説明

対物レンズ駆動装置

【課題】 レンズホルダが高周波駆動された場合であっても、光記憶媒体の記録、再生を高精度で行うことが可能な構成を備えた対物レンズ駆動装置を提供すること。
【解決手段】 対物レンズ駆動装置1を構成するレンズホルダ3は、貫通孔3aが形成された胴部3bと、胴部3bからフォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向に突出するように形成され、対物レンズ2を保持するレンズ保持部3cとを備えている。この対物レンズ駆動装置1では、レンズ保持部3cのトラッキング方向両側に、レンズホルダ3をフォーカシング方向およびトラッキング方向に駆動するための第2駆動マグネット14が配設され、トラッキング駆動コイル16と第2駆動マグネット14とが、フォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向で対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記憶媒体の記録、再生を行う光ヘッド装置に搭載される対物レンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の光記憶媒体の記録、再生等を行う光ヘッド装置には、対物レンズと、対物レンズを保持するレンズホルダと、レンズホルダをトラッキング方向やフォーカシング方向へ駆動する駆動機構とを備える対物レンズ駆動装置が搭載されている。この種の対物レンズ駆動装置として、レンズホルダの中心部から外れた位置(オフセットした位置)に対物レンズが配置されたいわゆるレンズオフセットタイプの対物レンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された対物レンズ駆動装置では、フォーカシング方向に貫通する貫通孔が形成された角筒状の胴部と、対物レンズを保持するレンズ保持部とからレンズホルダが構成されている。レンズ保持部は、角筒状の胴部の一側面からフォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向に突出するように形成されている。また、フォーカシング方向から見たときの胴部の厚みは比較的薄く形成されている。
【0004】
また、この対物レンズ駆動装置では、レンズホルダをフォーカシング方向へ駆動するためのフォーカシング駆動コイルと、レンズホルダをトラッキング方向へ駆動するためのトラッキング駆動コイルと、レンズホルダをトラッキング方向およびフォーカシング方向へ駆動するための一対の駆動マグネットが固定された一対のヨークとが、胴部に形成された貫通孔に配置されている。より具体的には、レンズ保持部が形成された胴部の一側面と対向する側面の内周側に矩形状に巻回されたフォーカシング駆動コイルの1辺を当接させた状態で、フォーカシング駆動コイルが配置されている。また、胴部の内周側に当接するフォーカシング駆動コイルの1辺と対向する辺の外側には、2つのトラッキング駆動コイルが固定されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−168228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、光記憶媒体として、従来のDVD等よりも波長の短いレーザ光で記録、再生が行われるブルーレイディスク等の次世代DVDが市場に登場しつつある。この次世代DVD等に代表される次世代の光記憶媒体では、高密度記録が可能であり、記録ピッドの間隔が従来の光記憶媒体のものより狭くなっている。そのため、光ヘッド装置は、次世代の光記憶媒体に対して高精度でレーザ光を照射する必要がある。また、近年、光記憶媒体の記録、再生の高速化の要請から、光記憶媒体の回転速度は高速化している。
【0007】
このような状況下で、記録ピッドの間隔が狭く、かつ、高速回転する光記憶媒体に偏心や面振れが生じた場合であっても、高精度で光記憶媒体の記録、再生を行うため、その偏心や面振れに対して対物レンズが高感度で追従できる対物レンズ駆動装置が要求されている。すなわち、高速回転で記録や再生を行う際の次世代の光記憶媒体に偏心や面振れが生じた場合であっても、その偏心や面振れに対して追従する高周波駆動が可能なレンズホルダを備えた対物レンズ駆動が市場で要求されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の対物レンズ駆動装置では、胴部に形成された貫通孔に、フォーカシング駆動コイル、トラッキング駆動コイルおよび一対の駆動マグネットが固定された一対のヨークが配置されており、貫通孔は比較的大きく形成されている。また、この対物レンズ駆動装置では、レンズホルダの駆動中心となるフォーカシング駆動コイルやトラッキング駆動コイルは、胴部に形成された貫通孔において、対物レンズを保持するレンズ保持部から離れた位置に配置されている。すなわち、この対物レンズ駆動装置では、フォーカシング方向から見たときの胴部の厚みが比較的薄く形成され、胴部の剛性が低いにもかかわらず、レンズホルダの駆動中心と対物レンズとの距離が長くなっている。そのため、この対物レンズ駆動装置では、次世代の光記憶媒体に生じた偏心や面振れに対して追従するようにレンズホルダが高周波駆動された際に、レンズホルダの駆動中心と対物レンズとの間でレンズホルダにねじれや歪み等の変形が生じやすくなる。また、レンズホルダに変形が生じると、レンズ保持部での変形量が大きくなる。したがって、対物レンズを光記憶媒体の偏心や面振れに対して感度良く追従させることが困難となる。その結果、特許文献1に記載された対物レンズ駆動装置では、レンズホルダが高周波駆動する場合、光記憶媒体の記録、再生を高精度で行うことは困難となる。
【0009】
そこで、本発明の課題は、レンズホルダが高周波駆動された場合であっても、光記憶媒体の記録、再生を高精度で行うことが可能な構成を備えた対物レンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、対物レンズと、対物レンズを保持するレンズホルダと、レンズホルダを少なくともトラッキング方向およびフォーカシング方向へ駆動する駆動機構とを備える対物レンズ駆動装置において、駆動機構は、レンズホルダを少なくともトラッキング方向およびフォーカシング方向へ駆動するための駆動マグネットと、レンズホルダをフォーカシング方向へ駆動するためのフォーカシング駆動コイルと、レンズホルダをトラッキング方向へ駆動するためのトラッキング駆動コイルとを備え、レンズホルダは、フォーカシング方向に貫通する貫通孔とフォーカシング駆動コイルが巻回されるコイル巻回部とが形成された胴部と、胴部からフォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向に突出するように形成され、対物レンズを保持するレンズ保持部とを備え、レンズ保持部のトラッキング方向両側に駆動マグネットが配設され、トラッキング駆動コイルと駆動マグネットとが、フォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向で対向することを特徴とする。
【0011】
本発明の対物レンズ駆動装置では、レンズ保持部のトラッキング方向両側に駆動マグネットが配設されている。そのため、本発明の対物レンズ駆動装置では、レンズホルダに貫通孔を形成する際に、レンズ保持部の両側に配設された駆動マグネットの大きさを考慮する必要がない。したがって、レンズホルダに形成される貫通孔を小さくして、レンズホルダ自体を小さくすることができる。その結果、レンズホルダの駆動中心と対物レンズとの距離を短くすることが可能となる。そのため、光記憶媒体に生じた偏心や面振れに対して追従するようにレンズホルダが高周波駆動された場合であっても、レンズホルダにねじれや歪み等の変形が生じにくくなる。また、レンズホルダの駆動中心と対物レンズとの間でレンズホルダにねじれや歪み等の変形が生じた場合であっても、レンズ保持部での変形量が小さくなり、光記憶媒体の偏心や面振れに対して対物レンズを感度良く追従させることができる。
【0012】
また、本発明の対物レンズ駆動装置では、トラッキング駆動コイルと駆動マグネットとが、フォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向で対向している。ここで、トラッキング駆動コイルと駆動マグネットとがトラッキング方向、あるいは、フォーカシング方向で対向する場合、レンズ保持部のトラッキング方向両側に配設された駆動マグネットと対向するトラッキング駆動コイルは、レンズ保持部のトラッキング方向両側に配置される。そのため、いわゆるレンズオフセットタイプの対物レンズ駆動装置では、レンズホルダのフォーカシング方向の駆動中心から離れた位置にトラッキング駆動コイルが配置されることになり、このトラッキング駆動コイルの重さの影響で、レンズホルダが高周波駆動されたときには、レンズホルダにねじれや歪み等の変形が生じやすくなる。これに対し本発明では、トラッキング駆動コイルと駆動マグネットとが、フォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向で対向しているため、レンズ保持部のトラッキング方向両側に配設された駆動マグネットと対向するトラッキング駆動コイルをレンズホルダの胴部側に配設することができる。そのため、本発明の対物レンズ駆動装置では、レンズホルダが高周波駆動された場合であっても、トラッキング駆動コイルの重さの影響で生じるレンズホルダの変形を抑制することができる。その結果、レンズ保持部での変形量を抑制することができ、光記憶媒体の偏心や面振れに対して対物レンズを感度良く追従させることができる。
【0013】
本発明において、貫通孔は、コイル巻回部を貫通するように形成され、フォーカシング駆動コイルは、コイル巻回部の外周に沿って巻回されていることが好ましい。このように構成すると、フォーカシング方向から見たときのコイル巻回部の厚みが比較的薄く形成され、胴部の剛性が低下する場合であっても、巻回された後に自己融着処理されたフォーカシング駆動コイルの剛性で、レンズホルダのねじれや歪み等の変形を抑制することができる。すなわち、コイル巻回部の外周に沿って巻回されたフォーカシング駆動コイルの剛性によって、レンズホルダの剛性を確保することができる。そのため、レンズホルダが高周波駆動された場合であっても、レンズホルダの変形をさらに抑制することができ、光記憶媒体の偏心や面振れに対して対物レンズをさらに感度良く追従させることができる。
【0014】
本発明において、レンズホルダには2つのコイル巻回部が形成され、一方のコイル巻回部に巻回されたフォーカシング駆動コイルに生じる駆動力と、他方のコイル巻回部に巻回されたフォーカシング駆動コイルに生じる駆動力との差を利用して、レンズホルダをチルト方向に駆動することが好ましい。このように構成すると、別途チルト駆動用の駆動コイルや駆動マグネットを設けることなく、レンズホルダのチルト駆動が可能となる。また、フォーカシング駆動コイルがコイル巻回部の外周に沿って巻回される場合には、フォーカシング駆動コイルの剛性によって、レンズホルダの剛性を確保することもできる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明にかかる対物レンズ駆動装置では、レンズホルダが高周波駆動された場合であっても、光記憶媒体の記録、再生を高精度で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
[実施の形態1]
(対物レンズ駆動装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる対物レンズ駆動装置1を示す平面図である。図2は、図1に示す対物レンズ駆動装置1を示す側面図である。図3は、図1の断面X−Xを示す断面図である。図4は、図1に示すレンズホルダ3を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【0018】
本形態の対物レンズ駆動装置1は、CD、DVDあるいは次世代DVD等の光記憶媒体(図示省略)の記録、再生を行うため、所定の光学系を備える光ヘッド装置(図示省略)に用いられるものである。特に、本形態の対物レンズ駆動装置1は、従来よりも波長の短いレーザ光で記録、再生が行われる記録ピッド間隔が狭い光記憶媒体が、従来よりも高速回転された場合であっても、光記憶媒体の正確な記録、再生が可能な光ヘッド装置に搭載される高周波駆動が可能な対物レンズ駆動装置である。この対物レンズ駆動装置1は、図1等に示すように、対物レンズ2と、対物レンズ2を保持するレンズホルダ3と、レンズホルダ3をフォーカシング方向(矢印Foで示す方向)およびトラッキング方向(矢印Trで示す方向)へ移動可能に4本のワイヤ4で支持する固定側部材5と、レンズホルダ3をフォーカシング方向およびトラッキング方向へ駆動する駆動機構6とを備えたいわゆるワイヤサスペンション型の対物レンズ駆動装置である。
【0019】
なお、光ヘッド装置で記録、再生が行われる光記憶媒体の半径方向がトラッキング方向とほぼ一致する。また、フォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向(図1の左右方向、矢印Taで示す方向)は、光記憶媒体の接線方向(タンジェンシャル方向)とほぼ一致する。そこで、以下では、フォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向をタンジェンシャル方向と表記する。
【0020】
固定側部材5は、レンズホルダ3を先端側(図1の右端側)で支持する4本のワイヤ4と、ワイヤ4をその基端側(図1の左端側)で支持するブロック状のホルダ支持部材7と、本体フレームを構成するとともに駆動機構6の一部を構成するヨーク8とを備えている。ホルダ支持部材7は、図2に示すように、図示左端側でヨーク8の上面に接着などの固定手段によって固定されている。
【0021】
4本のワイヤ4は、図1および図2に示すように、フォーカシング方向に重なるように、かつ、レンズホルダ3のトラッキング方向両側に2本ずつ配設されている。このワイヤ4は、後述のフォーカシング駆動コイル15およびトラッキング駆動コイル16への給電ワイヤとしての機能も備えている。そのため、ワイヤ4の先端側は、レンズホルダ3のトラッキング方向両側に固定された中継基板10に、半田付けされて固定されている。より具体的には、2枚の中継基板10、10にそれぞれ2本のワイヤ4の先端側が固定されている。そして、中継基板10、10には、フォーカシング駆動コイル15およびトラッキング駆動コイル16が接続されている。一方、ワイヤ4の基端側は、ホルダ支持部材7の背面(図1の左端面)に取り付けられたプリント基板11に半田付けされて固定されている。
【0022】
ヨーク8は、磁性を有する金属部材で形成されている。本形態のヨーク8は、ステンレス鋼板等の薄鋼板で略矩形状に形成されている。このヨーク8は、底面部8aと、レンズホルダ3に形成された後述の貫通孔3aに配置されるとともに、後述の第1駆動マグネット13が固定される第1マグネット保持部8bと、レンズホルダ3を構成する後述のレンズ保持部3cのトラッキング方向両側に配置されるとともに、後述の2つの第2駆動マグネット14、14がそれぞれ固定される2つの第2マグネット保持部8c、8cとから構成されている。
【0023】
第1マグネット保持部8bおよび第2マグネット保持部8c、8cは、底面部8aから曲げ起こされて形成されている。より具体的には、第1マグネット保持部8bは、図1および図2の左側から右側に向かって底面部8aの略中心部が曲げ起こされて形成されている。また、第2マグネット保持部8c、8cは、底面部8aの右端側で、かつ、トラッキング方向両端側が図1および図2の右側から左側に向かって曲げ起こされて形成されている。
【0024】
底面部8aには、図3に示すように、図示を省略する光ヘッド装置のレーザ光源から出射され、また、図示を省略する光記憶媒体で反射されたレーザ光が通過する通過孔8dが底面部8aを貫通するように形成されている。より具体的には、通過孔8dは、フォーカシング方向で対物レンズ2の位置に対応するように、底面部8aの右端側で、かつ、トラッキング方向の略中心位置に形成されている。
【0025】
レンズホルダ3は、樹脂部材で形成されるとともに、図4等に示すように、フォーカシング方向に貫通する貫通孔3aが形成された胴部3bと、対物レンズ2を上端面で保持するレンズ保持部3cとから構成されている。
【0026】
胴部3bは、図4等に示すように、図4(B)における下側部分に形成された略角筒状のコイル巻回部3fと、図4(B)における上側部分に形成された扁平な略角筒状のコイル当接部3gとが一体となって構成されている。コイル巻回部3fはコイル当接部3gの略中心位置に形成されている。また、図4等に示すように、フォーカシング方向から見たときのコイル巻回部3fの外形は、コイル当接部3gの外形よりも小さく形成されている。コイル巻回部3fには、フォーカシング駆動コイル15がコイル巻回部3fの外周に沿って巻回され、コイル当接部3gの下側には、フォーカシング駆動コイル15の一端(より具体的には、図3の上端)が当接している。
【0027】
貫通孔3aは、図4等に示すように、胴部3bの略中心部に略矩形状に形成されている。すなわち、貫通孔3aは、コイル巻回部3fを貫通するように形成されている。より具体的には、貫通孔3aは、レンズホルダ3の小型化、軽量化を図るため、コイル巻回部3fの、フォーカシング方向から見たときの厚みが比較的薄くなるように形成されている。この貫通孔3aには、図1等に示すように、第1マグネット保持部8bおよび後述の第1駆動マグネット13が配置されている。また、コイル当接部3gのトラッキング方向の幅は、ヨーク8のトラッキング方向の幅よりも広くなっている。
【0028】
レンズ保持部3cは、角筒状の胴部3bの一側面からタンジェンシャル方向(フォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向)に突出するように形成されている。より具体的には、レンズ保持部3cは、図1等に示すように、コイル当接部3gの右側面のトラッキング方向中心部から右側に突出するように(コイル当接部3gに連なるように)形成されている。また、レンズホルダ3は、タンジェンシャル方向で、レンズ保持部3cの右端とヨーク8の第2マグネット保持部8c、8cの右側面とがほぼ一致するように、固定側部材5に支持されている。
【0029】
レンズ保持部3cのトラッキング方向の幅は、胴部3bのコイル当接部3gのトラッキング方向の幅よりも狭くなっている。たとえば、レンズ保持部3cのトラッキング方向の幅は、コイル当接部3gのトラッキング方向の幅の約3分の1程度となっている。レンズ保持部3cの両側に位置するコイル当接部3gの右側面は、後述の2つのトラッキング駆動コイル16、16の一部が取り付けられる取付部3d、3dとなっている(図4参照)。
【0030】
また、レンズ保持部3cには、図3に示すように、図示を省略する光ヘッド装置のレーザ光源から出射され、また、図示を省略する光記憶媒体で反射されたレーザ光が通過する通過孔3eがレンズ保持部3cを貫通するように形成されている。より具体的には、通過孔3eは、レンズ保持部3cの上端面で保持された対物レンズ2の下側に形成されている。
【0031】
駆動機構6は、上述したヨーク8の他に、レンズホルダ3をフォーカシング方向およびトラッキング方向へ駆動するための第1駆動マグネット13および2つの第2駆動マグネット14、14と、レンズホルダ3をフォーカシング方向へ駆動するためのフォーカシング駆動コイル15と、レンズホルダ3をトラッキング方向へ駆動するための2つのトラッキング駆動コイル16、16とを備えている。
【0032】
第1駆動マグネット13は、扁平な直方体形状に形成され、図1等における第1マグネット保持部8bの右側面に固定されている。第1駆動マグネット13のトラッキング方向の幅は、第1マグネット保持部8bのトラッキング方向の幅とほぼ同じになっている。
【0033】
第2駆動マグネット14、14は、直方体形状に形成され、図1等における2つの第2マグネット保持部8c、8cのそれぞれの左側面に固定されている。すなわち、第2駆動マグネット14、14は、レンズ保持部3cのトラッキング方向両側に配設されている。また、第2駆動マグネット14、14のトラッキング方向の幅は、第2マグネット保持部8c、8cのトラッキング方向の幅とほぼ同じになっている。すなわち、図1に示すように、第2駆動マグネット14、14は、トラッキング方向で、レンズホルダ3の外側にはみ出さないように配置されている。換言すると、第2駆動マグネット14、14は、トラッキング方向では、胴部3bのトラッキング方向に直交する両側面(図1における上側面と下側面)の間に配置されている。そのため、トラッキング方向で対物レンズ駆動装置1の小型化が図れるようになっている。
【0034】
第1駆動マグネット13および第2駆動マグネット14、14はともに、タンジェンシャル方向に2極で着磁されている。より具体的には、たとえば、第1駆動マグネット13および第2駆動マグネット14、14はともに、図1等において、その右端面がS極、左端面がN極となるように着磁されている。
【0035】
フォーカシング駆動コイル15は、図1等に示すように、コイル巻回部3fの外周およびコイル当接部3gの下面に沿って略矩形状に巻回されている。より具体的には、フォーカシング駆動コイル15の内周側の全周がコイル巻回部3fの外周に接触した状態で、かつ、フォーカシング駆動コイル15の上面がコイル当接部3gの下面に接触した状態で、フォーカシング駆動コイル15が接着等によってコイル巻回部3fの外周側に固定されている。このフォーカシング駆動コイル15を構成する導線の外周側には融着被膜が被覆されており、フォーカシング駆動コイル15は、空芯で巻回された後に自己融着処理され、その状態で、コイル巻回部3fに嵌め込まれて固定されている。
【0036】
トラッキング駆動コイル16、16は、扁平な矩形状に巻回され、図1や図3等に示すように、レンズホルダ3の取付部3d、3dおよびフォーカシング駆動コイル15に取り付けられている。より具体的には、トラッキング駆動コイル16、16の扁平方向と直交する面(巻線方向に直交する面)の1つが、レンズホルダ3の取付部3d、3dと図3のおけるフォーカシング駆動コイル15の右側面とに接着等によって固定されている。フォーカシング駆動コイル15と同様に、トラッキング駆動コイル16、16を構成する導線の外周側には融着被膜が被覆されている。そして、トラキング駆動コイル16、16は、空芯で巻回された後に自己融着処理され、その状態で、レンズホルダ3の取付部3d、3dおよびフォーカシング駆動コイル15に取り付けられている。図1等に示すように、トラッキング駆動コイル16、16は、第2駆動マグネット14、14とタンジェンシャル方向で対向している。
【0037】
本形態では、図1等に示すように、レンズホルダ3のコイル巻回部3fの外周側にフォーカシング駆動コイル15が配設されている。また、トラッキング駆動コイル16、16は、取付部3d、3dおよび図3におけるフォーカシング駆動コイル15の右側面に取り付けられている。さらに、第1駆動マグネット13と第2駆動マグネット14、14とは、胴部3bの右側面側を挟み込むように配設されている。そのため、フォーカシング駆動コイル15の一辺およびトラッキング駆動コイル16、16が配設されるとともに、レンズ保持部3cが突出する胴部3bの右側面部分を、第1駆動マグネット13と第2駆動マグネット14、14とヨーク8とによって形成された磁路が通過するようになっている。すなわち、胴部3bの右側面部分が、駆動機構6によって駆動されるレンズホルダ3の駆動中心とほぼ一致するようになっている。
【0038】
以上のように構成された対物レンズ駆動装置1では、フォーカシング駆動コイル15に電流が供給されると、フォーカシング方向にレンズホルダ3が駆動され、トラッキング駆動コイル16、16に電流が供給されると、トラッキング方向にレンズホルダ3が駆動されるようになっている。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の対物レンズ駆動装置1では、レンズホルダ3をフォーカシング方向およびトラッキング方向へ駆動するための第1駆動マグネット13および2つの第2駆動マグネット14、14のうち、第1駆動マグネット13はレンズホルダ3の貫通孔3aに配設されているが、第2駆動マグネット14、14はレンズ保持部3cのトラッキング方向両側に配設されている。そのため、対物レンズ駆動装置1では、第2駆動マグネット14、14の大きさを考慮することなく、レンズホルダ3に貫通孔3aを形成することができる。したがって、貫通孔3aを小さく形成して、レンズホルダ3自体を小さくすることができる。その結果、レンズホルダ3の駆動中心と対物レンズ2との距離を短くすることができ、光記憶媒体に生じた偏心や面振れに対して追従するようにレンズホルダ3が高周波駆動された場合であっても、レンズホルダ3にねじれや歪み等の変形が生じにくくなる。また、レンズホルダ3の駆動中心と対物レンズ2との間でレンズホルダ3にねじれや歪み等の変形が生じた場合であっても、レンズホルダ3の駆動中心と対物レンズ2との距離を短くすることができるため、レンズ保持部3cでの変形量が小さくすることができる。その結果、光記憶媒体の偏心や面振れに対して対物レンズ2を感度良く追従させることができる。
【0040】
特に、本形態では、レンズ保持部3cが突出する胴部3bの右側面部分が駆動機構6によって駆動されるレンズホルダ3の駆動中心とほぼ一致している。そのため、レンズホルダ3の駆動中心と対物レンズ2との距離を短くすることができ、レンズホルダ3が高周波駆動された場合であっても、レンズホルダ3にねじれや歪み等の変形が生じにくくなる。また、レンズホルダ3の駆動中心と対物レンズ2との間でレンズホルダ3にねじれや歪み等の変形が生じた場合であっても、レンズ保持部3cでの変形量が小さくなる。その結果、光記憶媒体の偏心や面振れに対して対物レンズ2を感度良く追従させることができる。
【0041】
また、本形態の対物レンズ駆動装置1では、トラッキング駆動コイル16、16と第2駆動マグネット14、14とが、タンジェンシャル方向で対向している。そのため、第2駆動マグネット14、14と対向するトラッキング駆動コイル16、16をレンズホルダ3の胴部3b側(より具体的には、胴部3bの右側面)に配設することができる。したがって、トラッキング駆動コイル16、16がレンズ保持部3cに配設される場合と比較して、レンズホルダ3が高周波駆動された場合であっても、トラッキング駆動コイル16、16の重さの影響で生じるレンズホルダ3の変形を抑制することができる。その結果、レンズ保持部3cでの変形量を抑制することができ、光記憶媒体の偏心や面振れに対して対物レンズ2を感度良く追従させることができる。
【0042】
本形態では、フォーカシング駆動コイル15は、コイル巻回部3fの外周に沿って巻回されている。そのため、本形態のように、フォーカシング方向から見たときのコイル巻回部3fの厚みが比較的薄く形成され、胴部3bの剛性が低下する場合であっても、空芯で巻回された後に自己融着処理されたフォーカシング駆動コイル15の剛性で、レンズホルダ3のねじれや歪み等の変形を抑制することができる。そのため、レンズホルダ3が高周波駆動された場合であっても、レンズホルダ3の変形を抑制することができ、光記憶媒体の偏心や面振れに対して対物レンズ2を感度良く追従させることができる。
【0043】
特に、本形態では、フォーカシング駆動コイル15の内周側の全周がコイル巻回部3fの外周に接触した状態で、フォーカシング駆動コイル15が接着等によって固定されている。そのため、レンズホルダ3の剛性をより効果的に高めることができる。
【0044】
(実施の形態1の変形例1)
上述した実施の形態1にかかる対物レンズ駆動装置1では、フォーカシング駆動コイル15は、空芯で巻回された後にコイル巻回部3fに嵌め込まれて固定されていた。しかし、フォーカシング駆動コイル15は、巻線機によって、コイル巻回部3fに直接巻回されても良い。この場合には、巻回作業時の導線の巻崩れを防止するため、図5に示すように、コイル巻回部3fの下端側に外側に向かって広がる鍔部3hを設けることが好ましい。なお、この場合であっても、巻回後のフォーカシング駆動コイル15には熱が加えられ、フォーカシング駆動コイル15は自己融着処理されている。
【0045】
(実施の形態1の変形例2)
上述した実施の形態1にかかる対物レンズ駆動装置1は、レンズホルダ3がワイヤ4によってフォーカシング方向およびトラッキング方向へ移動可能に支持されたワイヤサスペンション型の対物レンズ駆動装置であった。しかし、対物レンズ駆動装置は、図6および図7に示すように、レンズホルダ23が支軸24によってフォーカシング方向およびトラッキング方向へ移動可能に支持されたいわゆる軸摺動型の対物レンズ駆動装置21であっても良い。以下、この対物レンズ駆動装置21について説明する。なお、以下の説明では、対物レンズ駆動装置1と共通する構成については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0046】
対物レンズ駆動装置21も、対物レンズ駆動装置1と同様に、高周波駆動が可能な対物レンズ駆動装置である。この対物レンズ駆動装置21は、図6および図7に示すように、対物レンズ2と、対物レンズ2を保持するレンズホルダ23と、レンズホルダ23をフォーカシング方向およびトラッキング方向へ移動可能に支軸24で支持する固定側部材25と、レンズホルダ23をフォーカシング方向およびトラッキング方向へ駆動する駆動機構26とを備えている。
【0047】
固定側部材25は、支軸24の他に、支軸24が固定されたブロック状の軸固定部材27と、駆動機構26の一部を構成するとともに軸固定部材27に固定されたヨーク28とを備えている。支軸24の下端は、図7等に示すように、図示左端側で軸固定部材27に固定されている。
【0048】
ヨーク28は、ヨーク8と同様に、磁性を有する金属部材で形成され、底面部28aと、底面28aから曲げ起こされて形成され、第1駆動マグネット13が固定される第1マグネット保持部28bと、底面28aから曲げ起こされて形成され、第2駆動マグネット14、14がそれぞれ固定される2つの第2マグネット保持部28c、28cとから構成されている。実施の形態1と同様に、第1マグネット保持部28bは、レンズホルダ23に形成された後述の貫通孔23aに配置され、第2マグネット保持部28c、28cは、レンズホルダ23を構成する後述のレンズ保持部23cのトラッキング方向両側に配置されている。
【0049】
レンズホルダ23は、胴部3bおよびレンズ保持部3cにそれぞれ相当する胴部23bおよびレンズ保持部23cを備えている。胴部23bは、図8に示すように、コイル巻回部3fおよびコイル当接部3gにそれぞれ相当するコイル巻回部23fおよびコイル当接部23gを備えている。この胴部23bには、上述した貫通孔3aに相当する貫通孔23aが形成され、また、レンズ保持部23cの両側に位置する胴部23bの右側面は、上述した取付部3d、3dに相当する取付部23d、23d(図8参照)となっている。
【0050】
レンズホルダ23は、これらの構成に加え、支軸24が挿通される軸受孔23iが形成された軸受部23jを備えている。軸受部23jは、図6等に示すように、胴部23bの左側面のトラッキング方向中心部分から図示左方向へ突出するように配設されている。また、軸受部23jは、フォーカシング方向では、胴部23bの高さと略同じ高さに形成されており、軸受孔23iと支軸24との摺動部分の長さが確保されている。そのため、支軸24と軸受孔23iとによって、レンズホルダ23がフォーカシング方向へ適切に案内することができる。
【0051】
駆動機構26は、ヨーク28と、第1駆動マグネット13と、2つの第2駆動マグネット14、14と、フォーカシング駆動コイル15と、2つのトラッキング駆動コイル16、16とを備えている。対物レンズ駆動装置21でも、対物レンズ駆動装置1と同様に、図6における胴部23bの右側面部分が、駆動機構26によって駆動されるレンズホルダ23の駆動中心とほぼ一致するようになっている。
【0052】
以上のように構成された対物レンズ駆動装置21でも、上述した対物レンズ駆動装置1と同様に効果を得ることができる。
【0053】
(実施の形態1の変形例3)
上述した実施の形態1にかかる対物レンズ駆動装置1では、トラッキング駆動コイル16、16は、レンズ保持部3cの両側に位置する胴部3bの右側面である取付部3d、3dおよびフォーカシング駆動コイル15の右側面にそれぞれ取り付けられていた。しかし、トラッキング駆動コイル16、16の取付位置は、取付部3d、3dおよびフォーカシング駆動コイル15の右側面には限定されない。
【0054】
たとえば、図9(A)に示すように、トラッキング駆動コイル16、16はそれぞれ、胴部3bのトラッキング方向に直交する両側面(図9(A)における上側面と下側面)に取り付けられても良い。より具体的には、図9(A)におけるコイル当接部3gおよびフォーカシング駆動コイル15の上側面と、図9(A)におけるコイル当接部3gおよびフォーカシング駆動コイル15の下側面とに、トラッキング駆動コイル16、16がそれぞれ取り付けられても良い。この場合であっても、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。なお、この場合には、第2駆動マグネット14、14がトラッキング駆動コイル16、16とタンジェンシャル方向で対向するように、第2駆動マグネット14、14のトラッキング方向の幅および第2マグネット保持部8c、8cのトラッキング方向の幅を広くすれば良い。
【0055】
また、図9(B)に示すように、レンズホルダ3の胴部3bの右側面の内周側に、外側(図9(B)では右側)に向かって窪む凹部を2つ形成し、この2つの凹部のそれぞれにトラッキング駆動コイル16、16を取り付けるようにしても良い。この場合にも、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、コイル巻回部3fに巻回されたフォーカシング駆動コイル15、および胴部3bの内周側に配設されたトラッキング駆動コイル16、16によって、レンズホルダ3の強度が補強され、レンズホルダ3に生じるねじれや歪み等の変形を抑制することができる。
【0056】
さらに、図9(C)に示すように、胴部3bのトラッキング方向に直交する両側面(図9(C)における上側面と下側面)の内周側にそれぞれ、外側(図9(C)では上側または下側)に向かって窪む凹部を形成し、この凹部のそれぞれにトラッキング駆動コイル16を取り付けるようにしても良い。この場合にも、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、図9(B)に示す対物レンズ駆動装置と同様に、フォーカシング駆動コイル15、およびトラッキング駆動コイル16、16によって、レンズホルダ3の強度が補強され、レンズホルダ3に生じるねじれや歪み等の変形を抑制することができる。
【0057】
さらにまた、図9(D)に示すように、胴部3bの内周側でかつレンズ保持部3c側の角部の2箇所に、外側(図9(D)では右側および上側、または右側および下側)に向かって窪む凹部を形成し、この凹部のそれぞれにトラッキング駆動コイル16、16を取り付けるようにしても良い。この場合にも、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、図9(B)や図9(c)に示す対物レンズ駆動装置と同様に、フォーカシング駆動コイル15、およびトラッキング駆動コイル16、16によって、レンズホルダ3の強度が補強され、レンズホルダ3に生じるねじれや歪み等の変形を抑制することができる。
【0058】
なお、図6等に示す軸摺動型の対物レンズ駆動装置21において、図9(A)から図9(D)に示すトラッキング駆動コイル16、16の配設位置に、トラッキング駆動コイル16、16を配設しても良い。
【0059】
[実施の形態2]
(対物レンズ駆動装置の構成)
図10は、本発明の実施の形態2にかかる対物レンズ駆動装置51を示す平面図である。図11は、図10に示すレンズホルダ53を示す図であり、(A)は側面図、(B)は(A)のY−Y方向から見た正面図である。
【0060】
本形態の対物レンズ駆動装置51は、図10および図11に示すように、レンズホルダ53に2つのコイル巻回部53f、53fが形成され、コイル巻回部53f、53fのそれぞれに、フォーカシング駆動コイル65、65が巻回されている点で、実施の形態1にかかる対物レンズ駆動装置1と相違する。また、本形態の対物レンズ駆動装置51は、一方のコイル巻回部53fに巻回されたフォーカシング駆動コイル65に生じる駆動力と、他方のコイル巻回部53fに巻回されたフォーカシング駆動コイル65に生じる駆動力との差異を利用して、レンズホルダ53をチルト方向(矢印Tiで示す方向)へ駆動する点で、実施の形態1にかかる対物レンズ駆動装置1と相違する。したがって、以下では、この相違する構成を中心に本形態の対物レンズ駆動装置51を説明し、対物レンズ駆動装置1と共通する構成については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0061】
対物レンズ駆動装置51は、対物レンズ駆動装置1と同様に、高周波駆動が可能な対物レンズ駆動装置である。この対物レンズ駆動装置51は、図10に示すように、対物レンズ2と、対物レンズ2を保持するレンズホルダ53と、レンズホルダ53をフォーカシング方向、トラッキング方向およびチルト方向へ移動可能に6本のワイヤ4で支持する固定側部材55と、レンズホルダ53をフォーカシング方向、トラッキング方向およびチルト方向へ駆動する駆動機構56とを備えたいわゆるワイヤサスペンション型の対物レンズ駆動装置である。
【0062】
固定側部材55は、6本のワイヤ4とホルダ支持部材7とを備えている。また、固定側部材55は、本体フレームを構成するとともに駆動機構56の一部を構成するヨーク58とを備えている。ワイヤ4の先端側は、レンズホルダ53のトラッキング方向両側に固定された中継基板10に、半田付けされて固定されている。また、ワイヤ4の基端側は、ホルダ支持部材7の背面に取り付けられたプリント基板11に半田付けされて固定されている。ホルダ支持部材7は、図示左端側でヨーク58の上面に接着などの固定手段によって固定されている。
【0063】
ヨーク58は、上述したヨーク8と同様に、ステンレス鋼板等の薄鋼板で略矩形状に形成されている。このヨーク58は、底面部58aと、レンズホルダ53に形成された2つの貫通孔53a、53aにそれぞれ配置されるとともに、後述の2つの第1駆動マグネット63、63が固定される2つの第1マグネット保持部58b、58bと、レンズホルダ53のレンズ保持部53cのトラッキング方向両側に配置されるとともに、後述の2つの第2駆動マグネット64、64がそれぞれ固定される2つの第2マグネット保持部58c、58cとから構成されている。
【0064】
第1マグネット保持部58b、58bおよび第2マグネット保持部58c、58cはともに、底面部58aから曲げ起こされて形成されている。より具体的には、第1マグネット保持部58b、58bは、図10の左側から右側に向かって底面部58aのタンジェンシャル方向の略中心部で、かつ、トラッキング方向両端側が曲げ起こされて形成されている。また、第2マグネット保持部58c、58cは、底面部58aの右端側で、かつ、トラッキング方向両端側が図10の右側から左側に向かって曲げ起こされて形成されている。
【0065】
レンズホルダ53は、樹脂部材で形成され、図10に示すように、フォーカシング方向に貫通する2つの貫通孔53a、53aが形成された胴部53bと、対物レンズ2を上端面で保持するレンズ保持部53cとから構成されている。
【0066】
胴部53bは、図11等に示すように、図11における下側部分に形成された略角筒状の2つのコイル巻回部53f、53fと、図11における上側部分に形成された扁平な直方体状のコイル当接部53gとが一体となって構成されている。2つのコイル巻回部53f、53fは、図11(B)等に示すように、コイル当接部53gのトラッキング方向の両端側に形成されている。より具体的には、コイル巻回部53f、53fの外周に沿って巻回されたフォーカシング駆動コイル15、15がコイル当接部53gのトラッキング方向外側にはみ出さないように、2つのコイル巻回部53f、53fがコイル当接部53gのトラッキング方向の両端側に形成されている。また、コイル当接部53gの下側には、フォーカシング駆動コイル15、15の一端が当接している。
【0067】
貫通孔53a、53aは、図11等に示すように、胴部53bのトラッキング方向両端側にそれぞれ略矩形状に形成されている。より具体的には、貫通孔53a、53aは、コイル巻回部53f、53fをフォーカシング方向に貫通するように形成されている。この貫通孔53a、53aは、レンズホルダ3の小型化、軽量化を図るため、コイル巻回部53f、53fの、フォーカシング方向から見たときの厚みが比較的薄くなるように形成されている。また、貫通孔53a、53aには、図10に示すように、第1マグネット保持部58b、58bおよび後述の第1駆動マグネット63、63が配置されている。
【0068】
レンズ保持部53cは、実施の形態1と同様に、胴部53bの右側面のトラッキング方向中心部からタンジェンシャル方向(より具体的には、図10の右方向)に突出するように形成されている。このレンズ保持部53cのトラッキング方向の幅は、コイル当接部53gのトラッキング方向の幅よりも狭くなっている。たとえば、レンズ保持部53cのトラッキング方向の幅は、コイル当接部53gのトラッキング方向の幅の約3分の1程度となっている。レンズ保持部53cの両側に位置するコイル当接部53gの右側面は、2つのトラッキング駆動コイル16、16の一部が取り付けられる取付部53d、53dとなっている。
【0069】
駆動機構56は、上述した駆動機構6と同様に2つのトラッキング駆動コイル16、16を備えるとともに、ヨーク58と、レンズホルダ53をフォーカシング方向、トラッキング方向およびチルト方向へ駆動するための2つの第1駆動マグネット63、63および2つの第2駆動マグネット64、64と、レンズホルダ53をフォーカシング方向へ駆動するための2つのフォーカシング駆動コイル65、65とを備えている。
【0070】
第1駆動マグネット63、63は、直方体形状に形成され、2つの第1マグネット保持部58b、58bのそれぞれの図10における右側面に固定されている。第1駆動マグネット63、63のトラッキング方向の幅は、第1マグネット保持部58b、58bのトラッキング方向の幅とほぼ同じになっている。第2駆動マグネット64、64は、直方体形状に形成され、2つの第2マグネット保持部58c、58cのそれぞれの左側面に固定されている。すなわち、第2駆動マグネット64、64は、レンズ保持部53cのトラッキング方向両側に配設されている。また、第2駆動マグネット64、64のトラッキング方向の幅は、第2マグネット保持部58c、58cのトラッキング方向の幅とほぼ同じになっている。
【0071】
実施の形態1と同様に、第1駆動マグネット63、63および第2駆動マグネット64、64はともに、タンジェンシャル方向に2極で着磁されている。より具体的には、たとえば、第1駆動マグネット63、63および第2駆動マグネット64、64はともに、図10において、その右端面がS極、左端面がN極となるように着磁されている。
【0072】
フォーカシング駆動コイル65、65は、図10等に示すように、コイル巻回部53f、53fの外周およびコイル当接部53gの下面に沿って略矩形状に巻回されている。より具体的には、フォーカシング駆動コイル65、65の内周側の全周がコイル巻回部53f、53fの外周に接触した状態で、かつ、フォーカシング駆動コイル65、65の上面がコイル当接部53gの下面に接触した状態で、フォーカシング駆動コイル65、65が接着等によってコイル巻回部53f、53fの外周側に固定されている。実施の形態1のフォーカシング駆動コイル15と同様に、このフォーカシング駆動コイル65、65を構成する導線の外周側には融着被膜が被覆されており、フォーカシング駆動コイル65、65は、空芯で巻回された後に自己融着処理され、その状態で、コイル巻回部53f、53fに嵌め込まれて固定されている。
【0073】
本形態のフォーカシング駆動コイル65、65は、レンズホルダ53をチルト方向へ駆動するためのチルトコイルとしての機能を備えている。すなわち、本形態では、一方のコイル巻回部53fに巻回されたフォーカシング駆動コイル65に生じる駆動力と、他方のコイル巻回部53fに巻回されたフォーカシング駆動コイル65に生じる駆動力との差異を利用して、レンズホルダ53をチルト方向へ駆動することができるようになっている。たとえば、本形態の対物レンズ駆動装置51では、2つのフォーカシング駆動コイル65、65に等しい大きさの電流が同じ方向に供給されると、2つのフォーカシング駆動コイル65、65に等しい大きさの駆動力が生じて、レンズホルダ53がフォーカシング方向に駆動されるようになっている。また、たとえば、対物レンズ駆動装置51では、2つのフォーカシング駆動コイル65、65のそれぞれに異なる大きさの電流が同じ方向で供給されたり、2つのフォーカシング駆動コイル65、65のそれぞれに異なる方向で電流が供給されると、2つのフォーカシング駆動コイル65、65に異なる大きさの駆動力が生じて、レンズホルダ53がチルト方向へ駆動されるようになっている。
【0074】
トラッキング駆動コイル16、16は、実施の形態1と同様に、レンズホルダ53の取付部53d、53dおよびフォーカシング駆動コイル65、65の図10の右側面に取り付けられ、第2駆動マグネット64、64とタンジェンシャル方向で対向している。なお、トラッキング駆動コイル16、16の取付位置は、取付部53d、53dおよびフォーカシング駆動コイル65、65の図10の右側面には限定されず、図9(A)から図9(D)に示すトラッキング駆動コイル16、16の取付位置に対応する位置に、トラッキング駆動コイル16、16を取り付けても良い。
【0075】
本形態では、図10に示すように、レンズホルダ53のコイル巻回部53f、53fの外周側にフォーカシング駆動コイル15が配設されている。また、トラッキング駆動コイル16、16は、取付部53d、53dおよびフォーカシング駆動コイル65、65の図10の右側面に取り付けられている。さらに、第1駆動マグネット63、63と第2駆動マグネット64、64とは、胴部53bの貫通孔53a、53aの右側部分を挟み込むように配設されている。そのため、レンズホルダ53の貫通孔53a、53aの図示右側部分を第1駆動マグネット63、63と第2駆動マグネット64、64とヨーク58とによって形成された磁路が通過するようになっている。すなわち、胴部53bの貫通孔53a、53aの右側部分が、駆動機構56によって駆動されるレンズホルダ53の駆動中心とほぼ一致するようになっている。
【0076】
以上のように構成された対物レンズ駆動装置51では、フォーカシング駆動コイル65、65に電流が供給されると、フォーカシング方向またはチルト方向にレンズホルダ53が駆動されるようになっている。また、対物レンズ駆動装置51では、トラッキング駆動コイル16、16に電流が供給されると、トラッキング方向にレンズホルダ53が駆動されるようになっている。
【0077】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の対物レンズ駆動装置51では、上述した対物レンズ駆動装置1が有する効果に加え、以下の効果を有する。すなわち、本形態では、一方のコイル巻回部53fに巻回されたフォーカシング駆動コイル65に生じる駆動力と、他方のコイル巻回部53fに巻回されたフォーカシング駆動コイル65に生じる駆動力との差を利用して、レンズホルダ53をチルト方向に駆動することができる。そのため、別途チルト駆動用の駆動コイルや駆動マグネットを設けることなく、レンズホルダ53をチルト方向へ駆動させることができる。また、フォーカシング駆動コイル65、65が厚さの薄いコイル巻回部53f、53fに巻回されるため、フォーカシング駆動コイル65、65の剛性によって、レンズホルダ53の剛性を確保することができる。
【0078】
(実施の形態2の変形例)
上述した実施の形態2にかかる対物レンズ駆動装置51は、レンズホルダ53がワイヤ4によってフォーカシング方向、トラッキング方向およびチルト方向へ移動可能に支持されたワイヤサスペンション型の対物レンズ駆動装置であった。しかし、対物レンズ駆動装置は、図12に示すように、レンズホルダ73が弾性部材からなるヒンジ部74によってフォーカシング方向、トラッキング方向およびチルト方向へ移動可能に支持されたいわゆるヒンジ支持型の対物レンズ駆動装置71であっても良い。
【0079】
図12に示すように、この対物レンズ駆動装置71では、レンズホルダ73の胴部73bは、コイル巻回部53f、53fおよびコイル当接部53gにそれぞれ相当するコイル巻回部73f、73およびコイル当接部73gとが一体となって構成されている。この胴部73bのトラッキング方向の両端側にはそれぞれ、コイル巻回部73f、73をフォーカシング方向に貫通する貫通孔73a、73aが略矩形状に形成されている。また、胴部73bでは、2つの貫通孔73a、73aの間がタンジェンシャル方向(図12では右方向)に窪むように形成され、この窪みの部分に、ホルダ支持部材77が入り込むように配設されている。また、レンズホルダ73とホルダ支持部材77とは、ヒンジ部74を介して接続されている。ヒンジ部74は、たとえば、シリコン系のゴム等の弾性部材で形成されている。なお、レンズホルダ73のレンズ保持部73cは、上述したレンズホルダ53のレンズ保持部53cと同様に構成されている。また、図12では、上述した実施の形態2の構成と同様の構成については、同一の符号を付してある。
【0080】
このように、ヒンジ部74によってレンズホルダ73を支持するヒンジ支持型の対物レンズ駆動装置71であっても、上述した対物レンズ駆動装置51と同様の効果を有する。
【0081】
[他の実施の形態]
上述した各形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。たとえば、上述した各形態では、貫通孔3a、23a、53a、73aの内周側には、第1駆動マグネット13、63および第1マグネット保持部8b、28b、58bが配設されていた。しかし、貫通孔3a、23a、53a、73aの内周側に、第1駆動マグネット13、63を配置せず、第1マグネット保持部8b、28b、58bのみを配置しても良い。すなわち、第1駆動マグネット13、63を取り付けない状態の第1マグネット保持部8b、28b、58bを貫通孔3a、23a、53a、73aの内周側に配置しても良い。
【0082】
上述のように、フォーカシング駆動コイル15、65は、コイル巻回部3f、23f、53f、73fの外周に巻回されている。そのため、図1や図10等に示すように、フォーカシング駆動コイル15、65の図示右側の一辺と、第2駆動マグネット14、64とは、比較的近い距離で配置される。したがって、フォーカシング駆動コイル15、65の内周側に、第1マグネット保持部8b、28b、58bのみを配置した場合であっても、レンズホルダ3、23、53、73を所定の感度で駆動することは可能となる。
【0083】
また、貫通孔3a、23a、53a、73aの内周側に第1駆動マグネット13、63が配置されない場合には、貫通孔3a、23a、53a、73aを小さく形成することができる。そのため、コイル巻回部3f、23f、53f、73fのフォーカシング方向から見たときの厚みを確保した状態で、コイル巻回部3f、23f、53f、73fの外形を小さくすることができ、その結果、レンズホルダ3、23、53、73の大きさを変更しなくても、フォーカシング方向から見たときのフォーカシング駆動コイル15、65の厚みを増加させることが可能となる。すなわち、フォーカシング駆動コイル15、65の巻数を増加させることが可能となる。そのため、レンズホルダ3、23、53、73をさらに感度良く駆動することができる。また、フォーカシング駆動コイル15、65の巻数を増加させることで(厚みを増加させることで)、コイル巻回部3f、23f、53f、73fの強度が補強され、レンズホルダ3、23、53、73に生じるねじれや歪み等の変形をさらに抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる対物レンズ駆動装置を示す平面図である。
【図2】図1に示す対物レンズ駆動装置を示す側面図である。
【図3】図1の断面X−Xを示す断面図である。
【図4】図1に示すレンズホルダを示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例1にかかるレンズホルダを示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例2にかかる対物レンズ駆動装置を示す平面図である。
【図7】図6に示す対物レンズ駆動装置を示す側面図である。
【図8】図6に示すレンズホルダを示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図9】本発明の実施の形態1の変形例3にかかる対物レンズ駆動装置を示す平面図である。
【図10】本発明の実施の形態2にかかる対物レンズ駆動装置を示す平面図である。
【図11】図10に示すレンズホルダを示す図であり、(A)は側面図、(B)は(A)のY−Y方向から見た正面図である。
【図12】本発明の実施の形態2の変形例にかかる対物レンズ駆動装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1、21、51、71 対物レンズ駆動装置
2 対物レンズ
3、23、53、73 レンズホルダ
3a、23a、53a、73a 貫通孔
3b、23b、53b、73b 胴部
3c、23c、53c、73c レンズ保持部
3f、23f、53f、73f コイル巻回部
6、26、56 駆動機構
14、64 第2駆動マグネット(駆動マグネット)
15、65 フォーカシング駆動コイル
16 トラッキング駆動コイル
Fo フォーカシング方向
Tr トラッキング方向
Ti チルト方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと、該対物レンズを保持するレンズホルダと、該レンズホルダを少なくともトラッキング方向およびフォーカシング方向へ駆動する駆動機構とを備える対物レンズ駆動装置において、
上記駆動機構は、上記レンズホルダを少なくともトラッキング方向およびフォーカシング方向へ駆動するための駆動マグネットと、上記レンズホルダをフォーカシング方向へ駆動するためのフォーカシング駆動コイルと、上記レンズホルダをトラッキング方向へ駆動するためのトラッキング駆動コイルとを備え、
上記レンズホルダは、フォーカシング方向に貫通する貫通孔と上記フォーカシング駆動コイルが巻回されるコイル巻回部とが形成された胴部と、該胴部からフォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向に突出するように形成され、上記対物レンズを保持するレンズ保持部とを備え、
該レンズ保持部のトラッキング方向両側に上記駆動マグネットが配設され、
上記トラッキング駆動コイルと上記駆動マグネットとが、フォーカシング方向とトラッキング方向とに直交する方向で対向することを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記コイル巻回部を貫通するように形成され、前記フォーカシング駆動コイルは、前記コイル巻回部の外周に沿って巻回されていることを特徴とする請求項1記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項3】
前記レンズホルダには2つの前記コイル巻回部が形成され、一方の前記コイル巻回部に巻回された前記フォーカシング駆動コイルに生じる駆動力と、他方の前記コイル巻回部に巻回された前記フォーカシング駆動コイルに生じる駆動力との差を利用して、前記レンズホルダをチルト方向に駆動することを特徴とする請求項1または2記載の対物レンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−73132(P2007−73132A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258873(P2005−258873)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】