説明

射出装置

【課題】簡単かつ安価な構成で高速工程での射出速度を速めることができる射出装置を提供すること。
【解決手段】射出装置には、アキュムレータの油圧による高速工程用シリンダ40の第2ロッド40fの移動を規制する連結状態と、該連結状態を解除して油圧によって第2ロッド40fを移動可能とする非連結状態とを取り得る連結機構Rが設けられている。この連結機構Rは、第2ロッド40fの軸Lと直角の関係にある第1回転軸G1を有し、かつ第2ロッド40fに回転可能に支持され、第1当接面52aを有する第1連結部材52を備える。また、連結機構Rは、第1当接面52aに面接触する第2当接面53aを有する第2連結部材53と、第2連結部材53を、第2回転軸G2を軸として回転させるモータM3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低速工程、高速工程、及び増圧工程を行って成形材料を型部内に射出、充填する射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、成形機の射出装置は、射出シリンダにより射出プランジャをスリーブ内において前進させ、スリーブ内の成形材料(例えば溶湯)を型部(金型)間に形成されたキャビティに押し出すことにより、成形材料をキャビティに射出・充填する。射出・充填工程は、低速工程、高速工程及び増圧工程からなる。
【0003】
射出装置の高速工程は、例えば、アキュムレータに蓄圧された作動油を射出シリンダに供給し、その射出シリンダのロッド(ピストン)を高速で移動させることで行われる。高速工程において、ロッドの移動規制、及び移動速度制御は、一般に、アキュムレータが接続された油路の開度を制御バルブで制御することで行われている。
【0004】
ところで、高速工程においては、射出時間のさらなる短縮化が望まれている。射出時間の短縮化のためにはロッドの移動の反応性を高める必要があり、ロッドの移動の反応性を高めるには、ピストンに作用する作動油の油圧及び流量を高めることが必要になる。ところが、制御バルブにおいては、油路を徐々に開いていくため、ピストンに作用する油圧は徐々に高められていくことになり、ロッドの移動の反応性を高めるには限界がある。
【0005】
そこで、ロッドを機械的に連結してロッドの移動を規制した状態で、ピストンに作動油の油圧を作用させた状態としておき、機械的連結を解除することで、最大の油圧でピストンを移動させることが考えられる。この構成を可能とするには、ロッドと機械的に連結され、その連結を機械的に解除できるような連結機構が必要となる。
【0006】
このような連結機構としては、例えば、特許文献1に開示の油圧クランプが挙げられる。図8に示すように、特許文献1の油圧クランプ80において、油圧シリンダ81内の下部にはピストン82が上下方向へ摺動可能に収容されるとともに、このピストン82の下側にクランプ作動油室83が区画されている。また、油圧シリンダ81において、クランプ作動油室83より下側には圧油給排口81aが形成され、この圧油給排口81aには油圧源84の圧油が電磁式給排弁85及び給排油路86を介して給排されるようになっている。
【0007】
油圧シリンダ81内において、ピストン82の上面には、複数のクランプ爪87aを組み合わせてなるクランプ具87が載置されるとともに、各クランプ爪87a同士は退避手段(図示せず)によって互いを拡径させる方向に付勢されている。クランプ具87の上側には筒状の進出用傾斜カム88が配設されている。また、油圧シリンダ81の上部において、クランプ具87の上側には空圧シリンダ90が配設されるとともに、その空圧ピストン91がクランプ具87を取り囲むように設けられている。
【0008】
この空圧ピストン91の下側には空圧作動室92が形成されるとともに、空圧ピストン91の内側にはピストン復帰バネ93が配設されている。また、空圧ピストン91からクランプ具87に向けて延びるピストンロッド91a内には進出用傾斜カム88が挿入されている。さらに、空圧作動室92内には、アンクランプ用ピストン99が上下方向へ摺動可能に収容されている。
【0009】
油圧シリンダ81には、空圧作動室92に連通する圧縮空気給排口81bが形成されるとともに、圧縮空気給排口81bには空圧源94の圧縮空気が電磁式空圧給排弁95及び給排気路96を介して給排されるようになっている。
【0010】
上記構成の油圧クランプ80は、クランプロッド97に油圧シリンダ81を上側から被せ、クランプロッド97をクランプ具87でクランプすることで、油圧クランプ80とクランプロッド97が機械的に連結されるようになっている。なお、クランプロッド97の先端には、クランプ具87が係合する受動部97aが形成されている。
【0011】
そして、油圧クランプ80によってクランプロッド97をクランプするには、電磁式空圧給排弁95を制御して、空圧作動室92から圧縮空気を排出し、ピストン復帰バネ93のバネ力により、空圧ピストン91を進出用傾斜カム88に向けて移動させる。すると、進出用傾斜カム88が下方へ移動するとともにクランプ具87が縮径し、クランプ具87がクランプロッド97の受動部97aの下面に対向配置される。さらに、圧油給排口81aに油圧源84からの圧油を供給すると、ピストン82が上昇するのに伴いクランプ具87の上昇し、クランプ具87の先端が受動部97aの下面に押し当てられる。その結果、クランプロッド97が油圧クランプ80によってクランプされ、クランプロッド97と油圧クランプ80が機械的に連結される。
【0012】
一方、圧油給排口81aから圧油を排出し、空圧作動室92に圧縮空気を供給することで、アンクランプ用ピストン99によりピストン82が下降するとともに、空圧ピストン91が上昇し、クランプ具87によるクランプロッド97のクランプが解除される。すなわち、クランプロッド97と油圧クランプ80との機械的連結が解除される。
【0013】
上記構成の油圧クランプ80を射出シリンダに採用することで、油圧クランプ80によりロッドを機械的に連結することができるとともに、その機械的連結の解除もできるようになり、上述したように射出シリンダのロッドの移動の反応性を高め、高速工程での射出速度を速めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平3−287336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1に開示の油圧クランプ80は、クランプ具87によってクランプロッド97をクランプするために、油圧回路及び空圧回路の両方を必要とする。よって、油圧クランプ80を採用することで高速工程での射出速度を速めることができても、連結機構の構成が非常に複雑であることから、射出装置の製作コストが嵩んでしまう。
【0016】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡単かつ安価な構成で高速工程での射出速度を速めることができる射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、低速工程、高速工程、及び増圧工程を行って成形材料を型部内に射出、充填する射出装置に関する。この射出装置において、前記高速工程時に作動する高速工程用シリンダの作動室には蓄圧手段が接続されるとともに、前記蓄圧手段の作動圧による前記高速工程用シリンダのロッドの移動を規制する連結状態と、該連結状態を解除して前記作動圧によって前記ロッドを移動可能とする非連結状態とを取り得る連結機構が設けられている。この連結機構は、前記ロッドの軸と略直角の関係にある第1回転軸を有し、かつ該ロッドに回転可能に支持され、第1当接面を有する第1連結部材と、前記第1当接面に面接触する第2当接面を有する第2連結部材と、前記第2連結部材を、第2回転軸を軸として回転させる駆動源と、からなり、前記ロッドの軸上で該軸に直交し、かつ前記第1回転軸と平行をなす仮想軸と、前記ロッドの軸、及び前記仮想軸とから決定される仮想平面と、がそれぞれ形成され、前記第1当接面及び前記第2当接面の合わせ面の少なくとも一部が、前記仮想平面に対して直角であり、前記第1当接面における前記第2連結部材に向かう法線方向が、前記蓄圧手段の作動圧により前記ロッドが移動する方向と一致する状態であり、かつ前記第1回転軸と前記第2回転軸が略同軸上に位置する状態を基準連結状態とし、前記基準連結状態から、前記第2連結部材を前記駆動源によって正逆いずれかの方向に90度未満回転させた状態までで前記連結状態を取る。そして、射出装置において、前記第1連結部材は、前記連結状態において、前記第2連結部材が前記駆動源により回転することで前記第2当接面に接触する前記第1当接面を介して回転する。
【0018】
これによれば、蓄圧手段の作動圧により、ロッドは型部に向けて移動可能になっているが、連結状態にある連結機構によってロッドの移動が規制されている。ロッドの移動が規制された状態では、作動圧によってロッドが即座に移動可能な状態で待機している。そして、連結機構が連結状態にあるときは、第1当接面と第2当接面の面接触といった簡単な構成で第1連結部材の移動が規制されている。また、駆動源を駆動させて連結機構を非連結状態に移行させ、第1当接面と第2当接面の面接触が解除されると、待機状態にあるロッドは作動圧によって移動する。このとき、ロッドには蓄圧手段からの全ての作動圧が既に作用しているため、その作動圧により、ロッドを一気に移動させることができる。したがって、例えば、蓄圧手段からの作動油を、バルブを開いてロッドに作用させる場合と比べると、ロッドの移動の反応性を高めることができる。よって、本発明によれば、第1連結部材の第1当接面と、第2連結部材の第1当接面の面接触という簡単な構成で、ロッドの移動を規制し(連結状態を取り)、しかも、一つの駆動源だけで面接触を解除できる(非連結状態を取る)ため、簡単かつ安価な構成で高速工程でのロッドの移動の反応性を高めることができる。
【0019】
また、前記第1当接面及び前記第2当接面は、それぞれ平面であってもよい。
これによれば、例えば、第1当接面と第2当接面が凹凸状をなす場合と比べると、第1当接面と第2当接面を面接触させやすくすることができ、連結状態を容易に取り得る。
【0020】
また、前記第1連結部材の前記第1回転軸は、前記ロッドの軸上に位置していてもよい。
これによれば、例えば、ロッドの軸からずれた位置に第1連結部材の第1回転軸が位置し、第1連結部材がロッドの側方で支持されているとする。この場合、連結状態では作動圧の作用する方向へロッドが移動しようとしているため、ロッドと第1連結部材とは異なる軸上で互いに反対方向への力が作用する。その結果、ロッドと第1連結部材との連結部位が損傷を受ける虞が生じてしまう。しかし、本発明のように、第1回転軸がロッドの軸上に位置することで、ロッドの軸上に第1連結部材が支持されることとなり、連結部位は同じ軸上で互いに反対方向への力が作用するため、連結部位が損傷を受けにくくなる。
【0021】
また、前記第1当接面は、前記ロッドの軸を基準として前記第1連結部材の両側に形成されていてもよい。
これによれば、第1当接面と第2当接面とが面接触する箇所を2箇所にすることができる。よって、第1当接面と第2当接面の面接触する面積を大きく確保して、連結状態を安定させることができ、ロッドの移動規制をより安定して行うことができる。また、面接触する箇所が1箇所だと、連結状態にあるときに第1連結部材が片持ち支持され、第1連結部材を介してロッドが傾く虞がある。しかし、この発明では、面接触する箇所を2箇所とすることで、第1連結部材が両持ち支持され、第1連結部材を介してロッドが傾くことを防止することができる。
【0022】
また、前記第1連結部材及び前記第2連結部材は、それぞれ円柱部材に各当接面を形成してなるものでもよい。
これによれば、円柱部材を成形することで各当接面を簡単に形成することができ、第1連結部材及び第2連結部材の製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡単かつ安価な構成で高速工程での射出速度を速めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の射出装置を模式的に示す図。
【図2】射出装置における射出圧力及び射出速度の変化を示すグラフ。
【図3】(a)は連結状態の連結機構を示す断面図、(b)は連結状態の第1当接面と第2当接面を示す断面図、(c)は第1連結部材を示す斜視図、(d)は第2連結部材を示す斜視図。
【図4】低速工程時の射出装置を模式的に示す図。
【図5】高速工程時の射出装置を模式的に示す図。
【図6】(a)は非連結状態における連結機構を示す図、(b)は非連結状態の第1連結部材を示す図6(a)の6b−6b線断面図、(c)は非連結状態における第1連結部材と第2連結部材を示す図。
【図7】増圧工程時の射出装置を模式的に示す図。
【図8】背景技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1に示すように、型部Kは、固定金型12と、可動金型13とから形成されるとともに、固定金型12及び可動金型13は、図示しない型締装置により型開閉及び型締がなされる。射出装置11は、型部K内に形成されたキャビティ14に、成形材料としての金属材料を射出・充填する装置である。そして、型部K内に射出された金属材料は、凝固後に取り出されることにより、所望の成形品となる。
【0026】
固定金型12には、キャビティ14に連通する射出スリーブ15が設けられるとともに、この射出スリーブ15内には射出プランジャ16が摺動可能に設けられている。そして、射出スリーブ15に形成された供給口(図示せず)から金属材料が射出スリーブ15に供給された状態で、射出プランジャ16がキャビティ14に向かって射出スリーブ15内を摺動することにより、金属材料がキャビティ14に射出、充填されるようになっている。
【0027】
射出プランジャ16には、連結部材17を介して増圧工程用シリンダ18のロッド18cの先端が連結されている。増圧工程用シリンダ18において、シリンダチューブ18a内には、ロッド18cと一体のピストン18bが移動可能に収容されるとともに、このピストン18bによってシリンダチューブ18a内が、ロッド18cが延出する側のロッド側室18eと、その反対側のヘッド側室18dとに区画されている。
【0028】
ロッド側室18eは、シリンダチューブ18aに形成された給排口(図示せず)を介して大気開放されるとともに、ヘッド側室18dは、増幅用油路19を介して作動用シリンダ20が接続されている。この作動用シリンダ20のシリンダ径は、増圧工程用シリンダ18のシリンダ径より小さくなっている。そして、増圧工程用シリンダ18より小径をなす作動用シリンダ20と、この作動用シリンダ20を増圧工程用シリンダ18に接続する増幅用油路19とから、増圧工程用シリンダ18におけるロッド18cの推力を増幅させる増幅回路が構成されている。
【0029】
作動用シリンダ20のシリンダチューブ20a内には、ピストン20bが移動可能に収容されるとともに、このピストン20bにはロッド20cが一体に設けられている。作動用シリンダ20のシリンダチューブ20a内は、ピストン20bによってロッド20cが延出する側のロッド側室20eと、その反対側のヘッド側室20dとに区画されている。そして、作動用シリンダ20のヘッド側室20dと、増圧工程用シリンダ18のヘッド側室18dとは、上述の増幅用油路19によって接続されるとともに、両ヘッド側室18d,20d内には非圧縮性流体としての作動油が封入されている。
【0030】
また、ロッド20cには、ロッド20cを前後進動作させる作動用ボールネジ・ナット機構BN1が連結されている。詳細には、ロッド20cの先端には作動用ナットN1が連結されるとともに、この作動用ナットN1は作動用ボールネジB1に螺合されており、この作動用ボールネジB1は作動用モータM1によって回転される。作動用ボールネジB1は、作動用ナットN1が作動用ボールネジB1の軸方向に前進又は後進動作するように回転する。よって、作動用ボールネジ・ナット機構BN1は、作動用ナットN1と、作動用ボールネジB1と、作動用モータM1とから構成されている。
【0031】
そして、本実施形態では、増圧工程用シリンダ18と、増幅用油路19と、作動用シリンダ20と、作動用ボールネジ・ナット機構BN1とから、増圧工程用ユニットU1が構成されている。
【0032】
増圧工程用ユニットU1において、型部Kと反対側には、低速工程用ユニットU2における低速工程用シリンダ30のロッド30cが機械的に連結されている。低速工程用シリンダ30において、シリンダチューブ30a内には、ロッド30cと一体のピストン30bが移動可能に収容されるとともに、このピストン30bによってシリンダチューブ30a内が、ロッド30cが延出する側のロッド側室30eと、その反対側のヘッド側室30dとに区画されている。
【0033】
ロッド30cには、ロッド30cを前後進動作させる低速工程用ボールネジ・ナット機構BN2が連結されている。詳細には、ロッド30cには低速工程用ナットN2が連結されるとともに、この低速工程用ナットN2と低速工程用ボールネジB2が螺合されている。また、低速工程用ボールネジB2は、低速工程用モータM2によって回転される。
【0034】
低速工程用モータM2により、低速工程用ボールネジB2は、低速工程用ナットN2が低速工程用ボールネジB2の軸方向に前進又は後進動作するように回転する。よって、低速工程用ボールネジ・ナット機構BN2は、低速工程用ナットN2と、低速工程用ボールネジB2と、低速工程用モータM2とから構成されている。
【0035】
低速工程用シリンダ30のロッド側室30eには、低速工程用油路31の一端が接続されるとともに、この低速工程用油路31の他端はヘッド側室30dに接続されている。すなわち、ロッド側室30eとヘッド側室30dとは、低速工程用油路31によって閉回路とされている。また、低速工程用油路31には、低速工程用電磁切換弁32が配設されている。この低速工程用電磁切換弁32は、ヘッド側室30dとロッド側室30eとの連通を遮断する第1位置32aと、ヘッド側室30dとロッド側室30eの間を作動油が流れることを許容する第2位置32bと、に切換可能になっている。
【0036】
また、低速工程用油路31には、低速工程用電磁切換弁32をバイパスするバイパス油路33が設けられるとともに、このバイパス油路33には逆止弁34が設けられている。この逆止弁34は、低速工程用電磁切換弁32が第1位置32aにあるとき、ヘッド側室30dからロッド側室30eへ作動油が流れることを阻止する一方で、ロッド側室30eからヘッド側室30dへ作動油が流れることを許容する。
【0037】
そして、低速工程用電磁切換弁32が第1位置32aにあるとき、型部Kからの背圧力がロッド30cに作用し、ロッド30cを介してピストン30bがヘッド側室30d側に押圧されても、逆止弁34により、ヘッド側室30dの作動油がロッド側室30eに排出されることが阻止され、作動油によって背圧力が支承される。また、本実施形態では、低速工程用シリンダ30と、低速工程用ボールネジ・ナット機構BN2と、背圧支承手段とから低速工程用ユニットU2が構成されている。
【0038】
低速工程用ユニットU2において、増圧工程用ユニットU1の反対側には、高速工程用ユニットU3における高速工程用シリンダ40の第1ロッド40cが機械的に連結されている。高速工程用シリンダ40は、両ロッド形のシリンダであり、この高速工程用シリンダ40のシリンダチューブ40a内には、第1ロッド40cと一体のピストン40bが移動可能に収容されるとともに、このピストン40bにおける第1ロッド40cの反対側には第2ロッド40fが一体に設けられている。シリンダチューブ40a内は、ピストン40bによって第1ロッド40c側の作動室としての第1室40eと、その反対側の作動室であり、第2ロッド40fが延出する側の作動室としての第2室40dとに区画されている。
【0039】
第1室40eには、給排機構Tが接続されるとともに、この給排機構Tは、第1室40eに作動油を供給するとともに、第1室40eの作動油を排出する。また、給排機構Tは、油タンク43と、油タンク43内の作動油を汲み上げるポンプ44と、給排油路47上に設けられた電磁切換弁45と、からなる。電磁切換弁45は、ポンプ44によって油タンク43から汲み上げた作動油を第1室40eへ供給可能とする第1位置45aと、第1室40e内の作動油を油タンク43に排出可能とする第2位置45bとに切換可能になっている。一方、高速工程用シリンダ40の第2室40dには、蓄圧手段としてのアキュムレータ46が接続されるとともに、アキュムレータ46には作動油が蓄圧されている。そして、このアキュムレータ46からの作動油が第2室40dに供給されており、ピストン40bには低速工程用ユニットU2に向けた油圧(作動圧)が作用し、この油圧によって第1ロッド40c及び第2ロッド40fが低速工程用ユニットU2に向けて移動するようになっている。なお、ピストン40bに作用する油圧及び流量は、高速工程で、所望する射出速度が実現できるように調整されている。
【0040】
次に、高速工程用シリンダ40に設けられる連結機構Rについて説明する。
図3(a)〜(c)に示すように、高速工程用シリンダ40の第2ロッド40fの先端には、円筒状をなす第1支持部材50が固定されている。この第1支持部材50は、その中心軸L1が第2ロッド40fの径方向へ延びる(第2ロッド40fの軸Lに対し直交する)ように第2ロッド40fに固定されている。この第1支持部材50の内周面には第1軸受51が支持されるとともに、この第1軸受51により第1連結部材52が回転可能に支持されている。第1連結部材52は円柱部材を所定形状に成形することで形成されるとともに、第1連結部材52の中心軸を第1回転軸G1として回転するように第1軸受51に支持されている。なお、第1回転軸G1は第2ロッド40fの軸Lに対し略直角の関係を有する。ここで、略直角とは、第2ロッド40fに対して第1回転軸G1が相対的に回転可能であればよく、完全に直角でない状態を含む。
【0041】
また、第1連結部材52において、第1回転軸G1の延びる方向(以下、軸方向とする)の両側であり、かつ第2ロッド40fを基準とした両側は、半円柱状に成形され、第1連結部材52の径方向に延びる平面部には第1当接面52aが形成されている。ここで、第2ロッド40fの軸L上で、この軸Lと直交し、かつ第1回転軸G1と平行をなす直線を仮想軸Nとする。また、図3(c)に示すように、この仮想軸Nと軸Lとから決定される平面を仮想平面Dとする。そして、第1連結部材52は、回転することにより、仮想平面Dに対する第1当接面52aの角度が変更するようになっており、図3(a)〜(c)では、第1当接面52aは仮想平面Dに対し直角をなしている。
【0042】
図3(a)及び(d)に示すように、第1連結部材52の軸方向に沿った両外側には、第2連結部材53が配設されている。第2連結部材53は、第2支持部材54により第2軸受55を介して回転可能に支持されている。第2連結部材53は、円柱部材を所定形状に成形して形成されるとともに、第2連結部材53の中心軸を第2回転軸G2として回転するように第2軸受55に支持されている。また、第2連結部材53は駆動源としてのモータM3によって回転される。
【0043】
第2連結部材53の第1連結部材52側は半円柱状に成形され、第2連結部材53の径方向に延びる平面部には第2当接面53aが形成されている。この第2当接面53aは、第1連結部材52の第1当接面52aと同一形状をなし、第1当接面52aと面接触可能になっている。また、第2連結部材53は、回転することにより、仮想平面Dに対する第2当接面53aの角度が変更するようになっている。そして、図3(b)に示すように、第2当接面53aは、所定角度の範囲内では第1連結部材52の第1当接面52aと当接して合わせ面を形成する。
【0044】
図3(a)及び(b)に示すように、第1当接面52aと第2当接面53aが当接して合わせ面を形成し、第2連結部材53の半円柱状をなす部位が、第1連結部材52の半円柱状をなす部位より、アキュムレータ46寄りに配置された状態では、第2連結部材53により第1連結部材52のアキュムレータ46側への移動が規制されている。詳細に説明すると、第1連結部材52と第2連結部材53は基準連結状態を取った状態でアキュムレータ46側への移動が規制されている。したがって、この基準連結状態を取ることで、ピストン40bにアキュムレータ46からの油圧が作用しても、第2ロッド40fの移動が規制されている。そして、第2ロッド40fの移動が規制された状態では、アキュムレータ46からの油圧によって第2ロッド40fが即座に移動可能な状態で待機している。
【0045】
基準連結状態とは、両当接面52a,53aの合わせ面の少なくとも一部が、仮想平面Dに直角に交わり、第1当接面52aにおける第2当接面53aに向かう法線方向Hがアキュムレータ46からの油圧により第2ロッド40fが移動する方向と一致する状態であり、かつ第1及び第2回転軸G1,G2が略同軸上に位置する状態のことである。ここで、略同軸上とは、第2連結部材53の回転により、第1連結部材52が回転される関係に第1及び第2回転軸G1,G2があればよく、完全に同軸上にない状態も含む。
【0046】
また、連結機構Rにおいては、モータM3によって第2連結部材53を基準連結状態から両方向へ90度未満回転させた状態では、第1当接面52aと第2当接面53aとが当接した状態が維持され、第1連結部材52のアキュムレータ46側への移動が規制されている。よって、第1連結部材52と第2連結部材53は、基準連結状態から正逆両方向へ90度未満回転させた状態までは連結状態を取るようになっている。
【0047】
そして、図6に示すように、連結機構Rにおいては、モータM3により第2連結部材53が90度回転すると、第1連結部材52は第2当接面53aを介して90度回転する。すると、第2連結部材53は、第1連結部材52及び第2ロッド40fがアキュムレータ46の油圧により移動しようとする方向に位置しなくなる。したがって、第1連結部材52が第2ロッド40fとともにアキュムレータ46側へ移動可能となり、連結状態が解除されるようになっている。よって、本実施形態では、この連結機構Rと、高速工程用シリンダ40と、給排機構Tと、アキュムレータ46とから、高速工程用ユニットU3が構成されている。
【0048】
本実施形態では、型部Kに対し、増圧工程用ユニットU1のロッド18cが機械的に連結されるとともに、増圧工程用ユニットU1に、低速工程用ユニットU2のロッド30cが機械的に連結されている。さらに、低速工程用ユニットU2に高速工程用ユニットU3のロッド40cが機械的に連結されている。また、ロッド18c,30c,40cは同一軸線上に配置されるとともに、増圧工程用シリンダ18と、低速工程用シリンダ30と、高速工程用シリンダ40は直列に配置されている。
【0049】
次に、射出装置11の射出時における作動パターン(射出パターン)を、図2にしたがって説明する。
射出装置11は、低速工程、高速工程、及び増圧工程の3工程で作動させる。低速工程は、射出の初期段階の工程であって、射出スリーブ15内に供給された金属材料をキャビティ14に押し出す際に、低速工程用ユニットU2で射出プランジャ16を作動させる工程である。
【0050】
高速工程は、低速工程の次に行われる工程であって、射出プランジャ16を低速工程時よりも高速で作動させる工程である。そして、高速工程は、高速工程用ユニットU3で射出プランジャ16を作動させる工程である。
【0051】
増圧工程は、高速工程の次に行われる射出の最終段階の工程であって、射出プランジャ16の型部Kに向けた前進方向の力によりキャビティ14内の金属材料を増圧する工程である。そして、増圧工程は、増圧工程用ユニットU1で射出プランジャ16を作動させる工程である。
【0052】
これらの各工程では、図2に示すように、射出装置11に要求される作動パターンが相違する。すなわち、射出プランジャ16は、高速工程において低速工程よりも速い速度で作動させることが必要である一方で、増圧工程においては速度を必要としない。また、射出プランジャ16は、増圧工程において低速工程及び高速工程よりも高い圧力を付与するように作動させることが必要である一方で、低速工程及び高速工程において増圧工程時ほどの圧力を付与するように作動させる必要はない。
【0053】
以下、本実施形態の射出装置11の作用を説明する。
最初に、低速工程について図1及び図4に従って説明する。
低速工程の開始前、射出スリーブ15の射出プランジャ16、増圧工程用シリンダ18のロッド18c、作動用シリンダ20のロッド20c、低速工程用シリンダ30のロッド30c、及び高速工程用シリンダ40の両ロッド40c,40fは、図1に示すような所定の初期位置に位置している。なお、初期位置に位置する各ロッド18c,20c,30c,40c,40fは、射出スリーブ15内に供給される金属材料に対して射出圧を付与していない(図2の時間T1)。
【0054】
また、低速工程用ユニットU2の低速工程用電磁切換弁32は、成形時、ロッド側室30eとヘッド側室30dとの連通を遮断するように第1位置32aに切り換えられている。さらに、高速工程用ユニットU3の給排機構Tの電磁切換弁45は、成形時、高速工程用シリンダ40における第1室40eの作動油が油タンク43に戻らないよう第1位置45aに切り換えられている。
【0055】
そして、固定金型12と可動金型13の型締め、及び射出スリーブ15への金属材料の供給などの成形準備が完了すると、低速工程用ユニットU2による低速工程を開始する。低速工程において、低速工程用シリンダ30のロッド30cは、図2に示す射出速度V1となる。そして、低速工程用モータM2が駆動されると、低速工程用ボールネジB2が回転するとともに、低速工程用ボールネジB2に螺合された低速工程用ナットN2が前進動作する。すると、図4に示すように、低速工程用ナットN2を介して低速工程用シリンダ30のロッド30cには駆動力が付与され、前進動作する。そして、このロッド30cの前進動作により、増圧工程用ユニットU1全体が型部Kに向けて押し出され、前進動作する。
【0056】
増圧工程用ユニットU1が前進動作すると、増圧工程用シリンダ18が前進動作する。これにより、この増圧工程用シリンダ18のロッド18cに連結された射出プランジャ16も前進動作する。この射出プランジャ16の前進動作により、射出スリーブ15内の金属材料はキャビティ14内に射出される。
【0057】
そして、低速工程用シリンダ30のロッド30cが、低速工程の終了位置に到達すると(図2の時間T2)、低速工程から高速工程に移行する。
次に、高速工程について図5及び図6に従って説明する。
【0058】
高速工程において、射出プランジャ16が、図2に示す射出速度V2となるように、アキュムレータ46に作動油を蓄圧しておき、所定のタイミングでモータM3を駆動させて第2連結部材53を90度回転させる。このとき、電磁切換弁45は第2位置45bに切り換えられている必要がある。
【0059】
すると、図6(a)に示すように、第2連結部材53の回転に伴い、第2当接面53aを介して第1連結部材52が90度回転する。そして、図6(b)及び(c)に示すように、第1当接面52aと第2当接面53aの合わせ面が仮想平面D上に位置し、水平方向に延びるように位置すると、第2連結部材53により第1連結部材52の移動規制が解除される。すなわち、第1連結部材52と第2連結部材53の連結状態が解除される(非連結状態)。すると、アキュムレータ46からの油圧が作用し、即座に移動可能な待機状態にあるピストン40bが、油圧によって一気に第1室40eに向けて移動するとともに、第1室40eの作動油が電磁切換弁45を介して油タンク43に排出される。その結果、高速工程用シリンダ40のピストン40bが第1室40e側に向けて高速で前進動作するとともに、第1ロッド40cも高速で前進動作する。そして、第1ロッド40cにより低速工程用ユニットU2を介して増圧工程用ユニットU1が型部Kに向けて押し出され、前進動作する。
【0060】
図5に示すように、低速工程用ユニットU2を介して増圧工程用ユニットU1が射出速度V2で前進動作すると、増圧工程用シリンダ18が前進動作する。これにより、この増圧工程用シリンダ18のロッド18cに連結された射出プランジャ16も射出速度V2で前進動作し、射出スリーブ15内の金属材料はキャビティ14内に射出されるようになる。高速工程時には、低速工程時に比して、増圧工程用ユニットU1及び低速工程用ユニットU2が高速動作する。
【0061】
この高速工程時、型部Kからの背圧力が増圧工程用ユニットU1を介して低速工程用ユニットU2の低速工程用シリンダ30に作用する。しかし、低速工程用シリンダ30においては、逆止弁34によりヘッド側室30dからロッド側室30eへの作動油の流出が阻止されるため、背圧力によりロッド30cがヘッド側室30dに向けた後進動作することが阻止される。その結果、ロッド30cに螺着された低速工程用ナットN2を介して低速工程用ボールネジB2が回転することが阻止され、低速工程用モータM2が回転することが阻止される。
【0062】
次に、増圧工程について図7に従って説明する。
増圧工程において、増圧工程用シリンダ18のロッド18cが付与する圧力が、図2に示す射出圧Pとなる。そして、作動用シリンダ20のロッド20cは、作動用モータM1の回転によって作動用ボールネジB1に螺合された作動用ナットN1が前進動作することで、その作動用ナットN1を介して駆動力が付与され、前進動作する。
【0063】
作動用シリンダ20のロッド20cが前進動作すると、ヘッド側室20dの作動油は、増幅用油路19を通じて、増圧工程用シリンダ18のヘッド側室18dへ供給される。本実施形態では、作動用シリンダ20から増圧工程用シリンダ18のヘッド側室18dに作動油を供給すると、パスカルの原理により、ヘッド側室18d内の圧力が上昇し、射出プランジャ16が増圧工程用シリンダ18から受ける圧力も上昇する。その結果、射出プランジャ16が、キャビティ14内の金属材料を加圧する力は増大する。
【0064】
また、増圧工程時も、型部Kからの背圧力が増圧工程用ユニットU1を介して低速工程用ユニットU2の低速工程用シリンダ30に作用する。しかし、低速工程用シリンダ30においては、逆止弁34によりヘッド側室30dからロッド側室30eへの作動油の流出が阻止されるため、背圧によりロッド30cがヘッド側室30dに向けた後進することが阻止される。その結果、ロッド30cに螺着された低速工程用ナットN2を介した低速工程用ボールネジB2、及び低速工程用モータM2の回転が阻止される。
【0065】
その後、キャビティ14内の金属材料が凝固したならば、作動用モータM1を増圧工程時とは逆回転させる。そして、作動用シリンダ20のロッド20cは、作動用モータM1の回転によって作動用ボールネジB1に螺合された作動用ナットN1が後進動作することで、その作動用ナットN1を介して駆動力が付与され、後進動作する。作動用シリンダ20のロッド20cが後進動作すると、増圧工程用シリンダ18のヘッド側室18dの作動油が、増幅用油路19を通じて、作動用シリンダ20のヘッド側室20dに引き込まれ、これに伴い増圧工程用シリンダ18のロッド18cが後進動作する。その結果、射出プランジャ16が、射出スリーブ15内を後進動作する。
【0066】
続いて、低速工程用ユニットU2における低速工程用電磁切換弁32を第2位置32bに切り換え、ヘッド側室30dからロッド側室30eへの作動油の流れを可能にする。そして、低速工程用モータM2を低速工程時とは逆回転させる。低速工程用シリンダ30のロッド30cは、低速工程用モータM2の回転によって低速工程用ボールネジB2に螺合された低速工程用ナットN2が後進動作することで、その低速工程用ナットN2を介して駆動力が付与され、後進動作する。低速工程用シリンダ30のロッド30cが後進動作すると、低速工程用シリンダ30のヘッド側室30dの作動油が、低速工程用油路31及び低速工程用電磁切換弁32を通じて、ロッド側室30eに流れる。その結果、ロッド30cが後進動作するとともに、このロッド30cが連結された増圧工程用ユニットU1が後進動作する。よって、射出プランジャ16が、射出スリーブ15内を後進動作する。
【0067】
続いて、高速工程用ユニットU3において、電磁切換弁45を制御することで、第1位置45aに切り換えるとともに、ポンプ44を駆動させ、油タンク43から第1室40eに作動油を供給する。すると、ピストン40bが第2室40dに向けて後進動作するとともに、第2室40dの作動油がアキュムレータ46に蓄圧される。同時に、ピストン40bが後進動作することで、第1ロッド40c及び第2ロッド40fに駆動力が付与され、後進動作し、この第1ロッド40cが連結された低速工程用ユニットU2が後進動作するとともに、その低速工程用ユニットU2のロッド30cが連結された増圧工程用ユニットU1も後進動作する。その結果、射出プランジャ16が、射出スリーブ15内を後進動作する。
【0068】
また、第2ロッド40fが後進動作し、第1連結部材52の第1当接面52aが第2連結部材53の第2当接面53aに面接触し、合わせ面が形成されると、モータM3を90度回転させ、第1連結部材52と第2連結部材53を基準連結状態とし、ピストン40bの前進動作を規制する。
【0069】
したがって、射出スリーブ15の射出プランジャ16、増圧工程用シリンダ18のロッド18c、作動用シリンダ20のロッド20c、低速工程用シリンダ30のロッド30c、及び高速工程用シリンダ40の両ロッド40c,40fは、図1に示す初期位置に位置する。その後、固定金型12と可動金型13を型開きすることにより、型から成形品が取り出される。
【0070】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)モータM3を駆動させて第2連結部材53を回転させ、連結機構Rを非連結状態に移行させると、第1当接面52aと第2当接面53aの面接触(機械的連結)が解除され、第2ロッド40fを油圧によって移動させることができる。このとき、ピストン40bにはアキュムレータ46からの全ての油圧が作用しているため、その油圧により、第2ロッド40fを一気に移動させることができる。したがって、例えば、アキュムレータ46からの作動油をバルブを開いてピストン40bに作用させる場合と比べると、第2ロッド40fの移動の反応性を高めることができる。よって、第2ロッド40fを機械的に連結、及び連結解除可能とする連結機構Rを用いることで、簡単かつ安価な構成で、高速工程における第2ロッド40fの移動の反応性を高めることができる。
【0071】
(2)高速工程用シリンダ40の第2室40dにアキュムレータ46を接続するとともに、アキュムレータ46からの全ての油圧をピストン40bに作用させて第2ロッド40fを型部Kに向けて即座に移動可能な待機状態としつつ、連結機構Rを連結状態として第2ロッド40fの移動を規制した。そして、連結機構Rにおいては、連結状態にあるとき、第1連結部材52の第1当接面52aと、第2連結部材53の第2当接面53aを面接触させて、第1連結部材52の移動を規制して第2ロッド40fの移動を規制している。したがって、油圧回路や空圧回路といった複雑な構成を必要とせず、第1当接面52aと第2当接面53aの面接触といった簡単な構成で第2ロッド40fの移動規制を行うことができる。
【0072】
(3)第1当接面52a及び第2当接面53aは、それぞれ平面状をなす。このため、例えば、第1当接面52aと第2当接面53aとが連結状態で互いに係合し合う凹凸状をなす場合と比べると、第1当接面52aと第2当接面53aとを面接触させやすく、連結状態を容易に取ることができる。
【0073】
(4)第1連結部材52は、その第1回転軸G1が第2ロッド40fの軸L上に位置している。ここで、例えば、第2ロッド40fの軸Lからずれた位置に第1連結部材52の第1回転軸G1が位置し、第1連結部材52が第2ロッド40fの側方で支持されているとする。この場合、連結状態では油圧の作用する方向へ第2ロッド40fが移動しようとしているため、第2ロッド40fと第1連結部材52とは異なる軸上で互いに反対方向への力が作用する。その結果、第2ロッド40fと第1連結部材52との連結部位が損傷を受ける虞が生じてしまう。しかし、第1回転軸G1が第2ロッド40fの軸L上に位置することで、第2ロッド40fの軸L上に第1連結部材52が支持されることとなり、連結部位は同じ線上で互いに反対方向への力が作用するため、連結部位が損傷を受けにくくなる。
【0074】
(5)第1連結部材52の第1当接面52aは、第2ロッド40fの軸Lを基準とした第1連結部材52の両側に設けられている。このため、第1当接面52aが面接触する箇所を2箇所にすることができる。よって、面接触する箇所が1箇所の場合と比べると、第1当接面52aと第2当接面53aの面接触する面積を大きく確保して、連結状態を安定させることができ、第2ロッド40fの移動規制をより安定して行うことができる。また、面接触する箇所を2箇所とすることで、第1連結部材52が2つの第2連結部材53によって両持ち支持され、第1連結部材52が傾くことを防止して、第2ロッド40fが傾くことを防止することができる。
【0075】
(6)第1連結部材52は、円柱部材の両側に第1当接面52aを形成してなり、第2連結部材53は、円柱部材の一側に第2当接面53aを形成してなる。よって、円柱部材を成形することで各当接面52a,53aを簡単に形成することができ、第1連結部材52及び第2連結部材53の製造コストを抑えることができる。
【0076】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第1連結部材52及び第2連結部材53の少なくとも一方は、回転可能であれば、円柱部材でなくてもよい。
【0077】
○ 第1当接面52aは、第1連結部材52に対し別部材を固定して設けられていてもよく、第2当接面53aも、第2連結部材53に対して別部材を固定して設けられていてもよい。
【0078】
○ 第1連結部材52において、その軸方向(第2ロッド40fの径方向)に沿った片側のみに第1当接面52aを形成してもよい。この場合、第2連結部材53は、第1当接面52aと対応する位置に1つだけ設けられる。
【0079】
○ 実施形態では、第2ロッド40fの軸L上に第1連結部材52の第1回転軸G1が位置するように、第1連結部材52を第2ロッド40fに設けたが、第1連結部材52をその第1回転軸G1が、第2ロッド40fの軸Lからずれて位置するように第1連結部材52を第2ロッド40fに設けてもよい。
【0080】
○ 実施形態では、第1当接面52a及び第2当接面53aをそれぞれ平面状に形成したが、例えば、第1当接面52aを凸状に形成するとともに、第2当接面53aを第1当接面52aが係合する凹状に形成してもよい。又は、第1当接面52aを円弧状に膨出するように形成するとともに、第2当接面53aを円弧状に凹むように形成してもよい。すなわち、第1当接面52aと第2当接面53aは、互いに面接触するのであれば、その形状は任意に変更してもよい。
【0081】
○ 射出装置11は、樹脂材料をキャビティ14内に射出して樹脂成形品を製造する射出装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
D…仮想平面、H…法線方向、K…型部、L…軸、M3…駆動源としてのモータ、N…仮想軸、R…連結機構、G1…第1回転軸、G2…第2回転軸、11…射出装置、40f…ロッドとしての第2ロッド、40…高速工程用シリンダ、40d…作動室としての第2室、46…蓄圧手段としてのアキュムレータ、52…第1連結部材、52a…第1当接面、53…第2連結部材、53a…第2当接面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低速工程、高速工程、及び増圧工程を行って成形材料を型部内に射出、充填する射出装置において、
前記高速工程時に作動する高速工程用シリンダの作動室には蓄圧手段が接続されるとともに、前記蓄圧手段の作動圧による前記高速工程用シリンダのロッドの移動を規制する連結状態と、該連結状態を解除して前記作動圧によって前記ロッドを移動可能とする非連結状態とを取り得る連結機構が設けられており、
該連結機構が、
前記ロッドの軸と略直角の関係にある第1回転軸を有し、かつ該ロッドに回転可能に支持され、第1当接面を有する第1連結部材と、
前記第1当接面に面接触する第2当接面を有する第2連結部材と、
前記第2連結部材を、第2回転軸を軸として回転させる駆動源と、からなり、
前記ロッドの軸上で該軸に直交し、かつ前記第1回転軸と平行をなす仮想軸と、
前記ロッドの軸、及び前記仮想軸とから決定される仮想平面と、がそれぞれ形成され、
前記第1当接面及び前記第2当接面の合わせ面の少なくとも一部が、前記仮想平面に対して直角であり、前記第1当接面における前記第2連結部材に向かう法線方向が、前記蓄圧手段の作動圧により前記ロッドが移動する方向と一致する状態であり、かつ前記第1回転軸と前記第2回転軸が略同軸上に位置する状態を基準連結状態とし、
前記基準連結状態から、前記第2連結部材を前記駆動源によって正逆いずれかの方向に90度未満回転させた状態までで前記連結状態を取り、
前記第1連結部材は、前記連結状態において、前記第2連結部材が前記駆動源により回転することで前記第2当接面に接触する前記第1当接面を介して回転することを特徴とする射出装置。
【請求項2】
前記第1当接面及び前記第2当接面は、それぞれ平面である請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記第1連結部材の前記第1回転軸は、前記ロッドの軸上に位置する請求項1又は請求項2に記載の射出装置。
【請求項4】
前記第1当接面は、前記ロッドの軸を基準として前記第1連結部材の両側に形成されている請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の射出装置。
【請求項5】
前記第1連結部材及び前記第2連結部材は、それぞれ円柱部材に各当接面を形成してなる請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86397(P2013−86397A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230015(P2011−230015)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】