説明

対物レンズホルダ、対物レンズ駆動装置および光ピックアップ装置

【課題】トラッキングコイルを構成する巻線の撓みを抑制する対物レンズホルダ等を提供する。
【解決手段】OBLレンズホルダ21の側壁に設けたボビン57−60には、トラッキングコイル36−39が取り付けられている。そして、ボビン59の側方で側壁部53を部分的に突起させた導線掛部28Aを設け、この導線掛部28Aに導線を引掛けている。同様に、ボビン58の近傍で側壁部52に導線掛部28Bを設けトラッキングコイルを構成する導線をこの導線掛部28Bに引掛けている。これにより、導線の撓みが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズホルダ、対物レンズ駆動装置および光ピックアップ装置に関する。特に、本発明は、トラッキングコイルを構成する巻線を側壁部に密着させる導線掛部を備えた対物レンズホルダ、対物レンズ駆動装置および光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに対して光学的に信号の読み取り、あるいは書き込みを行う光学ヘッドにおける対物レンズ駆動装置においては、対物レンズ(Objective lens)が取り付けられた対物レンズホルダ(以下、OBLホルダと称する)をアクチュエータフレームに対して変位可能に支持されている。また、OBLホルダには、フォーカスコイル及びトラッキングコイル、あるいは必要に応じてチルトコイルをOBLホルダに装着すると共に、これらの駆動コイルの有効領域を磁気回路により形成される所定の磁界内に配置することにより各駆動コイルに供給する信号に応じて対物レンズを駆動する構成となっている。
【0003】
従来から存在する光ピックアップ装置に内蔵される対物レンズ駆動装置として、下記特許文献1に記載されているものがある。当該文献の図3等を参照すると、レンズホルダ4に第1ボビン部7a、第2ボビン部8a、8b、第3ボビン部8dを設け、これらのボビンに巻線を巻回することによりトラッキングコイル12を形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−18573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された技術では、複数のボビンに連続して巻線を巻回する場合、レンズホルダの表面に這わせた巻線が撓んでしまい、巻線を巻回する巻回ノズルが巻線を巻き込み断線してしまう恐れがあった。
【0006】
また、光ピックアップ装置の使用状況下にてレンズホルダに表面に這わせた巻線が撓んでしまうと、この巻線によりレンズホルダの動作が阻害されてしまう恐れもあった。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、トラッキングコイルを構成する巻線の撓みを抑制する対物レンズホルダ、対物レンズ駆動装置および光ピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の対物レンズホルダは、対物レンズが固定される主面部から連続する側壁部と、前記側壁部から側方に突出する第1ボビン、第2ボビン、第3ボビンおよび第4ボビンと、前記各ボビンに導線を巻回することで形成された第1トラッキングコイル、第2トラッキングコイル、第3トラッキングコイルおよび第4トラッキングコイルと、を備え、前記第1ボビン、前記第2ボビン、前記第3ボビンおよび前記第4ボビンの少なくとも1つの近傍で、前記側壁部を側方に突出させた導線掛部に、前記導線を引掛けることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の対物レンズ駆動装置は、上記構成の対物レンズホルダと、前記対物レンズホルダを移動可能に支持するアクチュエータフレームと、を備えることを特徴とする。
【0010】
更にまた、本発明の光ピックアップ装置は、上記構成の対物レンズ駆動装置をハウジングに搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トラッキングコイルが巻回されるボビンの近傍で側壁部を突出させた巻線掛部を設け、この導線掛部にトラッキングコイルを構成する導線を引掛けている。従って、導線掛部に巻線が引掛けられることにより、レンズホルダの表面に巻線が密着する。この結果、使用状況下にて撓んだ巻線が外部と接触して動作不良を引き起すことが防止され、ボビンに導線を巻回する巻回ノズルが巻線に接触することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光ピックアップ装置を示す平面図である。
【図2】本発明の対物レンズ駆動装置を示す平面図であり、(A)は対物レンズ駆動装置を示す平面図であり、(B)はOBLホルダの部分を拡大して示す平面図である。
【図3】本発明の対物レンズホルダを示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は他の視点から対物レンズホルダを見た斜視図である。
【図4】本発明の対物レンズホルダを示す図であり、(A)は全体を示す斜視図であり、(B)から(E)は各トラッキングコイルがボビンに巻回される状態を示す拡大斜視図である。
【図5】本発明の対物レンズホルダにおいて、導線掛部に導線が掛けられる状態を示す斜視図である。
【図6】(A)および(B)は、本発明の対物レンズホルダにおいて、導線掛部に導線が掛けられる状態を示す斜視図及び断面図であり、(C)および(D)は他の導線掛部に導線が掛けられる状態を示す斜視図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から図6を参照して、本発明の実施形態を説明する。まず、図1は本実施形態の光ピックアップ装置100の概略を示す平面図である。
【0014】
光ピックアップ装置100は、一例としてCD(Compact Disc)規格、DVD(Digital Versatile Disc)規格、およびBD(Blu−ray Disc)規格の各光ディスクに対応する構成となっており、対物レンズ駆動装置50および各種光学部品がハウジング51に設置されて構成されている。光ピックアップ装置の概略的機能は、光ディスクの情報記録層に対して所定の規格のレーザー光を照射し、この情報記録層で反射したレーザー光を受光することで、光ディスクからの情報の読出しまたは書き込みを行うことにある。
【0015】
対物レンズ駆動装置50は、対物レンズ(Objective lens)ホルダ(以下、OBLホルダ)21を移動可能に保持する。OBLホルダ21は、上記した各規格の何れかまたは全てに対応する対物レンズ31が装着される。
【0016】
レーザーユニット1はレーザーダイオードを備え、このレーザーダイオードから上記した規格のレーザー光が放射される。具体的には、BDに適した青紫色(青色)波長帯395nm〜420nm(例えば405nmの波長)のレーザー光、DVDに適した赤色波長帯645nm〜675nm(例えば650nmの波長)のレーザー光、またはCDに適した赤外波長帯765nm〜805nm(例えば780nmの波長)のレーザー光が、レーザーダイオードから放射される。
【0017】
レーザーユニット1から放射されたレーザー光は、回折格子6で0次光、+1次光、−1次光に分離されてハーフミラー13で反射された後に、1/4波長板9およびコリメートレンズ12を通過し、不図示の立ち上げミラーで反射されて対物レンズ31で光ディスクの情報記録層に合焦される。また、レーザーユニット1から放射されたレーザー光の一部はハーフミラー13を透過してFMD20で検出され、この検出に基づいてレーザーユニット1の出力が調整される。
【0018】
そして、光ディスクの情報記録層で反射した戻り光のレーザー光は、立ち上げミラー、コリメートレンズ12、1/4波長板9、ハーフミラー13を透過し、その後、第1プレート16および第2プレート19で不要な非点収差が打ち消され、所望の非点収差が付与された後に、光検出器17(PDIC)で検出される。光検出器17で検出された信号に基づいて、OBLホルダ21のコイルに制御信号が供給され、フォーカスコイル、トラッキングコイル、またはチルトコイルに制御電流が供給される。この結果、フォーカス制御、トラッキング制御及びラジアルチルト制御が行われる。ここで、後述する対物レンズ駆動装置50の場合、フォーカスコイルがチルトコイルの機能を兼ねており、チルトコイルが省かれている。
【0019】
ここで、図1に示すDt方向とはタンジェンシャル方向であり、Dr方向とはトラッキング方向(光ディスクのラジアル方向)であり、Df方向とはフォーカス方向である。これらの各方向は互いに直交している。
【0020】
図2を参照して、上記した光ピックアップ装置に組み込まれる対物レンズ駆動装置50を説明する。図2(A)は対物レンズ駆動装置50を全体的に示す平面図であり、(B)はOBLホルダ21の部分を拡大して示す平面図である。
【0021】
対物レンズ駆動装置50は、アクチュエータ可動部40とアクチュエータフレーム41とから成る。また、アクチュエータ可動部40はOBLホルダ21と、支持ワイヤ45から構成される。アクチュエータフレーム41は、珪素鋼板等の磁性金属材料から形成され、部分的に直角に曲折加工されることで、後述する各ヨークが形成される。
【0022】
アクチュエータ可動部40は、支持ワイヤ45によりアクチュエータフレーム41に対してフォーカス方向(Df方向)、トラッキング方向(Dr方向)及びラジアルチルト方向(Drt方向)に変位可能に弾性的に支持される。支持ワイヤ45は、一端がOBLホルダ21の側壁に固定され、他端がアクチュエータフレーム41に固定された固定基板44に固定される。前記固定基板44は支持ワイヤ45を制振させるダンパー材が充填される補助部材43に接着され、該補助部材43と共にアクチュエータフレーム41にねじ止め固定される。支持ワイヤ45は、アクチュエータフレーム41の1つの側面に対して例えば3本ずつ架設され、アクチュエータ可動部40を中空状態で機械的に支持すると共に、アクチュエータ可動部40に備えられる各コイルに供給される電流が流れる接続手段としても機能している。
【0023】
図2(B)を参照して、アクチュエータ可動部40は、OBLホルダ21と、OBLホルダ21の上面に固定された対物レンズ31と、OBLホルダ21の側壁部の外側の面に巻回されたトラッキングコイル36−39と、OBLホルダ21に内蔵されたフォーカスコイル29、30とを主要に備える。
【0024】
OBLホルダ21の側壁部外側に配置された各トラッキングコイル36−39に面するアクチュエータフレーム41の各バックヨークに、マグネット32−35が配置されている。具体的には、OBLホルダ21の紙面上下方の側壁部にトラッキングコイル39およびトラッキングコイル38が設けられ、トラッキングコイル39に対向してマグネット35が配置されており、トラッキングコイル38に対向してマグネット34が配置されている。一方、OBLホルダ21の紙面上上方の側壁部にトラッキングコイル36およびトラッキングコイル37が配置され、トラッキングコイル36に対向してマグネット32が配置されており、トラッキングコイル37に対向してマグネット33が配置されている。
【0025】
各マグネット32−35の、各トラッキングコイル36−39に対向する面は同一の極性(例えばN極)である。また、各マグネット32−35は、トラッキングコイル36−39の有効領域に対して有効磁束を発生させる。この様な構成でトラッキングコイル36−39に電流を供給すると、トラッキングコイル36−39に電流が流れることで発生する磁界と、マグネット32−35で生成される磁界で形成される磁気回路との協働により、OBLホルダ21はDr方向に変位する。
【0026】
対物レンズ31を挟む箇所のOBLホルダ21の内部には、Df方向に巻回軸を有する2つのフォーカスコイル29、30が配置されており、マグネット32−35は、フォーカスコイル29、30の有効領域に対しても有効磁束を発生させている。従って、フォーカスコイル29、30に対して電流を供給すると、フォーカスコイル29、30に電流が流れることで発生する磁界と、マグネット32−35で生成される磁界で形成される磁気回路との協働により、OBLホルダ21はDf方向に変位する。尚、本形態では、フォーカスコイル29、30に、チルト方向に対する制御を行うための制御信号を付与することで、OBLホルダ21をチルト方向(Drt方向)に制御している。
【0027】
バックヨーク46Aは、アクチュエータフレーム41の端部を直角に曲折加工させた部位であり、OBLホルダ21に面するバックヨーク46Aの側面にマグネット35、34が固着されている。上記したように、磁性金属材料から成るバックヨーク46Aにマグネット35、34を固着することにより、マグネット35、34の有効磁束を強めることができる。
【0028】
更に、アクチュエータフレーム41の他の部位を直角に曲折加工することでバックヨーク46Bが形成されており、OBLホルダ21に面するバックヨーク46Bの側面に、マグネット32、33が固着されている。更にまた、バックヨーク46Bの両端部を、Df方向から見て直角に曲折させることでサブヨーク47を設けている。これにより、マグネット32、33は、バックヨーク46Bおよびサブヨーク47に包囲される。各サブヨーク47はバックヨーク46Bにマグネット32、33の単一磁極(例えばS極)が密着されることにより各トラッキングコイル36、37に有効に作用する磁束を発生し、マグネット32、33側の磁気回路は、有効磁束が強められている。
【0029】
対向ヨーク48、49は、バックヨーク46A等と同様に、アクチュエータフレームを直角に曲折させた部位であり、夫々がフォーカスコイル29、30に挿入する位置に設けられている。対向ヨーク48、49をこのように配置することで、フォーカスコイル29、30及び各トラッキングコイル36−39に有効に作用する有効磁束を強めることができ、OBLホルダ21のDf方向、Dr方向及びDrt方向の感度を向上させるのに有効である。
【0030】
図3を参照して、上記したアクチュエータ可動部に含まれるOBLホルダ21の構成を説明する。図3(A)は各コイルが備えられた状態のOBLホルダ21を示す斜視図であり、図3(B)はOBLホルダ21を他の視点から見た斜視図である。
【0031】
OBLホルダ21の概略的形状は、下方に開口部が設けられた筐体形状である。具体的には、OBLホルダ21は、対物レンズ31が装着される円形の開口部が設けられた主面部56と、主面部56の周辺部から下方に一体的に連続する4つの側壁部とを備えている。この側壁部としては、紙面上の奥側で長手方向の側壁部52、紙面上の手前側で側壁部52に対向する側壁部53、紙面上で右側に設けられた短手方向の側壁部54、および紙面上で左側端部に設けられた側壁部55が含まれている。側壁部52および側壁部53の主面はDr方向に対して平行であり、側壁部54および側壁部55の主面はDr方向に対して垂直である。
【0032】
側壁部52の外側の主面には、ボビン57、58が設けられており、これらのボビンには夫々トラッキングコイル36、37が巻回されている。また、側壁部53の外側の主面には、ボビン59、60が設けられており、これらのボビンには夫々トラッキングコイル38、39が巻回されている。本形態では、各ボビン57−60は、Dr方向において対物レンズ31よりも外側の端部に配置されている。この理由は、OBLホルダ21を、小型の光ピックアップに収納させると、対物レンズ31の直下に立ち上げミラーが配置されると共に、前記立ち上げミラーへの光路を確保する空間70(図3(A))をOBLホルダ21の側壁部52及びあるいは側壁部53の中央から下方の領域に設ける必要があり、この領域にコイル等の部品を収納させるためのマージンが無いからである。
【0033】
各ボビンに巻回されるトラッキングコイル36−39は、1本の細長いエナメル線等の絶縁被膜に表面が被覆された導線から成り、その一端は、側壁部54の一部を突出させた絡げ部61に絡げられ、他端は側壁部55に設けた絡げ部61に絡げられる。ここで、各トラッキングコイル36−39は、Dt方向に巻回軸を有し、全体として角を丸めた四角形状を呈するように、ボビン57−60に巻回されている。
【0034】
絡げ部61は、側壁部54に3つ配置されており、2つはフォーカスコイル29を構成する導線の両端が夫々絡げられ、1つにはトラッキングコイル36−39の端部が絡げられる。同様に、側壁部55にも3つの絡げ部61が設けられ、2つの絡げ部61にはフォーカスコイル30を構成する導線の両端部が絡げられ、1つの絡げ部61にはトラッキングコイル36−39の他の端部が絡げられる。これらの絡げ部に絡げられた導線には、図2に示した支持ワイヤ45が夫々接続される。
【0035】
フォーカスコイル29、30は、OBLホルダ21の内部に収納されている。フォーカスコイル29は側壁部54側の端部に設けられた収納領域22に配置さており、フォーカスコイル30は側壁部55側に設けられた収納領域23に配置されている。これにより、フォーカスコイル29、30は、Dr方向に於いて、対物レンズ31よりも外側に配置されている。フォーカスコイル29、30を収納する収納領域22、23が、対物レンズ31の外周端部よりも外側に設けられる理由は、上記したボビン57−60を端部に配置する理由と同様である。ここで、平面視での収納領域22、23の大きさは、収納されるフォーカスコイル29、30と同等か若干大きい程度に設定される。
【0036】
また、フォーカスコイル29、30は、Df方向に巻回軸を有し、全体として角を丸めた四角形状を呈するように導線が巻回されて構成される。ここで、上記したトラッキングコイル36−39は、OBLホルダ21の一部であるボビン57−60に直に巻回される一方、フォーカスコイル29、30は巻回された状態で用意され、接着剤を介してOBLホルダ21の内部に固着される。また、不図示ではあるが、OBLホルダ21の内部には、フォーカスコイル29、30を所定位置に収納するための突起部が設けられている。
【0037】
本形態では、上記したように、1本の導線をボビン57−60に巻回することにより、トラッキングコイル36−39を形成している。従って、各ボビン間の導線はOBLホルダ21の側壁に這うように配置されており、この部分の導線が撓む等してOBLホルダ21の側壁から離れると、課題欄にて説明した不具合が発生するおそれがある。
【0038】
そこで本形態では、導線を引掛ける為の導線掛部28A(図3(A))、28B(図3(B))を設けている。図3(A)を参照して、導線掛部28Aは、ボビン59の近傍で、側壁部53を部分的に外部に突起させた部位であり、トラッキングコイル37とトラッキングコイル38とを繋ぐ導線(渡り線)が引掛けられる部位である。一方、図3(B)を参照して、導線掛部28Bは、トラッキングコイル37とトラッキングコイル38とを繋ぐ導線が引掛けられ或いは巻回される部位である。これらの導線掛部28A、28Bに導線を引掛ける事により、各トラッキングコイルを繋ぐ導線が、OBLホルダ21から浮き上がることが抑制される。
【0039】
図4を参照して、上記した導線掛部28A、28Bに導線を引掛ける具体的方法を説明する。図4(A)は各トラッキングコイルが巻回された状態のOBLホルダ21を示し、図4(B)はトラッキングコイル39が巻回される部位を示し、図4(C)はトラッキングコイル36が巻回される部位を示し、図4(D)はトラッキングコイル37が巻回される部位を示し、図4(E)はトラッキングコイル38が巻回される部位を示す。上記したように、巻線が巻回される順番は、トラッキングコイル39、36、37、38である。
【0040】
図4(B)を参照して、エナメル線等からなる導線69を絡げ部61に絡げた後に、反時計回りにボビン60に導線69を巻回させることでトラッキングコイル39が形成される。ここで、導線69の巻回は、先端から導線69が供給される巻線ノズル(不図示)を、ボビン60周りに移動させることで行われる。
【0041】
トラッキングコイル39の巻回が終了した後は、ボビン60の内側(+Dr側)の端部から導線69を引き出し、巻線ノズルをボビン57まで移動させる(経路A)。ここで、トラッキングコイル39の上方に対応する部分の側壁部53の端部を切り欠いて切込部42が設けられている。切込部42は導線69の位置を固定するための部位であり、内側の側面が傾斜面であり、外側の側面がDf方向に対して平行な面と成っている。また、ボビン同士の間の導線69は、OBLホルダ21の側壁に密着するように配置されている。かかる構成は他の切込部でも同様である。
【0042】
図4(C)を参照して、側壁部沿いに這わされた導線69(経路B)は、切込部42を経由した後に、ボビン57の内側(+Dr側)からに反時計回りに巻回される。この巻回が終了した後は、ボビンの上部から、導線69を+Dr方向へ引き出す(経路D)。
【0043】
図4(D)を参照して、次に、導線69を導線掛部28Bの上部に引掛けた後に(経路E、F)、ボビン58に時計回りに巻回してトラッキングコイル39を形成する。この巻回が終了した後に、導線69を一時的に−Dr方向に引き出して(経路G)、導線掛部28Bに一回巻回して(経路H、I)、切込部42を経由して次のボビンに這わせる(経路J、K)。この様に、導線69を導線掛部28Bに巻回等する理由は図6を参照して説明する。また、経路Eの導線69は、クロスする経路Jの導線69によって側壁部52側に押圧されており、これにより経路Eの導線69の浮き上がりが防止されている。
【0044】
図4(E)を参照して、次に、OBLホルダの側壁沿いの経路Lおよび切込部42を経た導線69(経路L)は、導線掛部28Aに引掛けられることで曲折された経路(経路M、N)を経由して、時計回りにボビン59に巻回されることでトラッキングコイル38が形成される。この巻回が終了した後は、側壁部54に設けた絡げ部(不図示)に導線69の端部を絡げる(経路O)。
【0045】
上記したように、トラッキングコイル39およびトラッキングコイル36の側方には導線掛部は形成されること無く、これらのトラッキングコイルを構成する導線69は各ボビンから直線的に切込部42に這わされている。この理由は、図4(B)を参照して、トラッキングコイル39を構成する導線69が、ボビン60の内側(+Dr側)から導出され、経路AとDf軸とで構成される角の角度が小さくなることから、巻線ノズルによる導線69の巻回処理が容易になるからである。
【0046】
同様に、図4(C)を参照して、トラッキングコイル36に関しても、経路Bを経た導線69は、ボビン57の内側(+Dr側)から経路Cを経由して巻回される。経路CとDf軸とで構成される角の角度が小さく、巻線ノズルによる巻回処理が容易なので、切込部42からボビン57の間の経路に導線掛部は設けられない。
【0047】
一方、図4(D)を参照すると、ボビン58に巻回された導線69は、ボビン58の外側(+Dr側)から、切込部42に引き出される。従って、何ら対策を施さずにそのまま導線69を引き出すと、ボビン58と切込部42との間で導線69がホルダの側壁から離れてしまう。このため本形態では、ボビン58よりも内側(−Dr側)に導線掛部28Bを設け、この導線掛部28Bに導線を巻回している。これにより、ボビン58から切込部42に至るまでの経路(経路G、H、I、J)で導線69が側壁部52に密着する。また、導線掛部28Bは、トラッキングコイル37を巻回する巻回ノズルとの接触を避けるために、ボビン58の内側(−Dr)の端部から1.2mm以上離間して配置される。
【0048】
更に、図4(E)を参照すると、図4(D)の場合と同様に、ボビン59にトラッキングコイル38を形成する際に、導線69はボビン59の外側(+Dr)側から巻回される。そこで、切込部42とボビン59との間の経路で、導線69が側壁部52から離れないように導線掛部28Aが設けられている。従って、導線69は、経路Lから切込部42を経由し、導線掛部28Aに導線が引掛けられることで、曲折する経路M、Nを辿った後に、ボビン59に巻回される。上記と同様に、巻回ノズルとの接触を避けるために、導線掛部28Aは、ボビン59の−Dr側の端部から1.2mm以上離間している。
【0049】
図5を参照して、導線掛部28Aに導線69が巻回される構成を詳述する。本形態では、導線掛部28Aに導線を少なくとも一回巻回することにより、ボビン58から切込部42に到るまでの経路で導線69を安定して這わせている。具体的には、この経路にて単に導線69を導線掛部28Aに引掛けた場合、導線掛部28Aから切込部42までの経路は点線にて示す経路J’になる。この様になると、導線69を這わせる巻線ノズルの位置に誤差が生じた場合、導線69が切込部42から−Dr側に外れて不良が発生する恐れがある。この為、本形態では、導線掛部28Aに導線69を時計回りに巻回した後、切込部42に導線を這わせている(経路J)。これにより、経路JとDf軸とで形成される角の角度が小さくなるので、導線69が切込部42から脱落しない。
【0050】
図6を参照して、各導線掛部の形状を更に説明する。図6(A)および図6(B)は導線掛部28Bの形状を示す図であり、図6(C)および図6(D)は導線掛部28Aの形状を示す図で有る。
【0051】
図6(A)及び図6(B)を参照して、導線掛部28Bは、側壁部53を外側に部分的に突起させた部位であり、導線掛部28Bの下面は、内側が上方に切れ込む傾斜面と成っている。この部分では、導線掛部28Bの下面と側壁部53の外面とで構成される角の角度が鋭角になっている。これにより、導線掛部28Bの下部の内側に空間が形成され、この空間に導線69が収納されることにより、導線69が側壁部53に密着された状態で引掛けられる。また、導線69が導線掛部28Bから外れにくく成る。
【0052】
図6(D)を参照して、導線掛部28Aの上面内側は下方に傾斜する傾斜面であり、この部分に図6(C)に示す経路Eの導線69が引掛けられる。更に、ボビン58と切込部42との間の経路の導線69が導線掛部28Aに巻回されている。従って、導線掛部28Aは2つの経路(経路E−F、経路G−J)の導線69を矯正する働きを有している。
【0053】
ここで、上記した本形態は次のように変更することも可能である。具体的には、図4を参照して、各導線掛部を設ける場所を変更しても良い。即ち、図4の各図を参照して、この場合、図4(D)に示す導線掛部28Bをボビン57(図4(C))の近傍に設け、上記と同じ要領で導線69を引掛ける。また、図4(E)に示す導線掛部28Aをボビン60(図4(B))の近傍に設け、上記と同じ要領で導線69を引掛ける。この場合、各ボビンに導線が巻回される方向も逆と成る。係る構成であっても、上記と同様の効果が奏される。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザーユニット
6 回折格子
9 1/4波長板
12 コリメートレンズ
13 ハーフミラー
16 第1プレート
17 光検出器
18 1/4波長板
19 第2プレート
20 FMD
21 OBLホルダ
22 収納領域
23 収納領域
28A,28B 導線掛部
29 フォーカスコイル
30 フォーカスコイル
31 対物レンズ
32 マグネット
33 マグネット
34 マグネット
35 マグネット
36 トラッキングコイル
37 トラッキングコイル
38 トラッキングコイル
39 トラッキングコイル
40 アクチュエータ可動部
41 アクチュエータフレーム
42 切込部
43 補助部材
44 固定基板
45 支持ワイヤ
46A,46B バックヨーク
47 サブヨーク
48 対向ヨーク
49 対向ヨーク
50 対物レンズ駆動装置
51 ハウジング
52 側壁部
53 側壁部
54 側壁部
55 側壁部
56 主面部
57 ボビン
58 ボビン
59 ボビン
60 ボビン
61 絡げ部
69 導線
70 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズが固定される主面部から連続する側壁部と、
前記側壁部から側方に突出する第1ボビン、第2ボビン、第3ボビンおよび第4ボビンと、
前記各ボビンに導線を巻回することで形成された第1トラッキングコイル、第2トラッキングコイル、第3トラッキングコイルおよび第4トラッキングコイルと、を備え、
前記第1ボビン、前記第2ボビン、前記第3ボビンおよび前記第4ボビンの少なくとも1つの近傍で、前記側壁部を側方に突出させた導線掛部に、前記導線を引掛けることを特徴とする対物レンズホルダ。
【請求項2】
前記対物レンズホルダを横断する前記導線が、前記導線掛部に引掛けられることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズホルダ。
【請求項3】
前記導線掛部は、前記対物レンズホルダを横断する前記導線が外側から導出される前記ボビンの近傍に設けられることを特徴とする請求項2に記載の対物レンズホルダ。
【請求項4】
前記側壁部は、第1方向で対向する第1側壁部および第2側壁部と、前記第1方向に直交する第2方向で対向する第3側壁部および第4側壁部を有し、
前記第1ボビンおよび前記第4ボビンは、前記第1側壁部に設けられ、
前記第2ボビンおよび前記第3ボビンは、前記第2側壁部に設けられ、
前記第1ボビン、前記第2ボビン、前記第3ボビンおよび前記第4ボビンの順番で前記導線を巻回することにより、前記第1トラッキングコイル、前記第2トラッキングコイル、前記第3トラッキングコイルおよび前記第4トラッキングコイルが形成され、
前記第3トラッキングコイルおよび前記第4トラッキングコイルの近傍にそれぞれ設けた前記導線掛部に、前記導線を引掛けることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の対物レンズホルダ。
【請求項5】
前記第1トラッキングコイルおよび前記第2トラッキングコイルで前記導線が巻回される方向と、前記第3トラッキングおよび前記第4トラッキングで前記導線が巻回される方向とは、逆であることを特徴とする請求項4に記載の対物レンズホルダ。
【請求項6】
前記導線が引掛けられる前記導線掛部の側面は、前記側面の外側と前記側壁部との成す角の角度が鋭角と成るように、前記側壁部の側面に対して傾斜する傾斜面であり、
前記傾斜面に前記導線が引掛けられることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の対物レンズホルダ。
【請求項7】
前記第3ボビン付近の前記第2側壁部に第1導線掛部を設け、
前記第2ボビンと前記第3ボビンとの間の前記導線を前記第1導線掛部に引掛けると共に、前記第3ボビンと前記第4ボビンとの間の前記導線を前記第1導線掛部に巻回することを特徴とする請求項4から請求項6の何れかに記載の対物レンズホルダ。
【請求項8】
前記第4ボビン付近の前記第1側壁部に第2導線掛部を設け、
前記第3ボビンと前記第4ボビンとの間の前記導線を前記第2導線掛部に引掛けることを特徴とする請求項7に記載の対物レンズホルダ。
【請求項9】
前記側壁部の端部に切込部を設け、前記トラッキングコイル同士の間の前記導線を前記切込部に引掛けることを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の対物レンズホルダ。
【請求項10】
前記導線掛部を前記ボビンから1.2mm以上離間させることを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載の対物レンズホルダ。
【請求項11】
前記側壁部は、第1方向で対向する第1側壁部および第2側壁部と、前記第1方向に直交する第2方向で対向する第3側壁部および第4側壁部を有し、
前記第1ボビンおよび前記第4ボビンは、前記第1側壁部に設けられ、
前記第2ボビンおよび前記第3ボビンは、前記第2側壁部に設けられ、
前記第1ボビン、前記第2ボビン、前記第3ボビンおよび前記4ボビンの順番で前記導線を巻回することにより、前記第1トラッキングコイル、前記第2トラッキングコイル、前記第3トラッキングコイルおよび前記第4トラッキングコイルが形成され、
前記第1トラッキングコイルおよび前記第2トラッキングコイルの近傍にそれぞれ設けた前記導線掛部に、前記導線を引掛けることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の対物レンズホルダ。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れかに記載された対物レンズホルダと、
前記対物レンズホルダを移動可能に支持するアクチュエータフレームと、を備えることを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項13】
請求項1から請求項11の何れかに記載された対物レンズホルダと、
前記対物レンズホルダに装着された第1トラッキングコイル、第2トラッキングコイル、第3トラッキングコイルおよび第4トラッキングコイルに流される駆動電流に対してトラッキング方向へ変位させる駆動力を発生させる磁界を発生する磁気回路と、を備えることを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の対物レンズ駆動装置をハウジングに搭載したことを特徴とする光ピックアップ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−97823(P2013−97823A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236702(P2011−236702)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】