射出成形機のモニタ装置
【課題】変量を色、濃度、等高線等の表示形式に変換してグラフに表示することで、1成形サイクル中で変量にばらつきが発生しているタイミングや区間、さらにはばらつきが発生している成形サイクルの特定やばらつきの傾向等の成形安定性に関する情報を視覚的に把握できるようにし、効率的な良否判定条件の設定が可能な射出成形機のモニタ装置を提供すること。
【解決手段】(a)変量Qの大きさを所定の区間に区切りそれぞれの区間に色情報をあらかじめ対応させて設定し変量Qと色情報とを対応させて表示する表示形式、(b)変量Qの大きさを所定の区間に区切りそれぞれの区間に表示の濃度情報をあらかじめ対応させて設定し変量Qと表示の濃度情報とを対応させて表示する表示形式、(c)等高線を描画する変量Qの大きさをあらかじめ設定し変量Qと等高線とを対応させて表示する表示形式が、射出成形機Mの制御装置100にされている。
【解決手段】(a)変量Qの大きさを所定の区間に区切りそれぞれの区間に色情報をあらかじめ対応させて設定し変量Qと色情報とを対応させて表示する表示形式、(b)変量Qの大きさを所定の区間に区切りそれぞれの区間に表示の濃度情報をあらかじめ対応させて設定し変量Qと表示の濃度情報とを対応させて表示する表示形式、(c)等高線を描画する変量Qの大きさをあらかじめ設定し変量Qと等高線とを対応させて表示する表示形式が、射出成形機Mの制御装置100にされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の成形工程の挙動を表示するモニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機では、成形品の品質管理、機械の動作管理などのために、成形動作によって変化する圧力、速度、位置、温度等の各種変量をそれぞれロードセル、モータに取り付けられたエンコーダ、熱電対等のセンサを用いて検出している。
成形品の良否を判定する一般的な方法としては、射出成形機が前記検出された変量の変化からその特徴値を自動的に検出し、前記特徴値があらかじめ成形作業者により良否判定条件として設定された許容幅内であるか否かを成形機が自動的に判別する方法が公知である。特徴値としては、射出・保圧工程中の最大圧力や、射出・保圧工程のスクリュ最前進位置などがある。
【0003】
さらに高度な良否判別方法としては、前記のように成形機が自動的に特徴値の検出を行う代わりに、成形作業者が良否判定条件として、判別に使用する変量の種類、1成形サイクル中の特定のタイミングや区間、さらにはそのタイミングや区間における前記変量の許容幅をも設定する方法がある。この方法では、成形機は選択された変量から設定されたタイミングにおける前記変量の値を自動的に抽出、あるいは区間が設定された場合にはその区間での前記変量の最大値、最小値または平均値を自動的に計算で求め、前記抽出値あるいは前記計算値があらかじめ設定された許容幅内であるか否かで自動的に良否判定を行う。
【0004】
以上のような高度な良否判定を行うためには、成形作業者が適切な良否判定条件を設定する必要がある。そこで、良否判定条件の設定作業を成形作業者の勘や経験に依らず合理的に行うことができるようにするために、射出成形機には設定の指標となる1成形サイクル中の変量の変化を画面に波形で表示する機能が備えられている。例えば、特許文献1(段落「0003」)には、所定のサンプリング周期で射出圧力を検出し、複数の射出成形サイクルに亘って射出圧力のグラフ表示を重ねて波形表示する技術が開示されている。また、特許文献2には、射出工程における1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎に検出して記憶し、時間を第1軸、前記変量を第2軸、成形サイクル数を第3軸として複数の成形サイクル分の前記変量をグラフ表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−244087号公報
【特許文献2】特開2004−216715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17は特許文献1に開示される波形表示の従来技術を説明する図である。図17では第1軸(横軸)を時間、第2軸(縦軸)を前記変量の一つである圧力Pとし、1成形サイクル中の圧力の変化をグラフ上に波形で描画したものである。この波形表示の例では、複数の成形サイクルにわたって圧力波形を重ね描きされている。複数のサイクルにわたってグラフが重ね描きされているため、波形の幅が太い区間は成形サイクル毎に圧力がばらついている区間であり、波形が細い区間は成形サイクル毎の圧力のばらつきが少ない区間であることが容易に判別できる。
ところで、成形品の良否判別は成形品の重量や寸法などの実測値に基づいて、実際に不良品が発生した成形サイクルを特定し、該特定されたサイクルにおける変量の中から良否判別に使用可能な変量を選択し、さらに良否判別を行うタイミングや区間や許容値を決めることが望ましい。
【0007】
しかしながら、図17のグラフ表示方法では変量がばらついている区間やその幅はわかるが、成形品を実測することによって不良品が発生したサイクルが特定できたとしても、その変量の波形がいかなる波形であったのかが判らないため、ばらつきが発生している区間やその幅が良否判別の指標として適切であるかどうか判らず、良否判別条件を設定するのには有効な表示手段ではないという問題があった。
【0008】
一方、図18は特許文献2に開示される波形表示の従来技術を説明する図である。この波形表示は、サイクル毎の変量の特徴を容易に把握できるようにするため、3次元で変量を波形表示する技術である。この表示方法は、第1軸を時間、第2軸を変量として描画する点では図17と同じであるが、さらに第3軸が設けられている。第3軸は成形サイクル数であり、成形サイクル毎に波形表示の起点が軸に沿ってずれて表示される。これにより複数の成形サイクルの変量の変化を表示する場合でも、表示された波形は重なりなく表示されることで、不良品が発生したサイクルにおける実測値の特徴を容易に把握することができる。
しかしながら、この表示方法では図17のように検出値がばらついている区間やその幅を特定することが困難であるため、良否判定条件を設定するのには十分な表示方法ではなかった。
上述したようにいずれの表示方法の従来技術も一長一短があり、それぞれの問題を解決するためには、成形作業者が図17と図18の波形表示方法を切換えながら良否判定条件を設定する必要があり、非常に煩雑な作業となっていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、変量を色、濃度、等高線等の表示形式に変換してグラフに表示することで、1成形サイクル中で変量にばらつきが発生しているタイミングや区間、さらにはばらつきが発生している成形サイクルの特定やばらつきの傾向等の成形安定性に関する情報を視覚的に把握できるようにし、効率的な良否判定条件の設定が可能な射出成形機のモニタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の請求項1に係る発明は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、少なくとも2軸を用いて、第1軸を時間とし、第2軸を成形サイクル数とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置である。
請求項2に係る発明は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する、少なくとも可動部材の位置と他の1以上の変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、少なくとも2軸を用いて、第1軸を前記可動部材の位置とし、第2軸を成形サイクル数とした面上に複数の成形サイクル分の前記他の変量を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置である。
請求項3に係る発明は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、各成形サイクルにおける所定のタイミングにおける時刻を記憶する時刻記憶部と、少なくとも2軸を用いて、第1軸を時間とし、第2軸を前記時刻とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換してグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する、少なくとも可動部材の位置と他の1以上の変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、各成形サイクルにおける所定のタイミングにおける時刻を記憶する時刻記憶部と、少なくとも2軸を用いて、第1軸を前記可動部材の位置とし、第2軸を前記時刻とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置である。
請求項5に係る発明は、前記射出成形機は、射出成形機の状態情報、操作履歴情報、射出成形機の動作条件の変更履歴情報、アラーム履歴情報、成形品の情報、生産情報、樹脂情報、各成形サイクルの特徴値情報の内少なくとも1つを取得する機能を有し、前記機能により取得した情報の内、少なくとも1つを前記グラフの第2軸の軸方向に表示することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置である。
請求項6に係る発明は、3軸目を追加し、前記変量を第3軸としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置である。
請求項7に係る発明は、前記変量は、サンプリングした変量と基準変量との差又は、前記変量の偏差値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、変量を色、濃度、等高線等の表示形式に変換してグラフに表示することで、1成形サイクル中で変量にばらつきが発生しているタイミングや区間、さらにはばらつきが発生している成形サイクルの特定やばらつきの傾向等の成形安定性に関する情報を視覚的に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を実施する射出成形機の制御装置を説明する図である。
【図2】記憶部に記憶される変量を説明する図である。
【図3】あらかじめ変量の大きさ毎に表示形式を設定しておくことを説明する図である。
【図4】複数回の成形サイクルにわたり1成形サイクルにおいてサンプリングして得られた変量の値を記憶したデータの内、任意のサンプリング時点の変量をグラフ上に表示することを説明する図である。
【図5】表示形式として色を用いた場合を説明する図である。
【図6】表示形式として等高線を用いた場合を説明する図である。
【図7】位置に関する変量Qとしてスクリュ位置を記憶した記憶部を説明する図である。
【図8】第2軸と平行な軸上に成形機の状態を表示した例を説明する図である。
【図9】第3軸を設けた例を説明する図である。
【図10】変量の大きさと色の関係を数直線上に示したグラフである。
【図11】従来技術のグラフ表示と本発明に係るグラフ表示とを同時に行った射出成形機のモニタ装置の表示例を説明する図である。
【図12】射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態1を説明する図である。
【図13】射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態2を説明する図である。
【図14】射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態3を説明する図である。
【図15】射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態4を説明する図である。
【図16】射出成形機と該射出成形機を制御する制御装置の概略構成図である。
【図17】複数の成形サイクルにわたって圧力波形を重ね描きされている従来の表示方法を説明する図である。
【図18】時間を第1軸、変量を第2軸、成形サイクル数を第3軸として複数の成形サイクル分の前記変量をグラフ表示する従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明を実施する射出成形機の制御装置を説明する図である。射出成形機Mの制御装置100は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えている。射出成形機Mに備わった各種センサS1,S2,・・・Skで検出された圧力、位置、モータ電流、温度等の変量Q1,Q2,・・・,Qkは、1成形サイクルの間、所定時間毎にサンプリング部102でサンプリングされ記憶部104に記録される。そして、成形サイクルを行う毎に成形サイクル数をインクリメントして変量Q1,Q2,・・・,Qkが記憶部104に記録される。記憶部104に記録された変量Q1,Q2,・・・,Qkは制御装置100に備わったグラフ表示部106にグラフ表示される。
【0015】
図2は記憶部に記憶される変量を説明する図である。変量Qとして射出圧力Pと射出速度Vを例とし、射出成形機Mに備わったセンサから得られる射出圧力Pと射出速度Vの検出結果が成形サイクル毎に所定のサンプリング周期でサンプリングされ記憶部104に記録される。図2は成形サイクルSが1〜m回で、各成形サイクルにおいて、射出圧力Pと射出速度Vのデータがn個のサンプリングデータとして記憶部104に記録されていることを示している。
【0016】
図3はあらかじめ変量の大きさ毎に表示形式を設定しておくことを説明する図である。射出成形機Mの制御装置100には、図3に示すように、予め変量Qの大きさ毎に表示形式を設定しておく。図3(a)は、変量Qの大きさを所定の区間に区切りそれぞれの区間に色情報をあらかじめ対応させて設定し、変量Qと色情報とを対応させて表示する表示形式を説明している。図3(b)は、変量Qの大きさを所定の区間に区切りそれぞれの区間に表示の濃度情報をあらかじめ対応させて設定し、変量Qと表示の濃度情報とを対応させて表示する表示形式を説明している。図3(c)は、等高線を描画する変量Qの大きさをあらかじめ設定し、変量Qと等高線とを対応させて表示する表示形式を説明している。
【0017】
図4は複数回の成形サイクルにわたり1成形サイクルにおいてサンプリングして得られた変量の値を記憶したデータの内、任意のサンプリング時点の変量をグラフ上に表示することを説明する図である。変量Qの1つである射出圧力Pのショット数1の場合のサンプリング回数1回目のときの射出圧力P(1,1)の値の大きさが15であった場合、P(1,1)を含む隣接するP(1,2)、P(2,1)、P(2,2)からなる四角形<1>に図3で設定された変量Qの大きさ15に対応する表示形式を適用する。これを全ての射出圧力P(1,1)〜P(m,n)について行うことによりグラフが描画される。
【0018】
第1の表示形式として、表示形式を色の違いとした場合には、射出圧力Pの大きさに応じて異なる色に変換して表示する。図5は図3(a)の色を用いた表示形式を採用した場合の例である。第1軸が時間、第2軸がサンプリング数とされている。これにより、図5に示される2次元のグラフ上で同じ大きさを持つ変量が同じ色で表示される。したがって、色の変化が無ければ変量Qの一つである射出圧力Pの変化が無く成形が安定しており、色の変化の傾向によって射出圧力Pの変化の傾向、例えば、周期的な変化、単調に増加や減少する変化等を容易に把握することができる。
このように色の違いで変量Qの大きさを表現することにより成形の安定性や成形の変化の傾向を視覚的に把握することができる。
【0019】
第2の表示形式として表示形式を色の濃淡にした場合にも前記第1の表現形式と同様にして変量の大きさを色の濃度に変換してグラフに表示にすることにより、成形の安定性や成形の変化の傾向を視覚的に把握することができる。
表現形式を色の違いや濃淡とした場合には、図3のように変量の範囲毎に色や濃淡を設定するのではなく、変量の大きさに応じて色や濃淡を連続的に変化させながら表示するようにしてもよい。この場合には、白色から黒色や、白色から赤色、白色から青色など色の明るさを変化させたり、青色から赤色など色合いを変化させたり、くすんだ赤色から鮮やかな赤色など色の鮮やかさを変化させるようにしてもよい。
【0020】
第3の表示形式として等高線とした場合にも前記第1や第2の表示形式と同様にして変量の大きさに対応させて等高線を描画することにより、成形の安定性や成形の変化の傾向を視覚的に把握することができる。図6は図3(c)の等高線を用いた表示形式を等高線とした場合の表示の実施例の一例である。
【0021】
次に第1軸、第2軸を前記サイクル中の経過時間やサイクル数以外とした場合について説明する。
前記第1軸は可動部材の位置としてグラフ表示してもよい。この場合には、射出スクリュの位置や型締機構部の可動プラテンの位置等の位置に関する変量Qのうち、いずれか一つの位置に関する変量を第1軸の変量として選択し、第1軸として選択された変量以外の変量をその大きさ毎に設定された表現形式に変換する。図7は位置に関する変量Qとしてスクリュ位置を記憶した記憶部を説明する図である。そして、第1軸を可動部材の位置、第2軸を成形サイクル数として2次元のグラフに表示する。可動部材の位置を第1軸とすることにより、可動部材の移動範囲内の位置や特定の区間に基づいた良否判別条件を設定する際に利用することができる。
【0022】
前記第2軸はサイクル開始タイミング、射出開始タイミング、計量開始タイミングなど、成形中の任意のタイミングにおける時刻としてもよい。なお、これらの時刻も制御装置100やパーソナルコンピュータ200の記憶部に記憶する。サイクル数を第2軸とする場合も任意のタイミングにおける時刻も連続して成形運転が行われている場合には表示されるグラフに違いはないが、仮に生産の終了や何らかの不具合によって成形が停止した場合、第2軸を時刻にしておけば、機械の停止中には前記変量は表示されなくなり、機械が停止したことが視覚的に把握できる。これにより、機械停止後、何時間経過後に成形が安定したのか、また、不具合で停止する前に何らかの異常があったかを調査するのに役立てることができる。なお、機械の運転や停止状態を把握するためには、成形サイクル毎、あるいは所定時刻毎に機械の状態情報や、操作内容情報、動作条件情報、アラーム情報、成形品情報、生産情報、樹脂情報、各成形サイクルの特徴値情報の内、少なくとも1つ以上の情報を記憶しておき、前記記憶された情報の内から少なくとも1つ以上を前記第2軸と平行かつ第2軸と同一スケールの軸上に表示するようにしてもよい。
【0023】
図8は第2軸と平行な軸上に成形機の状態情報を表示した例である。この例ではアラームが2回発生したことが図示されている。アラームの発生後に変量に変化がみられるようであれば、アラーム発生後以降には良否判別条件に関わらず成形品を強制的に廃棄する等の処置が必要であることがわかる。また、樹脂のロットを第2軸と平行かつ第2軸と同一スケールの軸上に表示すれば、樹脂のロットが成形安定性に与えた影響を視覚的に把握することができる。なお、成形品情報、生産情報、樹脂情報には以下のような情報が挙げられる。
【0024】
成形品情報:金型ファイル名称、金型ファイルID
生産情報:ロット番号、オーダ番号、生産スケジュール番号、金型番号、製品番号、作業
者の情報、その他の生産情報
樹脂情報:樹脂情報、ロット番号、樹脂グレード
前記のグラフにさらに第3軸を設けた場合について説明する。第3軸には前記記憶された変量が表示される。第3軸を設ける場合のグラフ表示は、公知例として挙げた特許文献2と類似しているが、本発明の本実施形態ではさらに変量の大きさに応じて異なる表示形式で表示する点である。これにより、3次元による立体的な表示に、色や濃淡などの視覚的な情報が加わるため、変量の変化の様子をより明確に把握することができる。第3軸を設けた表示の実施形態を図9に示す。なお、第1軸、第2軸、第3軸は射出成形機の表示装置上で縦方向、横方向、奥行方向のいずれであってもよい。
【0025】
次に変量の大きさについて説明する。前記の変量の大きさは変量の絶対値としてもよいし、相対値としてもよいし、あるいは、偏差値としてもよい。絶対値の場合には記憶された変量の大きさそのものを設定された表示形式に変換してグラフに表示する。相対値の場合には記憶された変量のうち、所定のサイクルにおける変量を基準変量として選択し、基準変量とそれ以外の変量との差を求めて変量の大きさとし、その大きさを前記表示形式に変換してグラフ表示する。
【0026】
なお、基準変量としては良品が得られた成形サイクルの変量を用いるのがよい。また偏差値とする場合、第1軸がサイクル中の経過時間ではサンプリング時間毎、第1軸が位置では位置毎にグラフに表示される全ての成形サイクルにわたって前記記憶された変量の偏差値を求め、その大きさを前記表示形式に変換してグラフ表示する。ここで、変量の大きさと色や濃淡などの表示形式との関係は作業者が一目でわかるようになっていることが望ましい。
【0027】
図10は変量の大きさと色の関係を数直線上に示したグラフである。作業者は変量の大きさと色の関係を変更することにより、変量の変化に対する色の変化を大きくしたり小さくしたりすることができる。これにより、変量をグラフに表示する際の視覚的な効果をさらに向上させることができる。変量の大きさを色の濃淡に変換する場合には、ハッチング線の多さや太さ、ドットの円の半径や四角の大きさを作業者が設定できるようにすることで色の場合と同様に変量をグラフに表示する際の視覚的な効果をさらに向上させることができる。
【0028】
変量の大きさを等高線に変換する場合には、等高線の間隔や本数を作業者が設定できるようにすることで色の場合と同様に変量をグラフに表示する際の視覚的な効果をさらに向上させることができる。
【0029】
本発明は図17や図18のような従来のグラフ表示の問題点を解決するために考案されたものであるが、従来のグラフ表示に慣れた作業者が本発明による表示方法との関係を容易に理解できるようにするために、従来のグラフ表示と本発明のグラフ表示を同時に行うようにしてもよい。図11は従来技術のグラフ表示と本発明に係るグラフ表示を同時に行った射出成形機のモニタ装置の表示例である。
【0030】
上述した本発明の実施形態では、射出成形機Mの制御装置100が、変量Qを所定時間毎にサンプリングするサンプリング部、該サンプリングされた変量Qを記憶する記憶部、および該変量Qをグラフに表示する表示部を備えているが、図12,図13,図14,図15に示すように構成してもよい。
【0031】
図12は射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態1であり、射出成形機Mに取付けられている各種センサS1〜Skから出力される検出信号をサンプリング部102で受け取り、サンプリング部102から出力されるサンプリングデータをパーソナルコンピュータ200の記憶部204に記録し、記憶部204に記録されたデータをグラフ表示部206で図3を用いて説明した表示形式によりグラフ表示する。
【0032】
図13は射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態2であり、射出成形機Mに取付けられている各種センサS1〜Skから出力される検出信号をパーソナルコンピュータ200に備わったサンプリング部で受け取り該信号をサンプリングし、サンプリングして得られたデータを記憶部204に記録し、記憶部204に記録されたデータをグラフ表示部206で図3を用いて説明した表示形式によりグラフ表示する。
【0033】
図14は射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態3であり、射出成形機Mに取付けられている各種センサS1〜Skから出力される検出信号をパーソナルコンピュータ200で受け取り、パーソナルコンピュータ200に備わったサンプリング部でサンプリングし、サンプリングして得られたデータを記憶部204に記録し、射出制御装置Mの制御装置100のグラフ表示部106で図3を用いて説明した表示形式によりグラフ表示する。
【0034】
図15は射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態4であり、射出成形機Mの制御装置100のサンプリング部102から出力されるサンプリングデータをパーソナルコンピュータ200の記憶部204に記録し、射出成形機Mの制御装置100のグラフ表示部106で図3を用いて説明した表示形式によりグラフ表示する。
【0035】
図16は射出成形機と該射出成形機を制御する制御装置の概略構成図である。射出成形機Mは、機台上(図示省略)に型締部Mc、および射出部Miを備える。射出部Miは樹脂材料(ペレット)を加熱溶融し、当該溶融樹脂を金型40のキャビティ内に射出するものである。型締部Mcは主に金型40(可動側金型40a,固定側金型40b)の開閉を行うものである。射出成形機Mは、射出成形機の状態情報、又は操作履歴情報、射出成形機の動作条件の変更履歴情報、アラーム履歴情報、成形品の情報、生産情報、樹脂情報、各成形サイクルの特徴値情報の内少なくとも1つを取得する機能を有する。
【0036】
まず、射出部Miを説明する。射出シリンダ1の先端にはノズル2が取り付けられ、射出シリンダ1内には、スクリュ3が挿通されている。スクリュ3には、スクリュ3に掛る圧力により樹脂圧力を検出するロードセル等を用いた樹脂圧力センサ5が設けられている。樹脂圧力センサ出力信号は、A/D変換器16によりデジタル信号に変換されサーボCPU15に入力する。
【0037】
スクリュ3は、スクリュ回転用サーボモータM2により、プーリ,ベルト等で構成された伝動機構6を介して回転させられる。また、スクリュ3は、スクリュ前後進用サーボモータM1によって、プーリ,ベルト,ボールねじ/ナット機構などの回転運動を直線運動に変換する機構を含む伝動機構7を介して駆動され、スクリュ3の軸方向に移動させられる。なお、符号P1はスクリュ前後進用サーボモータM1の位置,速度を検出することによって、スクリュ3の軸方向の位置,速度を検出する位置・速度検出器であり、符号P2はサーボモータM2の位置,速度を検出することによって、スクリュ3の軸周り回転位置,速度を検出する位置・速度検出器である。符号4は射出シリンダ1に樹脂を供給するホッパである。
【0038】
次に、型締部Mcを説明する。型締部Mcは、可動プラテンである可動プラテン30を前後進させる可動プラテン前後進モータM3、リアプラテン31、成形品を金型から押し出すエジェクタピンを突き出すためのエジェクタ前後進モータM4、可動プラテン30、タイバー32、固定プラテン33、クロスヘッド34、エジェクタ機構35、複数のトグルリンクを連結して構成されるトグル機構36を備える。リアプラテン31と固定プラテン33とは複数本のタイバー32で連結されており、可動プラテン30はタイバー32にガイドされるように配置されている。可動プラテン30に可動側金型40a,固定プラテン33に固定側金型40bが取り付けられている。トグル機構36は、可動プラテン前後進モータM3によって駆動されるボールねじ軸38に取り付けられたクロスヘッド34を進退させることによって、トグル機構36を作動させることができる。この場合、クロスヘッド34を前進(図における右方向に移動)させると、可動プラテン30が前進させられて型閉じが行われる。そして、可動側金型40aと固定側金型40bが接触後、クロスヘッド34をトグル機構36が完全に伸長するまでさらに前進させることにより型締力を発生させる。
【0039】
リアプラテン31には型締位置調整用モータM5が配設されている。型締位置調整用モータM5の回転軸には、図示しない駆動用歯車が取り付けられている。図示しない全てのタイバーナットの歯車には図示しない別の歯車によって前記駆動用歯車の回転力の回転力が伝達するようになっている。すなわち、型締位置調整用モータM5を駆動すると、この伝達機構によってタイバー32のねじ部37に螺合されたタイバーナットが同期して回転させられる。これにより、型締位置調整用モータM5を所定の方向に所定の回転数だけ回転させて、リアプラテン31を所定の距離だけ進退させることができる。型締位置調整用モータM5は図示されるようにサーボモータが好ましく、回転位置検出用の位置検出器P5を備えている。位置検出器P5によって検出された型締位置調整用モータM5の回転位置の検出信号はサーボCPU15に入力する。
【0040】
射出成形機Mの制御装置100は、数値制御用のマイクロプロセッサであるCNCCPU20、プログラマブルマシンコントローラ用のマイクロプロセッサであるPMCCPU17、及びサーボ制御用のマイクロプロセッサであるサーボCPU15を有し、バス26を介して相互の入出力を選択することにより各マイクロプロセッサ間で情報伝達が行えるように構成されている。また、バス26にはパーソナルコンピュータなどの外部処理装置と接続するためのインタフェースを設けてもよい。
【0041】
サーボCPU15には、位置ループ,速度ループ,電流ループの処理を行うサーボ制御専用の制御プログラムを格納したROM13およびデータの一時記憶に用いられるRAM14が接続されている。また、サーボCPU15は、A/D(アナログ/デジタル)変換器16を介して射出成形機本体側に設けられた樹脂圧力センサ5からの圧力信号を検出できるように接続されている。サーボCPU15には、サーボCPU15からの指令に基づいて、射出軸に接続された射出用サーボモータM1,スクリュ回転軸に接続されたスクリュ回転用サーボモータM2を駆動するサーボアンプ11,12が接続され、各サーボモータM1,M2に取り付けられた位置・速度検出器P1,P2からの出力がサーボCPU15に帰還されるようになっている。各サーボモータM1,M2の回転位置は、位置・速度検出器P1,P2からの位置のフィードバック信号に基づいてサーボCPU15により算出され、各現在位置記憶レジスタに更新記憶される。そして、例えば、サーボCPU15が1サイクル毎にサンプリング処理を繰り返し実行し、所定のサンプリング周期毎に、樹脂圧力センサ5およびA/D変換器16を介してスクリュ3に作用する射出圧力を読み取ると共に、RAM14に射出速度、スクリュ位置を記憶するようにできる。
【0042】
金型の型締めを行う型締め軸を駆動するサーボモータM3,成形品を金型から取り出すエジェクタ軸用サーボモータM4には、それぞれサーボアンプ8,9が接続されている。各サーボモータM3,M4に取り付けられた位置・速度検出器P3,P4からの出力がサーボCPU15に帰還されるようになっている。各サーボモータM3,M4の回転位置は位置・速度検出器P3,P4からの位置のフィードバック信号に基づいてサーボCPU15により算出され、各現在位置記憶レジスタに更新記憶される。
【0043】
PMCCPU17には射出成形機のシーケンス動作を制御するシーケンスプログラム等を記憶したROM18および演算データの一時記憶等に用いられるRAM19が接続されている。また、PMCCPU17にはモニタデータ表示処理のプログラム等がROM18に記憶されている。CNCCPU20には、射出成形機を全体的に制御する自動運転プログラムなどの各種プログラムを記憶したROM21および演算データの一時記憶に用いられるRAM22が接続されている。成形データ保存用RAM23は、不揮発性のメモリであって、射出成形作業に関する成形条件と各種設定値,パラメータ,マクロ変数等を記憶する成形データ保存用にメモリである。表示装置/MDI(手動データ入力装置)25はインタフェース(I/F)を介してバス26に接続され、機能メニューの選択および各種データの入力操作等が行えるようになっている。さらに、数値データ入力用のテンキーおよび各種のファンクションキー等が設けられている。なお、表示装置としては、LCD(液晶表示装置)、CRT、その他の表示装置を用いたものでもよい。
【0044】
以上の射出成形機Mの構成により、PMCCPU17が射出成形機全体のシーケンスを制御し、CNCCPU20がROM21の運転プログラムや成形データ保存用RAM23に格納された成形条件等に基づいて各軸のサーボモータに対して移動指令の分配を行い、サーボCPU15は各軸に対して分配された移動指令と位置・速度検出器P1,P2,P3,P4,P5で検出された位置および速度のフィードバック信号等に基づいて、デジタルサーボ処理を実行し、サーボモータM1,M2,M3,M4,M5を駆動制御する。
【0045】
上記射出成形機Mを用いた成形動作を説明する。可動プラテン前後進モータM3を正方向に回転させると、ボールねじ軸38が正方向に回転させられ、ボールねじ軸38に螺合したクロスヘッド34は前進させられ、トグル機構36が作動させられると、可動プラテン30が前進させられる。
【0046】
可動プラテン30に取り付けられた可動側金型40aが固定側金型40bと接触すると(型閉状態)、型締工程に移行する。型締工程では、可動プラテン前後進モータM3を更に正方向に駆動することで、トグル機構36が伸長することによって金型40に型締力が発生する。そして、射出部Miに設けられたスクリュ前後進用サーボモータM1が駆動されてスクリュ3の軸方向に前進することにより、金型40内に形成されたキャビティ空間に溶融樹脂が充填される。型開きを行う場合、可動プラテン前後進モータM3を逆方向に駆動すると、ボールねじ軸38が逆方向に回転させられる。それに伴って、クロスヘッド34が後退し、トグル機構36が屈曲する方向に作動し、可動プラテン30がリアプラテン31の方向に後退する。型開工程が完了すると、成形品を可動側金型40aから押し出すエジェクタピンを突き出すためのエジェクタ前後進モータM4が作動する。これによって、エジェクタピン(図示せず)が可動側金型40aの内面から突きだされ、可動側金型40a内の成形品は可動側金型40aより突き出される。
【0047】
以上、本発明の実施形態の表示形式により、射出成形機の成形動作によって変化する圧力、速度、位置、温度等の各種変量を色、濃度、等高線等の表示形式に変換してグラフ表示することで、1成形サイクル中で変量にばらつきが発生しているタイミングや区間、さらにはばらつきが発生している成形サイクルの特定やばらつきの傾向等の成形安定性に関する情報を視覚的に把握できる。これにより、成形作業者は効率的に良否判別条件の設定を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
M 射出成形機
Q 変量
P 射出圧力
V 射出速度
C 成形サイクル
m 成形サイクル数のカウンタ
n サンプリングのカウンタ
100 制御装置
102 サンプリング部
104 記憶部
106 グラフ表示部
200 パーソナルコンピュータ
202 サンプリング部
204 記憶部
206 グラフ表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の成形工程の挙動を表示するモニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機では、成形品の品質管理、機械の動作管理などのために、成形動作によって変化する圧力、速度、位置、温度等の各種変量をそれぞれロードセル、モータに取り付けられたエンコーダ、熱電対等のセンサを用いて検出している。
成形品の良否を判定する一般的な方法としては、射出成形機が前記検出された変量の変化からその特徴値を自動的に検出し、前記特徴値があらかじめ成形作業者により良否判定条件として設定された許容幅内であるか否かを成形機が自動的に判別する方法が公知である。特徴値としては、射出・保圧工程中の最大圧力や、射出・保圧工程のスクリュ最前進位置などがある。
【0003】
さらに高度な良否判別方法としては、前記のように成形機が自動的に特徴値の検出を行う代わりに、成形作業者が良否判定条件として、判別に使用する変量の種類、1成形サイクル中の特定のタイミングや区間、さらにはそのタイミングや区間における前記変量の許容幅をも設定する方法がある。この方法では、成形機は選択された変量から設定されたタイミングにおける前記変量の値を自動的に抽出、あるいは区間が設定された場合にはその区間での前記変量の最大値、最小値または平均値を自動的に計算で求め、前記抽出値あるいは前記計算値があらかじめ設定された許容幅内であるか否かで自動的に良否判定を行う。
【0004】
以上のような高度な良否判定を行うためには、成形作業者が適切な良否判定条件を設定する必要がある。そこで、良否判定条件の設定作業を成形作業者の勘や経験に依らず合理的に行うことができるようにするために、射出成形機には設定の指標となる1成形サイクル中の変量の変化を画面に波形で表示する機能が備えられている。例えば、特許文献1(段落「0003」)には、所定のサンプリング周期で射出圧力を検出し、複数の射出成形サイクルに亘って射出圧力のグラフ表示を重ねて波形表示する技術が開示されている。また、特許文献2には、射出工程における1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎に検出して記憶し、時間を第1軸、前記変量を第2軸、成形サイクル数を第3軸として複数の成形サイクル分の前記変量をグラフ表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−244087号公報
【特許文献2】特開2004−216715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17は特許文献1に開示される波形表示の従来技術を説明する図である。図17では第1軸(横軸)を時間、第2軸(縦軸)を前記変量の一つである圧力Pとし、1成形サイクル中の圧力の変化をグラフ上に波形で描画したものである。この波形表示の例では、複数の成形サイクルにわたって圧力波形を重ね描きされている。複数のサイクルにわたってグラフが重ね描きされているため、波形の幅が太い区間は成形サイクル毎に圧力がばらついている区間であり、波形が細い区間は成形サイクル毎の圧力のばらつきが少ない区間であることが容易に判別できる。
ところで、成形品の良否判別は成形品の重量や寸法などの実測値に基づいて、実際に不良品が発生した成形サイクルを特定し、該特定されたサイクルにおける変量の中から良否判別に使用可能な変量を選択し、さらに良否判別を行うタイミングや区間や許容値を決めることが望ましい。
【0007】
しかしながら、図17のグラフ表示方法では変量がばらついている区間やその幅はわかるが、成形品を実測することによって不良品が発生したサイクルが特定できたとしても、その変量の波形がいかなる波形であったのかが判らないため、ばらつきが発生している区間やその幅が良否判別の指標として適切であるかどうか判らず、良否判別条件を設定するのには有効な表示手段ではないという問題があった。
【0008】
一方、図18は特許文献2に開示される波形表示の従来技術を説明する図である。この波形表示は、サイクル毎の変量の特徴を容易に把握できるようにするため、3次元で変量を波形表示する技術である。この表示方法は、第1軸を時間、第2軸を変量として描画する点では図17と同じであるが、さらに第3軸が設けられている。第3軸は成形サイクル数であり、成形サイクル毎に波形表示の起点が軸に沿ってずれて表示される。これにより複数の成形サイクルの変量の変化を表示する場合でも、表示された波形は重なりなく表示されることで、不良品が発生したサイクルにおける実測値の特徴を容易に把握することができる。
しかしながら、この表示方法では図17のように検出値がばらついている区間やその幅を特定することが困難であるため、良否判定条件を設定するのには十分な表示方法ではなかった。
上述したようにいずれの表示方法の従来技術も一長一短があり、それぞれの問題を解決するためには、成形作業者が図17と図18の波形表示方法を切換えながら良否判定条件を設定する必要があり、非常に煩雑な作業となっていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、変量を色、濃度、等高線等の表示形式に変換してグラフに表示することで、1成形サイクル中で変量にばらつきが発生しているタイミングや区間、さらにはばらつきが発生している成形サイクルの特定やばらつきの傾向等の成形安定性に関する情報を視覚的に把握できるようにし、効率的な良否判定条件の設定が可能な射出成形機のモニタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の請求項1に係る発明は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、少なくとも2軸を用いて、第1軸を時間とし、第2軸を成形サイクル数とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置である。
請求項2に係る発明は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する、少なくとも可動部材の位置と他の1以上の変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、少なくとも2軸を用いて、第1軸を前記可動部材の位置とし、第2軸を成形サイクル数とした面上に複数の成形サイクル分の前記他の変量を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置である。
請求項3に係る発明は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、各成形サイクルにおける所定のタイミングにおける時刻を記憶する時刻記憶部と、少なくとも2軸を用いて、第1軸を時間とし、第2軸を前記時刻とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換してグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する、少なくとも可動部材の位置と他の1以上の変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、各成形サイクルにおける所定のタイミングにおける時刻を記憶する時刻記憶部と、少なくとも2軸を用いて、第1軸を前記可動部材の位置とし、第2軸を前記時刻とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置である。
請求項5に係る発明は、前記射出成形機は、射出成形機の状態情報、操作履歴情報、射出成形機の動作条件の変更履歴情報、アラーム履歴情報、成形品の情報、生産情報、樹脂情報、各成形サイクルの特徴値情報の内少なくとも1つを取得する機能を有し、前記機能により取得した情報の内、少なくとも1つを前記グラフの第2軸の軸方向に表示することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置である。
請求項6に係る発明は、3軸目を追加し、前記変量を第3軸としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置である。
請求項7に係る発明は、前記変量は、サンプリングした変量と基準変量との差又は、前記変量の偏差値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、変量を色、濃度、等高線等の表示形式に変換してグラフに表示することで、1成形サイクル中で変量にばらつきが発生しているタイミングや区間、さらにはばらつきが発生している成形サイクルの特定やばらつきの傾向等の成形安定性に関する情報を視覚的に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を実施する射出成形機の制御装置を説明する図である。
【図2】記憶部に記憶される変量を説明する図である。
【図3】あらかじめ変量の大きさ毎に表示形式を設定しておくことを説明する図である。
【図4】複数回の成形サイクルにわたり1成形サイクルにおいてサンプリングして得られた変量の値を記憶したデータの内、任意のサンプリング時点の変量をグラフ上に表示することを説明する図である。
【図5】表示形式として色を用いた場合を説明する図である。
【図6】表示形式として等高線を用いた場合を説明する図である。
【図7】位置に関する変量Qとしてスクリュ位置を記憶した記憶部を説明する図である。
【図8】第2軸と平行な軸上に成形機の状態を表示した例を説明する図である。
【図9】第3軸を設けた例を説明する図である。
【図10】変量の大きさと色の関係を数直線上に示したグラフである。
【図11】従来技術のグラフ表示と本発明に係るグラフ表示とを同時に行った射出成形機のモニタ装置の表示例を説明する図である。
【図12】射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態1を説明する図である。
【図13】射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態2を説明する図である。
【図14】射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態3を説明する図である。
【図15】射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態4を説明する図である。
【図16】射出成形機と該射出成形機を制御する制御装置の概略構成図である。
【図17】複数の成形サイクルにわたって圧力波形を重ね描きされている従来の表示方法を説明する図である。
【図18】時間を第1軸、変量を第2軸、成形サイクル数を第3軸として複数の成形サイクル分の前記変量をグラフ表示する従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明を実施する射出成形機の制御装置を説明する図である。射出成形機Mの制御装置100は、成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えている。射出成形機Mに備わった各種センサS1,S2,・・・Skで検出された圧力、位置、モータ電流、温度等の変量Q1,Q2,・・・,Qkは、1成形サイクルの間、所定時間毎にサンプリング部102でサンプリングされ記憶部104に記録される。そして、成形サイクルを行う毎に成形サイクル数をインクリメントして変量Q1,Q2,・・・,Qkが記憶部104に記録される。記憶部104に記録された変量Q1,Q2,・・・,Qkは制御装置100に備わったグラフ表示部106にグラフ表示される。
【0015】
図2は記憶部に記憶される変量を説明する図である。変量Qとして射出圧力Pと射出速度Vを例とし、射出成形機Mに備わったセンサから得られる射出圧力Pと射出速度Vの検出結果が成形サイクル毎に所定のサンプリング周期でサンプリングされ記憶部104に記録される。図2は成形サイクルSが1〜m回で、各成形サイクルにおいて、射出圧力Pと射出速度Vのデータがn個のサンプリングデータとして記憶部104に記録されていることを示している。
【0016】
図3はあらかじめ変量の大きさ毎に表示形式を設定しておくことを説明する図である。射出成形機Mの制御装置100には、図3に示すように、予め変量Qの大きさ毎に表示形式を設定しておく。図3(a)は、変量Qの大きさを所定の区間に区切りそれぞれの区間に色情報をあらかじめ対応させて設定し、変量Qと色情報とを対応させて表示する表示形式を説明している。図3(b)は、変量Qの大きさを所定の区間に区切りそれぞれの区間に表示の濃度情報をあらかじめ対応させて設定し、変量Qと表示の濃度情報とを対応させて表示する表示形式を説明している。図3(c)は、等高線を描画する変量Qの大きさをあらかじめ設定し、変量Qと等高線とを対応させて表示する表示形式を説明している。
【0017】
図4は複数回の成形サイクルにわたり1成形サイクルにおいてサンプリングして得られた変量の値を記憶したデータの内、任意のサンプリング時点の変量をグラフ上に表示することを説明する図である。変量Qの1つである射出圧力Pのショット数1の場合のサンプリング回数1回目のときの射出圧力P(1,1)の値の大きさが15であった場合、P(1,1)を含む隣接するP(1,2)、P(2,1)、P(2,2)からなる四角形<1>に図3で設定された変量Qの大きさ15に対応する表示形式を適用する。これを全ての射出圧力P(1,1)〜P(m,n)について行うことによりグラフが描画される。
【0018】
第1の表示形式として、表示形式を色の違いとした場合には、射出圧力Pの大きさに応じて異なる色に変換して表示する。図5は図3(a)の色を用いた表示形式を採用した場合の例である。第1軸が時間、第2軸がサンプリング数とされている。これにより、図5に示される2次元のグラフ上で同じ大きさを持つ変量が同じ色で表示される。したがって、色の変化が無ければ変量Qの一つである射出圧力Pの変化が無く成形が安定しており、色の変化の傾向によって射出圧力Pの変化の傾向、例えば、周期的な変化、単調に増加や減少する変化等を容易に把握することができる。
このように色の違いで変量Qの大きさを表現することにより成形の安定性や成形の変化の傾向を視覚的に把握することができる。
【0019】
第2の表示形式として表示形式を色の濃淡にした場合にも前記第1の表現形式と同様にして変量の大きさを色の濃度に変換してグラフに表示にすることにより、成形の安定性や成形の変化の傾向を視覚的に把握することができる。
表現形式を色の違いや濃淡とした場合には、図3のように変量の範囲毎に色や濃淡を設定するのではなく、変量の大きさに応じて色や濃淡を連続的に変化させながら表示するようにしてもよい。この場合には、白色から黒色や、白色から赤色、白色から青色など色の明るさを変化させたり、青色から赤色など色合いを変化させたり、くすんだ赤色から鮮やかな赤色など色の鮮やかさを変化させるようにしてもよい。
【0020】
第3の表示形式として等高線とした場合にも前記第1や第2の表示形式と同様にして変量の大きさに対応させて等高線を描画することにより、成形の安定性や成形の変化の傾向を視覚的に把握することができる。図6は図3(c)の等高線を用いた表示形式を等高線とした場合の表示の実施例の一例である。
【0021】
次に第1軸、第2軸を前記サイクル中の経過時間やサイクル数以外とした場合について説明する。
前記第1軸は可動部材の位置としてグラフ表示してもよい。この場合には、射出スクリュの位置や型締機構部の可動プラテンの位置等の位置に関する変量Qのうち、いずれか一つの位置に関する変量を第1軸の変量として選択し、第1軸として選択された変量以外の変量をその大きさ毎に設定された表現形式に変換する。図7は位置に関する変量Qとしてスクリュ位置を記憶した記憶部を説明する図である。そして、第1軸を可動部材の位置、第2軸を成形サイクル数として2次元のグラフに表示する。可動部材の位置を第1軸とすることにより、可動部材の移動範囲内の位置や特定の区間に基づいた良否判別条件を設定する際に利用することができる。
【0022】
前記第2軸はサイクル開始タイミング、射出開始タイミング、計量開始タイミングなど、成形中の任意のタイミングにおける時刻としてもよい。なお、これらの時刻も制御装置100やパーソナルコンピュータ200の記憶部に記憶する。サイクル数を第2軸とする場合も任意のタイミングにおける時刻も連続して成形運転が行われている場合には表示されるグラフに違いはないが、仮に生産の終了や何らかの不具合によって成形が停止した場合、第2軸を時刻にしておけば、機械の停止中には前記変量は表示されなくなり、機械が停止したことが視覚的に把握できる。これにより、機械停止後、何時間経過後に成形が安定したのか、また、不具合で停止する前に何らかの異常があったかを調査するのに役立てることができる。なお、機械の運転や停止状態を把握するためには、成形サイクル毎、あるいは所定時刻毎に機械の状態情報や、操作内容情報、動作条件情報、アラーム情報、成形品情報、生産情報、樹脂情報、各成形サイクルの特徴値情報の内、少なくとも1つ以上の情報を記憶しておき、前記記憶された情報の内から少なくとも1つ以上を前記第2軸と平行かつ第2軸と同一スケールの軸上に表示するようにしてもよい。
【0023】
図8は第2軸と平行な軸上に成形機の状態情報を表示した例である。この例ではアラームが2回発生したことが図示されている。アラームの発生後に変量に変化がみられるようであれば、アラーム発生後以降には良否判別条件に関わらず成形品を強制的に廃棄する等の処置が必要であることがわかる。また、樹脂のロットを第2軸と平行かつ第2軸と同一スケールの軸上に表示すれば、樹脂のロットが成形安定性に与えた影響を視覚的に把握することができる。なお、成形品情報、生産情報、樹脂情報には以下のような情報が挙げられる。
【0024】
成形品情報:金型ファイル名称、金型ファイルID
生産情報:ロット番号、オーダ番号、生産スケジュール番号、金型番号、製品番号、作業
者の情報、その他の生産情報
樹脂情報:樹脂情報、ロット番号、樹脂グレード
前記のグラフにさらに第3軸を設けた場合について説明する。第3軸には前記記憶された変量が表示される。第3軸を設ける場合のグラフ表示は、公知例として挙げた特許文献2と類似しているが、本発明の本実施形態ではさらに変量の大きさに応じて異なる表示形式で表示する点である。これにより、3次元による立体的な表示に、色や濃淡などの視覚的な情報が加わるため、変量の変化の様子をより明確に把握することができる。第3軸を設けた表示の実施形態を図9に示す。なお、第1軸、第2軸、第3軸は射出成形機の表示装置上で縦方向、横方向、奥行方向のいずれであってもよい。
【0025】
次に変量の大きさについて説明する。前記の変量の大きさは変量の絶対値としてもよいし、相対値としてもよいし、あるいは、偏差値としてもよい。絶対値の場合には記憶された変量の大きさそのものを設定された表示形式に変換してグラフに表示する。相対値の場合には記憶された変量のうち、所定のサイクルにおける変量を基準変量として選択し、基準変量とそれ以外の変量との差を求めて変量の大きさとし、その大きさを前記表示形式に変換してグラフ表示する。
【0026】
なお、基準変量としては良品が得られた成形サイクルの変量を用いるのがよい。また偏差値とする場合、第1軸がサイクル中の経過時間ではサンプリング時間毎、第1軸が位置では位置毎にグラフに表示される全ての成形サイクルにわたって前記記憶された変量の偏差値を求め、その大きさを前記表示形式に変換してグラフ表示する。ここで、変量の大きさと色や濃淡などの表示形式との関係は作業者が一目でわかるようになっていることが望ましい。
【0027】
図10は変量の大きさと色の関係を数直線上に示したグラフである。作業者は変量の大きさと色の関係を変更することにより、変量の変化に対する色の変化を大きくしたり小さくしたりすることができる。これにより、変量をグラフに表示する際の視覚的な効果をさらに向上させることができる。変量の大きさを色の濃淡に変換する場合には、ハッチング線の多さや太さ、ドットの円の半径や四角の大きさを作業者が設定できるようにすることで色の場合と同様に変量をグラフに表示する際の視覚的な効果をさらに向上させることができる。
【0028】
変量の大きさを等高線に変換する場合には、等高線の間隔や本数を作業者が設定できるようにすることで色の場合と同様に変量をグラフに表示する際の視覚的な効果をさらに向上させることができる。
【0029】
本発明は図17や図18のような従来のグラフ表示の問題点を解決するために考案されたものであるが、従来のグラフ表示に慣れた作業者が本発明による表示方法との関係を容易に理解できるようにするために、従来のグラフ表示と本発明のグラフ表示を同時に行うようにしてもよい。図11は従来技術のグラフ表示と本発明に係るグラフ表示を同時に行った射出成形機のモニタ装置の表示例である。
【0030】
上述した本発明の実施形態では、射出成形機Mの制御装置100が、変量Qを所定時間毎にサンプリングするサンプリング部、該サンプリングされた変量Qを記憶する記憶部、および該変量Qをグラフに表示する表示部を備えているが、図12,図13,図14,図15に示すように構成してもよい。
【0031】
図12は射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態1であり、射出成形機Mに取付けられている各種センサS1〜Skから出力される検出信号をサンプリング部102で受け取り、サンプリング部102から出力されるサンプリングデータをパーソナルコンピュータ200の記憶部204に記録し、記憶部204に記録されたデータをグラフ表示部206で図3を用いて説明した表示形式によりグラフ表示する。
【0032】
図13は射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態2であり、射出成形機Mに取付けられている各種センサS1〜Skから出力される検出信号をパーソナルコンピュータ200に備わったサンプリング部で受け取り該信号をサンプリングし、サンプリングして得られたデータを記憶部204に記録し、記憶部204に記録されたデータをグラフ表示部206で図3を用いて説明した表示形式によりグラフ表示する。
【0033】
図14は射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態3であり、射出成形機Mに取付けられている各種センサS1〜Skから出力される検出信号をパーソナルコンピュータ200で受け取り、パーソナルコンピュータ200に備わったサンプリング部でサンプリングし、サンプリングして得られたデータを記憶部204に記録し、射出制御装置Mの制御装置100のグラフ表示部106で図3を用いて説明した表示形式によりグラフ表示する。
【0034】
図15は射出成形機とパーソナルコンピュータとを組み合わせた実施形態4であり、射出成形機Mの制御装置100のサンプリング部102から出力されるサンプリングデータをパーソナルコンピュータ200の記憶部204に記録し、射出成形機Mの制御装置100のグラフ表示部106で図3を用いて説明した表示形式によりグラフ表示する。
【0035】
図16は射出成形機と該射出成形機を制御する制御装置の概略構成図である。射出成形機Mは、機台上(図示省略)に型締部Mc、および射出部Miを備える。射出部Miは樹脂材料(ペレット)を加熱溶融し、当該溶融樹脂を金型40のキャビティ内に射出するものである。型締部Mcは主に金型40(可動側金型40a,固定側金型40b)の開閉を行うものである。射出成形機Mは、射出成形機の状態情報、又は操作履歴情報、射出成形機の動作条件の変更履歴情報、アラーム履歴情報、成形品の情報、生産情報、樹脂情報、各成形サイクルの特徴値情報の内少なくとも1つを取得する機能を有する。
【0036】
まず、射出部Miを説明する。射出シリンダ1の先端にはノズル2が取り付けられ、射出シリンダ1内には、スクリュ3が挿通されている。スクリュ3には、スクリュ3に掛る圧力により樹脂圧力を検出するロードセル等を用いた樹脂圧力センサ5が設けられている。樹脂圧力センサ出力信号は、A/D変換器16によりデジタル信号に変換されサーボCPU15に入力する。
【0037】
スクリュ3は、スクリュ回転用サーボモータM2により、プーリ,ベルト等で構成された伝動機構6を介して回転させられる。また、スクリュ3は、スクリュ前後進用サーボモータM1によって、プーリ,ベルト,ボールねじ/ナット機構などの回転運動を直線運動に変換する機構を含む伝動機構7を介して駆動され、スクリュ3の軸方向に移動させられる。なお、符号P1はスクリュ前後進用サーボモータM1の位置,速度を検出することによって、スクリュ3の軸方向の位置,速度を検出する位置・速度検出器であり、符号P2はサーボモータM2の位置,速度を検出することによって、スクリュ3の軸周り回転位置,速度を検出する位置・速度検出器である。符号4は射出シリンダ1に樹脂を供給するホッパである。
【0038】
次に、型締部Mcを説明する。型締部Mcは、可動プラテンである可動プラテン30を前後進させる可動プラテン前後進モータM3、リアプラテン31、成形品を金型から押し出すエジェクタピンを突き出すためのエジェクタ前後進モータM4、可動プラテン30、タイバー32、固定プラテン33、クロスヘッド34、エジェクタ機構35、複数のトグルリンクを連結して構成されるトグル機構36を備える。リアプラテン31と固定プラテン33とは複数本のタイバー32で連結されており、可動プラテン30はタイバー32にガイドされるように配置されている。可動プラテン30に可動側金型40a,固定プラテン33に固定側金型40bが取り付けられている。トグル機構36は、可動プラテン前後進モータM3によって駆動されるボールねじ軸38に取り付けられたクロスヘッド34を進退させることによって、トグル機構36を作動させることができる。この場合、クロスヘッド34を前進(図における右方向に移動)させると、可動プラテン30が前進させられて型閉じが行われる。そして、可動側金型40aと固定側金型40bが接触後、クロスヘッド34をトグル機構36が完全に伸長するまでさらに前進させることにより型締力を発生させる。
【0039】
リアプラテン31には型締位置調整用モータM5が配設されている。型締位置調整用モータM5の回転軸には、図示しない駆動用歯車が取り付けられている。図示しない全てのタイバーナットの歯車には図示しない別の歯車によって前記駆動用歯車の回転力の回転力が伝達するようになっている。すなわち、型締位置調整用モータM5を駆動すると、この伝達機構によってタイバー32のねじ部37に螺合されたタイバーナットが同期して回転させられる。これにより、型締位置調整用モータM5を所定の方向に所定の回転数だけ回転させて、リアプラテン31を所定の距離だけ進退させることができる。型締位置調整用モータM5は図示されるようにサーボモータが好ましく、回転位置検出用の位置検出器P5を備えている。位置検出器P5によって検出された型締位置調整用モータM5の回転位置の検出信号はサーボCPU15に入力する。
【0040】
射出成形機Mの制御装置100は、数値制御用のマイクロプロセッサであるCNCCPU20、プログラマブルマシンコントローラ用のマイクロプロセッサであるPMCCPU17、及びサーボ制御用のマイクロプロセッサであるサーボCPU15を有し、バス26を介して相互の入出力を選択することにより各マイクロプロセッサ間で情報伝達が行えるように構成されている。また、バス26にはパーソナルコンピュータなどの外部処理装置と接続するためのインタフェースを設けてもよい。
【0041】
サーボCPU15には、位置ループ,速度ループ,電流ループの処理を行うサーボ制御専用の制御プログラムを格納したROM13およびデータの一時記憶に用いられるRAM14が接続されている。また、サーボCPU15は、A/D(アナログ/デジタル)変換器16を介して射出成形機本体側に設けられた樹脂圧力センサ5からの圧力信号を検出できるように接続されている。サーボCPU15には、サーボCPU15からの指令に基づいて、射出軸に接続された射出用サーボモータM1,スクリュ回転軸に接続されたスクリュ回転用サーボモータM2を駆動するサーボアンプ11,12が接続され、各サーボモータM1,M2に取り付けられた位置・速度検出器P1,P2からの出力がサーボCPU15に帰還されるようになっている。各サーボモータM1,M2の回転位置は、位置・速度検出器P1,P2からの位置のフィードバック信号に基づいてサーボCPU15により算出され、各現在位置記憶レジスタに更新記憶される。そして、例えば、サーボCPU15が1サイクル毎にサンプリング処理を繰り返し実行し、所定のサンプリング周期毎に、樹脂圧力センサ5およびA/D変換器16を介してスクリュ3に作用する射出圧力を読み取ると共に、RAM14に射出速度、スクリュ位置を記憶するようにできる。
【0042】
金型の型締めを行う型締め軸を駆動するサーボモータM3,成形品を金型から取り出すエジェクタ軸用サーボモータM4には、それぞれサーボアンプ8,9が接続されている。各サーボモータM3,M4に取り付けられた位置・速度検出器P3,P4からの出力がサーボCPU15に帰還されるようになっている。各サーボモータM3,M4の回転位置は位置・速度検出器P3,P4からの位置のフィードバック信号に基づいてサーボCPU15により算出され、各現在位置記憶レジスタに更新記憶される。
【0043】
PMCCPU17には射出成形機のシーケンス動作を制御するシーケンスプログラム等を記憶したROM18および演算データの一時記憶等に用いられるRAM19が接続されている。また、PMCCPU17にはモニタデータ表示処理のプログラム等がROM18に記憶されている。CNCCPU20には、射出成形機を全体的に制御する自動運転プログラムなどの各種プログラムを記憶したROM21および演算データの一時記憶に用いられるRAM22が接続されている。成形データ保存用RAM23は、不揮発性のメモリであって、射出成形作業に関する成形条件と各種設定値,パラメータ,マクロ変数等を記憶する成形データ保存用にメモリである。表示装置/MDI(手動データ入力装置)25はインタフェース(I/F)を介してバス26に接続され、機能メニューの選択および各種データの入力操作等が行えるようになっている。さらに、数値データ入力用のテンキーおよび各種のファンクションキー等が設けられている。なお、表示装置としては、LCD(液晶表示装置)、CRT、その他の表示装置を用いたものでもよい。
【0044】
以上の射出成形機Mの構成により、PMCCPU17が射出成形機全体のシーケンスを制御し、CNCCPU20がROM21の運転プログラムや成形データ保存用RAM23に格納された成形条件等に基づいて各軸のサーボモータに対して移動指令の分配を行い、サーボCPU15は各軸に対して分配された移動指令と位置・速度検出器P1,P2,P3,P4,P5で検出された位置および速度のフィードバック信号等に基づいて、デジタルサーボ処理を実行し、サーボモータM1,M2,M3,M4,M5を駆動制御する。
【0045】
上記射出成形機Mを用いた成形動作を説明する。可動プラテン前後進モータM3を正方向に回転させると、ボールねじ軸38が正方向に回転させられ、ボールねじ軸38に螺合したクロスヘッド34は前進させられ、トグル機構36が作動させられると、可動プラテン30が前進させられる。
【0046】
可動プラテン30に取り付けられた可動側金型40aが固定側金型40bと接触すると(型閉状態)、型締工程に移行する。型締工程では、可動プラテン前後進モータM3を更に正方向に駆動することで、トグル機構36が伸長することによって金型40に型締力が発生する。そして、射出部Miに設けられたスクリュ前後進用サーボモータM1が駆動されてスクリュ3の軸方向に前進することにより、金型40内に形成されたキャビティ空間に溶融樹脂が充填される。型開きを行う場合、可動プラテン前後進モータM3を逆方向に駆動すると、ボールねじ軸38が逆方向に回転させられる。それに伴って、クロスヘッド34が後退し、トグル機構36が屈曲する方向に作動し、可動プラテン30がリアプラテン31の方向に後退する。型開工程が完了すると、成形品を可動側金型40aから押し出すエジェクタピンを突き出すためのエジェクタ前後進モータM4が作動する。これによって、エジェクタピン(図示せず)が可動側金型40aの内面から突きだされ、可動側金型40a内の成形品は可動側金型40aより突き出される。
【0047】
以上、本発明の実施形態の表示形式により、射出成形機の成形動作によって変化する圧力、速度、位置、温度等の各種変量を色、濃度、等高線等の表示形式に変換してグラフ表示することで、1成形サイクル中で変量にばらつきが発生しているタイミングや区間、さらにはばらつきが発生している成形サイクルの特定やばらつきの傾向等の成形安定性に関する情報を視覚的に把握できる。これにより、成形作業者は効率的に良否判別条件の設定を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
M 射出成形機
Q 変量
P 射出圧力
V 射出速度
C 成形サイクル
m 成形サイクル数のカウンタ
n サンプリングのカウンタ
100 制御装置
102 サンプリング部
104 記憶部
106 グラフ表示部
200 パーソナルコンピュータ
202 サンプリング部
204 記憶部
206 グラフ表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、
成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、
少なくとも2軸を用いて、第1軸を時間とし、第2軸を成形サイクル数とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置。
【請求項2】
成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、
成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する、少なくとも可動部材の位置と他の1以上の変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、
少なくとも2軸を用いて、第1軸を前記可動部材の位置とし、第2軸を成形サイクル数とした面上に複数の成形サイクル分の前記他の変量を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置。
【請求項3】
成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、
成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、
各成形サイクルにおける所定のタイミングにおける時刻を記憶する時刻記憶部と、
少なくとも2軸を用いて、第1軸を時間とし、第2軸を前記時刻とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換してグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置。
【請求項4】
成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、
成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する、少なくとも可動部材の位置と他の1以上の変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、
各成形サイクルにおける所定のタイミングにおける時刻を記憶する時刻記憶部と、
少なくとも2軸を用いて、第1軸を前記可動部材の位置とし、第2軸を前記時刻とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置。
【請求項5】
前記射出成形機は、射出成形機の状態情報、操作履歴情報、射出成形機の動作条件の変更履歴情報、アラーム履歴情報、成形品の情報、生産情報、樹脂情報、各成形サイクルの特徴値情報の内少なくとも1つを取得する機能を有し、
前記機能により取得した情報の内、少なくとも1つを前記グラフの第2軸の軸方向に表示することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置。
【請求項6】
3軸目を追加し、前記変量を第3軸としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置。
【請求項7】
前記変量は、サンプリングした変量と基準変量との差又は、前記変量の偏差値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置。
【請求項1】
成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、
成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、
少なくとも2軸を用いて、第1軸を時間とし、第2軸を成形サイクル数とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置。
【請求項2】
成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、
成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する、少なくとも可動部材の位置と他の1以上の変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、
少なくとも2軸を用いて、第1軸を前記可動部材の位置とし、第2軸を成形サイクル数とした面上に複数の成形サイクル分の前記他の変量を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置。
【請求項3】
成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、
成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、
各成形サイクルにおける所定のタイミングにおける時刻を記憶する時刻記憶部と、
少なくとも2軸を用いて、第1軸を時間とし、第2軸を前記時刻とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換してグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置。
【請求項4】
成形動作によって変化する各種変量を検出するセンサを備えた射出成形機において、
成形サイクル毎に1成形サイクル中に変化する、少なくとも可動部材の位置と他の1以上の変量を所定周期毎にサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部から出力されるサンプリングデータを記憶する記憶部と、
各成形サイクルにおける所定のタイミングにおける時刻を記憶する時刻記憶部と、
少なくとも2軸を用いて、第1軸を前記可動部材の位置とし、第2軸を前記時刻とした面上に複数の成形サイクル分の前記変量値を色情報又は、表示の濃度情報、等高線情報の何れかに変換しグラフ表示する表示部とを有する射出成形機のモニタ装置。
【請求項5】
前記射出成形機は、射出成形機の状態情報、操作履歴情報、射出成形機の動作条件の変更履歴情報、アラーム履歴情報、成形品の情報、生産情報、樹脂情報、各成形サイクルの特徴値情報の内少なくとも1つを取得する機能を有し、
前記機能により取得した情報の内、少なくとも1つを前記グラフの第2軸の軸方向に表示することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置。
【請求項6】
3軸目を追加し、前記変量を第3軸としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置。
【請求項7】
前記変量は、サンプリングした変量と基準変量との差又は、前記変量の偏差値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形機のモニタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図17】
【公開番号】特開2013−28002(P2013−28002A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164047(P2011−164047)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】
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