことを示すための図であり、プラスチック材料としてのZeonex340Rと、ガラス材料としてのL−BAL42との温度に対する屈折率の変化を示す図である。
【図16】レンズチルト特性とディスクチルト特性とを説明するための図であり、(a)は、従来の手法でレンズを形成した場合に設定条件においてレンズチルト特性が下がったときにレンズチルト特性を示す図である。(b)は、一般的な光ディスクのディスクチルトにより発生する3次コマ収差量の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0129】
1 光ピックアップ、 2 光ディスク、 3 光源部、 4 対物レンズ、 5 コリメータレンズ、 6 光検出器、 7 ビームスプリッタ、 8 開口絞り、 11 コリメータレンズ駆動部、 12 対物レンズ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口数が0.8以上であり、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲における、当該対物レンズのレンズチルトで発生する3次コマ収差の符号が同じであるプラスチック製の対物レンズ。
【請求項2】
温度変化量をΔTとし、光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化量をΔLとし、当該対物レンズの屈折率温度係数をdn/dTとし、当該対物レンズの焦点距離をfとしたとき、
上記入射倍率が−(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))〜+(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))の範囲において、当該対物レンズのレンズチルトで発生する3次コマ収差の符号が同じである請求項1記載の対物レンズ。
【請求項3】
温度変化量をΔTとし、光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化量をΔLとし、当該対物レンズの屈折率温度係数をdn/dTとし、当該対物レンズの焦点距離をfとしたとき、
上記入射倍率が−(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))〜+(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))の範囲において、当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が0.0151λrms以上である請求項2記載の対物レンズ。
【請求項4】
温度変化量をΔTとし、光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化量をΔLとし、当該対物レンズの屈折率温度係数をdn/dTとし、当該対物レンズの焦点距離をfとしたとき、
上記入射倍率が−(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))〜+(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))の範囲において、当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が0.0242λrms以上である請求項2記載の対物レンズ。
【請求項5】
温度変化量をΔTとし、光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化量をΔLとし、当該対物レンズの屈折率温度係数をdn/dTとし、当該対物レンズの焦点距離をfとしたとき、
上記入射倍率が−(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))〜+(1.4×(ΔT)×(|dn/dT|)+8.1×10−4×(ΔL)×(1/f))の範囲において、当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が0.0479λrms以上である請求項2記載の対物レンズ。
【請求項6】
上記温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲における、当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が0.0151λrms以上である請求項1記載の対物レンズ。
【請求項7】
上記温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲における、当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が0.0242λrms以上である請求項1記載の対物レンズ。
【請求項8】
上記温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲における、当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が0.0479λrms以上である請求項1記載の対物レンズ。
【請求項9】
開口数が0.8以上であり、
温度変化量をΔTとし、光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化量をΔLとし、当該対物レンズの屈折率温度係数をdn/dTとし、当該対物レンズの焦点距離をfとしたとき、
設計中心状態における当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が、1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)[mλrms]以上であるプラスチック製の対物レンズ。
【請求項10】
上記設計中心状態における当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が、1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)+15.1[mλrms]以上である請求項9記載のプラスチック製の対物レンズ。
【請求項11】
上記設計中心状態における当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が、1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)+24.2[mλrms]以上である請求項9記載のプラスチック製の対物レンズ。
【請求項12】
上記設計中心状態における当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が、1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)+47.9[mλrms]以上である請求項9記載のプラスチック製の対物レンズ。
【請求項13】
光源から出射された光ビームを光ディスクの一又は複数のレイヤーのそれぞれに集光する対物レンズを備え、
上記対物レンズには、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率で光ビームが入射され、
上記対物レンズは、開口数が0.8以上であり、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲における、当該対物レンズのレンズチルトで発生する3次コマ収差の符号が同じであるプラスチック製の対物レンズである光ピックアップ。
【請求項14】
光源から出射された光ビームを光ディスクの一又は複数のレイヤーのそれぞれに集光する対物レンズを備え、
上記対物レンズには、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率で光ビームが入射され、
上記対物レンズは、開口数が0.8以上であり、温度変化量をΔTとし、光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化量をΔLとし、当該対物レンズの屈折率温度係数をdn/dTとし、当該対物レンズの焦点距離をfとしたとき、設計中心状態における当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が、1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)[mλrms]以上であるプラスチック製の対物レンズである光ピックアップ。
【請求項15】
光源から出射された光ビームを光ディスクの一又は複数のレイヤーのそれぞれに集光する対物レンズを有する光ピックアップを備え、
上記対物レンズには、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率で光ビームが入射され、
上記対物レンズは、開口数が0.8以上であり、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率の範囲における、当該対物レンズのレンズチルトで発生する3次コマ収差の符号が同じであるプラスチック製の対物レンズである光ディスク装置。
【請求項16】
光源から出射された光ビームを光ディスクの一又は複数のレイヤーのそれぞれに集光する対物レンズを有する光ピックアップを備え、
上記対物レンズには、温度及び光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化により発生する3次球面収差を補正する入射倍率で光ビームが入射され、
上記対物レンズは、開口数が0.8以上であり、温度変化量をΔTとし、光ディスクのカバーレイヤーの厚さ変化量をΔLとし、当該対物レンズの屈折率温度係数をdn/dTとし、当該対物レンズの焦点距離をfとしたとき、設計中心状態における当該対物レンズのレンズチルト1degreeあたりで発生する3次コマ収差が、1.4×10−4×(ΔT)×(|dn/dT|)+2.0×(ΔL)×(1/f)[mλrms]以上であるプラスチック製の対物レンズである光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−123214(P2010−123214A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297233(P2008−297233)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】