説明

対物レンズ駆動装置とその製造方法

【課題】
対物レンズの周波数特性を良好にし、高密度,高速度化に対応できる対物レンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】
対物レンズと、前記対物レンズを保持する筒状のレンズホルダと、該レンズホルダの前記対物レンズ側とは反対側の開口部に設けられる補強部材とを有する対物レンズ駆動装置とする。補強部材は、前記レンズホルダの筒状の壁において、開口部端部から光軸方向の寸法の1/3以上1/2以下の距離まで設けられている。この範囲により、レンズホルダの高次共振周波数を高域にすることができ、かつ高次共振周波数における振動振幅を極小化できる対物レンズ駆動装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録面に光を集光する対物レンズを駆動する対物レンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対物レンズで集光されるスポットは常にフォーカシング方向及びトラッキング方向に位置決めする必要があり、光ディスクの回転数向上に合わせてフォーカシングとトラッキングの制御帯域を高める必要がある。これに加えて安定した制御を実現するためには、対物レンズ駆動装置の高次共振周波数を制御帯域の5倍程度以上にする必要がある。対物レンズ駆動装置の高次共振はレンズホルダの弾性共振であるため、高次共振周波数を向上させるためにはレンズホルダの高剛性化を図る必要がある。
【0003】
このような光ディスク装置において、光ディスク上の記録面に光を集光する対物レンズをフォーカシング方向(光ディスク面に接近/離遠する方向)、トラッキング方向(光ディスクの半径方向)に駆動する装置が対物レンズ駆動装置である。
【0004】
対物レンズ駆動装置の高剛性化を実現する手法としては、特許文献1では対物レンズを保持するレンズホルダの材質の弾性定数を変更し、レンズホルダの高次共振周波数向上による剛性向上を図っている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−209875号公報(第52図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術のレンズホルダの高剛性化はレンズホルダ材質により図られているが、レンズホルダは通常射出成型により成型されるため、樹脂が一般的である。樹脂の弾性定数は材質を変更しても1.5倍程度までにしか大きくならず、高次共振周波数はレンズホルダ材質の弾性定数の平方根、すなわち約1.2倍までにしかあがらない。
【0007】
本発明は上記問題点を回避しつつ、レンズホルダの高剛性化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、対物レンズと、前記対物レンズを保持する筒状のレンズホルダと、該レンズホルダの前記対物レンズ側とは反対側の開口部に設けられる補強部材とを有する対物レンズ駆動装置とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レンズホルダの高剛性化を達成することができるので、光ディスクへの対物レンズ追従性を向上した対物レンズ駆動装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施例1)
本発明の実施例を図1,図2,図3,図4,図5,図6,図7及び式1を用いて説明する。
【0011】
【数1】

【0012】
図1はレーザ入光側からレンズホルダを見た斜視図、図2は磁気回路を除いた対物レンズ駆動装置におけるレンズホルダの対物レンズ中心を通るトラッキング方向の断面図であり本実施例の構成図、図3は対物レンズ駆動装置の磁気回路を省いた構成を示す斜視図、図4は対物レンズ駆動装置全体を説明する図である。図4には各移動方向を示しており、タンジェンシャル方向は図示しない光ディスクの接線方向、トラッキング方向は光ディスクの半径方向である。フォーカシング方向は対物レンズ1の光軸方向である。また、タンジェンシャルチルト方向はタンジェンシャル方向に傾く回転方向、ラジアルチルト方向はトラッキング方向に傾く回転方向である。図5は図1において例えばタンジェンシャルチルトが発生した場合の模式図、図6は本実施例の高次共振である1次および2次振動モードを説明する図、図7は本実施例と従来例の高次共振の比較、および本実施例における凸部の高さ検討結果である。
【0013】
図3に示すように、レンズホルダ1には、第一の対物レンズ2および第二の対物レンズ3,フォーカシングコイル102a,102b,トラッキングコイル101が装着されている。これらレンズホルダ1を支持するのは弾性支持部材5a〜5fである。これら弾性支持部材5a〜5fはそれぞれ固定部材4にて固定される。弾性支持部材5a〜5fは各コイル101,102a,102bへの電力供給も兼ねるため、導電部材により構成され、対物レンズ保持可動部1に装着された各コイル101,102a,102bとは半田等で電気的にも固定されている。図2に示すように、レンズホルダ1には第一の対物レンズ2のレーザ入光側近傍に開口制限部12がある。また開口制限部12に対して第一の対物レンズ2の取り付け面20と逆側のレンズホルダ1端面に開口部11および凸部15を具備した補強部材13が取り付けられる。開口制限12を設けたレンズホルダ1を射出成型で作ると、開口部端部21が厚くできない。筒状の壁14a,14bを全て厚くすると、振動は図6から明らかな通り、あまり効果がないので、開口部端部21だけを厚くすることが必要である。そのため、開口部端部21を厚くしたレンズホルダ1を製造するには、補強部材13を別途作成しておく必要がある。補強部材13に設けられた凸部15はレンズホルダ1の筒状の壁14a,14bと密着する構造となっており、レンズホルダ1と組み合わされたときには接着剤等を介し一体構造となる。さらに補強部材13に設けられた凸部15は、位置決め用凸部16と共にレンズホルダ1へ組み合わせたときの補強部材
13の位置決めも行う。このときもレンズホルダ1の筒状の壁14a,14bに補強部材13が組み合わされる。開口部11の大きさは、図5および式1に示すようにレンズホルダ1が傾いた場合を想定して、対物レンズ2または3の直下にある開口制限部12よりも大きくし、対物レンズ回転角度θのsin成分および開口制限部12と開口部11の光軸方向距離Laとの積以上の差をもった大きさとなっている。
【0014】
図4に示すように永久磁石7a〜7dは各コイル101,102a,102bと距離をおいてヨーク6に位置決めされている。レンズホルダ1は永久磁石7a〜7dとレンズホルダ1に配置された各コイル101,102a,102bで構成される磁気回路が発生する電磁力により変位する。
【0015】
次に、補強部材13の効果、および補強部材13に設けられている凸部15の高さLtの最適値を決めるために、凸部15の高さのパラメータ検討を行った。本実施例における高次共振の説明を図6を用いて説明する。図6はレンズホルダ1の断面図を示し、高次共振の振動モードも合わせて示している。本実施例での高次共振は301a,301bに示す振動モードすなわちレンズホルダ1の壁が片持ち梁のように変形するモードが最低次かつ最大振幅となるモードである。これを1次振動モードと呼ぶことにする。また、前記1次振動モードの高次振動モードである2次振動モードは、302a,302bに示すように振動する部位の1/4〜1/5の部位を節として大きく変位する状態である。この2次振動モードも大きな振幅があるため、1次および2次振動モード周波数あるいはその振動振幅を評価することで、レンズホルダ1の高剛性化の効果を評価できる。従って、評価項目は、この1次及び2次振動モード周波数における振動振幅とし、従来例である部材13の無いレンズホルダを基準とした。結果を図7に示す。凸部15の高さLtとレンズホルダ1の光軸方向の高さLbの比が1/4のとき、従来例に比べ1次振動モード周波数が
30kHzから35kHzに、2次振動モード周波数が51kHzから53kHzへ向上した。さらに、凸部15の高さLtを変化していくと、1次及び2次振動モード周波数の変化は見られないが、レンズホルダ1の光軸方向の高さLbの1/3から1/2の高さにおいて振動振幅が極小化している。以上の結果より、平板状の部材13に設けられた凸部15の高さLtはレンズホルダ1の光軸方向の高さLbの1/3から1/2の高さとすればよい。ここでは、凸部15の厚さがレンズホルダ1の筒状の壁の厚さの2.5 倍での結果を示したが、Ltの範囲はレンズホルダ1の光軸方向の高さに比例するものであり、凸部15の厚さは単に振動振幅抑制量に影響するだけである。つまり、LtがLbの1/3から1/2の高さであれば、凸部15の厚さがレンズホルダ1の筒状の壁の厚さの0.1倍であっても振動抑制効果は生じ、厚くなるほど振動抑制効果は高くなる。ただし、厚くするほど、レンズホルダと補強部材のトータルの重さが大きくなるので、その厚さはレンズホルダの駆動可能限度内(例えば3.8倍以下)に設定する必要がある。
【0016】
以上、述べたとおり対物レンズ駆動装置を本実施例のように構成することで、レンズホルダの高次共振周波数を高域にすることができ、かつ高次共振周波数における振動振幅を極小化できる対物レンズ駆動装置を得ることができる。
【0017】
なお、本実施例では開口部を開口制限部と相似形にて記述しているが、開口制限部と相似形にしなくても、本実施例の目的を達成することができる。
【0018】
以上、本発明の実施例では対物レンズが2つの場合にて記述したが、図8に示すように対物レンズが1つの場合でも本発明は有効である。この場合には部材の開口部は1つとなる。更に本発明の実施例では平板状の部材には開口部が1つのみの場合にて記述したが、図9に示すように対物レンズが2つの場合には開口部は2つあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の対物レンズ駆動装置の第1実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の対物レンズ駆動装置の第1実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の対物レンズ駆動装置の構成を説明する図である。
【図4】本発明の対物レンズ駆動装置の構成を説明する全体図である。
【図5】本発明の対物レンズ駆動装置の第1実施例を補足説明する断面図である。
【図6】本発明の対物レンズ駆動装置の高次共振モードを説明する図である。
【図7】本発明の対物レンズ駆動装置の第1実施例の効果を示す実験結果図である。
【図8】本発明の対物レンズ駆動装置において、対物レンズが1つの場合の構成を示す図である。
【図9】本発明の対物レンズ駆動装置において、2つの対物レンズ、かつ開口部が2つある場合の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 レンズホルダ
2,3 対物レンズ
4 固定部、
5a〜5f 弾性支持部材
6 ヨーク
7a〜7d 永久磁石
11 開口部
12 開口制限部
13 補強部材
14a,14b レンズホルダの筒状の壁
15 開口部を具備した部材の凸部
16 開口部を具備した部材の位置決め凸部
20 対物・レンズ2のレンズホルダ1への取り付け面
21 開口部端部
101 トラッキングコイル
102a,102b フォーカシングコイル
200 レーザ入射方向およびレーザ入光部
301a,301b レンズホルダの1次振動モード
302a,302b レンズホルダの2次振動モード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと、前記対物レンズを保持する筒状のレンズホルダと、該レンズホルダの前記対物レンズ側とは反対側の開口部に設けられる補強部材とを有することを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の対物レンズ駆動装置において、
前記補強部材は、前記レンズホルダの筒状の壁において、開口部端部から光軸方向の寸法の1/3以上1/2以下の距離まで設けられたことを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項3】
対物レンズを用意し、
前記対物レンズに入射される光束径を制限する開口制限を設けた筒状のレンズホルダを射出成型により形成し、
対物レンズを前記レンズホルダの前記開口制限が設けられている側の開口部に固定し、
前記補強部材を前記レンズホルダの前記対物レンズ側とは反対側の開口部側から嵌合し固定することを特徴とする対物レンズ駆動装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の対物レンズ駆動装置の製造方法において、
前記補強部材を、前記レンズホルダの筒状の壁の開口部端部から光軸方向の寸法の1/3以上1/2以下の距離までの大きさに成型することを特徴とする対物レンズ駆動装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−108385(P2008−108385A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291916(P2006−291916)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】