説明

封止方法およびその装置

【課題】上下一対の基板を張り合わせるにあたり、上基板を定位置に固定して正確な位置決めおよびアライメントが可能となるようにするとともに、下基板を載置したステージに傾きがある場合においても上下基板のセルギャップが一定となるセル構造体が得られるようにし、品質および歩留まりが向上するようにする。
【解決手段】下基板を封止装置内のステージ上に搬入する工程と、前記封止装置内の前記した下基板上に上基板を搬入する工程と、前記上基板の上方に配設した紫外線透過シートに形成した透明電極に電流を通じて静電気を発生させることにより前記上基板を静電チャックする工程と、前記紫外線透過シートにより前記上基板を下基板に向けて押圧した状態で紫外線を照射し、予め塗布されているシール材を硬化させる工程により、前記下基板と前記上基板を貼り合わせてセル構造体が得られるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上基板および下基板を封止装置内に搬入し、搬入された上下基板同士のアライメント、および上基板または下基板に予め塗布したシール材を紫外線(UV)の照射により硬化することにより、表示機能層を介在させて上下基板を貼り合わせるようにした封止方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パネルディスプレイの代表例である液晶パネル、有機ELパネル、電子ペーパーパネルなどは、一対の上下基板間に画像表示を可能とするための表示機能層を介在させて封止したセル構造体を採用している。液晶パネルにおけるセル構造体は、液晶材料を挟むように配向膜、透明電極、偏向フィルタなどが配され、上下基板間が封止されている。一方、有機ELパネルにおいては、透明電極と有機半導体などからなる表示機能層を配して上下基板間を封止し、透明電極により有機半導体を直接発光させるようにしている。また、電子ペーパーパネルにおける代表的な構成は、顔料粒子および油性材料を封入したマイクロカプセルと透明電極からなる表示機能層を配して上下基板間を封止するようにしている。さらに、裸眼式の3次元ディスプレイにおいては、前述のように構成された液晶パネルあるいは有機ELパネルのセル構造体の表面にレンチキュラーシートを貼設して3次元の画像が得られるようにしている。
【0003】
図10は液晶パネルの製造装置の従来の一例を示すもので、同図に示すように透明電極が形成された一対の上下基板の一方(下基板50)にシール材51を閉環状に塗布し、このシール材51で囲まれた領域に透明球状のスペーサを散布するとともに、液晶材料52を滴下する。そして、この下基板50を真空チャンバー53内であって下基板50面と平行に水平方向へ移動可能となるように支持された位置決めテーブル54上に弾性シート55を介して載置固定する。一方、真空チャンバー53内で垂直方向に移動可能に支持された吸着盤57に上基板56を吸着固定する。
【0004】
つぎに、真空チャンバー53内の空気を排気(真空引き)して所定の真空度に到達した後、吸着盤57を降下させて下基板50上のシール材51および液晶材料52が上基板56に接触する手前の位置で停止させ、対向する上基板56と下基板50のアライメントマークの位置関係を、位置決めテーブル54を移動させることによって調整し、上下基板50、56の粗いアライメント処理を行う。
【0005】
そして、真空チャンバー53内の空気を更に排気して所定の真空度まで高めた後、更に吸着盤57を降下させて上基板56を下基板50側に加圧し、上基板56と下基板50の間のセルギャップが透明球状のスペーサで保持された状態に維持される。このとき、上下基板50、56間では下基板50上のシール材51が押し潰され、同様に押し潰された液晶材料52がシール材51と上下基板50、56とで囲まれた領域に拡散し、その領域全体が液晶材料52で満たされる。
【0006】
つぎに、吸気して真空チャンバー53内を大気圧に戻し、大気圧中で対向する上基板56と下基板50のアライメントマークの位置関係を位置決めテーブル54を移動させることによって調整し、上下基板50、56の精密なアライメント処理を行う。そして、最後にアライメント処理が施された上下基板50、56を真空チャンバーの外部に取り出し、紫外線を照射してシール材51を硬化させ、セル構造体の製造工程が完了する(特許文献1参照)。
【0007】
一方、有機ELパネルの有機半導体は酸素や湿気の影響により徐々に劣化して輝度が低下する性質があるため、シール材中の気泡や水分を除去する方法が提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2に開示された技術は、弾性シートによって仕切られた第1の空間および第2の空間に対し、この両空間を排気可能にする排気手段を備え、この排気手段により第1の空間を第2の空間に対して負圧となるように制御し、両空間に生じた差圧を、弾性シートを介して封止基板および素子基板の一方に作用させることにより、両基板の圧着が可能となるようにしている。
【0008】
また、液晶パネルあるいは有機ELパネルの製造工程において、光プレス法により紫外線を照射して光硬化型のシール材を硬化させる場合、特に有機半導体は紫外線が照射されると劣化が著しくなることから、一般に石英の遮光ガラスに遮光マスクパターンを形成し、シール材のみに紫外線が照射されるようにしている(特許文献3参照)。
【0009】
この特許文献3に開示された技術は、電気光学層が形成された基板の背面側に遮光ガラスを配置し、電気光学層を気密的に覆うために、基板と封止部材とをシール材を介して圧接させた状態で、遮光ガラス側から紫外線を照射してシール材を硬化させることにより、基板と封止部材とを接合するようにしたもので、このため、遮光ガラス基板との接触面に撥水処理を施し、遮光ガラスと基板が貼り付くのを防止している。
【0010】
前記特許文献3に開示された構成は、きわめて高価な石英ガラスを用いるという方法であり、耐久性等の面から問題があることから、本願の出願人は柔軟性および透光性を有するシート部材を採用し、この紫外線透過シートにセル構造体となる上側基板が圧接するようにし、紫外線透過シートの透過率が許容範囲に低下した場合は、未使用の部分を連続して供給できるようにした。そして、この紫外線透過シートを境界として減圧可能な第1チャンバーと第2チャンバーが形成されるようにし、セル構造体の両面からの圧力制御が可能となるようにしている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−296601号公報
【特許文献2】特開2005−276754号公報
【特許文献3】特開2006−004707号公報
【特許文献4】特開2009−058783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、液晶パネルおよび有機ELパネルは大型化する傾向にあり、パネルの大型化に伴って製造装置も大型化している。また、パネルが大型化しても貼り合わせを行う上下基板の封止装置への搬出入は専用の搬送装置で行われ、人為的作業を伴わないようにしなければならない。仮に人為的作業により上下基板の搬出入を行った場合、作業者の衣服などから塵埃の飛散、あるいは身体から汗の蒸発により適正な湿度を維持することができず、クリーンルーム相当の環境が得られなくなり、生産の歩留まりを著しく低下することになる。
【0013】
また、生産効率を向上するためには、セル構造体の上下に形成されるチャンバーは可能な限り必要最低限の容量であることが望ましいことになる。即ち、上下基板の貼り合わせが行われるチャンバー内は一工程毎に毎回必ず高い真空度となるようにし、基板間のセルギャップ内の真空度が高くなるようにしなければならない。しかしながら、このチャンバーの容量が大きい場合は、その内部の空気の吸引量も大きくなることから、真空ポンプの作動時間が比例して長くなることになり、これが大きな要因となって生産効率が低下し、生産コストを上昇することになる。
【0014】
特に有機ELパネルを製造する場合は、きわめて高い真空度が要求されるため、可能な限りチャンバーを小型化して効率よく真空状態が形成されるようにしなければならない。しかも、チャンバーを小型にしつつも、このチャンバー内への上下基板の搬入および完成したセル構造体の搬出が可能となるようにした気密状態が得られる開閉扉を備え、自動生産が可能となるようにしなければならない。
【0015】
また、搬入された上基板はチャンバー内で定位置に保たなければならないことから、特許文献3のように上基板の端部を支持する方法が提案されている。このような方法による場合は、上基板は支持部へ仮置きされた状態となり、支持部が降下することにより上基板が下基板に載置されたのみの不安定な状態、即ち、上基板が下基板の上で位置が固定されず、位置ずれが生じる可能性が潜在することになり、正確にアライメントができなくなる。
【0016】
このアライメント処理は液晶パネル、有機ELパネルにおける製造工程の重要なプロセスであるが、立体画像を裸眼で観ることができるようにした3次元ディスプレイに用いられるパネルではきわめて高い精度のアライメントが要求される。即ち、3次元ディスプレイではパネルの表面に、このパネルの画素毎に対応するレンチキュラーレンズを配列したレンチキュラーシートを配設するのであるが、このときパネルの各画素にレンチキュラーレンズを正確に一致させなければならない。
【0017】
また、液晶パネルにおける液晶材料、有機ELパネルにおける有機半導体、電子ペーパーパネルにおけるマイクロカプセルが受ける透明電極により形成される電界の強さは、全ての表示領域で均等でなければならない。このため、セルギャップは全ての表示領域で完全に一定であることが理想となるが、実際の液晶パネルにおける製造においては、その許容誤差が0.1μm以下と厳しく要求されるが、この精度維持が品質および歩留まりを向上することになる。
【0018】
ところが、特許文献4に開示した例のように下基板を載置するステージを備える構成では、そのステージの完全な水平を常に維持することが困難であり、その水平度を常に監視することも甚だ困難である。しかしながら、ステージに傾きがある場合に上基板を下基板に向けて機械的手段により押圧すると、この押圧力が不均等となり、この傾きが影響してセルギャップの広い部分と狭い部分が生じてしまうことになる。
【0019】
本発明は上記したような課題を解決するためになされたもので、上下一対の基板の封止処理にあたり、上基板を確実に固定して正確なアライメントが可能となるようにするとともに、封止処理において上基板を下基板に向けて押圧する際、下基板を載置したステージに傾きがあっても、上基板がステージの偏倚に倣う状態となるようにして圧力の偏在を回避できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで本発明は、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、塗布されたシール材を硬化させて上下一対の基板を貼り合わせる封止方法であって、表面の要所にシール材が塗布された下基板を封止装置内のステージ上に搬入する工程と、前記封止装置内の前記下基板上に上基板を搬入する工程と、前記上基板の上方に配設した紫外線透過シートに形成した透明電極に電流を通じて静電気を発生させることにより前記上基板を静電チャックする工程と、前記紫外線透過シートにより前記上基板を下基板に向けて押圧した状態で紫外線を照射し、予め塗布されているシール材を硬化させる工程により前記上基板と下基板を貼り合わせてセル構造体が得られるようにした。
【0021】
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の封止方法において、上下基板の少なくとも一方の素材が透明ガラスまたは透明合成樹脂であるようにする。
【0022】
請求項3記載の発明では、上記請求項1記載の封止方法において、画像表示面となる基板の表面に予めレンチキュラーシートが貼設されているようにする。
【0023】
請求項4記載の発明では、上面に開口部が形成され吸排気口を有するとともに、内部にステージと下基板の支持ロッドを昇降可能に設けた空室筐体と、前記空室筐体の開口部を覆う柔軟性および透光性を有するとともに、前記開口部に臨む透明電極が形成された紫外線透過シートと、外形が前記空室筐体と略一致する形状であって吸排気口を有するとともに、紫外線透過マスクを内部に収容して前記紫外線透過シート上に載置される紫外線透過マスク支持枠と、前記紫外線透過マスク支持枠の上面の開口部を覆う可動封止盤と、前記可動封止盤の上方に配置され下基板に塗布された光硬化型のシール材に紫外線を照射する光源部を備え、前記空室筐体上に紫外線透過シートを介して紫外線透過マスク支持枠および可動封止盤が配置されたとき、前記紫外線透過シートを境界とする下部の空室筐体内が減圧可能な第1のチャンバーとなる一方、前記紫外線透過シートを境界とする上部の紫外線透過マスク支持枠および可動封止盤に囲われた内部が減圧可能な第2のチャンバーとなるようにし、前記空室筐体内に上基板が搬入されたとき、前記紫外線透過シートの透明電極に電流を通じて静電気を発生させ、前記上基板を静電チャックする封止装置となるようにする。
【0024】
請求項5記載の発明では、上記請求項3記載の封止装置において、上基板と下基板のアライメント調整するためのアライメントカメラを前記ステージの側部に設ける。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上下一対の基板を貼り合わせるにあたり、紫外線透過シートに形成した透明電極に電流を流して静電気を発生させ、これにより上基板を静電チャックして定位置に固定するようにしたので、正確な位置決めおよびアライメントが可能となる。そして、上基板が下基板を押圧する際、下基板を載置したステージに傾きがあっても、上基板が紫外線透過シートとともにステージの傾きに倣う状態となるので圧力の偏在を回避できることからセルギャップが一定となり、品質および歩留まりを向上することができる。
【0026】
なお、本発明によれば、空室筐体上に紫外線透過シートを介して紫外線透過マスク支持枠および可動封止盤を配置する構成としたので、前記紫外線透過シートを境界とする下部の空室筐体内の第1のチャンバーを可能な限り小さくすることができ、これにより、この第1のチャンバーの排気処理を迅速に行うことが可能となり、生産効率を向上することができる。
【0027】
また、上記構成において、空室筐体内に下基板を支持して昇降可能となるようにした支持ロッド、静電チャック機能を有する紫外線透過シート、セル構造体を載置して昇降可能となるようにしたステージを備え、さらに空室筐体の任意の側面に第1のチャンバーの気密状態を保つことができるようにした開閉扉を設けるようにしたので、上下基板の搬入、そして成形されたセル構造体の搬出の自動化が可能となり、人為的作業の介在しない連続自動生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の封止装置の構成を説明する断面図である。
【図2】本発明の封止装置の構成を説明する断面図である。
【図3】本発明の封止装置の紫外線透過シートを説明する図である。
【図4】本発明の封止装置の構成を説明する部分斜視図である。
【図5】本発明の封止装置の要部の動作態様を説明する図である。
【図6】本発明の封止装置の吸排気回路の構成を説明する図である。
【図7】セル構造体となる下基板の説明図である。
【図8】セル構造体となる上基板の説明図である。
【図9−1】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図9−2】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図9−3】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図9−4】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図9−5】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図9−6】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図10】従来の封止装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図にもとづいて詳細に説明する。なお、各図において同一部分には同一符号を付して説明が重複しないようにする。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明に対して限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0030】
図1および図2において符号1は、内部が第1のチャンバーCH1となる中空体である空室筐体であり、上面に開口部1aが形成されており、任意の側面に基板搬入窓1bが形成されている。さらに空室筐体1には後述する吸排気回路に接続された吸排気管P1が配設されている。
【0031】
空室筐体1の内部中央には、X方向、Y方向、θ方向に微動させることができる機構を内蔵したステージ2が設けられ、このステージ2に固定されたロッド3が空室筐体1の底部から外部に延設されており、ギヤボックス4に与えられたモータ5の駆動力によりロッド3が上下動し、ステージ2が空室筐体1の内部で昇降する。なお、空室筐体1の底面の前記ロッド3の支持部分には気密シールSが設けられ、この部分の気密状態が保たれるようにしている。
【0032】
さらに、空室筐体1の底面下には、空室筐体1の内部に搬入される下基板W1の対角線上の4個所の角隅部を下面から支持する支持ロッド6を上下動するための流体圧シリンダー7が配置固定されている。なお、空室筐体1の底面の前記支持ロッド6の支持部分には気密シールSが設けられ、この部分の気密状態が保たれるようにしている。
【0033】
下基板W1を支持する支持ロッド6はステージ2内を貫通し、上下動するようにしてあるが、これは下基板W1が可能な限り広い範囲でステージ2上に載置され、成形時に圧力の偏る部分がないように配慮したことによるものである。なお、ステージ2の側部にアライメントカメラ10を設け、下基板W1上基板W2とのアライメントを行うための画像信号が得られるようにしている。
【0034】
つぎに、前記空室筐体1の上面には、その全範囲を覆うように紫外線を透過する紫外線透過シート11が配設されており、この紫外線透過シート11は供給ロール12から送り出され、巻き取りロール13に巻き取られる仕組みになっている。この紫外線透過シート11は柔軟性を有する材料、例えば、PET樹脂、PFE樹脂などを採用し、空室筐体1のフランジ1cの上面に密着するので、この部分の気密性が保たれる。
【0035】
さらに、前記紫外線透過シート11は図3に可視的に示すように、透明電極11a、11bが蛇行して交互に櫛歯状に形成したもので、透明電極11a、11bの終端部11c、11dに接続したクランプ端子8a、8bから直流電流を印加することによりその表面に静電気を発生させ、上基板W2の静電チャックが可能となるようにしている。なお、透明電極11a、11bの配線パターンは図3の形態に限定されるものではない。
【0036】
前記紫外線透過シート11上の空室筐体1のフランジ1c上に載置される紫外線透過マスク支持枠14は、空室筐体1の外形と略一致する形状の枠体であり、その内部にフランジ14aで支持して紫外線マスク15を収容するようにしている。この紫外線マスク15は、上方に配置される後述するランプハウス19から出射される紫外線の必要量を空室筐体1内へ導くための複数の通孔15aが形成されている。さらに、紫外線透過マスク支持枠14には後述する吸排気回路に接続された吸排気管P2が配設されており、枠体の上面および下面にOリング16、17が配設され、気密性が保たれるようにしている。
【0037】
前記紫外線透過マスク支持枠14の上面には、その開口部14bを覆閉するための可動封止盤18が載置される。この可動封止盤18は図示を省略した搬送機構により前後方向または横方向から紫外線透過マスク支持枠14の定位置に搬入され、図1に示すように紫外線透過マスク支持枠14上に載置され、図示を省略した加圧装置により下方向へ圧力が加えられる。これにより、紫外線透過シート11、紫外線透過マスク支持枠14の内面、可動封止盤18の裏面で囲われた空間が第2のチャンバーCH2となる。そして、前記加圧装置による加圧により、Oリング16、17が押し潰される状態となるので、この部分の気密性が十分に保たれる。
【0038】
前記可動封止盤18の上方にはランプハウス19が配設されており、このランプハウス19の内部には、その開口19aに向かって順次、紫外線を放射する紫外線ランプ20、この紫外線ランプ20からの輻射熱を遮断する熱線カットフィルター21、および開閉自在なシャッター22が収容されている。
【0039】
本発明の機構要素は以上のように構成されているが、装置の自動化を達成するには、空室筐体1の基板搬入窓1bに開閉窓を備えることを要する。図4はかかる構成の一例を示すもので、同図に示すように基板搬入窓1bの全面を覆う開閉扉23が、昇降装置24のギヤ機構により動力が伝達され上下動するように配設されている。
【0040】
一方、基板搬入窓1bのフランジ部の全周には、図5に示すように流体圧チューブ25が配設されており、図4(A)に示すように開閉扉23を降下させるときは、流体圧チューブ25内の流体を吸引して開閉扉23との接触を避けるようにする。このようにして基板搬入窓1bが開放されているときに、同図に示すように下基板W1、上基板W2の搬入がロボットアームRB1、RB2により可能となる。
【0041】
そして、下基板W1、上基板W2の搬入が完了すると、図5(B)に示すように開閉扉23を上昇し、流体圧チューブ25に加圧流体を注入して膨張させ、気密状態が得られるようにする。なお、前記により空室筐体1に搬入された上基板W2は、後述するように紫外線透過シート11の透明電極11a、11bへの通電により発生した静電気により静電チャックされ、この紫外線透過シート11に保持されることになる。
【0042】
ここで、本発明の装置の吸排気回路の構成を図6にもとづいて説明する。同図に示すように空室筐体1に接続された給排気管P1は、バルブ26aを介して大気Aに繋がる一方、バルブ26b、26cを介して真空ポンプ28に繋がっている。一方、紫外線透過マスク支持枠14に接続された吸排気管P2は、バルブ27aを介して大気Aに繋がる一方、バルブ27b、27cを介して真空ポンプ28に繋がれている。なおバルブ26cおよびバルブ27cから真空ポンプ28に向かう配管は互いに途中で連結され、1本の配管で真空ポンプ28に繋がっている。また、バルブ26cとバルブ27cは真空圧力調整用のバルブであり、排気後の到達真空圧を制御するために設けられている。
【0043】
本発明の封止装置は以上のように構成されており、下基板W1および上基板W2を空室筐体1内に搬入し、セル構造体30が完成するまでの処理工程を以下に説明するが、下基板W1および上基板W2は、予備成形されたものを準備しなければならないため、まず、その予備成形された下基板W1、上基板W2の加工の態様を液晶パネルの場合の例で以下に説明する。
【0044】
図7に示すように、下基板W1の片面に、縦横所定の間隔を保った複数の液晶表示領域31a内に透明球状のスペーサ31bを散布するか、あるいはフォトスペーサを形成して下基板W1と上基板W2を貼り合わせたとき、両基板W1、W2間の液晶表示領域31aにおけるギャップを確保できるようにしている。さらに、複数の液晶表示領域31aの外側に両基板W1、W2の位置合わせ用のアライメントマーク31cが複数個所設けられている。
【0045】
一方、上基板W2の片面には、図8に示すように縦横所定の間隔を保って複数の閉環状のシール材32aが塗布されている。このシール材32aは紫外線硬化性の性質を有しているともに、シール材32aには予め円柱状のシリカファイバ32bが混入されて両基板W1、W2間のシール部におけるギャップを確保できるようにしている。
【0046】
また、複数のシール材32aが塗布された領域全体を囲むように閉環状のシール材32cが塗布されている。このシール材32cにもシール材32aと同様に予め円柱状のシリカファイバ32bが混入されて、両基板W1、W2の貼り合わせ時に、両基板W1、W2間のシール部におけるギャップを確保できるようにしている。なお、シール材32aとシール材32cに混入されるシリカファイバ32bはいずれも材質、形状、大きさが同一である。
【0047】
さらに、閉環状のシール材32cの外側に、アライメントマーク32dと仮固定用の紫外線硬化樹脂32eが複数個所設けられている。また、各閉環状のシール材32aで囲まれた内側の領域には複数の位置に所定量の液晶材料32fがディスペンサなどの液体定量吐出装置によって滴下されている。なお、本発明の装置において有機ELパネルの形成を対象とする場合は、両基板W1、W2の何れか一方に有機EL層が形成されたものを用い、これに対応する他の基板を封止基板となるようにして形成することが可能となる。
【0048】
なお、液晶パネル、有機ELパネルの製造における両基板W1、W2の素材に透明ガラスが多く採用されているが、電子ペーパーパネルの製造においては透明合成樹脂フィルムが多用される傾向にある。また、3次元ディスプレイ用のセル構造体の製造を目的とする場合は、画像表示面となる基板の表面に予めレンチキュラーシートを貼設しておくことになる。
【0049】
以上のようにして予備成形された複数枚の下基板W1および上基板W2は、図示しない搬入装置により貯蔵され成形の準備が整う。かかる前提における図1に示す各構成要素は、処理工程が開始される初期状態にあり、下基板W1の支持ロッド6およびステージ2は最も降下した位置にある。そして、装置の運転が開始されると、まず、図9(A)に示すように流体圧シリンダー7が作動され、支持ロッド6が同図に示すように上昇する。このときバルブ27bが開放されて第2のチャンバーCH2は真空引きされ、紫外線透過シート11は紫外線マスク15に密着する。
【0050】
つぎに、図5(A)に示すように開放されている基板搬入窓1bからロボットアームRB1により下基板W1が搬入され、前記支持ロッド6の先端6a上に図9(B)に示すように載置される。なお、ロボットアームRB1による下基板W1の搬入を先に行い、その後、流耐圧シリンダー7を作動して支持ロッド6を上昇するようにしてもよい。
【0051】
前記工程により支持ロッド6の先端6aに下基板W1が載置されると、図9(C)に示すように支持ロッド6が降下し、下基板W1がステージ2に接近した位置に配置される。下基板W1が図9(C)の配置状態になると、ロボットアームRB2により図9(D)に示すように上基板W2が搬入される。なお、上基板W2の搬入に際し、アライメントカメラ10が下基板W1のアライメントマーク31cと上基板W2のアライメントマーク32dを検出し、この画像信号に基づくロボットアームRB2による微調整により両基板W1、W2の水平方向のアライメントが可能となる。
【0052】
以上のようにして上基板W2が搬入されると、紫外線透過シート11の透明電極11a、11bに電流が流されて静電気が発生し、上基板W2を吸着して静電チャックが行われ、図9(E)に示すように紫外線透過シート11に上基板W2が確保される。これと同時に開閉扉23が上昇し、図5(B)に示すように流体圧チューブに加圧流体が注入されて膨張することにより、この部分が気密状態となり、第1のチャンバーCH1が密閉された状態となる。
【0053】
そして、この状態においてバルブ26bが開放され、第1のチャンバーCH1の真空引きが開始され、バルブ26cの調整により約10Pa(パスカル)までの高真空度となるようにする。なお、このとき、紫外線透過シート11が第1のチャンバーCH1側へ引き込まれないように、バルブ27cを調整して第2のチャンバーCH2が負圧とならないようにする。
【0054】
このようにして、第1のチャンバーCH1を高真空度とするのは、特に有機ELパネルを製作する場合において有意であり、排気に伴い第1のチャンバーCH1内の酸素や湿気、そして空気中の不純物を除去することができ、歩留まりを高くすることができる。
【0055】
前記工程により高真空度で第1のチャンバーCH1の排気が完了すると、図9(F)に示すように流体圧シリンダー7を作動し、支持ロッド6により上基板W2のシール材32cに下基板W1が接触するまで上昇させて仮固定を行う。これと同時に、第1のチャンバーCH1の真空度を一例として約50Paまでバルブ26cを調整して高め、バルブ29aを開いてアルゴンまたは窒素ガスなど十分に乾燥させた不活性ガスGをガス供給手段29から導入する。
【0056】
図9(G)の工程は、ステージ2をさらに上昇しつつ、第1のチャンバーCH1の真空度を約100Paまで高めた状態を示す。このとき、ステージ2が上昇して下基板が載置された状態となり、更に図9(H)の工程においてステージが最高位に維持しつつ、バルブ26cを調整して第1のチャンバーCH1の真空度が約50kPaになるまで高める。なお、図9(G)および図9(H)の工程に至ると、上基板W2が紫外線透過シート11に確保されていることから、ステージ2を微動させて正確なアライメントが可能となる。
【0057】
図9(I)の工程は、第1のチャンバーCH1内の真空度を約50kPaに維持した状態でバルブ26bを閉止するとともに、バルブに27aを開放して大気Aを第2のチャンバーCH2に導入した状態を示す。これにより、大気Aが第2のチャンバーCH2に充満すると、大気圧は約101kPaであることから、第1のチャンバー1内が負圧となり、第2のチャンバーCH2正圧が通孔15aを介して紫外線透過シート11を押し下げ、上基板W2の全面に密着して加圧力が加わる。
【0058】
図9(J)の工程は、可動封止盤18を搬送機構により紫外線透過マスク支持枠14の上面から移動して除去した状態を示すもので、この可動封止盤18が除去されても紫外線透過シート11の上面は依然大気圧となっているため、第1のチャンバーCH1内の負圧状態は維持されることになる。したがって、この状態においても、紫外線透過シート11による第2の基板W2への加圧力に変化は生じない。
【0059】
このようにして、上基板W2へ大気圧が加わると、上基板W2が下基板W1側へ移動し、両基板W1、W2のギャップが縮まる。これが液晶パネルを形成している場合であると、両基板W1、W2間のセルギャップはシリカファイバ32bとスペーサ31bによって定まり、例えば、5μm程度に接近する。そして、両基板W1、W2およびシール材32aで囲まれた領域には液晶材料32fが満たされている。
【0060】
つぎに、図9(K)の工程において、シャッター22が所定時間開き、予め点灯させておいた紫外線ランプの熱線カットフィルター21を介した紫外線光UVの紫外線マスク15で定められる必要光量が紫外線透過シート11を透過して上基板W2に照射される。これにより、下基板W1と上基板W2間に位置するシール材32a、32cが硬化し、所定のセルギャップを有するセル構造体30が完成する。
【0061】
このようにして、セル構造体30が完成すると、バルブ26bが閉止され、バルブ26aが開放されることにより、図9(L)に示すように第1のチャンバーCH2内に大気Aが導入される。これと同時に、紫外線透過シート11の透明電極11a、11bへの直流電流の印加を断つことにより、静電気の発生が終了して静電チャックが解除される。そして、ステージ2を初期位置まで降下させ、開閉扉23を昇降装置24により移動し、空室筐体1の基板搬入窓1bから流体圧シリンダー7の支持ロッド6の先端6aにより支持されているセル構造体30をロボットアームRB1またはRB2により取り出すことができる。
【0062】
以上詳細に説明したように、本発明の封止装置では、紫外線透過シート11に透明電極11a、11bを形成し、これに電流を流して静電気を発生させ、上基板W2の静電チャックが可能となるようにしたので、上基板W2の定位置への固定が確実となる。そして、上基板W2が下基板W1を押圧する際、下基板W1を載置したステージ2に傾きがあっても、上基板が紫外線透過シート11とともにステージ2の傾きに倣う状態となるので、圧力の偏在を回避することができ、上下基板W1、W2間のセルギャップが一定となり、品質および歩留まりを向上することができる。
【0063】
なお、本発明の封止装置では、空室筐体1上面の開口部を紫外線透過シート11で覆閉し、紫外線マスク15を収容した紫外線透過マスク支持枠14を載置するようにし、この紫外線透過マスク支持枠14の開口部を覆閉する可動封止盤18を載置するようにした。そして、空室筐体1に基板搬入窓1bを形成してこの全面に開閉扉を配設するようにしたことにより、空室筐体1を可能な限り小型化することができることから真空状態を形成するための排気処理を迅速に行うことができる。
【0064】
また、本発明の封止装置の構成では、空室筐体1内に下基板W1を支持して昇降可能となるようにした支持ロッド、静電チャック機能を有する紫外線透過シート、セル構造体を載置して昇降可能となるようにしたステージを備え、さらに空室筐体1の任意の側面に第1のチャンバーCH1の気密状態を保つことができるようにした開閉扉を設けるようにしたので、上下基板W1、W2の搬入、そして成形されたセル構造体30の搬出の自動化が可能となり、人為的作業の介在しない連続自動生産が可能となる。
【0065】
なお、本発明の以上の説明において、その実施例として液晶パネル、有機ELパネルを例示して説明したが、他の製品分野においてこれらに近似する製品の製造が可能であり、広範に応用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・・・・空室筐体
2・・・・・・ステージ
3・・・・・・ロッド
4・・・・・・ギヤボックス
5・・・・・・モータ
6・・・・・・支持ロッド
7・・・・・・流体圧シリンダー
8a・8b・・クランプ端子
10・・・・・アライメントカメラ
11・・・・・紫外線透過シート
12・・・・・供給ロール
13・・・・・巻取ロール
14・・・・・紫外線透過マスク支持枠
15・・・・・紫外線マスク
16・17・・・Oリング
18・・・・・可動封止盤
19・・・・・ランプハウス
20・・・・・紫外線ランプ
21・・・・・熱線カットフィルター
22・・・・・シャッター
23・・・・・開閉扉
24・・・・・昇降装置
25・・・・・流体圧チューブ
28・・・・・真空ポンプ
30・・・・・セル構造体
W1・・・・・下基板
W2・・・・・上基板
CH1・・・・第1のチャンバー
CH2・・・・第2のチャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布されたシール材を硬化させて上下一対の基板を貼り合わせる封止方法であって、
下基板を封止装置内のステージ上に搬入する工程と、
前記封止装置内の前記下基板上に上基板を搬入する工程と、
前記上基板の上方に配設した紫外線透過シートに形成した透明電極に電流を通じて静電気を発生させることにより前記上基板を静電チャックする工程と、
前記紫外線透過シートにより前記上基板を下基板に向けて押圧した状態で紫外線を照射し、予め塗布されているシール材を硬化させる工程により、
前記上基板と下基板を貼り合わせてセル構造体が得られるようにしたことを特徴とする封止方法。
【請求項2】
上下基板の少なくとも一方の素材が透明ガラスまたは透明合成樹脂であることを特徴とする請求項1記載の封止方法。
【請求項3】
画像表示面となる基板の表面に予めレンチキュラーシートが貼設されていることを特徴とする請求項1記載の封止方法。
【請求項4】
上面に開口部が形成され吸排気口を有するとともに、内部にステージと下基板の支持ロッドを昇降可能に設けた空室筐体と、
前記空室筐体の開口部を覆う柔軟性および透光性を有するとともに、前記開口部に臨む透明電極が形成された紫外線透過シートと、
外形が前記空室筐体と略一致する形状であって吸排気口を有するとともに、紫外線透過マスクを内部に収容して前記紫外線透過シート上に載置される紫外線透過マスク支持枠と、
前記紫外線透過マスク支持枠の上面の開口部を覆う可動封止盤と、
前記可動封止盤の上方に配置された光硬化型のシール材に紫外線を照射する光源部を備え、
前記空室筐体上に紫外線透過シートを介して紫外線透過マスク支持枠および可動封止盤が配置されたとき、前記紫外線透過シートを境界とする下部の空室筐体内が減圧可能な第1のチャンバーとなる一方、前記紫外線透過シートを境界とする上部の紫外線透過マスク支持枠および可動封止盤に囲われた内部が減圧可能な第2のチャンバーとなるようにし、前記空室筐体内に上基板が搬入されたとき、前記紫外線透過シートの透明電極に電流を通じて静電気を発生させ、前記上基板を静電チャックするようにしたことを特徴とする封止装置。
【請求項5】
上基板と下基板のアライメント調整をするためのアライメントカメラをステージの側部に設けたことを特徴とする請求項5記載の封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−168386(P2012−168386A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29861(P2011−29861)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(399041561)常陽工学株式会社 (36)
【Fターム(参考)】