説明

射出成形装置

【課題】射出圧力および型締圧を低減しながら良好な射出成形品を製造することができる射出成形装置を提供する。
【解決手段】キャビティ10に連通する射出口22に複数の射出ユニット12を取り付ける。各射出ユニット12は、キャビティ10内のそれぞれの射出領域を満たすことができる程度の射出速度で樹脂材料を射出し、各射出ユニット12から射出された樹脂材料は、隣接する射出ユニット12から射出された樹脂材料と接触して結合する。複数の射出ユニット12から樹脂材料を射出するので、射出圧力を低減することができ、これにより型締力も低減することができる。また、各射出ユニット12にそれぞれサーボモータ36、加熱器28、および材料供給機26を設けたので、各射出ユニット12を単独制御することができ、多様な成形品を成形することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置に関し、特に、樹脂材料を金型に低圧で射出する低圧射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形装置は、固定型と移動型の間に形成されるキャビティに樹脂を射出する射出プランジャと、固定型及び移動型を型締めする型締装置とを備えている(特許文献1)。このような射出成形装置では、一つの射出プランジャからキャビティに樹脂が射出されるが、キャビティが金型内に複数設けられている場合には、射出プランジャからの樹脂は、金型内で分岐したランナーによって各キャビティに分配される。
【0003】
また、2つの射出プランジャを有する射出成形装置が知られている(特許文献2)。この射出成形装置は、いわゆる2色成形品を成形するものであり、一方の射出プランジャから1色目の樹脂をキャビティに注入し、その後またはそれと同時に、他方の射出プランジャから2色目の樹脂をキャビティに注入する。
【0004】
【特許文献1】特開2002−355856号公報
【特許文献2】特開2004−237460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、これらのような射出成形装置では、成形サイクルを短縮して生産性を向上させるために、高い射出圧力で樹脂を注入することが求められている。しかしながら、射出圧力を高めるためには、射出能力(射出圧力)の高い射出プランジャが必要になることに加え、高い射出圧力に耐えるために金型の型締装置に必要な型締圧も高くなり、射出成形装置全体が大型化するという問題があった。
また、大型の成形品を製造する場合には、樹脂を大きなキャビティの隅々まで速やかに行き渡らせることが求められるため、より高い射出圧力とより高い型締圧が必要となり、この結果、射出成形装置が極めて大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、低い射出圧力で射出成形品を製造することができる射出成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、複数の樹脂注入口を有する金型のキャビティに樹脂を注入する射出成形装置であって、複数の射出ユニットと、各射出ユニットをそれぞれキャビティの異なった樹脂注入口に連通させる複数の射出口と、を備え、各射出ユニットが、プランジャと、該プランジャに樹脂材料を供給する材料供給手段と、プランジャ内の樹脂を可塑化する可塑化手段とを有している、ことを特徴とする射出成形装置が提供される。
【0008】
このように構成された本発明によれば、プランジャおよび射出口が複数設けられているので、複数のプランジャからキャビティに同時または順次に樹脂を射出することができる。この結果、低い射出圧力であっても、樹脂をキャビティの隅々まで速やかに行き渡らせることができるので、必要な型締圧が低くなる。このため、射出成形装置に必要な構造強度等を低減することができ、射出成形装置の構造を簡略化することができ、射出成形装置の小型化、省コスト化を促進することができる。これは、大型の成形品を製造する場合に、特に有用である。さらに、各プランジャに必要な射出圧力が低減される。
【0009】
また、複数のプランジャが設けられているので、プランジャからの樹脂の射出タイミングや、射出量、射出速度等の射出条件をプランジャ毎に設定することができる。したがって、様々な形状の成形品の製造に対しても柔軟に対応することができる。
【0010】
さらに、射出ユニット毎に、プランジャ、可塑化手段、および材料供給手段が設けられているので、各プランジャに、同種または異種の材料を供給することができる。したがって、例えば、キャビティに複数種類の材料を射出して多色成形を行ったり、金型にキャビティが複数形成されている場合には、キャビティ毎に異種の材料を射出したりすることもできる。このように、本発明の射出成形装置は、様々な成形条件に柔軟に対応することができる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、複数の樹脂注入口を有する金型のキャビティに樹脂を注入する射出成形装置であって、複数の射出ユニットと、各射出ユニットをそれぞれキャビティの異なった樹脂注入口に連通させる複数の射出口と、を備え、各射出ユニットが、プランジャと、該プランジャに樹脂材料を供給する材料供給手段と、プランジャ内の樹脂を可塑化する可塑化手段とを有し、キャビティを、各射出ユニットが樹脂を行き渡らせることができる領域として各射出ユニットに割り当て、射出ユニットは、割り当てられた領域毎に配置されている、ことを特徴とする射出成形装置が提供される。
【0012】
このように構成された本発明によれば、キャビティを、一つの射出ユニットが樹脂を硬化前に行き渡らせることができる領域として各射出ユニットに割り当て、この領域毎に射出ユニットが配置されている。このため、一つの射出ユニットによって樹脂を充填する領域を、従来よりも小さく設定することができる。したがって、射出圧力が小さい射出ユニットを用いても、キャビティ全体に樹脂を行き渡らせることができ、必要な型締圧が低くなる。また、射出圧力を低くしても良好な成形品を得ることができるから、射出成形装置に必要な構造強度等を低減することができ、射出成形装置の構造を簡略化することができる。また、射出成形装置の小型化、省コスト化を促進することができる。
【0013】
つまり、本発明は、キャビティの形状に合わせて射出ユニットの射出条件を設定する従来の射出成形装置とは異なり、射出ユニットの射出条件(射出圧力、射出速度、射出量等)を予め設定し、この射出条件で射出したときに樹脂を行き渡らせることができるキャビティの領域を割り当て、この領域毎に射出ユニットを配置する。したがって、キャビティの形状にかかわらず、樹脂を所望の射出条件で射出しながら良好な成形品が得られる。また、射出条件を所望に設定することができるから、型締圧を高くすることなく、低圧で樹脂を射出することが可能となる。
【0014】
本発明では、好ましくは、各プランジャは、射出タイミングをずらして、順次にキャビティ内に樹脂を射出するよう構成されている。
【0015】
このような構成によれば、複数のプランジャから順次タイミングをずらして樹脂を射出するので、金型にかかる圧力をより一層低減することができる。したがって、金型を型締するための型締圧もより一層低減することができる。
【0016】
本発明では、好ましくは、複数の射出口は格子状に配置され、各プランジャは、キャビティの形状に応じて選択的に樹脂を射出するよう構成されている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、複数の射出口が格子状に配置され、各プランジャがキャビティの形状に応じて選択的に樹脂を射出するので、金型内でのキャビティの配置の自由度が高くなり、様々な形状の成形品の製造にも対応することができる。また、複数のキャビティを同一金型に形成する場合でも、各キャビティを金型内で効率よく配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成には、図面に第1実施形態と同一符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0019】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態の射出成形装置について説明する。本実施形態の射出成形装置は、自動車のバンパー等の大型成形品を製造する射出成形装置である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る射出成形装置1を概略的に示す全体斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態による射出成形装置1に金型2が取付けられた状態を示す断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、射出成形装置1は、金型2の下面に接触する下側プラテン4と、金型2の上面に接触する上側プラテン6と、上側プラテン6及び下側プラテン4を互いに近接離間させることによって金型2の型締め、型開きを行う型締装置8と、金型2に形成されたキャビティ10内に樹脂を射出する射出ユニット12と、を備えている。
【0021】
金型2は、固定型14と、固定型14に対して上下方向に移動可能な移動型16とを備え、固定型14と移動型16との間には成形品の形状に対応した形状のキャビティ10が形成されている。固定型14には、固定型14上面とキャビティ10内部とを連通する複数の貫通孔が形成され、これらの貫通孔の上面開口が、射出ユニット12からの樹脂注入口18となっている。
【0022】
本実施形態では、金型2には、一つのキャビティ10が形成されており、このキャビティ10に、6つの貫通孔(樹脂注入口18)が連通している。このように、本実施形態では、一つのキャビティ10に対して複数の樹脂注入口18が設けられている。なお、本実施形態では、金型2に形成されたゲートは、ダイレクトゲートとなっている。また、固定型14および移動型16には、キャビティ10内に射出された樹脂を冷却して固化させるための図示しない冷却路が形成されている。冷却路には、内部に冷却媒体を流通させて金型2の冷却を行うための冷却手段44(図4参照)が取り付けられている。
【0023】
金型2は、固定型14、移動型16ともに、複数個に分割された金型部分を結合して構成されている。このような構成により、金型2の固定型14及び移動型16を、それぞれの金型部分毎に小さな切削機械で製造することができるので、短期間で金型2を製造することができる。
【0024】
上側プラテン6には、金型2の樹脂注入口18に対応する位置に、複数の樹脂注入口18と同数(本実施形態では6つ)の射出ユニット12の取付口20が形成され、これらの取付口20に射出ユニット12が取り付けられることにより、射出ユニット12の先端開口が樹脂の射出口22となっている。
【0025】
図3は、本発明の第1実施形態による射出成形装置1の射出ユニット12を示す一部分を破断した図面である。図3及び前述の図1を参照すると、各射出ユニット12は、プランジャ24と、プランジャ24に樹脂を供給する材料供給機26と、プランジャ24内の樹脂を加熱(可塑化)する加熱器28とを備えている。
【0026】
プランジャ24は、シリンダ30と、シリンダ30内で進退可能なスクリュ32とを備えている。プランジャ24は、その周囲に立設されたガイドロッド34によって、上側プラテン6の上方で支持されている。ガイドロッド34の上部には、スクリュ32を回転駆動するサーボモータ36が配置され、サーボモータ36は、適宜の伝達手段を介してスクリュ32に接続されている。サーボモータ36の回転が伝達手段によってスクリュ32に伝達されると、スクリュ32は、軸を中心に回転しながらシリンダ30内で進退する。
【0027】
したがって、本実施形態では、サーボモータ36によってスクリュ32の駆動を行うので、樹脂の射出動作を、射出圧力ではなく射出速度によって制御することができる。また、樹脂の射出速度は、サーボモータ36の回転角度によって高精度に制御することができる。また、サーボモータ36が、各射出ユニット12にそれぞれ一つずつ設けられているので、各射出ユニット12からの樹脂の射出タイミング、射出速度、射出量等の射出条件を独立して調整することができる。
【0028】
材料供給機26は、各射出ユニット12に対して一つずつ設けられ、プランジャ24のシリンダ30側面からシリンダ30とスクリュ32との間の空間に連通し、この空間に樹脂材料を供給するように構成されている。材料供給機26は、各プランジャ24に対して一つずつ設けられているため、成形品の種類に応じて、各プランジャ24にそれぞれ同種または異種の材料を供給することができる。
【0029】
加熱器28は、プランジャ24のシリンダ30の下部外側に配置されている。材料供給機26からシリンダ30内に供給された材料は、スクリュ32によってシリンダ30内で射出口22に向かって移送されながら、加熱器28によって加熱されることにより、混練、可塑化される。したがって、本実施形態では、各射出ユニット12は、一つずつの可塑化手段を備え、これにより、各射出ユニット12の樹脂の射出温度をそれぞれ独立して調整することが可能になる。
【0030】
射出成形装置1は、更に、各射出ユニット12の射出動作及び型締装置8の型開き、型締の動作等を制御するための制御手段42を備える。
図4は、射出成形装置1の制御の構成を示すブロック図である。制御手段42は、各射出ユニット12のサーボモータ36及び加熱器28にそれぞれ接続されている。また、制御手段42は、型締装置8及び冷却手段44にも接続されている。制御手段42は、各射出ユニット12のサーボモータ36にそれぞれ別個に回転角度(回転量)及び回転速度の信号を出力することにより、各射出ユニット12のスクリュ32の移動量及び移動速度を制御する。したがって、各射出ユニット12の樹脂の射出量及び射出速度(射出圧力)は、制御手段42によって、それぞれ独立して調整される。また、制御手段42は、各射出ユニット12の加熱器28にそれぞれ別個に樹脂の加熱温度の信号を出力することにより、各射出ユニット12のプランジャ24内の樹脂温度をそれぞれ独立して制御する。
【0031】
ここで、制御手段42は、各射出ユニット12のサーボモータ36を独立して制御するので、各サーボモータ36に出力する信号の出力タイミングを同時にまたは互いに異ならせることが可能である。したがって、各射出ユニット12からのキャビティ10への樹脂の射出を同時に行ったり、互いに異ならせて射出したりすることができ、樹脂の射出タイミングを各射出ユニット12毎に独立して制御することができるようになっている。
また、制御手段42は、樹脂の射出前に、型締装置8に型締信号を出力することにより、金型2の型締を行う。制御手段42は、射出ユニット12による樹脂の射出終了後、冷却手段44に冷却信号を出力することにより金型2の冷却を行う。そして、制御手段42は、樹脂の冷却後所定時間後に、型締装置8に型開き信号を出力することにより、金型2の型開きを行う。
【0032】
各射出ユニット12は、樹脂を所定の射出条件でキャビティ10内に射出したときに、複数の射出口22からの樹脂が固化する前に互いに結合されるような間隔で配置されている。したがって、各射出ユニット12の配置間隔は、所定の圧力で射出口22から射出された樹脂が、隣接する射出口20からの樹脂とキャビティ10内で接触し、接触部分にウェルドラインを形成したり接触部分での強度の減少を生じることなく互いに結合できるように設定されている。また、各射出ユニット12の射出速度や射出量、射出タイミング等の射出条件は、各射出口22からの樹脂が、隣接する射出口22からの樹脂と確実に結合できるように適宜設定される。
【0033】
図5は、各射出ユニット12が射出(カバー)する樹脂材料の射出領域を示す。図5に示すように、各射出ユニット12は、射出口22周囲の所定の射出領域23を担当している。各射出ユニット12は、樹脂材料が所定の射出圧力(低圧)でその射出領域23の外縁に到達したときにも外縁部分の樹脂材料が固化していない射出速度で射出される。
【0034】
ここで、射出ユニット12からの樹脂の射出圧力(成形圧力)は、低圧であることが望ましく、ここで、「低圧」とは、例えば5〜25MPaの範囲であることが好ましい。また、本実施形態の射出成形装置1の成形圧力は、一般の射出成形機の成形圧力の30〜60MPaに対して、約1/10〜1/2であることが好ましい。このように、本実施形態の射出成形装置1の成形圧力は、一般的な射出成形機の成形圧力に比べて、非常に低い。なお、本実施形態の射出成形装置1の成形圧力は、キャビティ10の大きさ、形状、射出ユニット12の設置数、射出口22の大きさ、位置等の種々の設定条件を考慮して設定される。
【0035】
具体的に、射出ユニット12の配置を決定する場合には、まず、射出ユニット12の射出速度、射出量、射出樹脂温度等の射出条件に応じて、キャビティ10の形状を考慮して、キャビティ10内の領域を、一つの射出ユニット12から射出された樹脂がキャビティ10内で完全に固化することなく広がり、隣接する射出ユニット12からの樹脂と結合することができる射出領域23として、各射出ユニット12に割り当てる。そして、その射出領域23に対して一つずつ、射出ユニット12の射出口22を配置し、射出口22の配置に応じて、金型2の樹脂注入口18の配置を決定する。したがって、樹脂の射出条件やキャビティ10の形状によって、各射出領域23は形状も大きさも異なる。例えば、キャビティの形状の一部に細長い部分がある場合、その部分に樹脂を行き渡らせるには、他の部分よりも時間がかかる。そこで、細長い成形部分を含む射出領域23をその他の射出領域23よりも小さく設定して、他の射出時間と揃えるようにしてもよい。
【0036】
なお、各射出ユニット12の射出条件は、全て同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。例えば、細長い成形部分を有する射出領域23に射出する射出ユニット12の射出圧力を、他の射出ユニット12の射出圧力よりも高く設定してもよい。つまり、各射出ユニット12の射出条件は、所定の射出条件範囲内で変動可能である。
本実施形態では、射出ユニット12が低圧で樹脂を射出できるように、キャビティ10内の領域を射出領域23を各射出ユニット12に割り当て、各射出領域23毎に射出ユニット12を配置している。そして、各射出ユニット12の射出条件を、低圧射出となる射出条件範囲内で微調整(再調整)することにより、射出ユニット12を2行3列の格子状に配置している。
【0037】
型締装置8は、図1及び図2に示すように、上側プラテン6に固定された複数本のタイバー38と、下側プラテン4を上下移動させる油圧シリンダ40とを備えている。タイバー38は上下方向に沿って配置され、これらのタイバー38には下側プラテン4が案内されている。
油圧シリンダ40は、下側プラテン4の下方に設置され、油圧シリンダ40が下側プラテン4を上方に押し上げると、下側プラテン4は、タイバー38に案内されながら上側プラテン6に近接するように移動する。これにより、型締装置8は、上側プラテン6に保持された固定型14と、下側プラテン4に保持された移動型16の型締を行う。
【0038】
以上のような構成の射出成形装置1の動作について説明する。
まず、各射出ユニット12を取付口20に設置して、プランジャ24の射出口22を樹脂注入口18に連通させる。また、型締装置8によって固定型14および移動型16を所定の型締圧で締めて、金型2の内部にキャビティ10を形成する。
本実施形態では、各射出ユニット12の材料供給機26には、同一の樹脂材料が供給されており、この樹脂材料は、プランジャ24のシリンダ30内に供給される。シリンダ30に供給された樹脂材料は、加熱器28によって加熱され、スクリュ32によって移送されながら混練され、可塑化する。
【0039】
各射出ユニット12のサーボモータ36を回転させてスクリュ32を上方に移動させると、シリンダ32とスクリュ32先端との間の空間に、可塑化された樹脂材料が供給される。その後、各スクリュ32を下方に移動させると、樹脂材料が、スクリュ32によって射出口22からキャビティ10内に押し出される。このとき、スクリュ32の射出速度は、キャビティ10内の樹脂材料が、後から供給される樹脂材料に押されて移動し、樹脂に大きな圧力がかからない程度の圧力で供給されるように設定されている。この射出時に樹脂材料にかかる射出圧力は、従来の射出成形装置と比較して格段に低い圧力となる。
【0040】
ここで、前述のように、各射出ユニット12からの樹脂の射出条件は、全て同一であってもよいし、或いは所定の射出条件範囲内でそれぞれ異なっていてもよい。例えば、前述の射出量や射出圧力の他、各射出ユニット12の射出タイミングも、全て同一であってもよいし、或いは所定の射出条件範囲内でそれぞれ異なっていてもよい。具体的には、樹脂を射出領域23の隅々まで行き渡らせるのに時間がかかる射出領域23を担当する射出ユニット12を、他の射出ユニット12からの樹脂の射出タイミングよりも早いタイミングで先に射出して、射出領域23に樹脂を行き渡らせる時間をかせいでもよい。この場合には、射出タイミングを、外縁の樹脂が固化する前に、隣接する射出ユニット12からの樹脂と結合できるように設定する。
【0041】
射出口22からキャビティ10内に射出された樹脂材料は、射出口22から更に供給される樹脂材料によって押し出されながら、主にその粘度によってキャビティ10内を進み、キャビティ10内に広がる。一つの射出口22から射出された樹脂材料は、キャビティ10内を進み、それぞれ受け持つ射出領域23を満たし、隣接する射出口22から射出された樹脂材料と接触して結合する。
【0042】
樹脂材料を射出後、冷却手段44により金型2を冷却して、キャビティ10内の樹脂材料を固化させて成形品を成形する。樹脂材料の固化後、型締装置8によって移動型16を固定型14に対して下方に移動させて型を開き、金型2内から成形品を取り出す。
【0043】
このような構成の本実施形態によれば、次のような優れた効果を得ることができる。
複数の射出ユニット12を用いて、一つのキャビティ10に対して複数の射出口22から樹脂を射出するので、一つの射出ユニット12が注入するキャビティ10内の領域を小さく分割することができる。したがって、各射出ユニット12は、従来より低い射出圧(射出速度)で樹脂材料を射出しても、各射出ユニット12が受け持つ射出領域23の外縁まで樹脂材料を行き渡らせることができるから、射出成形装置1全体の射出圧を低くすることができる。
従来の一つの射出口から射出する射出成形装置では、成形品が大型のものである場合には、キャビティの外縁まで樹脂材料を行き渡らせるのに非常に大きな射出圧を必要としていたが、本発明の射出成形装置によれば、このような場合にも低い射出圧で良好な成形品を得ることができる。また、射出ユニット12に必要な射出圧力が低くてすむので、射出ユニット12の構造を簡略化することができ、射出ユニット12の小型化を促進することができる。
【0044】
射出ユニット12の射出圧力を低減することができるので、型締装置8による型締圧も低減することができる。したがって、型締装置8の油圧シリンダ40に必要な圧力が低くてすむから、型締装置8の構造を簡略化することができ、型締装置8の小型化を促進することができる。
【0045】
射出ユニット12の射出条件に応じて、キャビティ10の射出領域23を設定し、射出領域23毎に射出ユニット12を配置したので、各射出ユニット12から低圧で樹脂を射出しても、キャビティ10全体に樹脂を行き渡らせることができる。特に、キャビティ10が細長い成形部分や細かい成形部分を有している場合などでは、従来の射出成形装置では、そのような成形部分にまで樹脂を行き渡らせるために、より高圧で樹脂を射出する必要があった。これに対して、本発明の射出成形装置1では、各射出ユニット12の射出条件を考慮して射出領域23を設定するので、各射出ユニット12が樹脂を射出しなければならないキャビティ10内の領域を従来よりも小さく設定することができ、様々な形状、大きさのキャビティ10に対しても低圧で射出することができる。これにより、金型2、型締装置8の構造の簡略化を達成しながら、良好な成形品を得ることができる。
【0046】
射出ユニット12の射出圧力及び型締装置8の型締圧を低減することができるので、金型2に必要な強度を低減することができる。したがって、金型2をより薄く構成することができ、省コスト、省スペースを促進することができる。また、金型2をより小型化できるので、金型2の切削作業が容易となり、金型2を短期間で作成することができる。これにより、例えば試作品の成形など、多品種少量生産を行う場合にも、様々な形状の成形品に迅速且つ柔軟に対応することができる。
【0047】
各射出ユニット12が、独立した別々の材料供給機26及び加熱器28を備えているので、各材料供給機26に同種または異種の材料を供給して、各射出ユニット12から一つのキャビティ10に同種または異種の材料を様々な組み合わせで射出することができる。したがって、例えばキャビティ10の異なる部分に色の異なる材料を供給したり、強度等の材料特性が異なる材料を供給したりする等の柔軟な射出成形条件を設定することができる。これにより、様々な種類の成形品を製造することができる。
【0048】
制御手段42が、各射出ユニット12のサーボモータ36及び加熱器28を独立して制御するので、各射出口22からの射出量、射出速度、射出量などの射出条件を、それぞれ独立して設定することができる。したがって、例えば、キャビティ10の形状が不規則であっても、ある射出ユニット12のみを所定の射出条件範囲内で他の射出ユニット12よりもゆっくり、あるいは速く射出するなどの制御を行うことができる。よって、より多様な形状の成形品を成形することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の射出成形装置について説明する。第2実施形態の射出成形装置は、複数のキャビティが形成された金型に樹脂材料を射出する点で、第1実施形態の射出成形装置と異なる。
【0050】
図6は、本発明の第2実施形態による射出成形装置50の全体斜視図である。また、図7は、本発明の第2実施形態の射出成形装置50の射出口52の配置を示す。図6および図7に示すように、本実施形態の射出成形装置50の射出口52は、互いに等間隔に格子状に配置されている。本実施形態では、8つの射出口52が2行4列に配列されている。
【0051】
金型54には、複数のキャビティ56,57,58が形成されている。これらのキャビティ56,57,58は、それぞれ異なる形状、大きさに形成されている。キャビティ56には、2つの射出口52が、キャビティ57には1つの射出口52が、キャビティ58には、3つの射出口52が配置されている。また、8つの射出口52のうち2つは、どのキャビティとも連通しない。
【0052】
各射出ユニット12には、図7の点線で表すように、その射出ユニット12がカバーすべき射出領域59がそれぞれ設定されている。これらの射出領域59は、射出ユニット12の射出条件に応じて、キャビティ56,57,58の形状を考慮して設定され、キャビティ56,57,58の容積や金型54の平面視における面積、キャビティ56,57,58の形状の複雑さ等に応じて決定するのが好ましい。
【0053】
このような構成の射出成形装置50では、各射出ユニット12から、所定速度で樹脂材料がそれぞれ対応するキャビティ56,57,58に射出される。このとき、樹脂材料の射出速度は、キャビティ56,57,58に射出された樹脂が後から続いて射出される樹脂に押し出されるようにしてキャビティ56,57,58内に広がる程度の速度に設定されている。キャビティ56には2つの射出口52から、キャビティ57には1つの射出口52から、キャビティ58には、3つの射出口52から、樹脂材料が射出される。このとき、キャビティ56,58には、複数の射出口52から樹脂材料が射出されるので、各射出口52から射出された樹脂材料は、互いに射出領域59の外縁に向かって広がり、隣接する射出口52から射出された樹脂材料と接触して結合する。キャビティ57には、1つの射出口52から射出された樹脂材料が充填される。
なお、キャビティ56,57,58に連通しない射出口52に配置された射出ユニット12からは樹脂材料は射出されない。
【0054】
以上のような実施形態によれば、第1実施形態の効果と同様な効果が得られる他、次のような効果が得られる。
即ち、射出ユニット12が互いに所定間隔を隔てて格子状に配置され、金型54に形成されるキャビティ56,57,58の形状、配置等に応じて選択された射出ユニット12から樹脂材料を射出するので、任意の形状のキャビティに樹脂材料を充填することができる。また、キャビティ56,57,58の形状に合わせて樹脂材料を射出する射出ユニット12を選択することができるので、金型54内でのキャビティ56,57,58の配置の自由度が高くなり、金型54内に複数のキャビティ56,57,58を効率よく配置することができる。
【0055】
各射出ユニット12の射出動作を独立制御できるので、金型54のキャビティ56,57,58が形成されない部分に位置する射出ユニット12の射出を行わないように制御することができる。したがって、様々な形状および配置のキャビティ56,57,58に、射出ユニット12の配置の変更なしに樹脂材料の射出を行うことができるから、多様な形状の成形品の成形にも柔軟に対応することができる。
【0056】
材料供給機26および加熱器28が各射出ユニット12に設けられているので、各キャビティ56,57,58にそれぞれ異なる樹脂材料を供給することも可能となる。したがって、一度の成形工程で、異なる材料で異なる形状の成形品を得ることができ、多様な成形品を成形することができる。
【0057】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、例えば、複数の射出ユニットからの樹脂材料の射出は、同時でもよいし、隣接する射出口から順次タイミングをずらして射出してもよい。即ち、例えば前述の第1実施形態では、6つの射出ユニット12のうち、一番端の2つの射出ユニット12から樹脂材料を射出し、所定時間経過後、隣接する2つの射出ユニット12、つまり中央の2つの射出ユニット12から樹脂材料を射出し、さらに所定時間経過後、隣接する2つの射出ユニット12、つまり反対側の端の2つの射出ユニット12から樹脂材料を射出してもよい。
【0058】
あるいは、両端の4つの射出ユニット12から樹脂材料を射出し、所定時間経過後、それらに隣接する中央の2つの射出ユニット12から樹脂材料を射出してもよい。さらには、中央の1つ又は2つの射出ユニット12から樹脂材料を射出し、所定時間経過後、それまたはそれらに隣接する一つまたは複数の射出ユニット12から樹脂材料を順次射出するようにしてもよい。
【0059】
このような射出成形方法によれば、各射出ユニット12からの樹脂材料の射出のタイミングがずれるので、金型2にかかる射出圧力をさらに低減させることができる。したがって、型締装置8による金型2の型締圧をさらに低減させることができる。よって、型締装置8の構造の簡略化、省コスト化、小型化をより一層促進させることができる。また、隣接する射出ユニット12からキャビティ10内に順次樹脂が射出されれば、キャビティ10内の樹脂の流れが安定し、キャビティ10内のガスまたは空気が抜けやすく、良好な成形品を得ることができる。
【0060】
プランジャは、射出口の数と同数設けられていなくてもよい。例えば、プランジャを、射出口の数よりも多く設け、必要なプランジャを所定の射出口に設置して樹脂材料を射出するように構成してもよい。あるいは、プランジャを射出口の数よりも少なく設け、複数の射出口に対して移動しながら順次樹脂材料を射出するように構成してもよい。
【0061】
複数の射出口は、金型の長さ方向及び幅方向に沿って、一定の間隔を有して配置されているものに限らず、射出成形装置が扱う成形品の形状の範囲に応じて任意に設定することができる。したがって、射出口は、ランダムに配置されていてもよい。
図8は、本発明による射出ユニットの配置の変形例を示す図である。金型60には、不規則形状のキャビティ62が形成されている。図8に示すように、キャビティ62の射出領域66は、射出ユニットの射出条件で樹脂をキャビティ62内に行き渡らせることができるように、各射出ユニットに割り当てられている。したがって、キャビティ62の細長い成形部分がある領域には比較的小さい射出領域66が設定されている。射出ユニットの射出口64は、これらの射出領域66に対して一つずつ配置される。このように、射出ユニットの射出条件及びキャビティ62の形状によっては、射出口64が互いに所定間隔を有しておらず、ランダムに配置されていてもよい。
【0062】
射出成形装置は、前述の実施形態は、固定型に対して移動型が上下動する縦型の射出成形装置であったが、本発明は、固定型に対して移動型が横方向(水平方向)に移動する横型の射出成形装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態による射出成形装置を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による射出成形装置の金型の部分を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による射出ユニットを示す一部側断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による射出成形装置のブロック図である。
【図5】本発明の第1実施形態による射出成形装置の射出領域を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態による射出成形装置を示す全体斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態による射出ユニットの射出領域を示す図である。
【図8】本発明による射出ユニットの配置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1,50 射出成形装置
2,54 金型
8 型締装置
10,56,57,58 キャビティ
12 射出ユニット
22,52 射出口
23,59 射出領域
24 プランジャ
26 材料供給機
28 加熱器
42 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂注入口を有する金型のキャビティに樹脂を注入する射出成形装置であって、
複数の射出ユニットと、
前記各射出ユニットをそれぞれ前記キャビティの異なった前記樹脂注入口に連通させる複数の射出口と、を備え、
前記各射出ユニットが、プランジャと、該プランジャに樹脂材料を供給する材料供給手段と、前記プランジャ内の樹脂を可塑化する可塑化手段とを有している、
ことを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
複数の樹脂注入口を有する金型のキャビティに樹脂を注入する射出成形装置であって、
複数の射出ユニットと、
前記各射出ユニットをそれぞれ前記キャビティの異なった前記樹脂注入口に連通させる複数の射出口と、を備え、
前記各射出ユニットが、プランジャと、該プランジャに樹脂材料を供給する材料供給手段と、前記プランジャ内の樹脂を可塑化する可塑化手段とを有し、
前記キャビティを、前記各射出ユニットが樹脂を行き渡らせることができる領域として前記各射出ユニットに割り当て、前記射出ユニットは、前記割り当てられた領域毎に配置されている、
ことを特徴とする射出成形装置。
【請求項3】
前記各プランジャは、射出タイミングをずらして、順次に前記キャビティ内に樹脂を射出するよう構成されている、
請求項1又は2に記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記複数の射出口は格子状に配置され、
前記各プランジャは、前記キャビティの形状に応じて選択的に樹脂を射出するよう構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−854(P2009−854A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162388(P2007−162388)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(500142073)株式会社インクス (51)
【Fターム(参考)】