説明

射出成形機

【課題】フィルムを所定の位置に位置決めができ、フィルムの表面に傷がつくのを防止することができる射出成形機を提供する。
【解決手段】射出成形機1は、凸状の加工面111を有する凸金型11と、凹状の加工面121を有する凹金型21とを有し、前記凸状の加工面111にフィルムFを負圧吸引手段51により仮保持し、前記凸金型11と前記凹金型21とを型締めしてキャビティを形成し、前記フィルムFを前記凹状の加工面121に当接させた当接状態で溶融樹脂を供給して成形品を成形する射出成形機1において、前記フィルムFを前記凸状の加工面111の所定の位置に配置する位置決め手段41を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形の分野においては、加熱溶融された溶融樹脂を凹型及び凸型の一対の金型の内部に射出注入し、冷却、固化させることにより樹脂成形品を製造する射出成形機が用いられている。ここで、一対の金型には、成形品の形状に対応した加工がなされた加工面が設けられていることにより、所定の形状に成形することができる。
また、樹脂成形品の表面に化粧を施す場合には、一対の金型の対向する加工面の一方に予め化粧の施されたフィルムを配置してから金型同士を対向設置して型締めし、溶融樹脂を注入する構成の射出成形機が一般的に採用されている。
【0003】
しかし、溶融樹脂を注入する段階で、予め配置されたフィルムが位置ずれするという不具合があった。
そこで、凸型の加工面の一部に吸引孔を設けるとともに、該加工面に沿ってフィルムを配して、該吸引孔より空気を吸引することによりフィルムを加工面に引き寄せるようにして型締めし、溶融樹脂を注入する吸引方法が採られていた(下記特許文献1参照)。ここで、吸引は、溶融樹脂の注入と同時に停止される。
【0004】
また、凸型の加工面から突出する駆動ピンと、該駆動ピンの外縁に配された吸引孔とを設け、該吸引孔より空気を吸引することによりフィルムを加工面に引き寄せるようにして型締めし、溶融樹脂を注入する駆動ピン方法が採られていた(下記特許文献1参照)。ここで、溶融樹脂の注入と同時に、吸引は停止され、駆動ピンは加工面まで後退する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−34154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の吸引方法では、溶融樹脂の注入段階でフィルムが凸型の加工面から外れる際に、フィルムが凹型の加工面と擦れ、フィルムの表面が傷つく可能性があるという問題点があった。
また、吸引時にフィルムが吸引孔の外縁に張り付き、又は引っかかりフィルムが位置ずれを起こすという問題点もあった。
【0007】
また、上述の駆動ピン方法では、位置決め機能を有していないため、凸型の加工面に位置ずれしたままの状態で吸引される可能性があるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルムを所定の位置に位置決めができ、フィルムの表面に傷がつくのを防止することができる射出成形機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る射出成形機は、凸状の加工面を有する凸金型と、凹状の加工面を有する凹金型とを有し、前記凸状の加工面にフィルムを負圧吸引手段により仮保持し、前記凸金型と前記凹金型とを型締めしてキャビティを形成し、前記フィルムを前記凹状の加工面に当接させた当接状態で溶融樹脂を供給して成形品を成形する射出成形機において、前記フィルムを前記凸状の加工面の所定の位置に配置する位置決め手段を有することを特徴とする。
【0010】
このような射出成形機では、位置決め手段により、フィルムを凸状の加工面の所定の位置に配置する位置決めをすることができる。また、位置決めした状態で、該フィルムを凸状の加工面に仮保持することができるため、型締めし、溶融樹脂を供給する際に、フィルムの位置ずれ等により、フィルムの表面に傷がつくのを防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る射出成形機は、前記位置決め手段は、前記凸条の加工面から突出する位置決めピンを複数有することを特徴とする。
【0012】
このような射出成形機では、位置決めピンが複数有ることにより、フィルムを凸状の加工面に対して確実に位置決めすることができる。
【0013】
また、本発明に係る射出成形機は、前記位置決めピンは、前記型締めをする方向に進退可能であることを特徴とする。
【0014】
このような射出成形機では、位置決めピンが型締めをする方向に進退可能であるために、加工面より突出することにより位置決め手段として確実に役割を担うことができる。また、加工面より後退することにより、溶融樹脂を供給する際には成形品の形状に対応したキャビティを形成することができ、確実に成形品を成形することができる。
【0015】
また、本発明に係る射出成形機は、前記フィルムとして、前記凹状の加工面と対応する凸形状に形成されたフィルムを用いることを特徴とする。
【0016】
このような射出成形機では、フィルムが凹状の加工面に対応する凸形状に形成されていることにより、フィルムに対して位置ずれすることなく確実に位置決めができるとともに、フィルムを凹状の加工面に当接させる際にも位置ずれすることがない。よって、フィルムを所定の位置に位置決めができ、フィルムの表面に傷がつくのを防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る射出成形機は、前記位置決めピンは、前記凸形状を形成する傾斜面に当接する少なくとも3つのピンを有することを特徴とする。
【0018】
このような射出成形機では、位置決めピンが凸形状を形成する傾斜面に対して、三箇所から力を加えることにより、確実に位置決めをすることができる。また、位置ずれを起こすことがないため、フィルムの表面に傷がつくのを防止することができる。
【0019】
また、本発明に係る射出成形機は、前記負圧吸引手段は、前記凸状の加工面に開口するように吸引孔が形成されるとともに、該吸引孔の内部に進退可能に配された吸引管と、該吸引管の位置に応じて前記吸引孔を開閉するように前記吸引管の内部に設けられた吸引ピンとを備え、前記吸引管が前記凸状の加工面より突出することにより前記位置決め手段を兼ねていることを特徴とする。
【0020】
このような射出成形機では、吸引孔の内部には吸引管が設けられ、吸引管の内部には、進退する吸引管との位置に応じて吸引孔を開閉する吸引ピンが設けられている。よって、吸引する場合には、吸引孔を開いた状態として、吸引管より吸引することにより、負圧吸引することができる。また、樹脂を供給する場合には、吸引孔を閉じた状態とすることにより、吸引管の内部に樹脂が供給されることない。
また、吸引管が位置決め手段を兼ねていることにより、射出成形機を簡易な装置とすることができる。
【0021】
また、本発明に係る射出成形機は、前記当接状態で、前記位置決めピン及び前記吸引管の前記フィルムに対する押圧力を制御する第一制御部を有することを特徴とする。
【0022】
このような射出成形機では、第一制御部により、一定の押圧力により位置決めピン及び吸引管がフィルムを凹状の加工面に対して押圧する。よって、フィルムに対して加えられる力が一定であるため、例えばフィルムの厚みに差があったとしても、厚みの差によりフィルムが押しつぶされる箇所が発生することはない。
【0023】
また、本発明に係る射出成形機は、前記吸引管及び前記吸引ピンは、前記凸状の加工面の略中央部に設けられた第一吸引部と、該第一吸引部の周囲に設けられた第二吸引部とを有し、前記第二吸引部を前記第一吸引部よりわずかに後退させた位置に突出させる第二制御部を備えることを特徴とする。
【0024】
このような射出成形機では、吸引管及び吸引ピンは、凸状の加工面の略中央部に設けられた第一吸引部より、該第一吸引部の周囲に設けられた第二吸引部の方が、わずかに後退している。よって、型締めの際には、凹金型の内部に第一吸引部から順次内方に移動するので、フィルムを凹状の加工面の擦れを抑えることができ、フィルムの表面に傷がつくのを防止することができる。
【0025】
また、本発明に係る射出成形機は、前記型締め状態で、前記第一吸引部の吸引管をさらに突出させた後に、前記第二吸引部の吸引管をさらに突出させる第三制御部を備えることを特徴とする。
【0026】
このような射出成形機では、また型締め後に、フィルムを凹状の加工面に当接させる際には、中央部の第一吸引部から周囲の第二吸引部の順に当接させる。よって、フィルムと凹状の加工面との間に含まれる空気を、中央部から外方に向かって順次取り除くことができるため、凹状の加工面に対応した成形品を確実に成形することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る射出成形機によれば、フィルムを所定の位置に位置決めができ、フィルムの表面に傷がつくのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一実施形態に係る射出成形機を示す断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る射出成形機の(a)前工程、(b)位置決め工程、(c)型締め工程、(d)後退工程、(e)射出工程、(f)脱型工程を示す断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る射出成形機の負圧吸引手段の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る射出成形機を示す断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る射出成形機の(a)位置決め工程、(b)射出工程を示す断面図である。
【図6】本発明の第四実施形態に係る射出成形機の(a)前工程、(b)位置決め工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第六実施形態に係る射出成形機を示す断面図である。
【図8】本発明の第六実施形態の変形例に係る射出成形機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係る射出成形機1について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る射出成形機1は、凸金型11と、凹金型21とを備える。
凸金型11と凹金型21とは、図2に示すそれぞれに形成された加工面111、121を対向するように脱型した状態から、加工面111に沿ってフィルムFを配置して負圧吸引して型締めする。ここで、フィルムFは凹状の加工面121に当接されるとともに、凹金型21と凸金型11との間にはキャビティCが形成され、該キャビティCの内部に溶融された溶融樹脂Aを注入することにより、該キャビティCの形状に対応した成形品Bを成形することができる。
【0030】
凸金型11は、型締めした状態で凹金型21と嵌合する面には、内方に向かって傾斜する傾斜面112A、112Bが対称に形成されるとともに、該傾斜面112A、112Bの頂上を連結するする平面113が形成されている。そして、傾斜面112A、112B及び平面113により、凸状の加工面111が形成されている。
また、凸金型11は、キャビティCの内部に溶融樹脂Aを供給する樹脂供給部31と、フィルムFを凸状の加工面111に対して所定の位置に位置決めする位置決め手段41と、フィルムFを凸状の加工面111に仮保持させる負圧吸引手段51とを備える。
【0031】
凹金型21は、型締めした状態で凸金型11と嵌合する面には、内方に向かって傾斜する傾斜面122A、122Bが対称に形成されるとともに、該傾斜面122A、122Bの端部を連結する平面123が形成されている。そして、傾斜面122A、122B及び平面123により、凹状の加工面121が形成されている。なお、該加工面121は、成形品Bの形状に対応した形状となっている。
【0032】
樹脂供給部31は、図示しないノズルより射出された溶融樹脂Aを、凸金型11の内部を貫通するとともに内部に向かうにつれて拡開した断面で形成され、凸状の加工面111に形成された樹脂供給口131より供給する。樹脂供給口131は、本実施形態では平面113に形成され、該樹脂供給口131より溶融樹脂AをキャビティCに供給する。
なお、本実施形態では、樹脂供給口131は平面113に設けられているがこれに限られず、キャビティCの内部に充填可能であれば、傾斜面112A、112Bに設けられていてもよい。
【0033】
位置決め手段41は、傾斜面112Bから型締めする方向に進退可能に突出する位置決めピン141と、該位置決めピン141を駆動する第一駆動部142とを備える。
なお、本実施形態では、位置決め手段41は、傾斜面112Bに設けられているが、傾斜面112Aに設けられていてもよい。
【0034】
図2(a)に示すように、位置決めピン141は、型締めする方向に進出した状態で、傾斜面112Bより突出している。また、図2(d)に示すように、型締めする方向に後退した状態で、該位置決めピン141の先端は、傾斜面112Bと同一面上にある。
また、該位置決めピン141の先端の形状は、型締めする方向に後退した状態で、傾斜面112Bに対応する形状に形成されている。
また、本実施形態では、位置決めピン141は、紙面奥行き方向に3つ設けられている(不図示)。
【0035】
第一駆動部142は、例えばモーター等を動力として、位置決めピン141を型締めする方向に進退可能に駆動させている。
【0036】
負圧吸引手段51は、凸状の加工面111に開口するように吸引孔151が形成されるとともに、該吸引孔151の内部に型締めする方向に進退可能に突出する吸引管152と、該吸引管152の内部に設けられた吸引ピン153と、該吸引管152を駆動する第二駆動部154とを備える。
【0037】
吸引孔151は、凸金型11の内部を貫通するとともに、平面113から型締めする方向に形成されている。
【0038】
図3(a)に示すように、吸引管152は吸引孔151の内部に配されるとともに、該吸引管152の先端は縮径するように形成されている。また、図3(b)に示すように、該吸引管152の先端の径は、吸引ピン153の径と略同一である。
図2(a)に示すように、吸引管152は、型締めする方向に進出した状態で、平面113より突出している。また、図2(d)に示すように、型締めする方向と反対方向に後退した状態で、該吸引管152の先端は、平面113と同一平面上にある。
また、該吸引管152の先端の形状は、型締めする方向に後退した状態で、平面113に対応する形状に形成されている。
【0039】
図3(b)に示すように、吸引ピン153は、吸引管152の内部に型締めする方向に配されるとともに、該吸引管152の先端は平面113の同一面上に位置している。
また、図3(a)に示すように、吸引管152が型締めする方向に進出した状態では、吸引管152の先端と吸引ピン153の先端との間に間隙が生じる。一方、吸引管152が型締めする方向と反対方向に後退した状態では、吸引管152の先端と吸引ピン153の先端との間に間隙が生じない。このようにして、吸引ピン153は、間隙の有無を生じさせることにより、吸引管152の開閉を担っている。
ここで、吸引管152が型締めする方向に進出した状態で、平面113に沿ってフィルムFを配置し、吸引管152より空気を吸引することにより、フィルムFを凸状の加工面111に仮保持することが可能となる。
【0040】
第二駆動部154は、例えばモーター等を動力として、吸引管152を型締めする方向に進退可能に駆動させている。
【0041】
フィルムFは、凹状の加工面121と対応する凸形状に形成されている。すなわち、両端部から中心部に向かう傾斜面F1と、該傾斜面F1とを連結する平面F2とを備える。
【0042】
次に、本実施形態に係る射出成形機1を用いた射出成形法を説明する。
まずは、前工程として、凸金型11と凹金型21とフィルムFとを準備する。
すなわち、図2(a)に示すように、凸金型11と凹金型21とを、それぞれ凸状の加工面111、凹状の加工面121とを対向させるように配置するとともに、その間に凸形状に形成されたフィルムFを配置する。
ここで、凸金型11では、第一駆動部142により位置決めピン141の先端が傾斜面112Bより突出し、第二駆動部154により吸引管152の先端が平面113より突出した状態である。
【0043】
次に、位置決め工程を実施する。
すなわち、図2(b)に示すように、フィルムFを凸金型11の凸状の加工面111に沿って配置するとともに、吸引管152内部において空気を凸状の加工面111から凸金型11の内部に導入する方向に負圧吸引する。これにより、フィルムFは、位置決めピン141により位置決めされるとともに、凸状の加工面111に沿うように仮保持される。
【0044】
次に、型締め工程を実施する。
すなわち、図2(c)に示すように、凸金型11と凹金型21とを、それぞれの凸状の加工面111、凹状の加工面121とを接近させる方向で型締めする。この状態で、凸状の加工面111と凹状の加工面121との間にはキャビティCが形成される。また、フィルムFは、凹状の加工面121に沿って配置される。そして、この段階で、負圧吸引を停止させる。
【0045】
次に、後退工程を実施する。
すなわち、図2(d)に示すように、第一駆動部142により位置決めピン141を傾斜面112Bと同一面上まで後退させ、第二駆動部154により吸引管152を平面113と同一面上まで後退させる。
【0046】
次に、射出工程を実施する。
すなわち、図2(e)に示すように、樹脂供給部31により樹脂供給口131からキャビティCの内部に溶融樹脂Aを供給する。ここで、溶融樹脂はキャビティCの形状に対応して充填される。
【0047】
次に、脱型工程を実施する。
すなわち、図2(f)に示すように、凸金型11と凹金型21とを離反させる。このとき、キャビティCの形状に樹脂が充填されるとともに、凹状の加工面121に対応した面にはフィルムFが密着された成形品Bが成形される。
【0048】
このような射出成形機1によれば、負圧吸引により、フィルムFを凸状の加工面111に沿うように仮保持するとともに、位置決めピン141により位置決めすることができる。よって、型締めし、溶融樹脂Aを供給する際に、フィルムFの位置ずれ等により、フィルムFの表面に傷がつくのを防止することができる。
また、位置決めピン141は傾斜面112Bに3つ設けられているのに対して、三箇所から力を加えることにより、確実に位置決めをすることができる。また、位置ずれを起こすことがないため、フィルムFの表面に傷がつくのを防止することができる。
また、位置決めピン141は型締めする方向に進退可能であり、傾斜面112Bより突出することにより、位置決め工程及び型締め工程において、確実に位置決め手段41として役割を担うことができる。また、傾斜面112Bより後退することにより、射出工程においては、成形品Bの形状に対応したキャビティCを形成することができ、キャビティCの形状に対応した成形品Bを確実に成形することができる。
また、吸引管152が型締めする方向と反対方向に後退した状態では、吸引管152の先端と吸引ピン153の先端との間に間隙が生じない。よって、射出工程で溶融樹脂Aを射出する際には、吸引管152の内部に溶融樹脂Aが供給されることはない。
また、フィルムFが凹状の加工面121に対応する凸形状に形成されていることにより、フィルムFに対して位置ずれすることなく確実に位置決めができるとともに、型締め工程でフィルムFを凹状の加工面121に当接させる際にも位置ずれすることがない。よって、フィルムFを所定の位置に位置決めができ、フィルムFの表面に傷がつくのを防止することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、位置決め手段41は3つ設けられているが、3つに限られず複数設けられていることが望ましく、少なくとも3つ以上設けられていれば尚一層好適である。
【0050】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係る射出成形機1Sについて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
第一の実施形態においては、負圧吸引手段51が1つ設けられているのに対し、本実施形態では、2つ設けられている。図4に示すように、負圧吸引手段51は、樹脂供給口131を挟むようにして2つ設けられている。
【0052】
このような射出成形機1Sによれば、負圧吸引手段51が2つ設けられていることにより、負圧吸引力が増大し、フィルムFを凸状の加工面111に確実に仮保持することができる。よって、型締めし、溶融樹脂Aを供給する際に、フィルムFの位置ずれ等により、フィルムFの表面に傷がつくのを確実に防止することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、負圧吸引手段51は2つ設けられているが、2つに限られず複数設けられていることが望ましい。
また、本実施形態では、負圧吸引手段51は平面113に設けられているが、これに限られず、傾斜面112A、112Bに設けられていてもよい。
【0054】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態に係る射出成形機1Tについて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
第一の実施形態においては、位置決め手段41と負圧吸引手段51とが別個に設けられているのに対し、本実施形態では、負圧吸引手段51Tが位置決め手段を兼ね備えている。
図5(a)及び(b)に示すように、負圧吸引手段51Tは、凸状の傾斜面112Bに開口するように吸引孔151Tが形成されるとともに、該吸引孔151Tの内部に型締めする方向に進退可能に突出する吸引管152Tと、該吸引管152Tの内部に設けられた吸引ピン153Tと、該吸引管152Tを駆動する第二駆動部154Tとを備える。
ここで、吸引管152Tの先端を傾斜面112Bより突出させて負圧吸引をすることにより、フィルムFを凸状の加工面111に対して仮保持させることが可能になるとともに、フィルムFを凸状の加工面111に対して位置決めすることが可能になる。
【0056】
このような射出成形機1Tによれば、負圧吸引手段51Tという一の構造で、位置決め手段の役割も担うので、新たに位置決め手段41を設ける必要がなく、構成する部品点数を削減することができるとともに、簡易な構造とすることができる。また、射出成形機1Tの内部のスペースを有効利用することができる。
【0057】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態に係る射出成形機1Uについて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
第一実施形態では、位置決め手段41を駆動させる第一駆動部142、負圧吸引手段51を駆動させる第二駆動部154が別個に設けられているのに対し、本実施形態では、図6(a)及び(b)に示すように、第一駆動部142Uが負圧吸引手段51をも駆動させる構成となっている。
【0059】
このような射出成形機1Uによれば、一の駆動手段142Uが、位置決め手段41及び負圧吸引手段51を担うので、構成する部品点数を削減することができるとともに、簡易な構造とすることができる。また、射出成形機1Uの内部のスペースを有効利用することができる。
【0060】
(第五実施形態)
以下、本発明の第五実施形態に係る射出成形機1について説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0061】
第一実施形態では、位置決めピン141及び吸引管152がフィルムFに対して加える力は、突出した場合の位置決めピン141の先端及び吸引管152の先端からフィルムFまでの距離に依存して決まっている。すなわち、該距離が短い場合はフィルムFに対して大きな力が加わり、長い場合には小さな力が加わる構成となっている。一方、本実施形態では、位置決めピン141及び吸引管152のフィルムFに対する押圧力を制御する図示しない第一制御部を備える。
【0062】
このような射出成形機1によれば、第一制御部は、フィルムFの厚みに関わらず常に一定の押圧力をフィルムFに対して加える。よって、フィルムFの厚い場合に大きな力を加えてフィルムFを断面方向に潰してしまうことがなく、安定した品質の成形品Bを成形することができる。
【0063】
(第六実施形態)
以下、本発明の第六実施形態に係る射出成形機1Wについて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0064】
第一実施形態では、負圧吸引手段51が1つ設けられているのに対し、本実施系形態では3つ設けられている。
図7に示すように、射出成形機1Wは、負圧吸引手段51として、平面113の略中央部に設けられた第一吸引部151Wと、該第一吸引部151Wの周囲に設けられて2つの第二吸引部152Wとを有するとともに、第二吸引部152Wを第一吸引部151Wよりわずかに後退させた位置に突出させる図示しない第二制御部を備える。この状態で、フィルムFを凸状の加工面111に沿って配置して負圧吸引すると、第一吸引部151Wの先端部分を頂上として、第二吸引部152Wの先端部分が一段低くなった先細り形状を形成する。
【0065】
このような射出成形機1Wによれば、凹状の加工面121に対して、先細り形状の凸状の加工面111は挿入しやすいとともに、第一吸引部151Wから順次凹状の加工面121に対して内方に移動するため、型締めの際に、フィルムFが凹状の加工面121と摩擦するのを防止することができ、フィルムFの表面に傷がつくのを防止することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、負圧吸引手段51は3つ設けられているが、これに限られず、2つ以上設けられた場合には中央部に近いものから外方に向かうにしたがって順に平面113からの突出高さを小さくする構成とすればよい。
【0067】
(第六実施形態の変形例)
以下、本発明の第六実施形態の変形例に係る射出成形機1Xについて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0068】
本実施形態に係る射出成形機1Xは、第六実施形態の射出成形機1Wを型締めした状態で、第一吸引部151Wをさらに突出させた後に、第二吸引部152Wをさらに突出させる図示しない第三制御部を備える。
【0069】
このような射出成形機1Xによれば、型締めした後に、略中央部に位置する第一吸引部151Wを突出させ、その後該第一吸引部151Wの周囲の第二吸引部152Wを突出させるため、フィルムFと凹状の加工面121との間に含まれる空気を、中央部から外方に向かって順次取り除くことができるため、凹状の加工面121に対応した成形品Bを確実に成形することができる。
【符号の説明】
【0070】
1、1S、1T、1U、1W、1X…射出成形機
11…凸金型
21…凹金型
41…位置決め手段
51、51T…負圧吸引手段
111…凸状の加工面
112A、112B…傾斜面(凸状の加工面側)
121…凹状の加工面
141…位置決めピン
151、151T…吸引孔
151W…第一吸引部
152W…第二吸引部
152、152T…吸引管
153、153T…吸引ピン
A…溶融樹脂
B…成形品
C…キャビティ
F…フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸状の加工面を有する凸金型と、凹状の加工面を有する凹金型とを有し、
前記凸状の加工面にフィルムを負圧吸引手段により仮保持し、前記凸金型と前記凹金型とを型締めしてキャビティを形成し、前記フィルムを前記凹状の加工面に当接させた当接状態で溶融樹脂を供給して成形品を成形する射出成形機において、
前記フィルムを前記凸状の加工面の所定の位置に配置する位置決め手段を有することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機において、
前記位置決め手段は、前記凸条の加工面から突出する位置決めピンを複数有することを特徴とする射出成形機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の射出成形機において、
前記位置決めピンは、前記型締めをする方向に進退可能であることを特徴とする射出成形機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の射出成形機において、
前記フィルムとして、前記凹状の加工面と対応する凸形状に形成されたフィルムを用いることを特徴とする射出成形機。
【請求項5】
請求項4に記載の射出成形機において、
前記位置決めピンは、前記凸形状を形成する傾斜面に当接する少なくとも3つのピンを有することを特徴とする射出成形機。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の射出成形機において、
前記負圧吸引手段は、前記凸状の加工面に開口するように吸引孔が形成されるとともに、該吸引孔の内部に進退可能に配された吸引管と、該吸引管の位置に応じて前記吸引孔を開閉するように前記吸引管の内部に設けられた吸引ピンとを備え、
前記吸引管が前記凸状の加工面より突出することにより前記位置決め手段を兼ねていることを特徴とする射出成形機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の射出成形機において、
前記当接状態で、前記位置決めピン及び前記吸引管の前記フィルムに対する押圧力を制御する第一制御部を有することを特徴とする射出成形機。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の射出成形機において、
前記吸引管及び前記吸引ピンは、前記凸状の加工面の略中央部に設けられた第一吸引部と、該第一吸引部の周囲に設けられた第二吸引部とを有し、
前記第二吸引部を前記第一吸引部よりわずかに後退させた位置に突出させる第二制御部を備えることを特徴とする射出成形機。
【請求項9】
請求項8に記載の射出成形機において、
前記型締め状態で、前記第一吸引部の吸引管をさらに突出させた後に、前記第二吸引部の吸引管をさらに突出させる第三制御部を備えることを特徴とする射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18174(P2013−18174A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152605(P2011−152605)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】