説明

対物レンズホルダおよびそれを用いた対物レンズ駆動装置、光ピックアップ装置、並びに対物レンズ駆動装置の製造方法

【課題】筐体状のホルダに収納されたコイルに対して容易に接着剤を供給することを可能とする対物レンズホルダ等を提供する。
【解決手段】本発明のOBLホルダ21は、対物レンズ31が固定される固定部が設けられた主面部56と、OBLホルダ21自身を磁気作用によって駆動させるためのトラッキングコイル36−39を巻回するボビン57−60が設けられた第1側壁部52および第2側壁部53とを備えている。本発明では、ボビン58に設けられた連通孔63は、第1側壁部52を貫通して内部と外部とを連通させており、この部分にはフォーカスコイル29が配置されている。これにより、連通孔63を経由してフォーカスコイル29に対して接着剤を供給することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズが取り付けられる対物レンズホルダ、対物レンズホルダがアクチュエータフレームに変位可能に支持される対物レンズ駆動装置、および光ピックアップ装置、並びに対物レンズ駆動装置の製造方法に関する。特に、本発明は、内部に収納されるフォーカスコイルに接着剤を供給するための部位を備えた対物レンズホルダ等に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに対して光学的に信号の読み取り、あるいは書き込みを行う光学ヘッドにおける対物レンズ駆動装置においては、対物レンズ(Objective lens)が取り付けられた対物レンズホルダ(以下、OBLホルダと称する)をアクチュエータフレームに対して変位可能に支持されている。また、OBLホルダには、フォーカスコイル及びトラッキングコイル、あるいは必要に応じてチルトコイルをOBLホルダに装着すると共に、これらの駆動コイルの有効領域を磁気回路により形成される所定の磁界内に配置することにより各駆動コイルに供給する信号に応じて対物レンズを駆動する構成となっている。
【0003】
従来から存在する対物レンズ駆動装置の構造は、例えば下記特許文献1に示されている。この文献の図3を参照すると、略矩形の枠状に形成されたコイル保持部24の内部に、フォーカシングコイル25およびトラッキングコイル26が収納されている。そして、フォーカシングコイル25およびトラッキングコイル26の磁気作用により、コイル支持部24を備えた対物レンズ駆動装置8が所定方向に駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−302161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した構成の対物レンズ移動装置では、トラッキングコイルおよびフォーカシングコイルの使用状況下に於ける変形や移動を防止するために、これらのコイルには接着剤が塗布される。
【0006】
上記特許文献の図3を参照すると、フォーカシングコイル25に接着剤を塗布する場合、コイル保持部24の内部にフォーカシングコイル25を収納した後、コイル保持部24の内側からフォーカシングコイル25に対して接着剤を供給する必要があり、この作業が煩雑な問題があった。
【0007】
更に、特にノートパソコン等のコンパクトな電子機器に適用される光ピックアップ装置の対物レンズ移動装置は非常に小型であるので、上記した作業が更に困難と成る場合があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、筐体状のホルダに収納されたコイルに対して容易に接着剤を供給することを可能とする対物レンズホルダ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光ピックアップ装置の対物レンズ駆動装置に移動可能に支持され、対物レンズを保持する対物レンズホルダであって、前記対物レンズが固定される固定部が設けられた主面部と、前記対物レンズホルダ自身を磁気作用によって駆動させるためのトラッキングコイルを巻回するボビンが設けられた側壁部と、前記側壁部の内側でフォーカスコイルが収納される収納領域とを備え、前記ボビンの内部で、前記側壁部を貫通して前記収納領域と外部とを連通させる連通孔が設けられることを特徴とする。
【0010】
本発明は、対物レンズを保持する対物レンズホルダがアクチュエータフレームに移動可能に支持される対物レンズ駆動装置であって、前記対物レンズホルダは、前記対物レンズが固定される固定部が設けられた主面部と、前記対物レンズホルダ自身を磁気作用によって駆動させるためのトラッキングコイルを巻回するボビンが設けられた側壁部と、前記側壁部の内側でフォーカスコイルが収納される収納領域とを備え、前記ボビンの内部で、前記側壁部を貫通して前記収納領域と外部とを連通させる連通孔が設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明の光ピックアップ装置は、上記構成の対物レンズ駆動装置をハウジングに搭載したことを特徴とする。
【0012】
本発明の対物レンズ駆動装置の製造方法は、上記構成の対物レンズホルダを用意する工程と、前記各ボビンにトラッキングコイルを巻回する工程と、前記収納領域にフォーカスコイルを収納する工程と、前記各ボビンの前記連通孔を経由して、前記収納領域に収納された前記フォーカスコイルに接着剤を供給する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トラッキングコイルが巻回されるボビンの内部に、対物レンズホルダの側壁部を貫通して外部と連通する連通孔を設けたので、対物レンズホルダに収納されたトラッキングコイルに対して、この連通孔を経由して容易に接着剤を供給できる。
【0014】
さらに本発明では、連通孔が設けられたボビンに、ボビン自体に巻回されるトラッキングコイルに接着剤を供給するための貫通孔を設けたので、ボビンに接着剤を供給するのみで、トラッキングコイルおよびフォーカスコイルの両者に対して接着剤を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の光ピックアップ装置を示す平面図である。
【図2】本発明の対物レンズ駆動装置を示す図であり、(A)は対物レンズ駆動装置を全体的に示す平面図であり、(B)はアクチュエータ可動部を拡大して示す平面図である。
【図3】本発明の対物レンズホルダを示す図であり、(A)は各種コイル等が組み込まれた状態の対物レンズホルダを示す斜視図であり、(B)はコイルが組み込まれる前の状態の対物レンズホルダを示す斜視図である。
【図4】本発明の対物レンズホルダを示す図であり、(A)は各種コイル等が組み込まれた状態の対物レンズホルダを示す斜視図であり、(B)は(A)の断面図であり、(C)は一部を拡大して示す断面図であり、(D)は鍔部を示す側面図である。
【図5】本発明の他の形態の対物レンズホルダを示す断面図である。
【図6】本発明の対物レンズ駆動装置の製造方法を示す図であり、(A)はボビンを経由して接着剤を供給する工程を示す斜視図であり、(B)はその状態を詳細に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図5を参照して、本発明の実施形態を説明する。まず、図1は本実施形態の光ピックアップ装置100の概略を示す平面図である。
【0017】
光ピックアップ装置100は、一例としてCD(Compact Disc)規格、DVD(Digital Versatile Disc)規格、およびBD(Blu−ray Disc)規格の各光ディスクに対応する構成となっており、対物レンズ駆動装置50および各種光学部品がハウジング51に設置されて構成されている。光ピックアップ装置の概略的機能は、光ディスクの情報記録層に対して所定の規格のレーザー光を照射し、この情報記録層で反射したレーザー光を受光することで、光ディスクからの情報の読出しまたは書き込みを行うことにある。
【0018】
対物レンズ駆動装置50(アクチュエータ)は、対物レンズ(Objective lens)ホルダ(以下、OBLホルダ)21を移動可能に保持する。OBLホルダ21は、上記した各規格の何れかまたは全てに対応する対物レンズ31が装着される。
【0019】
レーザーユニット1はレーザーダイオードを備え、このレーザーダイオードから上記した規格のレーザー光が放射される。具体的には、BDに適した青紫色(青色)波長帯395nm〜420nm(例えば405nmの波長)のレーザ光、DVDに適した赤色波長帯645nm〜675nm(例えば650nmの波長)のレーザ光、またはCDに適した赤外波長帯765nm〜805nm(例えば780nmの波長)のレーザ光が、レーザーダイオードから放射される。
【0020】
レーザーユニット1から放射されたレーザー光は、回折格子6で0次光、+1次光、−1次光に分離されてハーフミラー13で反射された後に、1/4波長板9およびコリメートレンズ12を通過し、不図示の立ち上げミラーで反射されて対物レンズ31で光ディスクの情報記録層に合焦される。また、レーザーユニット1から放射されたレーザー光の一部はハーフミラー13を透過してFMD20で検出され、この検出に基づいてレーザーユニット1の出力が調整される。そして、光ディスクの情報記録層で反射した戻り光のレーザー光は、立ち上げミラー、コリメートレンズ12、1/4波長板9、ハーフミラー13を透過し、その後、第1プレート16および第2プレート19で不要な非点収差が打ち消され、所望の非点収差が付与された後に、光検出器17(PDIC)で検出される。光検出器17で検出された信号に基づいて、OBLホルダ21のコイルに制御信号が供給され、フォーカスコイル、トラッキングコイル、またはチルトコイルに制御電流が供給される。この結果、フォーカス制御、トラッキング制御及びラジアルチルト制御が行われる。ここで、後述する対物レンズ駆動装置50の場合、フォーカスコイルがチルトコイルの機能を兼ねており、チルトコイルが省かれている。
【0021】
ここで、図1に示すDt方向とはタンジェンシャル方向であり、Dr方向とはトラッキング方向(光ディスクのラジアル方向)であり、Df方向とはフォーカス方向である。これらの各方向は互いに直交している。
【0022】
図2を参照して、上記した光ピックアップ装置に組み込まれる対物レンズ駆動装置50を説明する。図2(A)は対物レンズ駆動装置50を示す平面図であり、図2(B)はアクチュエータ可動部40を拡大して示す平面図である。
【0023】
図2(A)を参照して、対物レンズ駆動装置50(アクチュエータ)は、アクチュエータ可動部40とアクチュエータフレーム41とから成る。また、アクチュエータ可動部40はOBLホルダ21と、支持ワイヤ45から構成される。アクチュエータフレーム41は、珪素鋼板等の磁性金属材料から形成され、部分的に直角に曲折加工されることで、後述するヨークが形成される。
【0024】
アクチュエータ可動部40は、支持ワイヤ45によりアクチュエータフレーム41に対してフォーカス方向(Df方向)、トラッキング方向(Dr方向)及びラジアルチルト方向(Drt方向)に変位可能に弾性的に支持される。支持ワイヤ45は、一端がOBLホルダ21の側壁に固定され、他端がアクチュエータフレーム41に固定された固定基板44に固定される。前記固定基板44は支持ワイヤ45を制振させるダンパー材が充填される補助部材43に接着され、該補助部材43と共にアクチュエータフレーム41にねじ止め固定される。支持ワイヤ45は、アクチュエータフレーム41の1つの側面に対して例えば3本ずつ架設され、アクチュエータ可動部40を中空状態で機械的に支持すると共に、アクチュエータ可動部40に備えられる各コイルに供給される電流が流れる接続手段としても機能している。
【0025】
図2(B)を参照して、アクチュエータ可動部40は、OBLホルダ21と、OBLホルダ21の上面に固定された対物レンズ31と、OBLホルダ21の側壁部の外側の面に巻回されたトラッキングコイル36−39と、OBLホルダ21に内蔵されたフォーカスコイル29、30とを主要に備える。
【0026】
OBLホルダ21の側壁部外側に配置された各トラッキングコイル36−39に面するアクチュエータフレーム41の各ヨークに、マグネット32−35が配置されている。各マグネット32−35の、各トラッキングコイル36−39に対向する面は同一の極性(例えばN極)である。また、各マグネット32−35は、トラッキングコイル36−39の有効領域に対して有効磁束を発生させる。この様な構成でトラッキングコイル36−39に電流を供給すると、トラッキングコイル36−39に電流が流れることで発生する磁界と、マグネット32−35で生成される磁界で形成される磁気回路との協働により、OBLホルダ21はDt方向に変位する。
【0027】
対物レンズ31を挟む箇所のOBLホルダ21の内部には、Df方向に巻回軸を有する2つのフォーカスコイル29、30が配置されており、マグネット32−35は、フォーカスコイル29、30の有効領域に対しても有効磁束を発生させている。従って、フォーカスコイル29、30に対して電流を供給すると、フォーカスコイル29、30に電流が流れることで発生する磁界と、マグネット32−35で生成される磁界で形成される磁気回路との協働により、OBLホルダ21はDf方向に変位する。尚、本形態では、フォーカスコイル29、30に、チルト方向に対する制御を行うための制御信号を付与することで、OBLホルダ21をチルト方向(Drt方向)に制御している。
【0028】
バックヨーク46は、アクチュエータフレーム41の端部を直角に曲折加工させた部位でありマグネット32、33が、内側の側面に固着されている。更に、バックヨークのDr方向の両端部を更に直角に曲折させてサブヨーク47が形成されている。このような形状のバックヨーク46およびサブヨーク47を設けることにより、マグネット32、33が生成する有効に作用する有効磁束を強めることができ、マグネット32、33の磁力が小さくても、OBLホルダ21を所定の方向に変位させることが可能となる。
【0029】
対向ヨーク48、49は、バックヨーク46等と同様に、アクチュエータフレームを直角に曲折させた部位であり、夫々がフォーカスコイル29、30に挿入する位置に設けられている。対向ヨーク48、49をこのように配置することで、フォーカスコイル29、30及び各トラッキングコイル36−39に有効に作用する有効磁束を強めることができ、OBLホルダ21のDf方向、Dr方向及びDrt方向の感度を向上させるのに有効である。
【0030】
図3を参照して、上記したアクチュエータ可動部に含まれるOBLホルダ21の構成を説明する。図3(A)は各コイルが備えられた状態のOBLホルダ21を示す斜視図であり、図3(B)はOBLホルダ21のみを示す斜視図である。
【0031】
OBLホルダ21の概略的形状は、下方に開口部が設けられた筐体形状である。具体的には、OBLホルダ21は、対物レンズ31が装着される円形の開口部が設けられた主面部56と、主面部56の周辺部から下方に一体的に連続する4つの側壁部とを備えている。この側壁部としては、紙面上の奥側で長手方向の第1側壁部52、紙面上の手前側で第1側壁部52に対向する第2側壁部53、紙面上で右側に設けられた短手方向の第3側壁部54、および紙面上で左側端部に設けられた第4側壁部55が含まれている。第1側壁部52および第2側壁部53の主面はDt方向に対して平行であり、第3側壁部54および第4側壁部55の主面はDr方向に対して平行である。
【0032】
第1側壁部52の外側の主面には、ボビン57、58が設けられており、これらのボビンには夫々トラッキングコイル36、37が巻回されている。また、第2側壁部53の外側の主面には、ボビン59、60が設けられており、これらのボビンには夫々トラッキングコイル38、39が巻回されている。本形態では、各ボビン57−60は、Dt方向において対物レンズ31よりも外側の端部に配置されている。この理由は、OBLホルダ21を、小型の光ピックアップに収納させると、対物レンズ31の直下に立ち上げミラーが配置されると共に、前記立ち上げミラーへの光路を確保する空間70をOBLホルダ21の第1側壁部52及びあるいは第2側壁部53の中央から下方の領域に設ける必要があり、この領域にコイル等の部品を収納させるためのマージンが無いからである。
【0033】
各ボビンに巻回されるトラッキングコイル36−39は、1本の細長いエナメル線等の導線から成り、その一端は、第3側壁部54の一部を突出させた絡げ部61に絡げられ、他端は第4側壁部55に設けた絡げ部61に絡げられる。ここで、各トラッキングコイル36−39は、Dr方向に巻回軸を有し、全体として角を丸めた四角形状を呈するように、ボビン57−60に巻回されている。また、トラッキングコイル36−39は、OBLホルダ21自身を磁気作用によって駆動させるための駆動コイルであり、このような機能は後述するフォーカスコイル29、30も同様である。
【0034】
絡げ部61は、第3側壁部54に3つ配置されており、2つはフォーカスコイル29を構成するエナメル線の両端が夫々絡げられ、1つにはトラッキングコイル36−39の端部が絡げられる。同様に、第4側壁部55にも3つの絡げ部61が設けられ、2つの絡げ部61にはフォーカスコイル30を構成するエナメル線の両端部が絡げられ、1つの絡げ部61にはトラッキングコイル36−39の他の端部が絡げられる。これらの絡げ部に絡げられたエナメル線には、図2(A)に示した支持ワイヤ45が夫々接続される。
【0035】
フォーカスコイル29、30は、OBLホルダ21の内部に収納されている。フォーカスコイル29は第3側壁部54側の端部に設けられた収納領域22に配置さており、フォーカスコイル30は第4側壁部55側に設けられた収納領域に配置されている。これにより、フォーカスコイル29、30は、Dt方向に於いて、対物レンズ31よりも外側に配置されている。フォーカスコイル29、30を収納する収納領域22、23が、対物レンズ31の外周端部よりも外側の端部に設けられる理由は、上記したボビン57−60を端部に配置する理由と同様である。ここで、平面視での収納領域22、23の大きさは、収納されるフォーカスコイル29、30と同等か若干大きい程度に設定される。
【0036】
また、フォーカスコイル29、30は、Df方向に巻回軸を有し、全体として角を丸めた四角形状を呈するようにエナメル線が巻回されて構成される。ここで、上記したトラッキングコイル36−39は、OBLホルダ21の一部であるボビン57−60に直に巻回される一方、フォーカスコイル29、30は巻回された状態で用意され、接着剤を介してOBLホルダ21の内部に固着される。また、不図示ではあるが、OBLホルダ21の内部には、フォーカスコイル29、30を所定位置に収納するための突起部が設けられている。
【0037】
図4を参照して、上記したフォーカスコイルが収納される構成を説明する。図4(A)はOBLホルダ21を示す斜視図であり、図4(B)は図4(A)のB−B’線における断面図であり、図4(C)は1つのボビン58を拡大して示す断面図であり、図4(D)は図4(A)にて矢印で示す方向からボビン58を見た図である。
【0038】
図4(B)を参照して、収納領域22に収納されるフォーカスコイル29の両側の側面は、第1側壁部52および第2側壁部53の内側の主面に当接している。そして、第1側壁部52のフォーカスコイル29が接する箇所の外側にボビン58が設けられており、ボビン58の内部に配置された連通孔63は、第1側壁部52を貫通して、収納領域22と外部とを連通させている。従って、ボビン58が設けられた箇所では、フォーカスコイル29の外側の側面は、連通孔63から外部に露出する。同様に、第2側壁部53のフォーカスコイル29が接する箇所の外側にボビン59が設けられており、ボビン59の内部に設けられた連通孔63は第2側壁部53を貫通して、収納領域22と外部とを連通させている。この様な構成は、図4(A)に示す他のボビン57、60に関しても同様である。
【0039】
また、第1側壁部52から外側に突出する鍔状のボビン58に、トラッキングコイル37が巻回されている。同様に、第2側壁部53から外側に突出する鍔状のボビン59にトラッキングコイル38が巻回されている。この様な構成は、OBLホルダ21の他端に設けられたボビン57、60、トラッキングコイル36、39、フォーカスコイル30に関しても同様である。
【0040】
また、上記した各トラッキングコイル36−39およびフォーカスコイル29、30は、エポキシ樹脂等の接着剤が含浸されている。このようにすることで、光ピックアップ装置の使用状況下にて各コイルに磁力が作用しても、この磁力により各コイルを構成するエナメル線が変形することが防止される。更にまた、各トラッキングコイルおよびフォーカスコイルが、接着剤を介してOBLホルダ21に固着されることで、使用状況下に於ける各コイルの移動や分離が防止される。
【0041】
図4(C)を参照して、ボビン58の構成を説明する。ボビン58は、第2側壁部53から外側に突出する円筒状の筒状部65と、この筒状部65の外側の端部を円周方向に拡大させた鍔部66とを有している。ボビン58を構成する筒状部65および鍔部66の厚みは、OBLホルダ21の他の部位の厚みと同様である。また、筒状部65は円形の断面を有する円筒状を呈しているが他の形状でも良く、例えば、紙面上縦方向に長い楕円形または角丸四角形等の断面形状でも良い。
【0042】
図4(D)を参照して、鍔部66の形状はここでは紙面上縦方向に長い角丸長方形を呈しているが、縦方向に長軸を有する楕円形や円形でも良い。また、鍔部66の縦方向の長さは、トラッキングコイル38の外形よりも長く設定されている。これにより、トラッキングコイル38を、鍔部66の内側に確実に巻回することが可能となる。また、鍔部66の横方向の幅は、トラッキングコイル38の外形よりも短くても良い。
【0043】
トラッキングコイル38が巻回される部位である筒状部65は、基本的には円周方向に対して連続して形成されている。これにより、筒状部65の強度が一定以上に確保されるので、薄い樹脂材料で成形される筒状部65に、大きな緊張力でトラッキングコイル38が巻回された場合であっても、この巻回に伴う筒状部65の変形や破壊が防止される。
【0044】
また、筒状部65の全周端部から円周方向に拡大させた鍔部66が設けられている。このようにすることで、鍔部66により筒状部65の先端部が補強され、トラッキングコイル38を巻回した際に於ける筒状部65の変形を抑止する効果が大きくなる。更に、光ピックアップ装置の使用状況下に於いても、トラッキングコイル38の全域が鍔部66により保持されるので、トラッキングコイル38がボビン59から外れることが防止される。ここで、他のボビン57、58、60も、上記したボビン59と同様の構成を備える。
【0045】
本形態のOBLホルダ21では、図4(B)を参照して、収納領域22に収納されたフォーカスコイル29の側面に対応する箇所で、ボビン58、59に連通孔63を設け、この連通孔63からフォーカスコイル29を外部に露出している。これにより、製造工程の途中段階で、フォーカスコイル29に対して、連通孔63を経由して外部から接着剤を供給することが可能となるので、簡易な方法で接着剤を供給することができる。
【0046】
また、各ボビン58、59は、フォーカスコイル29を挟むように対称的な位置に配置されており、両ボビン58、59から供給された液状の接着剤は、フォーカスコイル29に対して均等に供給される。従って、接着剤が偏在することが抑制され、OBLホルダ21全体としての重量のバランスが良好に保たれる。更に、各ボビン58、59の連通孔は、Dt方向に対して、フォーカスコイル29の中央部付近に配置されており、このことも、フォーカスコイル29に対して、接着剤を均等に供給することに寄与している。
【0047】
更に、本形態のOBLホルダ21では、筒状部65の一部を厚み方向に貫通して貫通孔64を設けている。具体的には、図4(C)を参照して、筒状部65の上端部および下端部の2箇所に貫通孔64を設けている。この貫通孔64を設けることにより、接着剤を、貫通孔64を経由してトラッキングコイル38に供給することが可能となる。貫通孔64は、トラッキングコイル38に供給される接着剤が通過できる範囲内で小さく形成されるので、貫通孔64を設けることによる筒状部65の機械的強度の低下は抑制されている。
【0048】
図5を参照して、上記したボビン59の他の形態を説明する。この図に示すボビン58では、第1側壁部52を貫通する連通孔63は設けられているが、ボビン58の筒状部65を貫通する貫通孔64(図4(C)参照)は設けられていない。貫通孔64を排除することにより、筒状部65の機械的強度が高く確保されるので、トラッキングコイル38を巻回する際のボビン59の変形等が抑制される。また、この場合は、フォーカスコイル29には連通孔63を経由して接着剤が供給される一方、トラッキングコイル38には、トラッキングコイル38の上方または下方から別途に接着剤が供給される。
【0049】
上記した各図および図6を参照して、次に、上記した構成の対物レンズ駆動装置を製造する方法を説明する。図6(A)はOBLホルダ21を示す斜視図であり、図6(B)はボビン59を経由して接着剤68を供給する工程を示す断面図である。
【0050】
先ず、図3(B)に示すような形状を備えたOBLホルダ21を用意する。OBLホルダ21は、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer)などの樹脂材料を、モールド金型のキャビティに注入することにより形成される。OBLホルダ21は、4つの側壁部を有し、第1側壁部52および第2側壁部53に、トラッキングコイルを巻回するためのボビンが側壁部と一体で設けられている。
【0051】
次に、図3(A)を参照して、各ボビン57−60にエナメル線を巻回することでトラッキングコイル36−39を形成する。トラッキングコイル36−39は、1本のエナメル線から成り、ボビン59、58、57、60の順番で自動化された機械により巻回される。トラッキングコイル36−39と成るエナメル線の一端は、第3側壁部54に設けられた絡げ部61に絡げられる。また、このエナメル線の他端は、第4側壁部55に設けられた絡げ部61に絡げられる。
【0052】
更に、フォーカスコイル29、30をOBLホルダ21の内部に収納する。具体的には、OBLホルダ21の開口する下部からフォーカスコイル29、30を、OBLホルダ21の内部に収納する。本形態では、OBLホルダ21のDt方向に於ける両端部に、収納領域22、23が設けられており、各々の収納領域にフォーカスコイル29、30が収納される。そして、フォーカスコイル29を構成するエナメル線の両端を、第3側壁部54に設けた絡げ部61に夫々絡げる。また、フォーカスコイル30を構成するエナメル線の両端部を、第4側壁部55に設けた絡げ部61に夫々絡げる。
【0053】
また、OBLホルダ21の主面部56に設けられた固定部62には、絶縁性の接着剤を介して対物レンズ31を固定する。
【0054】
次に、各コイルにエポキシ樹脂等の接着剤を供給する。具体的には、本形態では、各ボビン57−60の連通孔を経由して、各コイルに液状の接着剤を供給する。図6(A)では、接着剤が供給される箇所を白抜きの矢印にて示している。
【0055】
図6(B)を参照して、ボビン59を経由して接着剤を供給する方法を詳述する。上記したように、ボビン59に設けた連通孔63は、第2側壁部53を貫通して内部空間と連通しており、連通孔63にはフォーカスコイル29の側面が露出している。従って、連通孔63に供給された接着剤68は、フォーカスコイル29を構成するエナメル線同士の間に含浸される。また、接着剤68の一部は、第2側壁部53の内壁とフォーカスコイル29との間にも進入する。同様に、第1側壁部52に設けたボビン58からもフォーカスコイル29に対して接着剤を供給する。ボビン58とボビン59とは、フォーカスコイル29を挟む位置で対称的に配置されているので、両ボビンから供給された接着剤は、フォーカスコイル29に対して一様に含浸される。同様に、フォーカスコイル30に対しても、ボビン57、60を経由して接着剤が供給される。
【0056】
また、連通孔63に供給された接着剤の一部は、トラッキングコイルにも供給される。具体的には、上記したように、ボビン59は筒状部65および鍔部66から成り、筒状部65を厚み方向に貫通した貫通孔64が、筒状部65の上下端部に設けられている。従って、ボビン59の連通孔63に液状の接着剤68を供給すると、供給された接着剤68は、貫通孔64を経由して、鍔部66と第2側壁部53に囲まれる空間に浸入する。そして、浸入した接着剤は、トラッキングコイル38を構成するために幾重にも巻回されたエナメル線同士の間隙に含浸される。接着剤68をトラッキングコイル38に供給する上記方法は、他のボビン57、58、60でも同様である。
【0057】
その後、接着剤68を硬化させる。接着剤68が、光線照射や加熱等のエネルギーを付与することで硬化するタイプであれば、エネルギーを接着剤68に付与する。このようにすることで、フォーカスコイル29を構成するエナメル線同士が固化され、フォーカスコイル29が第1側壁部52、第2側壁部53および第3側壁部54に固定される。同様に、フォーカスコイル30を構成するエナメル線同士が固化され、フォーカスコイル30が第1側壁部52、第2側壁部53および第4側壁部55に固着される。更に、トラッキングコイル36−39の形状が固化されると共に、各トラッキングコイル36−39が各ボビン57−60に固着される。
【0058】
上記説明からも明らかなように、ボビン59に接着剤68を供給することにより、トラッキングコイル38およびフォーカスコイル29の両方に対して、接着剤68を供給することが可能である。これにより、接着剤68を供給する工程を簡略化して製造コストが低減される。
【0059】
上記工程が終了した後は、図2に示すように、OBLホルダ21の側面に設けられた絡げ部で、各コイルを支持ワイヤ45に接続・固定する。これにより、OBLホルダ21を含むアクチュエータ可動部40が、支持ワイヤ45でアクチュエータフレーム41に支持され、対物レンズ駆動装置50が構成される。
【0060】
更に、図1を参照して、このような構成を有する対物レンズ駆動装置50を、他の光学素子や電子部品と共に、ハウジング51に収納させることにより、光ピックアップ装置100が構成される。
【符号の説明】
【0061】
1 レーザーユニット
6 回折格子
9 1/4波長板
12 コリメートレンズ
13 ハーフミラー
16 第1プレート
17 光検出器
19 第2プレート
20 FMD
21 OBLホルダ
22 収納領域
23 収納領域
29 フォーカスコイル
30 フォーカスコイル
31 対物レンズ
32 マグネット
33 マグネット
34 マグネット
35 マグネット
36 トラッキングコイル
37 トラッキングコイル
38 トラッキングコイル
39 トラッキングコイル
40 アクチュエータ可動部
41 アクチュエータフレーム
43 補助部材
44 固定基板
45 支持ワイヤ
46 バックヨーク
47 サブヨーク
48 対向ヨーク
49 対向ヨーク
50 対物レンズ駆動装置
51 ハウジング
52 第1側壁部
53 第2側壁部
54 第3側壁部
55 第4側壁部
56 主面部
57 ボビン
58 ボビン
59 ボビン
60 ボビン
61 絡げ部
62 固定部
63 連通孔
64 貫通孔
65 筒状部
66 鍔部
67 孔部
68 接着剤
70 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップ装置の対物レンズ駆動装置に移動可能に支持され、対物レンズを保持する対物レンズホルダであって、
前記対物レンズが固定される固定部が設けられた主面部と、前記対物レンズホルダ自身を磁気作用によって駆動させるためのトラッキングコイルを巻回するボビンが設けられた側壁部と、前記側壁部の内側でフォーカスコイルが収納される収納領域とを備え、
前記ボビンの内部で、前記側壁部を貫通して前記収納領域と外部とを連通させる連通孔が設けられることを特徴とする対物レンズホルダ。
【請求項2】
前記収納領域は、前記固定部よりも両端側に配置された、第1収納領域および第2収納領域を有し、
前記ボビンの前記連通孔は、前記第1収納領域または第2収納領域と連通する箇所に配置されることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズホルダ。
【請求項3】
前記連通孔は、前記フォーカスコイルを挟む位置に複数個配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の対物レンズホルダ。
【請求項4】
前記側壁部は、
長手方向の第1側壁部と、前記第1側面に対向する第2側壁部と、短手方向の第3側壁部と、前記第3側壁部に対向する第4側壁部と、を有し、
前記ボビンは、
前記固定部よりも外側の領域で、前記第1側壁部の両側に配置された第1ボビンおよび第2ボビンと、
前記固定部よりも外側の領域で、前記第2側壁部の両側に配置された第3ボビンおよび第4ボビンと、を備え、
前記各ボビンに前記連通孔が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の対物レンズホルダ。
【請求項5】
前記第1収納領域は前記第3側壁部の内側側面に面する隅部に配置され、前記第2収納領域は前記第4側壁部の内側側面に面する隅部に配置されることを特徴とする請求項4に記載の対物レンズホルダ。
【請求項6】
前記各ボビンは、筒状部と、前記筒状部の外側の端部で全周の外形を拡大させた鍔部とを有し、前記筒状部の内部が前記連通孔であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の対物レンズホルダ。
【請求項7】
前記ボビンの前記筒状部には、筒状部を厚み方向に貫通した貫通孔が設けられることを特徴とする請求項6に記載の対物レンズホルダ。
【請求項8】
対物レンズを保持する対物レンズホルダがアクチュエータフレームに移動可能に支持される対物レンズ駆動装置であって、
前記対物レンズホルダは、前記対物レンズが固定される固定部が設けられた主面部と、前記対物レンズホルダ自身を磁気作用によって駆動させるためのトラッキングコイルを巻回するボビンが設けられた側壁部と、前記側壁部の内側でフォーカスコイルが収納される収納領域とを備え、
前記ボビンの内部で、前記側壁部を貫通して前記収納領域と外部とを連通させる連通孔が設けられることを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項9】
請求項8に記載の対物レンズ駆動装置をハウジングに搭載したことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項10】
請求項1から請求項6の何れかに記載の対物レンズホルダを用意する工程と、
前記各ボビンにトラッキングコイルを巻回する工程と、
前記収納領域にフォーカスコイルを収納する工程と、
前記各ボビンの前記連通孔を経由して、前記収納領域に収納された前記フォーカスコイルに接着剤を供給する工程と、
を備えることを特徴とする対物レンズ駆動装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−25833(P2013−25833A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157599(P2011−157599)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】