専門知識及び応用複雑性科学を用いた、リスクの評価ならびに診断のための医療データの自動管理方法
複雑性科学を用いて、複数の特徴集合を備える知識ベースを作成する。知識ベースは、ネットワークを介して、コンピュータ、システム、及び医療データを受信して分析して病態の存在を判定するコンピュータプログラムコードからアクセス可能である。医療データが入力されて、知識ベース内の特徴と関連付けられて、それぞれが特定の病状を示す特徴集合が特定される。1つ以上の特徴集合が選択された後、連想アルゴリズムは、医療データの大きさまたは値を検討し、特徴集合内の特徴の値を用いて、特徴集合に関連する病状のリスク負担を評価する。1つ以上の病状の診断、病状のリスク負担、考えられる治療の選択肢、及び予防法を含み得る出力が生成させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、カーディオバスキュラー・デシジョン・テクノロジーズ社(CARDIOVASCULAR DECISION TECHNOLOGIES, INC)の名で出願されたPCT国際特許出願であって、「専門知識及び応用複雑性科学を用いた、リスクの評価ならびに診断のための医療データの自動管理方法」と題する2008年10月10日に出願された米国仮出願第61/104497号の優先権を主張し、当該出願の内容はこの引用によりここに全て含まれているものとする。
【0002】
本記載は、概して、突発性の疾患(emergent diseases)に対するリスクを評価及び診断するために、医療データの分析に複雑性科学と専門知識を利用することに関する。より詳細には、本開示は、人の医療データにアクセスし、医学知識ベースから病状に関連する特徴の特徴集合にアクセスし、その人に危険性のある病状があるかどうかを特定するために、前記医療データの値を、関連する特徴集合の特徴の値の範囲と比較する方法、システム、または記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、加齢に関連する病態の治療は主として、観測された臨床症状、リスク要因、及び関連性のある有害イベントの二次的管理に向けられている。リスク要因は、根底にある生理学的摂動の結果であると多くの場合考えられているが、これらのリスク要因自体は、それらに起因する疾患の発現の主たる原因ではない。リスク要因は、原因ではなく結果になぞらえられることがより多くなってきている。
【0004】
疾患のほとんどは、根底にある生理学的摂動の結果である。それゆえに、一次予防に適したリスク査定には別のパラダイムがなくてはならない。臨床試験では、病態には多くの変数の分析が必要との認識がされているが、従来の臨床リスクアルゴリズムでは、調査される臨床リスク要因は十分に関連し合っておらず、また疾患の強度の数式を持たないため、有用性が限られている。さらに、個々のバイオマーカーまたは非数理的観測は、発現イベントの予測を試みる際に再現できないことがある。実のところ、結果を管理することは、原因の管理を成功させることを保証するものではない。病態の臨床上及び緊急性のリスク負担(clinical and emergent risk burden)の双方に十分に対処し、それらを定量化しなければ、治療は一般的な疾患を部分的に緩和するのに成功するにすぎないものとなる。複雑な多変量性(独立した変数の多い)の疾患(complex multivariate disease)の管理を成功裏に行うには、「1疾患、1リスク要因、1血清マーカー(one disease, one risk factor, and one seromarker)」モデルの限界を超越して、医学をより包括的で、かつ臨床上に現実的なシナリオに向けて動かしていかなければならない。
【0005】
予測モデリングは、疾患の予測に用いられる一技法である。一般的に、予測モデリングのアルゴリズムには、履歴データを解釈して、未来についての予測を立てる数理アルゴリズムが採用されている。しかしながら、特に疾患の予測に適用される場合、予測モデリングにも短所がある。上述したように、データの収集に用いられる臨床モデルに関与しているのは、既に疾患がある人であって、世間一般に内包された緊急性のリスクではない。統計学的な観点から言えば、疾患がある対象の使用は、分布の極側、即ち、一般的な鐘形曲線の極左または極右側でデータポイントの集まりをもたらす既に偏った母集団となる。観測された異質のリスク要因(disparate observed risk factors)と複雑な変更因子(complex modifiers)とに基づく多変量リスクモデルは分析するのが難しいことが医学文献で知られている。また、臨床リスクの変更またはイベントの発生に基づく個々のリスクと管理が、観測した要因の発生を防止しないことは事実である。
【0006】
医師のほとんどが根拠に基づく医療研究に由来する関連性のある結果の存在を知らないか、医学文献の多様性や規模に圧倒されているか、またはその両方によって、病態への予測モデリングの利用がさらに妨げられている。インターネットデータベース及び情報検索技術の進歩は、分析の新技術、及び意思決定者への医療情報の配布にはずみをつけた。遠隔医療や現行のインターネットによる補助的手段であるスーパークランチャー(super-cruncher)では、診断用の決定支援ソフトウェアに焦点が当てられており、臨床所見の入力によって支えられている。集合的な医療の経験(aggregate health care experience)に内包された情報をインターネットを使って検索することによって、医師は、より情報を得た上で診断を行うこと、誤診を減らすこと、根拠に基づく医療の利用を強化することができるようになると考えられる。これらのインターネットによる診断ソフトウェアツールは、一般的に、疾患の分類法を用いて雑誌記事またはワーキンググループを統計学的に検索して様々な疾患に最も関連しそうな言葉の類型を求める。最大の努力や期待にも関わらず、現在、スーパー情報クランチャー(super information cruncher)は診断用のトップダウン式検索に利用されているが、その成功率は約10%でしかない。このパラダイムには最初から難がある。臨床上明らかな疾患のデータを単に探しても、患者または医師にどのようにこの疾患を予防するかを知らせることはできない。
【0007】
疾患予防の別のパラダイムに移るために、また本願に記載の実施形態の文脈においてデータ、メタデータ、理解、及び知識の違いについて論じることは有益となる。データは、観測、数理計算、または実験によって導き出された数値であり、一般的には機械を用いて取得される。情報は、文脈中のデータである。情報は、データと、そのデータに関連する、特定の対象、イベント、またはプロセスについての記述、解釈、または解説の集まりであり、診断医がデータの正常状態または異常状態との関係を解釈することがその例である。メタデータは、データについてのデータであり、その情報が得られた、または用いられる文脈を記述するものであり、「最終通知」等のデータの要約や高レベルな解釈がその例である。理解は、論理的な選択を行うためにメタデータと情報を用いることであり、医師が特定の疾患及び/または患者を考えて特徴または検査を選択することがその例である。理解は、具体的な知識を大まかな概念に関連付けることによって、経験を理解可能なものにする人間の能力とも考えられる。知識は、メタデータと、メタデータを上手く利用することが可能な文脈についての認識の組み合わせであり、特徴同士の関係がその例である。人工知能では、情報とメタデータをどのように用い、またどのようにそれらを関連付けるかを知識が決定する。人工知能アルゴリズムに応用される蓄積された知識は、一般的に知識ベース140と呼ばれる。該して、知識ベース140は、情報と知識の一元的な貯蔵所である。それぞれの知識ベース140は、その出発点となった専門家に固有なものであるが、無規律な知識ベース140は、高次な予測を立てることができない。臨床医学では、健康状態の判定や疾患の管理に情報科学を様々な形で用いることが模索されてきたが、今のところ、これらの技術の実施は、疾患を構成する要素についての連想知識を持つ医師、専門家や科学技術者等の医療提供者の複合的な多変量知識ベース140を上手に再現できておらず、またはそれに取って代わるものにもなっていない。
【0008】
インフォマティックスには、全般的な情報科学、情報処理の実践や情報システムの設計が含まれる。インフォマティックスは、情報の記憶、処理、及び通信を行う自然及び人工のシステムの構造、挙動、ならびに相互作用についての学問である。保健医療インフォマティックス(health and medical informatics)では、衛生及び生物医学における情報の取得、記憶、検索、ならびに使用の最適化に必要なリソース、装置、及び方法が扱われる。他方、複雑性科学が含まれる情報科学は、情報の収集、分類、操作、報告、記憶、検索、及び配布に関する学際分野である。
【0009】
複雑性科学は新興的な学問であり、そこでは、科学者は多くの場合複雑な現象の原因となる単純で非線形の結合規則(simple non-linear coupling rules)を探る。ここで特に重要なのは、疾患を複雑系として研究可能なことである。複雑性科学では、自然法則の数式を特徴と呼ぶ。特徴は、それがもしイベントの認識を可能にするものであれば特性として考えられる。例えば、ある人は、他の人を性別、肌、目、身長等の特徴で認識する。複雑性科学では、これらの特徴は、特徴集合と呼ばれる、予測を裏打ちする、高度に関連する特徴の小さな集合にグループ化される。
【0010】
無症状性の、または発現前の疾患を確信を持って予測することは、疾患の予測及び予防、ならびに現在の医学的危機を管理する上で不可欠であるが、現在の疾患予測や疾患管理では不十分である。医療の予測または誘導の支援を目的としたデータインフォマティックスや情報科学を人の疾患の管理に利用することの臨床的な有用性には限界があった。しかしながら、本願で説明するように、情報科学の文脈の中で、複雑性科学は、疾患の予測およびそのリスクの大きさの決定に強力に寄与するものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
医学界では、疾患を形成段階または発現前の段階で検出することが可能な、疾患代用物(disease surrogate)とも呼ばれる特徴集合のリスクモデルが未だに特定されておらず、また採用もされていない。一般大衆において、高リスクを抱える無症状性の対象者を特定したり個々に特徴付けることは、依然として問題が多く、また不十分である。このジレンマに対する満足のゆく解決法は、これまでのところ採用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、方法、前記方法の態様が盛り込まれたシステム、実行可能なプログラムステップの形で前記方法の態様が盛り込まれた非一時的なコンピュータ可読記憶媒体、及びそのような方法、システム、及び記憶媒体の一部をなすように作成された医学知識ベースに関する。
【0013】
特に、方法の一実施形態では、危険性のある病状があるかどうかを特定するために、人の医療データが評価される。この方法は、前記医療データを取得することから始まる。前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記特徴のうち少なくとも一部は値を有している。医学知識ベースにアクセスする。前記知識ベースは、様々な病状に関する複数の特徴集合を有している。前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有する。前記高度に関連する特徴のうち少なくと一部は、値の範囲を有している。前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定する。このように、前記医療データの前記特徴の知識が、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換される。その後、前記医療データの正常または異常を示す特性、もしくは値の大きさが、前記変換された高度に関連する特徴の同様の特性および値の範囲と比較されることで前記医療データの比較が行われる。この比較を、基準に照らして解釈することで、あらゆる危険性のある病状を特定することができる。
【0014】
医学知識ベースに関して、病状に関する特徴集合候補を知識ベースに加えるまたはそれを一部変更する方法が提供される。特徴候補は、前記特徴集合候補であるか否かが考慮される。前記特徴集合候補は、少なくとも1つの他の既存の特徴を有する。前記特徴候補は、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と比較される。もし前記少なくとも1つの特徴候補が、異常であるか、または異常である値の範囲内にあるかのいずれか1つである場合に、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と一緒になることによって、前記特徴集合候補が関連する病状との関連性レベルが高まるような、前記少なくとも1つの他の既存の特徴との相関効果があれば、前記少なくとも1つの特徴候補を選択して前記特徴集合候補に含められる。
【0015】
一実施形態は、危険性のある病状があるかどうかを特定するために、人の医療データを評価する方法である。この実施形態は、コンピュータを用いて前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程を含む方法である。この実施形態は、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程を含む。この実施形態は、前記コンピュータを用いて、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程を含む。この実施形態は、前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについてコンピュータを用いて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程と、前記危険性のある病状に関する情報を前記コンピュータから出力する工程とを含む。
【0016】
一実施形態は、危険性のある病状を特定するために医療データを評価するコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、メモリに連結された中央処理装置を備え、前記中央処理装置は、前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程により前記医療データを評価するようにプログラムされている。また、この実施形態は、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程を行うようにプログラムされた前記中央処理装置を含む。また、この実施形態は、前記中央処理装置を用いて、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより、前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程を行うようにプログラムされた前記中央処理装置を含む。また、この実施形態は、前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて前記中央処理装置を用いて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程を行うようにプログラムされた前記中央処理装置を含む。また、前記中央処理装置は、前記危険性のある病状に関する情報をインターフェイスから出力する工程を行うようにプログラムされている。
【0017】
一実施形態は、実行可能なプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムは医療データを評価し、前記媒体はコンピュータシステムに実装され、前記プログラムは、メモリとデータ受信インターフェイスとに連結された中央処理装置に対して命令する。この実施形態では、前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程が行われる。この実施形態では、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程が行われる。この実施形態では、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより、前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程が行われる。この実施形態では、前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程が行われる。この実施形態では、前記危険性のある病状に関する情報をインターフェイスから出力する工程が行われる。
【0018】
一実施形態は、様々な病状に関する特徴集合を含む医学知識ベース用に、病状に関する特徴集合候補を追加または部分的に変更する方法であって、人の医療データを前記特徴集合に対して評価することで危険性のある病状が特定され、前記医療データの少なくとも一部は値を有し、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有する方法である。前記方法は、前記特徴集合候補に関係すると考えられる少なくとも1つの特徴候補をコンピュータに入力する工程であって、前記特徴集合候補は、少なくとも1つの他の既存の特徴を有する工程を含む。前記方法は、前記コンピュータを用いて、前記少なくとも1つの特徴候補を前記少なくとも1つの既存の特徴と比較する工程を含む。前記方法は、もし前記少なくとも1つの特徴候補が、異常であるか、異常である値の範囲内にあるかのうちの1つである場合に、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と一緒になることによって、前記特徴集合候補が関連する病状との関連性レベルが高まるような、前記少なくとも1つの他の既存の特徴との相関効果があれば、前記少なくとも1つの特徴を選択して前記特徴集合候補に含める工程を含む。前記方法は、前記医学知識ベースに前記特徴集合候補を含める工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、一実施形態に係るコンピュータシステムとネットワークのブロック図である。
【図2】図2は、一実施形態に対して複雑性の記号を用いた概略図である。
【図3】図3は、一実施形態に係る、危険性のある病状の特定に対して医療データを分析する方法のフローチャートである。
【図4】図4は、一実施形態に係る、危険性のある病状の特定に対して医療データを分析する方法のフローチャートである。
【図5】図5は、一実施形態に係る、危険性のある病状の特定に対して医療データを分析する方法のフローチャートである。
【図6】図6は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図7】図7は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図8】図8は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図9】図9は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図10】図10は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図11】図11は、一実施形態に対して複雑性の記号を用いた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本記載には、添付図面への参照が含まれる。本発明は、多くの様々な形態で実施することができ、本願に規定の実施形態に限定されるものと解釈してはならない。それよりも、例示の実施形態は、本開示を十分、かつ完全なものとするため、また当業者に本発明の範囲を十分伝えるように規定されている。全体に渡って、同様の符号は同様の要素を参照している。
【0021】
当業者に理解されるように、本願に記載の実施形態は、知識ベース140と、複数の連想アルゴリズム150と、複数の特徴集合160とを維持管理する方法、データ処理システム、コンピュータプログラム製品、及びサービスである。複数の特徴集合160のそれぞれは、病状を特定するため、及び特徴の大きさを表わす入力医療データを評価するために利用される1つ以上の連想アルゴリズムを利用する高度に関連する特徴の集合を有する。個人の病状または疾患のリスクが特定、及び判定される。個人の病状または疾患に対するリスクの判定には、標準からの生理学的な差異の定量化が含まれる。従って、実施形態のコンポーネントは、ハードウェアの態様、またはソフトウェアの態様とハードウェアの態様とを組み合わせた実施形態の形体をとり得る。さらに、実施形態のコンポーネントは、コンピュータで使用可能な記憶媒体上のコンピュータプログラム製品であって、その媒体に盛り込まれたコンピュータで使用可能なコードを有するコンピュータプログラム製品の形をとり得る。固体記憶装置、ハードディスク、CD−ROM、光学記憶装置、ポータブルメモリ、インターネットまたはイントラネット等に対応した伝送媒体、もしくは磁気記憶装置を含む、あらゆる好適なコンピュータ可読媒体を用いることができる。
【0022】
本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理するソフトウェアのコンポーネントのコンピュータプログラムソースコードは、C、Java、Smalltalk、またはC++等のオブジェクト指向のプログラム言語で書かれていてもよい。知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を含むコンポーネントのオブジェクトコードは、個別のサーバーまたはクライアント上で全面的に、個別のまたはバックアップのサーバーまたはクライアントで部分的に、個別のまたはバックアップのサーバーまたはクライアント上で部分的に、リモートサーバーまたはリモートクライント上で部分的に、もしくはリモートサーバーまたはリモートクライント上で全面的に実行してもよい。後者の場合には、リモートサーバーまたはリモートクライアントは、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)を介して個別のまたはバックアップのサーバーまたはクライアントに接続されていてもよいし、あるいはインターネットサービスプロバイダを用いて、インターネットを介してリモートサーバーまたはリモートクライアントへの接続を行ってもよい。
【0023】
本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理する方法を、実施形態に係る方法、装置(システム)、コンポーネント、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/またはブロック図を参照して以下で説明する。フローチャート図及び/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図及び/またはブロック図におけるブロックの組み合わせは、コンピュータプログラムの命令によって実現可能なことが分かるだろう。これらのコンピュータプログラムの命令を、1つ以上のコンポーネントとして汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラマブルなデータ処理装置のプロセッサに設けて、装置が生成される。その結果、コンピュータまたは他のプログラマブルなデータ処理装置のプロセッサを介して実行される前記コンポーネントが、フローチャート及び/またはブロック図のブロックで規定されている機能/動作を実現する手段を形成する。
【0024】
本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびにそれらを実現するのに必要なユーザーインターフェイス及びアプリケーションインターフェイスのコンピュータプログラムのコンポーネントも、コンピュータまたは他のプログラマブルなデータ処理装置を特定の様式で機能するように仕向けることが可能なコンピュータ可読メモリに記憶されていてもよく、その場合、コンピュータ可読メモリに記憶されているコンポーネントが、フローチャート及び/またはブロック図のブロックに規定されている機能/動作を実現する構成要素を含む製品を生成する。コンピュータプログラムのコンポーネントは、コンピュータまたは他のプログラマブルなデータ処理装置に導入されて、前記コンピュータまたは他のプログラマブルなデータ処理装置上で行われる一連の動作ステップを生じさせてコンピュータによって実現されるプロセスを生成してもよく、それにより前記コンピュータまたは他のプログラマブルな装置上で実行されるコンポーネントが、フローチャート及び/またはブロック図のブロックに規定されている機能/動作を実現するためのステップを提供する。
【0025】
図1を参照して、知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびにそれらを実現するのに必要なユーザーインターフェイス及びアプリケーションプログラムインターフェイスを維持管理する、本願に記載の実施形態に合致するコンピュータネットワークシステム10の高レベルなブロック図を示す。コンピュータネットワークシステム10は、中央処理装置(CPU)112、メモリ114、及び様々なデジタルの及び/またはアナログのインターフェイス128〜138をそれぞれが備え得る多数のネットワークコンピュータ110を含むことが好ましい。個々の装置は、内部通信バス122を介して互いに通信を行う。CPU112は、汎用のプログラマブルプロセッサであり、メモリ114に記憶された命令を実行する。なお、図1には1個のCPU112を示しているが、複数のCPUを有するコンピュータシステムを用いてもよいことが分かるだろう。CPU112は、オペレーティングシステム120、プロセスステップ及び方法ステップ、ならびに本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、複数の特徴集合160、及び他のアプリケーション300を維持管理するコンピュータプログラム製品を実行することができる。CPU112は、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびに適切なユーザーインターフェイス及びアプリケーションプログラムインターフェイスを維持管理するコンピュータプログラムのコンポーネントを生成することもでき、また、本願に記載のこれらのプロセス、機能、及び方法100を行うための方法論を具現化したものであるプログラム命令を送受信することができる。通信バス122は、様々な装置間でデータ、コマンド、及び他の情報の転送をサポートする。通信バス122を、1つのバスとして簡略化して図示しているが、一般的には、CPU112をメモリ114に直接接続し得る内部バス124を含む複数のバスとして構成されている。
【0026】
メモリ114は、オペレーティングシステム120、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理するコンポーネント、他のアプリケーション300、データならびにプログラムを記憶するために、読み出し専用メモリ(ROM)116と、ランダムアクセスメモリ(RAM)128とを含む。一般的に、「立ち上げ」が必要なオペレーティングシステム120の部位またはプログラム、ルーチン、モジュールはROM116に記憶されている。一般的に、RAM118には、コンピュータの電源が落された時に消去されるプログラムやデータが記憶される。メモリ114を1つのモノリッシックなものとして概念的に示しているが、メモリは、その一部または全てがCPU112と同じ半導体基板に一体化されたキャッシュと他の記憶素子の階層構造で配置されている場合が多いことがよく知られている。RAM装置118は、コンピュータの主記憶装置、ならびに、例えばキャッシュメモリ、不揮発性メモリまたはバックアップメモリ、プログラマブルメモリまたはフラッシュメモリ、ポータブルメモリ、他の読み出し専用メモリ等のあらゆる予備レベルのメモリを含む。それに加えて、メモリ114には、例えば、プロセッサ内のキャッシュメモリ、もしくは、例えば大容量記憶装置上、またはネットワークを介してコンピュータに連結された他のコンピュータ上に記憶されたバーチャルメモリとして用いられる他の記憶容量等、コンピュータ内の他の場所で物理的に存在するメモリ記憶装置を含むものと考えることができる。本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理し、またそれらを含むコンポーネントを用いて、データをその元からアクセスすること、及び/または本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理するコンポーネントがインストールされ、また実行されるコンピュータ処理装置110の内外に位置するROM及びRAMを含むあらゆるメモリ114内にある分散型知識ベース140にアクセスすることができることは十分に理解できる。図1に示すように、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理し、それらを実施するコンポーネントは、ネットワーク全体における他の装置上に記憶された同様のコンポーネントに接続されて、それらから医療データを取得するか、そうでなければ本願の原理に係る方法を実現及び実行するためにそれらとアナログデータ及びデジタルデータのやり取りを行ってもよい。
【0027】
本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびに他のアプリケーション300を維持管理するコンポーネントとオペレーティングシステム120はメモリ114に常駐している。当該技術で周知なように、オペレーティングシステム120は、とりわけ、デバイスインターフェイス、メモリメージの管理、マルチタスクの管理等の機能を提供する。そのようなオペレーティングシステムの例として、Linux、Aix、Unix、Windows系オペレーティングシステム、Z/os、V/os、OS/400、Rtos、ハンドヘルドオペレーティングシステム等を挙げることができる。これらのオペレーティングシステム120や、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびに他のアプリケーション300を維持管理し、それらを実施する他の様々なコンポーネント、他のコンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール等も、例えば、分散型またはクライアント−サーバ型のコンピュータ環境においてネットワーク170、180を介してコンピュータ110に連結された他のコンピュータ内の1つ以上のプロセッサ上で実行してもよく、それによってコンピュータプログラムの機能を実現するのに必要な処理を、ネットワーク170、180全体の複数のコンピュータ110に割り振ることができる。
【0028】
概して、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理し、それらを実施するコンポーネントは、CPU112内で実行されて実施形態を実現する。実施形態がオペレーティングシステムの一部、もしくは特定のアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール、または一連の命令として実現されたとしても、本願ではコンピュータプログラム、または単にコンポーネントと呼ぶことがある。本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理し、それらを実施するコンポーネントは、一般的に、色々な時に色々なメモリ114や装置内の記憶装置に常駐している。処理装置110内の1つ以上のプロセッサによって読み出されて実行されると、記載した様々な態様を実施するステップまたは要素を実行するのに必要なステップを装置110に行わせる1つ以上の命令を前記コンポーネントは含む。コンポーネント100は、少なくとも1つ以上の知識ベース140を含む。コンポーネント100はさらに、本願に記載の特徴に係る病状または疾患、もしくは病状または疾患のリスクを特徴付ける高度に関連する特徴の特徴集合160を1つ以上含む。コンポーネント100はさらに、特徴集合内の特徴の入力医療データを取得してそれを評価し、その病状または疾患に対する個人のリスクを判定する連結評価アルゴリズム150を1つ以上含む。コンポーネント100はさらに、データ取得方法、データ入力方法、データソート方法、及び医師または他のユーザーによってアクセス可能なアプリケーションインターフェイスまたはユーザーインターフェイスを介した形で結果を表示する出力コンポーネント、ならびに他の適切なユーザーインターフェイスやアプリケーションプログラムインターフェイスを含む。
【0029】
なお、当該技術で周知なように、コンピュータ110は通常、CPU112と接続機器との間に好適なアナログの及び/またはデジタルのインターフェイス128〜138を備えていることが分かるだろう。例えば、コンピュータ110は通常、外部と情報の通信を行うために数多くの入力と出力を受信する。医師、または他のユーザーとのインターフェイスの場合、コンピュータ110は通常、1つ以上のソフトウェア開発者用入力装置(software developer input device)162〜168、例えば、数あるなかで、キーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック、タッチパッド、及び/またはマイクや、CRTモニタ、LCD表示パネル等のディスプレイ、及び/またはスピーカを備える。しかしながら、コンピュータ110の一部のインプリメンテーション、例えば、一部のサーバーインプリメンテーションでは、ソフトウェア開発者の直接的な入力や出力がサポートされないことがあることが分かるだろう。端末インターフェイス134は、1つまたは複数の端末、もしくはラップトップ型コンピュータ144の接続をサポートし、1つまたは複数の電子回路カード、もしくは他のユニットとして実現され得る。医療データをコンピュータシステム110に直接入力することができるように、1つ以上の医療器具175からの入力、例えば、音波ホログラフィー、トモグラフィー、実験室での検査、電心図等に由来するデータが直接接続されていることが考えられる。医療データを、ポータブルメモリを介して、インターネット、電話、または無線等の伝送媒体上で、または手入力で入力できることが分かる。また、医療データは、好ましくは1つ以上の回転式の磁気ハードディスク装置を備えたデータ記憶装置からアクセスすることができる。テープ、フラッシュメモリ、または光学式の駆動装置を含む他の種類のデータ記憶装置も用いることもできる。追加の記憶装置として、コンピュータ110は、数あるなかで、例えばフロッピーまたは他の取り外し可能ディスク用のドライブ、ハードディスク、直接アクセス記憶装置(DASD)や、例えばコンパクトディスク(CD)ドライブ、デジタルビデオディスク(DVD)ドライブ等の光学式ドライブ、及び/またはテープドライブといった1つ以上の大容量記憶装置を含むメモリ114も含み得る。知識ベース140、1つ以上の特徴集合160、及び/または1つ以上の連想アルゴリズム150は、インターネット180、WAN170、及び他の接続機器128を介して存在する他のコンピュータ110のRAM、または大容量記憶装置を含む記憶装置上に存在していてもよい。当業者は、インターフェイス128〜238が無線式であり得ることもさらに予想するだろう。
【0030】
さらに、コンピュータ110は、ネットワーク170、180に連結された他の処理装置や知識ベース140と情報の通信を行えるようにするために、1つ以上のネットワーク170、180とのインターフェイス136、138を備えてもよい。ネットワークインターフェイス136、138は、ネットワーク170、180への/からのデータの伝送用に物理的な及び/または無線による接続を提供する。ネットワーク170、180は、インターネット、ならびにイントラネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、または例えば電話伝送線路、衛星、光ファイバー、T1回線、無線、公衆線や、あらゆる様々な利用可能な技術を用いた他の内部または外部ネットワークといったより小規模な自己完結型ネットワークであり得る。当業者は、コンピュータシステム110が2つ以上のネットワーク170、180に同時に接続され得ることが分かる。コンピュータシステム及び遠隔システム128は、デスクトップ型コンピュータまたはパーソナルコンピュータ、ワークステーション、ミニコンピュータ、中級機のコンピュータ、メインフレームコンピュータであり得る。また、任意数のコンピュータ、様々な医療検査装置及び医療データ取得装置の処理装置、ならびに大型のメインフレームサーバーほどの十分な情報処理能力を必ずしも持たないパーソナルハンドヘルドコンピュータ、個人用携帯型情報端末、無線電話等の他のマイクロプロセッサ装置が、ネットワーク170、180を介してネットワーク接続されていてもよい。さらに、実施形態には、1つ以上の知識ベース140を生成または部分的に変更すること、特徴集合の特徴の入力医療臨床データを提供すること、連想アルゴリズム、もしくはコンポーネント100またはその他のコンポーネントが行うことのできる他のプロセスステップを生成、提供、または部分的に変更することのうちの1つ以上を提供するサービス提供者によって配布、管理、供給される方法及びプログラム製品の任意のコンポーネントが含まれ得る。
【0031】
本願の文脈の中で、メモリ114は、別のコンピュータ、クライアント、サーバー、または大容量記憶装置等の他のハードウェア記憶素子上、もしくはネットワークを介してコンピュータに連結された他のコンピュータ上に物理的に置かれた装置内の不揮発性メモリまたはバックアップメモリ、もしくはプログラマブルメモリまたはフラッシュメモリ、読み出し専用メモリ等であると考えることもできる。メモリ114は、本願のコンポーネントのどれかを有する1つ以上の回転式磁気ハードディスク装置、テープ駆動装置、または光学式駆動装置等のリモートアーカイバルメモリを含み得る。メモリ114は、本願に記載のコンポーネントをそれぞれが1つ以上有し得る1つ以上の大容量記憶装置、例えば、数なかでも、フロッピーまたは他の取り外し可能なディスク用のドライブ、ハードディスク、直接アクセス記憶装置(DASD)や、例えばコンパクトディスク(CD)ドライブ、デジタルビデオディスク(DVD)ドライブ等の光学式ドライブ、及び/またはテープドライブ等であると考えることもできる。
【0032】
本願に記載の実施形態では、病状のリスク、または病状の標準からの差異を予測し、評価するために「ボトムアップ型」のアプローチが利用されており、研究者は、根源的な理論または方針、即ち、特徴集合の特徴を導き出すために、物理的、機能的、化学的、及び/または生物学的な現象における手がかりを求める。この目的は、どの観測可能な現象が基本的なものかを確認し、そして、これらの基本的な現象を病状または疾患のリスクの特徴、あるいは疾病それ自体の特徴として結び付ける。このモデルでは、特徴は、自然法則によって決定される数理データまたは文字データである。言い換えれば、特徴は、検査、試験、機械等から導き出される数理データまたは論理データである。技術背景で説明したように、疾患またはリスクのインスタンスは、正常な状態または異常な状態の複合的な表れであり、相互に作用する特徴の集まりから出現するものである。本願で利用される「ボトムアップ型」のアプローチは、多変量特徴の重層的なリスク分析(multivariate feature-stratified risk analysis)を提供し、「トップダウン式」の分析でなされるよりも、基準リスクのより広い範囲に渡って効果を比較する。ボトムアップ式モデルに特有の魅力は、無症状性の、または発現前の病態を検出し、健康に係る未来のイベントを予測し、また疾患の発現を防止するために、相互に関係のある定量可能な特徴を用いることの潜在性である。疾患の特徴付けや管理に対するボトムアップ式のアプローチの使用は、現状では非常に限られている。
【0033】
密接に関連した特徴の特徴集合から出現する疾患のまたは疾患前のインスタンスを研究するために、本願の知識ベース140及び連想アルゴリズム150に採用されている複雑性の科学は、発現インスタンスの予測、またはリスク評価の精度が実際に高い。本願に記載の実施形態の動機となったいくつかのパラダイムは、「同じ深度の類似点を持つシステムは、同じ単純な規則に従わなければならない」、及び「全ての科学者は、可能な限り最も単純な見方で世界を見る努力をしなければならない」というものである。人間の疾患を含む全ての複雑なネットワークの構造や進展は、単純であるが奥の深い自然法則によって支配されている。リスク評価技法はそれぞれに限界と利点があるが、情報科学、とくに複雑性科学には論理的な魅力がある。複雑性科学は、密接に関連した特徴の集まりから出現する現象(医学では、表出した疾患またはリスクに最もよく関連している)についての学問である。複雑性科学の観点から図式化したシステムを示す図2及び図11について考えてみる。図2及び図11の底部には、組織化されていないシステムの基本的な構成要素を表わすカオス210がある。図11は、医学の世界では、これらの基本的な構成要素212に遺伝子、タンパク質、糖類、電解質、分子、原子等が含まれることを示している。これらの基本的な構成要素212の中心には、これらの構成要素212をシステム、状態、ネットワーク等を成すように整列させる生来永続的で不変的な自然の法則がある。この現象は決定論的カオスと呼ばれるものである。疾患の発生等の組織化された状態は、これらの自然の法則またはパターンの存在なしには進展できなかったと考えられる。複雑性230の序列の頂点にあり、対カオス(opposite chaos)となるのがフラクタルである。フラクタルとは、それ自体において繰り返されるパターンである。そのことから、フラクタルのシステムは高度な組織化を表わしている。カオス210と複雑性230またはフラクタルとの間には単純性220がある。複雑性科学自体は、フラクタルの複雑系へとつながる単純なグループ分けを研究の対象としている。図11に、単純なグループ分けの一例を速度、圧力、及び容量の特徴を含む知識ベース222として示す。本願に記載の文脈の中で、複雑性科学は、高度に関連した定量可能な少数の特徴を簡素化し、それらを把握して、既存の、または発現前の病状や病態を特徴付けるのに利用される。
【0034】
病状のリスクの予測や定量化、あるいは疾患の予防、処置、または治療を試みる際に、医師は、生物の複雑な内的関連性を無視してカオス、即ち、特定の分子または遺伝子、あるいは臨床リスク要因に焦点を当てた場合、計り知れない難題に直面することになる。複雑性科学の文脈の中で疾患の特徴を検討することによって、複雑な物事が簡素化され、基本的な構成要素の相互作用の不確実さを検討するための枠組みが提供される。この枠組みの結果、病態232として図11に例示した癌、糖尿病、生死、痴呆、心房細動、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、心不全、睡眠障害や高血圧等の1つ以上の複雑なイベントを予見することが可能となる。予見は、病態232等の病状の予測につながるため、医師は予防策を用いて考えられる病態232のリスクに素早く対処することができるようになり、病態232の完全な表出を回避できる。
【0035】
疾患及び/または疾患のリスクは、次に挙げる特性のうちの大半、または全てを有している。(1)互いに密接に関係しているか、互いに群をなしているか、またはある共通の情報を共有している、相互に作用する数多くの特徴の集まりである。(2)ある時、またはある場所で何かが起こると、他で起こっていることが影響を受けるフィードバックシステムによって、特徴の挙動が影響を受ける。(3)特徴は、その性能を改善することによって順応が可能である。(4)多くの場合、システムが「オープン」であり、その環境に左右され得る。これらの疾患またはリスク属性を、次に挙げる挙動を示す複雑多変量系(complex multivariable system)と比較する。(1)複雑系は活きているようであり、フィードバックの影響のもとでは非自明で複雑な形で進展する。(2)複雑系は、インタンスが何時発生するかの観点から言えば不意に出現し、また特定の分子、遺伝子、または計算といった個々の特徴の知識に基づいて予測が通常できないインスタンスを有している。(3)複雑系は、中心となるコントローラ(central controller)が全く存在しない時に概して発生する複雑な現象を示す、言い換えれば、複雑系は、その部分の総和以上のものである。(4)複雑系は、自ら規則と不規則との間を行き来することができる規則的な挙動と不規則な挙動との混成を示し、規則のポケット(pockets of order)を示しているように思われる。症候性心不全は変数または不安定な正常または異常な関連した特徴(vacillating normal or abnormal associated features)を有し得るというのがその例である。本願に記載の実施形態は、発現前の、及び既存の病態の分析に複雑性科学を利用することができるという本発明者の認識を利用したものである。
【0036】
臨床疾患の予測は不正確であることが関の山であるが、例えば、エコー/ドップラー、生化学検査、ラジオグラフィー等のバイオマーカーを補足的に用いることで個人のリスク負荷の定量化は向上する。リスクの低減を人のリスク負担に合ったものにすることは魅力的である。特徴として選択される観測された生理学的現象またはバイオマーカーが医学界や科学界で受け入れられるためには、次に挙げるいくつかの特定条件のほとんどを満たさなければならない。(1)従来のリスク要因関係(risk factor association)を超えて、予報値に加えられる再現可能な手段であること。(2)人口学における特異性や感度に対して増分値を有していること。(3)新たな治療の評価または再分類及び予防策を創出するか、もしくは誤分類を減らして、不適切な治療を回避すること。(4)無病誤診率が低く、容易に取得可能で、かつ再現可能であること。(5)結果、及び相対的なリスク予測を実質的に向上させる見込みがあること。(6)治療を成功させて有害なイベントを実質的に低下させること。定量可能な形態学的及び生理学的特徴の特徴集合に基づけば、エコー/ドップラーモデルは理想的なバイオマーカーの一例である。どの特定の特徴が、複雑な突発性疾患の安定性を決定しているのかを認識し確認することが課題である。
【0037】
正常な状態では、自然の生理学的特徴は一般的に指数法則に従って急速に衰退する相関関係を持った鐘形曲線をたどる。しかしながら、例えば、水の液体から固体への遷移、規則状態から不規則状態への遷移、またはカオス的な生化学物質から病態への遷移等の相転移がシステムにもし生じた場合、ベキ乗則と呼ばれる強力な自己組織化の法則によってその遷移が特徴付けられる。ベキ乗則の分布は鐘形ではなく、むしろ継続的な減少曲線をたどるヒストグラムである。これは多数の小さなイベントまたはノードが小数の大きなイベントまたはハブと共存していることを含意している。スケールフリーネットワークのベキ乗則の分布は、ほとんどの相関関係には少しの接点しかなく、航空管制システムのように、それらは高度に結び付いた少数のハブによって一緒に保たれている、と予測する。結び付きが弱い多数のアソシエーションまたはノードが減衰して、ネットワークの原因と結果、及び安定性に対して密接に関連した少数の主要な特徴またはハブとなる。自然のネットワークでは、失敗によってより小さい数多くのアソシエーションが主に影響を受けるが、ネットワークの整合性に対するこれらの弱いアソシエーションの寄与度は実際には小さいということは注目に値する。
【0038】
本願で説明するように、発現前の病態の予測機の実施形態では、複雑性の科学に基づく「コンピュータ知能」が用いられる。臨床的及び技術的に導き出された異質のデータを一般的に用いる、従来の試験、スーパークランチャ、臨床リスクスコアの医療情報システムとは異なり、専門家がどの医療データが適切かを選択、確認し、さらにその病状の特徴集合に含めるべき特徴をさらに選択する。集積された多数の専門家の知識の確度によって、特徴の選択や特徴間の関係が定義される。一例として、エコー/ドップラーや他の最新技術を用いたデータ取得技術は、特徴を特徴付け、それらを定量化するための好適な手段の例であるが、それらは治療アルゴリズムのコンポーネントとしてはあまり注目されていない。それよりも、異種の血清マーカーや臨床リスク要因を個別に、また小さく分類することが、リスク及び治療アルゴリズムを構築する上での代表的な手段であった。
【0039】
特定の病状または疾患をネットワークとして考えた場合、従来の複雑な疾患の治療法では結び付きが弱い特徴に焦点が当てられ、付加的な疾患または合併症の表出に対する効果は限られていた。疾患が複雑であり、多変量であるからといってそれが複雑な、または複合的な一連の規則から発生するとは限らない。図2で、複雑性科学は、外見上複雑な状態の中で分かりやすさを捜し求めるよう我々を促し、また医学で利用されているように高度に結び付いた少数の特徴を用いて疾患の特徴付け、管理、及び予防を行うことを我々に教えてくれたことを思い出してほしい。多変量の病態は、実際のところ、複雑の1レベル下で機能する比較的単純な規則の結果である。自然の法則によって決定される特徴としては、数あるなかで、例えば、心臓の充満圧(mmHg)の比率、心筋弛緩(cm/s)、中心動脈圧(mmHg)が挙げられる。複数の高度に結び付いた特徴を、疾患が崩壊する時と同時に無効化しない限り、複雑な疾患の管理や予防はできない。自然発生ネットワーク(naturally-occurring networks)のベキ乗則の分布を理解して、疾患システムにそれを応用するためには、分子、血清マーカー、または個々の部分が疾患を特徴付けるというパラダイムの終焉が必要となる。その代わりに、並外れて相互に結び付いた特徴の少数の特徴集合がほとんどの行為を担い、複雑な人間の疾患における自己組織化を表わしているのである。
【0040】
複合性科学によれば、特徴集合のネットワークに編成されたハブ(ここで、特徴集合とは密接に関連した主要な特徴の集合である)は、ネットワークのトポロジーを規定し、構造上の安定性、動的な挙動、堅牢性、及び誤りを決定し、ネットワークの耐性を侵す。疾患を予測するためのリスク強度または疾患強度の評価は、最も高度に結び付いた少数の特徴に左右される。単純であるが高度に結び付いた特徴の特徴集合は突発性疾患を定義し、リスクを予想する。それによって、予測を、治療に焦点があてられ、成功または失敗を観測するものにできる。高度に選択された特徴の小さな特徴集合の集中的な特定や管理を、突発性疾患のリスクの検出及び管理、ならびに医療を予防の時代に前進させるために用いることができる。即ち、特徴集合内の主要な特徴を治療することは、発現前の、または既存の疾患自体を治療するのと同じ効果がある。
【0041】
相互に作用する特徴の相互の結び付きが高いネットワークは、複雑なイベントを予測する上での鍵となる。発現前、または既存の病態は複雑なイベントである。そのため、医学で利用した場合、複雑性科学は、突発性疾患とその疾患に関連するリスクの予測及び管理の理解に役立つ。第1のステップは、知識ベース140の特徴と定義された特徴集合150を作成することである。特徴集合150内の各特徴は、確認可能で測定可能な値を有しており、それは病状、または疾患の発生に関連している。知識ベース140は、形態学的、生理学的、及び生物学的なデータを特徴として整理及び確認し、自然の生理学的なイベントを特徴付けて、特定の疾患及び/または特定のもしくは一般的なリスクに合致する特徴の特徴集合を設定する。この知識ベース140は動的であり、1回につき1つの特徴に集められ、付加的な特徴のそれぞれが既存の特徴に優遇的に結び付いた生理学的及び形態学的な変化のネットワークを表わすことが好ましい。医療データは、定量可能な特徴として、また自然の生理学的なイベントの正常な変化の原因となる関数の変数として取り扱われることが好ましい。「正常」からの変化、またはある状態から別の状態への遷移は、特徴集合に含まれる特徴の数値的な平均化として表わすことができる。本願の記載に複雑性科学の専門用語を取り入れて、ノードは、一般的であるが結び付きが少ない特徴の集まりとして定義され、ハブまたは特徴集合は、互いに、また緊急(症状発現前の)疾患に強く関連した少数の主要な特徴の集まりとして定義される。ノードとハブのネットワークは、病態への遷移を含むネットワークの基本的な機能を維持している。特徴集合のそれぞれは、病状または病態を特徴付ける最も強く関連した特徴を含むハブの小さな集まりである。取得技術に由来するデータは、ソノグラムまたはX線撮影のように知識ベース140に直接入力されるか、または半導体メモリを介して、もしくは人の手入力によって知識ベース140に間接的に入力されるかのどちらかである。知識ベース140を作成した後、知識ベース140は複数の特徴及び得られた特徴集合160として、またそれらと共に記憶される。
【0042】
専門家は知識ベース140にアクセスでき、特定の特徴集合内の特徴を選択できることが好ましい。知識ベース140は、定期的に同業者によって評価され、修正される専門知識のオープンソースの生きた集まり(open-source living collection of expert knowledge)であることも好ましい。それによって専門家は、病状または病態に関連する少数の、例えば、好ましくは2〜4であるが一般的には10未満の高度に関連する特徴を有する特徴集合を編集、追加、削除、洗練することができ、またそれらについてコメントすることができる。さほど重要ではない特徴(即ち、ノードまたはデータ)を効率がよく高度に選択された特徴集合に加えたとしても、予測能力に実質的な影響を及ぼすことはない。この発見は、結び付きの少ないノードを追加または削除しても、ネットワークの整合性に目に見えるほどの影響がないというスケールフリーネットワークの特性である。比較のために、ウィキペディアはオンラインデータベースであり、ほとんど誰もがそこに収められた情報に貢献することができる。本願の記載に係る知識ベース140には、単なるデータではなく知識が収められている(即ち、知識とは、メタデータと、メタデータを上手く利用することが可能な文脈についての認識の組み合わせである)。また、本願の実施形態には、同業者によって評価される知識ベース140が含まれる。また、本願の実施形態には、知識ベース140に含まれる専門知識が含まれ、そこでは専門家だけが貢献者になることができる。特徴集合の予測能力の的を絞るか、または一般化して病状または疾患のリスクを突き止めるために、更なる特徴を追加する、または取り去ることができる。現在のところ、特徴集合を成す高度に選択された特徴を、教科書、従来のデータベース、オンラインのいわゆる専門診断ツール等で容易に突き止めることはできない。心不全に関連する単純な特徴集合、または疾患代用物モデルの特徴集合の例は、図6に示すように(1)駆出率、(2)慢性度、(3、4)充満圧の鋭さ、及び(5)心筋弛緩という5つの定量化可能な特徴を含む、または本質的にそれらからなる。
【0043】
図3に関して、本願で記載するように、医学診断及び疾患予防への複雑性科学の利用を実現するために機能する方法ステップを示すフローチャートである。従って、病状という用語は、健康、正常状態、発現前の疾患、発現が進行中のまたは発現した疾患自体を表わすのに用いられる。後者の3つは危険性のある病状である。医療データという用語は、様々な病状のうちの少なくとも1つに関係する、特徴と呼ばれる様々な個々の項目のことである。医療データの特徴のうち少なくとも一部は値を有している。まず、ステップ308で医療データが作成され、ステップ310で医療データが取得されて、処理システムに入力され、メモリ312に記憶される。医療データは、そのデータを取得する装置からリアルタイムに直接入力されてもよい。処理システムまたはメモリにデータを直接入力することのできる医療機器の例としては、図1の175として示すように、X線、エコー/ドップラー、磁気共鳴(MRI)や他の音波ホログラフィー、コンピュータ援用トモグラフィー(CATスキャン)、生化学実験器具、核装置、ゲノミックス等が挙げられるが、これらに限定されない。医療データは、例えば図1のコンピュータシステム10が、通信接続上、または例えばアプリケーションプログラムインターフェイスを用いたコンピュータ記憶装置用のネットワーク上に記憶された医療データにアクセスすることで間接的に入力することもできる。バッチデータ取得プログラムを用いて、1日ごと、週ごと、月ごと等の実質的なデータを医療機関から取得することもできる。医療データは、人が入力することもでき、あるいはデータをキーボードまたはマイク等の入力装置を介して入力することもできる。
【0044】
ステップ320で、本願に記載の方法は知識ベース140にアクセスする。知識ベース140には多数の特徴集合140が収められており、特徴集合140のそれぞれは、疾患代用物またはハブであり得る、一般的なまたは特定の病状を表わし、その特定の病状を特徴付ける高度に関連した少数の特徴、またはそれらの特徴の群を有していることを思い出してほしい。高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有している。この知識ベース140には、これらの病状についての専門家の実証された知識が収められていることも思い出してほしい。
【0045】
その後、本方法は、ステップ330で入力された個人の医療データとの相関関係が最も高い特徴集合、即ち、全ての特徴集合の部分集合を特定する。医療データの特徴のうち少なくとも2つは、それぞれの特徴集合の部分集合における高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つと相関関係がなければならない。このように、医療データの特徴は、医療データの特徴の知識から、それぞれの特徴集合の部分集合における高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換される。入力された医療データに基づいて、1つ以上の特徴集合が特定され得る。人の医療データは、その人に1つ以上の病状または病態があることを示し得る。同様に、医療データは知識ベース140に存在する特徴集合のどれとも相関関係がないことがある。この場合、専門家にさらに再調査してもらうために、その人に関する医療データを強調表示してもよい。従って、医療データを特徴と関連付けて、発現前の、または発現が進行中の、もしくは症状が明らかな病状の予測や定量化、及びその病状に対する治療の示唆または観測を行って、考えられる方針を特定するために、ステップ330でプロセス及びコンポーネントが実行される。
【0046】
適切な医療データが入力された後、ステップ340及び350で、医療データに対して連想アルゴリズム150、適切な比較、及び専門家による解釈が適用され、医療データの大きさが、選択された特徴集合のそれぞれの中の特徴に適用されて、医療データが分析された人が抱える累積的なリスクが判定されるか、または選択された特徴集合の病状がその人にないかが判定される。ステップ340に関して、医療データの特徴は正常または異常のどちらか、もしくは値の大きさを有し得る。特性が正常または異常のいずれかである状況では、そのような言語は、性別のような特性に関連することができ、その場合、特定の特徴集合が女性ではなく男性に関連したものであると、そのような特性では「男性」が正常となるのに対して「女性」は異常になる。ステップ340で、正常か異常か、もしくは値の大きさのうちの1つで医療データの特徴が、特徴は正常か異常か、または医療データの特徴の値の大きさは特徴集合の特徴の値の範囲内にあるかの点で特定の特徴集合の特徴と比較される。そして、比較の程度、または範囲内における値の位置(これも比較の一種である)が測定されるか、または基準に照らして解釈される。このように、人の危険性のある病状を特定することができる。
【0047】
主として医師または介護人に向けられている場合、本願に記載のプロセスステップは、考えられる病状を特定するのに必要な特徴集合及び特徴を評価する上でデータ収集者を支援するために、図1の更なる診断支援コンポーネント152等の追加の診断テストまたは診断評価を勧めるステップ360をさらに含む。医療データは、1つ以上の特徴集合を確信を持って特定するには曖昧であったり決め手にかけたりすることがある。上述したように、1つ以上の病状が特定されたり、または病状が何も特定されないという可能性もある。これらの状況は、例えば、特徴集合の最終的な特定、従って、医学診断には、例えば、5つの特徴が必要であるのに医療データには5未満の特徴しか含まれていない場合、または値の大きさが確かでない場合に起こり得る。知識ベース140内の各特徴集合は、入力された医療データの値に基づいて特徴集合の選択を行うために関連性確信因子(associated confidence factor)を有している。もし特定の特徴が矛盾していたり、そうでなければ意味をなさない場合、例えば、同一人物の実験テストが一致していなかったり、または確信のレベルが低すぎる場合には、所定のデータを確認、再現、除外、訂正等すべきである旨、または追加の医療データが必要である旨の文言が結果に含められる。
【0048】
本方法のように、複雑性科学を病態のリスク、またはその可能性の特定や予測に利用することは、同じ入力医療データを「専門家」に見せるよりも、驚く程強力である。同じ入力医療データを「専門家」に渡して、それを、本願に記載の専門知識及び応用複雑性科学を用いた、リスクの評価ならびに診断のための医療データの自動管理方法のための方法及び計算機化システムに入力した場合、「専門家」は一貫して予測ができないの対して、本願の自動システムは一貫して予測が可能である。専門家が特徴集合の特徴を知っていて、その特徴集合に関する入力された医療データにアクセスしたとしても、人間は本願に記載の自動システムと同じように一貫して、かつ迅速に病状のリスク負荷を予測することはできない。
【0049】
ステップ360で検討されたように、もし追加のデータが必要ではない場合、そしてもし危険性のある病状が存在する場合は、ステップ340での比較とステップ350での基準に照らした解釈とに基づいて、ステップ370で危険性のある病状が特定され出力される。
【0050】
さらなる実施形態では、結果が適切な形でアプリケーションプログラムインターフェイスまたはユーザーインターフェイスに出力され得る。それによって、医師は、病状がもしあればどれが主要なものであり、それらがどれくらいの程度で特定の患者に存在しているのか、即ち、その病状がある患者のリスクはどのようなものかを解釈することができる。追加の、及び/またはより正確な診察を支援するために、追加の医学検査またはさらなる測定が勧められ、出力に含められる。患者の病状のリスクまたは出現の規模に基づいた、考えられる治療の選択肢や助言も出力に含まれることが考えられる。
【0051】
ステップ380に示すように、本方法の一部として、付加的なルーチンまたは実施形態が検討される。図4及び図5のそれぞれは、危険性のある病状の出力リスクレベル、及び危険性のある病状の状態を導く更なる方法である。図4に関して、ステップ382に示すように、特徴集合の適切な特徴の個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルが割り当てられる。医療データの値の大きさに応じて、リスクレベルが、医療データが関係する特徴集合の高度に関連する特徴を基準にして当該データに割り当てられる。特徴集合の高度に関連する特徴のリスクレベルが、適切な基準に照らして査定され、ステップ384で危険性のある病状に対するリスクレベルが算出または取得される。ステップ386に示すように、危険性のある病状のリスクレベルが出力される。
【0052】
図5に関して、ステップ390で、医療データの値の大きさの位置が、特徴集合の高度に関連する特徴の値の範囲と比較される。ステップ392で、高度に関連する特徴の関連性レベルの強度が、当該位置に対して基準を基に取得される。その後、ステップ394で高度に関連する特徴の関連性レベルの強度が、とりわけ、病状なしまたは正常、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のいずれかである危険性のある病状の状態と関連付けられる。
【0053】
図1及び図3から、図3の方法は、図1に示すコンピュータシステムの様々な構成において容易に実施されることがはっきりと分かる。コンピュータシステムは、メモリ114に連結された中央処理装置112を備え、当該中央処理装置は、医療データを評価して人の危険性のある病状を特定するようにプログラムされている。コンピュータシステムは医療データを取得する。医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つ病状の特徴を有しており、その特徴のうちの一部は値を有している。メモリ114から医学知識ベース140がアクセスされる。医学知識ベース140は、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有している。特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有しており、その高度に関連する特徴のうちの少なくとも一部は値の範囲を有している。個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルを割り当てることができる。中央処理装置は、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて特徴集合とすることで決定する。このように、医療データの特徴の知識が、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換される。その後、中央処理装置は、前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである、前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて比較する。人のあらゆる危険性のある病状を特定するために、前記比較に対して基準が用いられる。コンピュータシステムは、適切なインターフェイスから、危険性のある病状に関する情報を出力する。中央処理装置は、前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と、危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定するようにさらにプログラムされていてもよい。前記状態は、その人は正常か、またはその人に発現前の、発現が進行中の、または発現した病状または疾患があるかのいずれかである。
【0054】
図3〜図5の方法は、図1のコンピュータシステムで使用可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体においても実施可能である。その記憶媒体には、実行可能なプログラムが記憶されている。そのプログラムは、メモリとデータ受信インターフェイスとに連結された中央処理装置に、図3〜図5の方法に係るステップを行うように命令する。特に、医療データが取得され、そのデータは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有している。前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有している。前記メモリに記憶された医学知識ベースは、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有している。前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有している。前記複数の特徴集合の部分集合が、少なくとも2つの医療データをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定される。このように、医療データの特徴の知識が、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換される。正常もしくは異常のいずれか、または値の大きさを有する医療データの特徴が、前記特徴集合の前記部分集合における前記高度に関連する特徴の特性と正常度及び値の範囲の面で比較される。この比較は、人のあらゆる危険性のある病状を特定するために、基準に照らして解釈される。このプログラムは、危険性のある病状がもしあれば、それに関する情報がインターフェイスから出力されるようにする。特徴集合内の特徴の個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルを割り当てることができる。前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と前記危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定するステップがあってもよい。
【0055】
本願で規定し、記載したように、医学診断及び疾患予防への複雑性科学の利用は、(1)特徴の大きな集合の定量化を可能にし、(2)作用を決定するための優れた検査を提供し、(3)生理学的、及び解剖学的な再形成(remodeling)を定量化し、(4)疾患を再分類し、(5)誤分類を低減し、(6)利用可能な技術を利用し、そして(7)多変量のバイオマーカーモデル、即ち、疾患代用物モデルを生成するコスト効率のよい手段となる。
【0056】
図6は、心不全のリスクを特定及び評価する特徴集合に含まれ得る特徴の例である。専門知識ベース140内において、「心不全」の特徴集合は、高度に関連する特徴(心筋弛緩、充満圧、及び駆出率)の小さな群を有している。これらの特徴のうちの1つだけでは、心不全、心房細動、脳卒中等の発現前の、発現が進行中の、または既存の病態のリスクを特徴付けるには不十分である。エコー/ドップラー超音波心臓検査から得られた、強く関連した特徴の小集合の特徴集合は、心疾患を特徴付ける6つの定量可能な特徴を示す。LAV指数(充満圧の慢性度)と心筋弛緩とは高度に関連し合った特徴である。安静時EF、充満圧、及びLVの質量は、結び付きが少ない(変数の)特徴である。SBP(収縮期血圧)は広く普及している特徴である。
【0057】
図7〜図10は、付加的な特徴集合160を示す。各行は、様々な病状の様々な特徴集合であり、その特徴集合の特徴は表の列として示されている。各病状に対する特徴集合は異なっている。特徴(列)と特徴集合(行)との交差部分は、可変発病度(variable severity)を表わす、それぞれの病状の特徴集合に関連する特徴の対応する大きさである。臨床上の相関関係は、良性の容量過負荷を示す慢性貧血、慢性疾患、甲状腺機能亢進症や他の病状を除く、良性の容量過負荷があるスポーツ心の特徴集合といった診断の特異性を向上させる。高血圧と、スポーツ心と、慢性貧血とを区別するために、例えば、高血圧の特徴集合には脈圧、中央動脈圧、及び拡張期圧も含まれている。心臓学の専門家は、これらの特徴は最低限であり、またこれらは、病状を特徴付けるために互いに最も強く関連していると判断した。即ち、表の各行は「ハブ」を表わし、そしてその行の各列は、病状を特徴付けるだけでなく、互いに最も影響を受ける、または互いに最も高度に関連した実際の医療数値データを表わしている。そのため、図3のステップ330で、まず入力された医療データが読み取られて、入力された医療データにどのような特徴があるかが判定される。入力された医療データ内の特徴に基づいて、それぞれの病状の1つ以上の特徴集合が選択される。そしてステップ340及び350で、連想アルゴリズムまたは基準が特徴の大きさに基づいて、特徴集合と関連するリスク負荷、即ち、選択された特徴集合によって規定される病状の状態を判定するための役割を果たす。
【0058】
図6〜図9は、様々な心臓に関する病状の特徴集合である。図10は、いくつかの代謝性の病状を特徴付ける特徴を示す。例えば、図3において、心臓に関する多くの病状の診断に関連する特徴は、その全てが超音波心臓検査や様々なドップラー測定法から得られたものである駆出率(EF)、充満圧及び充満速度、心筋弛緩速度、及び左心房容積指数である。これらの図は、知識ベース内の特徴集合を構築する場合に考えられ得る特徴を表わすことを意図したものである。病状のリスク負荷を割り当てるのに、特徴の大きさがどのようにして用いられているか、即ち、ABNは異常を意味し、NLは正常であり、VARは変数である等を以下で検討する。本願では、これらの特徴集合が、有意義で結び付きのあるデータの関係(meaningful and connected data relationship)で、リレーショナルデータベース、非リレーショナルデータベース、またはオブジェクト指向データベースのオブジェクトとしてアクセス可能であると考える。しかしながら、これらの特徴集合へのアクセスは前記に限定されるものではなく、さらに他のアクセス技術が使用でき、また開発することができると考えられる。
【0059】
図6〜図10の特徴集合で用いられる特徴の一部を示す表を以下に示す。最初の列は、病状を特徴付ける上で他の特徴と密接に関連した特徴である。2番目の列は、医療データの大きさ、または大きさの範囲であり、3番目の列は、これらの特定の医療データを有する個人の病状のリスクを判定するために、連想アルゴリズム150によって用いられる医療データの特定の大きさの範囲に割り当てられたリスク値である。これらの医療データが器機から直接得られることが好ましく、例えば、減速時間とE/Aの比率がパルス波ドップラー超音波心臓検査から直接得られ、心筋弛緩速度(e’)が組織ドップラー法を用いて得られて、その後、病状のリスク及び診断用にコンピュータシステム10に入力される。これらの特徴、その大きさ、及び医療データを得るのに用いた器機は例示のために示したにすぎない。生きた知識ベースには、数多くの実証された特徴が収められているだろう。全体を通して、知識ベース140が成長し、より洗練されるにつれて、特徴、特徴の大きさ、及びその大きさに割り当てられたリスクのいずれか1つ、ならびに生の医療データを得るのに用いられる技術も変化すると考えられる。
【0060】
【表1】
【0061】
上記の表において、例えば、75歳よりも上の人にはリスク値3が指定されるといったように、リスク値が医療データの大きさに関連付けられている。そうであるなら、連想アルゴリズムは、考えられる最大の値に基づいて医療データの大きさを特徴のリスク値の合計で除算したものに基づく特徴の実際のリスク値の合計であり得る。例えば、エコー超音波心臓検査から得られた患者の医療データは、駆出率(EF)が51%、充満圧(E/e’)が12mmHg、心筋弛緩速度(e’)が8.5cm/s、左心房容積指数(LAVI)が29ml/m2であったとする。51%の収縮期駆出率(EF)のリスク値は、最大リスク値が3のところ1であり、医療データが正常の範囲内にある場合にはリスク値0が指定される。充満圧(E/e’)が12mmHgの患者のリスク値は、最大リスク値が3のところ2であり、医療データが正常の範囲内にある場合のリスク値は0である。心筋弛緩速度(e’)が8.5cm/sの医療データのリスク値は2であり、リスクが最も高い場合には任意でリスク値3が割り当てられ、医療データが正常の範囲内にある場合のリスク値は0である。29ml/m2の左心房容積指数のリスク値は、考えられる最大のリスク値が3のところ1であり、医療データが正常の範囲内にある場合は最小リスク値0である。上記に示した連想アルゴリズムの一例を適用すると、上記の個人に収縮機能障害があるリスクは、(1+2+2+1)/(3+3+3+3)=0.5となる。いくつかの特徴、例えば、上記表の心係数の場合、測定値が2.0〜2.4であると「不使用」点となり、その特徴はリスク測定で用いられない。本願の方法及びコンポーネントからの出力は、その個人には、発現前の段階の病状であり得る収縮機能障害、拡張機能障害、続発性心房細動(secondary atrial fibrillation)、心房圧過荷重や、他のいくつかの心臓に関する病状の高いリスクがあること示し得る。続発性肺高血圧、原発性肺高血圧、混合性肺高血圧の更なる診断のために、本願の方法及びコンポーネントの出力は、肺動脈圧及び上大静脈流の特徴について入力された医療データを読み込むか、もしくはそれを要求する、または高血圧性心疾患について血圧及び左心房容積の入力された医療データを取得するか、もしくは要求する。
【0062】
その後、本願に記載の方法及びコンポーネントは、特徴の大きさを含む医療データを受信して、それを保存する。本方法及びコンポーネントは、病状の特徴集合に帰する最も関連性のある特徴を自動的に判定する。病状の状態の査定は、人に発現前の病状、発現が進行中の、または発現した病状があるかどうか、またはもし治療が進行中ならば、その治療が有効かどうかを医療データが示すリスクを評価することを意味する。この査定は、その一例を以下に示す連想アルゴリズム150を用いて実現される。特徴集合が変化して洗練されるのと同様に、連想アルゴリズム150も変化して洗練されること、及び医療データに対して適用することができる他の連想アルゴリズム150があることを当業者は認識するだろう。例えば、単純な計数法や平均値算出方法を、より洗練された確率統計法、または他の高位非線形評価法に置き換えることができる。2つ以上の連想アルゴリズム150を用いること、即ち、ある病状、例えば、卵巣癌には、他の病状、例えば、心臓病よりも単純な、またはより複雑な連想アルゴリズム150を用い得ることが考えられる。さらに、連想アルゴリズム150は自己学習的かつ自動修正的である。そのため、ますます多くの医療データの入力に伴って知識ベース140が変化及び修正されることに連想アルゴリズム150は対応することができ、より高い確率の予想及び診断を達成するために自身を収束させる、または修正することができる。
【0063】
一般的に、知識ベース140は、病状に関する特徴集合候補を追加する、または一部変更することによって作成される。第1のステップで、少なくとも1つの特徴候補が、特徴集合の残りに対して考慮される。これについて、特徴集合候補は少なくとも1つの他の既存の特徴を有している。前記少なくとも1つの特徴候補が、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と比較される。もし前記少なくとも1つの特徴候補が、異常であるか、異常である値の範囲内にあるかのうちの1つである場合に、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と一緒になることによって、前記特徴集合候補が関連する病状との関連性レベルが高まるような、前記少なくとも1つの他の既存の特徴との相関効果があれば、前記少なくとも1つの特徴が選択されて前記特徴集合候補に含められる。
【0064】
医療データに知識ベース140を応用し、そして特徴と医療データとの関係を判定するために連想アルゴリズム150を用いることによって、医療提供者は複雑なトップダウン式の臨床モデルとボトムアップ式の還元主義的モデルとの間の隔たりを埋めることができるようになった。本願に記載の自動式の方法及びシステムは、特徴集合に関連するあらゆる病状を予測、定量化、及び予防するために用いられる。治療の有効性を評価するために、患者は治療体制の間の様々な時に医療入力データを提供することができ、医師は治療が病状または疾患に対して有効かどうか、及び有効性の程度について判断することができる。従って、本願に記載の実施形態は、症状発現前の疾患の表出を予測し、病状または疾患の程度を定量化し、その疾患を予防するための方策を勧め、そして病状の治療の有効性を評価する非常に強固な手段を提供する。
【技術分野】
【0001】
本願は、カーディオバスキュラー・デシジョン・テクノロジーズ社(CARDIOVASCULAR DECISION TECHNOLOGIES, INC)の名で出願されたPCT国際特許出願であって、「専門知識及び応用複雑性科学を用いた、リスクの評価ならびに診断のための医療データの自動管理方法」と題する2008年10月10日に出願された米国仮出願第61/104497号の優先権を主張し、当該出願の内容はこの引用によりここに全て含まれているものとする。
【0002】
本記載は、概して、突発性の疾患(emergent diseases)に対するリスクを評価及び診断するために、医療データの分析に複雑性科学と専門知識を利用することに関する。より詳細には、本開示は、人の医療データにアクセスし、医学知識ベースから病状に関連する特徴の特徴集合にアクセスし、その人に危険性のある病状があるかどうかを特定するために、前記医療データの値を、関連する特徴集合の特徴の値の範囲と比較する方法、システム、または記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、加齢に関連する病態の治療は主として、観測された臨床症状、リスク要因、及び関連性のある有害イベントの二次的管理に向けられている。リスク要因は、根底にある生理学的摂動の結果であると多くの場合考えられているが、これらのリスク要因自体は、それらに起因する疾患の発現の主たる原因ではない。リスク要因は、原因ではなく結果になぞらえられることがより多くなってきている。
【0004】
疾患のほとんどは、根底にある生理学的摂動の結果である。それゆえに、一次予防に適したリスク査定には別のパラダイムがなくてはならない。臨床試験では、病態には多くの変数の分析が必要との認識がされているが、従来の臨床リスクアルゴリズムでは、調査される臨床リスク要因は十分に関連し合っておらず、また疾患の強度の数式を持たないため、有用性が限られている。さらに、個々のバイオマーカーまたは非数理的観測は、発現イベントの予測を試みる際に再現できないことがある。実のところ、結果を管理することは、原因の管理を成功させることを保証するものではない。病態の臨床上及び緊急性のリスク負担(clinical and emergent risk burden)の双方に十分に対処し、それらを定量化しなければ、治療は一般的な疾患を部分的に緩和するのに成功するにすぎないものとなる。複雑な多変量性(独立した変数の多い)の疾患(complex multivariate disease)の管理を成功裏に行うには、「1疾患、1リスク要因、1血清マーカー(one disease, one risk factor, and one seromarker)」モデルの限界を超越して、医学をより包括的で、かつ臨床上に現実的なシナリオに向けて動かしていかなければならない。
【0005】
予測モデリングは、疾患の予測に用いられる一技法である。一般的に、予測モデリングのアルゴリズムには、履歴データを解釈して、未来についての予測を立てる数理アルゴリズムが採用されている。しかしながら、特に疾患の予測に適用される場合、予測モデリングにも短所がある。上述したように、データの収集に用いられる臨床モデルに関与しているのは、既に疾患がある人であって、世間一般に内包された緊急性のリスクではない。統計学的な観点から言えば、疾患がある対象の使用は、分布の極側、即ち、一般的な鐘形曲線の極左または極右側でデータポイントの集まりをもたらす既に偏った母集団となる。観測された異質のリスク要因(disparate observed risk factors)と複雑な変更因子(complex modifiers)とに基づく多変量リスクモデルは分析するのが難しいことが医学文献で知られている。また、臨床リスクの変更またはイベントの発生に基づく個々のリスクと管理が、観測した要因の発生を防止しないことは事実である。
【0006】
医師のほとんどが根拠に基づく医療研究に由来する関連性のある結果の存在を知らないか、医学文献の多様性や規模に圧倒されているか、またはその両方によって、病態への予測モデリングの利用がさらに妨げられている。インターネットデータベース及び情報検索技術の進歩は、分析の新技術、及び意思決定者への医療情報の配布にはずみをつけた。遠隔医療や現行のインターネットによる補助的手段であるスーパークランチャー(super-cruncher)では、診断用の決定支援ソフトウェアに焦点が当てられており、臨床所見の入力によって支えられている。集合的な医療の経験(aggregate health care experience)に内包された情報をインターネットを使って検索することによって、医師は、より情報を得た上で診断を行うこと、誤診を減らすこと、根拠に基づく医療の利用を強化することができるようになると考えられる。これらのインターネットによる診断ソフトウェアツールは、一般的に、疾患の分類法を用いて雑誌記事またはワーキンググループを統計学的に検索して様々な疾患に最も関連しそうな言葉の類型を求める。最大の努力や期待にも関わらず、現在、スーパー情報クランチャー(super information cruncher)は診断用のトップダウン式検索に利用されているが、その成功率は約10%でしかない。このパラダイムには最初から難がある。臨床上明らかな疾患のデータを単に探しても、患者または医師にどのようにこの疾患を予防するかを知らせることはできない。
【0007】
疾患予防の別のパラダイムに移るために、また本願に記載の実施形態の文脈においてデータ、メタデータ、理解、及び知識の違いについて論じることは有益となる。データは、観測、数理計算、または実験によって導き出された数値であり、一般的には機械を用いて取得される。情報は、文脈中のデータである。情報は、データと、そのデータに関連する、特定の対象、イベント、またはプロセスについての記述、解釈、または解説の集まりであり、診断医がデータの正常状態または異常状態との関係を解釈することがその例である。メタデータは、データについてのデータであり、その情報が得られた、または用いられる文脈を記述するものであり、「最終通知」等のデータの要約や高レベルな解釈がその例である。理解は、論理的な選択を行うためにメタデータと情報を用いることであり、医師が特定の疾患及び/または患者を考えて特徴または検査を選択することがその例である。理解は、具体的な知識を大まかな概念に関連付けることによって、経験を理解可能なものにする人間の能力とも考えられる。知識は、メタデータと、メタデータを上手く利用することが可能な文脈についての認識の組み合わせであり、特徴同士の関係がその例である。人工知能では、情報とメタデータをどのように用い、またどのようにそれらを関連付けるかを知識が決定する。人工知能アルゴリズムに応用される蓄積された知識は、一般的に知識ベース140と呼ばれる。該して、知識ベース140は、情報と知識の一元的な貯蔵所である。それぞれの知識ベース140は、その出発点となった専門家に固有なものであるが、無規律な知識ベース140は、高次な予測を立てることができない。臨床医学では、健康状態の判定や疾患の管理に情報科学を様々な形で用いることが模索されてきたが、今のところ、これらの技術の実施は、疾患を構成する要素についての連想知識を持つ医師、専門家や科学技術者等の医療提供者の複合的な多変量知識ベース140を上手に再現できておらず、またはそれに取って代わるものにもなっていない。
【0008】
インフォマティックスには、全般的な情報科学、情報処理の実践や情報システムの設計が含まれる。インフォマティックスは、情報の記憶、処理、及び通信を行う自然及び人工のシステムの構造、挙動、ならびに相互作用についての学問である。保健医療インフォマティックス(health and medical informatics)では、衛生及び生物医学における情報の取得、記憶、検索、ならびに使用の最適化に必要なリソース、装置、及び方法が扱われる。他方、複雑性科学が含まれる情報科学は、情報の収集、分類、操作、報告、記憶、検索、及び配布に関する学際分野である。
【0009】
複雑性科学は新興的な学問であり、そこでは、科学者は多くの場合複雑な現象の原因となる単純で非線形の結合規則(simple non-linear coupling rules)を探る。ここで特に重要なのは、疾患を複雑系として研究可能なことである。複雑性科学では、自然法則の数式を特徴と呼ぶ。特徴は、それがもしイベントの認識を可能にするものであれば特性として考えられる。例えば、ある人は、他の人を性別、肌、目、身長等の特徴で認識する。複雑性科学では、これらの特徴は、特徴集合と呼ばれる、予測を裏打ちする、高度に関連する特徴の小さな集合にグループ化される。
【0010】
無症状性の、または発現前の疾患を確信を持って予測することは、疾患の予測及び予防、ならびに現在の医学的危機を管理する上で不可欠であるが、現在の疾患予測や疾患管理では不十分である。医療の予測または誘導の支援を目的としたデータインフォマティックスや情報科学を人の疾患の管理に利用することの臨床的な有用性には限界があった。しかしながら、本願で説明するように、情報科学の文脈の中で、複雑性科学は、疾患の予測およびそのリスクの大きさの決定に強力に寄与するものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
医学界では、疾患を形成段階または発現前の段階で検出することが可能な、疾患代用物(disease surrogate)とも呼ばれる特徴集合のリスクモデルが未だに特定されておらず、また採用もされていない。一般大衆において、高リスクを抱える無症状性の対象者を特定したり個々に特徴付けることは、依然として問題が多く、また不十分である。このジレンマに対する満足のゆく解決法は、これまでのところ採用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、方法、前記方法の態様が盛り込まれたシステム、実行可能なプログラムステップの形で前記方法の態様が盛り込まれた非一時的なコンピュータ可読記憶媒体、及びそのような方法、システム、及び記憶媒体の一部をなすように作成された医学知識ベースに関する。
【0013】
特に、方法の一実施形態では、危険性のある病状があるかどうかを特定するために、人の医療データが評価される。この方法は、前記医療データを取得することから始まる。前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記特徴のうち少なくとも一部は値を有している。医学知識ベースにアクセスする。前記知識ベースは、様々な病状に関する複数の特徴集合を有している。前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有する。前記高度に関連する特徴のうち少なくと一部は、値の範囲を有している。前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定する。このように、前記医療データの前記特徴の知識が、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換される。その後、前記医療データの正常または異常を示す特性、もしくは値の大きさが、前記変換された高度に関連する特徴の同様の特性および値の範囲と比較されることで前記医療データの比較が行われる。この比較を、基準に照らして解釈することで、あらゆる危険性のある病状を特定することができる。
【0014】
医学知識ベースに関して、病状に関する特徴集合候補を知識ベースに加えるまたはそれを一部変更する方法が提供される。特徴候補は、前記特徴集合候補であるか否かが考慮される。前記特徴集合候補は、少なくとも1つの他の既存の特徴を有する。前記特徴候補は、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と比較される。もし前記少なくとも1つの特徴候補が、異常であるか、または異常である値の範囲内にあるかのいずれか1つである場合に、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と一緒になることによって、前記特徴集合候補が関連する病状との関連性レベルが高まるような、前記少なくとも1つの他の既存の特徴との相関効果があれば、前記少なくとも1つの特徴候補を選択して前記特徴集合候補に含められる。
【0015】
一実施形態は、危険性のある病状があるかどうかを特定するために、人の医療データを評価する方法である。この実施形態は、コンピュータを用いて前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程を含む方法である。この実施形態は、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程を含む。この実施形態は、前記コンピュータを用いて、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程を含む。この実施形態は、前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについてコンピュータを用いて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程と、前記危険性のある病状に関する情報を前記コンピュータから出力する工程とを含む。
【0016】
一実施形態は、危険性のある病状を特定するために医療データを評価するコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、メモリに連結された中央処理装置を備え、前記中央処理装置は、前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程により前記医療データを評価するようにプログラムされている。また、この実施形態は、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程を行うようにプログラムされた前記中央処理装置を含む。また、この実施形態は、前記中央処理装置を用いて、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより、前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程を行うようにプログラムされた前記中央処理装置を含む。また、この実施形態は、前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて前記中央処理装置を用いて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程を行うようにプログラムされた前記中央処理装置を含む。また、前記中央処理装置は、前記危険性のある病状に関する情報をインターフェイスから出力する工程を行うようにプログラムされている。
【0017】
一実施形態は、実行可能なプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムは医療データを評価し、前記媒体はコンピュータシステムに実装され、前記プログラムは、メモリとデータ受信インターフェイスとに連結された中央処理装置に対して命令する。この実施形態では、前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程が行われる。この実施形態では、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程が行われる。この実施形態では、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより、前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程が行われる。この実施形態では、前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程が行われる。この実施形態では、前記危険性のある病状に関する情報をインターフェイスから出力する工程が行われる。
【0018】
一実施形態は、様々な病状に関する特徴集合を含む医学知識ベース用に、病状に関する特徴集合候補を追加または部分的に変更する方法であって、人の医療データを前記特徴集合に対して評価することで危険性のある病状が特定され、前記医療データの少なくとも一部は値を有し、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有する方法である。前記方法は、前記特徴集合候補に関係すると考えられる少なくとも1つの特徴候補をコンピュータに入力する工程であって、前記特徴集合候補は、少なくとも1つの他の既存の特徴を有する工程を含む。前記方法は、前記コンピュータを用いて、前記少なくとも1つの特徴候補を前記少なくとも1つの既存の特徴と比較する工程を含む。前記方法は、もし前記少なくとも1つの特徴候補が、異常であるか、異常である値の範囲内にあるかのうちの1つである場合に、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と一緒になることによって、前記特徴集合候補が関連する病状との関連性レベルが高まるような、前記少なくとも1つの他の既存の特徴との相関効果があれば、前記少なくとも1つの特徴を選択して前記特徴集合候補に含める工程を含む。前記方法は、前記医学知識ベースに前記特徴集合候補を含める工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、一実施形態に係るコンピュータシステムとネットワークのブロック図である。
【図2】図2は、一実施形態に対して複雑性の記号を用いた概略図である。
【図3】図3は、一実施形態に係る、危険性のある病状の特定に対して医療データを分析する方法のフローチャートである。
【図4】図4は、一実施形態に係る、危険性のある病状の特定に対して医療データを分析する方法のフローチャートである。
【図5】図5は、一実施形態に係る、危険性のある病状の特定に対して医療データを分析する方法のフローチャートである。
【図6】図6は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図7】図7は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図8】図8は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図9】図9は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図10】図10は、様々な病状に関する特徴集合の実施形態の一例である。
【図11】図11は、一実施形態に対して複雑性の記号を用いた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本記載には、添付図面への参照が含まれる。本発明は、多くの様々な形態で実施することができ、本願に規定の実施形態に限定されるものと解釈してはならない。それよりも、例示の実施形態は、本開示を十分、かつ完全なものとするため、また当業者に本発明の範囲を十分伝えるように規定されている。全体に渡って、同様の符号は同様の要素を参照している。
【0021】
当業者に理解されるように、本願に記載の実施形態は、知識ベース140と、複数の連想アルゴリズム150と、複数の特徴集合160とを維持管理する方法、データ処理システム、コンピュータプログラム製品、及びサービスである。複数の特徴集合160のそれぞれは、病状を特定するため、及び特徴の大きさを表わす入力医療データを評価するために利用される1つ以上の連想アルゴリズムを利用する高度に関連する特徴の集合を有する。個人の病状または疾患のリスクが特定、及び判定される。個人の病状または疾患に対するリスクの判定には、標準からの生理学的な差異の定量化が含まれる。従って、実施形態のコンポーネントは、ハードウェアの態様、またはソフトウェアの態様とハードウェアの態様とを組み合わせた実施形態の形体をとり得る。さらに、実施形態のコンポーネントは、コンピュータで使用可能な記憶媒体上のコンピュータプログラム製品であって、その媒体に盛り込まれたコンピュータで使用可能なコードを有するコンピュータプログラム製品の形をとり得る。固体記憶装置、ハードディスク、CD−ROM、光学記憶装置、ポータブルメモリ、インターネットまたはイントラネット等に対応した伝送媒体、もしくは磁気記憶装置を含む、あらゆる好適なコンピュータ可読媒体を用いることができる。
【0022】
本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理するソフトウェアのコンポーネントのコンピュータプログラムソースコードは、C、Java、Smalltalk、またはC++等のオブジェクト指向のプログラム言語で書かれていてもよい。知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を含むコンポーネントのオブジェクトコードは、個別のサーバーまたはクライアント上で全面的に、個別のまたはバックアップのサーバーまたはクライアントで部分的に、個別のまたはバックアップのサーバーまたはクライアント上で部分的に、リモートサーバーまたはリモートクライント上で部分的に、もしくはリモートサーバーまたはリモートクライント上で全面的に実行してもよい。後者の場合には、リモートサーバーまたはリモートクライアントは、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)を介して個別のまたはバックアップのサーバーまたはクライアントに接続されていてもよいし、あるいはインターネットサービスプロバイダを用いて、インターネットを介してリモートサーバーまたはリモートクライアントへの接続を行ってもよい。
【0023】
本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理する方法を、実施形態に係る方法、装置(システム)、コンポーネント、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/またはブロック図を参照して以下で説明する。フローチャート図及び/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図及び/またはブロック図におけるブロックの組み合わせは、コンピュータプログラムの命令によって実現可能なことが分かるだろう。これらのコンピュータプログラムの命令を、1つ以上のコンポーネントとして汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラマブルなデータ処理装置のプロセッサに設けて、装置が生成される。その結果、コンピュータまたは他のプログラマブルなデータ処理装置のプロセッサを介して実行される前記コンポーネントが、フローチャート及び/またはブロック図のブロックで規定されている機能/動作を実現する手段を形成する。
【0024】
本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびにそれらを実現するのに必要なユーザーインターフェイス及びアプリケーションインターフェイスのコンピュータプログラムのコンポーネントも、コンピュータまたは他のプログラマブルなデータ処理装置を特定の様式で機能するように仕向けることが可能なコンピュータ可読メモリに記憶されていてもよく、その場合、コンピュータ可読メモリに記憶されているコンポーネントが、フローチャート及び/またはブロック図のブロックに規定されている機能/動作を実現する構成要素を含む製品を生成する。コンピュータプログラムのコンポーネントは、コンピュータまたは他のプログラマブルなデータ処理装置に導入されて、前記コンピュータまたは他のプログラマブルなデータ処理装置上で行われる一連の動作ステップを生じさせてコンピュータによって実現されるプロセスを生成してもよく、それにより前記コンピュータまたは他のプログラマブルな装置上で実行されるコンポーネントが、フローチャート及び/またはブロック図のブロックに規定されている機能/動作を実現するためのステップを提供する。
【0025】
図1を参照して、知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびにそれらを実現するのに必要なユーザーインターフェイス及びアプリケーションプログラムインターフェイスを維持管理する、本願に記載の実施形態に合致するコンピュータネットワークシステム10の高レベルなブロック図を示す。コンピュータネットワークシステム10は、中央処理装置(CPU)112、メモリ114、及び様々なデジタルの及び/またはアナログのインターフェイス128〜138をそれぞれが備え得る多数のネットワークコンピュータ110を含むことが好ましい。個々の装置は、内部通信バス122を介して互いに通信を行う。CPU112は、汎用のプログラマブルプロセッサであり、メモリ114に記憶された命令を実行する。なお、図1には1個のCPU112を示しているが、複数のCPUを有するコンピュータシステムを用いてもよいことが分かるだろう。CPU112は、オペレーティングシステム120、プロセスステップ及び方法ステップ、ならびに本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、複数の特徴集合160、及び他のアプリケーション300を維持管理するコンピュータプログラム製品を実行することができる。CPU112は、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびに適切なユーザーインターフェイス及びアプリケーションプログラムインターフェイスを維持管理するコンピュータプログラムのコンポーネントを生成することもでき、また、本願に記載のこれらのプロセス、機能、及び方法100を行うための方法論を具現化したものであるプログラム命令を送受信することができる。通信バス122は、様々な装置間でデータ、コマンド、及び他の情報の転送をサポートする。通信バス122を、1つのバスとして簡略化して図示しているが、一般的には、CPU112をメモリ114に直接接続し得る内部バス124を含む複数のバスとして構成されている。
【0026】
メモリ114は、オペレーティングシステム120、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理するコンポーネント、他のアプリケーション300、データならびにプログラムを記憶するために、読み出し専用メモリ(ROM)116と、ランダムアクセスメモリ(RAM)128とを含む。一般的に、「立ち上げ」が必要なオペレーティングシステム120の部位またはプログラム、ルーチン、モジュールはROM116に記憶されている。一般的に、RAM118には、コンピュータの電源が落された時に消去されるプログラムやデータが記憶される。メモリ114を1つのモノリッシックなものとして概念的に示しているが、メモリは、その一部または全てがCPU112と同じ半導体基板に一体化されたキャッシュと他の記憶素子の階層構造で配置されている場合が多いことがよく知られている。RAM装置118は、コンピュータの主記憶装置、ならびに、例えばキャッシュメモリ、不揮発性メモリまたはバックアップメモリ、プログラマブルメモリまたはフラッシュメモリ、ポータブルメモリ、他の読み出し専用メモリ等のあらゆる予備レベルのメモリを含む。それに加えて、メモリ114には、例えば、プロセッサ内のキャッシュメモリ、もしくは、例えば大容量記憶装置上、またはネットワークを介してコンピュータに連結された他のコンピュータ上に記憶されたバーチャルメモリとして用いられる他の記憶容量等、コンピュータ内の他の場所で物理的に存在するメモリ記憶装置を含むものと考えることができる。本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理し、またそれらを含むコンポーネントを用いて、データをその元からアクセスすること、及び/または本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理するコンポーネントがインストールされ、また実行されるコンピュータ処理装置110の内外に位置するROM及びRAMを含むあらゆるメモリ114内にある分散型知識ベース140にアクセスすることができることは十分に理解できる。図1に示すように、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理し、それらを実施するコンポーネントは、ネットワーク全体における他の装置上に記憶された同様のコンポーネントに接続されて、それらから医療データを取得するか、そうでなければ本願の原理に係る方法を実現及び実行するためにそれらとアナログデータ及びデジタルデータのやり取りを行ってもよい。
【0027】
本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびに他のアプリケーション300を維持管理するコンポーネントとオペレーティングシステム120はメモリ114に常駐している。当該技術で周知なように、オペレーティングシステム120は、とりわけ、デバイスインターフェイス、メモリメージの管理、マルチタスクの管理等の機能を提供する。そのようなオペレーティングシステムの例として、Linux、Aix、Unix、Windows系オペレーティングシステム、Z/os、V/os、OS/400、Rtos、ハンドヘルドオペレーティングシステム等を挙げることができる。これらのオペレーティングシステム120や、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160、ならびに他のアプリケーション300を維持管理し、それらを実施する他の様々なコンポーネント、他のコンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール等も、例えば、分散型またはクライアント−サーバ型のコンピュータ環境においてネットワーク170、180を介してコンピュータ110に連結された他のコンピュータ内の1つ以上のプロセッサ上で実行してもよく、それによってコンピュータプログラムの機能を実現するのに必要な処理を、ネットワーク170、180全体の複数のコンピュータ110に割り振ることができる。
【0028】
概して、本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理し、それらを実施するコンポーネントは、CPU112内で実行されて実施形態を実現する。実施形態がオペレーティングシステムの一部、もしくは特定のアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール、または一連の命令として実現されたとしても、本願ではコンピュータプログラム、または単にコンポーネントと呼ぶことがある。本願に記載の知識ベース140、複数の連想アルゴリズム150、及び複数の特徴集合160を維持管理し、それらを実施するコンポーネントは、一般的に、色々な時に色々なメモリ114や装置内の記憶装置に常駐している。処理装置110内の1つ以上のプロセッサによって読み出されて実行されると、記載した様々な態様を実施するステップまたは要素を実行するのに必要なステップを装置110に行わせる1つ以上の命令を前記コンポーネントは含む。コンポーネント100は、少なくとも1つ以上の知識ベース140を含む。コンポーネント100はさらに、本願に記載の特徴に係る病状または疾患、もしくは病状または疾患のリスクを特徴付ける高度に関連する特徴の特徴集合160を1つ以上含む。コンポーネント100はさらに、特徴集合内の特徴の入力医療データを取得してそれを評価し、その病状または疾患に対する個人のリスクを判定する連結評価アルゴリズム150を1つ以上含む。コンポーネント100はさらに、データ取得方法、データ入力方法、データソート方法、及び医師または他のユーザーによってアクセス可能なアプリケーションインターフェイスまたはユーザーインターフェイスを介した形で結果を表示する出力コンポーネント、ならびに他の適切なユーザーインターフェイスやアプリケーションプログラムインターフェイスを含む。
【0029】
なお、当該技術で周知なように、コンピュータ110は通常、CPU112と接続機器との間に好適なアナログの及び/またはデジタルのインターフェイス128〜138を備えていることが分かるだろう。例えば、コンピュータ110は通常、外部と情報の通信を行うために数多くの入力と出力を受信する。医師、または他のユーザーとのインターフェイスの場合、コンピュータ110は通常、1つ以上のソフトウェア開発者用入力装置(software developer input device)162〜168、例えば、数あるなかで、キーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック、タッチパッド、及び/またはマイクや、CRTモニタ、LCD表示パネル等のディスプレイ、及び/またはスピーカを備える。しかしながら、コンピュータ110の一部のインプリメンテーション、例えば、一部のサーバーインプリメンテーションでは、ソフトウェア開発者の直接的な入力や出力がサポートされないことがあることが分かるだろう。端末インターフェイス134は、1つまたは複数の端末、もしくはラップトップ型コンピュータ144の接続をサポートし、1つまたは複数の電子回路カード、もしくは他のユニットとして実現され得る。医療データをコンピュータシステム110に直接入力することができるように、1つ以上の医療器具175からの入力、例えば、音波ホログラフィー、トモグラフィー、実験室での検査、電心図等に由来するデータが直接接続されていることが考えられる。医療データを、ポータブルメモリを介して、インターネット、電話、または無線等の伝送媒体上で、または手入力で入力できることが分かる。また、医療データは、好ましくは1つ以上の回転式の磁気ハードディスク装置を備えたデータ記憶装置からアクセスすることができる。テープ、フラッシュメモリ、または光学式の駆動装置を含む他の種類のデータ記憶装置も用いることもできる。追加の記憶装置として、コンピュータ110は、数あるなかで、例えばフロッピーまたは他の取り外し可能ディスク用のドライブ、ハードディスク、直接アクセス記憶装置(DASD)や、例えばコンパクトディスク(CD)ドライブ、デジタルビデオディスク(DVD)ドライブ等の光学式ドライブ、及び/またはテープドライブといった1つ以上の大容量記憶装置を含むメモリ114も含み得る。知識ベース140、1つ以上の特徴集合160、及び/または1つ以上の連想アルゴリズム150は、インターネット180、WAN170、及び他の接続機器128を介して存在する他のコンピュータ110のRAM、または大容量記憶装置を含む記憶装置上に存在していてもよい。当業者は、インターフェイス128〜238が無線式であり得ることもさらに予想するだろう。
【0030】
さらに、コンピュータ110は、ネットワーク170、180に連結された他の処理装置や知識ベース140と情報の通信を行えるようにするために、1つ以上のネットワーク170、180とのインターフェイス136、138を備えてもよい。ネットワークインターフェイス136、138は、ネットワーク170、180への/からのデータの伝送用に物理的な及び/または無線による接続を提供する。ネットワーク170、180は、インターネット、ならびにイントラネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、または例えば電話伝送線路、衛星、光ファイバー、T1回線、無線、公衆線や、あらゆる様々な利用可能な技術を用いた他の内部または外部ネットワークといったより小規模な自己完結型ネットワークであり得る。当業者は、コンピュータシステム110が2つ以上のネットワーク170、180に同時に接続され得ることが分かる。コンピュータシステム及び遠隔システム128は、デスクトップ型コンピュータまたはパーソナルコンピュータ、ワークステーション、ミニコンピュータ、中級機のコンピュータ、メインフレームコンピュータであり得る。また、任意数のコンピュータ、様々な医療検査装置及び医療データ取得装置の処理装置、ならびに大型のメインフレームサーバーほどの十分な情報処理能力を必ずしも持たないパーソナルハンドヘルドコンピュータ、個人用携帯型情報端末、無線電話等の他のマイクロプロセッサ装置が、ネットワーク170、180を介してネットワーク接続されていてもよい。さらに、実施形態には、1つ以上の知識ベース140を生成または部分的に変更すること、特徴集合の特徴の入力医療臨床データを提供すること、連想アルゴリズム、もしくはコンポーネント100またはその他のコンポーネントが行うことのできる他のプロセスステップを生成、提供、または部分的に変更することのうちの1つ以上を提供するサービス提供者によって配布、管理、供給される方法及びプログラム製品の任意のコンポーネントが含まれ得る。
【0031】
本願の文脈の中で、メモリ114は、別のコンピュータ、クライアント、サーバー、または大容量記憶装置等の他のハードウェア記憶素子上、もしくはネットワークを介してコンピュータに連結された他のコンピュータ上に物理的に置かれた装置内の不揮発性メモリまたはバックアップメモリ、もしくはプログラマブルメモリまたはフラッシュメモリ、読み出し専用メモリ等であると考えることもできる。メモリ114は、本願のコンポーネントのどれかを有する1つ以上の回転式磁気ハードディスク装置、テープ駆動装置、または光学式駆動装置等のリモートアーカイバルメモリを含み得る。メモリ114は、本願に記載のコンポーネントをそれぞれが1つ以上有し得る1つ以上の大容量記憶装置、例えば、数なかでも、フロッピーまたは他の取り外し可能なディスク用のドライブ、ハードディスク、直接アクセス記憶装置(DASD)や、例えばコンパクトディスク(CD)ドライブ、デジタルビデオディスク(DVD)ドライブ等の光学式ドライブ、及び/またはテープドライブ等であると考えることもできる。
【0032】
本願に記載の実施形態では、病状のリスク、または病状の標準からの差異を予測し、評価するために「ボトムアップ型」のアプローチが利用されており、研究者は、根源的な理論または方針、即ち、特徴集合の特徴を導き出すために、物理的、機能的、化学的、及び/または生物学的な現象における手がかりを求める。この目的は、どの観測可能な現象が基本的なものかを確認し、そして、これらの基本的な現象を病状または疾患のリスクの特徴、あるいは疾病それ自体の特徴として結び付ける。このモデルでは、特徴は、自然法則によって決定される数理データまたは文字データである。言い換えれば、特徴は、検査、試験、機械等から導き出される数理データまたは論理データである。技術背景で説明したように、疾患またはリスクのインスタンスは、正常な状態または異常な状態の複合的な表れであり、相互に作用する特徴の集まりから出現するものである。本願で利用される「ボトムアップ型」のアプローチは、多変量特徴の重層的なリスク分析(multivariate feature-stratified risk analysis)を提供し、「トップダウン式」の分析でなされるよりも、基準リスクのより広い範囲に渡って効果を比較する。ボトムアップ式モデルに特有の魅力は、無症状性の、または発現前の病態を検出し、健康に係る未来のイベントを予測し、また疾患の発現を防止するために、相互に関係のある定量可能な特徴を用いることの潜在性である。疾患の特徴付けや管理に対するボトムアップ式のアプローチの使用は、現状では非常に限られている。
【0033】
密接に関連した特徴の特徴集合から出現する疾患のまたは疾患前のインスタンスを研究するために、本願の知識ベース140及び連想アルゴリズム150に採用されている複雑性の科学は、発現インスタンスの予測、またはリスク評価の精度が実際に高い。本願に記載の実施形態の動機となったいくつかのパラダイムは、「同じ深度の類似点を持つシステムは、同じ単純な規則に従わなければならない」、及び「全ての科学者は、可能な限り最も単純な見方で世界を見る努力をしなければならない」というものである。人間の疾患を含む全ての複雑なネットワークの構造や進展は、単純であるが奥の深い自然法則によって支配されている。リスク評価技法はそれぞれに限界と利点があるが、情報科学、とくに複雑性科学には論理的な魅力がある。複雑性科学は、密接に関連した特徴の集まりから出現する現象(医学では、表出した疾患またはリスクに最もよく関連している)についての学問である。複雑性科学の観点から図式化したシステムを示す図2及び図11について考えてみる。図2及び図11の底部には、組織化されていないシステムの基本的な構成要素を表わすカオス210がある。図11は、医学の世界では、これらの基本的な構成要素212に遺伝子、タンパク質、糖類、電解質、分子、原子等が含まれることを示している。これらの基本的な構成要素212の中心には、これらの構成要素212をシステム、状態、ネットワーク等を成すように整列させる生来永続的で不変的な自然の法則がある。この現象は決定論的カオスと呼ばれるものである。疾患の発生等の組織化された状態は、これらの自然の法則またはパターンの存在なしには進展できなかったと考えられる。複雑性230の序列の頂点にあり、対カオス(opposite chaos)となるのがフラクタルである。フラクタルとは、それ自体において繰り返されるパターンである。そのことから、フラクタルのシステムは高度な組織化を表わしている。カオス210と複雑性230またはフラクタルとの間には単純性220がある。複雑性科学自体は、フラクタルの複雑系へとつながる単純なグループ分けを研究の対象としている。図11に、単純なグループ分けの一例を速度、圧力、及び容量の特徴を含む知識ベース222として示す。本願に記載の文脈の中で、複雑性科学は、高度に関連した定量可能な少数の特徴を簡素化し、それらを把握して、既存の、または発現前の病状や病態を特徴付けるのに利用される。
【0034】
病状のリスクの予測や定量化、あるいは疾患の予防、処置、または治療を試みる際に、医師は、生物の複雑な内的関連性を無視してカオス、即ち、特定の分子または遺伝子、あるいは臨床リスク要因に焦点を当てた場合、計り知れない難題に直面することになる。複雑性科学の文脈の中で疾患の特徴を検討することによって、複雑な物事が簡素化され、基本的な構成要素の相互作用の不確実さを検討するための枠組みが提供される。この枠組みの結果、病態232として図11に例示した癌、糖尿病、生死、痴呆、心房細動、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、心不全、睡眠障害や高血圧等の1つ以上の複雑なイベントを予見することが可能となる。予見は、病態232等の病状の予測につながるため、医師は予防策を用いて考えられる病態232のリスクに素早く対処することができるようになり、病態232の完全な表出を回避できる。
【0035】
疾患及び/または疾患のリスクは、次に挙げる特性のうちの大半、または全てを有している。(1)互いに密接に関係しているか、互いに群をなしているか、またはある共通の情報を共有している、相互に作用する数多くの特徴の集まりである。(2)ある時、またはある場所で何かが起こると、他で起こっていることが影響を受けるフィードバックシステムによって、特徴の挙動が影響を受ける。(3)特徴は、その性能を改善することによって順応が可能である。(4)多くの場合、システムが「オープン」であり、その環境に左右され得る。これらの疾患またはリスク属性を、次に挙げる挙動を示す複雑多変量系(complex multivariable system)と比較する。(1)複雑系は活きているようであり、フィードバックの影響のもとでは非自明で複雑な形で進展する。(2)複雑系は、インタンスが何時発生するかの観点から言えば不意に出現し、また特定の分子、遺伝子、または計算といった個々の特徴の知識に基づいて予測が通常できないインスタンスを有している。(3)複雑系は、中心となるコントローラ(central controller)が全く存在しない時に概して発生する複雑な現象を示す、言い換えれば、複雑系は、その部分の総和以上のものである。(4)複雑系は、自ら規則と不規則との間を行き来することができる規則的な挙動と不規則な挙動との混成を示し、規則のポケット(pockets of order)を示しているように思われる。症候性心不全は変数または不安定な正常または異常な関連した特徴(vacillating normal or abnormal associated features)を有し得るというのがその例である。本願に記載の実施形態は、発現前の、及び既存の病態の分析に複雑性科学を利用することができるという本発明者の認識を利用したものである。
【0036】
臨床疾患の予測は不正確であることが関の山であるが、例えば、エコー/ドップラー、生化学検査、ラジオグラフィー等のバイオマーカーを補足的に用いることで個人のリスク負荷の定量化は向上する。リスクの低減を人のリスク負担に合ったものにすることは魅力的である。特徴として選択される観測された生理学的現象またはバイオマーカーが医学界や科学界で受け入れられるためには、次に挙げるいくつかの特定条件のほとんどを満たさなければならない。(1)従来のリスク要因関係(risk factor association)を超えて、予報値に加えられる再現可能な手段であること。(2)人口学における特異性や感度に対して増分値を有していること。(3)新たな治療の評価または再分類及び予防策を創出するか、もしくは誤分類を減らして、不適切な治療を回避すること。(4)無病誤診率が低く、容易に取得可能で、かつ再現可能であること。(5)結果、及び相対的なリスク予測を実質的に向上させる見込みがあること。(6)治療を成功させて有害なイベントを実質的に低下させること。定量可能な形態学的及び生理学的特徴の特徴集合に基づけば、エコー/ドップラーモデルは理想的なバイオマーカーの一例である。どの特定の特徴が、複雑な突発性疾患の安定性を決定しているのかを認識し確認することが課題である。
【0037】
正常な状態では、自然の生理学的特徴は一般的に指数法則に従って急速に衰退する相関関係を持った鐘形曲線をたどる。しかしながら、例えば、水の液体から固体への遷移、規則状態から不規則状態への遷移、またはカオス的な生化学物質から病態への遷移等の相転移がシステムにもし生じた場合、ベキ乗則と呼ばれる強力な自己組織化の法則によってその遷移が特徴付けられる。ベキ乗則の分布は鐘形ではなく、むしろ継続的な減少曲線をたどるヒストグラムである。これは多数の小さなイベントまたはノードが小数の大きなイベントまたはハブと共存していることを含意している。スケールフリーネットワークのベキ乗則の分布は、ほとんどの相関関係には少しの接点しかなく、航空管制システムのように、それらは高度に結び付いた少数のハブによって一緒に保たれている、と予測する。結び付きが弱い多数のアソシエーションまたはノードが減衰して、ネットワークの原因と結果、及び安定性に対して密接に関連した少数の主要な特徴またはハブとなる。自然のネットワークでは、失敗によってより小さい数多くのアソシエーションが主に影響を受けるが、ネットワークの整合性に対するこれらの弱いアソシエーションの寄与度は実際には小さいということは注目に値する。
【0038】
本願で説明するように、発現前の病態の予測機の実施形態では、複雑性の科学に基づく「コンピュータ知能」が用いられる。臨床的及び技術的に導き出された異質のデータを一般的に用いる、従来の試験、スーパークランチャ、臨床リスクスコアの医療情報システムとは異なり、専門家がどの医療データが適切かを選択、確認し、さらにその病状の特徴集合に含めるべき特徴をさらに選択する。集積された多数の専門家の知識の確度によって、特徴の選択や特徴間の関係が定義される。一例として、エコー/ドップラーや他の最新技術を用いたデータ取得技術は、特徴を特徴付け、それらを定量化するための好適な手段の例であるが、それらは治療アルゴリズムのコンポーネントとしてはあまり注目されていない。それよりも、異種の血清マーカーや臨床リスク要因を個別に、また小さく分類することが、リスク及び治療アルゴリズムを構築する上での代表的な手段であった。
【0039】
特定の病状または疾患をネットワークとして考えた場合、従来の複雑な疾患の治療法では結び付きが弱い特徴に焦点が当てられ、付加的な疾患または合併症の表出に対する効果は限られていた。疾患が複雑であり、多変量であるからといってそれが複雑な、または複合的な一連の規則から発生するとは限らない。図2で、複雑性科学は、外見上複雑な状態の中で分かりやすさを捜し求めるよう我々を促し、また医学で利用されているように高度に結び付いた少数の特徴を用いて疾患の特徴付け、管理、及び予防を行うことを我々に教えてくれたことを思い出してほしい。多変量の病態は、実際のところ、複雑の1レベル下で機能する比較的単純な規則の結果である。自然の法則によって決定される特徴としては、数あるなかで、例えば、心臓の充満圧(mmHg)の比率、心筋弛緩(cm/s)、中心動脈圧(mmHg)が挙げられる。複数の高度に結び付いた特徴を、疾患が崩壊する時と同時に無効化しない限り、複雑な疾患の管理や予防はできない。自然発生ネットワーク(naturally-occurring networks)のベキ乗則の分布を理解して、疾患システムにそれを応用するためには、分子、血清マーカー、または個々の部分が疾患を特徴付けるというパラダイムの終焉が必要となる。その代わりに、並外れて相互に結び付いた特徴の少数の特徴集合がほとんどの行為を担い、複雑な人間の疾患における自己組織化を表わしているのである。
【0040】
複合性科学によれば、特徴集合のネットワークに編成されたハブ(ここで、特徴集合とは密接に関連した主要な特徴の集合である)は、ネットワークのトポロジーを規定し、構造上の安定性、動的な挙動、堅牢性、及び誤りを決定し、ネットワークの耐性を侵す。疾患を予測するためのリスク強度または疾患強度の評価は、最も高度に結び付いた少数の特徴に左右される。単純であるが高度に結び付いた特徴の特徴集合は突発性疾患を定義し、リスクを予想する。それによって、予測を、治療に焦点があてられ、成功または失敗を観測するものにできる。高度に選択された特徴の小さな特徴集合の集中的な特定や管理を、突発性疾患のリスクの検出及び管理、ならびに医療を予防の時代に前進させるために用いることができる。即ち、特徴集合内の主要な特徴を治療することは、発現前の、または既存の疾患自体を治療するのと同じ効果がある。
【0041】
相互に作用する特徴の相互の結び付きが高いネットワークは、複雑なイベントを予測する上での鍵となる。発現前、または既存の病態は複雑なイベントである。そのため、医学で利用した場合、複雑性科学は、突発性疾患とその疾患に関連するリスクの予測及び管理の理解に役立つ。第1のステップは、知識ベース140の特徴と定義された特徴集合150を作成することである。特徴集合150内の各特徴は、確認可能で測定可能な値を有しており、それは病状、または疾患の発生に関連している。知識ベース140は、形態学的、生理学的、及び生物学的なデータを特徴として整理及び確認し、自然の生理学的なイベントを特徴付けて、特定の疾患及び/または特定のもしくは一般的なリスクに合致する特徴の特徴集合を設定する。この知識ベース140は動的であり、1回につき1つの特徴に集められ、付加的な特徴のそれぞれが既存の特徴に優遇的に結び付いた生理学的及び形態学的な変化のネットワークを表わすことが好ましい。医療データは、定量可能な特徴として、また自然の生理学的なイベントの正常な変化の原因となる関数の変数として取り扱われることが好ましい。「正常」からの変化、またはある状態から別の状態への遷移は、特徴集合に含まれる特徴の数値的な平均化として表わすことができる。本願の記載に複雑性科学の専門用語を取り入れて、ノードは、一般的であるが結び付きが少ない特徴の集まりとして定義され、ハブまたは特徴集合は、互いに、また緊急(症状発現前の)疾患に強く関連した少数の主要な特徴の集まりとして定義される。ノードとハブのネットワークは、病態への遷移を含むネットワークの基本的な機能を維持している。特徴集合のそれぞれは、病状または病態を特徴付ける最も強く関連した特徴を含むハブの小さな集まりである。取得技術に由来するデータは、ソノグラムまたはX線撮影のように知識ベース140に直接入力されるか、または半導体メモリを介して、もしくは人の手入力によって知識ベース140に間接的に入力されるかのどちらかである。知識ベース140を作成した後、知識ベース140は複数の特徴及び得られた特徴集合160として、またそれらと共に記憶される。
【0042】
専門家は知識ベース140にアクセスでき、特定の特徴集合内の特徴を選択できることが好ましい。知識ベース140は、定期的に同業者によって評価され、修正される専門知識のオープンソースの生きた集まり(open-source living collection of expert knowledge)であることも好ましい。それによって専門家は、病状または病態に関連する少数の、例えば、好ましくは2〜4であるが一般的には10未満の高度に関連する特徴を有する特徴集合を編集、追加、削除、洗練することができ、またそれらについてコメントすることができる。さほど重要ではない特徴(即ち、ノードまたはデータ)を効率がよく高度に選択された特徴集合に加えたとしても、予測能力に実質的な影響を及ぼすことはない。この発見は、結び付きの少ないノードを追加または削除しても、ネットワークの整合性に目に見えるほどの影響がないというスケールフリーネットワークの特性である。比較のために、ウィキペディアはオンラインデータベースであり、ほとんど誰もがそこに収められた情報に貢献することができる。本願の記載に係る知識ベース140には、単なるデータではなく知識が収められている(即ち、知識とは、メタデータと、メタデータを上手く利用することが可能な文脈についての認識の組み合わせである)。また、本願の実施形態には、同業者によって評価される知識ベース140が含まれる。また、本願の実施形態には、知識ベース140に含まれる専門知識が含まれ、そこでは専門家だけが貢献者になることができる。特徴集合の予測能力の的を絞るか、または一般化して病状または疾患のリスクを突き止めるために、更なる特徴を追加する、または取り去ることができる。現在のところ、特徴集合を成す高度に選択された特徴を、教科書、従来のデータベース、オンラインのいわゆる専門診断ツール等で容易に突き止めることはできない。心不全に関連する単純な特徴集合、または疾患代用物モデルの特徴集合の例は、図6に示すように(1)駆出率、(2)慢性度、(3、4)充満圧の鋭さ、及び(5)心筋弛緩という5つの定量化可能な特徴を含む、または本質的にそれらからなる。
【0043】
図3に関して、本願で記載するように、医学診断及び疾患予防への複雑性科学の利用を実現するために機能する方法ステップを示すフローチャートである。従って、病状という用語は、健康、正常状態、発現前の疾患、発現が進行中のまたは発現した疾患自体を表わすのに用いられる。後者の3つは危険性のある病状である。医療データという用語は、様々な病状のうちの少なくとも1つに関係する、特徴と呼ばれる様々な個々の項目のことである。医療データの特徴のうち少なくとも一部は値を有している。まず、ステップ308で医療データが作成され、ステップ310で医療データが取得されて、処理システムに入力され、メモリ312に記憶される。医療データは、そのデータを取得する装置からリアルタイムに直接入力されてもよい。処理システムまたはメモリにデータを直接入力することのできる医療機器の例としては、図1の175として示すように、X線、エコー/ドップラー、磁気共鳴(MRI)や他の音波ホログラフィー、コンピュータ援用トモグラフィー(CATスキャン)、生化学実験器具、核装置、ゲノミックス等が挙げられるが、これらに限定されない。医療データは、例えば図1のコンピュータシステム10が、通信接続上、または例えばアプリケーションプログラムインターフェイスを用いたコンピュータ記憶装置用のネットワーク上に記憶された医療データにアクセスすることで間接的に入力することもできる。バッチデータ取得プログラムを用いて、1日ごと、週ごと、月ごと等の実質的なデータを医療機関から取得することもできる。医療データは、人が入力することもでき、あるいはデータをキーボードまたはマイク等の入力装置を介して入力することもできる。
【0044】
ステップ320で、本願に記載の方法は知識ベース140にアクセスする。知識ベース140には多数の特徴集合140が収められており、特徴集合140のそれぞれは、疾患代用物またはハブであり得る、一般的なまたは特定の病状を表わし、その特定の病状を特徴付ける高度に関連した少数の特徴、またはそれらの特徴の群を有していることを思い出してほしい。高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有している。この知識ベース140には、これらの病状についての専門家の実証された知識が収められていることも思い出してほしい。
【0045】
その後、本方法は、ステップ330で入力された個人の医療データとの相関関係が最も高い特徴集合、即ち、全ての特徴集合の部分集合を特定する。医療データの特徴のうち少なくとも2つは、それぞれの特徴集合の部分集合における高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つと相関関係がなければならない。このように、医療データの特徴は、医療データの特徴の知識から、それぞれの特徴集合の部分集合における高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換される。入力された医療データに基づいて、1つ以上の特徴集合が特定され得る。人の医療データは、その人に1つ以上の病状または病態があることを示し得る。同様に、医療データは知識ベース140に存在する特徴集合のどれとも相関関係がないことがある。この場合、専門家にさらに再調査してもらうために、その人に関する医療データを強調表示してもよい。従って、医療データを特徴と関連付けて、発現前の、または発現が進行中の、もしくは症状が明らかな病状の予測や定量化、及びその病状に対する治療の示唆または観測を行って、考えられる方針を特定するために、ステップ330でプロセス及びコンポーネントが実行される。
【0046】
適切な医療データが入力された後、ステップ340及び350で、医療データに対して連想アルゴリズム150、適切な比較、及び専門家による解釈が適用され、医療データの大きさが、選択された特徴集合のそれぞれの中の特徴に適用されて、医療データが分析された人が抱える累積的なリスクが判定されるか、または選択された特徴集合の病状がその人にないかが判定される。ステップ340に関して、医療データの特徴は正常または異常のどちらか、もしくは値の大きさを有し得る。特性が正常または異常のいずれかである状況では、そのような言語は、性別のような特性に関連することができ、その場合、特定の特徴集合が女性ではなく男性に関連したものであると、そのような特性では「男性」が正常となるのに対して「女性」は異常になる。ステップ340で、正常か異常か、もしくは値の大きさのうちの1つで医療データの特徴が、特徴は正常か異常か、または医療データの特徴の値の大きさは特徴集合の特徴の値の範囲内にあるかの点で特定の特徴集合の特徴と比較される。そして、比較の程度、または範囲内における値の位置(これも比較の一種である)が測定されるか、または基準に照らして解釈される。このように、人の危険性のある病状を特定することができる。
【0047】
主として医師または介護人に向けられている場合、本願に記載のプロセスステップは、考えられる病状を特定するのに必要な特徴集合及び特徴を評価する上でデータ収集者を支援するために、図1の更なる診断支援コンポーネント152等の追加の診断テストまたは診断評価を勧めるステップ360をさらに含む。医療データは、1つ以上の特徴集合を確信を持って特定するには曖昧であったり決め手にかけたりすることがある。上述したように、1つ以上の病状が特定されたり、または病状が何も特定されないという可能性もある。これらの状況は、例えば、特徴集合の最終的な特定、従って、医学診断には、例えば、5つの特徴が必要であるのに医療データには5未満の特徴しか含まれていない場合、または値の大きさが確かでない場合に起こり得る。知識ベース140内の各特徴集合は、入力された医療データの値に基づいて特徴集合の選択を行うために関連性確信因子(associated confidence factor)を有している。もし特定の特徴が矛盾していたり、そうでなければ意味をなさない場合、例えば、同一人物の実験テストが一致していなかったり、または確信のレベルが低すぎる場合には、所定のデータを確認、再現、除外、訂正等すべきである旨、または追加の医療データが必要である旨の文言が結果に含められる。
【0048】
本方法のように、複雑性科学を病態のリスク、またはその可能性の特定や予測に利用することは、同じ入力医療データを「専門家」に見せるよりも、驚く程強力である。同じ入力医療データを「専門家」に渡して、それを、本願に記載の専門知識及び応用複雑性科学を用いた、リスクの評価ならびに診断のための医療データの自動管理方法のための方法及び計算機化システムに入力した場合、「専門家」は一貫して予測ができないの対して、本願の自動システムは一貫して予測が可能である。専門家が特徴集合の特徴を知っていて、その特徴集合に関する入力された医療データにアクセスしたとしても、人間は本願に記載の自動システムと同じように一貫して、かつ迅速に病状のリスク負荷を予測することはできない。
【0049】
ステップ360で検討されたように、もし追加のデータが必要ではない場合、そしてもし危険性のある病状が存在する場合は、ステップ340での比較とステップ350での基準に照らした解釈とに基づいて、ステップ370で危険性のある病状が特定され出力される。
【0050】
さらなる実施形態では、結果が適切な形でアプリケーションプログラムインターフェイスまたはユーザーインターフェイスに出力され得る。それによって、医師は、病状がもしあればどれが主要なものであり、それらがどれくらいの程度で特定の患者に存在しているのか、即ち、その病状がある患者のリスクはどのようなものかを解釈することができる。追加の、及び/またはより正確な診察を支援するために、追加の医学検査またはさらなる測定が勧められ、出力に含められる。患者の病状のリスクまたは出現の規模に基づいた、考えられる治療の選択肢や助言も出力に含まれることが考えられる。
【0051】
ステップ380に示すように、本方法の一部として、付加的なルーチンまたは実施形態が検討される。図4及び図5のそれぞれは、危険性のある病状の出力リスクレベル、及び危険性のある病状の状態を導く更なる方法である。図4に関して、ステップ382に示すように、特徴集合の適切な特徴の個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルが割り当てられる。医療データの値の大きさに応じて、リスクレベルが、医療データが関係する特徴集合の高度に関連する特徴を基準にして当該データに割り当てられる。特徴集合の高度に関連する特徴のリスクレベルが、適切な基準に照らして査定され、ステップ384で危険性のある病状に対するリスクレベルが算出または取得される。ステップ386に示すように、危険性のある病状のリスクレベルが出力される。
【0052】
図5に関して、ステップ390で、医療データの値の大きさの位置が、特徴集合の高度に関連する特徴の値の範囲と比較される。ステップ392で、高度に関連する特徴の関連性レベルの強度が、当該位置に対して基準を基に取得される。その後、ステップ394で高度に関連する特徴の関連性レベルの強度が、とりわけ、病状なしまたは正常、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のいずれかである危険性のある病状の状態と関連付けられる。
【0053】
図1及び図3から、図3の方法は、図1に示すコンピュータシステムの様々な構成において容易に実施されることがはっきりと分かる。コンピュータシステムは、メモリ114に連結された中央処理装置112を備え、当該中央処理装置は、医療データを評価して人の危険性のある病状を特定するようにプログラムされている。コンピュータシステムは医療データを取得する。医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つ病状の特徴を有しており、その特徴のうちの一部は値を有している。メモリ114から医学知識ベース140がアクセスされる。医学知識ベース140は、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有している。特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有しており、その高度に関連する特徴のうちの少なくとも一部は値の範囲を有している。個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルを割り当てることができる。中央処理装置は、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて特徴集合とすることで決定する。このように、医療データの特徴の知識が、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換される。その後、中央処理装置は、前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである、前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて比較する。人のあらゆる危険性のある病状を特定するために、前記比較に対して基準が用いられる。コンピュータシステムは、適切なインターフェイスから、危険性のある病状に関する情報を出力する。中央処理装置は、前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と、危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定するようにさらにプログラムされていてもよい。前記状態は、その人は正常か、またはその人に発現前の、発現が進行中の、または発現した病状または疾患があるかのいずれかである。
【0054】
図3〜図5の方法は、図1のコンピュータシステムで使用可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体においても実施可能である。その記憶媒体には、実行可能なプログラムが記憶されている。そのプログラムは、メモリとデータ受信インターフェイスとに連結された中央処理装置に、図3〜図5の方法に係るステップを行うように命令する。特に、医療データが取得され、そのデータは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有している。前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有している。前記メモリに記憶された医学知識ベースは、前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有している。前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有している。前記複数の特徴集合の部分集合が、少なくとも2つの医療データをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定される。このように、医療データの特徴の知識が、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換される。正常もしくは異常のいずれか、または値の大きさを有する医療データの特徴が、前記特徴集合の前記部分集合における前記高度に関連する特徴の特性と正常度及び値の範囲の面で比較される。この比較は、人のあらゆる危険性のある病状を特定するために、基準に照らして解釈される。このプログラムは、危険性のある病状がもしあれば、それに関する情報がインターフェイスから出力されるようにする。特徴集合内の特徴の個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルを割り当てることができる。前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と前記危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定するステップがあってもよい。
【0055】
本願で規定し、記載したように、医学診断及び疾患予防への複雑性科学の利用は、(1)特徴の大きな集合の定量化を可能にし、(2)作用を決定するための優れた検査を提供し、(3)生理学的、及び解剖学的な再形成(remodeling)を定量化し、(4)疾患を再分類し、(5)誤分類を低減し、(6)利用可能な技術を利用し、そして(7)多変量のバイオマーカーモデル、即ち、疾患代用物モデルを生成するコスト効率のよい手段となる。
【0056】
図6は、心不全のリスクを特定及び評価する特徴集合に含まれ得る特徴の例である。専門知識ベース140内において、「心不全」の特徴集合は、高度に関連する特徴(心筋弛緩、充満圧、及び駆出率)の小さな群を有している。これらの特徴のうちの1つだけでは、心不全、心房細動、脳卒中等の発現前の、発現が進行中の、または既存の病態のリスクを特徴付けるには不十分である。エコー/ドップラー超音波心臓検査から得られた、強く関連した特徴の小集合の特徴集合は、心疾患を特徴付ける6つの定量可能な特徴を示す。LAV指数(充満圧の慢性度)と心筋弛緩とは高度に関連し合った特徴である。安静時EF、充満圧、及びLVの質量は、結び付きが少ない(変数の)特徴である。SBP(収縮期血圧)は広く普及している特徴である。
【0057】
図7〜図10は、付加的な特徴集合160を示す。各行は、様々な病状の様々な特徴集合であり、その特徴集合の特徴は表の列として示されている。各病状に対する特徴集合は異なっている。特徴(列)と特徴集合(行)との交差部分は、可変発病度(variable severity)を表わす、それぞれの病状の特徴集合に関連する特徴の対応する大きさである。臨床上の相関関係は、良性の容量過負荷を示す慢性貧血、慢性疾患、甲状腺機能亢進症や他の病状を除く、良性の容量過負荷があるスポーツ心の特徴集合といった診断の特異性を向上させる。高血圧と、スポーツ心と、慢性貧血とを区別するために、例えば、高血圧の特徴集合には脈圧、中央動脈圧、及び拡張期圧も含まれている。心臓学の専門家は、これらの特徴は最低限であり、またこれらは、病状を特徴付けるために互いに最も強く関連していると判断した。即ち、表の各行は「ハブ」を表わし、そしてその行の各列は、病状を特徴付けるだけでなく、互いに最も影響を受ける、または互いに最も高度に関連した実際の医療数値データを表わしている。そのため、図3のステップ330で、まず入力された医療データが読み取られて、入力された医療データにどのような特徴があるかが判定される。入力された医療データ内の特徴に基づいて、それぞれの病状の1つ以上の特徴集合が選択される。そしてステップ340及び350で、連想アルゴリズムまたは基準が特徴の大きさに基づいて、特徴集合と関連するリスク負荷、即ち、選択された特徴集合によって規定される病状の状態を判定するための役割を果たす。
【0058】
図6〜図9は、様々な心臓に関する病状の特徴集合である。図10は、いくつかの代謝性の病状を特徴付ける特徴を示す。例えば、図3において、心臓に関する多くの病状の診断に関連する特徴は、その全てが超音波心臓検査や様々なドップラー測定法から得られたものである駆出率(EF)、充満圧及び充満速度、心筋弛緩速度、及び左心房容積指数である。これらの図は、知識ベース内の特徴集合を構築する場合に考えられ得る特徴を表わすことを意図したものである。病状のリスク負荷を割り当てるのに、特徴の大きさがどのようにして用いられているか、即ち、ABNは異常を意味し、NLは正常であり、VARは変数である等を以下で検討する。本願では、これらの特徴集合が、有意義で結び付きのあるデータの関係(meaningful and connected data relationship)で、リレーショナルデータベース、非リレーショナルデータベース、またはオブジェクト指向データベースのオブジェクトとしてアクセス可能であると考える。しかしながら、これらの特徴集合へのアクセスは前記に限定されるものではなく、さらに他のアクセス技術が使用でき、また開発することができると考えられる。
【0059】
図6〜図10の特徴集合で用いられる特徴の一部を示す表を以下に示す。最初の列は、病状を特徴付ける上で他の特徴と密接に関連した特徴である。2番目の列は、医療データの大きさ、または大きさの範囲であり、3番目の列は、これらの特定の医療データを有する個人の病状のリスクを判定するために、連想アルゴリズム150によって用いられる医療データの特定の大きさの範囲に割り当てられたリスク値である。これらの医療データが器機から直接得られることが好ましく、例えば、減速時間とE/Aの比率がパルス波ドップラー超音波心臓検査から直接得られ、心筋弛緩速度(e’)が組織ドップラー法を用いて得られて、その後、病状のリスク及び診断用にコンピュータシステム10に入力される。これらの特徴、その大きさ、及び医療データを得るのに用いた器機は例示のために示したにすぎない。生きた知識ベースには、数多くの実証された特徴が収められているだろう。全体を通して、知識ベース140が成長し、より洗練されるにつれて、特徴、特徴の大きさ、及びその大きさに割り当てられたリスクのいずれか1つ、ならびに生の医療データを得るのに用いられる技術も変化すると考えられる。
【0060】
【表1】
【0061】
上記の表において、例えば、75歳よりも上の人にはリスク値3が指定されるといったように、リスク値が医療データの大きさに関連付けられている。そうであるなら、連想アルゴリズムは、考えられる最大の値に基づいて医療データの大きさを特徴のリスク値の合計で除算したものに基づく特徴の実際のリスク値の合計であり得る。例えば、エコー超音波心臓検査から得られた患者の医療データは、駆出率(EF)が51%、充満圧(E/e’)が12mmHg、心筋弛緩速度(e’)が8.5cm/s、左心房容積指数(LAVI)が29ml/m2であったとする。51%の収縮期駆出率(EF)のリスク値は、最大リスク値が3のところ1であり、医療データが正常の範囲内にある場合にはリスク値0が指定される。充満圧(E/e’)が12mmHgの患者のリスク値は、最大リスク値が3のところ2であり、医療データが正常の範囲内にある場合のリスク値は0である。心筋弛緩速度(e’)が8.5cm/sの医療データのリスク値は2であり、リスクが最も高い場合には任意でリスク値3が割り当てられ、医療データが正常の範囲内にある場合のリスク値は0である。29ml/m2の左心房容積指数のリスク値は、考えられる最大のリスク値が3のところ1であり、医療データが正常の範囲内にある場合は最小リスク値0である。上記に示した連想アルゴリズムの一例を適用すると、上記の個人に収縮機能障害があるリスクは、(1+2+2+1)/(3+3+3+3)=0.5となる。いくつかの特徴、例えば、上記表の心係数の場合、測定値が2.0〜2.4であると「不使用」点となり、その特徴はリスク測定で用いられない。本願の方法及びコンポーネントからの出力は、その個人には、発現前の段階の病状であり得る収縮機能障害、拡張機能障害、続発性心房細動(secondary atrial fibrillation)、心房圧過荷重や、他のいくつかの心臓に関する病状の高いリスクがあること示し得る。続発性肺高血圧、原発性肺高血圧、混合性肺高血圧の更なる診断のために、本願の方法及びコンポーネントの出力は、肺動脈圧及び上大静脈流の特徴について入力された医療データを読み込むか、もしくはそれを要求する、または高血圧性心疾患について血圧及び左心房容積の入力された医療データを取得するか、もしくは要求する。
【0062】
その後、本願に記載の方法及びコンポーネントは、特徴の大きさを含む医療データを受信して、それを保存する。本方法及びコンポーネントは、病状の特徴集合に帰する最も関連性のある特徴を自動的に判定する。病状の状態の査定は、人に発現前の病状、発現が進行中の、または発現した病状があるかどうか、またはもし治療が進行中ならば、その治療が有効かどうかを医療データが示すリスクを評価することを意味する。この査定は、その一例を以下に示す連想アルゴリズム150を用いて実現される。特徴集合が変化して洗練されるのと同様に、連想アルゴリズム150も変化して洗練されること、及び医療データに対して適用することができる他の連想アルゴリズム150があることを当業者は認識するだろう。例えば、単純な計数法や平均値算出方法を、より洗練された確率統計法、または他の高位非線形評価法に置き換えることができる。2つ以上の連想アルゴリズム150を用いること、即ち、ある病状、例えば、卵巣癌には、他の病状、例えば、心臓病よりも単純な、またはより複雑な連想アルゴリズム150を用い得ることが考えられる。さらに、連想アルゴリズム150は自己学習的かつ自動修正的である。そのため、ますます多くの医療データの入力に伴って知識ベース140が変化及び修正されることに連想アルゴリズム150は対応することができ、より高い確率の予想及び診断を達成するために自身を収束させる、または修正することができる。
【0063】
一般的に、知識ベース140は、病状に関する特徴集合候補を追加する、または一部変更することによって作成される。第1のステップで、少なくとも1つの特徴候補が、特徴集合の残りに対して考慮される。これについて、特徴集合候補は少なくとも1つの他の既存の特徴を有している。前記少なくとも1つの特徴候補が、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と比較される。もし前記少なくとも1つの特徴候補が、異常であるか、異常である値の範囲内にあるかのうちの1つである場合に、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と一緒になることによって、前記特徴集合候補が関連する病状との関連性レベルが高まるような、前記少なくとも1つの他の既存の特徴との相関効果があれば、前記少なくとも1つの特徴が選択されて前記特徴集合候補に含められる。
【0064】
医療データに知識ベース140を応用し、そして特徴と医療データとの関係を判定するために連想アルゴリズム150を用いることによって、医療提供者は複雑なトップダウン式の臨床モデルとボトムアップ式の還元主義的モデルとの間の隔たりを埋めることができるようになった。本願に記載の自動式の方法及びシステムは、特徴集合に関連するあらゆる病状を予測、定量化、及び予防するために用いられる。治療の有効性を評価するために、患者は治療体制の間の様々な時に医療入力データを提供することができ、医師は治療が病状または疾患に対して有効かどうか、及び有効性の程度について判断することができる。従って、本願に記載の実施形態は、症状発現前の疾患の表出を予測し、病状または疾患の程度を定量化し、その疾患を予防するための方策を勧め、そして病状の治療の有効性を評価する非常に強固な手段を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
危険性のある病状があるかどうかを特定するために、人の医療データを評価する方法であって、前記方法は、
コンピュータを用いて前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程と、
前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程と、
前記コンピュータを用いて、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程と、
前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについてコンピュータを用いて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程と、
前記危険性のある病状に関する情報を前記コンピュータから出力する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記危険性のある病状をさらに査定するために追加の医療データを取得する要求を前記コンピュータから出力する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高度に関連する特徴の前記値の範囲のそれぞれは、値の複数の範囲を含み、前記値の複数の範囲の個々の値の範囲のそれぞれにはリスクレベルが割り当てられており、前記コンピュータは、前記危険性のある病状に対するリスクレベルを、前記医療データの前記値に応じて前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴のリスクレベルに基づいて算出する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と、前記危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定する工程を含み、前記状態は、病状なし、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記危険性のある病状が、前記特徴集合のうちの特定の特徴集合1つにつき前記部分集合中の4以下の変換された高度に関連する特徴から特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
危険性のある病状を特定するために医療データを評価するコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、メモリに連結された中央処理装置を備え、前記中央処理装置は、
前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程と、
前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程と、
前記中央処理装置を用いて、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより、前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程と、
前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて前記中央処理装置を用いて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程と、
前記危険性のある病状に関する情報をインターフェイスから出力する工程とにより前記医療データを評価するようにプログラムされている、コンピュータシステム。
【請求項7】
前記高度に関連する特徴の前記値の範囲のそれぞれは、値の複数の範囲を含み、前記中央処理装置はさらに、前記値の複数の範囲の個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルを割り当てるようにプログラムされている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記中央処理装置はさらに、前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と、前記危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定するようにプログラムされており、前記状態は、病状なし、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のうちの1つである、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
実行可能なプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムは医療データを評価し、前記媒体はコンピュータシステムに実装され、前記プログラムは、メモリとデータ受信インターフェイスとに連結された中央処理装置に対して、
前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程と、
前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程と、
前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより、前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程と、
前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程と、
前記危険性のある病状に関する情報をインターフェイスから出力する工程とを行うように命令する、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
前記特徴の前記値の範囲のそれぞれは、値の複数の範囲を含み、前記プログラムはさらに、前記値の複数の範囲の個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルを割り当てる工程を含む、請求項9に記載の記憶媒体。
【請求項11】
前記プログラムはさらに、前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と、前記危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定する工程を含み、前記状態は、病状なし、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のうちの1つである、請求項9に記載の記憶媒体。
【請求項12】
様々な病状に関する特徴集合を含む医学知識ベース用に、病状に関する特徴集合候補を追加または部分的に変更する方法であって、人の医療データを前記特徴集合に対して評価することで危険性のある病状が特定され、前記医療データの少なくとも一部は値を有し、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有する方法において、前記方法は、
前記特徴集合候補に関係すると考えられる少なくとも1つの特徴候補をコンピュータに入力する工程であって、前記特徴集合候補は、少なくとも1つの他の既存の特徴を有する工程と、
前記コンピュータを用いて、前記少なくとも1つの特徴候補を前記少なくとも1つの既存の特徴と比較する工程と、
もし前記少なくとも1つの特徴候補が、異常であるか、異常である値の範囲内にあるかのうちの1つである場合に、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と一緒になることによって、前記特徴集合候補が関連する病状との関連性レベルが高まるような、前記少なくとも1つの他の既存の特徴との相関効果があれば、前記少なくとも1つの特徴候補を選択して前記特徴集合候補に含める工程と、
前記医学知識ベースに前記特徴集合候補を含める工程とを含む方法。
【請求項13】
前記特徴候補、及び前記少なくとも1つの他の既存の特徴は値の範囲を有し、前記値の範囲のうち少なくとも1つは、値の複数の範囲を含み、前記値の複数の範囲の個々の値の範囲のそれぞれにはリスクレベルが割り当てられている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記特徴集合候補の前記複数の特徴の所定の関連性レベルの大きさを、前記危険性のある病状の状態と関連づける工程を含み、前記状態は、病状なし、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のうちの1つである、請求項12に記載の方法。
【請求項1】
危険性のある病状があるかどうかを特定するために、人の医療データを評価する方法であって、前記方法は、
コンピュータを用いて前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程と、
前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程と、
前記コンピュータを用いて、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程と、
前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについてコンピュータを用いて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程と、
前記危険性のある病状に関する情報を前記コンピュータから出力する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記危険性のある病状をさらに査定するために追加の医療データを取得する要求を前記コンピュータから出力する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高度に関連する特徴の前記値の範囲のそれぞれは、値の複数の範囲を含み、前記値の複数の範囲の個々の値の範囲のそれぞれにはリスクレベルが割り当てられており、前記コンピュータは、前記危険性のある病状に対するリスクレベルを、前記医療データの前記値に応じて前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴のリスクレベルに基づいて算出する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と、前記危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定する工程を含み、前記状態は、病状なし、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記危険性のある病状が、前記特徴集合のうちの特定の特徴集合1つにつき前記部分集合中の4以下の変換された高度に関連する特徴から特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
危険性のある病状を特定するために医療データを評価するコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、メモリに連結された中央処理装置を備え、前記中央処理装置は、
前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程と、
前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程と、
前記中央処理装置を用いて、前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより、前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程と、
前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて前記中央処理装置を用いて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程と、
前記危険性のある病状に関する情報をインターフェイスから出力する工程とにより前記医療データを評価するようにプログラムされている、コンピュータシステム。
【請求項7】
前記高度に関連する特徴の前記値の範囲のそれぞれは、値の複数の範囲を含み、前記中央処理装置はさらに、前記値の複数の範囲の個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルを割り当てるようにプログラムされている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記中央処理装置はさらに、前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と、前記危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定するようにプログラムされており、前記状態は、病状なし、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のうちの1つである、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
実行可能なプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムは医療データを評価し、前記媒体はコンピュータシステムに実装され、前記プログラムは、メモリとデータ受信インターフェイスとに連結された中央処理装置に対して、
前記医療データを取得する工程であって、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有し、前記医療データの前記特徴のうち少なくとも一部は値を有する工程と、
前記様々な病状に関する複数の特徴集合を有する医学知識ベースにメモリからアクセスする工程であって、前記複数の特徴集合のそれぞれは、前記様々な病状のうちの特定の病状に関する高度に関連する特徴の群を有し、前記高度に関連する特徴のうち少なくとも一部は値の範囲を有する工程と、
前記複数の特徴集合の部分集合を、前記医療データの前記特徴のうちの少なくとも2つをそれぞれの前記特徴集合の前記高度に関連する特徴のうちの少なくとも2つに関連付けて部分集合とすることで決定し、これにより、前記医療データの前記特徴の知識を、それぞれの前記特徴集合の前記部分集合における変換された高度に関連する特徴の群の形でメタデータに変換する工程と、
前記医療データの前記特徴が正常か異常か、及び前記医療データの値の大きさが、正常または異常のどちらかである前記変換された高度に関連する特徴の値の範囲内にあるかのうちの1つについて比較し、基準に照らして解釈して前記人に危険性のある病状があるかどうかを特定する工程と、
前記危険性のある病状に関する情報をインターフェイスから出力する工程とを行うように命令する、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
前記特徴の前記値の範囲のそれぞれは、値の複数の範囲を含み、前記プログラムはさらに、前記値の複数の範囲の個々の値の範囲のそれぞれにリスクレベルを割り当てる工程を含む、請求項9に記載の記憶媒体。
【請求項11】
前記プログラムはさらに、前記医療データの前記特徴の前記値の大きさに基づいて、前記特徴集合の前記変換された高度に関連する特徴と、前記危険性のある病状の状態との関連性レベルの強度を特定する工程を含み、前記状態は、病状なし、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のうちの1つである、請求項9に記載の記憶媒体。
【請求項12】
様々な病状に関する特徴集合を含む医学知識ベース用に、病状に関する特徴集合候補を追加または部分的に変更する方法であって、人の医療データを前記特徴集合に対して評価することで危険性のある病状が特定され、前記医療データの少なくとも一部は値を有し、前記医療データは、様々な病状のうちの少なくとも1つの病状の特徴を有する方法において、前記方法は、
前記特徴集合候補に関係すると考えられる少なくとも1つの特徴候補をコンピュータに入力する工程であって、前記特徴集合候補は、少なくとも1つの他の既存の特徴を有する工程と、
前記コンピュータを用いて、前記少なくとも1つの特徴候補を前記少なくとも1つの既存の特徴と比較する工程と、
もし前記少なくとも1つの特徴候補が、異常であるか、異常である値の範囲内にあるかのうちの1つである場合に、前記少なくとも1つの他の既存の特徴と一緒になることによって、前記特徴集合候補が関連する病状との関連性レベルが高まるような、前記少なくとも1つの他の既存の特徴との相関効果があれば、前記少なくとも1つの特徴候補を選択して前記特徴集合候補に含める工程と、
前記医学知識ベースに前記特徴集合候補を含める工程とを含む方法。
【請求項13】
前記特徴候補、及び前記少なくとも1つの他の既存の特徴は値の範囲を有し、前記値の範囲のうち少なくとも1つは、値の複数の範囲を含み、前記値の複数の範囲の個々の値の範囲のそれぞれにはリスクレベルが割り当てられている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記特徴集合候補の前記複数の特徴の所定の関連性レベルの大きさを、前記危険性のある病状の状態と関連づける工程を含み、前記状態は、病状なし、発現前の状態、発現が進行中の状態、及び発現した状態のうちの1つである、請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−505483(P2012−505483A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531256(P2011−531256)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/060520
【国際公開番号】WO2010/042947
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.Linux
3.UNIX
4.WINDOWS
5.フロッピー
【出願人】(511089778)カーディオバスキュラー ディシション テクノロジーズ、インク. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/060520
【国際公開番号】WO2010/042947
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.Linux
3.UNIX
4.WINDOWS
5.フロッピー
【出願人】(511089778)カーディオバスキュラー ディシション テクノロジーズ、インク. (1)
【Fターム(参考)】
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