説明

射出装置

【課題】応答性を向上させることができる射出装置を提供すること。
【解決手段】射出装置11において、射出シリンダ17の第2室17fにはアキュムレータ22が接続されるとともに、射出シリンダ17の第2ロッド17dには、射出シリンダ17の移動速度を制御する制御ユニットSが接続されている。この制御ユニットSは、第2ロッド17dの移動に追従して第2ロッド17dと同一方向へ移動可能な回転軸24と、第2ロッド17dの直線運動を回転軸24の回転運動に変換するナット25と、回転軸24の他端に連結されたブレーキディスク26と、を有する。制御ユニットSはブレーキディスク26に摺接して摩擦抵抗を発生させる第1及び第2ブレーキパッド27a,27bと、駆動用モータM1によって移動する駆動用ナットN1と、駆動用ナットN1の移動に追従して第2ブレーキパッド27bをブレーキディスク26に対し移動させる移動機構と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非圧縮性流体の流体圧によって作動する射出シリンダにより成形材料を型部内に射出、充填する射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、成形機の射出装置は、射出シリンダにより射出プランジャをスリーブ内において前進させ、スリーブ内の成形材料を型部間に形成されたキャビティに押し出すことにより、成形材料をキャビティに射出・充填する。射出・充填工程は、低速工程、高速工程及び増圧工程からなる。すなわち、射出装置は、射出の初期段階においては、成形材料の空気の巻き込みを防止するために比較的低速で射出プランジャを前進動作させ、次に、成形サイクルの短縮の観点から比較的高速で射出プランジャを前進動作させる。その後、射出装置は、成形品のヒケをなくすために、射出プランジャの前進動作する方向の力によりキャビティ内の成形材料を増圧する。このような射出装置の動作を実現するために、例えば特許文献1に開示の射出装置(ダイカストマシン)が提案されている。
【0003】
図10に示すように、特許文献1の射出装置は油圧回路を備え、この油圧回路での油圧制御により射出・充填工程が行われるようになっている。具体的には、射出装置において、射出シリンダ80のヘッド側80aには、ガスボンベ81と連通する充填用アキュムレータ82が流路を介して接続されるとともに、この流路にはパイロットチェック弁84及び速度制御バルブ85が設けられている。充填用アキュムレータ82への作動油は油圧ポンプ83aにより所定の圧力に昇圧されて補給されている。
【0004】
また、速度制御バルブ85に連通する流路には、ガスボンベ86と連通した増圧工程用アキュムレータ87が接続されている。充填用アキュムレータ82及び増圧工程用アキュムレータ87と射出シリンダ80のヘッド側80aとを接続する流路には流量制御弁88が設けられ、この流量制御弁88によって作動油の流量を制御することにより、射出シリンダ80におけるピストン80cの移動速度が制御される。
【0005】
そして、特許文献1の射出装置においては、低速工程及び高速工程は、充填用アキュムレータ82に蓄圧された作動油を射出シリンダ80のヘッド側80aに供給し、ピストン80cを低速又は高速で移動させることで行われる。このピストン80cの移動速度は、速度制御バルブ85を制御することで行われる。増圧工程は、高圧の作動油を増圧工程用アキュムレータ87から射出シリンダ80のヘッド側80aに供給することで行われる。このとき、流量制御弁88によって作動油の流量を制御することにより増圧時間が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3662001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に開示の射出装置は、速度制御バルブ85及び流量制御弁88を制御し、油圧回路での油圧を制御することで低速工程、高速工程、及び増圧工程を実現している。すなわち、特許文献1においては、速度制御バルブ85及び流量制御弁88を制御し、油路の開度を制御して各工程で要求される射出速度や射出圧力を実現している。しかし、特許文献1においては、速度制御バルブ85及び流量制御弁88における弁体(図示せず)の移動により油路の開度が目標とする開度になり、ヘッド側80aに目標とする油圧が作用する(入力される)ことで、目標とする射出速度や射出圧力が実現されており、応答性が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、応答性を向上させることができる射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、非圧縮性流体の流体圧によって作動する射出シリンダにより成形材料を型内に射出、充填する射出装置に関する。そして、前記射出シリンダにおける前記型部と接続する側と反対側の作動室には前記流体圧の蓄圧手段が接続されるとともに、前記作動室から前記型部と反対側に突出した前記射出シリンダのロッドには、該射出シリンダの移動速度を制御する制御ユニットが接続されている。前記制御ユニットは、前記ロッドの移動に追従して該ロッドと同一方向へ移動可能な回転軸と、前記ロッドの直線運動を、前記回転軸の回転運動に変換する変換機構と、前記回転軸に連結され該回転軸と一体回転する回転部材と、前記回転部材に摺接して摩擦抵抗を発生させる抵抗発生部材と、電動駆動源によって移動する作動部材と、前記作動部材の移動に追従して前記抵抗発生部材を前記回転部材に対し移動させる移動機構と、を有する。
【0010】
これによれば、射出シリンダの作動室に蓄圧手段を接続し、その作動圧により射出シリンダのロッドを型部に向けて即座に移動可能な待機状態としつつ、制御ユニットによりロッドの移動を制御可能にした。そして、制御ユニットにおいては、電動駆動源によって作動部材の移動速度を制御し、作動部材の移動速度を移動機構を介して、回転部材に対する抵抗発生部材の状態を機械的に制御することで、作動圧の作用したロッドの射出速度や射出圧力を機械的に制御することができる。すなわち、回転部材に対する抵抗発生部材の移動という機械的制御により、射出シリンダによる射出速度や射出圧力を制御することができる。したがって、各種バルブを制御し、油路の開度を制御して各工程で要求される射出速度や射出圧力を実現した射出装置と比べると、射出装置の応答性を向上させることができる。
【0011】
また、前記移動機構は、前記抵抗発生部材が連結された作動ロッドを有する作動シリンダと、前記作動部材に追従するパイロットロッドを有するパイロットシリンダと、前記作動シリンダにおける前記作動ロッドの突出する側の作動側ロッド室と前記パイロットシリンダにおける前記パイロットロッドの突出する側のパイロット側ロッド室とを接続し、かつ前記作動シリンダにおける前記作動側ロッド室と反対側の作動側ヘッド室と前記パイロットシリンダにおける前記パイロット側ロッド室と反対側のパイロット側ヘッド室とを接続する非圧縮性流体の閉回路と、から構成されていてもよい。
【0012】
これによれば、電動駆動源によって作動部材が移動すると、パイロットシリンダのパイロットロッドが作動部材に追従し、パイロットロッドの移動に伴い作動シリンダの作動ロッドが移動するとともに、作動ロッドに一体の抵抗発生部材が移動する。よって、抵抗発生部材には電動駆動源の動力が非圧縮性流体の閉回路を介して伝達されるため、電動駆動源の小さな駆動力であっても抵抗発生部材を回転部材に対し移動させることができる。
【0013】
また、前記作動シリンダは、前記パイロットシリンダより大径をなすものであってもよい。
これによれば、シリンダ径の大小を利用することで、小径のパイロットシリンダの推力を増幅して作動シリンダでは大きな推力を発生させ、抵抗発生部材を回転部材に強く押し当てることができる。
【0014】
また、射出装置は、前記作動側ヘッド室に接続されたブレーキ用の蓄圧手段と、前記蓄圧手段と前記作動側ヘッド室とを接続する非圧縮性流体の閉回路と、前記閉回路を開閉する開閉弁とを有してもよい。
【0015】
これによれば、電動駆動源に異常等が発生したとき、開閉弁を開状態として作動側ヘッド室にブレーキ用の蓄圧手段の圧力を作用させると、作動側ロッド室の作動油がパイロットシリンダのパイロット側ロッド室に排出される。すると、パイロットロッドが突出する側へ移動することが規制され、作動部材の移動が規制される。同時に、作動シリンダの作動ロッドが突出する側へ移動し、作動ロッドに連結された抵抗発生部材が回転部材に向けて移動し、抵抗発生部材の回転が規制される。よって、電動駆動源の異常等のときであっても、射出シリンダの移動を防止することができる。
【0016】
また、前記射出シリンダにおける前記制御ユニット側には、前記射出シリンダのロッドを減速させた時に前記制御ユニットのハウジングが接触する減衰機構が設けられていてもよい。
【0017】
これによれば、射出シリンダが減速動作していく際、制御ユニットを減衰機構に接触させることで、制御ユニットの移動エネルギーを減衰機構で減衰させて、制御ユニットを緩やかに停止させることができる。
【0018】
また、前記減衰機構は、前記射出シリンダにおける前記作動室の前記制御ユニット側に設けられた衝撃吸収部材を有するものであってもよい。
これによれば、衝撃吸収部材により、制御ユニットが減衰機構に当接したときに生じる衝撃を吸収することができ、制御ユニットを緩やかに停止させることができる。
【0019】
また、前記減衰機構は、前記衝撃吸収部材に接触する接触部をハウジングに有するとともに、前記衝撃吸収部材は、前記射出シリンダの前記ロッドの移動方向に沿った位置を調節する調節機構を有するものであってもよい。
【0020】
これによれば、調節機構によって、制御ユニットの接触部が衝撃吸収部材に接触する位置を調節することができ、制御ユニットの減速開始タイミングを調節することができる。
また、前記制御ユニットにおける前記射出シリンダ側に減衰用ロッドを有し、前記減衰用ロッドは、前記射出シリンダのロッドと連動する係合部材を有し、前記射出シリンダにおける前記制御ユニット側に前記係合部材と係合される被係合部材を有しており、前記被係合部材に対する前記係合部材の相対移動を許容する許容部を前記被係合部材に有するものであってもよい。
【0021】
これによれば、射出シリンダの減速動作に伴い制御ユニットが減速していく際、減衰機構によって、制御ユニットの移動速度が緩やかに減速される。そして、減衰機構が停止した後、慣性により制御ユニットが射出シリンダに向けて移動する。このとき、許容部によって、係合部材の被係合部材に対する相対移動が許容され、被係合部材に対し、係合部材が相対移動した後に、係合部材が被係合部材に係合することで、制御ユニットの移動が停止する。このため、許容部で係合部材が被係合部材に係合するまでの間に制御ユニットをさらに減速させることができる。
【0022】
また、前記回転軸は、前記ロッドに接続された前記変換機構としての連結ナットにより前記射出シリンダに対し相対移動可能に連結された主動軸と、前記主動軸と一体回転する主動ギヤと、該主動ギヤに噛合連結された従動ギヤと、該従動ギヤと一体回転する従動軸と、該従動軸と螺合されるとともに本体ベースに固定された固定ナットと、からなるものであってもよい。
【0023】
さらに、前記回転軸は、第1の回転軸と、該第1の回転軸と螺子の向きが逆の第2の回転軸とを一体化してなるとともに、前記変換機構は、前記第1の回転軸と螺合されるとともに前記ロッドに接続された第1のナットと、前記第2の回転軸と螺合されるとともに本体ベースに固定された第2のナットと、からなるものであってもよい。
【0024】
これによれば、同じ回転数でも連結ナット又は第1のナットの移動速度を速めることができる。したがって、主動軸及び従動軸、又は第1及び第2の回転軸にボール螺子特有の制約があっても、連結ナット又は第1のナットの速度を速め、射出シリンダによる射出速度を速めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態の射出装置を示す模式図。
【図2】射出装置における射出圧力及び射出速度の変化を示すグラフ。
【図3】作動シリンダ及びパイロットシリンダが前進動作した状態を示す模式図。
【図4】射出シリンダが前進動作した状態を示す模式図。
【図5】第2の実施形態の射出装置を示す模式図。
【図6】第3の実施形態の射出装置を示す模式図。
【図7】(a)は第4の実施形態の射出装置を示す模式図、(b)はショックアブソーバに制御ユニットが接触した状態を示す図、(c)は調節機構を示す模式図。
【図8】(a)は第5の実施形態の射出装置を示す模式図、(b)は減衰用ロッドが筐体内を移動した状態を示す図。
【図9】第6の実施形態の射出装置を示す模式図。
【図10】背景技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、型部Kは、固定金型12と、可動金型13とから形成されるとともに、固定金型12及び可動金型13は、図示しない型締装置により型開閉及び型締がなされる。射出装置11は、型部K内に形成されたキャビティ14に、流体圧によって成形材料としての金属材料を射出・充填する装置である。そして、型部K内に射出された金属材料は、凝固後に取り出されることにより、所望の成形品となる。
【0028】
固定金型12には、キャビティ14に連通する射出スリーブ15が設けられるとともに、この射出スリーブ15内には射出プランジャ16が摺動可能に設けられている。射出プランジャ16は、両ロッド形の射出シリンダ17の一方のロッドである第1ロッド17aに連結されている。射出シリンダ17のシリンダチューブ17b内には、第1ロッド17aと一体のピストン17cが移動可能に収容されるとともに、このピストン17cにおける第1ロッド17aの反対側には第2ロッド17dが一体に設けられている。シリンダチューブ17b内は、ピストン17cによって第1ロッド17a側の第1室17eと、その反対側の第2ロッド17d側の第2室17fとに区画されている。
【0029】
射出シリンダ17の第1室17eには、第1室17eに非圧縮性流体(流体)としての作動油を供給するとともに、第1室17eの作動油を排出する給排機構Tが接続されている。給排機構Tは、油タンク18と、油タンク18内の作動油を汲み上げるポンプ19と、第1室17eとポンプ19とを接続する油路20に設けられた電磁切換弁21と、からなる。電磁切換弁21は、ポンプ19によって油タンク18から汲み上げた作動油を第1室17eへ供給可能とする第1位置21aと、第1室17e内の作動油を油タンク18に排出可能とする第2位置21bとに切換可能になっている。
【0030】
一方、射出シリンダ17において、型部Kと接続する側と反対側の作動室である第2室17fには、蓄圧手段としてのアキュムレータ22が接続されるとともに、アキュムレータ22には作動油が蓄圧されている。そして、このアキュムレータ22からの作動油が第2室17fに供給されており、ピストン17cには型部Kに向けた油圧(作動圧)が作用し、この油圧によって第1ロッド17a、第2ロッド17d及びピストン17cが型部Kに向けて移動可能になっている。
【0031】
射出シリンダ17おける第2室17fから型部Kと反対側に突出する第2ロッド17dには、制御ユニットSが機械的に連結されている。詳細に説明すると、第2ロッド17dの先端には、継手23を介してボール螺子よりなる回転軸24の一端が連結されるとともに、この継手23により、第2ロッド17dに対し回転軸24が相対回転可能になっている。回転軸24は、第2ロッド17dと同一方向に移動可能である。また、回転軸24にはナット25が螺合されるとともに、このナット25は、射出装置11の本体ベースHbに固定されており、ナット25は回転不能及び回転軸24の軸方向へ移動不能になっている。このため、第2ロッド17dが前進動作すると、回転軸24が回転する。すると、ナット25に対し回転軸24がその軸方向へ前進動作する。よって、本実施形態では、ナット25が、第2ロッド17dの直線運動を、回転軸24の回転運動に変換する変換機構を構成している。
【0032】
回転軸24の他端には回転部材としてのブレーキディスク26が回転軸24と一体回転可能に連結されている。このブレーキディスク26の厚み方向の前後には、第1ブレーキパッド27aと第2ブレーキパッド27bが対向して配置されている。第1ブレーキパッド27a及び第2ブレーキパッド27bは、それぞれ連動してブレーキディスク26に対し移動可能になっている。そして、第1及び第2ブレーキパッド27a,27bが、ブレーキディスク26に押し付けられることで、回転するブレーキディスク26に摺接して、ブレーキディスク26に対して摩擦抵抗を発生させるとともに、ブレーキディスク26の回転を規制するようになっている。よって、本実施形態では、第1ブレーキパッド27a及び第2ブレーキパッド27bが抵抗発生部材を構成する。
【0033】
第2ブレーキパッド27bには、作動シリンダ30における作動ロッド30aの先端が一体移動可能に連結されている。作動シリンダ30において、シリンダチューブ30b内には、作動ロッド30aと一体のピストン30cが収容されるとともに、このピストン30cによってシリンダチューブ30b内が、作動ロッド30aが突出する側の作動側ロッド室30dと、その反対側の作動側ヘッド室30eとに区画されている。
【0034】
この作動シリンダ30には、第1給排油路31a及び第2給排油路31bを介してパイロットシリンダ32が接続されている。このパイロットシリンダ32のシリンダチューブ32b内には、ピストン32cが収容されるとともに、このピストン32cにはパイロットロッド32aが一体に設けられている。また、シリンダチューブ32b内は、ピストン32cによってパイロットロッド32aが突出する側のパイロット側ロッド室32dと、その反対側のパイロット側ヘッド室32eとに区画されている。
【0035】
そして、パイロットシリンダ32のパイロット側ロッド室32dは、第1給排油路31aを介して作動シリンダ30の作動側ロッド室30dが接続されるとともに、パイロットシリンダ32のパイロット側ヘッド室32eは、第2給排油路31bを介して作動シリンダ30の作動側ヘッド室30eが接続されている。また、両ロッド室30d,32d及び両ヘッド室30e,32eには非圧縮性流体としての作動油が封入されるとともに、第1及び第2給排油路31a,31bによって閉回路が形成されている。
【0036】
また、作動シリンダ30のシリンダ径は、パイロットシリンダ32のシリンダ径より大きくなっている。そして、作動シリンダ30とパイロットシリンダ32のシリンダ径の差と、第1及び第2給排油路31a,31bとから作動シリンダ30における作動ロッド30aの推力を増幅させる増幅回路が構成されている。
【0037】
パイロットロッド32aの先端には、作動部材としての駆動用ナットN1が接離可能に連結されるとともに、この駆動用ナットN1は駆動用ボールネジB1に螺合されている。駆動用ボールネジB1は、電動駆動源としての駆動用モータM1によって回転される。また、パイロットロッド32aは、アキュムレータ22の油圧によって駆動用ナットN1に押し付けられている。
【0038】
そして、駆動用ボールネジB1が、駆動用ナットN1が駆動用ボールネジB1の軸方向へ前進動作(移動)するように回転すると、パイロットシリンダ32のパイロットロッド32aが駆動用ナットN1に追従して前進動作(移動)するようになっている。すると、パイロット側ロッド室32dの作動油が第1給排油路31aを介して作動側ロッド室30dに排出されるとともに、作動側ヘッド室30eの作動油が第2給排油路31bを介してパイロット側ヘッド室32eに排出される。その結果、作動ロッド30aと一体の第2ブレーキパッド27bがブレーキディスク26から離隔(移動)されるとともに、第1ブレーキパッド27aが連動してブレーキディスク26から離隔(移動)されるようになっている。
【0039】
したがって、本実施形態では、作動シリンダ30と、パイロットシリンダ32と、第1及び第2給排油路31a,31bとから、駆動用ナットN1の移動に追従して第2ブレーキパッド27bをブレーキディスク26に対し移動させる移動機構が構成されている。
【0040】
また、本実施形態において、ブレーキディスク26、第1ブレーキパッド27a、第2ブレーキパッド27b、作動シリンダ30、第1及び第2給排油路31a,31b、パイロットシリンダ32はハウジングH内に収容されてユニット化されている。また、ハウジングH内においては、回転軸24、ブレーキディスク26、作動シリンダ30、第1ブレーキパッド27a、第2ブレーキパッド27b、及びパイロットシリンダ32はブレーキユニットBUとして一体化されており、ハウジングH内で移動可能に収容されている。
【0041】
次に、射出装置11の射出時における作動パターン(射出パターン)を、図2にしたがって説明する。
射出装置11は、低速工程、高速工程、及び増圧工程の3工程で作動させる。低速工程は、射出の初期段階の工程である。高速工程は、低速工程の次に行われる工程であって、射出スリーブ15の射出プランジャ16(射出シリンダ17)を低速工程時よりも高速で作動させる工程である。この高速工程の終盤では射出プランジャ16(射出シリンダ17)の速度が徐々に減速されていく。そして、射出プランジャ16(射出シリンダ17)の速度がほぼゼロに近づくと、増圧工程に移行する。増圧工程は、高速工程の次に行われる射出の最終段階の工程であり、射出スリーブ15の射出プランジャ16の型部Kに向けた前進方向の力によりキャビティ14内の金属材料を増圧する工程である。
【0042】
これらの各工程では、図2に示すように、射出装置11に要求される作動パターンが相違する。すなわち、射出プランジャ16(射出シリンダ17)は、高速工程において低速工程よりも速い速度で作動させることが必要である一方で、増圧工程においては速度を必要としない。また、射出プランジャ16(射出シリンダ17)は、増圧工程において低速工程及び高速工程よりも高い圧力を付与するように作動させることが必要である一方で、低速工程及び高速工程において増圧工程時ほどの圧力を付与するように作動させる必要はない。
【0043】
以下、本実施形態の射出装置11の作用を説明する。
最初に、低速工程について説明する。
図1に示すように、低速工程の開始前、射出スリーブ15の射出プランジャ16、射出シリンダ17の第1ロッド17a及び第2ロッド17d、作動シリンダ30の作動ロッド30a、パイロットシリンダ32のパイロットロッド32aは、図1に示すような所定の初期位置に位置している。なお、初期位置に位置する各ロッド17a,30a,32aは、射出スリーブ15内に供給される金属材料に対して射出圧を付与していない(図2の時間T1)。
【0044】
そして、第2室17fにはアキュムレータ22からの作動油が供給されるとともに、射出シリンダ17のピストン17cには、射出プランジャ16の推力を出力させるために必要なエネルギーが油圧として作用している。
【0045】
また、初期位置において、駆動用モータM1及び駆動用ナットN1が停止しており、この駆動用ナットN1に対し、パイロットシリンダ32のパイロットロッド32aが押し付けられるとともに、このパイロットシリンダ32からの油圧が増幅回路によって増幅されて作動シリンダ30のピストン30cに作用している。そして、増幅された油圧により、作動ロッド30aに一体の第2ブレーキパッド27bがブレーキディスク26に押し付けられるとともに、第2ブレーキパッド27bに連動して第1ブレーキパッド27aもブレーキディスク26に押し付けられている。
【0046】
よって、ブレーキユニットBUにより、ブレーキディスク26の回転が規制されるとともに、このブレーキディスク26に一体の回転軸24の回転も規制されている。このため、アキュムレータ22からの油圧により移動可能な射出シリンダ17のピストン17cは、第2ロッド17dを介して移動が規制されている。なお、ピストン17cは、その移動が規制されつつも、アキュムレータ22からの油圧が作用しており、即座に移動可能な状態で待機している。
【0047】
そして、固定金型12と可動金型13の型締め、及び射出スリーブ15への金属材料の供給などの成形準備が完了すると、射出装置11による低速工程を開始する。低速工程においては、図2に示すように、射出速度がV1となる。同時に、電磁切換弁21を第2位置21bに切り換える。
【0048】
図3に示すように、駆動用モータM1が駆動されると、駆動用ボールネジB1が回転するとともに、駆動用ボールネジB1に螺合された駆動用ナットN1が前進動作する。すると、駆動用ナットN1に押し付けられていたパイロットシリンダ32のパイロットロッド32aが、駆動用ナットN1に追従して前進動作する。
【0049】
すると、パイロットロッド32aの前進動作により、パイロット側ロッド室32dの作動油が第1給排油路31aを介して作動側ロッド室30dに排出されるとともに、作動側ヘッド室30eの作動油が第2給排油路31bを介してパイロット側ヘッド室32eに排出される。作動ロッド30aはシリンダチューブ30bに没入する方向へ移動し、この作動ロッド30aと一体の第2ブレーキパッド27bがブレーキディスク26から離隔されるとともに、第2ブレーキパッド27bに連動して第1ブレーキパッド27aもブレーキディスク26から離隔される。このとき、第1ロッド17a及び第2ロッド17dが緩やかに前進動作するとともに、ブレーキディスク26及び回転軸24が緩やかに回転を開始する。
【0050】
すると、図4に示すように、ブレーキユニットBUにより、移動が規制されていたピストン17cが、アキュムレータ22からの油圧を受けて、第1室17eに向けて上記の射出速度V1で前進動作する。その結果、第1ロッド17aに連結された射出プランジャ16がキャビティ14に向けて射出速度V1で前進動作する。この射出プランジャ16の前進動作により、射出スリーブ15内の金属材料はキャビティ14内に射出される。同時に、第1室17eの作動油は、第2位置21bにある電磁切換弁21を介して油タンク18へ排出される。
【0051】
また、第1ロッド17a、第2ロッド17d、及び回転軸24を介して連結されたハウジングH(ブレーキユニットBU)が前進動作すると、射出プランジャ16が前進動作する。そして、射出プランジャ16が、低速工程の終了位置に到達すると(図2の時間T2)、低速工程から高速工程に移行する。高速工程において、射出プランジャ16が、図2に示すように、射出速度がV2となり、上記と同様に射出装置11が作動し、高速工程が行われる。高速行程においては、第1ロッド17a及び第2ロッド17dが高速で前進動作する。その結果、ブレーキディスク26及び回転軸24が高速で回転する。
【0052】
そして、高速工程において、射出プランジャ16の位置が、高速工程の終了位置に近づくと(図2の時間T3)、駆動用モータM1を減速させる。これにより、射出シリンダ17の第1及び第2ロッド17a,17dも減速動作する。その後、射出プランジャ16が、高速工程の終了位置に到達すると(図2の時間T4)、射出シリンダ17の第1及び第2ロッド17a,17bの前進動作がほぼ停止するとともに、高速工程が終了し、増圧工程に移行する。
【0053】
最後に、増圧工程において、射出プランジャ16が付与する圧力が、図2に示す射出圧Pとなる。この増圧工程においては、パイロットロッド32aが、駆動用ナットN1に接触することなく、アキュムレータ22の油圧が第1ロッド17aを介して射出プランジャ16に付与される。
【0054】
その後、キャビティ14内の金属材料が凝固したならば、射出シリンダ17の第1ロッド17aを後進動作させる。このとき、電磁切換弁21を第1位置21aに切り換える。そして、ポンプ19を作動させ、ポンプ19が汲み上げた作動油を射出シリンダ17の第1室17eへ供給する。これにより、射出シリンダ17の第1ロッド17aの後進動作により、射出プランジャ16も後進動作するとともに、ハウジングHも後進動作し、さらに、第2室17fの作動油がアキュムレータ22に戻される。その後、固定金型12と可動金型13を型開きすることにより、型部Kから成形品が取り出される。
【0055】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)射出装置11において、射出シリンダ17の第2室17fにアキュムレータ22を接続するとともに、アキュムレータ22からの油圧をピストン17cに作用させて第1ロッド17aを型部Kに向けて即座に移動可能な待機状態としつつ、制御ユニットSにより第1ロッド17aの移動速度を制御可能にした。この制御ユニットSにおいては、射出シリンダ17の第2ロッド17dに回転軸24の一端を連結し、また、回転軸24にナット25を螺合させるとともに、回転軸24の他端にブレーキディスク26を連結した。また、駆動用モータM1によって直線移動する駆動用ナットN1に追従して第2ブレーキパッド27bが移動するように移動機構を設けた。そして、駆動用モータM1によって駆動用ナットN1の移動を制御し、ブレーキディスク26に対する第1及び第2ブレーキパッド27a,27bの位置を制御することで、アキュムレータ22からの油圧による射出シリンダ17(射出プランジャ16)の射出速度や射出圧力を制御することができる。したがって、各種バルブを制御し、油路の開度を制御して各工程で要求される射出速度や射出圧力を実現した射出装置と比べると、機械的制御により、射出シリンダ17による射出速度や射出圧力を直接的に制御できるため、射出装置11の応答性を向上させることができる。
【0056】
(2)アキュムレータ22からの油圧が既に作用したピストン17c(第1ロッド17a)の直線運動を、ナット25及び回転軸24によってブレーキディスク26の回転運動に変換した。そして、ブレーキディスク26の回転を制動することでピストン17cの移動を制御するようにした。よって、射出シリンダ17による射出速度や射出圧力は、駆動用モータM1の制御によって緻密に制御することができる。例えば、低速工程は、金属材料の空気の巻き込みを防止する等のために射出速度を緻密に制御することが要求される。本実施形態では、射出シリンダ17(射出プランジャ16)を最適な作動速度及び加速度で動作させることができ、射出スリーブ15内での金属材料の空気の巻き込みを防止したり、金属材料が波打つことを防止したりすることがより的確に行えるようになる。
【0057】
(3)作動シリンダ30は、パイロットシリンダ32より大径をなす。したがって、シリンダ径の大小を利用することで、小径のパイロットシリンダ32の推力を増幅して作動シリンダ30では大きな推力を発生させ、第1及び第2ブレーキパッド27a,27bをブレーキディスク26に強く押し当てることができる。よって、パイロットシリンダ32を動作せる駆動用モータM1は、必要最小限の出力のモータを採用することができ、駆動用モータM1に掛かるコストを抑えることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図5にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0059】
図5に示すように、射出装置11において、射出シリンダ17の第2ロッド17dの一端には第1のナット40aが接続されるとともに、この第1のナット40aには、ボール螺子よりなる第1の回転軸24aが螺合されている。また、第1の回転軸24aには、ボール螺子よりなる第2の回転軸24bの一端が一体回転可能に連結されるとともに、この第2の回転軸24bの他端にブレーキディスク26が連結されている。第2の回転軸24bには、第2のナット40bが螺合されるとともに、この第2のナット40bは本体ベースHbに固定されている。第2の回転軸24bは、第1の回転軸24aと螺子の向きが逆になっている。そして、第2の実施形態では、第1のナット40aと、第2のナット40bとから変換機構が構成されている。
【0060】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)〜(3)と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(4)第1のナット40aが、第1の回転軸24aに対し速度Vで移動すると、第1のナット40aは、移動不能な第2のナット40bに対して速度Vで移動する。そして、第1のナット40aに螺合された第1の回転軸24aと、第2のナット40bに螺合された第2の回転軸24bとは螺子の向きが逆になっている。このため、第1の回転軸24aと第2の回転軸24bが同時に回転すると、第1のナット40aと第2のナット40bは互いに近接又は離隔する方向へ移動しようとするが、第2のナット40bは本体ベースHbに移動不能に固定されている。よって、第1のナット40aは、第2のナット40bに対し速度Vの2倍の速度で移動する。
【0061】
したがって、第2の実施形態によれば、第1及び第2の回転軸24a,24bの回転数を変化させなくても、第1のナット40aの移動速度を速めることができる。よって、第1及び第2の回転軸24a,24bに、ボール螺子特有の回転数の上限があっても、第1のナット40aの速度を速め、射出シリンダ17による射出速度を速めることができる。
【0062】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図6にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0063】
図6に示すように、射出装置11において、射出シリンダ17の第2ロッド17dの一端には変換機構としての連結ナット42が接続されるとともに、この連結ナット42にはボール螺子よりなる主動軸43が螺合されている。そして、主動軸43は、射出シリンダ17に対し相対移動可能になっている。また、主動軸43の先端側には主動ギヤ43aが一体回転可能に連結されるとともに、主動軸43の先端にはブレーキディスク26が連結されている。
【0064】
また、固定ナット44が本体ベースHbに対して移動不能に固定されるとともに、この固定ナット44にはボール螺子よりなる従動軸45が螺合されている。この従動軸45は、主動軸43及び第2ロッド17dに対し平行をなす。また、従動軸45には従動ギヤ45aが一体回転可能に連結されるとともに、この従動ギヤ45aは主動ギヤ43aに噛合連結されている。
【0065】
したがって、第3の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)〜(3)と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(5)連結ナット42が、主動軸43に対し速度Vで型部K側へ移動すると、主動軸43が回転する。そして、連結ナット42に螺合された主動軸43と、固定ナット44に螺合された従動軸45とは、主動ギヤ43aと従動ギヤ45aによって回転方向が逆になる。このとき、従動軸45が回転すると、固定ナット44は型部K側と反対側へ速度Vで移動しようとする。つまり、連結ナット42と固定ナット44はそれぞれ速度Vで離隔する方向へ移動しようとする。しかし、固定ナット44は移動不能に本体ベースHbに固定されている。よって、連結ナット42は、固定ナット44に対し速度Vの2倍で移動する。
【0066】
したがって、第3の実施形態によれば、主動軸43及び従動軸45の回転数を変化させなくても、連結ナット42の移動速度を速めることができる。よって、主動軸43及び従動軸45に、ボール螺子特有の回転数の上限があっても、連結ナット42の速度を速め、射出シリンダ17による射出速度を速めることができる。そして、主動軸43及び従動軸45は通常のボール螺子よりなるため、安価な構成で射出シリンダ17による射出速度を速めることができる。
【0067】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を図7にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0068】
図7(a)に示すように、第2ロッド17dにおける制御ユニットS側には接触部17hが、第2ロッド17dと一体移動可能に連結されるとともに、この接触部17hはハウジングHと一体移動可能になっている。また、射出シリンダ17において、制御ユニットS側には、射出シリンダ17の第1及び第2ロッド17a,17dを減速させた時に制御ユニットSのハウジングHの接触部17hが接触する減衰機構が設けられている。具体的には、射出シリンダ17における第2室17fの制御ユニットS側には、減衰機構を構成する衝撃吸収部材としてのショックアブソーバ50が複数取着されている。各ショックアブソーバ50は、チューブ50a内に流体が封入されるとともに、チューブ50a内にはピストンロッド51に一体のピストン51aが移動可能に格納されている。さらに、チューブ50aには、図示しないオリフィスが形成されている。また、ピストンロッド51のチューブ50aからの突出端には、当接部材51bが連結されている。
【0069】
さて、第4の実施形態の射出装置11においては、高速工程時、射出プランジャ16の位置が、高速工程の終了位置に近づくと(図2の時間T3)、駆動用モータM1を減速させる。これにより、射出シリンダ17の第1及び第2ロッド17a,17dも減速動作する。そして、射出シリンダ17の減速動作に伴い制御ユニットSが減速していく途中で、図7(b)に示すように、接触部17hが当接部材51bに当接し、さらに、接触部17hが当接部材51bをチューブ50a内に向けて押圧する。すると、チューブ50a内の流体がオリフィスから排出され、ピストンロッド51がチューブ50a内に向けて緩やかに没入する。このため、ショックアブソーバ50によって、制御ユニットSの移動速度が緩やかに減速され、停止する。
【0070】
なお、図7(c)に示すように、減衰機構において、ショックアブソーバ50は、第1及び第2ロッド17a,17dの移動方向に沿ったピストンロッド51の位置(チューブ50aからの突出量)を調節する調節機構54を備えていてもよい。調節機構54は、調節用モータ55と、この調節用モータ55によって回転する調節用ボールネジ56と、この調節用ボールネジ56に螺合された調節用ナット57と、からなる。そして、調節用モータ55の駆動により、調節用ナット57の位置を調節することで、チューブ50aから突出するピストンロッド51(当接部材51b)の移動方向の突出量を調節可能になっている。
【0071】
したがって、第4の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)〜(4)と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(7)射出シリンダ17にショックアブソーバ50を設けた。このため、高速工程において、射出シリンダ17の第1及び第2ロッド17a,17dが減速動作していく際、制御ユニットSの接触部17hをショックアブソーバ50に当接させることで、制御ユニットSの移動エネルギーをショックアブソーバ50で減衰して、制御ユニットSを緩やかに停止させることができる。
【0072】
(8)ショックアブソーバ50が調節機構54を備えるものとし、この調節機構54によって、ピストンロッド51(当接部材51b)のチューブ50aからの突出量を調節することができる。したがって、制御ユニットSの接触部17hがショックアブソーバ50に接触、押圧する位置を調節することができ、制御ユニットSの減速開始タイミングを調節することができる。
【0073】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態を図8(a)にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0074】
制御ユニットSにおいて、ハウジングHの射出シリンダ17側には減衰用ロッド61が連結されるとともに、射出シリンダ17の第2ロッド17dにおける制御ユニットS側には、被係合部材としての箱状の筐体60が連結されている。この筐体60は、第2ロッド17dに連動する。減衰用ロッド61の射出シリンダ17側には、係合部材としてのT字部材61aが設けられるとともに、減衰用ロッド61はT字部材61aとともに筐体60内に移動可能に収容されている。なお、前述の実施形態と同様に、第2ロッド17dの速度は、制御ユニットSによって制御される。
【0075】
そして、減速時には、制御ユニットSのブレーキによって射出シリンダ17及び制御ユニットS自身が減速されるとともに、図8(b)に示すように、接触部17hがショックアブソーバ50に当接する。その後は、制御ユニットSのブレーキにより、第2ロッド17d及び制御ユニットSが停止する。又は、第2ロッド17d及び制御ユニットSが減速されていき、減衰用ロッド61が、筐体60における射出シリンダ17側の内壁に当接し、制御ユニットSが停止され、第2ロッド17dも停止される。
【0076】
したがって、第5の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)〜(4)及び第4の実施形態に記載の(7)と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(9)制御ユニットSを減速させてショックアブソーバ50に当接させる際、接触部17hがショックアブソーバ50に当接し、その後、筐体60における射出シリンダ17側の内壁にT字部材61aを当接させる。この場合、接触部17hがショックアブソーバ50に当接してから、減衰用ロッド61が筐体60の内壁に当接するまでの時間に、制御ユニットSをさらに減速させることができる。つまり、ショックアブソーバ50に掛かる負荷が第4の実施形態より少ない。したがって、ショックアブソーバ50のサイズを小さくすることができる。なお、本実施形態では、筐体60におけるT字部材61aと射出シリンダ17側の空間が許容部を構成している。
【0077】
なお、第1〜第4の実施形態においても、筐体60及び減衰用ロッド61を設けてもよい。
さらに、制御ユニットS側に係合部材としてのT字部材61a、第2ロッド17d側に被係合部材としての筐体60を設けたが、制御ユニットS側に筐体60を、第2ロッド17d側にT字部材61aを設けてもよい。
【0078】
加えて、係合部材と被係合部材は、それぞれT字部材61aと筐体60としたが、これに限らない。例えば、フローティングジョイントを用いてもよいし、フックを用いてもよい。
【0079】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態を図9にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0080】
図9に示すように、作動シリンダ30において、作動ロッド30aと反対側の作動側ヘッド室30eに、ブレーキ用の蓄圧手段としてのブレーキ用アキュムレータ70を接続するとともに、作動側ヘッド室30eとブレーキ用アキュムレータ70とを給排油路71を介して接続する。さらに、この給排油路71に開閉弁72を設ける。また、開閉弁72は通常時は閉状態となっており、ブレーキ用アキュムレータ70の蓄圧は作動側ヘッド室30eには作用していない。
【0081】
駆動用モータM1への電力供給が遮断されたり、駆動用モータM1が故障する等して、駆動用モータM1に異常等が発生したりすると、駆動用モータM1が自由に回転する状態となってしまう。すると、第1ロッド17a、及び第2ロッド17dが型部K側に意図しない移動(すなわち、型部K側に飛び出す移動)をする。このとき、開閉弁72を開状態にすると、作動側ヘッド室30eにブレーキ用アキュムレータ70の油圧が作用する。
【0082】
そして、作動ロッド30aは型部K側へ移動するため、作動ロッド30aと一体の第2ブレーキパッド27bがブレーキディスク26に向けて移動し、第1ブレーキパッド27a及び第2ブレーキパッド27bがブレーキディスク26に押し付けられる。その結果、ブレーキユニットBUにより、ブレーキディスク26の回転が規制されるとともに、このブレーキディスク26に一体の回転軸24の回転も規制され、射出シリンダ17の第2ロッド17dは、回転軸24を介して移動が規制される。
【0083】
したがって、第6の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)〜(4)と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(10)ブレーキ用アキュムレータ70からの油圧により、駆動用モータM1の異常等のときであっても、射出シリンダ17の意図しない移動(飛び出し等)を防止することができる。
【0084】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第6の実施形態においても、筐体60及び減衰用ロッド61を設けてもよい。
○ 作動シリンダ30とパイロットシリンダ32のシリンダ径は同じであってもよい。
【0085】
○ パイロットシリンダ32の電動駆動源を、リニアモータとし、リニアモータにより、駆動用ナットN1を直接、直線移動させてもよい。
○ 射出装置11は、樹脂材料をキャビティ14内に射出して樹脂成形品を製造する射出装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
H…ハウジング、Hb…本体ベース、K…型部、M1…電動駆動源としての駆動用モータ、N1…作動部材としての駆動用ナット、S…制御ユニット、11…射出装置、17…射出シリンダ、17d…ロッド、17f…作動室としての第2室、17h…接触部、22…蓄圧手段としてのアキュムレータ、24…回転軸、24a…第1の回転軸、24b…第2の回転軸、25…変換機構としてのナット、26…回転部材としてのブレーキディスク、27a…抵抗発生部材としての第1ブレーキパッド、27b…抵抗発生部材としての第2ブレーキパッド、30…移動機構を構成する作動シリンダ、30a…作動ロッド、30d…作動側ロッド室、30e…作動側ヘッド室、31a…移動機構を構成する閉回路としての第1給排油路、31b…移動機構を構成する閉回路としての第2給排油路、32…移動機構を構成するパイロットシリンダ、32a…パイロットロッド、32d…パイロット側ロッド室、32e…パイロット側ヘッド室、40a…第1のナット、40b…第2のナット、42…連結ナット、43…主動軸、43a…主動ギヤ、44…固定ナット、45…従動軸、45a…従動ギヤ、50…減衰機構における衝撃吸収機構としてのショックアブソーバ、54…調節機構、60…被係合部材としての筐体、61a…係合部材としてのT字部材、61…減衰用ロッド、70…ブレーキ用の蓄圧手段としてのブレーキ用アキュムレータ、71…閉回路としての給排油路、72…開閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非圧縮性流体の流体圧によって作動する射出シリンダにより成形材料を型部内に射出、充填する射出装置において、
前記射出シリンダにおける前記型部と接続する側と反対側の作動室には前記流体圧の蓄圧手段が接続されるとともに、前記作動室から前記型部と反対側に突出した前記射出シリンダのロッドには、該射出シリンダの移動速度を制御する制御ユニットが接続されており、
前記制御ユニットが、
前記ロッドの移動に追従して該ロッドと同一方向へ移動可能な回転軸と、
前記ロッドの直線運動を、前記回転軸の回転運動に変換する変換機構と、
前記回転軸に連結され該回転軸と一体回転する回転部材と、
前記回転部材に摺接して摩擦抵抗を発生させる抵抗発生部材と、
電動駆動源によって移動する作動部材と、
前記作動部材の移動に追従して前記抵抗発生部材を前記回転部材に対し移動させる移動機構と、
を有することを特徴とする射出装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記抵抗発生部材が連結された作動ロッドを有する作動シリンダと、
前記作動部材に追従するパイロットロッドを有するパイロットシリンダと、
前記作動シリンダにおける前記作動ロッドの突出する側の作動側ロッド室と前記パイロットシリンダにおける前記パイロットロッドの突出する側のパイロット側ロッド室とを接続し、かつ前記作動シリンダにおける前記作動側ロッド室と反対側の作動側ヘッド室と前記パイロットシリンダにおける前記パイロット側ロッド室と反対側のパイロット側ヘッド室とを接続する非圧縮性流体の閉回路と、から構成されている請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記作動シリンダは、前記パイロットシリンダより大径をなす請求項2に記載の射出装置。
【請求項4】
前記作動側ヘッド室に接続されたブレーキ用の蓄圧手段と、前記蓄圧手段と前記作動側ヘッド室とを接続する非圧縮性流体の閉回路と、前記閉回路を開閉する開閉弁とを有する請求項2又は請求項3に記載の射出装置。
【請求項5】
前記射出シリンダにおける前記制御ユニット側には、前記射出シリンダのロッドを減速させた時に前記制御ユニットのハウジングが接触する減衰機構が設けられている請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の射出装置。
【請求項6】
前記減衰機構は、前記射出シリンダにおける前記作動室の前記制御ユニット側に設けられた衝撃吸収部材を有する請求項5に記載の射出装置。
【請求項7】
前記減衰機構は、前記衝撃吸収部材に接触する接触部をハウジングに有するとともに、前記衝撃吸収部材は、前記射出シリンダの前記ロッドの移動方向に沿った位置を調節する調節機構を有する請求項6に記載の射出装置。
【請求項8】
前記制御ユニットにおける前記射出シリンダ側に減衰用ロッドを有し、前記減衰用ロッドは、前記射出シリンダのロッドと連動する係合部材を有し、前記射出シリンダにおける前記制御ユニット側に前記係合部材と係合される被係合部材を有しており、前記被係合部材に対する前記係合部材の相対移動を許容する許容部を前記被係合部材に有する請求項5〜請求項7のうちいずれか一項に記載の射出装置。
【請求項9】
前記回転軸は、前記ロッドに接続された前記変換機構としての連結ナットにより前記射出シリンダに対し相対移動可能に連結された主動軸と、前記主動軸と一体回転する主動ギヤと、該主動ギヤに噛合連結された従動ギヤと、該従動ギヤと一体回転する従動軸と、該従動軸と螺合されるとともに本体ベースに固定された固定ナットと、からなる請求項1〜請求項8のうちいずれか一項に記載の射出装置。
【請求項10】
前記回転軸は、第1の回転軸と、該第1の回転軸と螺子の向きが逆の第2の回転軸とを一体化してなるとともに、前記変換機構は、前記第1の回転軸と螺合されるとともに前記ロッドに接続された第1のナットと、前記第2の回転軸と螺合されるとともに本体ベースに固定された第2のナットと、からなる請求項1〜請求項8のうちいずれか一項に記載の射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−86399(P2013−86399A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230018(P2011−230018)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】