説明

封止用粘着シート、電子デバイス、及び有機デバイス

【課題】水蒸気透過率が非常に低く、優れたガスバリア性能を有し、長時間の駆動や屋外での駆動環境によっても粘着剤層が劣化せず、封止している素子の特性の劣化を抑制しうる封止用粘着シート、並びに、この封止用粘着シートを具備する電子デバイス及び有機デバイスを提供すること。
【解決手段】基材の少なくとも片面にガスバリア層と粘着剤層とを有する封止用粘着シートであって、前記粘着剤層が、第1成分として重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、第2成分として重量平均分子量1000〜25万のポリブテン樹脂(B)、第3成分としてヒンダードアミン系光安定剤(C)及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含み、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、ポリブテン樹脂(B)を10〜100質量部含む粘着剤組成物からなる、封止用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用粘着シート、並びに、この封止用粘着シートを具備する電子デバイス及び有機デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロニクスは、塗布や印刷プロセスを用いて、フレキシブルなプラスチック基板上に、室温に近い低温でディスプレイ、回路、電池等を形成できる技術として注目されており、さまざまな有機デバイス、液晶ディスプレイ、電子ペーパー、薄膜トランジスタ等の研究開発が進められている。
例えば、有機デバイスで用いられる有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機電荷輸送層や有機発光層を積層させた有機層を設けたものであり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。また、有機デバイスは、プラスチックフィルムを基板として用いることで、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するディスプレイとしても期待されている。
【0003】
ところで、有機EL素子は、一定時間駆動した場合、発光輝度、発光効率、発光均一性等の発光特性が初期に比べて劣化するという問題がある。この問題の原因としては、有機EL素子内に侵入した酸素や水蒸気等による電極の酸化や有機物の変性、駆動時の熱による有機材料の酸化分解等が考えられる。
また、構造体の界面が剥離する現象も頻繁に発生する。その現象は、酸素や水蒸気等の影響や、駆動時の発熱により高温下に曝されると、各構成要素の熱膨張率の違いにより構造体の界面で応力が発生することが原因と考えられる。
【0004】
上記問題を解決するために、有機EL素子を封止し、酸素や水蒸気との接触を抑制するため、例えば、ガラス基板上に形成された有機EL素子に対して耐湿性を有する光硬化性樹脂で覆い、かつ光硬化性樹脂層の上部に透水性の小さい基板を固着させる方法が開示されている(特許文献1参照)。また、対向する透明基板をフリットガラスからなるシール材で封止する方法(特許文献2参照)、基板とシールド材によって気密空間を形成する際に、両者をカチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤で接着する方法(特許文献3参照)、互いに対向する2つの電極間に発光層を有する積層構造体の外表面に絶縁性無機化合物からなる保護層を設け、その保護層の外側に高分子フィルムからなるシールド層を設けることで、有機EL素子を封止すると接着層により形成された封止フィルムにより、有機EL素子を封止する方法(特許文献4参照)等が開示されている。
また、近年、有機EL素子に対して、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するために、ガラス板に代えてプラスチックフィルムを用いて封止する方法について検討されている。例えば、防湿性高分子フィルムと接着層から形成された封止フィルムを有機EL素子の外表面上に被覆する方法(特許文献5参照)や、イソブチレン樹脂を含む接着性封止用組成物フィルムにより有機EL素子を封止する方法(特許文献6参照)、有機EL素子の基板上に光硬化性樹脂層による平滑な一次膜を形成する方法(特許文献7参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−182759号公報
【特許文献2】特開平10−74583号公報
【特許文献3】特開平10−233283号公報
【特許文献4】特開平5−89959号公報
【特許文献5】特開平5−101884号公報
【特許文献6】特表2009−524705号公報
【特許文献7】特許第4419012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のプラスチックフィルムを用いた上記方法では、水蒸気や酸素等を透過しやすく、有機EL素子等の素子の劣化を起こしやすいという問題を有している。また、長時間の駆動や屋外での駆動環境から、高温下又は紫外線照射下に曝されるころにより、接着層自体が劣化し、それに伴い封止している有機EL素子等の素子の特性も劣化するという問題を有している。
本発明は、水蒸気透過率が非常に低く、優れたガスバリア性能を有し、紫外線照射に曝された場合においても、封止している素子の特性の劣化を抑制しうる封止用粘着シート、並びに、この封止用粘着シートを具備する電子デバイス及び有機デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、基材上に、少なくともガスバリア層と粘着剤層を有する封止用粘着シートであって、粘着剤層が特定の樹脂及び添加剤を含む粘着剤組成物からなる封止用粘着シートが上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[7]を提供するものである。
[1]基材上に、少なくともガスバリア層と粘着剤層とを有する封止用粘着シートであって、前記粘着剤層が、第1成分として重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、第2成分として重量平均分子量1000〜25万のポリブテン樹脂(B)、第3成分としてヒンダードアミン系光安定剤(C)及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含み、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、ポリブテン樹脂(B)を10〜100質量部含む粘着剤組成物からなる、封止用粘着シート。
[2]40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が、0.5g/(m2・day)以下である、上記[1]に記載の封止用粘着シート。
[3]ヒンダードアミン系光安定剤(C)が、3級のヒンダードアミン基を有するヒンダードアミン系光安定剤である、上記[1]又は[2]に記載の封止用粘着シート。
[4]ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)が、ヒンダードフェノール基のべータ位が2つともターシャリーブチル基で置換されたヒンダードフェノール系酸化防止剤である、上記[l]〜[3]のいずれか1項に記載の封止用粘着シート。
[5]電子デバイスに用いられる、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の封止用粘着シート。
[6]上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の封止用粘着シートを具備する、電子デバイス。
[7]少なくとも一対の対向する電極と該電極間に配置される有機層とを有する構造体、及び該構造体の上部、下部、及び/又は周囲に配置された[1]〜[4]のいずれか1項に記載の封止用粘着シートを具備する、有機デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明の封止用粘着シートは、水蒸気透過率が非常に低く、優れたガスバリア性能を有し、紫外線照射に曝された場合においても、封止している素子の特性の劣化を抑制しうる。そのため、本発明の封止用粘着シートは、電子デバイス、有機デバイスの封止用の部材として好適であり、この封止用粘着シートを具備する電子デバイス及び有機デバイスは、長時間の駆動や屋外での駆動環境によっても、素子の特性の劣化を抑制しうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の封止用粘着シートの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の封止用粘着シートを具備する有機デバイスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の封止用粘着シートは、基材上に、少なくともガスバリア層と粘着剤層を有する。
図1は、本発明の封止用粘着シートの構成の一例を示す図である。本発明の封止用粘着シートは、少なくとも、基材、ガスバリア層、粘着剤層を有するが、積層する順序は特に限定されない。例えば、図1の(A1)のように、基材2の片面にガスバリア層3を積層し、そのガスバリア層3の上に粘着剤層4が積層されるような封止用粘着シート1であってもよい。他に、図1の(A2)の封止用粘着シート1aのように、基材2の片面にガスバリア層3を積層し、基材2のガスバリア層3が積層された面とは反対の面に、粘着剤層4を形成してもよい。
また、図1の(B)のように、基材2の片面にガスバリア層3、粘着剤層4aを積層した上で、反対側の基材に粘着剤層4bを設けて、両面に粘着剤層を有する封止用粘着シート1aとすることもできる。
さらに、図1の(C)のように、2つのガスバリア層3a、3bに対し、粘着剤層4aを介して積層した両面に粘着剤層を有する封止用粘着シート1bとしてもよい。この封止用粘着シート1bは、粘着剤層4aが2つのガスバリア層3a、3bを接着するだけでなく、外部から衝撃が加わった場合に、衝撃を吸収し、ガスバリア層3a、3bを保護する役割も担うことができる。
なお、図1には示してないが、基材、ガスバリア層、粘着剤層以外の「その他の層」を設けてもよい。その他の層が積層される位置は、特に限定されない。
以下、本発明の封止用粘着シートを構成する(1)粘着剤層、(2)基材、(3)ガスバリア層、(4)その他の層について説明する。
【0011】
〔(1)粘着剤層〕
粘着剤層は、後述の基材、ガスバリア層、又はその他の層の上に積層されるが、基材に対して、片面若しくは両面に有していてもよい。
【0012】
本発明の粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、第1成分として重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、第2成分として重量平均分子量1000〜25万のポリブテン樹脂(B)、第3成分としてヒンダードアミン系光安定剤(C)及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含む。
本発明の粘着剤組成物は、これら特定の樹脂を含むため、形成される粘着剤層の水蒸気透過率が非常に低く、高温下又は紫外線照射下での耐久性にも優れている。
なお、本発明の粘着剤組成物は、これら特定の樹脂の他に、その他の樹脂及び添加剤を含んでもよい。以下、本発明の粘着剤組成物の含まれる(A)〜(D)成分、及びその他の樹脂及び添加剤について説明する。
【0013】
<ポリイソブチレン系樹脂(A)>
ポリイソブチレン系樹脂(A)(以下「樹脂(A)」ともいう)は、主鎖又は側鎖にポリイソブチレン骨格を有する樹脂であり、下記構成単位(a)を有する樹脂である。
【0014】
【化1】

【0015】
樹脂(A)としては、例えば、イソブチレンの単独重合体であるポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン、イソブチレンとn−ブテン、イソブチレンとブタジエンの共重合体、これら共重合体を臭素化又は塩素化したハロゲン化共重合体等が挙げられる。なお、樹脂(A)が共重合体の場合、イソブチレンからなる構成単位が、全モノマーの中で一番多く含まれているものとする。
【0016】
樹脂(A)の合成方法としては、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒の存在下で、イソブチレン等のモノマー成分を重合する方法が挙げられる。また、樹脂(A)は、市販品も使用することもできる。市販品としては、Vistanex(Exxon Chemical Co.製)、Hycar(Goodrich社製)、Oppanol(BASF社製)等が挙げられる。これらの樹脂(A)は、単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0017】
樹脂(A)の重量平均分子量は、水蒸気透過率を低下させ、凝集力を向上させる観点から、30万〜50万であるが、好ましくは32万〜48万、より好ましくは33万〜45万である。重量平均分子量が30万より小さいと、粘着剤組成物の凝集力が十分に得られず、被着体を汚染する可能性がある。また、50万より大きくなると、粘着剤組成物の凝集力が高くなりすぎて、柔軟性や流動性が低くなり、被着体との濡れが十分に得られ難い。また、粘着剤組成物を調製する際に、分子量が高すぎると溶媒に対する溶解性が低下する場合がある。
なお、本願でいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値である(以下の記載においても同様)。
【0018】
<ポリブテン樹脂(B)>
ポリブテン樹脂(B)(以下「樹脂(B)」ともいう)は、長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合物質である。樹脂(B)は、樹脂(A)と良好に相溶し、適度に樹脂(A)を可塑化させることで、被着体に対する濡れ性を高め、粘着物性、柔軟性、保持力等を向上させることができる。
樹脂(B)としては、ポリブテン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体エラストマー、プロピレン・1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン・1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー等のエチレンプロピレンゴム等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂(A)と良好に相溶し、適度に樹脂(A)を可塑化させ、柔軟性や流動性を高くさせる観点から、ポリブテン共重合体が好ましい。また、ポリブテン共重合体としては、イソブテン、1−ブテン、2−ブテンのうち少なくとも2つを共重合させたものが挙げられるが、イソブテン・1−ブテン共重合体がより好ましい。
【0019】
樹脂(B)の合成方法としては、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒の存在下で、樹脂(B)を構成するモノマー成分を重合する方法が挙げられる。
また、樹脂(B)は、市販品も使用することもできる。市販品としては、例えば、出光ポリブテン(出光興産社製)、ニッサンポリブテン(日本油脂社製)、日石ポリブテン(新日本石油社製)等が挙げられる。これらの樹脂(B)は、単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0020】
樹脂(B)の重量平均分子量は、樹脂(A)と良好に相溶し適度に樹脂(A)を可塑化させ、粘着剤層の水蒸気透過率等の物性に影響を与えない観点から、1000〜25万であるが、好ましくは1200〜22万、より好ましくは1500〜20万である。
重量平均分子量が1000より小さいと、樹脂(B)が低分子成分として分離して被着体を汚染したり、高温下で発生するアウトガスが増加する等、物性に悪影響を及ぼす恐れがある。一方、25万より大きいと、樹脂(A)を十分な可塑化させることができず、被着体との濡れが十分に得られ難い。
【0021】
ポリブテン樹脂(B)の含有量は、粘着力、凝集力、及び水蒸気透過率とのバランスの観点から、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、10〜100質量部であるが、好ましくは15〜100質量部、より好ましくは25〜100質量部である。
10質量部未満であると、樹脂(A)を十分に可塑化させることができず、被着体との濡れが十分でないため好ましくない。一方、100質量部を超えると、凝集力が低下すると共に、紫外線照射に対する耐久性が劣るため好ましくない。
【0022】
<ヒンダードアミン系光安定剤(C)>
本発明では、光安定剤として、ヒンダードアミン系光安定剤(C)(以下「光安定剤(C)」ともいう)を用いる。ヒンダードアミン系光安定剤は、1分子中に下記式(c)で表わされる基(ヒンダードアミン基)を少なくとも1つ有する。
【0023】
【化2】

【0024】
式(c)中、R1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
1分子中に式(c)で表わされる基が複数あるときは、複数の基においてR1は同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
光安定剤(C)としては、例えば、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ、ポリ[{6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、シクロヘキサンと過酸化N−ブチル2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン−2,4,6−トリクロロ1,3,5−トリアジンとの反応生成物と2−アミノエタノールとの反応生成物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、N,N’、N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、光安定剤としての性能に優れ、粘着剤組成物の紫外線に対する耐久性を向上させるという観点から、式(c)中のR1がアルキル基である3級のヒンダードアミン基であることが好ましい。3級のヒンダードアミン基を有するヒンダードアミン系光安定剤は、特に光安定剤としての性能が優れている。
このような光安定剤(C)としては、例えば、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
なお、これらの光安定剤(C)は、単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0027】
光安定剤(C)の含有量は、光安定剤としての性能を発揮して粘着剤組成物の紫外線に対する耐久性を向上させる観点から、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.25〜1.0質量部、より好ましくは0.3〜0.9質量部、更に好ましくは0.4〜0.8質量部である。光安定剤(C)の含有量が0.25質量部以上であれば、粘着剤組成物の耐久性を十分に向上させることができ、1.0質量部以下であれば、他の成分と分離してしまうことも抑制できる。
【0028】
<ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)>
本発明では、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)(以下「酸化防止剤(D)」ともいう)を用いる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、1分子中に下記式(d)で表わされる基(ヒンダードフェノール基)を少なくとも1つ有する。
【0029】
【化3】

【0030】
式(d)中、R2、R3は、各々、水素原子、直鎖状アルキル基、又は分枝状アルキル基を表す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。分枝状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基等が挙げられる。
1分子中に式(d)で表わされる基が複数あるとき、R2及びR3は、複数の基において、同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
酸化防止剤(D)としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)1,3,5−トリアジン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、酸化防止剤(D)は、粘着剤組成物の高湿熱に対する耐久性を向上させるという観点から、式(d)中のR2及びR3が分枝状アルキル基であるヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、ヒンダードフェノール基のベータ位が2つともターシャリーブチル基であるヒンダードフェノール系酸化防止剤がよりことが好ましい。ヒンダードフェノール基のベータ位が2つともターシャリーブチル基であるヒンダードフェノール系酸化防止剤は、本発明のような長時間の駆動や屋外での駆動環境下で用いる場合において、特に酸化防止剤としての性能に優れている。
このような酸化防止剤(D)としては、例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)1,3,5−トリアジン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。なお、酸化防止剤(D)の市販品としては、ヨシノックスBHT(吉富ファインケミカル社製)、IRGANOX565(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、IRGANOX1010等が挙げられる。
これらの酸化防止剤(D)は、単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
酸化防止剤(D)の含有量は、粘着剤組成物の高湿熱に対する耐久性を向上させる観点から、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.25〜1.0質量部、より好ましくは0.3〜0.9質量部、更に好ましくは0.4〜0.8質量部である。酸化防止剤(D)の含有量が0.25質量部以上であれば、粘着剤組成物の耐久性を十分に向上させることができ、1.0質量部以下であれば、他の成分と分離してしまうことも抑制できる。本発明の粘着剤組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤(C)及びヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)の少なくともいずれかを含んでいる。また、用途に応じて併用して用いてもよい。
【0034】
<その他の樹脂>
本発明の粘着剤組成物は、上記(A)〜(D)の他、その他の樹脂として、環状オレフィン系重合体(E)(以下「重合体(E)」ともいう)を含むことが好ましい。重合体(E)は、塗工時の粘度の調製、可塑性効果による柔軟性の向上、濡れ性向上による初期粘着力の向上、凝集力の増大等において有用であり、水蒸気透過率の低減効果も有する。
重合体(E)は、環状オレフィン系単量体に由来する繰り返し単位を含有する。環状オレフィン系単量体の結合様式は、主鎖中に環状構造を導入しうるものであればとくに限定されず、該単量体の炭素−炭素不飽和結合を重合したもの、環状共役ジエンを付加重合したもの等が挙げられる。重合体(E)としては、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体を付加重合させた重合体、環状オレフィン以外の共重合可能な単量体と共重合させた重合体、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体を開環重合させた開環重合体等が挙げられる。また、単環の環状オレフィン系単量体を付加重合させた重合体、シクロペンタジエンやシクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系単量体を1,4−付加重合させた重合体、単環の環状オレフィン系単量体及び環状共役ジエン系単量体と、環状オレフィン以外の共重合可能な単量体とを共重合させた重合体も挙げられる。
【0035】
また、これらの重合体(E)は、さらに水素添加させてもよい。具体的には、粘着付与剤として知られる石油樹脂を水素添加した、いわゆる水添石油樹脂等が挙げられる。水添石油樹脂としては、水添化率を異にする部分水添樹脂から完全水添樹脂まで挙げることができるが、樹脂(A)及び樹脂(B)との相溶性、水蒸気透過率、高湿熱や紫外線に対する耐久性の点から、完全水添樹脂が好ましい。
水添石油樹脂としては、例えば、水添テルペン系樹脂、水添ロジン及び水添ロジンエステル系樹脂、不均化ロジン、不均化ロジンエステル系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂の水添加樹脂である水添ジシクロペンタジエン系樹脂、部分水添芳香族変性ジシクロペンタジエン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α−又はβ−メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂を水添した樹脂、上記したC5留分とC9留分の共重合石油樹脂を水添した樹脂等が挙げられる。これらの中でも、低透湿性の観点と、樹脂(A)及び樹脂(B)が高湿熱や紫外線により変色(黄変)を防ぎ、透明性を確保する観点から、水添ジシクロペンタジエン系樹脂が好ましい。
なお、これらの重合体(E)は、単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0036】
重合体(E)の重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、より好ましくは500〜3000である。重量平均分子量が5,000以下であれば、優れた粘着性を付与でき、被着体との濡れを十分に得ることできる。また、樹脂(A)との相溶性も良好となる。
重合体(E)の含有量は、粘度、柔軟性、濡れ性、凝集力、及び水蒸気透過率の低減効果の観点から、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは10〜300質量部、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜80質量部である。重合体(E)の含有量が10質量部以上であれば、優れた粘着性を付与でき、被着体との濡れを十分に得ることができ、300質量部以下であれば、粘着剤組成物の凝集力を十分に得ることができ、被着体に貼り付ける場合、剥がれを防止することができる。
【0037】
<その他の添加剤>
本発明の粘着剤組成物は、粘着物性等を阻害しない範囲において、更にその他の添加剤として、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、樹脂安定剤、充てん剤、顔料、増量剤等を含んでもよい。これらの添加剤は、単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
ヒンダートアミン系光安定剤(C)以外の光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の光安定剤等が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)以外の酸化防止剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物等が挙げられる。これら(C)以外の光安定剤、及び(D)以外の酸化防止剤のそれぞれの含有量は、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部である。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、オキサゾリアックアシッドアミド化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。これら紫外線吸収剤の含有量は、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部である。
樹脂安定剤としては、例えば、イミダゾール系樹脂安定剤、ジチオカルバミン酸塩系樹脂安定剤、リン系樹脂安定剤、硫黄エステル系樹脂安定剤等が挙げられる。これら樹脂安定剤の含有量は、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量である。
【0038】
本発明の粘着剤組成物は、さらにトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶媒を配合してもよい。有機溶媒を配合する場合、粘着剤組成物の固形分濃度は、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは10〜45質量%、更に好ましくは15〜30質量%である。10質量%以上であれば、溶剤の使用量としては十分であり、60質量%以下であれば、適度な粘度となり、優れた塗工作業性を有する溶液となり得る。
【0039】
本発明の粘着剤層を形成する方法は、特に制限はなく、公知の方法により製造できる。例えば、有機溶媒を配合した粘着剤組成物(溶液)を公知の塗工方法により製造することができる。例えばスピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法により基材や剥離シートの剥離層面に粘着剤組成物を有機溶剤に溶解した溶液を塗工したのち、溶剤や低沸点成分の残留を防ぐために、80〜150℃の温度で30秒〜5分間加熱して製造することができる。
【0040】
形成される粘着剤層の厚さは、特に制限はなく、封止用粘着シートの用途等に応じて適宜選定されるが、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜60μm、更に好ましくは3〜40μmである。0.5μm以上であれば、被着体に対し良好な粘着力が得られ、100μm以下であれば、生産性の面で有利であり、取り扱いやすい封止用粘着シートとなり得る。
【0041】
本発明の粘着剤層の厚み50μmにおける水蒸気透過率は、40℃、90%RH(RH:相対湿度)において、好ましくは10g/(m2・day)以下、より好ましくは8g/(m2・day)以下、更に好ましくは6g/(m2・day)以下である。水蒸気透過率が10g/(m2・day)以下であれば、有機EL素子等の封止に用いた場合、粘着剤層の端部からの水蒸気の入り込みを抑制することができる。なお、水蒸気透過率については公知方法で測定することができる。
また、本発明の粘着剤層は、粘着剤層自体の厚みが薄い場合でも、高い粘着力を有する。粘着剤層の粘着力は、好ましくは3N/25mm以上、より好ましくは5N/25mm以上である。
【0042】
なお、本発明の封止用粘着シートにおいて、粘着剤層上に、所望により剥離シートを設けてもよいが、この剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又上記基材にセルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル−スチレン樹脂等で目止め処理を行った紙基材、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムのようなプラスチックフィルム、及びこれらのプラスチックフィルムに易接着処理を施したフィルム等に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離剤層を形成させるために用いる剥離剤としては、例えばオレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が用いられる。
剥離剤層の厚さは、特に限定されないが、剥離剤を溶液状態で塗工する場合は好ましくは0.05〜2.0μmであり、より好ましくは0.1〜1.5μmである。剥離剤層として、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いて形成させる場合は、剥離剤層の厚さは、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜40μmである。
【0043】
〔(2)基材〕
本発明の基材としては、本発明の目的に合致するものであれば特に制限されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等のポリアミド、ルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物等のシクロオレフィン系ポリマー等、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレートの樹脂からなるシートが挙げられる。また、アルミニウム箔、銅箔や鉄箔等の金属箔、ガラス等を基材として用いてもよい。
これらの中でも、透明性に優れ、汎用性の観点から、ポリエステル、ポリアミド又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステル又はシクロオレフィン系ポリマーがより好ましい。
【0044】
基材の厚さは、特に制限はないが、取り扱いやすさの観点から、好ましくは2〜200μm、より好ましくは10〜150μm、更に好ましくは20〜100μmである。
【0045】
〔(3)ガスバリア層〕
ガスバリア層の材料としては、酸素及び水蒸気の透過を阻止するものであれば制約はない。例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ等の金属、窒化珪素、酸化珪素、酸窒化珪素、ポリシラザン化合物、ポリカルボシラン化合物、ポリシラン化合物、ポリオルガノシロキサン化合物、テトラオルガノシラン化合物等の珪素化合物、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム等のアルミニウム化合物、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフロロエチレン等の樹脂等が挙げられる。
上記の中でもガスバリア層の材料としては、ガスバリア性の点から、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ等の金属、窒化珪素、酸化珪素、酸窒化珪素、ポリシラザン化合物、ポリカルボシラン化合物、ポリシラン化合物、ポリオルガノシロキサン化合物、テトラオルガノシラン化合物等の珪素化合物、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム等のアルミニウム化合物、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物が好ましい。中でも、透明性の点から、ポリシラザン化合物、ポリカルボシラン化合物、ポリシラン化合物、ポリオルガノシロキサン化合物、及びテトラオルガノシラン化合物がより好ましい。
【0046】
(ポリシラザン化合物)
ポリシラザン化合物は、分子内に、(−Si−N−)結合を含む繰り返し単位を有する高分子であり、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0047】
【化4】

【0048】
式(1)中、R4、R5、R6は、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。
これらの中でも、R4〜R6としては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
また、式(1)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン化合物としては、入手容易性及び優れたガスバリア性を有する層を形成できる観点から、R4〜R6が全て水素原子である無機ポリシラザン、又はR4〜R6の少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンが好ましく、無機ポリシラザンがより好ましく、ペルヒドロポリシラザンが更に好ましい。
ポリシラザン化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50,000であるのが好ましい。
【0049】
(ポリカルボシラン化合物)
ポリカルボシラン化合物は、分子内の主鎖に、(−Si−C−)結合を含む繰り返し単位を有する高分子化合物であり、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0050】
【化5】

【0051】
式(2)中R7、R8は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、又は1価の複素環基を表す。R7、R8は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。また、R9は、アルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。
【0052】
これらの中でも、式(2)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシラン化合物としては、R7、R8が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、R9がアルキレン基又はアリーレン基であるものが好ましく、R7、R8がそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、R9がアルキレン基であるものがより好ましく、R7、R8がそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R9が炭素数1〜6のアルキレン基であるものが更に好ましい。
ポリカルボシラン化合物の重量平均分子量は、通常400〜12000である。
【0053】
(ポリシラン化合物)
ポリシラン化合物は、分子内に、(−Si−Si−)結合を含む繰り返し単位を有する高分子化合物である。かかるポリシラン化合物としては、下記式(3)で表される構造単位から選択された少なくとも一種の繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0054】
【化6】

【0055】
式(3)中、R10、R11は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、シリル基、又はハロゲン原子を表す。
【0056】
用いるポリシラン化合物としては、式(3)において、R10及びR11が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基又はシリル基であるものが好ましく、R10及びR11が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であるものがより好ましく、R10及びR11が、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又はアリール基であるものが更に好ましい。
【0057】
用いるポリシラン化合物の形態は特に制限されず、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシラン等)や、環状ポリシラン等の単独重合体であっても、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体等の共重合体であってもよい。
ポリシラン化合物が非環状ポリシランである場合は、ポリシラン化合物の末端基(末端置換基)は、水素原子であっても、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。
【0058】
ポリシラン化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは300〜100000、より好ましくは400〜50000、更に好ましくは500〜30000である。
【0059】
(ポリオルガノシロキサン化合物)
ポリオルガノシロキサン化合物は、主鎖構造に制限は無く、直鎖状、ラダー状、籠上のいずれであってもよい。
例えば、直鎖状の主鎖構造としては下記式(4)で表される構造が、ラダー状の主鎖構造としては下記式(5)で表される構造が、籠状の主鎖構造としては下記式(6)で表される構造が例示される。
【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
【化9】

【0063】
式(4)〜(6)中、Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基等の非加水分解性基を表す。式中のRx、Ry、Rzは、それぞれ同一でも相異なっていてもよいが、式(1)中のRxが2つとも水素原子であることはない。
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、それぞれ独立して、無置換若しくは置換基を有する、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、3−グリシドキシプロピル基、又はフェニル基が特に好ましい。
【0064】
(テトラオルガノシラン化合物)
テトラオルガノシラン化合物は、ケイ素元素に4個の加水分解性基が結合した化合物であり、具体的には、式(7):SiX4で表される化合物である。
式(7):SiX4中、Xは加水分解置換基を表し、互いに同一であっても相異なっていてもよい。
Xとしては、式(8):OR(Rは炭素数1〜10の炭化水素基、又はアルコキシ基を表す。)で表される基、式(9):OSi(Ra)(Rb)(Rc)で表される基(Ra、Rb、Rcはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又はフェニル基を表す。)、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0065】
テトラオルガノシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシラン、テトラブトキシシラン等のテトラ(C1〜C10)アルコキシシラン;トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン等のトリ(C1〜C10)アルコキシハロゲノシラン;ジメトキジシクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン等のジ(C1〜C10)ジハロゲノアルコキシシラン;メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン等のモノ(C1〜C10)アルコキシトリハロゲノシラン;テトラクロロシラン、テトラブロモシラン等のテトラハロゲノシラン;が挙げられる。ここで、(C1〜C10)は炭素数が1〜10であることを表す。
これらのテトラオルガノシラン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
これらの中でも、取り扱い性に優れ、ガスバリア性の観点から、テトラ(C1〜C10)アルコキシシランが好ましい。なお、これらのテトラオルガノシラン化合物は、適当な溶媒中、水及び必要に応じて触媒の存在下で、加水分解・脱水縮合させることが好ましい。
【0067】
テトラオルガノシラン化合物の加水分解・脱水縮合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、機械的強度にも優れるガスバリア層を得る観点から、好ましくは200〜50000、より好ましくは200〜30000、更に好ましくは200〜10000である。重量平均分子量が200以上であれば、十分な被膜形成能力を有し、50000以下であれば、十分な機械強度を有する膜が形成される。
【0068】
ガスバリア層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、上述の材料を有機溶剤に溶解した溶液を、上記基材上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
また、他の形成方法としては、上記材料を蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等により基材上に形成する方法が挙げられる。
なお、以下、基材上にガスバリア層が形成されたものを「ガスバリアフィルム」ともいう。
【0069】
形成されるガスバリア層の厚みは、ガスバリア性能と取り扱い性の観点から、好ましくは20nm〜100μm、より好ましくは30〜500nm、更に好ましくは40〜200nmである。なお、本発明においては、ガスバリア層が、ナノオーダーであっても、十分なガスバリア性能を有する封止用粘着シートを得ることができる。
【0070】
さらに、ガスバリア層の表面に対して、イオンを注入することが好ましい。イオンを注入することで、高い透明性をもったままガスバリア性能を向上させることができる。イオンを注入する工程としては、特に限定されないが、例えば、基材上にガスバリア層を形成した後、該ガスバリア層にイオンを注入する方法が挙げられる。
【0071】
注入されるイオンとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガス;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の金属のイオン等が挙げられる。
これらの中でも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性能と透明性を有する封止用粘着シートを得る観点から、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
なお、イオンの注入量は、封止用粘着シートの使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等を考慮して適宜決定される。
【0072】
イオン注入する方法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法(プラズマイオン注入法)等が挙げられる。これらの中でも、簡便に優れたガスバリア性等を有する封止用粘着シートを得る観点から、プラズマイオン注入法が好ましい。
プラズマイオン注入法は、例えば、プラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、ガスバリア層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、ガスバリア層の表面部に注入して行うことができる。
【0073】
イオンが注入される部分の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、ガスバリア層の厚み、封止用粘着シートの使用目的等に応じて決定すればよいが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmである。
【0074】
このようにして得られたガスバリアフィルムの、ガスバリア層の厚み75nmにおける水蒸気透過率は、40℃、90%RHにおいて、好ましくは0.5g/(m2・day)以下、より好ましくは0.05g/(m2・day)以下である。なお、ガスバリアフィルムの水蒸気等の透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。例えば、ガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、実施例に記載の装置を使用して測定することができる。
【0075】
〔(4)その他の層〕
上述の(1)〜(3)以外のその他の層としては、導電体層、プライマー層等が挙げられる。なお、その他の層が積層される位置は、限定されず、目的に応じて適宜選択される。
<導電体層>
導電体層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。導電体層は、これらの材料からなる層が複数積層されてなる積層体であってもよい。
これらの中でも、透明性の点から、導電性金属酸化物が好ましく、ITOが特に好ましい。
【0076】
導電体層の形成方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。これらの中でも、簡便に導電体層が形成できることから、スパッタリング法が好ましい。
スパッタリング法は、真空槽内に放電ガス(アルゴン等)を導入し、ターゲットと基板との間に高周波電圧あるいは直流電圧を加えて放電ガスをプラズマ化し、該プラズマをターゲットに衝突させることでターゲット材料を飛ばし、基板に付着させて薄膜を得る方法である。ターゲットとしては、前記導電体層を形成する材料からなるものが使用される。
【0077】
導電体層の厚さはその用途等に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは10nm〜50μm、より好ましくは20nm〜20μmである。得られる導電体層の表面抵抗率は、好ましくは1000Ω/□以下である。
【0078】
形成された導電体層には、必要に応じてパターニングを行ってもよい。パターニングする方法としては、フォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザ等を用いた物理的エッチング等、マスクを用いた真空蒸着法やスパッタリング法、リフトオフ法、印刷法等が挙げられる。
【0079】
(プライマー層)
プライマー層は、基材層とガスバリア層との層間密着性を高める役割を果たす。プライマー層を設けることにより、層間密着性及び表面平滑性に極めて優れる封止用粘着シートを得ることができる。
プライマー層を構成する材料としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、ケイ素含有化合物;光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む光重合性組成物;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;エチレンイミン;等が挙げられる。これらの材料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
プライマー層は、プライマー層を構成する材料を適当な溶剤に溶解又は分散してなるプライマー層形成用溶液を、基材層の片面又は両面に塗付し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により加熱することより形成することができる。
プライマー層形成用溶液を基材に塗付する方法としては、通常の湿式コーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、エアナイフコート、ロールナイフコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。
プライマー層形成用溶液の塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。プライマー層の厚みは、好ましくは10〜1000nmである。
【0081】
また、得られたプライマー層にも、上述のガスバリア層と同様に、イオン注入を行ってもよい。プライマー層にもイオン注入を行うことにより、より優れたガスバリア性能を得ることができる。
【0082】
〔封止用粘着シートの特性〕
本発明の封止用粘着シートの形状は、特に制限されず、例えば、シート状、直方体状、多角柱状、筒状等が挙げられる。例えば、電子デバイス用部材として用いる場合には、シート状であることが好ましい。
【0083】
本発明の封止用粘着シートの水蒸気透過率は、40℃、90%RH(RH:相対湿度)において、好ましくは0.5g/(m2・day)以下、より好ましくは0.05g/(m2・day)以下、更に好ましくは0.005g/(m2・day)以下、特に好ましくは0.0005g/(m2・day)以下である。水蒸気透過率が0.5g/(m2・day)であれば、有機EL素子等の封止に用いた場合、長時間の駆動や駆動環境によっても、有機EL素子等の封止している素子の特性の劣化を抑制することができる。封止用粘着シートの水蒸気等の透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。本発明においては、実施例に記載の方法で測定される。
【0084】
本発明の封止用粘着シートは、封止用部材として、有機トランジスタ、有機メモリー、有機EL等の有機デバイス;液晶ディスプレイ;電子ペーパー;薄膜トランジスタ;エレクトロクロミック;電気化学発光デバイス;タッチパネル;ディスプレイ;太陽電池;熱電変換デバイス;圧電変換デバイス;蓄電デバイス;等の電子デバイス用途に用いることができる。例えば、図2に、本発明の封止用粘着シートで封止した有機EL素子を有する有機デバイスの例を示す。有機EL素子11は、ガラス基板12と、該ガラス基板12上に構造体13を備える。構造体は、少なくとも一対の対向する電極と、該電極間に配置される正孔輸送層や発光層等の有機層とを有する。例えば、図2における構造体13は、一対の対向する電極14a、14bの間に有機層15を有している。一方、基材2上にガスバリア層3、及び粘着剤層4が積層した本発明の封止用粘着シート1は、該構造体13の上部、下部、及び/又は周囲に配置される。封止用粘着シート1の粘着剤層4が、構造体14とガラス基板12と密着し固着されることにより有機EL素子11が封止され、有機デバイス10となる。封止の方法としては、ガラス基板12上に構造体14を形成した後、本発明の封止用粘着シート1を貼付して封止される。本発明の封止用粘着シートを用いれば、簡便に封止することができる。
このように本発明の封止用粘着シートにより封止された有機EL素子を有する有機デバイスは、封止用粘着シートが、優れたガスバリア性を有し、かつ粘着剤層が、紫外線照射下の環境下での耐久性に優れているため、長時間の駆動や駆動環境によっても、有機EL素子の特性の劣化を抑制しうる。
なお、当該効果は、有機デバイスに限らず、上述したような種々の電子デバイス用途でも同様効果が奏される。
【実施例】
【0085】
以下の実施例において用いた水蒸気透過率測定装置と測定条件、有機デバイスの評価基準は、以下のとおりである。
【0086】
<水蒸気透過率測定装置>
以下の実施例、及び比較例で得られた封止用粘着シートについて、40℃、相対湿度90%の条件下で下記装置を用いて水蒸気透過率を測定した。
・水蒸気透過率が0.01g/(m2・day)以上のとき:製品名「L89−500」(LYSSY社製)、
・水蒸気透過率が0.01g/(m2・day)未満のとき:製品名「deltaperm」(TECHNOLOX社製)
【0087】
<有機デバイスの評価基準>
実施例、及び比較例で得られた封止用粘着シートを用いて作製した有機デバイスを、標準環境下(温度23℃、相対湿度50%)で200時間放置した後、有機EL素子を起動させ、ダークスポット(非発光箇所)を観察した。
また、実施例、及び比較例で得られた封止用粘着シートの粘着剤層の面をむき出しにした状態で、紫外線フェードメータU−48(スガ試験機(株)製)を用いて、500W/m2(波長300−700nm)の紫外線を50時間連続照射(以下、FOMともいう)した後、同様に有機デバイスを作製した。そして、標準環境下(温度23℃、相対湿度50%)で200時間放置した後、有機EL素子を起動させ、ダークスポット(非発光箇所)を観察した。
観察した素子を評価基準は以下のとおりである。
・「◎」:ダークスポットの発生が全く見られない場合(ダークスポットの発生抑制効果が非常に優れている)。
・「○」:ダークスポットの発生が発光面積の5%未満の場合(ダークスポットの発生抑制効果が優れている)。
・「×」:ダークスポットの発生が発光面積の5%以上の場合(ダークスポットの発生抑制効果が劣る)。
・「−」:粘着剤層の埋め込み性が低く、有機EL素子へのラミネートが出来ずに、均一な発光面を得られない場合。
【0088】
〔実施例1〕
<粘着剤組成物の調製>
ポリイソブチレン系樹脂(A)として「オパノールB50(BASF製、Mw:34万)」100質量部、ポリブテン樹脂(B)として「日石ポリブテン グレードHV−1900(新日本石油社製、Mw:1900)」30質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(C)として「TINUVIN765(チバ・ジャパン製、3級のヒンダードアミン基を有する)」0.5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)として「IRGANOX1010(チバ・ジャパン製、ヒンダードフェノール基のβ位が2つともターシャリーブチル基を有する)」0.5質量部、及び環状オレフィン系重合体(E)として「Eastotac H−100L Resin(イーストマンケミカル.Co.製)」50質量部を、トルエンに溶解し、固形分濃度約25質量%の粘着剤組成物を調製した。
【0089】
<封止用粘着シートの作製>
ガスバリア層として、アルミニウム(Al)が蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルム「アルペット12/34(アジアアルミ(株)社製)」をガスバリアフィルムとして用い、調製した上記粘着剤組成物の溶液を乾燥後に形成される粘着剤層の厚さが20μmとなるようにアルミニウム側(ガスバリア層側)に塗工し、120℃で2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。次に、形成した粘着剤層面に対して、剥離シートとして、厚さ38μmの剥離処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面を貼付して、封止用粘着シートを作製した。
【0090】
<有機EL素子、有機デバイスの作製>
陽極として、スパッタリングによって酸化インジウムスズ(ITO)膜(厚さ:150nm、シート抵抗:30Ω/スクエア)を付けたガラス基板の表面を、溶媒洗浄とUV/オソン処理により洗浄した。その後、ITO膜上に、有機材料であるN,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジデン)を60nm、トリス(8−ヒドロキシ−キノリネート)アルミニウムを40nm、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを10nm、(8−ヒドロキシ−キノリノレート)リチウムを10nm、0.1〜0.2nm/sの速度で順次蒸着し、発光層を形成した。有機材料はすべて「Luminescence Technology Corp.製」である。最後に、その上に陰極としてアルミニウム(Al)(高純度化学研究所(株)社製)を0.1nm/sの速度で100nm蒸着して、有機EL素子を作製した。なお、蒸着時の真空度は、全て1×10-4Pa以下で行った。
ここで、上述の方法で作製した封止用粘着シートを、窒素雰囲気下において、120℃に加熱したホットプレート上で10分間乾燥した後、室温まで低下するのを確認してから、有機EL素子の陰極を完全に覆う形でラミネートし、有機デバイスを作製した。
【0091】
〔実施例2〕
実施例1において、ヒンダードアミン系光安定剤(C)を加えない以外は、実施例1と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
〔実施例3〕
実施例1において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を加えない以外は、実施例1と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
〔実施例4〕
実施例2において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を1.0質量部に変えた以外は、実施例2と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
〔実施例5〕
実施例3において、ヒンダードアミン系光安定剤(C)を1.0質量部に変えた以外は、実施例3と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
【0092】
〔実施例6〕
実施例1において、ガスバリア層として用いた「アルペット12/34」を、以下のように作製したガスバリアフィルムに変えた以外は、実施例1と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
【0093】
<ガスバリアフィルムの作製>
基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルムである「PET50 A−4100(東洋紡績社製、厚さ50μm、以下「PETフィルム」ともいう)に、ガスバリア層形成材料としてポリシラザン化合物(クラリアントジャパン社製、商品名「アクアミカNL110−20」、ペルヒドロポリシラザンを主成分とするコーティング材)を塗布し、120℃で1分間加熱してPETフィルム上にポリシラザン化合物を含む、膜厚75nmの層を形成した。
次に、プラズマイオン注入装置を用いて、得られた層の表面に、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入し、基材上にガスバリア層を有するガスバリアフィルムを作製した。
<プラズマイオン注入装置>
用いたプラズマイオン注入装置は外部電界を用いてイオンを注入する装置である。
・RF電源:日本電子社製、型番号「RF」56000
・高電圧パルス電源:栗田製作所社製、「PV−3−HSHV−0835」
<プラズマイオン注入条件>
・プラズマ生成ガス:Ar
・ガス流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:−10kV
・RF電源:周波数 13.56MHz、印加電力 1000W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):5分間
・搬送速度:0.2m/min
【0094】
〔実施例7〕
実施例6において、ポリシラザン化合物の代わりに、ポリオルガノシロキサン系化合物(信越化学工業社製、商品名「KS358」、ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーン樹脂)に変えた以外は、実施例6と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
【0095】
〔比較例1〕 実施例1において、ガスバリアフィルムとして用いた「アルペット12/34」を、ガスバリア層を有しないポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、商品名「PET50 A−4100」、厚さ50μm)に変えた以外は、実施例1と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
〔比較例2〕
実施例1において、ヒンダードアミン系光安定剤(C)及びヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を加えない以外は、実施例1と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
〔比較例3〕
実施例1において、ポリブテン樹脂(B)を150質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
【0096】
〔比較例4〕
実施例1において、オパノールB50の代わりに、ポリイソブチレン系樹脂(A)として「オパノールB100(BASF製、Mw:110万)」を100質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
〔比較例5〕
実施例1において、オパノールB50の代わりに、ポリイソブチレン系樹脂(A)として「オパノールB80SF(BASF製、Mw:75万)」を100質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
〔比較例6〕
実施例1において、オパノールB50の代わりに、ポリイソブチレン系樹脂(A)として「オパノールB30(BASF製、Mw:20万)」を100質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、封止用粘着シート、及び有機デバイスを作製した。
【0097】
実施例1〜7及び比較例1〜6の封止用粘着シート、及び有機デバイスの評価を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1から、実施例1〜7の封止用粘着シートは、比較例1に比べ、水蒸気透過率が非常に低く、優れたバリア性能を有することがわかる。また、実施例1〜7の封止用粘着シートは、比較例4〜6に比べ、有機EL素子へのラミネートが良好であることがわかる。さらに、実施例1〜7の封止用粘着シートを用いた有機デバイスは、比較例2、3に比べ、紫外線照射に曝されたFOMありの場合においても、封止されている有機EL素子の特性の劣化が抑えられていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の封止用粘着シートは、封止用部材として、有機トランジスタ、有機メモリー、有機EL等の有機デバイス;液晶ディスプレイ;電子ペーパー;薄膜トランジスタ;エレクトロクロミック;電気化学発光デバイス;タッチパネル;ディスプレイ;太陽電池;熱電変換デバイス;圧電変換デバイス;蓄電デバイス;等の電子デバイスの用途に好適である。
【符号の説明】
【0101】
1、1a、1b、1c 封止用粘着シート
2、2a、2b 基材
3、3a、3b ガスバリア層
4、4a、4b、4c 粘着剤層
10 有機デバイス
11 有機EL素子
12 ガラス基板
13 構造体
14a、14b 電極
15 有機層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも片面にガスバリア層と粘着剤層とを有する封止用粘着シートであって、
前記粘着剤層が、第1成分として重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、第2成分として重量平均分子量1000〜25万のポリブテン樹脂(B)、第3成分としてヒンダードアミン系光安定剤(C)及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含み、
ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して、ポリブテン樹脂(B)を10〜100質量部含む粘着剤組成物からなる、封止用粘着シート。
【請求項2】
40℃、90%RHにおける水蒸気透過率が、0.5g/(m2・day)以下である、請求項1に記載の封止用粘着シート。
【請求項3】
ヒンダードアミン系光安定剤(C)が、3級のヒンダードアミン基を有するヒンダードアミン系光安定剤である、請求項1又は2に記載の封止用粘着シート。
【請求項4】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)が、ヒンダードフェノール基のべータ位が2つともターシャリーブチル基で置換されたヒンダードフェノール系酸化防止剤である、請求項l〜3のいずれか1項に記載の封止用粘着シート。
【請求項5】
電子デバイスに用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の封止用粘着シート。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の封止用粘着シートを具備する、電子デバイス。
【請求項7】
少なくとも一対の対向する電極と該電極間に配置される有機層とを有する構造体、及び該構造体の上部、下部、及び/又は周囲に配置された請求項1〜4のいずれか1項に記載の封止用粘着シートを具備する、有機デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−57065(P2012−57065A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202306(P2010−202306)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】