説明

射出成形機及び成形品の製造方法

【課題】ノズルの流路の断面積を容易に変更して、流路から成形型内に射出する成形材料の温度を精度よく制御する。
【解決手段】射出成形機1は、ノズル30の流路31から成形材料Sを成形型10内に射出する。流路31には絞り部32が形成されている。流路調節部材50は、流路31内に配置され、絞り部32との間の距離の変化に伴い絞り部32との間の流路31の断面積を変更する。ネジ機構8は、ノズル30の回転により、流路調節部材50に対してノズル30を変位させる。回転手段60は、ノズル30を回転させて、絞り部32と流路調節部材50との間の距離を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料をノズルから成形型内に射出する射出成形機と、成形材料を成形型内で成形する成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品は、未加硫のゴムや樹脂等の成形材料から製造される。成形材料は、金型等の成形型内で所定形状に成形される。従来、成形材料を成形型内のキャビティに射出して成形品を成形する射出成形機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来の射出成形機の例を示す断面図である。
射出成形機100は、図示のように、成形材料S(ここでは、ゴム)を射出するノズル110と、成形型120とを備えている。射出成形機100は、ノズル110を成形型120に当接させて、成形材料Sをノズル110から射出する。成形材料Sは、成形型120のキャビティ121内に向けて射出される。キャビティ121内で成形品Pを成形する。成形品Pは、成形型120内で加硫される。また、ノズル110は、所定径(例えば、4〜10mm)に形成された流路(射出孔)111を有する。射出成形機100は、成形材料Sであるゴムを、ノズル110の流路111を通過させて成形型120内に射出する。
【0004】
ゴムは、ノズル110の流路111を通過するときに、摩擦や抵抗等に伴う熱で加熱される。そのため、ノズル110の口径は、成形品P又はゴムの種類に応じてゴムを適宜加熱できるように、最適なサイズに設定する必要がある。従来は、流路111の直径を変化させて射出試験を行い、試験結果に基づいて、最適な口径を選択する。ところが、射出成形機100の周囲の温度が変化すると、射出前のゴムの温度と特性が変化する。その結果、射出されるゴムの温度が変動することがある。また、ゴムの温度が上昇して、いわゆるゴム焼けが発生する虞がある。流路111からゴムが射出され難くなり、所定時間内にゴムを射出しきれない虞もある。従って、従来の射出成形機100では、気温や季節の変化に応じて、射出試験とノズル110の選択を、手間や時間をかけて行う必要がある。これにより、各問題の発生を防止する。
【0005】
また、選択したノズル110を使用しても、ゴムの射出速度や温度の変動で、成形型120内に射出したゴムの温度が一定にならない虞がある。そのため、ゴムの温度と成形品Pの加硫度の均一性をより高くする観点から、改良の余地がある。ノズル110の口径を大きくすれば、ゴムの温度上昇を防止できるため、成形品Pに過加硫が発生するのを抑制できる。併せて、成形品Pの加硫時間を長くすることで、成形品Pの加硫度不足も回避できる。ただし、このようにすると、成形品Pの製造に要する時間が長くなるため、成形品Pの生産性が低くなる。以上の各問題は、ノズル110を交換することなく、口径や流路111の断面積を容易に変更できれば解消できる。しかし、射出時のゴムは高圧(例えば、200MPa以上)になるため、上記機能を有するノズル110の実現には困難が伴う。
【0006】
これに対し、従来、回転式バルブにより、溶融ゴム材料の温度を制御する射出成形機が知られている(特許文献2参照)。
従来の射出成形機では、バルブを、ゴム材料の射出経路に設ける。バルブにより経路の絞りを制御することで、ゴム材料の温度を制御する。
【0007】
しかしながら、従来の射出成形機では、バルブを、射出経路内で、ノズルから比較的離れた上流の位置に設けている。そのため、ゴム材料がバルブの絞りを通過してから射出されるまでの間に、ゴム材料の温度が変動し易い傾向がある。また、バルブで経路を絞り過ぎて、ゴム材料の温度が高くなると、ゴム材料にゴム焼けが生じて、バルブとノズルの間の経路にゴムが詰まる虞もある。この場合には、バルブとノズルを分解して、ゴムを除去しなければならないため、困難な作業を要し、かつ、手間や時間を浪費するという問題も生じる。射出成形機を一旦停止させて、射出成形機の稼動を長時間停止することも必要である。従って、従来の射出成形機では、射出するゴム材料の温度を、より精度よく制御することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−55614号公報
【特許文献2】特開2000−117777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、ノズルの流路の断面積を容易に変更できるようにし、ノズルの流路から成形型内に射出する成形材料の温度を精度よく制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、成形材料の流路を有するノズルと、ノズルが取り付けられた成形材料の射出装置とを備え、ノズルの流路から成形材料を成形型内に射出する射出成形機であって、ノズルの流路に形成された絞り部と、ノズルの流路内に配置され、絞り部との間の距離の変化に伴い絞り部との間の流路の断面積を変更する流路調節部材と、ノズルを射出装置に変位可能に連結し、ノズルの回転により、流路調節部材に対してノズルを変位させるネジ機構と、ノズルを回転させて、ノズルの絞り部と流路調節部材との間の距離を変化させる回転手段と、を備えた射出成形機である。
また、本発明は、ノズルに設けられた流路から成形材料を成形型内に射出して成形品を製造する成形品の製造方法であって、流路に絞り部が形成されたノズルを回転させて、ネジ機構によりノズルを変位させる工程と、ノズルの流路内に配置された流路調節部材と絞り部との間の距離を変化させて、絞り部と流路調節部材との間の流路の断面積を調節する工程と、ノズルの絞り部と流路調節部材との間の流路を通して成形材料を成形型内に射出する工程と、を有する成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノズルの流路の断面積を容易に変更でき、ノズルの流路から成形型内に射出する成形材料の温度を精度よく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の射出成形機を示す断面図である。
【図2】成形品を成形するときの射出成形機を示す断面図である。
【図3】射出成形機の射出ヘッドを拡大して示す断面図である。
【図4】ノズルと回転手段を示す斜視図である。
【図5】従来の射出成形機の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の射出成形機と成形品の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の射出成形機は、成形品(射出成形品)の製造装置であり、成形材料の流路を有するノズルを備えている。射出成形機は、ノズルの流路から成形材料を成形型内に射出して成形品を成形する。
【0014】
なお、成形材料は、成形品の原料を射出成形可能な状態にした材料(射出材)である。成形材料は、例えば未加硫のゴムや樹脂からなり、溶融又は可塑化される。以下では、成形材料として未加硫のゴム(以下、単にゴムという)を例に採り説明する。即ち、射出成形機は、ゴムである成形材料を成形型内に射出して、成形型によりゴムを成形する。ゴムを所定の加硫温度に加熱(加硫)して、ゴム成形品が製造される。
【0015】
図1は、本実施形態の射出成形機を示す断面図である。図1では、射出成形機の要部を示す。また、射出成形機の一部は切断せずに示している。
射出成形機1は、図示のように、成形材料Sの射出装置2と、移動装置3(図1では、二点鎖線で模式的に示す)と、成形型10と、制御装置4とを備えている。制御装置4は、射出成形機1の全体を制御する。射出成形機1は、制御装置4により制御されて、成形品Pを製造する。
【0016】
射出装置2は、シリンダ5と、プランジャ6と、押出機7(図1では先端部のみ示す)と、射出ヘッド20と、ノズル30とを有する。シリンダ5には、成形材料Sの計量空間5Aが形成されている。プランジャ6は、計量空間5A内で移動する。押出機7は、シリンダ5の側面に取り付けられている。射出ヘッド20は、シリンダ5の先端に固定されている。ノズル30は、射出装置2(射出ヘッド20)の先端に取り付けられ、成形型10に向けて配置されている。
【0017】
成形材料Sの射出時には、押出機7が、成形材料Sをシリンダ5内に押し出して、計量空間5Aに所定量の成形材料Sを充填する。その後、プランジャ6が、昇降装置(図示せず)により計量空間5A内に押し込まれる。射出装置2は、プランジャ6の圧力により、計量空間5A内の成形材料Sを射出する。成形材料Sは、射出ヘッド20の射出経路21を通過してノズル30の先端から射出される。射出装置2は、成形材料Sをノズル30から成形型10内に射出する。
【0018】
移動装置3は、例えば、射出装置2に取り付けられたボールネジ機構と、ボールネジ機構を駆動するモータとを有する。移動装置3は、射出装置2を射出成形機1内で所定方向(図1では上下方向)に移動させる。移動装置3は、射出装置2を成形型10に接近させて、ノズル30の先端を成形型10の上面に当接させる。また、移動装置3は、射出装置2を成形型10から離して、ノズル30の先端を成形型10の上面から離す。
【0019】
成形型10は、射出装置2により射出された成形材料Sを成形する。成形型10は、分離可能に組み合わされた複数の部材からなる。即ち、ランナ部材11、上型12、及び、下型13が、順に重ねて配置されて、成形型10を構成する。上型12と下型13は、所定形状のキャビティ14を区画する型部材であり、成形型10内に複数のキャビティ14を形成する。ランナ部材11には、成形材料Sの注入孔15が、ノズル30と対向する位置に形成されている。ランナ部材11は、上型12とともに、注入孔15から複数のキャビティ14まで延びる成形材料Sの通路16を区画する。成形材料Sは、注入孔15から成形型10内に注入され、通路16を通過してキャビティ14に充填される。成形型10は、キャビティ14内で成形材料Sからなる成形品Pを成形する。
【0020】
図2は、成形品Pを成形するときの射出成形機1を示す断面図である。図2では、図1に示す射出成形機1の一部を示している。
射出成形機1は、図示のように、射出装置2を移動装置3により移動させて、ノズル30を成形型10に当接させる。ノズル30は、注入孔15が形成された部分(注入口)に当接する。続いて、射出装置2が、ノズル30から成形材料Sを成形型10の注入孔15に射出する。これにより、成形材料Sを成形型10内のキャビティ14に向けて射出して、キャビティ14内で成形品Pを成形する。また、射出成形機1は、加熱装置(図示せず)により成形型10を加熱して、キャビティ14内の成形品Pを加熱する。成形品Pが加熱により加硫されて、所定形状及び性能の成形品Pが製造される。その後、ノズル30を成形型10から離して、成形型10を分解する。成形品Pは、キャビティ14から取り出される。
【0021】
成形型10は分解後に組み立てられて、成形材料Sが再び成形型10内に射出される。射出成形機1は、成形型10の組み立て、成形材料Sの射出、及び、成形型10の分解を繰り返し、成形品Pを連続して製造する。その際、成形材料Sは、ノズル30に形成された成形材料Sの流路31から成形型10内に射出される。射出成形機1は、成形材料Sで、複数の成形品Pを同時に製造する。また、射出成形機1は、流路31の断面積を変更するための構成(断面積変更手段)を備える。断面積変更手段は、成形型10上と射出ヘッド20に設けられて、成形材料Sの射出前や射出中に、流路31を所定の断面積に設定する。
【0022】
図3は、射出ヘッド20を拡大して示す断面図である。図3には、成形型10の一部も示す。
射出成形機1は、射出ヘッド20に、図示のように、ベース22と、ノズル30と、ノズル変位機構40と、絞り部32と、流路調節部材50とを備えている。また、射出成形機1は、成形型10に近接して配置された、ノズル30を回転させる回転手段60を備えている。
【0023】
ベース22は、円柱状をなし、シリンダ5(図2参照)に固定されている。成形材料Sの射出経路21は、ベース22の中心を貫通して直線的に形成されている。ベース22の先端部には、円筒状の凹部23が、射出経路21を中心に形成されている。射出経路21は、シリンダ5の計量空間5Aと位置を合わせて、かつ、計量空間5Aの端部に連続するように配置される。成形材料Sは、計量空間5Aから供給されて、射出経路21をノズル30に向かって通過する。凹部23は、流路調節部材50と一体をなす固定部材55と、ノズル変位機構40の一部とを収容する。また、凹部23の内周面には、雌ネジが形成されている。凹部23には、雌ネジにより、ノズル変位機構40が取り付けられている。
【0024】
ノズル30は、円筒状をなし、射出ヘッド20の先端部に設けられている。成形材料Sの流路31は、所定径の断面円形状に形成され、ノズル30の中心を直線的に貫通する。また、ノズル30は、一端に設けられたスライド部33(基端部)、他端に設けられたヘッド部34(先端部)、及び、スライド部33とヘッド部34の間に設けられたネジ部35(中間部)を有する。
【0025】
スライド部33は、ノズル30内で最も小さい外径に形成され、押出ヘッド20内に位置する。ヘッド部34は、環状をなし、押出ヘッド20外に位置する。ヘッド部34の端面は、成形型10に当接する当接面であり、成形型10の上面に押し付けられる。流路31は、ヘッド部34の当接面に開口する。ヘッド部34の外周は、多角形状(例えば、六角形状や八角形状)に形成されている。ネジ部35は、ヘッド部34よりも小さい外径に形成され、押出ヘッド20内に位置する。ネジ部35の外周面には、所定ピッチのネジ(雄ネジ)が形成されている。
【0026】
ノズル30の流路31は、スライド部33とネジ部35で同じ直径に形成される。また、流路31は、ヘッド部34で、スライド部33及びネジ部35における直径よりも小さい直径に形成される。即ち、流路31は、ヘッド部34で相対的に細くなるように形成され、ネジ部35とヘッド部34の境界で絞られる。これにより、ノズル30の流路31に、絞り部32が形成される。絞り部32は、流路31の他の部分よりも小径な小孔部であり、流路31内に突出した環状に形成される。流路31の断面積は、絞り部32で部分的に小さくなる。絞り部32の環状面(傾斜面)は、テーパ状に形成され、流路31内で流路調節部材50と対向する。
【0027】
ノズル変位機構40は、連結部材41と保持部材42とを有し、ノズル30を保持しつつ変位させる。連結部材41は、円筒状をなし、一端部の外周面に形成された雄ネジにより、ベース22に連結される。連結部材41の雄ネジは、上記した凹部23の雌ネジにネジ込まれて凹部23に固定される。これにより、ノズル変位機構40がベース22に連結される。また、連結部材41の内周は、射出経路21よりも大径に形成されている。保持部材42は、円筒状をなし、連結部材41の外周に装着される。保持部材42のフランジが、ネジ43により、連結部材41のフランジに固定される。また、保持部材42は、先端部にネジ部44を有する。ネジ部44は、保持部材42の内周面に形成された所定ピッチのネジ(雌ネジ)からなる。ネジ部44(雌ネジ部)は、ノズル30のネジ部35(雄ネジ部)と、回転可能にかみ合う。
【0028】
ノズル30のネジ部35は、保持部材42のネジ部44にねじ込まれる。ノズル30は、ネジ部35、44により保持部材42に保持される。また、ネジ部35、44は、ノズル30を変位させるためのネジ機構8を構成する。ノズル30が回転すると、ネジ機構8により、ノズル30が次第に変位する。ノズル30は、成形材料Sの流れる方向に沿って両方向に変位する。ネジ機構8は、ノズル30の回転角に応じて、ノズル30を所定距離だけ変位させる。また、ネジ機構8は、ノズル30の回転方向に応じて、ノズル30を所定方向に変位させる。ノズル変位機構40は、ネジ機構8により、ノズル30を射出ヘッド20の内部又は外部に変位させる。その際、ノズル30のスライド部33が、連結部材41の内周面をスライドする。ノズル30が変位すると、流路調節部材50が流路31に沿って相対的に変位する。
【0029】
流路調節部材50は、ノズル30の流路31内に配置され、絞り部32付近で流路31を調節する。ここでは、流路調節部材50は、所定形状の棒状部材(例えば、丸棒又はピン)からなり、流路31の断面積を調節する。流路調節部材50は、ノズル30の内面との間に隙間を開けて、流路31の中心に配置されている。即ち、流路調節部材50は、流路31内に、成形材料Sを流通可能に挿入される。成形材料Sは、流路調節部材50の外面とノズル30の内面との間を通過する。また、流路調節部材50は、固定部材55からノズル30のネジ部35まで、流路31に沿って配置される。
【0030】
流路調節部材50は、成形材料Sが流路31を円滑に通過できるように、流路31の直径に応じた所定径(ここでは、6〜12mmの直径)に形成される。固定部材55は、端部に形成されたフランジ56と、ベース22から続く射出経路21と、射出経路21が分岐した複数の分岐流路57とを有する。フランジ56は、凹部23内で、ベース22と連結部材41の間に挟み込まれて固定される。分岐流路57は、射出経路21からノズル30の流路31に向かって斜めに延び、成形材料Sを射出経路21から流路31まで通過させる。
【0031】
流路調節部材50の先端面は、流路31の断面積を調節するための調節面51であり、ノズル30の絞り部32に対向して配置される。調節面51は、絞り部32の傾斜面に合わせて傾斜したテーパ状に形成される。ノズル30の変位に合わせて、絞り部32が調節面51に接近し、或いは、絞り部32が調節面51から離間する。これにより、調節面51と絞り部32との間の流路31が開閉するとともに、絞り部32の開口度が次第に変化する。また、調節面51と絞り部32の間の隙間、及び、流路31の断面積が次第に変化する。絞り部32が調節面51に押し付けられたときには、調節面51が絞り部32の孔に嵌まり込む。調節面51は、ノズル30の開口部を塞いで流路31を封鎖する。
【0032】
このように、流路調節部材50は、ノズル30の流路31内に配置されて、絞り部32との間の距離(隙間)が変化する。流路調節部材50は、絞り部32との間の距離の変化に伴い、絞り部32との間の流路31の断面積を変更する。流路31の断面積は、流路調節部材50と絞り部32により調節される。その際、ネジ機構8によりノズル30を変位させて、絞り部32と流路調節部材50の間の距離を変化させる。ネジ機構8は、上記したように、ノズル30と射出装置2に設けられたネジ部35、44からなり、ノズル30を射出装置2に変位可能に連結する。ネジ機構8は、ノズル30の回転により、流路調節部材50に対してノズル30を変位させる。
【0033】
射出成形機1は、射出装置2を移動装置3により移動させて、ノズル30を成形型10に当接させる。同時に、ノズル30のヘッド部34が回転手段60内に挿入されて、ノズル30が回転手段60に連結する。回転手段60は、成形型10の上面に設けられて、注入孔15の周りに配置される。回転手段60は、ノズル30を回転させて、ノズル30の絞り部32と流路調節部材50との間の距離を変化させる。
【0034】
図4は、ノズル30と回転手段60を示す斜視図である。
回転手段60は、図示のように、回転体61と、駆動装置70とを備えている。回転体61は、ウォームホイールであり、外周に歯部62を有する。また、回転体61は、ノズル30が嵌合する嵌合部63を有する。回転体61は、環状をなし、成形型10上で、支持部材(図示せず)により回転可能に支持されている。嵌合部63は、回転体61の中心に形成された貫通孔からなる。回転体61の内周(嵌合部63)は、ノズル30のヘッド部34に合わせて、多角形状(例えば、六角形状や八角形状)に形成されている。ヘッド部34は、嵌合部63内に挿入されて、成形型10に当接する。これにより、六角ボルトの頭部がボックススパナの中に収容されるように、ヘッド部34が嵌合部63に嵌合する。
【0035】
駆動装置70は、一対のウォーム71と、ウォーム71を回転させる駆動源(図示せず)とを有する。ウォーム71は、丸棒状をなし、支持部材(図示せず)により回転可能に支持されている。ウォーム71は、外周に歯部72を有する。駆動源は、モータと、一対のウォーム71に固定された一対の噛み合い歯車とを有する。一対のウォーム71は、駆動源により同期して回転する。その際、一対のウォーム71は、同じ速度で逆方向に回転する。回転体61は、歯部62、72が噛み合うように、一対のウォーム71の間に配置される。回転体61とウォーム71は、ウォームギア機構を構成する。
【0036】
駆動装置70は、一対のウォーム71を回転させて、回転体61を回転させる。回転体61は、ノズル30のヘッド部34と一体に回転する。回転手段60は、回転体61によりノズル30を回転させて、ネジ機構8によりノズル30を変位させる。これにより、流路調節部材50が、流路31内で相対的に変位する。ノズル30の絞り部32は、流路調節部材50に接近し、或いは、流路調節部材50から離間する。
【0037】
ノズル30が射出ヘッド20内に変位することで、流路31内で、絞り部32が流路調節部材50の調節面51に接近する。これにより、流路調節部材50と絞り部32との間の流路31の断面積が小さくなる。ノズル30が射出ヘッド20外に変位することで、流路31内で、絞り部32が調節面51から離間する。これにより、流路調節部材50と絞り部32との間の流路31の断面積が大きくなる。ノズル30は、移動装置3により成形型10に押し付けられるため、成形型10に当接した状態で変位する。
【0038】
本実施形態では、回転手段60とネジ機構8により、絞り部32と流路調節部材50との間の距離(隙間)を変化させて、流路31の断面積を変更する。従って、回転手段60とネジ機構8は、絞り部32と流路調節部材50との間の距離を変化させる距離変化手段を構成する。また、回転手段60とネジ機構8は、絞り部32と流路調節部材50との間の流路31の断面積を変更する断面積変更手段を構成する。射出成形機1は、距離変化手段(断面積変更手段)により、絞り部32と流路調節部材50との間の距離を調節する。これにより、流路31の断面積を調節して、設定された断面積に変更する。その際、ネジ機構8が、流路調節部材50に対してノズル30を相対的に変位させて、絞り部32と流路調節部材50との間の距離を変化させる。
【0039】
次に、射出成形機1(図1、図2参照)により成形品Pを成形する手順と、成形品Pの製造方法について説明する。以下の手順や動作は、コンピュータを備えた制御装置4により制御されて実行される。
まず、移動装置3により射出装置2を移動させて、ノズル30を成形型10に当接させる。その際、流路調節部材50は、ノズル30の流路31内に配置されるとともに、流路31に形成された絞り部32に接触する。絞り部32の流路31は、流路調節部材50により閉鎖される。ノズル30は、回転体61の嵌合部63に挿入されて、回転手段60に連結される。
【0040】
続いて、回転手段60によりノズル30を回転させて、ネジ機構8によりノズル30を変位させる。ノズル30の変位により、流路調節部材50と絞り部32との間の距離を変化させて、絞り部32と流路調節部材50との間の流路31の断面積(開口度)を調節する。その際、制御装置4が、流路31の目標断面積に基づいて、回転手段60を制御する。目標断面積は、制御装置4に予め設定される。制御装置4は、目標断面積と所定の条件に基づいて、回転手段60によりノズル30を回転させる。所定の条件は、例えばノズル30の回転角と変位距離の関数であり、制御装置4に予め設定される。
【0041】
回転手段60は、制御装置4により制御されて、ノズル30を所定方向に回転させる。また、回転手段60は、流路31の断面積が目標断面積になるように、ノズル30を所定角度(又は、所定数)だけ回転させる。制御装置4は、回転手段60を介して流路31の断面積を制御する。ここでは、ノズル30の絞り部32を流路調節部材50から離して、絞り部32の流路31を開放する。また、絞り部32と流路調節部材50との間の流路31の断面積を広くして、流路31の断面積を目標断面積に変更する。流路調節部材50と絞り部32との間の隙間は、主に、流路調節部材50の外面とノズル30の内面との間の隙間よりも狭くなるように設定される。
【0042】
次に、射出装置2により、絞り部32と流路調節部材50との間の流路31を通して、成形材料Sを成形型10内に射出する。射出成形機1は、ノズル30に設けられた流路31から、成形材料Sを成形型10内に射出して成形品Pを製造する。成形品Pは、キャビティ14内で成形されつつ、成形型10内で加硫される。成形材料Sの射出終了後、回転手段60によりノズル30を回転させて、絞り部32を流路調節部材50に接触させる。流路調節部材50により、絞り部32の流路31を閉鎖する。続いて、射出装置2を移動させて、ノズル30を成形型10から離す。流路31を流路調節部材50で塞ぐことで、ノズル30から成形材料Sが漏れるのを防止する。成形材料Sは、計量空間5Aへの充填中(計量中)、及び、射出前後に、ノズル30から漏れることはない。
【0043】
以上説明した射出成形機1では、ノズル30の流路31内で、絞り部32と流路調節部材50の距離を変化させて、流路31の断面積を変更する。そのため、流路31の断面積の変更に要する手間や時間を削減できるとともに、流路31の断面積を容易に変更できる。流路31の断面積を簡単かつ精度よく調節することもできる。これに伴い、流路31の断面積を随時変更できるため、流路31を常に最適な断面積に調節することができる。また、成形材料Sの種類、成形品Pの種類、季節の変化、気温の変化に対応して、流路31の断面積を適宜設定できる。その際、ノズル30を交換する必要がないため、ノズル30の交換に必要な手間や時間を削減できる。流路31の断面積を調節することで、成形材料Sの射出条件を、射出時の状況に応じた条件に簡単かつ正確に変更できる。その結果、流路31からの射出時に、成形材料Sを適切に加熱できるため、成形材料Sの温度を精度よく制御できる。射出する成形材料Sの温度の変動も抑制できる。
【0044】
従って、本実施形態によれば、ノズル30の流路31の断面積を容易に変更できる。また、流路31から成形型10内に射出する成形材料Sの温度を精度よく制御することができる。射出時に、成形材料Sの温度と目標温度の温度差を低減できるため、成形品Pの品質を安定させることもできる。これにより、ゴムからなる成形品Pを製造するときに、過加硫や加硫度不足が生じるのを防止できる。加硫度のバラツキも低減できる。成形品Pを予め適切な温度に加熱できるため、成形品Pの加硫時間を従来よりも短縮(例えば、従来の1/4〜1/2)できる。成形品Pの製造時間を短縮できるため、成形品Pの生産性も向上できる。
【0045】
絞り部32を流路31内に形成したため、絞り部32で加熱された成形材料Sを、温度の変動を抑制しつつ流路31から射出できる。そのため、成形材料Sを流路31から所定時間内に確実に射出できる。また、流路31内で、成形材料Sに焼け(ゴム焼け)が発生し難くなり、かつ、成形材料Sの詰まりも防止できる。仮に、成形材料Sの焼け又は詰まりが発生しても、ネジ43を外して保持部材42とノズル30を分解し、流路31や流路調節部材50を清掃すればよい。このように、射出装置2や射出ヘッド20の全体を分解することなく、ノズル30を容易に分解・清掃できるため、成形材料Sの焼けや詰まりを簡便に解消できる。
【0046】
ネジ機構8により、ノズル30を簡単に精度よく変位させることができる。また、加硫時の熱によりノズル30が熱膨張したときでも、ノズル30の変位量の変動を抑制できるため、流路31の断面積の精度を高く維持できる。ノズル30を変位させるために、射出成形機1に高精度のサーボ機構等を設ける必要もない。射出成形機1は、従来の射出成形機に比較的簡単な改造を加えるだけで実現できる。
【0047】
流路31が単純な断面円形状であるときには、成形材料Sの温度は、流路31を通過する間に、ノズル30の内面に接する外側で高くなり、中央部で低くなる。これに対し、本実施形態では、流路調節部材50が棒状部材からなるため、流路31の断面形状がリング状になり、成形材料Sが接する面が増加する。そのため、流路31を通過する間に成形材料Sが内外から加熱されて、成形材料Sの内側でも温度が上昇する。成形材料Sの内外間での温度差が低減するため、成形材料Sの全体の温度がより均一になる。その際、流路調節部材50を丸棒状部材にすると、流路調節部材50の周囲の成形材料Sが均等に加熱されて、成形材料Sの温度がより均一になる。従って、流路調節部材50は、丸棒状部材から構成するのが好ましい。
【0048】
成形品Pを製造するときには、流路31の断面積を一定に維持して、ノズル30から成形材料Sを射出するようにしてもよい。また、成形材料Sを成形型10内に射出中に、流路31の断面積を変更するようにしてもよい。断面積を変更するときには、制御手段である制御装置4により回転手段60を制御して、ノズル30を回転させる。これにより、射出の開始から終了までの1サイクル内において、絞り部32と流路調節部材50との間の距離を変化させる。また、流路31の断面積を所定のパターンで変更する。このようにすると、成形材料Sの温度を射出中にも制御できるため、成形材料Sの温度を、射出の各段階に応じた温度に調節できる。1回の射出中に成形材料Sの温度が変化するときでも、成形材料Sの温度を調節して温度変化を抑制できるため、成形材料Sの温度を一定範囲内に維持できる。
【0049】
成形材料Sの温度は、射出開始時は低く、射出の初期段階で次第に上昇する。その後、成形材料Sの温度は、射出の中期段階で変化が小さくなり、射出の終期段階で次第に下降する傾向がある。そのため、例えば、流路31の断面積は、成形材料Sの温度変化に対応して、射出開始時には小さくして、射出の初期段階で次第に大きくする。その後、流路31の断面積は、射出の中期段階で一定に維持し、射出の終期段階で次第に小さくする。これにより、成形材料Sの温度は、射出の初期段階と終期段階で上昇し、射出の中期段階で低下する。その結果、1回の射出中を通して、成形材料Sの温度変化が小さくなり、一定範囲の温度で成形材料Sが射出される。また、成形材料Sの射出が終了するときに、流路31の断面積を僅かに広くすると、最後に射出される成形材料Sに焼けが生じ難くなるため、ノズル30の詰まりが防止される。
【0050】
なお、回転体61は、ウォームギア機構以外の回転機構により回転させるようにしてもよい。例えば、回転体61は、ラック・アンド・ピニオン機構、又は、チェーン機構により回転させてもよい。ラック・アンド・ピニオン機構は、回転体61の外周に設けたピニオンギアと、回転体61を挟み込む一対のラックから構成する。一対のラックを同期して逆方向に移動させることで、回転体61が回転する。チェーン機構は、回転体61の外周に設けたスプロケットと、スプロケットを回転させるチェーンから構成する。このように、回転手段60は、種々の機構により構成することができる。
【0051】
射出成形機1には、ノズル30の変位量、又は、流路31の断面積を表示する表示手段を設けるようにしてもよい。表示手段には、制御装置4から出力される情報を表示させる。このような表示は、比較的簡単に行うことができる。表示手段を設けることで、ノズル30の変位量、又は、流路31の断面積の誤りを早期に発見できる。その結果、成形品Pに加硫不良が発生するのを、より確実に防止できる。
【0052】
成形材料Sがゴムであるときには、射出成形機1による成形材料Sの射出時間が比較的長くなる。本実施形態の射出成形機1は、成形材料Sとしてゴムを射出するゴム用射出成形機に好適である。ただし、射出成形機1は、樹脂を射出して樹脂成形品を成形する樹脂用射出成形機にも適用できる。射出成形機1を使用することで、成形材料Sのみからなる成形品Pを製造できる。また、予めキャビティ14内に部品を挿入しておくことで、成形材料Sと部品からなる成形品Pを製造することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・射出成形機、2・・・射出装置、3・・・移動装置、4・・・制御装置、5・・・シリンダ、5A・・・計量空間、6・・・プランジャ、7・・・押出機、8・・・ネジ機構、10・・・成形型、11・・・ランナ部材、12・・・上型、13・・・下型、14・・・キャビティ、15・・・注入孔、16・・・通路、20・・・射出ヘッド、21・・・射出経路、22・・・ベース、23・・・凹部、30・・・ノズル、31・・・流路、32・・・絞り部、33・・・スライド部、34・・・ヘッド部、35・・・ネジ部、40・・・ノズル変位機構、41・・・連結部材、42・・・保持部材、43・・・ネジ、44・・・ネジ部、50・・・流路調節部材、51・・・調節面、55・・・固定部材、56・・・フランジ、57・・・分岐流路、60・・・回転手段、61・・・回転体、62・・・歯部、63・・・嵌合部、70・・・駆動装置、71・・・ウォーム、72・・・歯部、P・・・成形品、S・・・成形材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料の流路を有するノズルと、ノズルが取り付けられた成形材料の射出装置とを備え、ノズルの流路から成形材料を成形型内に射出する射出成形機であって、
ノズルの流路に形成された絞り部と、
ノズルの流路内に配置され、絞り部との間の距離の変化に伴い絞り部との間の流路の断面積を変更する流路調節部材と、
ノズルを射出装置に変位可能に連結し、ノズルの回転により、流路調節部材に対してノズルを変位させるネジ機構と、
ノズルを回転させて、ノズルの絞り部と流路調節部材との間の距離を変化させる回転手段と、
を備えた射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載された射出成形機において、
回転手段が、ノズルが嵌合する嵌合部を有する回転体と、回転体を回転させる駆動装置とを備えた射出成形機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された射出成形機において、
回転手段を制御して、成形材料を成形型内に射出中に流路の断面積を変更させる制御手段を備えた射出成形機。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された射出成形機において、
流路調節部材が、ノズルの流路内に挿入された棒状部材からなる射出成形機。
【請求項5】
ノズルに設けられた流路から成形材料を成形型内に射出して成形品を製造する成形品の製造方法であって、
流路に絞り部が形成されたノズルを回転させて、ネジ機構によりノズルを変位させる工程と、
ノズルの流路内に配置された流路調節部材と絞り部との間の距離を変化させて、絞り部と流路調節部材との間の流路の断面積を調節する工程と、
ノズルの絞り部と流路調節部材との間の流路を通して成形材料を成形型内に射出する工程と、
を有する成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載された成形品の製造方法において、
成形材料を成形型内に射出中に、ノズルを回転させて流路の断面積を変更する工程を有する成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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