説明

対物レンズアクチュエータ

【課題】複数本のサスペンションワイヤーの撓み変形のバランスを保ちやすくしたり、レンズホルダーに対するサスペンションワイヤーの接合信頼性を改善する。
【解決手段】レンズホルダーの第1突部に、平坦なワイヤー受面32と、コイルの端末部95を巻き付けた端末巻付部31とが備わっている。ワイヤー受面32に突き当てたサスペンションワイヤー80の先端82とコイルの端末部95とが間隔を隔てて隣接し、それらに跨がって半田盛りHを形成することによってコイルの端末部95をサスペンションワイヤー80に電気的に接続する。レンズホルダーの第2突部の孔部に挿通しているサスペンションワイヤー80を、孔部の内部空間を埋め尽くしている接着剤によって第2突部に固着する。第2突部に入隅状の凹部を形成して、その凹部に盛り上げた接着剤を盛り上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズアクチュエータ、特に、電磁駆動機構によってフォーカス方向やトラッキング方向にレンズホルダーが変位制御されるときのレンズチルト(対物レンズ傾斜度)のばらつきを抑制するための対策が講じられている対物レンズアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブルーレイディスクドライブなどの光ディスクドライブに用いられている対物レンズアクチュエータの中には、固定部材から延び出たばね性を有する導電性細線でなるサスペンションワイヤーによって、対物レンズを備えたレンズホルダーを片持ちさせた構成を採用しているものがある。この種の対物レンズアクチュエータにおいて、サスペンションワイヤーは、レンズホルダーを挟む両側対称位置に平行に配備されていて、それらのサスペンションワイヤーが電磁駆動機構のコイルに電気的接続されている。また、電磁駆動機構の作用によってレンズホルダーがフォーカス方向やトラッキング方向に変位制御されるときには、レンズホルダーの変位に追従してサスペンションワイヤーがそのばね性に抗して撓み変形する。そして、サスペンションワイヤーは、固有の有効長を有し、かつ、撓み変形するときの支点も固有の位置に定められている。このため、レンズホルダーが中立位置(初期位置)からフォーカス方向やトラッキング方向に変位するときには、レンズホルダーに備わっている対物レンズが微少に傾動して光軸ずれを生じることになる。そこで、一般的な対物レンズアクチュエータにあっては、上記したような光軸ずれは電気的手段などにより補正することが行われている。
【0003】
しかしながら、対物レンズアクチュエータごとの対物レンズの微少傾動の状態、すなわちレンズチルトのばらつきが大きいと、電気的手段によって画一的に光軸ずれを補正することができなくなり、ディスク記録性能の低下やディスク再生画像の品位低下などを生じる。
【0004】
一方、従来の対物レンズアクチュエータでは、サスペンションワイヤーとレンズホルダーとの固定構造や、サスペンションワイヤーと電磁駆動機構のコイルとの電気的接続構造として、図5に例示した構造を採用しているものがあった。
図5は従来例による対物レンズアクチュエータの要部を一部破断して示した概略平面図である。同図のように、対物レンズ110を備えるレンズホルダー100は、その両側部の対称位置に互いに反対向きに突き出た突起120を有していて、この突起120が、第1突部121と第2突部122とに分割されている。また、第1突部121に、レンズホルダー100に装備されているコイル(不図示)の端末部210が巻き付けられている。さらに、矢印aで示した方向から第2突部122の孔部123に挿通されたサスペンションワイヤー300の先端が上記端末部210に突き当てられている。そして、第2突部122の片側表面124に対して矢印bのように注入して盛り上げた紫外線硬化型の接着剤400によってサスペンションワイヤー300を第2突部122に固着してあると共に、サスペンションワイヤー300の先端をコイルの上記端末部210に半田付けして両者を接続することにより、サスペンションワイヤー300をコイルに電気的接続してある。Hは半田盛りを示している。
【0005】
この従来例において、サスペンションワイヤー300を第2突部122に固着している接着剤には、粘性が比較的大きな紫外線硬化型の接着剤が用いられている。そのため、図5に示したように、第2突部122の片側表面124に対して矢印bのように接着剤を注入しても、その接着剤が第2突部122の孔部123の内部に浸透する度合は低く、通常は、孔部123の一方の開口に少し侵入するだけであって、大半の接着剤400は図示のように第2突部122の片側表面124に盛り上がった状態になる。
【0006】
図6は第1突部121に巻き付けられているコイルの端末部210にサスペンションワイヤー300の先端を突き当てたときに起こり得る事例を説明的に示した拡大断面図、図7はサスペンションワイヤー300を接着剤400で第2突部122に固着したときに起こり得る事例を説明的に示した拡大断面図である。
【0007】
図6に例示したように、第2突部122の孔部123に挿通させたサスペンションワイヤー300の先端310を、第1突部121に巻き付けられているコイルの端末部210に突き当てると、サスペンションワイヤー300の先端310が端末部210の表面で滑って矢印Rのように曲がることがある。特に、このような曲りは、端末部210の線材が整列していないように場合に生じやすい。なお、図6には、本来は直線状を形成しているサスペンションワイヤー300の軸線を符号Pで示してある。
【0008】
また、図7に例示したように、サスペンションワイヤー300を接着剤400で第2突部122に固着したときには、比較的大きな粘性の接着剤400が用いられているために、第2突部122の片側表面に注入した接着剤400の塗布位置や硬化後の形状が、作業条件や塗布条件によってばらつきやすい。また、孔部123に侵入する接着剤の量もばらつきやすい。たとえば、図7に例示したように、接着剤400が実線で示した位置に塗布されたり、仮想線で示した位置に塗布されたりして、その塗布位置がばらつきやすい。
【0009】
一方、光学式ピックアップの支持機構として、レンズホルダーのフォーカスコイルとトラッキングコイルに半田付けされたワイヤーを保持部材に装備されている回路基板のランドに半田付けすることが公知である(たとえば、特許文献1参照)。また、光ピックアップにおいて、レンズホルダーを変位制御するために用いる電磁駆動機構を、磁石、ヨーク、コイルなどによって構成することも公知である(たとえば、特許文献2参照)。
【0010】
さらに、光ディスク装置の2軸装置に関して、レンズ保持体(レンズホルダー)とばね鋼材(サスペンションワイヤー)とを連結する構成として図8の構造を採用したものも提案されている(たとえば、特許文献3参照)。すなわち、図8は上掲の特許文献3によって提案されている構造を示している。同図において、レンズ保持体500に設けた突起状の巻回部510にコイルから引き出された端末部が520が巻き付けられている。巻回部510には軸方向2箇所に円錐面511,512を有する孔部513が形成されていて、その孔部513に挿通させたばね鋼材600の端部を、半田付け514によって上記端末部520に接合してあると共に、接着剤515で巻回部510に固着してある。なお、610はレンズホルダー(不図示)に装備されている配線基板であり、ばね鋼材600の根元端部がこの配線基板610に半田付け620されている。
【0011】
特許文献3に記載されている2軸装置において、図8のように、巻回部510の孔部513に挿通させたばね鋼材600を接着剤515で巻回部510に固定しているのは、配線基板610に対するばね鋼材600の半田付け箇所から巻回部510に対する接着剤515による固着箇所に至る有効長の精度を高めるためであるとされている(特許文献3の段落0038参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−175993号公報
【特許文献2】特開2000−105936号公報
【特許文献3】特開2002−367204号公報(図4、0038)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した図5の従来例による対物レンズアクチュエータには次の問題点があった。
すなわち、サスペンションワイヤー300を第2突部122に固着するのに、粘性の比較的大きな紫外線硬化型の接着剤を用いていたために、第2突部122の片側表面に注入した接着剤400の塗布位置や硬化後の形状などが、作業条件や塗布条件によってばらつきやすいということが云える。そのため、複数本のサスペンションワイヤー300と第2突部122との接合状態にばらつきが生じやすくなったり、サスペンションワイヤー300が図6に示した第1突部121に巻き付けられているコイルの端末部210に傾斜して突き当たったりすることが起こり得る。その結果、レンズホルダー100がフォーカス方向やトラッキング方向に変位動作するときの各サスペンションワイヤー300の撓み変形のバランスが保たれにくくなってレンズチルトのばらつきが大きくなり、ディスク記録性能の低下やディスク再生画像の品位低下などを生じるおそれがあるという問題があった。併せて、接着剤400が第2突部122の平坦な片側表面に接合しているだけであるために、サスペンションワイヤーが撓み変形するときの負荷や振動がその接合部に繰り返し加わることによって接合強度の耐久性や振動に対する耐衝撃性が損なわれやすいという問題もあった。
【0014】
また、第2突部122の孔部123に挿通させたサスペンションワイヤー300の先端310を、第1突部121に巻き付けられているコイルの端末部210に突き当てたときに、サスペンションワイヤー300の先端310が端末部210の表面で滑って矢印Rのように曲がることがあるために、その後の半田付けによって、サスペンションワイヤー300の先端310の軸線が反り変形して曲ることがある。その結果、上記同様に、レンズホルダー100がフォーカス方向やトラッキング方向に変位動作するときの各サスペンションワイヤー300の撓み変形のバランスが保たれにくくなってレンズチルトのばらつきが大きくなり、ディスク記録性能の低下やディスク再生画像の品位低下などを生じるおそれがあるという問題があった。
【0015】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、サスペンションワイヤーの先端部領域をレンズホルダーに固着するのに用いられる突起が、第1突部と第2突部とに分割されているような基本構成を備えた対物レンズアクチュエータにおいて、第2突部に対するサスペンションワイヤーの接着剤による接合構造や、第1突部でサスペンションワイヤーとコイルの端末部とを電気的に接続するための半田付け構造などに工夫を講じることにより、レンズホルダーが変位動作するときの複数本のサスペンションワイヤーの撓み変形のバランスを保ちやすくしたり、第2突部に対するサスペンションワイヤーの接合信頼性を改善したりすることのできる対物レンズアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る対物レンズアクチュエータは、対物レンズを備えて、両側部の対称位置に互いに反対向きに突き出た突起を有するレンズホルダーと、このレンズホルダーの両側部の上記突起のそれぞれに一定長さの先端部領域が固着された複数本の平行なサスペンションワイヤーと、これらのサスペンションワイヤーの根元端部が保持されている固定部材と、上記レンズホルダーを上記対物レンズのフォーカス方向及びそのフォーカス方向に交差するトラッキング方向に上記サスペンションワイヤーの撓み変形を伴って変位させるための電磁駆動機構とを有している。また、上記突起が、上記サスペンションワイヤーの先端部領域の軸線方向2箇所に対応して位置している第1突部と第2突部とに分割され、上記電磁駆動機構が、上記レンズホルダーに設けられて端末部が上記サスペンションワイヤーに電気的に接続されたコイルを有している。
【0017】
そして、上記第1突部に、上記サスペンションワイヤーの軸線方向に直交する平面により形成されてそのサスペンションワイヤーの先端が突き当てられたワイヤー受面と、上記コイルの端末部が巻き付けられた端末巻付部とが備わり、上記ワイヤー受面に突き当てられたサスペンションワイヤーの先端と上記端末巻付部に巻き付けられたコイルの端末部とが間隔を隔てて隣接していると共に、それらのサスペンションワイヤーの先端とコイルの端末部とに跨がって半田盛りが形成され、その半田盛りによって、上記コイルの端末部を上記サスペンションワイヤーに電気的に接続する電路が形成されている。併せて、上記第2突部は上記サスペンションワイヤーが挿通された孔部を有して、その孔部に装填された接着剤によってサスペンションワイヤーの先端部領域が上記第2突部に固着されている。
【0018】
この構成を有する対物レンズアクチュエータでは、第2突部の孔部に挿通させたサスペンションワイヤーの先端が、サスペンションワイヤーの軸線方向に直交する平面により形成された第1突部のワイヤー受面に突き当てられるために、そのサスペンションワイヤーの先端が第1突部に巻き付けられたコイルの端末部の表面で滑って曲がるという事態が起こり得ない。そのため、半田盛りによってコイルの端末部に接続されたサスペンションワイヤーの軸線が反り変形して曲ったままになって、複数本のサスペンションワイヤーの相互間でレンズホルダーの変位時の撓み変形のバランスが損なわれてしまう、という事態が起こりにくくなる。それにもかかわらず、半田盛りがコイルの端末部をサスペンションワイヤーに電気的に接続する電路を形成するので、サスペンションワイヤーとコイルとの電気的接続状態が確保される。
【0019】
また、第2突部の孔部に挿通されているサスペンションワイヤーの先端部領域は、その孔部に装填された接着剤によって第2突部に固着されている、という構成を採用しているので、接着剤が孔部の孔壁面に広い面積で強固に接合することになる。その結果、第2突部に対するサスペンションワイヤーの接合信頼性が改善され、サスペンションワイヤーが撓み変形するときの負荷や振動がその接合部に繰り返し加わるとしても、接合強度の耐久性や振動に対する耐衝撃性が損なわれにくい。この作用は、比較的粘性の低い接着剤を用いて接着剤を孔部に侵透させやすくしたとしても発揮される。そのため、この発明では、従来例よりも粘性の低い接着剤を用いて、サスペンションワイヤーと第2突部との接合状態のばらつきを生じにくくすることが可能になる。
【0020】
本発明において、上記第1突部は、上記レンズホルダーからの突出方向中間部が細く括れた端末巻付部とされ、端末巻付部の表面に上記ワイヤー受面が連設されていると共に、上記半田盛りが、この第1突部の細く括れた端末巻付部とその端末巻付部に巻き付けられたコイルの端末部とを包囲して形成されていることが望ましい。第1突部にこの構成が付与されていると、第1突部の端末巻付部にコイルの端末部を巻き付ける作業が容易になり、しかも、巻付位置の精度を高めることも容易である。その上、端末巻付部の表面に上記ワイヤー受面が連設されていることにより、ワイヤー受面に突き当てられたサスペンションワイヤーの先端と端末巻付部に巻き付けられたコイルの末端部とを容易に半田盛りによって接合することが可能である。さらに、半田盛りが、第1突部の細く括れた端末巻付部とその端末巻付部に巻き付けられたコイルの端末部とを包囲して形成されていると、サスペンションワイヤーの先端とコイルの端末部とが半田盛りによって確実に電気的に接続されるだけでなく、半田盛りによる接合強度を高めたり、半田盛りが第1突部を補強する作用も発揮する。したがって、第1突部でのサスペンションワイヤーとコイルの末端部との接続信頼性が向上する。
【0021】
本発明では、第2突部の上記孔部に装填されている接着剤が、その孔部の孔面とその孔部を挿通しているサスペンションワイヤーとの隙間の全体を埋め尽くしていることが望ましい。また、上記第2突部に、その第2突部に備わっている上記孔部の2つの開口のうちの上記第1突部に向いている一方の開口の形成箇所を含む入隅状の凹部が備わり、その凹部内で盛り上がってその凹部の表面に接合されている接着剤が、上記隙間の全体を埋め尽くしている接着剤と連続する層を形成していることが望ましい。入隅状の上記凹部は、一方の上記開口が形成されている第2突部の片側表面と、その片側表面から垂直に立ち上げられた平面とによって形作られていてもよい。さらに、上記第2突部に備わっている上記孔部は、上記2つの開口のうち、上記固定部材に向いている他方の開口側で外拡がり形状に形成されていることが望ましい。これらの各発明によると、接着剤と第2突部との接合面積が広くなって、それだけ接合信頼性が向上する。その上、第2突部が他方の開口側で外拡がり形状に形成されているために、その外拡がり形状を持つ孔内空間が接着剤の塗布量のばらつきを吸収することに役立つ。その結果、塗布量のばらつきが抑制されて、レンズホルダーが変位動作するときの複数本のサスペンションワイヤーの撓み変形のバランスを保ちやすくなる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、レンズホルダーが変位動作するときの複数本のサスペンションワイヤーの撓み変形のバランスが保たれ、しかも、第2突部に対するサスペンションワイヤーの接合信頼性も改善されるために、レンズチルトのばらつきが抑制されて、ディスク記録性能の低下やディスク再生画像の品位低下などを生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る対物レンズアクチュエータの概略平面図である。
【図2】同対物レンズアクチュエータの概略側面図である。
【図3】図1のIII部拡大図である。
【図4】図1のIV部拡大図である。
【図5】従来例の要部を一部破断して示した概略平面図である。
【図6】従来例において、コイルの端末部にサスペンションワイヤーの先端を突き当てたときに起こり得る事例を説明的に示した拡大断面図である。
【図7】従来例において、サスペンションワイヤーを接着剤で第2突部に固着したときに起こり得る事例を説明的に示した拡大断面図である。
【図8】特許文献3によって提案されている構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明の実施形態に係る対物レンズアクチュエータの概略平面図、図2は同対物レンズアクチュエータの概略側面図、図3は図1のIII部拡大図、図4は図1のIV部拡大図である。
【0025】
図1及び図2に示した対物レンズアクチュエータにおいて、平面視矩形の樹脂成形体でなるレンズホルダー10は、その幅方向略中央部に対物レンズ11を装備している。このレンズホルダー10の両側部には、レンズホルダー10の左右の側面のそれぞれから互いに反対向きに突き出た突起20が備わっている。この突起20は、第1突部30と第2突部40とに分割されていて、第1突部30が、レンズホルダー10の側面の前端部に位置し、第2突部40が、レンズホルダー10の側面の前後方向中間部に位置している。
【0026】
固定部材50は横長の樹脂成形体でなり、板金製のベース板60に搭載されている。この固定部材50の背面には配線基板70が装着されている。また、固定部材50の両側部には前後方向に延びる溝部51が備わっていて、上記配線基板70に根元端部81が半田付け72されたサスペンションワイヤー80が、その溝部51を通して固定部材50の前方へ延び出ている。また、溝部51にはダンパー剤52が装填されている。
【0027】
上記サスペンションワイヤー80は、ばね性を有する導電性の金属細線によって形成されている。実施形態では、サスペンションワイヤー80として、直径が0.1〜0.2mmの金属細線が採用されている。また、このサスペンションワイヤー80は、図2に示した一定長さの先端部領域L(図2参照)を有していて、その先端部領域Lが、上記したレンズホルダー10の第1突起30と第2突起40とでなる突起20に固着されている。
【0028】
また、この対物レンズアクチュエータには電磁駆動装置90が装備されている。電磁駆動機構90は、レンズホルダー10の前後の端面に装備されているフォーカスコイル91及びトラッキングコイル92、ベース板60に切起し形成されたヨーク93に固定されて上記コイル91,92に対向配備された磁石94などを備えている。
【0029】
この実施形態において、電磁駆動機構90は、4個のフォーカスコイル91と2個のトラッキングコイル92とを備えていて、それらの各コイル91,92のそれぞれに対応して1本ずつのサスペンションワイヤー80が設けられている。そして、それら6本のサスペンションワイヤー80が、3本ずつに振り分けられてレンズホルダー10を挟む両側に配備され、同じ構造でそのレンズホルダー10の突起20に固着されている。また、レンズホルダー10の両側に配備されている個々のサスペンションワイヤー80は互いに平行な関係を保っている。
【0030】
図4に拡大して示したように、第2突部40は孔部41を有して、その孔部41にサスペンションワイヤー80が挿通されている。また、第2突部40には入隅状の凹部45が形成されている。この凹部45は、第1突部30に向いている孔部41の一方の開口42が形成されている片側表面43とこの片側表面43から垂直に立ち上がっている平面44とによって形作られている。また、孔部41は、上記固定部材50に向いている他方の開口43側で外拡がり形状に形成されている。すなわち、孔部41では、その孔面が、他方の開口43側で外拡がりの円錐面を形成していて、残りの部分が円筒面を形成している。したがって、孔部41の内部空間のうち、円錐面で囲まれている部分は、残りの円筒面で囲まれている部分よりも直径が大きくなっている。
【0031】
図4のように、第2突部40の孔部41には紫外線硬化型の接着剤S1が装填されていて、その接着剤S1が孔部41と孔面とサスペンションワイヤー80との隙間の全体を完全に埋め尽くしてそれら両者に接合している。また、第1突部40の入隅状の凹部45内に紫外線硬化型の接着剤S2が盛り上げられている。この接着剤S2は、上記孔部41を埋め尽くしている接着剤S1に連続する層を形成していると共に、第2突部40の片側表面43と平面44とサスペンションワイヤー80とに接合している。ここで説明した接着剤S1と接着剤S2とは、凹部45に、図4の矢印bのように接着剤Sを注入することによって連続して形成される。すなわち、接着剤Sは、従来例で説明した接着剤400(図5又は図7参照)よりも粘性の低い特性を有していて、第2突部40の凹部45に定量を注入するだけで孔部41内に流動してその孔部を埋め尽くすと共に、凹部45内で盛り上がる。したがって、この接着剤Sによって、サスペンションワイヤー80の先端部領域Lの端部が第2突部40に固着されている。
【0032】
サスペンションワイヤー80が図4を参照して説明した上記態様で接着剤Sにより第2突部40に接合されていると、接着剤Sが、第2突部40の片側表面43と平面44と孔部41の孔面の全体に広い面積が接合されるために、第2突部40に対するサスペンションワイヤー80の接合強度が向上し、耐久性や耐振動性が従来例に比べて大幅に改善される。また、孔部41の円錐面で囲まれた広い空間が、接着剤の塗布量にばらつきを生じることを防ぐことに役立つため、塗布量のばらつきによる接合強度のばらつきなども生じにくくなる。
【0033】
図3に拡大して示したように、第1突部30は、レンズホルダーからの突出方向中間部が細く括れた端末巻付部31とされていて、その端末巻付部31に、対応するコイル(フォーカスコイル91又はトラッキングコイル92)から引き出されている端末部95が巻き付けられている。この事例のように、端末巻付部31が細く括れていると、コイルの端末部95を巻き付やすく、しかも、巻付け位置精度が向上する。また、上記端末巻付部31の表面に連設して平坦なワイヤー受面32が連設されている。このワイヤー受面32は、第2突部40に向いていると共に、第2突部40の孔部41に挿通されているまっすぐなサスペンションワイヤー80の軸線方向に直交する平面により形成されている。そして、上記端末巻付部31に間隔(クリアランスC)を隔てた隣接箇所で、サスペンションワイヤー80の先端82がワイヤー受面32に突き当てられている。したがって、サスペンションワイヤー80と端末巻付部31に巻き付けられているコイルの端末部95とは直接には電気的に接続されていない。そこで、図3のように、サスペンションワイヤー80の先端82とコイルの端末部95とに跨がって半田盛りHが形成され、その半田盛りHによって、コイルの端末部95をサスペンションワイヤー80に電気的に接続する電路が形成されている。また、コイルの端末部95をサスペンションワイヤー80に電気的に接続する電路を形成している半田盛りHは、第1突部30の細く括れた端末巻付部31とその端末巻付部31に巻き付けられたコイルの端末部95の全体とを包囲する形態で形成されている。このため、半田盛りHによって信頼性の高い上記電路が形成されていることと併せて、その半田盛りHが細く括れた端末巻付部31を補強してその折損などを防ぐことに役立っている。さらに、半田盛りHによって、サスペンションワイヤー80の先端部領域Lの先端が第2突部30に固着されていることになる。
【0034】
以上の構成を備えた対物レンズアクチュエータでは、配線基板70の回路パターン(不図示)及びサスペンションワイヤー80を経てフォーカスコイル91やトラッキングコイル92に制御信号が通電される。そして、フォーカスコイル91やトラッキングコイル92などを備える電磁駆動機構90の作用によってレンズホルダー10がフォーカス方向やトラッキング方向に変位し、その変位動作に追従して複数本のサスペンションワイヤー80が撓み変形する。
【0035】
この対物レンズアクチュエータの組み立てに際して、サスペンションワイヤー80の先端部領域Lを、レンズホルダー10の突起20を形成している第1突部30や第2突部40に固着する工程では次の操作が行われる。すなわち、この工程では、サスペンションワイヤー80を第2突部40の孔部41に図4矢印aのように挿通させること、第2突部40の孔部41に挿通させたサスペンションワイヤー80の先端82を、第1突部のワイヤー受面32に突き当てること、第2突部40に接着剤Sを注入塗布してサスペンションワイヤー80の先端部領域Lの端部を第2突部40に固着すること、第1突部30のワイヤー受面32に突き当たっているサスペンションワイヤー80の先端82と第1突部30の端末巻付部31に巻き付けられているコイルの端末部95とを半田付けして電路となる半田盛りHを形成すること、が行われる。
【0036】
このため、第2突部40にサスペンションワイヤー80の先端82を突き当てるときに、サスペンションワイヤー80がコイルの端末部95の上を滑って反り変形して曲がるという事態が起こり得なくなる。その結果、サスペンションワイヤー80が曲がったままコイルの端末部95に電気的に接続されてしまうという事態も起こりにくくなる。したがって、レンズホルダー10がフォーカス方向やトラッキング方向に変位動作するときの複数本のサスペンションワイヤー80の撓み変形のバランスが保たれやすくなり、レンズチルトのばらつきも生じにくくなる。そのため、ディスク記録性能の低下やディスク再生画像の品位低下などを生じるおそれがあるという従来の問題が解消される。なお、図3及び図4において、符号Pはサスペンションワイヤー80のまっすぐな軸線を示している。
【0037】
また、サスペンションワイヤー80と第2突部40との接合強度が向上していて、接合箇所の耐久性や耐振動性が従来例に比べて大幅に改善されており、しかも、接着剤の塗布量のばらつきによる接合強度のばらつきなども生じにくくなっていることも、レンズチルトのばらつきを生じにくくすることに役立っている。
【符号の説明】
【0038】
10 レンズホルダー
11 対物レンズ
20 突起
30 第1突部
31 端末巻付部
32 ワイヤー受面
40 第2突部
41 孔部
42 孔部の一方の開口
43 第2突部の片側表面
44 平面
45 凹部
50 固定部材
80 サスペンションワイヤー
81 サスペンションワイヤーの根元端部
82 サスペンションワイヤーの先端
90 電磁駆動機構
91 フォーカスコイル
92 トラッキングコイル
95 コイルの端末部
H 半田盛
L サスペンションワイヤーの先端部領域
S,S1,S2 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを備えて、両側部の対称位置に互いに反対向きに突き出た突起を有するレンズホルダーと、このレンズホルダーの両側部の上記突起のそれぞれに一定長さの先端部領域が固着された複数本の平行なサスペンションワイヤーと、これらのサスペンションワイヤーの根元端部が保持されている固定部材と、上記レンズホルダーを上記対物レンズのフォーカス方向及びそのフォーカス方向に交差するトラッキング方向に上記サスペンションワイヤーの撓み変形を伴って変位させるための電磁駆動機構とを有し、
上記突起が、上記サスペンションワイヤーの先端部領域の軸線方向2箇所に対応して位置している第1突部と第2突部とに分割され、上記電磁駆動機構が、上記レンズホルダーに設けられて端末部が上記サスペンションワイヤーに電気的に接続されたコイルを有する対物レンズアクチュエータにおいて、
上記第1突部に、上記サスペンションワイヤーの軸線方向に直交する平面により形成されてそのサスペンションワイヤーの先端が突き当てられたワイヤー受面と、上記コイルの端末部が巻き付けられた端末巻付部とが備わり、上記ワイヤー受面に突き当てられたサスペンションワイヤーの先端と上記端末巻付部に巻き付けられたコイルの端末部とが間隔を隔てて隣接していると共に、それらのサスペンションワイヤーの先端とコイルの端末部とに跨がって半田盛りが形成され、その半田盛りによって、上記コイルの端末部を上記サスペンションワイヤーに電気的に接続する電路が形成され、
上記第2突部は上記サスペンションワイヤーが挿通された孔部を有して、その孔部に装填された接着剤によってサスペンションワイヤーの先端部領域が上記第2突部に固着されていることを特徴とする対物レンズアクチュエータ。
【請求項2】
上記第1突部は、上記レンズホルダーからの突出方向中間部が細く括れた端末巻付部とされ、端末巻付部の表面に上記ワイヤー受面が連設されていると共に、上記半田盛りが、この第1突部の細く括れた端末巻付部とその端末巻付部に巻き付けられたコイルの端末部とを包囲して形成されている請求項1に記載した対物レンズアクチュエータ。
【請求項3】
第2突部の上記孔部に装填されている接着剤が、その孔部の孔面とその孔部を挿通しているサスペンションワイヤーとの隙間の全体を埋め尽くしている請求項1又は請求項2に記載した対物レンズアクチュエータ。
【請求項4】
上記第2突部に、その第2突部に備わっている上記孔部の2つの開口のうちの上記第1突部に向いている一方の開口の形成箇所を含む入隅状の凹部が備わり、その凹部内で盛り上がってその凹部の表面に接合されている接着剤が、上記隙間の全体を埋め尽くしている接着剤と連続する層を形成している請求項3に記載した対物レンズアクチュエータ。
【請求項5】
入隅状の上記凹部は、一方の上記開口が形成されている第2突部の片側表面と、その片側表面から垂直に立ち上げられた平面とによって形作られている請求項4に記載した対物レンズアクチュエータ。
【請求項6】
上記第2突部に備わっている上記孔部は、上記2つの開口のうち、上記固定部材に向いている他方の開口側で外拡がり形状に形成されている請求項4又は請求項5に記載した対物レンズアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−192036(P2010−192036A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34988(P2009−34988)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】