説明

導光シートおよび導光シートの製造方法

【課題】導光シートに複数の凹部を設けた照光機構では携帯電話等の小型の携帯端末装置に適用すると、凹部と被照光領域が近接するため凹部の形状を反映した形状の反射光では被照光領域を均一に照光することができず、被照光領域の光量が不足するという課題があった。
【解決手段】外部光源からの光を伝搬する導光シート1の少なくとも一つの表面に複数の凹部1bを設け、伝搬された光が複数の凹部1bで反射されることにより光を出光する導光シート1において、複数の凹部1bに不定形の突起形状1cを設ける。これにより、導光シート1を伝播してきた光の、一部の光L1は凹部1bの突起形状1cから多方向に直接出光し、一部の光L2は突起形状1cで不定形に反射されたのち出光するので、薄型の照光機構で導光シート1の凹部1bと被照光領域11aが近接している場合でも、被照光領域11aを均一に照光することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に使用される導光シートおよび導光シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器、特に携帯電話等の携帯端末機器においては、周囲が暗い場合でも、操作ボタン等の識別や操作が容易に行えるように、発光ダイオード等を発光させて操作部の照光を行うものが増えている。このような発光ダイオード等による照光では、発光ダイオード等からの光を効率よく反射して操作部を効果的に照光するために様々な構造の照光機構が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された照光機構は、図9に示すように、シャーシ102の上にメンブレン積層体120が積層され、メンブレン積層体120の上にキートップ124が積層されている。メンブレン積層体120は基板シート121と押圧シート122と、有機樹脂層123aと接着剤層123bよりなるスペーサ層123とで形成されており、押圧シート122の下面に上側接点126が設けられ、基板シート121の上面に下側接点125が設けられている。押圧シート122は使用者がキートップ124を押下すると変形し上側接点126と下側接点125を接触,導通させる機能を有するとともに、導光シートとしても機能しており、キートップ124の下側に対向する反射領域127では、押圧シート122の裏面122aに複数の凹部128が設けられている。
【0004】
発光ダイオード装置129から発せられた光は押圧シート122内を伝播し、凹部128の内面で上方へ反射されてキートップ124に与えられる構造となっている。
【0005】
また、特許文献1によれば、押圧シート122に形成された凹部128はレーザー光のエネルギーによって押圧シート122を形成する合成樹脂材料の一部が分解されて形成されたもので、凹部128は材料を分解することで形成されているため、凹部128の内面はその全域において平滑な面すなわち鏡面で、押圧シート122の内部を伝播する光が押圧シート122の内部で凹部128の内面に当たったときに、その内面において光が乱反射されず、内面の角度に応じてシート内で入射角と反射角の原理にしたがって反射される、としている。
【0006】
このため、上記の照光機構では、押圧シート122を伝搬する光を平滑な凹部128の内面で反射するため、反射光が凹部128の形状を反映した形状となる。
【0007】
特許文献1に示されているようなキーボード装置に用いる照光装置であれば、凹部とキートップの間に充分な距離があるため反射光が凹部の形状を反映した形状であってもキーボードの位置では均一な照光となり、光源からの光をキートップに効率よく与え、それぞれのキートップの照光箇所を明瞭に照光させることができ、また、凹部は材料をレーザー光のエネルギーで分解することで形成されているため、凹部を容易に効率よく製作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−218995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に示されているような照光機構をキーボードよりはるかに小さく薄い携帯電話等の携帯端末装置に適用すると、携帯端末装置が薄いため凹部と被照光部が近接するため凹部の形状を反映した形状の反射光では被照光部を均一に照光することができず、被照光部の光量が不足するという課題があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、薄型の照光機構でも照光部を均一に照光する導光シートおよび導光シートの製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の導光シートでは、外部光源からの光を伝搬する本体部と、前記本体部の少なくとも一つの表面に複数の凹部を設け、伝搬された光が前記複数の凹部で反射されることにより前記本体部から光を出光する導光シートにおいて、前記複数の凹部の少なくとも一つには突起形状部が設けられていることに特徴を有する。
【0012】
これにより、光を伝搬する本体部の表面に設けた凹部に突起形状部を設けたので、導光シートを伝播してきた光が複数の凹部で反射され本体部から出光するとともに、導光シートを伝播してきた光の一部は凹部に設けた突起形状部から多方向に直接出光し、一部が突起形状部で乱反射され本体部から出光するので、薄型の照光機構で導光シートの凹部と被照光部が近接している場合でも、被照光部を均一に照光することができる。
【0013】
また、本発明による導光シートでは、前記突起形状部は、前記凹部の上端側に設けられていることに特徴を有する。
【0014】
これにより、外部に近い上端側に突起形状部が設けられているので、突起形状部と被照光部がより近接することとなり、突起形状部から直接出光する光が被照光部を効率的に照光することができる。
【0015】
また、本発明による導光シートでは、前記突起形状部は、前記凹部に複数設けられていることに特徴を有する。
【0016】
これにより、凹部に突起形状部が複数設けられているので、複数の突起形状部から直接出光する光と、複数の突起形状部で反射されたのち出光する光も複数となり、導光シートからの出光量を向上させることができる。
【0017】
また、本発明による導光シートでは、前記複数の突起形状部は不定形であることに特徴を有する。
【0018】
これにより、各凹部に不定形の突起形状部が複数設けられているので、複数の突起形状部から直接出光する光と複数の突起形状部で乱反射され拡散する光も不定形となり、不定形の光が重畳して出光するため導光シートから出光する光は全体にむらがなくなり、被照光部をより均一に照光することができる。
【0019】
また、本発明による導光シートでは、前記本体部は主としてポリカーボネート樹脂からなることに特徴を有する。
【0020】
ポリカーボネートは透明度が高いので、導光シートの本体部をポリカーボネート樹脂とすることにより、導光シート内をロスなく光を伝播でき、照光部からの出光量が増加するので、被照光部の視認性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明よる導光シートの製造方法は、導光シートの本体部の表面にハロゲン化合物を塗布し、レーザー光を照射することで前記表面に凹部を形成するとともに、前記凹部に不定形の突起形状部を形成することを特徴とする。
【0022】
これにより、導光シートの表面にあらかじめハロゲン化合物の膜を生成しておくだけで、レーザー光による凹部形成加工と同時に凹部に不定形の突起形状部を作成できるので、突起形状部作成のために工程を追加する必要がなく、さらに凹部の溝内にずれることなく突起形状部を確実に作成できる。
【0023】
また、本発明よる導光シートの製造方法では、導光シートの本体部はポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする。
【0024】
これにより、ハロゲン化合物を塗布した透明度が高いポリカーボネートにレーザー光を照射することにより凹部の溝内に複数の不定形の突起形状部が形成されるので、ロスなく光を伝播し、照光部の出光量を増加させ、照光部の視認性を向上させることができる導光シートを容易に製造することができる。
【0025】
また、本発明よる導光シートの製造方法では、前記ハロゲン化合物はNaClであることを特徴とする。
【0026】
これにより、ポリカーボネートよりなる導光シートに、入手が容易で安定なNaCl膜を形成しレーザー光を照射することにより、凹部の溝内に複数の不定形の突起形状部が形成されるので、ロスなく光を伝播し、照光部からの出光量を増加させ、被照光部の視認性を向上させることができる導光シートを容易かつ安全に製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上により、本発明では、光を伝搬する導光シートの本体部の表面に設けた凹部に突起形状部を設けたので、導光シートを伝播してきた光が、一部は凹部の突起形状部から多方向に直接出光し、一部が突起形状部で乱反射され光が広く拡散するので、薄型の照光機構で導光シートの凹部と被照光部が近接している場合でも、被照光部の光量が不足しない導光シートを提供することができる。
また、また本発明よる導光シートの製造方法では、導光シートの表面にあらかじめハロゲン化合物の膜を生成しておくだけで、レーザー光による凹部形成加工と同時に凹部に不定形の突起形状部を作成できるので、突起形状部作成のための加工工程を追加する必要がなく、さらに凹部の溝内にずれることなく突起形状部を確実に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る導光シートの外観を示す斜視図である。
【図2】上記実施形態の導光シートの構成を示す断面図である。(a)は導光シートを図1のA−Aで切断したときの断面図で、(b)は本実施形態の導光シートを携帯端末装置等に組み込んだときの、通常の構成を示す断面図である。
【図3】本実施形態の導光シートの凹部の状態を示す加工サンプルの顕微鏡写真である。
【図4】本発明によらない従来の導光シートの凹部の状態を示す顕微鏡写真である。
【図5】上記実施形態の導光シートにおける光の散乱状態を模式的に示す断面図である。
【図6】は本発明によらない従来の導光シートにおける光の散乱状態を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る導光シートの製造方法を説明する模式図である。
【図8】本発明によらない従来の導光シートの製造方法を説明する模式図である。
【図9】本発明によらない従来の導光シートの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<導光シートに係る実施の形態>
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る導光シートについて図1および図2を参考に説明する。
【0031】
本発明の実施形態に係る導光シート1は、図1に示すように、ポリカーボネート等の透明な樹脂にて形成された板状の部品で、略長方形の本体部1aの1辺の一部が台形に突出しており突出部の先端側面に入光部1eを有し、本体部1aの表面には複数の凹部1bからなる照光部1dが複数設けられている。なお、導光シート1は光を伝搬するため、透明度の高いポリカーボネート樹脂にて形成することにより、光の伝達ロスを少なくすることができ、照光部1dからの光の出光量をより多くすることができる。
【0032】
図2の(a)は導光シート1を図1のA−A断面で切断したときの、入光部1e側から入光部1eに最も近接する照光部1d付近までを拡大して記載した断面図である。
【0033】
図2の(a)に示すように、導光シート1の本体部1aの表面には複数の凹部1bが設けられ、近接した複数の凹部1bにより照光部1dが構成されており、凹部1bの窪み面には複数の突起形状部1cが設けられている。突起形状部1cは内部が空洞である気泡でも、内部が本体部1aの材料と同じ材料が充填された中実な塊でもよい。
【0034】
本発明の実施例による導光シート1を各種電子機器に組み込む場合は、通常、図2の(b)に示すように、導光シート1の上面側にキートップ11を積層し下面側に接点保持シート12を積層する。また接点保持シート12の更に下面にはスペーサシート13と接点ばね14が積層され、スペーサシート13,接点ばね14の下面には光源22を保持する基板21が積層され、基板21の上面に設けられた固定接点21aと接点ばね14が接触するように配置する。また、このとき導光シート1とキートップ11との間及び導光シート1と接点保持シート12との間は完全に密着しておらず空気層が形成されるものとなっている。但し、必ずしも空気層が形成されていなくともよい。このとき光源22の出光面が導光シート1の入光部1eと対向するように設定される。また、通常、キートップ11には数字や記号等が印刷された複数の被照光部11aを有しており、キートップ11の被照光部11aと導光シート1の照光部1dおよび接点ばね14が、キートップ11を上面から見たときに略同一位置となるように配置される。
【0035】
以上により、本発明の実施例による導光シート1が各種電子機器に組み込まれると、光源22から出光した光が入光部1eから導光シート1に入光し、入光した光は導光シート1を伝搬し照光部1dから出光しキートップ11の被照光部11aを照光するので、使用者は暗所でもキートップ11の被照光部11aを容易に認識することができる。また、キートップ11の被照光部11aと導光シート1の照光部1dおよび接点ばね14が、キートップ11を上面から見たときに略同一位置となるように配置されており、また、導光シート1および接点保持シート12は可撓性を有しているので、使用者がキートップ11のいずれかの被照光部11aを押下すると、押下された被照光部11aの下方の導光シート1および接点保持シート12が撓み、押下された被照光部11aの下方に配置された接点ばね14を変形させるので、接点ばね14と基板21に設けられた固定接点21bが接触し、固定接点21aと固定接点21bが導通することにより、使用者がキートップのどの被照光部11aを押下したかが検出できる。
【0036】
次に、図3および図4を参考に、本発明の実施例における、窪み面に突起形状部1cが設けられた凹部1bの形状を説明する。
【0037】
図3に示す凹部1bは、図1に示す直線状の凹部1bではなく、説明のためにサンプル加工した点状の凹部1bを示す顕微鏡写真である。図3は窪み面に突起形状部1cが設けられた点状の凹部1bである。また、図4は、説明のためにサンプル加工した点状の、窪み面に突起形状部がない本発明によらない従来の凹部1fの顕微鏡写真である。
【0038】
図4の、本発明によらない、窪み面に突起形状部がない従来の凹部1fは、導光シート1の表面の球状の窪みであり、窪み面は平滑な面である。
【0039】
これに対し、図3に示す、本発明の実施例における窪み面に突起形状部1cが設けられた凹部1bでは、凹部1bの上端側に不定形の突起形状部1cを有しており、この不定形の突起形状部1cにより凹部1bからの出光量が増加する。
【0040】
以下に、図5および図6を参考に、導光シート1の出光挙動を記載する。
【0041】
図5は本発明の実施例における導光シート1を伝搬する光が凹部1bで反射され出光する挙動を図示した説明図で、図3のB−B断面の導光シート1の断面図に、以降の説明の便宜のために、導光シート1の上面にキートップ11を積層し、導光シート1の下面に接点保持シート12を積層した状態を示す断面図である。
【0042】
図5に示す導光シート1の断面形状では、導光シート1の表面に凹部1bがあり、凹部1bの一方の上端側に突起形状部1cを有している。なお、図5の断面形状は、図3に示す凹部1bのB−B断面線での高さ測定値に基づき作成しており、サンプル加工品の実形状をほぼ反映している。より具体的に説明すると、突起形状部1cの断面形状は、上凸形状と下凸形状とを組み合せたような形状で楕円に近い形状となっている。なお、不定形の突起形状部1cが気泡で中空となっている場合を示している。また、接点保持シート12と導光シート1との間およびキートップ11と導光シート1との間に空気層がある場合を示している。
【0043】
また、図6は本発明によらない、凹部に突起形状部を有さない導光シート31を伝搬する光が凹部1fで反射され出光する挙動を図示した説明図で、以降の説明の便宜のために、導光シート31の上面にキートップ11を積層し、導光シート31の下面に接点保持シート12を積層した状態の断面図を記載している。
【0044】
説明の便宜のため、最初に、図6を参考に、本発明によらない凹部1fに突起形状部がない従来の導光シート31の光の出光挙動を記載する。
【0045】
凹部1fの窪み面に突起形状部がない従来の導光シート31では、導光シート31を伝搬してきた光LLは、凹部1fの窪み面で反射され導光シート31の下面側に進行するが、接点保持シート12または導光シート31の下面により再び反射され導光シート31の上面側に進行し、やがて導光シート31の上面から出光し、キートップ11に入光すると拡散されながら被照光部11aを照光する。
【0046】
このとき、凹部1fの窪み面の曲率は大きいため、凹部1fの窪み面で反射された光LLの進行方向は光LLが伝搬してきた方向と直交する方向より光LLが伝搬してきた方向に近くなり、接点保持シート12により反射された光LLは凹部1fから離れた領域から出光する。また、凹部1fの窪み面で反射された光LLの進行方向は凹部1fの窪み面への入射位置が徐々に変化すると進行方向の角度も徐々に変化するため、凹部1fの窪み面で反射された光LLは凹部1fから離れた領域の広い範囲に凹部1fの形状を反映した形状で出光する。
【0047】
このように、凹部1fの窪み面に突起形状部がない従来の導光シート31では、凹部1fの窪み面で反射した光のみが照光部31dから出光し、かつ凹部1fの形状を反映した形状で出光するため、導光シート31の直上にキートップ11が積層されるような携帯電話等の携帯端末装置に使用すると、凹部1fの形状を反映したムラのある照明となり被照光部11aを全体的に照光することができない。
【0048】
次に、図5を参考に、本発明の実施例による、凹部1bの窪み面に突起形状部1cが設けられた導光シート1の出光挙動を記載する。
【0049】
凹部1bの窪み面に突起形状部1cが設けられた導光シート1では、図5に示すように、導光シート1を伝搬してきた光のうち一部の光L1は、凹部1bに設けられた不定形の突起形状部1cに到達し、一部の光L1は到達した突起形状部1cの中空形状外形部から突起形状部1cに進行し、やがて突起形状部1cから出光し、キートップ11に入光すると拡散されながら被照光部11aを照光する。
【0050】
なお、本発明の実施例による導光シート1では、突起形状部1cは、凹部1bの上端側に設けられているので、突起形状部1cと被照光部11aは近接することとなり、突起形状部1cから直接出光した一部の光L1は被照光部11aを効果的に照明できる。
【0051】
また、導光シート1を伝搬してきた光のうち一部の光L2は、凹部1bに設けられた不定形の突起形状部1cに到達し、一部の光L2は到達した突起形状部1cの中空形状外形部で反射され導光シート1の下面側に進行するが、接点保持シート12または導光シート1の下面により反射され再び導光シート1の上面側に進行し、やがて導光シート1の上面側から出光し、キートップ11に入光すると拡散されながらキートップ11を照光する。このとき、中空の突起形状部1cの外形の曲率は小さいため、突起形状部1cの中空形状外形部で反射された一部の光L2の進行方向は光が伝搬してきた方向と直交する方向に近くなり、接点保持シート12により反射された一部の光L2は凹部1bの周辺から出光する。また、突起形状部1cは不定形であるため、一部の光L2は突起形状部1cの中空形状外形部で不特定の方向に反射されるので、突起形状部1cの中空形状外形部で反射され接点保持シート12または導光シート1の下面により再度反射された一部の光L2は凹部1bの周辺から不定形に出光し、被照光部11aを全体的に照明する。なお、図5に示す一部の光L2は導光シート1の下面で反射された場合を示している。
【0052】
なお、本発明の実施形態による導光シート1では、突起形状部1cを凹部1bに複数設けたので、複数の突起形状部1cから直接出光する一部の光L1と、複数の突起形状部1cで反射されたのち出光する一部の光L2も複数となり、導光シート1からの出光量を向上させることができる。
【0053】
また、導光シート1を伝搬してきた光のうち一部の光L3は、凹部1bの窪み面で反射され導光シート1の下面側に進行するが、接点保持シート12または導光シート1の下面により反射され再び導光シート1の上面側に進行し、やがて導光シート1の上面側から出光し、キートップ11に入光すると拡散されながらキートップ11を照光する。このとき、凹部1bの窪み面の曲率は大きいため、凹部1bの窪み面で反射された一部の光L3の進行方向は光L3が伝搬してきた方向と直交する方向より光L3が伝搬してきた方向に近くなり、接点保持シート12により反射された一部の光L3は凹部1bから離れた領域から出光する。また、凹部1bの窪み面で反射された一部の光L3の進行方向は凹部1bの窪み面への入射位置が変化すると進行方向の角度が徐々に変化するため、凹部1bの窪み面で反射された一部の光L3は凹部1bから離れた領域の拡がった範囲から凹部1bの形状を反映した形状で出光する。
【0054】
凹部1bの窪み面で反射した一部の光L3は凹部1bの形状を反映した形状で出光するが、突起形状部1cの中空形状外形部から突起形状部1cの内部を進行し突起形状部1cから出光した一部の光L1、および、突起形状部1cの中空形状外形部で反射され接点保持シート12により再び反射され導光シート1の上面側から出光する一部の光L2と重畳するため、被照光部11aをより明るく照明する。
【0055】
以上により、本発明の実施例による導光シート1では、導光シート1を伝搬してきた光は、導光シートの表面に設けた複数の凹部1bの窪み面で反射され出光する光に加え、凹部1bに設けられた突起形状部1cを通過する、または突起形状部1cで反射される光も出光するので照光部1dをより明るく照明することができる。
さらに、突起形状部1cで反射された光は凹部1bの周辺から不定形に出光し、照光部1dを全体的に照明するので、導光シート1の凹部1bと被照光部11aが近接している場合でも、被照光部11aを均一に照光することができる。
【0056】
なお、上記の実施例では突起形状部1cを気泡としたが、突起形状部1cが中実の場合でも出光角が変化するのみでの同様の出光挙動となる。また、導光シート1に接点保持シート12が積層された場合の出光挙動を記載したが、接点保持シート12の上面側に白色等の反射シートを配置しても、同様の出光挙動が得られる。また、キートップ11に入光してきた光は拡散光として上面側から出光される為、被照光部11aをより明るく照明することができる。
【0057】
また、複数の凹部1bの形状は直線状としたが、複数の凹部は多数の点の集合としても良く、さらには、編み目形状等の直線等の複合形状でも同様の出光挙動が得られる。
【0058】
なお、本発明の実施例では突起形状部1cを設ける複数の凹部1bを導光シート1の上面に設けた場合を示したが、複数の凹部1bは導光シート1の下面側でも同様の効果が得られ、または、導光シート1の上面および下面の両面に設けても良い。
【0059】
<導光シートの製造方法に係る実施の形態>
【0060】
次に、図7および図8を参考に、本発明の実施の形態に係る導光シートの製造方法を説明する。
【0061】
図7は本発明の実施形態に係る導光シートの製造方法を説明する模式図である。また、図8は本発明によらない従来の導光シートの製造方法を説明する模式図である。
【0062】
説明の便宜のため、最初に、図8を参考に、本発明によらない凹部1fの窪み面に突起形状部がない従来の導光シート31の製造方法を記載する。なお、図8の(a)は凹部加工前の導光シート31を示し、図8の(b)は導光シート31をレーザー光51で加工する工程を示し、図8の(c)は導光シート31に凹部1fが加工された状態を示す。
【0063】
特許文献1に開示されている従来の導光シート31では、図8の(a)に示す導光シート31の表面に、図8の(b)に示すようにレーザー光51を照射することにより導光シート31の素材が昇華し飛散し、図8の(c)に示すように、導光シート31の表面に凹部1fが加工される。このとき、導光シート31の表面にはレーザー光51のエネルギーが与えられ、形成された凹部1fの窪み部はその全域において平滑な鏡面となり、導光シート31の内部を伝播する光が導光シート31の内部から凹部1fの窪み部内面に当たったときに、その内面において光が乱反射されず、内面の角度に応じて導光シート31内で入射角と反射角の原理にしたがって反射される。
【0064】
次に、図7を参考に、本発明の実施形態に係る凹部1bの窪み面に突起形状部1cを有する導光シート1の製造方法を記載する。
【0065】
図7の(a)は加工前の導光シート1を示す。なお、本発明の実施形態では導光シート1はポリカーボネート樹脂で形成する。
【0066】
次に、図7の(b)に示すように、導光シート1の凹部を設ける側の表面にハロゲン化合物溶液2を塗布し、のち、ハロゲン化合物溶液2を乾燥させ、図7の(c)に示すように、ハロゲン化合物膜3を導光シート1の表面に形成させる。なお、本実施例ではハロゲン化合物として、入手が容易で安定なNaClを使用する。
【0067】
次に、図7の(d)に示すように、ハロゲン化合物膜3が形成された導光シート31の表面にレーザー光51を照射する。このとき、加工する凹部1bの形状に応じて、例えば点状の凹部を加工する場合はレーザー光51を1点のみに照射し、線状の凹部や網目状の凹部を加工する場合はレーザー光51と導光シート1を相対的に移動させながらレーザー光51を連続的に照射する。
【0068】
上記のレーザー光51の照射により導光シート31の素材が昇華し飛散することにより、図7の(e)に示すように、導光シート1の表面には凹部1bが加工されるとともに、不定形の突起形状部1cが加工される。こののち、導光シート1の表面に形成された加工されたハロゲン化合物膜3を洗浄等により除去することにより、図7の(f)に示す、凹部1bと不定形の突起形状部1cを有する導光シート1が得られる。また、ハロゲン化合物膜3が十分に希薄で光学的に影響が無い場合には、除去する必要はない。
【0069】
本発明の実施形態に係る導光シートの製造方法は上記の通りであるが、ハロゲン化合物膜3が形成された導光シート31の表面にレーザー光51を照射することにより、凹部1bと不定形の突起形状部1cが同時に形成される理由は下記の様に推測される。
【0070】
図7の(d)に示すレーザー加工では、レーザー光51の熱により導光シート1の素材であるポリカーボネート樹脂が固体から気体へと昇華し飛散することにより凹部1bが形成される。ところで、一般的にハロゲン化合物は難燃性を示す物質として知られており、例えばハロゲン化合物としてNaClを使用した場合には、NaClに含まれる塩素がレーザー加工時のポリカーボネート樹脂の昇華を阻害する要因となると考えられる。
【0071】
従って、導光シート1がレーザー光51で加熱されると、ハロゲン化合物膜3と接触している導光シート1の表面のポリカーボネート樹脂は昇華を阻害され液体となるが、導光シート1の表面より深部のポリカーボネート樹脂は昇華し気体となり飛散しようとする。
しかし、導光シート1の表面のポリカーボネート樹脂が飛散せず液体として残留しているため、昇華して気体となった導光シート1の表面より深部のポリカーボネート樹脂は、飛散せず液体として残留している表面のポリカーボネート樹脂に飛散を阻害され気泡となり、これが冷却されて固化し、不定形の突起形状部1cが形成されるものと推測される。
【0072】
なお、凹部1bの幅の中央部分では昇華し飛散しようとする気体のポリカーボネート樹脂の圧力が強いため、表面の液体のポリカーボネート樹脂を貫通して飛散するので気泡はできにくいが、凹部1bの幅の縁部となる部分では、飛散しようとする気体のポリカーボネート樹脂の圧力が弱いうえに、凹部1bの幅の中央部分の液体のポリカーボネート樹脂が凹部1bの幅の縁部となる部分に集まり厚みが増加するため、昇華して気体となった深部のポリカーボネート樹脂は表面の液体のポリカーボネート樹脂を貫通して飛散することが困難で、気泡ができやすくなると推測される。
【0073】
上記は、レーザー加工時のポリカーボネート樹脂の挙動とハロゲン加工物の特性から推測した気泡の突起形状部1cの形成過程であるが、加工された凹部1bを詳細に観察すると、不定形の突起形状部1cには不明瞭ではあるがニュートンリング状の模様が見えることから突起形状部が薄い膜であると考えられ、本発明の実施形態に係る導光シートの製造方法で形成された突起形状部1cは気泡であると推測できる。
【0074】
なお、本発明よる導光シートの製造方法では、導光シート1の本体部1aはポリカーボネート樹脂とした。これにより、ハロゲン化合物を塗布した透明度が高いポリカーボネートにレーザー光を照射することにより凹部1bの溝内に複数の不定形の突起形状部1cが形成されるので、ロスなく光を伝播し、照光部からの出光量を増加させ、被照光部の視認性を向上させることができる導光シート1を容易に製造することができる。
【0075】
さらに、ポリカーボネート樹脂からなる導光シート1では、実験等により、本発明よる導光シートの製造方法でレーザー光による凹部1bの加工と同時に凹部1bに不定形の突起形状部1cが作成できることが確認されおり、凹部1bの窪み面に突起形状部1cを容易に、かつ確実に形成できる。
【0076】
以上により、本発明よる導光シートの製造方法では、導光シートの本体部の表面に入手が容易で安定なハロゲン化合物であるNaClを塗布し、レーザー光を照射することで表面に凹部を形成するとともに、凹部に不定形の突起形状部を形成することができる。
これにより、導光シートの表面にあらかじめハロゲン化合物の膜を生成しておくだけで、凹部と、凹部の不定形の突起形状部を同時に作成できるので、突起形状部作成のために工程を追加する必要がなく、さらに凹部の溝内にずれることなく突起形状部を確実に作成できる。
【0077】
なお、塗布するハロゲン化合物はNaClに限定されるものではなく、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン族元素の種々の化合物が使用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 導光シート
1a 本体部
1b 凹部
1c 突起形状部
1d 照光部
1e 入光部
1f 凹部
2 ハロゲン化合物溶液
3 ハロゲン化合物膜
11 キートップ
11a 被照光部
12 接点保持シート
13 スペーサシート
21 基板
21a 固定接点
21b 固定接点
22 光源
31 導光シート
31d 照光部
51 レーザー光
102 シャーシ
120 メンブレン積層体
121 基板シート
122 押圧シート
122a 裏面
123 スペーサ層
123a 有機樹脂層
123b 接着剤層
124 キートップ
125 下側接点
126 上側接点
127 反射領域
128 凹部
129 発光ダイオード装置
L1 光
L2 光
L3 光
LL 光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部光源からの光を伝搬する本体部と、前記本体部の少なくとも一つの表面に複数の凹部を設け、伝搬された光が前記複数の凹部で反射されることにより前記本体部から光を出光する導光シートにおいて、前記複数の凹部の少なくとも一つには突起形状部が設けられていることを特徴とする導光シート。
【請求項2】
前記突起形状部は、前記凹部の上端側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の導光シート。
【請求項3】
前記突起形状部は、前記凹部に複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の導光シート。
【請求項4】
前記複数の突起形状部は、不定形であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の導光シート。
【請求項5】
前記本体部は、主としてポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の導光シート。
【請求項6】
本体部の表面にハロゲン化合物を塗布し、レーザー光を照射することで前記表面に凹部を形成するとともに、前記凹部に不定形の突起形状部を形成することを特徴とする、導光シートの製造方法。
【請求項7】
前記本体部はポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする、請求項6に記載の導光シートの製造方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化合物はNaClであることを特徴とする、請求項6または7に記載の導光シートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−164576(P2012−164576A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25277(P2011−25277)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】