説明

導光シート及びこれを用いた可動接点体

【課題】主に各種電子機器の操作に使用される導光シート及びこれを用いた可動接点体に関し、安価で多様な照光が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】基材1に形成された凸状の複数の発光部12Aや12B等に、蛍光顔料と染色顔料を分散することによって、複数の発光部12Aや12Bそのものを、発光素子10の発光色とは異なる様々な色で発光させることができるため、少ない印刷回数で製作が行え、安価で多様な照光が可能な導光シート13、及びこれを用いた可動接点体16を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に使用される導光シート及びこれを用いた可動接点体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器、特に携帯電話や電子カメラ等の携帯端末機器においては、周囲が暗い場合でも、押釦や表示シート等の識別や操作が容易に行えるように、発光ダイオードやEL素子等を発光させて操作部の照光を行うものが増えており、これらの機器に用いられる可動接点体やスイッチにも、安価で多様な照光を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の導光シートや可動接点体について、図3を用いて説明する。
【0004】
なお、この図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図3は従来のスイッチの断面図であり、同図において、1はフィルム状で光透過性の基材で、この基材1下面の所定箇所には、凸状の複数の発光部2Aや2B等が設けられている。
【0006】
そして、この発光部2Aや2B上方の基材1上面には、硫化亜鉛等を分散した複数の蛍光体層3Aや3B等が形成されて、導光シート4が構成されている。
【0007】
また、5はフィルム状のベースシート、6は略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点で、ベースシート5外周の所定箇所が、接着剤(図示せず)によって導光シート4下面に貼付されると共に、複数の可動接点6が発光部2Aや2B下方のベースシート5下面に貼付されて、可動接点体7が構成されている。
【0008】
さらに、8は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、上面には略円形状の中央固定接点9Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点9Bから形成された、複数の固定接点9が設けられている。
【0009】
そして、この配線基板8上面に可動接点体7が、各々の可動接点6の外周が外側固定接点9B上に載置され、可動接点6の下面中央が中央固定接点9Aと所定の間隙を空けて、対向するように貼付されている。
【0010】
また、10は発光ダイオード等の発光素子で、複数の発光素子10が導光シート4側方の配線基板8上面に実装され、例えば、基材1の右端面に発光面を向けて配置されている。
【0011】
さらに、11はフィルム状で光透過性の表示シートで、下面に印刷等によって形成された塗装部11Aの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部11Bが形成され、この表示部11Bが導光シート4の発光部2Aや2B上方に配置されて、スイッチが構成されている。
【0012】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話等の電子機器の操作面に装着されると共に、複数の中央固定接点9Aや外側固定接点9B、複数の発光素子10が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0013】
以上の構成において、表示シート11の所定の表示部11Bを下方へ押圧操作すると、この下方の導光シート4やベースシート5が撓んで可動接点6の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点6がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点6の下面中央が中央固定接点9Aに接触することによって、中央固定接点9Aと外側固定接点9Bが、可動接点6を介して電気的に接続された状態となる。
【0014】
また、表示シート11への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点6が上方へ弾性反転し、可動接点6の下面中央が中央固定接点9Aから離れて、中央固定接点9Aと外側固定接点9Bが電気的に切断された状態となる。
【0015】
そして、このような固定接点9の電気的接離に応じて、機器の様々な機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子10に電源が供給されると、複数の発光素子10が発光し、この光が例えば右端面から導光シート4内に入射して、基材1内を反射しながら左方へ進む。
【0016】
さらに、この光が基材1下面の複数の発光部2Aや2B等で拡散され反射して、これらの上方の表示シート11の表示部11Bを下方から照光し、複数の表示部11Bが照光されることによって、周囲が暗い場合でも、これらの表示部11Bの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能なようになっている。
【0017】
また、この時、発光部2Aや2B上方に形成された蛍光体層3Aや3Bが、例えば発光素子10の発光色が紫外光で、蛍光体層3Aは銀が添加された硫化亜鉛を、蛍光体層3Bは銅が添加された硫化亜鉛を分散したものであった場合、蛍光体層3Aは赤色の、蛍光体層3Bは緑色の発光色となる。
【0018】
つまり、発光部2Aや2Bで拡散され反射した発光素子10の光が、この上方に形成された蛍光体層3Aや3Bを通過することで、赤色や緑色の光に変換され、これらの各々異なった色によって、上方の表示部11Bの照光が行われるようになっている。
【0019】
すなわち、表示シート11を押圧操作することによって導光シート4上面を押圧し、可動接点6を弾性反転させて固定接点9の電気的接離を行うと共に、端面から導光シート4内に導入し、発光部2Aや2Bで拡散反射した発光素子10の光を、蛍光体層3Aや3Bによって異なった色で発光させ、表示シート11の複数の表示部11Bを、様々な色で照光するように構成されているものであった。
【0020】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2008−305655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上記従来の可動接点体7やスイッチにおいては、発光部2Aや2B、蛍光体層3Aや3B等をスクリーン印刷によって形成する場合、先ず、基材1下面に複数の発光部2Aや2B等を印刷形成した後、これに加えて、基材1上面に複数の蛍光体層3Aや3B等を、各々別々に印刷形成する必要があるため、照光する発光色が増えるほど印刷回数も増えて、製作に手間がかかり、高価なものになってしまうという課題があった。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、印刷回数を減らし、安価で多様な照光が可能な導光シート及びこれを用いた可動接点体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0025】
本発明の請求項1に記載の発明は、基材に形成された凸状の複数の発光部に、蛍光顔料と染色顔料を分散して導光シートを構成したものであり、発光部に分散された蛍光顔料と染色顔料によって、複数の発光部そのものを、発光素子の発光色とは異なる様々な色で発光させることができるため、少ない印刷回数で製作が行え、安価で多様な照光が可能な導光シートを得ることができるという作用を有する。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の導光シートの発光部下面に、略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点を装着して可動接点体を構成したものであり、安価で多様な照光が可能なスイッチを実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、安価で多様な照光が可能な導光シート及びこれを用いた可動接点体を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図
【図2】同スイッチの断面図
【図3】従来のスイッチの断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0030】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0031】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0032】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図であり、同図において、1はフィルム状でポリウレタンやシリコーン、スチレン、ポリカーボネート等の可撓性を有する光透過性の基材で、この基材1下面の所定箇所には、凸状でポリエステルやエポキシ等の合成樹脂内に、蛍光顔料と染色顔料が分散された複数の発光部12Aや12B等が、印刷等によってドット状に形成されて、導光シート13が構成されている。
【0033】
なお、この発光部12Aや12B内に分散された蛍光顔料と染色顔料は、例えば発光部12Aには青色を吸収して赤色に発光する、硫化亜鉛にフッ化サマリウムを添加した蛍光顔料や、酸化イッテルビウムにユーロピウムを添加した蛍光顔料と、赤色の補色の緑色を吸収する、アントラキノンやアゾ系の赤色の染色顔料が分散されている。
【0034】
また、発光部12Bには青色を吸収して緑色に発光する、硫化亜鉛にフッ化イッテルビウムを添加した蛍光顔料や、マグネシウムアルミネートにセリウムとテルビウムを添加した蛍光顔料と、緑色の補色の赤色を吸収する、フタロシアニングリーン等の緑色の染色顔料が分散されている。
【0035】
そして、5はフィルム状でポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等の可撓性を有するベースシート、6は略ドーム状で銅合金や鋼等の導電金属薄板製の可動接点で、ベースシート5外周の所定箇所が、アクリルやシリコーン等の接着剤14によって、導光シート13下面に貼付されると共に、複数の可動接点6が発光部12Aや12B下方のベースシート5下面に貼付されている。
【0036】
さらに、15はポリエチレンテレフタレート等のフィルム状のセパレータで、このセパレータ15がベースシート5下面全面を覆うように貼付され、保管・搬送時に可動接点6下面に塵埃等が付着しないようにして、可動接点体16が構成されている。
【0037】
また、図2はこのような可動接点体16を用いたスイッチの断面図であり、同図において、8はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状、または紙フェノールやガラス入りエポキシ等の板状の配線基板で、上下面には銅等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、上面には銅やカーボン等によって、略円形状の中央固定接点9Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点9Bから形成された、複数の固定接点9が設けられている。
【0038】
そして、この配線基板8上面にセパレータ15を剥離した可動接点体16が、各々の可動接点6の外周が外側固定接点9B上に載置され、可動接点6の下面中央が中央固定接点9Aと所定の間隙を空けて、対向するように貼付されている。
【0039】
また、10は発光ダイオード等の発光素子で、白色や青色の発光色の複数の発光素子10が、導光シート13側方の配線基板8上面に実装され、例えば、基材1の右端面に発光面を向けて配置されている。
【0040】
さらに、11はフィルム状で光透過性の表示シートで、下面に印刷等によって形成された塗装部11Aの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部11Bが形成され、この表示部11Bが導光シート13の発光部12Aや12B上方に配置されて、スイッチが構成されている。
【0041】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話等の電子機器の操作面に装着されると共に、複数の中央固定接点9Aや外側固定接点9B、複数の発光素子10が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0042】
以上の構成において、表示シート11の所定の表示部11Bを下方へ押圧操作すると、この下方の導光シート13やベースシート5が撓んで可動接点6の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点6がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点6の下面中央が中央固定接点9Aに接触することによって、中央固定接点9Aと外側固定接点9Bが、可動接点6を介して電気的に接続された状態となる。
【0043】
また、表示シート11への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点6が上方へ弾性反転し、可動接点6の下面中央が中央固定接点9Aから離れて、中央固定接点9Aと外側固定接点9Bが電気的に切断された状態となる。
【0044】
そして、このような固定接点9の電気的接離に応じて、機器の様々な機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子10に電源が供給されると、複数の発光素子10が白色や青色に発光し、この光が例えば右端面から導光シート13内に入射して、基材1内を反射しながら左方へ進む。
【0045】
さらに、この光が基材1下面の複数の発光部12Aや12B等で拡散され反射して、これらの上方の表示シート11の表示部11Bを下方から照光し、複数の表示部11Bが照光されることによって、周囲が暗い場合でも、これらの表示部11Bの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能なようになっている。
【0046】
そして、この時、上述したように発光部12Aには、青色を吸収して赤色に発光する蛍光顔料と、赤色の補色の緑色を吸収する赤色の染色顔料が分散され、蛍光顔料によって赤色の成分が増し、染色顔料によって赤以外の色が減少するようになっているため、発光部12Aは混じり気のない鮮明な赤色に発光する。
【0047】
また、発光部12Bには青色を吸収して緑色に発光する蛍光顔料と、緑色の補色の赤色を吸収する緑色の染色顔料が分散され、蛍光顔料によって緑色の成分が増し、染色顔料によって緑以外の色が減少するようになっているため、発光部12Bは混じり気のない鮮明な緑色に発光し、これらの各々異なった発光色によって表示部11Bの照光が行われる。
【0048】
つまり、表示シート11を押圧操作することによって導光シート13上面を押圧し、可動接点6を弾性反転させて固定接点9の電気的接離を行うと共に、端面から導光シート13内に導入した発光素子10の白色や青色の光を、発光部12Aや12B内の蛍光顔料と染色顔料によって異なった色で発光させて、表示シート11の複数の表示部11Bを様々な色で照光するように構成されている。
【0049】
すなわち、所定の色を吸収し所定の色に発光する蛍光顔料と、所定色の補色を吸収する染色顔料を分散して、発光部12Aや12Bを形成することによって、複数の発光部12Aや12Bそのものを、発光素子10の白色や青色の発光色とは異なる、鮮明な赤色や緑色等で発光させことができるため、複数の表示部11Bの多様な照光が行えるようになっている。
【0050】
また、このように発光部12Aや12B自体が、鮮明な赤色や緑色に発光するように形成されているため、発光部12Aや12B上方の基材1上面に、発光素子10の光を異なる色に変換するための層等を設ける必要はなく、これらをスクリーン印刷によって形成する場合にも、少ない印刷回数で製作が行えるように構成されている。
【0051】
つまり、表示部11Bを照光する発光色数だけの印刷回数、例えば上記のように赤色と緑色の2色に照光する場合には、基材1下面に赤色に発光する発光部12Aを印刷形成した後、緑色に発光する発光部12Bを印刷形成して、2回だけの印刷回数で製作を行うことができるため、短い時間で安価に導光シート13を製作することができるようになっている。
【0052】
このように本実施の形態によれば、基材1に形成された凸状の複数の発光部12Aや12B等に、蛍光顔料と染色顔料を分散することによって、複数の発光部12Aや12Bそのものを、発光素子10の発光色とは異なる様々な色で発光させることができるため、少ない印刷回数で製作が行え、安価で多様な照光が可能な導光シート13、及びこれを用いた可動接点体16を得ることができるものである。
【0053】
なお、以上の説明では、下面に複数の可動接点6が貼付されたベースシート5を、導光シート13の下面に貼付した構成について説明したが、ベースシート5をなくし、導光シート13の下面に複数の可動接点6を直接貼付した構成とすれば、全体の構成部品数を減らし、可動接点体16やスイッチをより簡易で安価に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明による導光シート及びこれを用いた可動接点体は、安価で多様な照光が可能なものが得られ、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 基材
5 ベースシート
6 可動接点
8 配線基板
9 固定接点
9A 中央固定接点
9B 外側固定接点
10 発光素子
11 表示シート
11A 塗装部
11B 表示部
12A、12B 発光部
13 導光シート
14 接着剤
15 セパレータ
16 可動接点体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状で光透過性の基材と、この基材に形成された凸状の複数の発光部からなり、上記発光部に蛍光顔料と染色顔料を分散した導光シート。
【請求項2】
請求項1記載の導光シートの発光部下面に、略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点を装着した可動接点体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−171091(P2011−171091A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33115(P2010−33115)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】