説明

射出成形用金型の調節構造ならびにこれを使用するインターロックピン、コアピンおよび成形用支持ピン

【課題】 ガイドピンまたはインターロックピンを交換することなく型ずれを解消できるとともに、コアピンの位置をも調整できる調節構造を提供し、同時に、この調節構造を備えたインターロックピン、コアピンおよび成形用支持ピンを提供する。
【解決手段】 射出成形金型の調節構造を備える位置調整部材1は、可動型A1の入れ子6に設けられ、挿通孔31を偏心してなるスリーブピン3と、挿通孔31内に摺接可能に挿通されるセンターピン2とを備え、上記センターピン2は、挿通孔31内に配置されるピン本体22と、このピン本体22の先端に偏心して設けられ、上記スリーブピン3から突出するピン頭部21とを備える。センターピン2およびスリーブピン3を周方向に回動させることにより位置調整が行われ、ガイドピンまたはインターロックピンを交換することなく型ずれを解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形金型の寸法を調整するための調節機構に関する。また、本発明は、割り型を構成する固定型および可動型に装着される入れ子の位置を調整できるインターロックピン、および、キャビティ内に突出して製品に凹部または貫通孔の位置を調整できるコアピン、およびインサート成形またはアウトサート成形に使用することのできる成形用支持ピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な射出成形用金型(いわゆる金型)は、固定型と可動型に分離されたツープレート金型であり、さらにこの両型には入れ子が装着され、この入れ子には製品に対応する形状の凹部が形成されており、上記両型を合体させることにより、入れ子の凹部によってキャビティが形成されるものである。そこで、上記両型を合体させるときの位置決めには、上記両型そのものの位置決めをするためのガイド機構と、入れ子の位置決めをするためのインターロック機構が設けられ、ガイド機構は、ガイドピンおよびガイドブッシュからなり、インターロック機構は、インターロックピンとインターロックブッシュからなっている。
【0003】
従来、偏心加工したピンを用いた金型については、中心軸を偏心加工したガイドピンまたはインターロックピンを使用した射出成形用金型装置があった(特許文献1)。この技術は、金型の芯ずれまたはこれにともなう製品の偏肉をなくすためのものであり、ガイドピンまたはインターロックピンそのものに偏心加工を施す構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−135612号全文(明細書1−4頁・6頁、図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、プラスチックレンズまたは円筒状プラスチック成形品等を製造するための射出成形用金型装置であるため、製品の精度は両型により形成されるキャビティの状態によって左右されることとなっていた。そこで、このキャビティを高精度に構成するため、入れ子に設けられる凹部の加工精度のほかに、固定型と可動型の合体位置、および、入れ子の位置の精度を向上させることが要求されることから、偏心ピンによりそれぞれの位置を調整するように開発されたものであった。
【0006】
しかしながら、上記技術は、ガイドピンまたはインターロックピンのみを偏心加工してなる構成であるため、金型または入れ子の位置を調整する場合には、偏心ピンの可動範囲に制限されることとなっていた。すなわち、偏心ピンは、本体部分を回転させると、ピン先端の軸線が偏心量に応じた円弧状を移動することとなり、この円弧の軌道から逸れた位置に移動させることができなかった。従って、金型の型ずれの程度を予め想定したうえで、ガイドピンまたはインターロックピンを加工しなければならず、また、上記想定以上に偏心させる必要がある場合には、他の偏心量に加工したものを使用しなければならなかった。
【0007】
また、上記技術は、金型または入れ子の位置調整に資するものであるが、いわゆるコアピンのように、キャビティ内に突出して製品に凹部または貫通孔を構成する部材についての位置調整機能を有していなかった。そのため、コアピンの位置調整をする場合は、改めてコアピンを加工するか、または、当初大きめに加工したコアピンを、試作状況を勘案しつつ許容寸法まで切削加工するなどにより、製品精度を高める工夫がなされていることが周知である。従って、容易にコアピンの位置を調整できる構造が切望されていた。
【0008】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ガイドピンまたはインターロックピンを交換することなく型ずれを解消できるとともに、コアピンまたは成形用支持ピンの位置をも調整できる調節構造を提供し、同時に、この調節構造を備えたインターロックピン、コアピンおよび成形用支持ピンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、射出成形用金型の寸法を微調整する調節構造であって、固定型または可動型のいずれか一方に支持され、かつ挿通孔を偏心してなるスリーブピンと、このスリーブピンの挿通孔内に挿通され、かつ該スリーブピンから突出する突出部を偏心して設けてなるセンターピンとを備えたことを特徴とする射出成形用金型の調節構造を要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、スリーブピンの挿通孔およびセンターピンの突出部をそれぞれ偏心させているので、スリーブピンおよびセンターピンのいずれか一方または双方について周方向に回動可能とすることで、突出部の中心位置を変化させることができ、型ずれが発生した場合でも、当該型ずれを修正して成形品の寸法を調節することができる。
【0011】
また、本発明は、射出成形用金型の寸法を微調整する調節構造であって、固定型または可動型のいずれか一方に支持され、かつ挿通孔を偏心してなる筒状のスリーブピンと、このスリーブピンの挿通孔内に摺接可能に挿通されるセンターピンとを備え、上記センターピンは、上記スリーブピンの挿通孔内に配置されるピン本体と、このピン本体の先端に偏心して設けられ、上記スリーブピンから突出するピン頭部とを備えたことを特徴とする射出成形用金型の調節構造を要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、センターピンのピン本体が、スリーブピンの挿通孔内に摺接されつつ周方向に回動でき、当該挿通孔の中心線を基準としてピン頭部の位置を変更させることができる。
【0013】
上記発明において、スリーブピンは、ピン本体を備え、このピン本体と前記センターピンの本体とが係止手段によって係止されてなる構成とすることができる。
【0014】
上記構成によれば、スリーブピン本体およびセンターピン本体を係止手段によって係止させることで、成形時に上記各ピンが揺動することを防ぐことができる。
【0015】
また、上記係止手段は、前記スリーブピンの本体に中心から周辺に向かって放射状に貫設された貫通孔と、前記センターピンの本体の表面全周に所定ピッチで穿設された穿通孔と、上記貫通孔を貫挿しつつ上記穿通孔に到達する棒状の係止部材とで構成することもできる。
【0016】
上記構成によれば、貫通孔と穿通孔に棒状部材を貫挿させることにより、スリーブピンとセンターピンを同時に係止させることができるので、金型内においても、これらの各ピンがそれぞれ揺動することなく固定させることができる。
【0017】
また、前記スリーブピンおよびセンターピンは、それぞれ基部を備え、両基部が係止手段によって係止されてなる構成とすることもできる。
【0018】
上記構成によれば、スリーブピン基部およびセンターピン基部を係止手段によって係止させることで、成形時に上記各ピンが揺動することを防ぐことができる。
【0019】
上記係止手段を、センターピンの基部外周とスリーブピンの基部内周が、互いに係合する歯形を有して構成された係止手段とすることもできる。
【0020】
上記構成によれば、上記各ピンの基部に歯形を形成することで、歯形同士を互いに係合させつつ、歯形の係合位置を変更させることができるので、型ずれの修正においても微細な位置調整が可能となり、寸法精度が要求される成形品においても、寸法調節が可能となる。
【0021】
また、センターピンの基部の外部表面とスリーブピンの基部の内部表面が、互いに係合する凹凸形状を有して構成された係止手段とすることもできる。
【0022】
上記構成によれば、上記各ピンの基部表面に凹凸形状を形成することで、凹凸形状同士を互いに係合させつつ、凹凸形状の係合位置を変更させることができるので、型ずれの修正においても位置調整が可能となる。
【0023】
上記各発明において、射出成形用金型の調節構造を入れ子に配置してなることを特徴とするインターロックピンとすることもできる。
【0024】
上記構成によれば、金型のずれが、成形品全体に及んでいる場合でも、インターロックピンに使用することで、型ずれを解消させることができる。
【0025】
また、上記各発明において、射出成形用金型の調節構造をキャビティ内に配置してなることを特徴とするコアピンとすることもできる。
【0026】
上記構成によれば、金型のずれが成形品の一部、すなわち、コアピンによって形成される凹部または貫通孔の場合に、これらの位置寸法を調節することができる。
【0027】
また、上記各発明において、射出成形用金型の調節構造をキャビティ内に配置してなることを特徴とする成形用支持ピンとすることもできる。
【0028】
上記構成によれば、インサート成形またはアウトサート成形における位置決めピンに使用することができるので、これらの位置寸法を調節することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、型ずれが大きい場合でも、ガイドピンまたはインターロックピンを交換することなく型ずれを解消できるとともに、コアピンまたは成形用支持ピンの位置寸法をも調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す説明図である。
【図2】(a)本発明の第一の実施形態を示す斜視図である。(b)IIB−IIB断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態を示す詳細図である。
【図4】本発明の第一の実施形態を示す説明図である。
【図5】(a)本発明の第二の実施形態を示す斜視図である。(b)VB−VB断面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態を示す詳細図である。
【図7】本発明の第二の実施形態を示す説明図である。
【図8】(a)本発明の第三の実施形態を示す斜視図である。(b)VIIIB−VIIIB断面図である。
【図9】本発明の第三の実施形態を示す詳細図である。
【図10】(a),(b)本発明の第三の実施形態を示す説明図である。(c)XC−XC断面図である。
【図11】本発明の第四の実施形態を示す詳細図である。
【図12】本発明の第五の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。第一の実施形態である射出成形用金型の調節構造を備える位置調整部材1は、図1に示すように、ツープレート金型の一方の型に設けられている。本実施形態では、インターロックピンとして使用する場合を例示するものであり、位置調整部材1は、可動側の型(可動型)A1の入れ子6に設けられ、固定型B1の入れ子7には、インターロックブッシュ8が設けられるものである。
【0032】
この位置調整部材1は、図2および図3に示すように、円柱形のセンターピン2、円筒形のスリーブピン3および角形の入駒部材4で構成されており、センターピン2は、径の異なる略円柱形によって段状に形成されており、頭部21は円錐台形、本体22は円柱形、基部23は本体22に対して鍔状に形成されている。頭部21の中心軸は、本体22の中心軸と同一軸線上にはない構成(偏心状態)となっている。本体22の側面には、中心軸に対して放射状に穿通孔24が複数個所に所定のピッチで穿設されており、同一円周上に位置するようになっている。
【0033】
上記センターピン2が挿通されるスリーブピン3は、本体32が挿通孔31を有する円筒形に形成されており、基部33は、本体32に対して外径および挿通孔31の径が大きくなっており、全体として鍔状に形成されている。また、上記挿通孔31の中心線が本体32の中心軸から偏った状態(偏心状態)で設けられ、上記基部33の拡大径部分においても中心軸が偏るように構成されている。本体32の側面には、中心軸に対して放射状に貫通孔34が複数個所に所定のピッチで貫設されており、同一円周上に位置するようになっている。
【0034】
そして、このスリーブピン3の挿通孔31に、上記センターピン2が内挿されて使用されるものである。すなわち、センターピン本体22の側面にスリーブピン3の挿通孔31の内面が摺接されつつ挿通されるのである。センターピン2が内挿されたスリーブピン3は、入駒部材4の挿通孔44に内挿される構成となっている。ここで、スリーブピン3を軸回りに回転させると、挿通孔31の中心線の位置が変化し、さらに、センターピン2を軸回りに回転させることにより、頭部21の中心線の位置が変化するものである。
【0035】
また、センターピン本体22の側面には穿通孔24が、スリーブピン本体32の側面には貫通孔34が、それぞれ形成されていることから、穿通孔24と貫通孔34の軸心を一致させ、これらに単一のボルト51(係止部材)を入駒部材4の貫通孔41を介して貫挿させることにより、センターピン2とスリーブピン3を一体的かつ同時に固定させることができる。このとき、センターピン2の基部23の外部表面と、スリーブピン3の基部33に形成される拡大した挿通孔31の内面とを当接させることにより、センターピン2の軸方向における位置決めになるのである。同時に、スリーブピン3の基部33の外部表面と、入駒部材4に形成される拡大した挿通孔44の内面とを当接させることにより、スリーブピン3の軸方向における位置決めになるのである。
【0036】
そして、この位置調整部材1は、入れ子6に組み込まれて、ボルト52,53により締着されるので、位置調整部材1を構成するセンターピン2、スリーブピン3および入駒部材4を金型内部で一時固定させることができるのである。これにより、位置調整部材1を入れ子6から取り外さない限りにおいて、金型可動方向Y(軸方向とは、ほぼ同軸)に位置調整部材1自体が移動することはないのである。
【0037】
次に、金型構造について説明する。代表的な射出成形用金型は、ツープレート金型と呼ばれるものであり、可動型A1および固定型B1の二つの型から構成されている(図1参照)。可動型A1の型板内部には、成形品が造形されている入れ子6が嵌め込まれている。このとき、入れ子6上には、位置調整部材1が複数個所に設けられている。金型内部での入れ子6の片寄りを防止するため、対角方向に少なくとも二個所配設される構造となっている。位置調整部材1を構成する入駒部材4には、ネジ孔42,43が設けられており、このネジ孔42,43にボルト52,53を螺入させることにより、入れ子6に締着させることができる(図3参照)。入れ子6に締着された入駒部材4は、センターピン頭部21のみが、可動型A1の金型の割り面(以下、PL面99という)から突出する構造となる。詳細には、センターピン本体22の頭部側端面、スリーブピン本体32の頭部側端面、入駒部材4の平面、入れ子6の平面および可動型A1のPL面99が、同一平面上に位置する構成となるため、必然的に円錐台形のセンターピン頭部21のみが、PL面99から突出する構造になるのである。この場合において、固定型B1には、突出したセンターピン頭部21を受けるためのリング形状のブッシュ8が配設されており、可動型A1と固定型B1とを型合わせして型締めすることにより、センターピン頭部21はブッシュ8内部に挿入されることとなる。そして、円錐台形のセンターピン頭部21がブッシュ8の内面によって案内されることで、可動型A1の入れ子6が所望の位置に調節されることとなるのである。
【0038】
次に、第一の実施形態における成形品の型ずれの位置調整について、図4に基づいて説明する。始めに、通常の射出成形を行って成形品を成形する。このとき、センターピン2およびスリーブピン3は、ほぼ中央に位置することが望ましい(図4(a))。成形品を確認した後、型ずれが発生している場合には、ずれ方向とずれ量を測定する。このずれ量に合わせて、偏心させたセンターピン2およびスリーブピン3をずれ量が減少するように周方向に回動させるのである。このとき、センターピン2またはスリーブピン3のいずれか一方のみを回動させるときは、ピン頭部21がこれらの軸を中心として円弧状に移動するため、調整位置が、この円弧状にある場合は、これらのいずれかの回動のみによって調整する。これに対し、上記円弧状に調整位置がない場合、例えば、図4(b)に示すように、調整前のピン頭部21の位置を直線的に移動させる必要があるときには、センターピン2を回動したうえ、さらにスリーブピン3を回動させることにより、直線上に調整することができるのである(図4(c)参照)。さらに、図4(d)に示すように、センターピン2を最も大きく移動させたとしても調整不可能な場合には、スリーブピン3を回動させることにより、いずれか一方による調整量を超え、調整が可能になる。このように、偏心させたスリーブピン3の調整量も加えて調整することができる。すなわち、偏心させたセンターピン2を周方向に回動させると同時に、偏心させたスリーブピン3をも周方向に回動させることで、型ずれのずれ量が大きい場合であっても、型ずれを調整することができるのである。回動させたセンターピン2は、スリーブピン3および入駒部材4の貫通孔41を貫挿させたボルト51により、センターピン2の穿通孔24に到達するまで螺入させることで、所定の位置で係止させることができる。そして、調整確認のために再度成形を行い、ずれ量を測定して型ずれを修正していくのである。
【0039】
次に、第二の実施形態について説明する。本実施形態は、コアピンに利用する場合である。図5および図6に示すように、位置調整部材101は、円柱形のセンターピン102、円筒形のスリーブピン103および角形の入駒部材104で構成されており、センターピン102は、径の異なる円柱形によって段状に形成されており、頭部121および本体122は円柱形、基部123は本体122に対して鍔状に形成されている。頭部121と本体122の径は、段状となるようにそれぞれ異なる径により形成されており、頭部121の径は、本体122よりも小径になっている。このとき、頭部121の中心軸は、本体122の中心軸と同一軸線上にはない構成となっている(偏心状態)。本体122の側面には、中心軸に対して放射状に穿通孔124が複数個所に所定のピッチで穿設されており、同一円周上に位置するようになっている。
【0040】
上記センターピン102が挿通されるスリーブピン103は、第一の実施形態のスリーブピン3と同様の構造となっており、本体132が挿通孔131を有する円筒形に形成され、基部133は本体132に対して外径および挿通孔131の径が大きくなっており、全体として鍔状に形成されている。また、上記挿通孔131の中心線が本体132の中心軸から偏った状態(偏心状態)で設けられ、上記基部133の拡大径部分においても中心軸が偏るように構成されている。本体132の側面には、中心軸に対して放射状に貫通孔134が複数個所に所定のピッチで貫設されており、同一円周上に位置するようになっている。
【0041】
そして、このスリーブピン103の挿通孔131に、上記センターピン102が内挿されて使用されるものである。センターピン102が内挿されたスリーブピン103は、入駒部材104の挿通孔144に内挿される構成となっている。ここで、スリーブピン103を軸回りに回転させると、挿通孔131の中心線の位置が変化し、さらに、センターピン102を軸回りに回転させることにより、頭部121の中心線の位置が変化するものである。
【0042】
なお、センターピン本体122の穿通孔124およびスリーブピン本体132の貫通孔134は、形状、配設位置等は、第一の実施形態の場合と同様である。
【0043】
次に、第二の実施形態における金型構造について説明する。第二の実施形態は、図7に示すように、可動型A2および固定型B2の二つの型から構成されている。可動型A2の型板内部には、成形品が造形されている入れ子106が嵌め込まれている。このとき、入れ子106上には、位置調整部材101が所望個所に設けられる。位置調整部材101を構成する入駒部材104には、ネジ孔142,143(図6)が設けられており、このネジ孔142,143にボルト152,153を螺入させることにより、入れ子106に締着させることができる。入れ子106に締着された位置調整部材101は、センターピン頭部121のみが、入れ子106のキャビティ面から突出する構造となる。詳細には、センターピン本体122の頭部側端面、スリーブピン本体132の頭部側端面および入駒部材104の平面が、同一平面上に位置する構成となり、入れ子106のキャビティ内に配置されるため、円柱形のセンターピン頭部121のみが突出するのである。これがコアピンとして機能するのである。
【0044】
この場合において、可動型A2と固定型B2との型締めを行うと、センターピン頭部121は、固定型B2の入れ子107内部に挿入されることとなる。このとき、第一の実施形態とは異なり、センターピン頭部121の形状は、成形品の形状に反映されることとなる。すなわち、成形品の形状は、凹部または貫通孔を形成することとなるのである。
【0045】
次に、成形品の凹部または貫通孔(以下、貫通孔等という)の位置調整について説明する。第二の実施形態の場合も、第一の実施形態と同様に、射出成形による成形品の確認後に、成形品の貫通孔等の位置調整を行う。具体的には、位置ずれが発生している場合に、成形品の基準点からの位置ずれ方向と位置ずれ量を測定する。この位置ずれ量に合わせて、偏心させたセンターピン102を位置ずれ量が減少するように周方向に回動させる。回動させたセンターピン102は、スリーブピン103および入駒部材104の貫通孔141を貫挿させたボルト151により、センターピン102の穿通孔124に到達するまで螺入させることで、所定の位置で係止させることができる。そして、位置調整確認のために再度成形を行い、位置ずれ量を測定して位置ずれを修正していくのである。このとき、位置ずれ量が偏心させたセンターピン102の調整量を超えているときは、偏心させたスリーブピン103の調整量も加えて調整することができる。すなわち、偏心させたセンターピン102を周方向に回動させるのと同時に、偏心させたスリーブピン103をも周方向に回動させることで、位置ずれのずれ量が大きい場合であっても、位置調整をすることができるのである。
【0046】
続いて、第三の実施形態について説明する。図8に示すように、位置調整部材201は、円柱形状のセンターピン202、円筒形状のスリーブピン203、角形の入駒部材204により構成されており、入駒部材204に内挿されて金型に嵌め込まれている。
【0047】
センターピン202は、図9に示すように、径の異なる円柱形によって段状に形成されており、頭部221および本体222は円柱形、基部223は本体222に対して鍔状に形成されつつ外周は外歯形になっている。頭部221と本体222の径は、段状となるようにそれぞれ異なる径により形成されており、頭部221の径は、本体222よりも小径になっている。このとき、頭部221の中心軸は、本体222の中心軸と同一軸線上にはない構造となっている(偏心状態)。
【0048】
スリーブピン203は、図9に示すように、本体232は挿通孔231を有する円筒形に形成されており、基部233は本体232に対して鍔状の外歯形が形成され、基部内面部235の内周には内歯形が形成されている。このとき、スリーブピン203の中心軸もセンターピン202と同様に偏心させた軸を有する構造になっている。
【0049】
この実施形態におけるセンターピン202とスリーブピン203は、センターピン基部223の外歯形とスリーブピン基部内面部235の内歯形が係合可能となるように構成されている(図9(b)参照)。これと同時に、スリーブピン基部233にも外歯形が設けられており、入駒部材204の内面に形成されている内面部242の内歯形と係合可能になっている。入駒部材204の形状は角形になっており、金型の型板内部に嵌め込まれれば、この入駒部材204は回動することはないため、上記これらの歯形が互いに係合することで、センターピン202およびスリーブピン203は、周方向に回動することはないのである。このようにすることで、射出成形時においても、調整量が反映された成形品を成形することができるのである。
【0050】
次に、第三の実施形態の金型構造について説明する。図10に示すように、金型の可動型A3の型板背面部から、PL面299に垂直になるように入れ子206に嵌入され、センターピン頭部221のみが入れ子206のキャビティ面から突出する構造となる。詳細には、センターピン本体222の頭部端面、スリーブピン本体232の頭部端面が、同一平面上で入れ子206のキャビティ面上に位置するため、センターピン頭部221のみが突出する構造となるのである。この突出したセンターピン頭部221は、型締め時には、固定型の金型内部に挿入されることとなり、このセンターピン頭部221の形状が、成形品の形状に反映されることとなる。すなわち、成形品の貫通孔等を形成することとなるのである。
【0051】
次に、成形品の貫通孔等の位置調整について説明する。第三の実施形態おいても、上記実施形態と同様に、射出成形による成形品の確認後に、成形品の貫通孔等の位置調整を行う。具体的には、位置ずれが発生している場合に、成形品の基準点からの位置ずれ方向と位置ずれ量を測定する。この位置ずれ量に合わせて、偏心させたセンターピン202を位置ずれ量が減少するように周方向に回動させる。ここで、上記実施形態と異なるのは、センターピン202およびスリーブピン203を回動させる構造についてである。本実施形態では、センターピン基部223は本体222に対して鍔状に形成されつつ外周は歯形になっているので、この歯形を回動させることにより、位置ずれのずれ量を調整していくのである。センターピン基部223の歯形は、その歯数によって、位置ずれの調整量を決定することができる。すなわち、歯形の歯数が多数ある場合には、回動させる量も少なく調整することが可能であり、回動させる量に比例して調整量も微細な調整が可能となるのである。このとき、センターピン202を回動させることによる調整量のみでは、位置ずれのずれ量を修正できないときには、スリーブピン203を回動させることによる調整量も加えて修正することができる。このようにすることで、位置ずれのずれ量が大きい場合であっても、コアピンの位置ずれを修正することができるのである。なお、固定型については、第二の実施形態における固定型B2と金型構造は同様であるため、図示は省略する。
【0052】
次に、第四の実施形態について説明する。本実施形態は、図11に示すように、係止手段が第一の実施形態と異なるものであり、センターピン基部323およびスリーブピン基部333の外部表面(鍔面)上に凸形状325,335を突設し、スリーブピン基部333および入駒部材304の拡大した挿通孔331,344の内面上に凹形状336,346を凹設してなる形態とすることができる(図11(b)参照)。このとき、凹形状336,346を適宜間隔(例えば、穿通孔24や貫通孔34と同じピッチ)で全周に設けることにより、凹形状336,346のいずれかに凸形状325,335を係合させることができるので、この係合位置を調節することで、型ずれのずれ量に合わせた位置調整が可能となるのである。なお、上記実施形態における係止手段は、第二の実施形態においても採用することができる。
【0053】
次に、第五の実施形態について説明する。本実施形態は、図12に示すように、インサート成形またはアウトサート成形における成形用支持ピンに使用する場合である。位置調整部材401の構成は、第二の実施形態と同様であるが、インサート成形の場合には、センターピン頭部421の外周にインサート部品(例えば、ナット461)を挿入することができる(図12(a)参照)。また、アウトサート成形の場合には、位置調整部材501,601をキャビティ内に配設し、センターピン頭部521,621の外周にアウトサート部品(例えば、板金571)を挿入することで、位置決めピンとして使用することができる(図12(b)参照)。また、他のキャビティにおける位置調整部材701,801についても、上記調整部材501,601と同様の構成となるため、説明は省略する。なお、上記実施形態の成形用支持ピンについては、センターピン頭部が円柱形を有していれば、第二の実施形態および第三の実施形態でも採用することができる。
【0054】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様をとることができる。例えば、第一の実施形態および第二の実施形態におけるセンターピン基部およびスリーブピン基部の係止手段を歯形によるものとすることができる。すなわち、センターピン基部23,123およびスリーブピン基部33,133の基部外周を歯形とし、対向するスリーブピン基部内面および入駒部材内面にも歯形を形成するものである。両歯形を係合させることで、センターピンおよびスリーブピンは、成形時にも周方向に回動することなく、型ずれを修正した成形品を成形することができるのである。
【0055】
また、第三の実施形態において、センターピン頭部221を円錐台形に形成することができる。この場合は、センターピン頭部221は、入れ子206の型ずれの位置調整をする機能を有するものとなる。このとき、センターピン202とスリーブピン203の係止手段を、第一の実施形態における穿通孔等にボルト等を貫挿する係止手段や、第四の実施形態における凹凸形状を係合させる係止手段にすることもできる。
【0056】
さらに、第三の実施形態における係止手段に歯形を採用しているが、凹凸形状で係合可能な形状であれば、例えば波形の様な形状であっても、センターピン202およびスリーブピン203を係止できるため、成形品の貫通孔等の位置調整をすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,101,201,401,501,601,701,801 位置調整部材
2,102,202,302 センターピン
3,103,203,303 スリーブピン
4,104,204,304 入駒部材
6,106,206 可動型入れ子
7,107 固定型入れ子
8 ブッシュ
21,121,221,321,421,521,621 センターピン頭部
22,122,222 センターピン本体
23,123,223,323 センターピン基部
24,124 穿通孔
31,131,231,331 挿通孔
32,132,232 スリーブピン本体
33,133,233,333 スリーブピン基部
34,134 貫通孔
41,141 貫通孔(ネジ孔)
42,43,142,143 ネジ孔
44,144,344 挿通孔
51,151 ボルト(係止部材)
52,53,152,153 ボルト
99,199,299 PL面
235 基部内面部
242 内面部
325,335 凸形状
336,346 凹形状
461 ナット(インサート部品)
571 板金(アウトサート部品)
A1,A2,A3,A4,A5 可動型
B1,B2 固定型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形用金型の寸法を微調整する調節構造であって、固定型または可動型のいずれか一方に支持され、かつ挿通孔を偏心してなるスリーブピンと、このスリーブピンの挿通孔内に挿通され、かつ該スリーブピンから突出する突出部を偏心して設けてなるセンターピンとを備えたことを特徴とする射出成形用金型の調節構造。
【請求項2】
射出成形用金型の寸法を微調整する調節構造であって、固定型または可動型のいずれか一方に支持され、かつ挿通孔を偏心してなる筒状のスリーブピンと、このスリーブピンの挿通孔内に摺接可能に挿通されるセンターピンとを備え、上記センターピンは、上記スリーブピンの挿通孔内に配置されるピン本体と、このピン本体の先端に偏心して設けられ、上記スリーブピンから突出するピン頭部とを備えたことを特徴とする射出成形用金型の調節構造。
【請求項3】
前記スリーブピンは、ピン本体を備え、このピン本体と前記センターピンの本体とが係止手段によって係止されてなる請求項2記載の射出成形用金型の調節構造。
【請求項4】
前記係止手段は、前記スリーブピンの本体に中心から周辺に向かって放射状に貫設された貫通孔と、前記センターピンの本体の表面全周に所定ピッチで穿設された穿通孔と、上記貫通孔を貫挿しつつ上記穿通孔に到達する棒状の係止部材とで構成された係止手段である請求項3記載の射出成形用金型の調節構造。
【請求項5】
前記スリーブピンおよびセンターピンは、それぞれ基部を備え、両基部が係止手段によって係止されてなる請求項1または2記載の射出成形用金型の調節構造。
【請求項6】
前記係止手段は、センターピンの基部外周とスリーブピンの基部内周が、互いに係合する歯形を有して構成された係止手段である請求項5記載の射出成形用金型の調節構造。
【請求項7】
前記係止手段は、センターピンの基部の外部表面とスリーブピンの基部の内部表面が、互いに係合する凹凸形状を有して構成された係止手段である請求項5記載の射出成形用金型の調節構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の調節構造を入れ子に配置してなることを特徴とするインターロックピン。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の調節構造をキャビティ内に配置してなることを特徴とするコアピン。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の調節構造をキャビティ内に配置してなることを特徴とする成形用支持ピン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−162797(P2010−162797A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7940(P2009−7940)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(509017686)
【出願人】(509017697)
【Fターム(参考)】