説明

導波管スロットアレーアンテナ装置

【課題】 導波管スロットアレーアンテナと反射鏡との位置関係を精度良く、簡易な方法で設定することのできる導波管スロットアレーアンテナ装置を得る。
【解決手段】 第1の導波管スロットアレーアンテナ及び第2の導波管スロットアレーアンテナを載置する第1の保持機構と、前記第1の導波管スロットアレーアンテナ及び前記第2の導波管スロットアレーアンテナに対向配置された反射鏡と、前記反射鏡を保持する第2の保持機構とを備え、前記第1の保持機構と前記第2の保持機構とが一体化された支持機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ波帯やミリ波帯などの帯域の無線通信システムで使用される導波管スロットアレーアンテナ装置に関し、特に反射鏡を備えた導波管スロットアレーアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロ波帯及びミリ波帯などの無線通信システムにおいては、損失が少ないという特徴に鑑みて、導波管スロットアレーアンテナ装置が広く用いられている。
【0003】
特許文献1に記載の筒状鏡面付きアレイアンテナは、長方形の平面上に複数の放射素子が配列されたスロットアレイアンテナと、
このスロットアレイアンテナの上記放射素子の放射方向に対向して配置された主反射鏡を備え、
この主反射鏡の主反射面が筒状鏡面により構成された筒状鏡面付きスロットアレイアンテナにおいて、
上記スロットアレイアンテナの上記長方形の中心を原点とし、その長方形の長手方向にX軸を定め、その長方形の平面に直交し原点を通り上記主反射鏡に近づく方向にZ軸を定め、原点を通りX軸及びZ軸に直交する方向にY軸を定めると、
上記筒状鏡面は、その筒軸がX軸と並行であってXZ平面に関して対称なZ軸方向に凸の曲面形状であり、
上記スロットアレイアンテナの放射素子は、その励振振幅がYZ平面に関して対称でありその励振位相がYZ平面に関して反対称になるように配置され、
さらに、上記スロットアレイアンテナの放射素子は、上記主反射鏡により形成される放射ビームが、YZ平面上でZ軸に関して対称であり、XZ平面上でZ軸に対して非対称であるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−62210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反射鏡付きアンテナにおいては、一次放射器からの一次ビームを反射鏡にて反射させることによって、所望の主ビームを形成している。そのため、一次放射器と反射鏡との位置関係は正確に設定する必要があり、一次放射器と反射鏡との位置関係のわずかなずれが、主ビームの誤差に繋がる。
しかしながら、特許文献1に記載の筒状鏡面付きアレイアンテナにおいては、一次放射器である導波管スロットアレーと反射鏡である筒状鏡面との設置手段に係わる技術が説明されていない。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、導波管スロットアレーアンテナと反射鏡との位置関係を精度良く、簡易な方法で設定することのできる導波管スロットアレーアンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る導波管スロットアレーアンテナ装置は、第1の導波管の放射面に放射素子として設けられた複数のスロットを有した第1の導波管スロットアレーアンテナと、
第2の導波管の放射面に放射素子として設けられた複数のスロットを有した、第2の導波管スロットアレーアンテナと、
前記第1の導波管スロットアレーアンテナ及び前記第2の導波管スロットアレーアンテナに入出力信号を給電する給電部と、
前記第1の導波管スロットアレーアンテナ及び前記第2の導波管スロットアレーアンテナを載置する第1の保持機構と、
前記第1の導波管スロットアレーアンテナ及び前記第2の導波管スロットアレーアンテナに対向配置された反射鏡と、
前記反射鏡を保持する第2の保持機構とを備え、
前記第1の保持機構と前記第2の保持機構とが一体化された支持機構を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、導波管スロットアレーアンテナを載置する第1の保持機構と、反射鏡を保持する第2の保持機構とが一体化されているため、導波管スロットアレーアンテナと反射鏡との位置関係が精度良く簡単に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100の放射方向から見た正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100の第2のスロットアレーアンテナ1bの終端部5b側から見た側面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100のリブ材43とベース部材45との接続状態を示す正面図及び側面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100において、図1のA部で示される第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続方法を示す正面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100の第2の導波管スロットアレーアンテナ1bとリブ材43との設置状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100の反射鏡6とリブ材43との設置状態を示す側面図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナ200を示す斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナにおいて、図7のA部で示される第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続方法を示す側面図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナにおいて、図8で説明した第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部の拡大図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナのリブ材43とベース部材45との接続状態を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナの第2の導波管スロットアレーアンテナ1bとリブ材43との設置状態を示す断面図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナの傾斜角がαのとき、及び0度のときの放射パターンを示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナの第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続構造を示す側面図である。
【図14】この発明の実施の形態3に係る導波管スロットアレーアンテナの第2の導波管スロットアレーアンテナ1bが設置されるリブ材43の高さの可変機構を示す断面図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係る導波管スロットアレーアンテナ200Aを示す斜視図である。
【図16】この発明の実施の形態4に係る導波管スロットアレーアンテナ200Aにおいて、図7の場合とは逆方向にビームの傾斜角を有する単一の導波管スロットアレーアンテナを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1の導波管スロットアレーアンテナ装置について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100の放射方向から見た正面図である。
図1において、導波管スロットアレーアンテナ装置100は、XY平面内において第1の導波管2aの放射面に放射素子として設けられた複数のスロット4を有した、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと、
XY平面内において第2の導波管2bの方斜面に放射素子として設けられた複数のスロット4を有した、第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと、
第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bに入出力信号を給電する給電部3とを備えた導波管スロットアレーアンテナ100Aと、
第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bに対向して配置され、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bから放射される電磁波を反射する反射鏡6と、反射鏡6と第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2のスロットアレーアンテナ1bを保持する支持機構としてのリブ材43と、給電部3とリブ材43を固定するベース部材45とを備えている。
【0011】
図2は、この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100の第2のスロットアレーアンテナ1bの終端部5b側から見た側面図である。図2において、左側が放射方向となる。
【0012】
図3(a)は、この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100のリブ材43とベース部材45との接続状態を示す正面図である。
図3(b)は、図3(a)において、E1−E2面から見た側面図である。
図3において、リブ材43は保持部材46にてベース部材45に固定される。
【0013】
図4は、この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100において、図1のA部で示される第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続方法を示す正面図である。
図4において、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3とは、各々連結手段42にて接続される。例えば、連結手段42はガセットを用いる。
【0014】
図5は、この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置100の第2の導波管スロットアレーアンテナ1bとリブ材43との設置状態を示す断面図である。
図3(b)におけるリブ材43のF部に、第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの一端側が載置される。
なお、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aとリブ材43との設置状態も同様である。
【0015】
導波管スロットアレーアンテナ装置100の構成について説明する。
図1において、ベース部材45の中央部に給電部3が固定される。給電部3からベース部材45の両端部に向かって、給電部3から少なくとも1組の各々同じ長さで離れた箇所に、各々同じ高さのリブ材43が固定される。
第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bは、各々給電部3とリブ材43の上に、架橋したように載置される。
【0016】
第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続方法について、図4に従って説明する。
図4(a)において、ベース部材45の上に固定された給電部3の段差部に設けられた給電部3の一方の出力部C2に第1の導波管スロットアレーアンテナ1aの入力部C1を対向させて、給電部3の段差部の上に第1の導波管スロットアレーアンテナ1aの入力部C1側を載置する。
同様に、給電部3の段差部に設けられた給電部3の他方の出力部D2に第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの入力部D1を対向させて、給電部3の段差部の上に第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの入力部D1側を載置する。
【0017】
図4(b)において、給電部3の出力部C2と第1の導波管スロットアレーアンテナ1aの入力部C1を接触させる。同様に、給電部3の出力部D2と第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの入力部D1を接触させる。
【0018】
図4(c)において、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3とは、ガセットに代表される連結手段42にて各々固定される。
【0019】
第2のスロットアレーアンテナ1bのリブ材43への設置方法について図5に従って説明する。図5(a)は第2のスロットアレーアンテナ1bをリブ材43へ設置する前、図5(b)は第2のスロットアレーアンテナ1bをリブ材43へ設置した後の断面図である。
図5において、リブ材43の当たり面50を基準に第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの側面52を添装し、リブ材43の当たり面51を基準に第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの底面53を添装して、第2のスロットアレーアンテナ1bをリブ材43に設置する。
なお、第1のスロットアレーアンテナ1aのリブ材43への設置方法も同様である。
【0020】
反射鏡6のリブ材43への設置方法について図6に従って説明する。図6(a)は反射鏡6をリブ材43へ設置する前、図6(b)は反射鏡6をリブ材43へ設置した後の側面図である。
図6において、当たり面47は放物線形状、双曲線形状、または修正曲線を施した形状を有している。リブ材43の当たり面47を基準に反射鏡6が当たり面47の形状となるように反射鏡6を添装して、反射鏡6をリブ材43に設置する。
【0021】
上述のように、第1のスロットアレーアンテナ1a及び第2のスロットアレーアンテナ1bと反射鏡6は共通のリブ材43に設けられた当たり面50、51及び47を基準に設置されるため、精度良く、簡単に第1のスロットアレーアンテナ1a及び第2のスロットアレーアンテナ1bと反射鏡6との相対位置関係を決定することができる。
【0022】
導波管スロットアレーアンテナ装置100の動作について説明する。
図1、図2において、導波管スロットアレーアンテナ装置100は、第1のスロットアレーアンテナ1a及び第2のスロットアレーアンテナ1bに対向配置された反射鏡6を備えている。
この場合、第1のスロットアレーアンテナ1a及び第2のスロットアレーアンテナ1bは、反射鏡6の1次放射器として機能する。
【0023】
反射鏡6は、第1の導波管2a及び第2の導波管2bの軸方向(X軸方向)に平行な曲面を有しており、第1の導波管2a及び第2の導波管2bの断面方向(Y−Z軸方向)に関して、放物線形状、双曲線形状、または修正曲面を施した形状を有している。
これにより、所望の放射パターンを高利得に得ることができる。たとえば、YZ面にて、コセカント2乗曲線の放射指向特性を形成することが可能である。
なお、導波管スロットアレーアンテナ装置100が送信アンテナである場合を例にとって説明したが、受信アンテナの場合にも同等の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0024】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2の導波管スロットアレーアンテナ装置について説明する。
この発明の実施の形態1においては、反射鏡6の1次放射器として機能する第1のスロットアレーアンテナ1a及び第2のスロットアレーアンテナ1bは直線状に配置した形態であったが、第1のスロットアレーアンテナ1a及び第2のスロットアレーアンテナ1bは傾斜した形態でも良い。
図7は、この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナ200を示す斜視図である。
図7において、導波管スロットアレーアンテナ200は、XY平面内において第1の導波管2aの放射面に放射素子として設けられた複数のスロット4を有した、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと、
XY平面内において第2の導波管2bの方斜面に放射素子として設けられた複数のスロット4を有した、第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと、
第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bに入出力信号を給電する給電部3とを備えている。
【0025】
第1の導波管2aの軸と第2の導波管2bの軸をX軸方向としたとき、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aの第1のビームB1と第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの第2のビームB2は、導波管スロットアレーアンテナの反射特性を改善するため、それぞれXZ平面内でZ軸方向から傾斜角αで傾斜している。
このため、第1のビームB1の方向と第2のビームB2の方向とが一致するように、第1の導波管2a及び第2の導波管2bの各軸を、それぞれXZ平面内でX軸方向から傾斜角αで傾斜して給電部3に対して対称に載置する角度調整機構としてリブ材43を備え、給電部3及びリブ材43はベース部材45に固定されている。
【0026】
図8は、この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナにおいて、図7のA部で示される第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続方法を示す側面図である。
図8において、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3とは、各々連結手段42にて接続される。例えば、連結手段42はガセットを用いる。
【0027】
図9は、この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナにおいて、図8で説明した第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部の拡大図である。
【0028】
図10(a)は、この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナのリブ材43とベース部材45との接続状態を示す図である。
図10(b)は、図10(a)において、E1−E2面から見た側面図である。
図10において、リブ材43は保持部材46にてベース部材45に固定される。
【0029】
図11は、この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナの第2の導波管スロットアレーアンテナ1bとリブ材43との設置状態を示す断面図である。
図10(b)におけるリブ材43のF部に、第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの一端側が載置される。
【0030】
導波管スロットアレーアンテナ200の構成について説明する。
図7において、ベース部材45の中央部に給電部3が固定される。給電部3からベース部材45の両端部に向かって、給電部3から各々同じ長さで離れた箇所に、各々同じ高さのリブ材43が固定される。
第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bは、各々給電部3とリブ材43の上に、架橋したように載置される。
なお、給電部3とベース部材45との固定部から給電部3の段差部までの高さ、リブ部材43の高さ、及び給電部3とリブ部材43との距離から、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの傾斜角αが設定される。
【0031】
第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続方法について、図8に従って説明する。
図8(a)において、ベース部材45の上に固定された給電部3の段差部に設けられた給電部3の一方の出力部C2に第1の導波管スロットアレーアンテナ1aの入力部C1を対向させて、給電部3の段差部の上に第1の導波管スロットアレーアンテナ1aの入力部C1側を載置する。
同様に、給電部3の段差部に設けられた給電部3の他方の出力部D2に第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの入力部D1を対向させて、給電部3の段差部の上に第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの入力部D1側を載置する。
【0032】
図8(b)において、給電部3の出力部C2と第1の導波管スロットアレーアンテナ1aの入力部C1を接触させる。同様に、給電部3の出力部D2と第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの入力部D1を接触させる。
【0033】
図8(c)において、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3とは、ガセットに代表される連結手段42にて各々固定される。
【0034】
第1の導波管スロットアレーアンテナ1aの入力部C1と第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの入力部D1は、図9に示すように傾斜角αの扇型となるように導波管が形成されている。
このため、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部J及びKは密接することとなり、前記接続部における入力信号の漏れが発生しない効果がある。
【0035】
導波管スロットアレーアンテナ200の動作について説明する。
図7において、第1の導波管2a及び第2の導波管2bの各一端、すなわち第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの結合部には、共通の給電部3が設けられ、第1の導波管2a及び第2の導波管2bの各他端にはそれぞれ第1の終端部5a及び第2の終端部5bが設けられている。
導波管スロットアレーアンテナ200は、給電部3からの入力信号が各スロット4から放射されることにより、アンテナとして動作する。
【0036】
このとき、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bは、逆V字形状となるように給電部3に対して対称に、互いに傾斜されている。
第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bから放射されるそれぞれ第1のビームB1及び第2のビームB2(以下、単に「ビーム」という)(実線矢印参照)は、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの各傾斜角αにより、第1の導波管2a及び第2の導波管2bの軸の垂直方向(破線参照)に対して、それぞれ傾斜角α度を有している。
【0037】
図7の構成により、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bから放射されるビームB1及びB2の方向が一致し、正面方向にて高利得が得られる。
図12(a)は図7の導波管スロットアレーアンテナ200による放射パターンを示す説明図であり、スロット4の素子数を212個とし、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bの傾斜角αを0.9度とした場合の放射パターンを示している。
【0038】
図7の構成において、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bを直線状、すなわち傾斜角αを0度に配置し、スロット4の素子数を212個として、中央の給電部3から給電したとすると、放射パターンは、図12(b)のようになる。
【0039】
図12(b)においては、導波管スロットアレーアンテナ200の正面方向、すなわちθ=0度の方向で利得が大きく劣化している。この利得劣化の原因は、導波管スロットアレーアンテナ200のビームB1及びB2の方向が互いに異なることから、正面方向で交差したことにあるものと考えられる。
【0040】
図12(a)及び図12(b)から明らかなように、単に2つの導波管スロットアレーアンテナを直性状に配置したのみでは、正面方向で利得劣化が生じることになる。
【0041】
したがって、図7のような傾斜した配置の構成が、正面方向の利得改善を実現するために必要なことが分かる。
なお、上記効果は、中心周波数fcにおいて得られるが、比帯域0.3%程度であれば、利得の低下は0.2dB程度であり、同様の効果が得られる。
また、導波管スロットアレーアンテナ200が送信アンテナである場合を例にとって説明したが、受信アンテナの場合にも同等の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0042】
実施の形態3.
図13は、この発明の実施の形態3に係る導波管スロットアレーアンテナの第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続構造を示す側面図である。図9と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図13は図9において、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部J及びK部に隙間が生じた場合である。
図13において、gは第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部J及びKの隙間である。
【0043】
導波管スロットアレーアンテナ200において、傾斜角αの微調整が必要な場合は、リブ材43を微調整して実施する。
微調整の第1の方法として、図7において、ベース部材45のX軸方向でリブ材43の配置位置を可変させる。
第2の方法として、図11において、高さHの異なる複数個のリブ材43を用意しておき、リブ材43の高さHが異なる高さのリブ材へ変更する。
第3の方法として、図14において、リブ材43に高さの可変機構である例えば高さ調整板44を備え付けておき、高さHの変更を実施する。手順としては、高さ調整板44とリブ材43を固定するねじ47を緩める。高さ調整板44に設けられたスライド用の溝48に沿って、高さ調整板44をZ軸方向に可動させる。高さHが所望の高さとしたのち、ねじ47を締め付けて高さ調整板44とリブ材43を固定する。
これら、第1の方法乃至第3の方法を単独で実施すること、若しくは組合せて実施することにより傾斜角αの微調整を実施する。
【0044】
傾斜角αが大きくなる方向へ微調整した場合、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部J及びKは、放射面側に隙間gが発生する。
逆に、傾斜角αが小さくなる方向へ微調整した場合、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部J及びKは、放射面に対向する側に隙間gが発生する。
しかしながら、この隙間gは、間隙が1/4波長以下であれば、隙間gが共振しないため、入力信号が隙間から漏れ出ることはない。
【0045】
調整が完了したのち、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3とは、ガセットに代表される連結手段42にて固定される。
【0046】
このように構成された導波管スロットアレーアンテナにおいては、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部J及びKは隙間gが1/4波長に到達するまでは、傾斜角αの調整が可能である効果がある。
【0047】
なお、隙間gは傾斜角αの調整が完了したあとに、導電性接着剤や金属製テープにて隙間gを埋めても良い。
【0048】
実施の形態4.
図9は、この発明の実施の形態4に係る導波管スロットアレーアンテナ200Aを示す斜視図である。図1と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
この発明の実施の形態2では、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bを逆V字形状に結合し、それぞれのビームB1及びB2の放射角度が、−θ方向にα度だけ傾斜(チルト)する構成としたが、図16のように、+θ方向にα度ほど傾斜するような導波管スロットアレーアンテナ1を用い、図15のように、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bをV字形状に結合して、導波管スロットアレーアンテナ200Aを構成してもよい。
【0050】
図15に示すように、第1の導波管スロットアレーアンテナ1a及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1bをV字に傾斜させることにより、この発明の実施の形態1と同様に、正面方向にて高利得が得られる。なお、傾斜角αは、ビームB1及びB2の傾斜角と同じである。
【0051】
この発明の実施の形態3と同様に、この発明の実施の形態4に係る導波管スロットアレーアンテナ200Aも、傾斜角の微調整が可能である。
【0052】
傾斜角αが大きくなる方向へ微調整した場合、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部は、放射面に対向する側に隙間gが発生する。
逆に、傾斜角αが小さくなる方向へ微調整した場合、第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと第2の導波管スロットアレーアンテナ1bと給電部3との接続部は、放射面側に隙間gが発生する。
しかしながら、この隙間gは、間隙が1/4波長以下であれば、隙間gが共振しないため、入力信号が隙間から漏れ出ることはない。
【0053】
以上のように、導波管スロットアレーアンテナ200、200Aは、第1の導波管2a上に放射素子として設けられた複数のスロット4を有し、第1の導波管2aの軸の垂直方向に対して傾斜した第1のビームB1を形成する第1の導波管スロットアレーアンテナ1aと、第2の導波管2b上に放射素子として設けられた複数のスロット4を有し、第2の導波管2bの軸の垂直方向に対して傾斜した第2のビームB2を形成する第2の導波管スロットアレーアンテナ2bと、入出力信号を2分配して第1及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1a、1bに給電する給電部3とを備えており、第1及び第2の導波管スロットアレーアンテナ1a、1bの傾斜角αは、第1のビームB1の方向と第2のビームB2の方向とが一致するように設定されている。
【0054】
このように、2つの導波管スロットアレーアンテナ1a、1bを互いに傾斜配置して、各導波管2a、2bの軸の垂直方向に対して傾斜したビームB1、B2の放射方向を一致させることにより、2つの導波管スロットアレーアンテナ1a、1bの正面方向の利得低下を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0055】
1a、1b 導波管スロットアレーアンテナ
2a、2b 導波管
3 給電部
4 スロット
6 反射鏡
43 リブ材
47、50、51 当たり面
100 導波管スロットアレーアンテナ装置
100A、200、200A 導波管スロットアレーアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導波管の放射面に放射素子として設けられた複数のスロットを有した第1の導波管スロットアレーアンテナと、
第2の導波管の放射面に放射素子として設けられた複数のスロットを有した、第2の導波管スロットアレーアンテナと、
前記第1の導波管スロットアレーアンテナ及び前記第2の導波管スロットアレーアンテナに入出力信号を給電する給電部と、
前記第1の導波管スロットアレーアンテナ及び前記第2の導波管スロットアレーアンテナを載置する第1の保持機構と、
前記第1の導波管スロットアレーアンテナ及び前記第2の導波管スロットアレーアンテナに対向配置された反射鏡と、
前記反射鏡を保持する第2の保持機構とを備え、
前記第1の保持機構と前記第2の保持機構とが一体化された支持機構を備えた導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項2】
支持機構は、第1の導波管スロットアレーアンテナ及び第2の導波管スロットアレーアンテナ並びに反射鏡を添装する当たり面が設けられた、請求項1に記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−97150(P2011−97150A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246461(P2009−246461)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】