説明

射出成形材料およびその製造方法

【課題】射出成形時において高い流動性を有し、また、成形品において高い衝撃強度が得られる射出成形材料およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】射出成形材料は、分子中の分岐度合いが0.35〜0.55〔nm/(g/mol)〕であり、重量平均分子量が1万〜8万であるポリカーボネート樹脂が40〜90質量%の割合で含有され、重量平均分子量が1万〜5万である熱可塑性のポリエステル樹脂が5〜30質量%の割合で含有されてなる樹脂組成物よりなることを特徴とする。射出成形材料の製造方法は、(A)分子中の分岐度合いが0.35〜0.55〔nm/(g/mol)〕であり、重量平均分子量が1万〜8万であるポリカーボネート樹脂、および、(B)重量平均分子量が1万〜5万である熱可塑性のポリエステル樹脂を含有する原料を溶融・混練し、その後、間隙距離が5mm以下のスリットに通過させる間隙通過処理を施すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物よりなる射出成形材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ポリカーボネート樹脂や熱可塑性のポリエステル樹脂などの樹脂およびその樹脂組成物は、優れた成形加工性、機械的物性、耐熱性、耐候性、外観性、衛生性および経済性などの観点から、容器、包装用フィルム、家電機器、OA機器、AV機器、電気・電子部品および自動車部品などの成形材料として幅広い分野で使用されている。そのため、このような熱可塑性樹脂およびその樹脂組成物の成形品の使用量は多く、年々増加の一途を辿っている。従って、使用済みとなって廃棄される成形品の量も益々増加し、深刻な社会問題となっている。
【0003】
近年、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)」や「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」などの法律が相次いで施行されることにより、このような熱可塑性樹脂およびその樹脂組成物の成形品のマテリアルリサイクル技術に対する関心が高まってきている。特に、使用量が急速に増加しているポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう。)樹脂を材料とするPETボトルのマテリアルリサイクル技術の確立は急務とされている。また、CD、CD−R、DVDおよびMDなどのようなポリカーボネート樹脂を材料とする光学記録媒体製品(光ディスク)の普及に伴い、これらの成形加工時に排出される端材の再利用方法や廃棄物となった光ディスクから反射層、記録層などを剥離した後に得られるポリカーボネート樹脂を再利用する方法の検討がなされている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂は、基本的には優れた耐衝撃性を有するものの、一旦成形加工されると、成形時における熱履歴の影響を受けることにより、低分子量化され、成形品において十分な衝撃強度が得られない場合がある。また、このような低分子量化されたポリカーボネート樹脂の成形品を粉砕し、再度、再生樹脂として利用する場合、成形品においてさらに衝撃強度が低下したものとなる、という問題がある。
【0005】
また、ポリカーボネート樹脂は、成形温度との関係で、良好な流動性を有さず、良好な成形性が得られないという問題がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂の流動性を向上させるため、ポリカーボネート樹脂を低分子量化させることが提案されているが、この方法によっては、成形品における衝撃強度が低下するという問題がある。
【0007】
また例えば、特許文献2には、ポリカーボネート樹脂の衝撃強度を維持しながら流動性を改良するため、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とのポリマーアロイにおいて、当該ポリエステル樹脂を共重合体化させることが提案されているが、いまだ十分な流動性を有する樹脂組成物を得るには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−297319号公報
【特許文献2】特開2011−16950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、射出成形時において高い流動性を有し、また、成形品において高い衝撃強度が得られる射出成形材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の射出成形材料は、分子中の分岐度合いが0.35〜0.55〔nm/(g/mol)〕であり、重量平均分子量が1万〜8万であるポリカーボネート樹脂が40〜90質量%の割合で含有され、
重量平均分子量が1万〜5万である熱可塑性のポリエステル樹脂が5〜30質量%の割合で含有されてなる樹脂組成物よりなることを特徴とする。
【0011】
本発明の射出成形材料においては、前記ポリカーボネート樹脂が、重量平均分子量が1万2千〜5万であることが好ましい。
また、本発明の射出成形材料においては、前記ポリエステル樹脂が、重量平均分子量が1.5万〜4万であることが好ましい。
さらに、本発明の射出成形材料においては、前記ポリカーボネート樹脂が、分岐度合いが0.39〜0.53〔nm/(g/mol)〕であることが好ましい。
【0012】
本発明の射出成形材料の製造方法は、(A)分子中の分岐度合いが0.35〜0.55〔nm/(g/mol)〕であり、重量平均分子量が1万〜8万であるポリカーボネート樹脂、および、(B)重量平均分子量が1万〜5万である熱可塑性のポリエステル樹脂を含有する原料を溶融・混練し、その後、間隙距離が5mm以下のスリットに通過させる間隙通過処理を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の射出成形材料(以下、単に「成形材料」ともいう。)によれば、当該成形材料が、分岐度合いが特定範囲内である分岐構造を有し、重量平均分子量が特定範囲内であるポリカーボネート樹脂(以下、「特定のポリカーボネート樹脂」ともいう。)、および、重量平均分子量が特定範囲内である熱可塑性のポリエステル樹脂(以下、「特定のポリエステル樹脂」ともいう。)がそれぞれ特定の割合で含有されてなる樹脂組成物よりなることにより、射出成形時において高い流動性が得られ、また、成形品において高い衝撃強度が得られる。
また、本発明の成形材料により成形した成形品を粉砕し、再度、再生成形材料として利用する場合においても、初期の成形材料が、特定のポリカーボネート樹脂および特定のポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物よりなることにより、射出成形時において高い流動性が得られ、また、成形品における衝撃強度を十分に維持することができる。
【0014】
本発明の成形材料の製造方法によれば、特定の間隙通過処理を施すことにより、成形品において高い衝撃強度が得られる成形材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の成形材料の製造方法における特定の間隙通過処理に用いられる装置(ダイ)の一構成例を示す説明図であって、(a)は透視平面図であり、(b)はP−Q線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の成形材料は、射出成形用のものであって、(A)特定のポリカーボネート樹脂および(B)特定のポリエステル樹脂を必須成分として含有する樹脂組成物よりなるものである。
【0018】
〔(A)ポリカーボネート樹脂〕
特定のポリカーボネート樹脂(以下、「(A)成分」ともいう。)は、本発明の成形材料を構成する主成分である。
(A)成分としての特定のポリカーボネート樹脂は、分岐度合いが0.35〜0.55〔nm/(g/mol)〕である分岐構造を有し、重量平均分子量が1万〜8万であり、40〜90質量%の割合で含有されるものとされる。
本発明の成形材料においては、特定のポリカーボネート樹脂が含有されることにより、当該特定のポリカーボネート樹脂が分岐構造であることから、射出成形時における熱履歴の影響により低分子量化されたとしても、直鎖構造である場合に比べて高い粘度を有し、従って、成形品において高い衝撃強度が得られる。
【0019】
特定のポリカーボネート樹脂としては、2価フェノールとカーボネート前駆体とを反応して得られるものを用いることができる。このようなポリカーボネート樹脂の製造方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば2価フェノールにホスゲンなどのカーボネート前駆体を原料として、分岐剤や分子量調整剤を添加し、重合させる方法(界面重合法)などが挙げられる。
【0020】
特定のポリカーボネート樹脂を形成するための2価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ベンゼンおよび核にアルキル基やハロゲン原子などが置換しているこれらの誘導体などを用いることができる。特に好適な2価フェノールの代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス{(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ)フェニル}スルホンなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。これらの中で、特にビスフェノールAを用いることが好ましい。
【0021】
特定のポリカーボネート樹脂を形成するためのカーボネート前駆体としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトルイルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ホスゲンなどのカルボニルハライド、2価フェノールのジハロホルメートなどのハロホルメートなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、ジフェニルカーボネートが好ましい。これらカーボネート前駆体もまた、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
特定のポリカーボネート樹脂を形成するための分岐剤としては、三官能以上の多官能化合物が挙げられ、例えば、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン(フロログルシン)、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物類;3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインド−ル、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチンなどが挙げられる。中でも1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。これら分岐剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
分岐剤の添加量は、2価フェノールに対して0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。
【0023】
特定のポリカーボネート樹脂を形成するための分子量調整剤としては、1価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミドなどが挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。例えば、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノールなどのアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;0−オキシン安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸などのカルボキシル基含有フェノール;などが挙げられる。これら分子量調整剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
特定のポリカーボネート樹脂の具体例としては、例えば、「タフロン」(出光興産社製)、「ユーピロン」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)などが挙げられる。
【0025】
また、特定のポリカーボネート樹脂としては、使用済みとなって廃棄された成形品などから得られたポリカーボネート樹脂(以下、「再生ポリカーボネート樹脂」ともいう。)を用いることもできる。
【0026】
(分岐度合い)
特定のポリカーボネート樹脂の分岐度合いは、平均値で0.35〜0.55〔nm/(g/mol)〕とされ、より好ましくは0.39〜0.53〔nm/(g/mol)〕とされる。
本発明において、特定のポリカーボネート樹脂の分岐度合いとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)−MALS(多角度光散乱検出器)を用いて測定される、回転半径(nm)および分子量(g/mol)を、回転半径が縦軸、分子量が横軸である両対数グラフにプロットして得られる直線(以下、「回転半径−分子量両対数直線」ともいう。)の傾きをいう。この傾きで、分子量に対する分子の大きさを見積もることができ、この値を分岐度合いとする。なお、本発明において、分岐度合いは、10個の試料について回転半径−分子量両対数直線を求め、その平均値をいうものとする。
分岐度合いが過小であるポリカーボネート樹脂を用いる場合においては、成形品において十分な高い衝撃強度が得られない。一方、分岐度合いが過大であるポリカーボネート樹脂を用いる場合においては、成形時において優れた流動性が得られない。
【0027】
本発明において、分岐度合い(回転半径−分子量両対数直線の傾き)は以下の方法・条件で測定、算出される。
〔GPC条件〕
(装置)
装置:GPC HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー社製)
(測定条件)
サンプル準備:室温で測定対象の樹脂1.0mgを1.0mlのテトラヒドロフランに溶解する
キャリア溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:40℃に保持
流速:0.2ml/min
試料注入:溶液10μLを上記キャリア溶媒と共に装置内に注入する
(分子量)
検出:屈折率検出器(RI検出器)
分子量:測定対象の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて分子量を算出する。検量線作成用標準ポリスチレン試料としては、「Pressure Chemical社製」の分子量が、6×102 、2.1×103 、4×103 、1.75×104 、5.1×104 、1.1×105 、3.9×105 、8.6×105 、2×106 、4.48×106 のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。
上記GPC条件において、多角度光散乱検出器(MALS検出器)「DAWN HELEOS II」(Wyatt Technology社製)を用いて、GPC−MALS測定を行うことにより、回転半径−分子量両対数直線の傾きが算出される。
理論上、直鎖の分子は回転半径−分子量両対数直線の傾きが1であり、傾きが小さいほど分岐度合いが高くなる。
【0028】
(重量平均分子量)
特定のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、1万〜8万とされ、より好ましくは1万2千〜5万とされる。
重量平均分子量が過小であるポリカーボネート樹脂を用いる場合においては、成形品において高い衝撃強度が得られない。一方、重量平均分子量が過大であるポリカーボネート樹脂を用いる場合においては、成形時において優れた流動性が得られない。
【0029】
本発明において、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量の測定はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、以下の方法・条件において行われる。
(装置)
装置:GPC HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー社製)
(測定条件)
サンプル準備:室温で測定対象の樹脂1.0mgを1.0mlのテトラヒドロフランに溶解する
キャリア溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:40℃に保持
流速:0.2ml/min
試料注入:溶液10μLを上記キャリア溶媒と共に装置内に注入する
(分子量)
検出:屈折率検出器(RI検出器)
分子量:測定対象の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて分子量を算出する。検量線作成用標準ポリスチレン試料としては、「Pressure Chemical社製」の分子量が、6×102 、2.1×103 、4×103 、1.75×104 、5.1×104 、1.1×105 、3.9×105 、8.6×105 、2×106 、4.48×106 のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。
【0030】
〔(B)ポリエステル樹脂〕
特定のポリエステル樹脂(以下、「(B)成分」ともいう。)は、本発明の成形材料を構成する必須成分である。
(B)成分としての特定のポリエステル樹脂は、重量平均分子量が1万〜5万である熱可塑性のものとされる。
本発明の成形材料において、(A)成分と共に(B)成分として特定のポリエステル樹脂を含有することにより、樹脂組成物がより優れた成形加工性を有するものとなる。
【0031】
特定のポリエステル樹脂としては、具体的には、使用済みとなって廃棄された成形品などから得られたポリエステル樹脂(以下、「再生ポリエステル樹脂」ともいう。)を用いることができる。
また、特定のポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸またはエステル形成能を有する誘導体と、ジオールまたはエステル形成能を有する誘導体とを公知の方法で重縮合して得られるものを用いることもできる。
【0032】
特定のポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、3,3′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、こはく酸、アゼライン酸、マロン酸、蓚酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体(例えばメチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステルなど)などから誘導されるジカルボン酸が挙げられる。
【0033】
特定のポリエステル樹脂を形成するためのジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、1,5−ペンタジオールなどの炭素数2〜10の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量6000以下のポリアルキレングルコールなどから誘導されるジオールが挙げられる。
【0034】
これらのジカルボン酸およびジオールは共に上記化合物を各々単独または2種以上組み合わせて用いることができる。さらに、ポリエステル樹脂は、全構造単位に基づいて1モル%以下であれば、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーから誘導される構造成分を有していてもよい。
【0035】
特定のポリエステル樹脂は、衝撃強度および難燃性のさらなる向上の観点から、芳香族ジカルボン酸またはエステル形成能を有する誘導体と、脂肪族ジオールまたはエステル形成能を有する誘導体とを重縮合して得られる芳香族ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0036】
特定のポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、p−ヒドロキシ安息香酸系ポリエステル、ポリアリレート系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ジオール成分として、エチレングリコールを用いたPETおよびPENがその結晶化挙動、熱的性質、機械的性質などの物性バランスの観点から特に好ましい。
【0037】
(重量平均分子量)
特定のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1万〜5万とされ、より好ましくは1万5千〜4万とされる。
重量平均分子量が過小であるポリエステル樹脂を用いる場合においては、粘度の低いものであるために成形品において衝撃強度が低下するおそれがある。一方、重量平均分子量が過大であるポリエステル樹脂を用いる場合においては、粘度が高いものであるために成形時において流動性が低下するおそれがある。
【0038】
本発明において、ポリエステル樹脂の重量平均分子量の測定はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、以下の方法・条件において行われる。
(装置)
装置:GPC HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー社製)
(測定条件)
サンプル準備:室温で測定対象の樹脂1.0mgを1.0mlのテトラヒドロフランに溶解する
キャリア溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:40℃に保持
流速:0.2ml/min
試料注入:溶液10μLを上記キャリア溶媒と共に装置内に注入する
(分子量)
検出:屈折率検出器(RI検出器)
分子量:測定対象の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて分子量を算出する。検量線作成用標準ポリスチレン試料としては、「Pressure Chemical社製」の分子量が、6×102 、2.1×103 、4×103 、1.75×104 、5.1×104 、1.1×105 、3.9×105 、8.6×105 、2×106 、4.48×106 のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。
【0039】
特定のポリエステル樹脂のIV値(固有粘度)は、0.65〜1.00であることが好ましく、より好ましくは0.80〜0.90である。
特定のポリエステル樹脂のIV値が過小である場合においては、成形品において高い衝撃強度が得られず、また耐薬品性が低下するおそれがある。一方、特定のポリエステル樹脂のIV値が過大である場合においては、成形時において流動粘度が増大し、後述する(I)溶融・混練処理において混練温度を高く設定することとなり、他の添加成分に影響を及ぼすおそれがあり、また、ポリエステル樹脂の末端基量が多いものとなり、熱安定性が低下し、その結果、分子量が低下し、成形品において衝撃強度が低下するおそれがある。
【0040】
本発明において、ポリエステル樹脂のIV値は、フェノール/テトラクロロエタン(質量比:1/1)混合溶媒を用いて30℃で測定したときの値である。
【0041】
〔樹脂組成物〕
本発明の成形材料を構成する樹脂組成物においては、特定のポリカーボネート樹脂の含有量が、成形材料全量に対して40〜90質量%であり、より好ましくは45〜85質量%であり、特定のポリエステル樹脂の含有量が、成形材料全量に対して5〜30質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。
特定のポリカーボネート樹脂および特定のポリエステル樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、射出成形時における高い流動性と成形品における高い衝撃強度を両立することができる。
特定のポリカーボネート樹脂の含有量が過小である場合においては、成形品における衝撃強度が不十分になる。
また、特定のポリエステル樹脂の含有量が過大である場合においては、射出成形時における流動性が低下する。
【0042】
本発明おける樹脂組成物においては、(A)成分としての特定のポリカーボネート樹脂と、(B)成分としての特定のポリエステル樹脂との質量比が、(A)成分:(B)成分=(15:1)〜(2:1)であることが好ましい。
【0043】
本発明の成形材料を構成する樹脂組成物には、本発明の目的が達成される範囲内で、(A)成分および(B)成分の他に、他の樹脂成分を配合することができる。他の樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。また、本発明の成形材料には、必要に応じて任意成分を配合することができる。任意成分としては、例えば、難燃剤(例えばスルホン酸エステル化合物など)、架橋剤(例えばフェノール樹脂など)、顔料、染料、補強材(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、粘土鉱物、チタン酸カリウム繊維など)、充填剤(酸化チタン、金属粉、木粉、籾殻など)、熱安定剤、酸化劣化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤(例えばGMA−MA−PEなど)、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤などが挙げられる。
他の樹脂成分の含有量は、成形材料全量に対して1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。また、任意成分の含有量は、成形材料全量に対して1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。
【0044】
本発明の成形材料によれば、当該成形材料が、分岐度合いが特定範囲内である分岐構造を有し、重量平均分子量が特定範囲内である特定のポリカーボネート樹脂、および、特定のポリエステル樹脂がそれぞれ特定の割合で含有されてなる樹脂組成物よりなることにより、射出成形時において高い流動性が得られ、また、成形品において高い衝撃強度が得られる。
また、本発明の成形材料により成形した成形品を粉砕し、再度、再生成形材料として利用する場合においても、初期の成形材料が、特定のポリカーボネート樹脂および特定のポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物よりなることにより、射出成形時において高い流動性が得られ、また、成形品における衝撃強度を十分に維持することができる。
【0045】
〔成形材料の製造方法〕
本発明の成形材料の製造方法は、少なくとも(A)成分としての特定のポリカーボネート樹脂および(B)成分としての特定のポリエステル樹脂を含有する原料を溶融・混練し、その後、間隙距離が5mm以下のスリットに通過させる間隙通過処理を施すものである。
具体的には、(I)少なくとも(A)成分および(B)成分を含有する原料を溶融・混練処理を行い、(II)得られた溶融状態の原料に対して間隙通過処理を施し、(III )冷却処理することにより成形材料が得られる。
このようにして得られた成形材料は、一般に、射出成形法による成形時における処理を容易にするために、(III )冷却処理後、例えばペレダイザーによりカッティングされることにより、ペレット状のものとされる。
【0046】
(I)溶融・混練処理
溶融・混練処理は、例えば押出混練機を用いることにより行われる。このような押出混練機としては、特に制限されず、剪断力を利用した公知の押出混練機を用いることができ、例えば二軸押出混練機「KTX30」(神戸製鋼社製)、「KTX46」(神戸製鋼社製)などが挙げられる。
溶融・混練条件は、特に制限されず、例えばスクリュー回転数は50〜1000rpmとされ、溶融・混練温度は例えば150〜500℃とされる。
【0047】
(II)間隙通過処理
間隙通過処理は、溶融・混練処理した後、溶融状態の原料を間隙距離が5mm以下のスリットに通過させることにより行われる。
本発明の成形材料の製造方法において、間隙距離が5mm以下のスリットに通過させる間隙通過処理を施すことにより、得られた成形材料を用いて射出成形法により成形する場合において、成形品における衝撃強度がより向上する。
【0048】
本発明の成形材料の製造方法においては、当該間隙通過処理を1回以上、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上行うことが好ましい。
間隙通過処理の回数を増やすほど、成形品における衝撃強度は顕著に向上する。当該間隙通過処理の回数の上限は、通常1000回とされる。間隙通過処理は、一軸または二軸押出混練機で混練後に行うことによりその回数を低減させることが可能で、例えば二軸押出混練機の吐出口に取り付けた装置で間隙通過処理を連続的に行う場合には、3から10回まで回数を低減することができる。
【0049】
スリットの間隙距離は、5mm以下とされ、好ましくは1〜3mmとされる。例えば、スリットを2つ以上有する装置を用いる場合においては、間隙距離は各々独立に5mm以下とされ、より好ましくは各々独立に1〜3mmとされる。
スリットの間隙距離が5mmを超える場合においては、成形品における衝撃強度の向上を図ることができないおそれがある。
【0050】
以下、間隙通過処理の具体例として、間隙距離が5mm以下のスリットを直列に2つ有する装置を用いた方法について説明する。
【0051】
図1は本発明の成形材料の製造方法における特定の間隙通過処理に用いられる装置(ダイ)の一構成例を示す説明図であって、(a)は透視平面図であり、(b)はP−Q線断面図である。
この装置10Aは、略直方体形状のハウジングを備え、原料を流入させるための流入口5および処理された物(成形材料)を吐出させるための吐出口6を備え、流入口5と吐出口6との間の原料の流路において、平行な2つの平面間に形成されたスリット(2a,2b)を直列に2つ有する。
各々のスリット2a,2bの直前には、断面積が当該スリット2a,2bの断面積よりも大きい溜まり部1a,1bを有する。
【0052】
この装置10Aは、流入口5を押出混練機(図示しない)の吐出口に連結させることにより、当該押出混練機の押出力を、溶融状態の原料の移動の推進力として利用し、当該原料を全体として移動方向MDに移動させ、スリット2a,2bを通過させることができる。このように、装置10Aは押出混練機の吐出口に連結させて使用することができるため、ダイと呼ぶこともできる。
【0053】
原料は、流入口5から溜まり部1aに流入し、幅方向WDに広がる。そして、溜まり部1aに充填された原料は、スリット2aを通過して溜まり部1bに移動し、その後、さらにスリット2bを通過し、吐出口6から吐出される。
【0054】
スリット2aにおける間隙距離x1 は、具体的には3mmであり、スリット2bにおける間隙距離x2 は、具体的には3mmである。
【0055】
スリット2a,2bにおける移動方向MDの距離y1 およびy2 は、各々独立に2〜200mmであることが好ましく、より好ましくは5〜50mmである。
スリット2aにおける移動方向MDの距離y1 は、具体的には50mmであり、スリット2bにおける移動方向MDの距離y2 は、具体的には40mmである。
【0056】
スリット2a,2bにおける幅方向WDの距離z1 は、10〜500mmであることが好ましく、より好ましくは50〜300mmであり、具体的には250mmである。
【0057】
溜まり部1a,1bにおける最大高さh1 ,h2 は、3〜150mmであることが好ましく、より好ましくは5〜100mmであり、具体的には50mmである。
本発明において、溜まり部の最大高さとは、幅方向WDに対する垂直断面における最大高さをいう。
【0058】
溜まり部1aにおける移動方向MDの距離m1 および溜まり部1bにおける移動方向MDの距離m2 は、各々独立に1mm以上であればよく、効率性の観点から、2mm以上が好ましく、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上であり、具体的には100mmである。距離m1 およびm2 の上限値は、特に制限されるものではないが、距離m1 およびm2 が過大である場合においては、効率性が低下すると共に流入口5に連結される押出混練機の押出力を大きくする必要がある。従って、距離m1 およびm2 は、各々独立に1〜300mmが好ましく、より好ましくは2〜100mm、さらに好ましくは5〜50mmである。
【0059】
スリット2aの断面積S2aとその直前の溜まり部1aの最大断面積S1aとの比率S1a/S2aおよびスリット2bの断面積S2bとその直前の溜まり部1bの最大断面積S1bとの比率S1b/S2bは、通常、各々独立に1.1以上、特に1.1〜1000であり、より均一な混合・分散、装置の小型化、およびベントアップの防止の観点から、2〜100が好ましく、より好ましくは3〜15である。
【0060】
原料がスリット2a,2bを通過するときの流速は、スリットの断面積1cm2 当たりの値で1g/min以上であればよく、好ましくは10〜5000g/min、より好ましくは10〜500g/minである。
【0061】
本発明において、断面積とは、移動方向MDに対する垂直断面における面積いう。
本発明において、流速は、吐出口から吐出される原料の吐出量(g/min)を間隙の断面積(cm2 )で除することにより測定されるものである。
【0062】
間隙通過処理時の原料の粘度は、上記間隙通過時の流速が達成される限り特に制限されないが、例えば、1〜10000Pa・sであり、好ましくは10〜8000Pa・sである。
本発明において、原料の粘度は、粘弾性測定装置「MARS」(ハーケー社製)により測定されるものである。
【0063】
原料を移動方向MDに移動させるための圧力は、上記間隙通過時の流速が達成される限り特に制限されないが、大気圧力との差圧で示される樹脂圧力で0.1MPa以上が好ましい。樹脂圧力はスリットにおける原料の吐出口から1mm以上内側で計測した原料の圧力であり、圧力計で直接計測することにより測定される。圧力は高いほど効果的であるが樹脂圧力が高すぎると著しい剪断発熱が生じ、樹脂の分解が生じる場合があるので、樹脂圧力は500MPa以下が好ましく、より好ましくは50MPa以下である。
【0064】
間隙通過処理時の原料の温度は、上記間隙通過時の流速が達成される限り特に制限されないが、400℃を超える高温度で樹脂の分解が生じるので400℃以下が好ましい。また間隙通過処理時の原料の温度は、原料のガラス転移温度(Tg)以上の温度であると樹脂圧力が著しく高くならないので好ましい。
間隙通過処理時の原料の温度は、当該処理を行う装置の加熱温度を調整することによって制御することができる。
【0065】
(III )冷却処理
冷却処理は、特に限定されず、例えば、0〜60℃の水に浸漬する方法や−40℃〜60℃の気体で冷却する方法、−40℃〜60℃の金属に接触させる方法により行われる。また例えば、そのまま放置冷却する方法により行ってもよい。
【0066】
このようにして得られた成形材料は、射出成形法による成形時における処理を容易にするために、通常、ペレダイザーによりカッティングされる。
【0067】
本発明の成形材料を得るためには、(I)溶融・混練処理のさらに前に、原料を構成する全成分を予め混合する予備混合処理を行ってもよい。
また、予備混合処理の後においては、(I)溶融・混練処理の前に、特定のポリエステル樹脂の加水分解反応を抑制させる観点から、原料を十分に乾燥させることが好ましい。
【0068】
本発明の成形材料の製造方法によれば、特定の間隙通過処理を施すことにより、成形品において高い衝撃強度が得られる成形材料を製造することができる。
【実施例】
【0069】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例1〕
内容積50リットルの攪拌機付き容器にフロログルシノール0.043モル、ビスフェノールA9.2モル、2.0N水酸化ナトリウム水溶液9リットルおよびジクロルメタン8リットルを入れて攪拌し、ここにホスゲンを30分間吹き込んだ。次にビスフェノールA0.44モル、トリエチルアミン0.022モル、0.2N水酸化ナトリウム水溶液4.5リットルを加え、40分間反応させた後、水相と有機相を分離した。このようにしてポリカーボネートオリゴマーのジクロルメタン溶液を得た。得られたポリカーボネートオリゴマーにptert−ブチルフェノール0.44モルを溶解させ、水4.5リットルに水酸化ナトリウム335gおよびビスフェノールA2.2モルを溶解させ加え、トリエチルアミン0.017モルおよびジクロルメタン6リットルを加え、回転速度500rpmで攪拌し、60分間反応させた。反応後、水相と有機相を分離し、有機相を水、0.03N水酸化ナトリウム水溶液、0.2N塩酸、水の順で洗浄し、洗浄後ジクロルメタンを除き、ポリカーボネート樹脂〔1〕を得た。なお、このポリカーボネート樹脂〔1〕は分岐構造を有し、分岐度合いが0.47〔nm/(g/mol)〕、重量平均分子量が1万5千であった。
【0070】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例2〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.35モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔2〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔2〕の分岐度合いは0.47〔nm/(g/mol)〕であった。ポリカーボネート樹脂〔2〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0071】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例3〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、フロログルシノールの添加量を0.02モルに、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.40モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔3〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔3〕の分岐度合いは0.55〔nm/(g/mol)〕であった。ポリカーボネート樹脂〔3〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0072】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例4〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、フロログルシノールの添加量を0.1モルに、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.30モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔4〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔4〕の分岐度合いは0.35〔nm/(g/mol)〕であった。また、ポリカーボネート樹脂〔4〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0073】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例5〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、フロログルシノールの添加量を0.03モルに、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.20モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔5〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔5〕の分岐度合いは0.47〔nm/(g/mol)〕であった。ポリカーボネート樹脂〔5〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0074】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例6〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、フロログルシノールの添加量を0.03モルに、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.5モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔6〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔6〕の分岐度合いは0.47〔nm/(g/mol)〕であった。ポリカーボネート樹脂〔6〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0075】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例7〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、フロログルシノールを添加せず、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.4モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔7〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔7〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0076】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例8〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、フロログルシノールの添加量を0.02モルに、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.2モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔8〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔8〕の分岐度合いは0.34〔nm/(g/mol)〕であった。ポリカーボネート樹脂〔8〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0077】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例9〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、フロログルシノールを添加せず、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.44モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔9〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔9〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0078】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例10〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、フロログルシノールの添加量を0.04モルに、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.4モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔10〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔10〕の分岐度合いは0.47〔nm/(g/mol)〕であった。ポリカーボネート樹脂〔10〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0079】
〔ポリカーボネート樹脂の製造例11〕
ポリカーボネート樹脂の製造例1において、フロログルシノールの添加量を0.04モルに、ptert−ブチルフェノールの添加量を0.35モルに変更したことの他は、同様にしてポリカーボネート樹脂〔11〕を得た。このポリカーボネート樹脂〔11〕の分岐度合いは0.47〔nm/(g/mol)〕であった。ポリカーボネート樹脂〔11〕の重量平均分子量を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
<実施例1>
表2に示す成分よりなる原料を所定の含有割合でV型混合器を用いてドライブレンドし、真空乾燥機を用いて減圧下で60℃、4時間乾燥させ、予備混合処理を行った。乾燥させた原料を二軸押出混練機「KTX30」(神戸製鋼社製)の原料供給口から投入し、吐出量:30kg/時および樹脂圧力:4MPaおよびスクリュー回転数:250rpmの条件にて溶融・混練処理を行った。なお、この二軸押出混練機は、シリンダ部は温調ブロックごとにC1〜C9の9つのブロックからなり、C1部には原料供給口が設けられ、C3部およびC7部にはローターとニーダーとのスクリューの組み合わせが配置され、C8部にはベントが設置されるものである。そして、図1に示すものと同様の装置(ダイ)を用い、スリットの間隙距離を5mmとして下記間隙通過処理条件において、二軸押出混練機から吐出された溶融状態の原料を流入口(5)から流入した後、所定のスリット(2a,2b)を通過させ、吐出口(6)から吐出して間隙通過処理を行った。ダイから吐出したものを30℃の水に浸漬することによって冷却処理し、ペレタイザーによりカッティングすることによりペレット状の成形材料〔1〕を得た。
【0082】
−間隙通過処理条件−
原料の流速;30kg/h
原料の樹脂圧力;10MPa
原料の温度;270℃
【0083】
<実施例2〜6および比較例1〜6>
原料を構成する各成分の種類、その含有割合および間隙通過処理におけるスリットの間隙距離を表2に示すものに従って変更したことの他は、実施例1と同様にして成形材料〔2〕〜〔12〕を得た。
【0084】
<評価>
(1)流動性
得られた成形材料〔1〕〜〔12〕を80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機「J55ELII」(日本製鋼所社製)を用い、棒流動試験片(流路厚さ1mm、流路幅8mm)にて流動長を下記評価基準により評価した。条件は、シリンダ温度280℃、金型温度40℃、射出圧力40MPaとした。結果を表2に示す。なお、流動長が大きいほど流動性は良いと評価される。
A:100mm以上
B:60mm以上100mm未満
C:20mm以上60mm未満(実用上問題なし)
D:20mm未満(実用上問題あり)
【0085】
(2)衝撃強度
得られた成形材料〔1〕〜〔12〕を80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機「J55ELII」(日本製鋼所社製)を用いて、シリンダ設定温度280℃、金型温度40℃で、100mm×10mm×4mmの短冊型試験片を成形し、当該試験片の衝撃強度について、「JIS−K7111」に準拠してシャルピー衝撃試験(Uノッチ、R=1mm)を行い、衝撃強度を測定した。結果を表2に示す。なお、衝撃強度が120kJ/m2 以上であれば合格レベルとする。
【0086】
【表2】

【0087】
<実施例7>
ポリカーボネート樹脂の製造例1で得られたポリカーボネート樹脂〔1〕を用いて射出成形法により加工して成形品を得、この成形品を粉砕し、再生ポリカーボネート樹脂〔1〕を得た。この再生ポリカーボネート樹脂〔1〕および表3に示す成分よりなる原料を所定の含有割合で実施例1と同様に予備混合処理、溶融・混練処理、間隙通過処理および冷却処理を行い、成形材料〔13〕を得た。なお、再生ポリカーボネート樹脂〔1〕は分岐構造を有し、分岐度合いが0.47〔nm/(g/mol)〕、重量平均分子量が1万であった。
得られた成形材料〔13〕ついて、上記評価と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
なお、表2および表3において示す、ポリエステル樹脂における「PET」は、使用済みとなって廃棄されたPETボトルから得られたもの(融点:270℃、ガラス転移温度(Tg):76℃)であり、「PBT」は、「ノバデュラン」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)であり、任意成分における難燃剤は、リン酸エステル系難燃剤「CR733S」(大八化学工業社製)である。
【符号の説明】
【0090】
1a,1b 溜まり部
2a,2b スリット
5 流入口
6 吐出口
10A 装置(ダイ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中の分岐度合いが0.35〜0.55〔nm/(g/mol)〕であり、重量平均分子量が1万〜8万であるポリカーボネート樹脂が40〜90質量%の割合で含有され、
重量平均分子量が1万〜5万である熱可塑性のポリエステル樹脂が5〜30質量%の割合で含有されてなる樹脂組成物よりなることを特徴とする射出成形材料。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂が、重量平均分子量が1万2千〜5万であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形材料。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂が、重量平均分子量が1万5千〜4万であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成形材料。
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂が、分岐度合いが0.39〜0.53〔nm/(g/mol)〕であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の射出成形材料。
【請求項5】
(A)分子中の分岐度合いが0.35〜0.55〔nm/(g/mol)〕であり、重量平均分子量が1万〜8万であるポリカーボネート樹脂、および、(B)重量平均分子量が1万〜5万である熱可塑性のポリエステル樹脂を含有する原料を溶融・混練し、その後、間隙距離が5mm以下のスリットに通過させる間隙通過処理を施すことを特徴とする射出成形材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−18977(P2013−18977A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135461(P2012−135461)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】