説明

対象の同一性を検証する方法および装置

本発明は、ある対象の同一性を、該対象の物理的特性の測定に基づいて検証することに関するものである。登録段階において、素性が既知の対象が測定され、結果として得られる登録測定値がのちの参照のために保存される。そして検証段階において、検証のために提示された対象が測定され、その検証測定値が前記登録測定値と比較されて、二つの測定値が同一の対象に由来するものであるかどうかが判定される。本発明によれば、登録測定値および検証測定値は、それぞれ登録ノイズおよび検証ノイズによって影響されたある第一のランダム変数の二つの実現値としてモデル化される。この登録ノイズおよび検証ノイズはそれぞれ第二および第三のランダム変数の実現値であり、前記第一、第二、第三のランダム変数は既知の分布をもつものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象を特徴づける検証測定値とあらかじめ保存されている登録測定値とから前記対象の同一性を検証する方法に関するものである。
【0002】
本発明はまた、身分証明装置を使用している人物の同一性を前記身分証明装置内に保存されている登録測定値と前記人物を特徴づける検証測定値とから検証するための検証手段を有する身分証明装置にも関するものである。
【0003】
本発明はまた、記録媒体からデータを読み出したり記録媒体にデータを書き出したりするための読み書き装置であって、前記読み書き装置によって読み書きされる記録媒体の同一性を登録測定値と前記記録媒体を特徴づける検証測定値とから検証するための検証手段を有する読み書き装置にも関するものである。
【0004】
本発明は、物理的特性の少なくとも一つによって一意的に識別されうる対象に適用される。同一性を検証すべき対象は装置でも(たとえば記憶媒体)人間でもよい。記憶媒体については、測定すべき前記物理的特性は当該記憶媒体のトラック形状でありうる。人間については、測定すべき前記物理的特性は通例バイオメトリクスと称される。たとえば、測定すべきバイオメトリクスデータは、指紋、顔の特徴などがありうる。
【背景技術】
【0005】
『業界概報:グローバル情報セキュリティ2002』(Business Briefing: Global Infosecurity 2002)中で公表されたノーバート・ポールマン博士(Dr Norbert Pohlmann)による報告「ICカードとバイオメトリクス――暗証番号よさらば」(Smart cards & Biometrics―Forget about PINs)は、正規ユーザーのバイオメトリック・テンプレートがICカード上に記録されるシステムが記述されている。そのICカードの正規ユーザーであることを主張する人物は、自分のバイオメトリックデータを提示しなければならない。提示されたバイオメトリックデータがICカードに受領され、ICカードに保存されているテンプレートのバイオメトリックデータと比較される。
【0006】
通例登録段階と呼ばれる第一の段階において、そのようなシステムではある対象が測定される。登録測定値と呼ばれる測定値がのちの参照のために保存される。
【0007】
通例検証段階と呼ばれる第二の段階において、前記対象と同一の対象かもしれないし、異なる対象かもしれないある対象について、検証測定と呼ばれる測定が行われる。
【0008】
そして登録測定値と検証測定値とを比較して、両者が同一の対象のものであるかどうかが判定される。
【0009】
この状況では、あらゆる対象についての登録測定値を保存しているデータベースは利用できない。これは、一致を検査される測定値とは異なるあらゆる測定値は完全に未知であるということを意味している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一つの目的は、そのような状況によく適合した検証方法を提案することである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、そのような検証方法を実装する身分証明装置を提案することである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、そのような検証方法を実装する、記録媒体からデータを読み出したり記録媒体にデータを書き込んだりするための装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的、身分証明装置および読み書き装置は、請求項で定義される検証方法によって達成される。
【0014】
本発明によれば、登録測定値および検証測定値は、それぞれ登録ノイズおよび検証ノイズによって影響を受ける第一のランダム変数の第一および第二の実現値としてモデル化される。前記登録ノイズは第二のランダム変数の実現値であり、前記検証ノイズは第三のランダム変数の実現値とする。前記第一、第二、第三のランダム変数は既知の分布をもつものとする。
【0015】
この選択は、次のような認識に基づいたものである。
【0016】
・実行された測定について何らの事前の知識もない状況においては、ある対象を特徴づける測定値はランダム変数の特定の実現値である。
【0017】
・実際上、登録段階でも検証段階でも測定は常にノイズに影響される。
【0018】
これは、登録(enrollment)測定値xeおよび検証(verification)測定値xvが次のように書かれることを意味している。
【0019】
xe=sk+ne
xv=sq+nv
ここで、skおよびsqはランダム変数Sの実現値、
neは実現値skに影響する登録ノイズ、
nvは実現値sqに影響する検証ノイズ、である。
(本稿を通じて変数には大文字を用い、変数がとる特定の値には小文字を用いる)
このモデルを固定すると、決定すべきことは、skおよびsqがランダム変数Sの同じ実現値であるかどうかである。本発明によれば、これは次のことによって実現される。
【0020】
・登録測定値xeおよび検証測定値xvについて、二つの変数XeおよびXvについて、前記第一のランダム変数の前記第一および第二の実現値が同一であるという第一の仮説(f1(Xe,Xv))のもとでの同時確率密度関数と前記第一および第二の実現値が異なるものであるという第二の仮説(f0(Xe,Xv))のもとでの同時確率密度関数との間の比Λ(Xe,Xv)の関数gの値を計算し、
・計算された値g[Λ(xe,xv)]をある閾値と比較することによって前記登録測定値xeおよび前記検証測定値xvが同一の対象に由来するものであるかどうかを判定する。
【0021】
有利には、前記関数gは対数関数であり、それにより計算が著しく軽減される。
【0022】
ある種の状況においては、登録ノイズは登録段階における複数回の測定によって軽減することができる。しかし、登録測定を複数回行うことができない状況もあり、複数回の登録測定ができたとしても、一定の不確定性は常に残る。よって、あらゆる場合において登録ノイズを考慮に入れておくことで検証プロセスの効率の著しい向上が得られる。
【0023】
これらのことを含む本発明のさまざまな側面について図面を参照しつつ説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、対象の少なくとも一つの物理的特性の測定に基づく該対象の同一性の検証に適用される。そのような検証プロセスは、通例二つの段階を使って記述される。登録段階と検証段階である。
【0025】
登録段階においては、素性が既知である対象が測定される。登録測定と称されるそのような測定は将来の参照のために保存される。検証段階においては、検証のために対象が提示される。提示された対象の測定がなされ、それは検証測定と称される。その検証測定値は次いで登録測定値と比較され、二つの測定が同一の対象に由来するものであるかどうかが判定される。
【0026】
本稿および特許請求の範囲における「対象(object)」の語は装置と生命体のどちらのことであってもよいものとする。
【0027】
本発明によれば、
・ある対象を同定するのに使われる物理的特性は既知の分布PSに従って分布するランダム変数Sの実現値としてモデル化される。
【0028】
・対象の物理的特性の登録測定および検証測定はいずれもノイズを含んだものとする。
【0029】
・登録ノイズは、既知の分布PNeを有するランダム変数Neの実現値neとしてモデル化される。
【0030】
・検証ノイズnvは、既知の分布PNvを有するランダム変数Nvの実現値としてモデル化される。
【0031】
・S、Ne、Nvは独立なランダム変数であるとする。
【0032】
このモデルは概略的に図1に示してある。図1において、対象kが登録段階において測定され、対象qが検証段階において測定される。登録測定値xeおよび検証測定値xvは次のように書かれる。
【0033】
xe=sk+ne
xv=sq+nv
検証者VBが、登録測定値xeおよび検証測定値xvに基づいてskおよびsqがランダム変数Sの同一の実現値であるかどうかを判定する役割を負っている。このことは、二つの仮説の間での判断として定式化できる。
【0034】
・オブジェクトkおよびqが異なるという第一の仮説H0
・オブジェクトkおよびqが同一であるという第二の仮説H1
これら二つの仮説の間で判定をすることは、次によってなされる。
【0035】
・Xe=xe、Xv=xvについて尤度比Λ(Xe,Xv)=f1(Xe,Xv)/f0(Xe,Xv)の値を計算する。ここで、f1(Xe,Xv)は仮説H1のもとでの、すなわちskおよびsqがランダム変数Sの同一の実現値である場合の変数XeおよびXvの同時確率密度関数であり、f0(Xe,Xv)は仮説H0のもとでの、すなわちskおよびsqがランダム変数Sの異なる実現値である場合の変数XeおよびXvの同時確率密度関数である。
【0036】
・計算された値Λ(Xe,Xv)をある閾値と比較することによって登録測定値xeおよび検証測定値xvが同一の対象に由来するかどうかを判定する。
【0037】
あるいはまた、尤度比Λ自身の代わりに尤度比Λの任意の単調関数gを判定関数dとして使ってもよい。
【0038】
図2は、本発明に基づく検証方法のステップを描いたブロック図である。
【0039】
ステップZ1において、対象qに対して検証測定値xvが取得される。
【0040】
ステップZ2において、判定関数dの値d(xe,xv)がステップZ1において得られた検証測定値xvおよび登録測定値xeについて計算される。
【0041】
ステップZ3において、計算された値d(xe,xv)が次のようにして閾値Tと比較される。
【0042】
・d(xe,xv)<Tであれば、仮説H0が採択される
・d(xe,xv)≧Tであれば、仮説H1が採択される
ステップZ4において、ステップZ3から得られる判定(仮説H0か仮説H1か)が出力される。
【0043】
今から、ステップZ3において使用されるべき好ましい判定関数dを、すべての信号が独立したガウス分布のランダム変数のベクトルである場合の例を用いて導出する。この好ましい判定関数は、前記尤度比の対数である。以下において明らかであろうように、判定関数として尤度比の対数をとることは、計算を単純化するので有益である。この好ましい例は限定的なものではなく、本発明は尤度比の他のいかなる単調関数gにも、またその他のいかなる分布の形にも適用されるものであることは理解しておくべきである。
【0044】
尤度比の対数を、まずガウス分布のスカラーについて導出し、それから独立かつ同一のガウス分布をもつスカラーからなるベクトルについて導出する。
ガウス分布のスカラーについての尤度比の対数
検証者VBは次のすべての分布について完全に知っているものとする。
【0045】
・PSは平均μS、分散σS2の既知のガウス分布である。
【0046】
・PNeは平均μne、分散σne2の既知のガウス分布である。
【0047】
・PNvは平均μnv、分散σnv2の既知のガウス分布である。
【0048】
一般に、仮説Hjのもとでの二変量ガウス確率密度関数は次の形をとる。
【0049】
【数1】

今考察している状況では、
μxe=μS+μne
σxe=√(σS2+μne2)
であり、
μxv=μS+μnv
σxv=√(σS2+μnv2)
である。計算を単純化するために新しい変数を導入する。
【0050】
【数2】

これらの変数についての仮説Hjのもとでの二変量ガウス確率密度関数は次の形になる。
【0051】
【数3】

仮説H0においては、skおよびsqはランダム変数Sから独立に抽出される。これはすなわち、数2で導入した変数も独立であり、ρ0=0であることを意味する。よって、確率密度関数f0は次式によって与えられる。
【0052】
【数4】

仮説H1においては、数2で導入した変数は相関しており、相関係数ρ1は次のように書ける。
【0053】
【数5】

よって、確率密度関数f1は次式で与えられる。
【0054】
【数6】

(3)および(4)を使うと、尤度比は次のように書ける。
【0055】
【数7】

そして尤度比の対数は次のように書ける。
【0056】
【数8】


同一のガウス分布をもつスカラーからなるベクトルについての尤度比の対数
実際上、信号sk、sq、ne、nvは独立した、同一分布のスカラーのベクトルとしてモデル化できる。すなわち、
sk=[sk,1,sk,2,...,sk,m] sk,i∈PS(i=1,...,m)
sq=[sq,1,sq,2,...,sq,m] sq,i∈PS(i=1,...,m)
ne=[ne,1,ne,2,...,ne,m] ne,i∈PNe(i=1,...,m)
nv=[nv,1,nv,2,...,nv,m] nv,i∈PNv(i=1,...,m)
ここで、mはベクトルの長さである。
【0057】
独立した同一分布の系列の確率密度関数は、系列の各要素の確率密度の積である。
【0058】
よって、ガウス分布のスカラーからなるベクトルに対する尤度比の対数は、(5)から次のように導かれる。
【0059】
【数9】

式(6)から、提案されている判定関数が、相関項(式(6)の{ }内の第3項)および平方差の項(同じく第2項)の両方に基づく線形の重み付き関数になっていることが見て取れる。
【0060】
登録段階における信号対雑音比は、σS2とσne2の比として定義される。ρが0に近いとき、すなわち信号対雑音比が低いとき、式(6)において相関項が優勢となる。ρが1に近いとき、すなわち信号対雑音比が高いときは、平方差の項が優勢となる。
【0061】
検証者の効率はEER(Equal Error Rate[等誤り率])を用いて与えることができる。これは、FRR(False Rejection Rate[誤棄却率];仮説H1が正しいときに仮説H0が採択される)とFAR(False Acceptance Rate[誤受け入れ率];仮説H0が正しいときに仮説H1が採択される)が等しくなるように判定閾値を選んだときのFRR=FARの値である。
【0062】
図3は、ベクトル長m=20のときに、信号対雑音比(SNR: signal to noise ratio)の関数として得られたEERを示している。3本の曲線は、提案されている検証者(曲線C1)、相関のみに基づく検証者(曲線C2)、平方差の項のみに基づく検証者(曲線C3)の場合を示している。ここで、信号対雑音比SNRは、登録段階と検証段階において同一である、すなわち、
【0063】
【数10】

と想定している。
【0064】
図3から、本発明に基づく検証者の効率が著しく優れていることが見て取れる。
【0065】
図4は、信号対雑音比SNRが0dBであるときにERRをベクトル長mの関数として与えるものである。図3から、信号対雑音比が0dBの場合には、相関のみに基づく検証者によって得られる効率と平方差のみに基づく検証者によって得られる効率とが同一になることが明らかである。曲線D1はmの関数としてのEERを本発明に基づく検証者について与え、曲線D2はmの関数としてのEERを、相関または平方差のいずれかに基づく検証者について与えている。図4から、本発明によって達成される改善はベクトル長mが大きいほどますます重要になることが見て取れる。
【0066】
図5は、身分証明装置10および該身分証明装置10を読み取るための読み取り機を有するシステムを概略的に表現したものである。図5で表現されている身分証明装置はプロセッサ14ならびに登録測定値xeおよびプログラムPGを保存するメモリ手段16を有するICカードである。該プログラムPGはプロセッサ14によって実行されたときに本発明に基づく検証方法を実装するためのコード命令を有している。
【0067】
図6は、本発明に基づく読み書き装置の例を概略的に表現したものである。図6で表現されている読み書き装置は光ディスク22からデータを読み出したり光ディスク22にデータを書き込んだりするための光学式装置20である。
【0068】
読み書き装置20は、光ディスク22上に印刷されているトラックを走査するための放射ビーム26を生成する光学ユニット24と処理ユニット28とを有する。該処理ユニット28は前記光学ユニット24によって読み込まれた信号のデコードや書き込まれるべき信号のエンコード、ならびに前記読み書き装置20の動作の制御を担っている。
【0069】
ディスク上に印刷されているトラックは、渦巻き型の平均中心線から連続的な正弦波の偏位のある形をしている。このトラック形状が当該光ディスク22の「指紋(フィンガープリント)」として有利に使用される。たとえば、トラック形状は、当該トラック偏位の各調和成分を表す一連の複雑な値によって記述されうる。
【0070】
放射ビーム26をトラックに追随させ、集束させるために、光学ユニット24はサーボ制御ユニット32によって生成される制御信号30によって制御される。トラック形状の測定値は該制御信号30から導出できる。
【0071】
本発明によれば、読み書き装置20はディスクフィンガープリント計算ユニット40および検証ユニット42を有する。ディスクフィンガープリント計算ユニット40はサーボ制御ユニット32によって生成された制御信号30を受信してディスクフィンガープリントと称される測定値を生成する。前記ディスクフィンガープリント計算ユニット40は、ディスクqを特徴づける検証測定値xvを与える検証段階で使用される。該検証段階では、検証ユニット42は前記ディスクフィンガープリント計算ユニット40によって生成された検証測定値xvとある登録測定値xeとを受信して、xvおよびxeについての判定関数dの値d(xv,xe)を計算し、判定H0またはH1を出力する。判定H0またはH1は、その後の動作のために処理ユニット28に転送される。
【0072】
前記登録測定値xeは登録段階の間にディスクフィンガープリント計算ユニット40によって生成され、のちに前記検証ユニット42が使用するために読み書き装置20のメモリに保存されていたものである。あるいはまた、前記登録測定値xeは読み書き装置20の独立した入力を通じて検証ユニット42に与えられてもよい。たとえばそれは製造工程の間にディスク上に保存され、該ディスクが読み書きユニット20に挿入されたときに読み込まれてもよい。
【0073】
トラック偏位のスペクトル成分を使うことによって光ディスクの同一性を検証するにあたって、ランダム変数Sをモデル化するために使われる分布、登録ノイズ、検証ノイズは有利にはガウス分布である。
【0074】
記載されている検証法、身分証明装置、読み書き装置に関し、本発明の範囲から外れることなく修正や改善が提案されうるであろう。本発明は挙げられている例に限定されるものではない。
【0075】
特に、本発明は対数関数の使用やガウス分布の使用に限定されるものではない。提案されている判定関数は、ICカードユーザーや記録媒体以外の対象を識別するのに使用されることもできる。本発明は、光ディスク以外の記録媒体の種類にも適用される。
【0076】
本発明の検証方法は単一の物理的特性を使ってもよいし、いくつかの物理的特性を同時に使ってもよい。いくつかの物理的特性が使われる場合、それらの特性はベクトルとして処理される。
【0077】
上記の記載において、尤度比の対数は同一の分布をもつスカラーからなるベクトルについて導出された。これは限定的なものではない。本発明は、ベクトルの成分が異なる分布からのものである場合にも適用される。
【0078】
動詞「有する」の使用は挙げられている以外の要素やステップの存在を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に基づく検証方法で使用されるモデルを示す概略図である。
【図2】本発明に基づく検証方法の主要なステップを描いたブロック図である。
【図3】本発明に基づく検証方法の効率を示す図である。
【図4】本発明に基づく検証方法の効率を示す図である。
【図5】本発明に基づく身分証明装置およびそのような身分証明装置を読み取るための読み取り機の例を有するシステムを概略的に表現した図である。
【図6】本発明に基づく読み書き装置および前記読み書き装置によって同一性を検証されるべき記録媒体の例を有するシステムを概略的に表現した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある対象の同一性を、該対象を特徴づける検証測定値とあらかじめ保存されている登録測定値とから検証するための検証方法であって、
前記登録測定値および前記検証測定値がそれぞれ登録ノイズおよび検証ノイズによって影響されたある第一のランダム変数の第一および第二の実現値としてモデル化され、前記登録ノイズは第二のランダム変数の実現値であり、前記検証ノイズは第三のランダム変数の実現値であり、前記第一、第二、第三のランダム変数は既知の分布をもつものであり、
・前記登録測定値および前記検証測定値について、前記第一のランダム変数の前記第一および第二の実現値が同一であるという第一の仮説のもとでの二変量の同時確率密度関数と前記第一および第二の実現値が異なるものであるという第二の仮説のもとでの二変量の同時確率密度関数との比のある関数の値を計算し、
・計算された値をある閾値と比較することによって前記登録測定値および前記検証測定値が同一の対象に由来するものであるかどうかを判定する、
ステップを有することを特徴とする検証方法。
【請求項2】
前記関数が対数関数であることを特徴とする、請求項1記載の検証方法。
【請求項3】
前記既知の分布がガウス分布であることを特徴とする、請求項1記載の検証方法。
【請求項4】
ユーザーを特徴づける検証測定値を受信するよう意図された身分証明装置であって、
・登録測定値を保存するための保存手段と、
・前記検証測定値および前記登録測定値とから前記ユーザーの身分を検証するための検証手段とを有しており、
前記登録測定値および前記検証測定値がそれぞれ登録ノイズおよび検証ノイズによって影響されたある第一のランダム変数の第一および第二の実現値としてモデル化され、前記登録ノイズは第二のランダム変数の実現値であり、前記検証ノイズは第三のランダム変数の実現値であり、前記第一、第二、第三のランダム変数は既知の分布をもつものであり、
前記検証手段が、
・前記登録測定値および前記検証測定値について、前記第一のランダム変数の前記第一および第二の実現値が同一であるという第一の仮説のもとでの二変量の同時確率密度関数と前記第一および第二の実現値が異なるものであるという第二の仮説のもとでの二変量の同時確率密度関数との比のある関数の値を計算する手段と、
・計算された値をある閾値と比較することによって前記登録測定値および前記検証測定値が同一の対象に由来するものであるかどうかを判定する手段、
とを有することを特徴とする装置。
【請求項5】
前記測定値が前記ユーザーの生理上または行動上の特性であることを特徴とする、請求項4記載の身分証明装置。
【請求項6】
前記既知の分布がガウス分布であることを特徴とする、請求項4記載の身分証明装置。
【請求項7】
請求項4または5記載の身分証明装置を有するICカード。
【請求項8】
記録媒体からデータを読み出したり記録媒体にデータを書き込んだりするための読み書き装置であって、
・記録媒体を特徴づけ、該記録媒体を一意的に識別する測定値を生成する測定手段と、
・記録媒体を特徴づける検証測定値およびある登録測定値から該記録媒体の同一性を検証するための検証手段とを有しており、
前記登録測定値および前記検証測定値がそれぞれ登録ノイズおよび検証ノイズによって影響されたある第一のランダム変数の第一および第二の実現値としてモデル化され、前記登録ノイズは第二のランダム変数の実現値であり、前記検証ノイズは第三のランダム変数の実現値であり、前記第一、第二、第三のランダム変数は既知の分布をもつものであり、
前記検証手段が、
・前記登録測定値および前記検証測定値について、前記第一のランダム変数の前記第一および第二の実現値が同一であるという第一の仮説のもとでの二変量の同時確率密度関数と前記第一および第二の実現値が異なるものであるという第二の仮説のもとでの二変量の同時確率密度関数との比のある関数の値を計算する手段と、
・計算された値をある閾値と比較することによって前記登録測定値および前記検証測定値が同一の記録媒体に由来するものであるかどうかを判定する判定手段、
とを有することを特徴とする装置。
【請求項9】
読み書きユニットと、該読み書きユニットを制御するよう意図された制御信号を生成する制御手段とを有する請求項6記載の読み書き装置であって、前記測定手段が記録媒体からデータを読み出したり記録媒体にデータを書き込んだりする際に制御信号の周波数スペクトルを表す値の集合を生成する処理手段を有しており、前記値の集合が前記記録媒体を特徴づける測定をなすことを特徴とする装置。
【請求項10】
プロセッサによって実行されたときに請求項1または2記載の検証方法を実施するためのコード命令を有するプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−510193(P2007−510193A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530672(P2006−530672)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001647
【国際公開番号】WO2004/104908
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】