説明

対角線の張力調節装置を用いた貨物の引き揚げ工法

本発明は、二つのクレーンフックを用いて貨物を引き揚げる時、対角線の張力調節装置を使用して各々のクレーンフックに乗せられる引き揚げ荷重を調整できる引き揚げ装置に関するもので、その目的は、各々のクレーンフックに乗せられる引き揚げ荷重の容量を最大限使用できるようにし、製作過程における貨物重量と重心の変化に即時に対応できる貨物引き揚げ工法を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明は、クレーンの容量を変化させることなく、設計当時の貨物の重心に近い方の貨物と重心から遠い方のクレーンフックに対角線に張力が調節できる装置を追加し、両方フックの引き揚げ荷重を所望通りに調節してクレーンフック自体の最大引き揚げ荷重を最大限使用できることをその技術的要旨とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つのクレーンフックを用いて貨物を引き揚げる時、対角線の張力調節装置を使用して各々のクレーンフックに載せられる引き揚げ荷重を調整することにより、クレーンフックの最大容量を使用可能にし、製作過程における貨物重量と重心の変化に即時に対応できる貨物引き揚げ工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陸上又は海上建設現場では、貨物を引き揚げるために多くの陸上クレーンと海上クレーンが使用されている。クレーンを用いて貨物を引き揚げる際、各々のクレーンに載せられる引き揚げ荷重は貨物の重量と重心の位置に応じて定められる。一般的に、設計段階において貨物の重量と重心を用いて各々のクレーンフックの容量を決定するが、この際、二つのクレーンを使用する場合、各々の引き揚げ荷重に応じて他の容量のクレーンフックを設計段階にて予め定めなければならず、多数のフックを有する一つのクレーンを使用する場合には、各々のフックの容量が一般的に同一であるので、最大の引き揚げ荷重が載せられるフックを基にクレーンを選択する。設計段階における貨物重量と重心は実際現場における製作工程や設計変更によって変わる可能性があるので、クレーンフックの容量に対して大きな余裕値を有しなければ引き揚げ荷重の変化に即時に対応することができない。一方、クレーンは貨物を垂直方向のみに引き揚げられるため、貨物の重心が設計段階における重心からより近いクレーンフックは設計時の引き揚げ荷重より大きな引き揚げ荷重が載せられ、遠くのクレーンフックは引き揚げ荷重が設計時の引き揚げ荷重に足りなくなる。この場合、重心により近いクレーンフックはより大容量のクレーンフックを使用するか、貨物の重量を減量して引き揚げるという問題がある。より大容量のクレーンフックを使用するためには、作業時点でクレーンフックを新たに準備しなければならないのでコストや生産工程に差し支えを来たすため不可能であり、結局、貨物の引き揚げ重量を減量する方法が使用される。
【0003】
しかし、貨物の重量を減量するためには、貨物を数回に分けて引き揚げ作業をすることになり、長時間と装備の投入が予想され、特に、造船、海洋工事の場合、陸上で一回に引き揚げ作業ができない場合、過度な船上作業及び高所作業が必要となる問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点を解決するために、クレーンの容量を変化させることなく、貨物を引き揚げられる工法に関するもので、設計当時の貨物の重心に近い方の貨物と重心から遠い方のクレーンフックに対角線に連結された張力調節装置で張力を調節して、両方フックの引き揚げ荷重を所望通りに調節して、クレーンフック自体の最大引き揚げ荷重を最大限使用でき、貨物の重量と重心の変化に即時に対処し、クレーンを最も効率的に使用することによって貨物引き揚げにかかるコストを削減できると共に工事期間も短縮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
張力調節装置は、設計当時の貨物の重心に近い方の貨物と重心から遠い方のクレーンフックに対角線に張力調節装置を連結して張力を調整することによってクレーンフックの効率を向上できる装置である。一般的に張力を調節できる装置には、油圧ジャックや電動モーターなどにワイヤが連結され使用される。張力調節装置がワイヤに連結された状態で張力を加えると張力が増加するにつれてワイヤが短縮されると同時に各々のクレーンフックの引き揚げ荷重が変わる。
【0006】
図1は、張力調節装置なしに一般的に使用される方法であって、フックA、B(21、22)に載せられる引き揚げ荷重(Ha、Hb)は貨物の重量(W)、重心との距離(L、e)により次のように計算される。
【0007】
【数1】


一般的に設計段階においては、上記式のHaとHbによりフックA(21)とフックB(22)の容量を定める。
【0008】
ところが、実際の貨物の重量と重心は設計段階と変わることがある。例えば、貨物の重量(W)と重心までの距離(e)が変わるとすれば、フックA、B(21、22)の引き揚げ荷重は次のように変わる。
【0009】
【数2】


この際、貨物の重量(W’)が設計値と同じで偏心(e’)が設計値より大きくなると、Haは設計値より大きくなり、Hbは設計値より小さくなる。すると、A側のクレーンは、設計段階におけるクレーンフックA(21)の容量より大きいものを必要とし、B側は設計段階におけるクレーンフックB(22)の容量にみたない引き揚げ荷重のみを必要とする。
【0010】
図3は、対角線の張力調節装置を追加して貨物を引き揚げる方法を示している。
この際、引き揚げ荷重(Ha、Hb)は、次の式のように計算される。
【0011】
【数3】


この際、Wa’とe’は、図2において不変の値であり、対角線の張力Dは調節可能であるため、張力Dを調節することによって引き揚げ荷重Ha、Hbを調節できる。それにより、両方のフック(21、22)に設計時の引き揚げ荷重が載せられ、クレーンの最大容量が使用でき重心の変化にも対処できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成及び作用により次の効果が期待できる。
【0013】
二つのクレーンフックを利用して貨物を引き揚げる時、対角線の張力調節装置を使用して各々のクレーンフックの最大容量を最大効率に使用することによって、貨物引き揚げに対するコストを削減でき、引き揚げ荷重の変化に即時に対応し工事期間を最小化できる効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
簡単な実施例を挙げて対角線の張力に応じるクレーンフックの効率変化を説明する。
【実施例】
【0015】
設計当時の資料に基づいて計算すれば、貨物の重量(W)は1500トン、クレーンフックの最大引き揚げ荷重は、フックAは900トン、フックBは600トンであり、フック間の距離(L)は30メートル、Aフックから重心までの距離(a)を12メートル、Bフックから重心までの距離(b)を18メートル、偏心(e)を3メートルとすると、式(1)によって次のように計算される。
【0016】
【数4】


対角線の張力調節装置を使用しない場合、実際作業時点での値を計算すれば、貨物の重量(W)は1500トン、クレーンフックの最大引き揚げ荷重はフックAは900トン、フックBは600トンで変化がなく、フック間の距離(L)は30メートル、Aフックから重心までの距離(a’)は10メートル、Bフックから重心までの距離(b’)は18メートル、偏心(e)が5メートルに変わるとすれば式(2)によって次のように計算される。
【0017】
【数5】


この際、フックAの最大容量が900トンであるが引き揚げ荷重は1000トンであるので引き揚げができない。対角線の張力調節装置を使用する場合、実際作業時点における値を計算すると、貨物の重量(W)は1500トン、クレーンフックの最大引き揚げ荷重はフックAは900トン、フックBは600トンであり、フック間の距離(L)は30メートル、Aフックから重心までの距離(a)を10メートル、Bフックから重心までの距離(b)を20メートル、偏心(e)を5メートル、貨物と対角線との張力調節装置がなす角(Φ)を35°、対角線の張力調節装置に約174トンを載せる場合、式(3)によって次のように計算される。
【0018】
【数6】


この際、各々のフック(21、22)に初期設計段階における引き揚げ荷重で貨物が引き揚げられる。
【0019】
下記の表は、対角線の張力調節装置の張力変化による各々のフックの引き揚げ荷重の変化と、全体フックの容量と最大引き揚げ荷重の効率を示すものである。表の計算結果によると、対角線の張力調節装置を使用せず従来の方法で貨物を引き揚げる場合、例えば、貨物の重心がフックA方向に2メートル移動するとフックAに1000トンの引き揚げ荷重が載せられるが、実際フックの容量は900トンであるので引き揚げられない。従って、この引き揚げ系では最大引き揚げ荷重が1400トン(900+500)になる。しかし、本発明による対角線の張力調節装置を使用すれば、張力調節により各々のフックに載せられる引き揚げ荷重を調節して、1500トン(効率100%)まで引き揚げることができる。
【0020】
【表1】

本発明の好適実施例を一例として示したが、添付の特許請求の範囲に示した本発明の範囲及び観念から逸脱しないで、当業者には、各種変更、追加、代替が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のクレーンを利用した一般的な引き揚げ系の構造を概略的に示す構成図である。
【図2】本発明による対角線の張力調節装置を用いた引き揚げ系の構造を概略的に示す構成図である。
【図3】対角線の張力調節装置の張力変化による各々のフックの引き揚げ荷重の効率変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ以上のクレーンフックを用いて貨物を引き揚げることにおいて、
クレーンの容量を変化させることなく、貨物の重心に近い方の貨物と重心から遠い方のクレーンフックに対角線方向に張力調節装置とワイヤを連結して張力を調節できるようにして、両方のフックの引き揚げ荷重を所望通り調節してクレーンフック自体の最大引き揚げ荷重を最大限使用することでクレーンフックの使用効率を向上させると共に引き揚げ荷重の変化に即時に対応できる貨物引き揚げ工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501177(P2007−501177A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522501(P2006−522501)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001134
【国際公開番号】WO2005/019087
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(594006932)ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド (31)
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI HEAVY INDUSTRIES CO., LTD.
【Fターム(参考)】