説明

導眠作用性化粧料

【課題】美肌における化粧料の効果を改善し、より確かなものにするために、従来の皮膚関連酵素を阻害するという不確かな作用経路をたどる配合物質に頼らず、睡眠を改善することで美肌効果を上げ得る化粧料を提供することにある。
【解決手段】 ウコギ科植物ヒゲ人参エタノール抽出物の導眠作用を賦与した化粧料の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウコギ科植物ヒゲ人参のエタノール抽出物を含有する導眠作用性化粧料に関し、さらに詳しくは導眠作用性がもたらす肌の美白効果及びまたは防しわ効果を有する導眠作用性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコギ科植物ヒゲ人参はウコギ科植物人参の主根から鬚生する(ヒゲ状に派生する)ヒゲ根の乾燥物で、一般に専ら用いられる主根の神経興奮、強壮、強心、消化吸収機能改善、抗利尿などの仂きに対し、ヒゲ人参は内用でその発汗作用によりばて防止に多く用いられている。化粧料におけるウコギ科人参の利用は少なくないが、それは主根の水抽出物で、配合目的は皮膚細胞の賦活や皮膚血流の促進とされるものの、皮膚のバリアー膜を透って吸収され、細胞を賦活する、あるいは皮膚循環をなめらかにするなどのことの実証はないか、またはきわめて乏しい。
【0003】
化粧料における人参主根の水抽出物の標榜効果は、美肌即ち美白及びまたは防しわであるが、それは化粧料に配合される成分のチロシナーゼ抑制能やコラゲナーゼ抑制能による類推において、人参主根水抽出物の効果は、他の一般的薬用植物と比べ、決して高いといえない(表1)。因みにチロシナーゼ(Tyrosinase)は、皮膚のメラニン生成系においてTyrosineからDOPA、DOPAからDOPAguinoneへの反応を促す酵素であり、その抑制はメラニン生成を減じて色白をもたらすとされる。またコラゲナーゼ(Collagenase)はCollagenを分解する酵素であり、その抑制は、弾力繊維をつくるコラーゲン分解を阻んで、皮膚の防しわにつながるとされる。
【0004】
【表1】

【0005】
このように化粧料に用いられる人参主根の水抽出物に対し、ヒゲ人参のエタノール抽出物が用いられてきた経緯はなく、まして導眠性による外用例は末聞である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
女性の美肌維持は、生活環境の変化から漸進的に難しさを増している。従来の美肌は皮膚にのみ着目し対応してきたのに、美肌に最も関連するホルモンの老化が、生活環境の影響で加速する傾向にあるからである。思春期到来が早まればホルモンの老化も早まるが、思春期到来は、栄養の向上、明時間の延長(夜ふかしの恒常化)、雄性を意識する機会増などにより加速され、さらに日常での対人接触、増は老化指標の発現を早める。(〜「老化とホルモン」東大出版会、P34〜35)
【0007】
このような肌をとりまく環境変化の中で、いかにして肌の健やかさを維持し、またはそのための化粧料を呈示できるのか、どうすれば経皮吸収、作用機序が定かでない成分のチロシナーゼ抑制やコラゲナーゼ抑制のmvitroの数値のみを頼りの、効果が不確かな化粧料の効果をより確かなものとなし得るのか、先述の美肌を損なう生活環境要因がさらに加重される傾向のなか、このことの解決はますます急をしいられている。
【0008】
皮膚にダメージを与える紫外線であるが、生存のための浴光が不可欠の生物には不可避である。人の場合、明時間における浴光のダメージは、暗時間での回復が約束されている。暗時にのみ分泌される松果体ホルモン「メラトニン」によってである。因みにメラトニンとは「メラニンを凝集させる(色を白くする)」という意味で、これは夜の暗さだけでなく、暗時、良質の睡眠によって、ノーマルな分泌が保障される。このことにより本発明者は薬用植物のチラシナーゼ抑制能やコラゲナーゼ抑制能によらない、導眠性作用物質を含有せしめた化粧料組成物を提供することにより、暗時の睡眠と、それに伴って肌を保障しうることを見出し、本発明をなすに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち請求項1にかかわる発明は、ウコギ科植物ヒゲ人参のエタノール抽出物を含有する導眠作用性化粧料に関する。請求項2にかかわる発明は、導眠作用性が肌の美白効果をもたらすものである請求項1の導眠作用性化粧料に関する。請求項3にかかわる発明は、導眠作用性が、肌の防しわ効果をもたらすものである請求項1の導眠作用性化粧料に関する。
【発明の効果】
【0010】
ウコギ科植物ヒゲ人参のエタノール抽出物を含有する導眠作用性化粧料組成物は、その使用により導眠効果をもたらし、化粧料用後の睡眠において、睡眠時間の延長、睡眠の深化を得さしめる。この継続使用によって、肌はメラニン拡散傾向を減じ、漸次色白に転じるようになる。それに伴って肌の緊張性、肌神経の過敏さも緩和し、防しわの効果も上るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明について詳細に説明する。本発明にかかわる化粧料組成物は、必須成分としてウコギ科植物ヒゲ人参のエタノール抽出物を含有する。
ウコギ科植物ヒゲ人参は、ウコギ科植物人参の主根から派生したヒゲ状の根の乾燥物であるが、一般に内用、外用で用いられる主根とは作用、効果を異にする。
【0012】
人参(Panax ginseng C.A,Meyer)はセリ科のニンジンとの混合を避けるために、日本薬局方においてはオタネニンジンと称されるが、野生種は稀少であり、栽培種は収穫に多年(5〜6年)を要し、しかも強心、強壮にちからがあることから万能薬のように崇められ(学名のPanaxはギリシア語で万能薬の意味)、化粧料への配合も、「高級化粧品」を印象づけるためという意味合いが少なくない。しかし実際にはこの人参主根にもいくつかの副作用があり、皮膚との関連でみても、化膿性疾患における増悪、腎障害におけるむくみ、湿疹における部分的アレルギーなどが要注意とされている。ヒゲ人参は人参主根から派生したものでありながら、人参主根の湿潤性に対し、からだの水気をよくする点が最も大きい相違点である。水はけをよくする、即ち水分代謝をよくすることは、皮膚にとっても、最も利すべきポイントであることはいうまでもない。
【0013】
本発明におけるウコギ科植物ヒゲ人参抽出物を得るための溶媒としてはエタノールを主とする。エタノールは無水、含水の何れによるもよいが、好ましくは20〜50%エタノール水を適とする。抽出法はとくに限定されないが、例えば浸漬または加熱還流などの方法がある。浸漬の場合はヒゲ人参乾燥細砕物に、3〜10倍量の、好ましくは5〜6倍量の溶媒を加え、7〜10日間浸漬する。加熱還流の場合は、ヒゲ人参乾燥細砕物に3〜20倍量の、好ましくは4〜10倍量の溶媒を加え、40〜80度、好ましくは70〜77度で2〜7時間、好ましくは3〜5時間還流抽出する。
【0014】
抽出後ろ過した抽出液は公知の方法により、抽出に用いた溶媒の0.1〜1.5倍量に濃縮するか、あるいはまた常法により乾燥粉末化して用いる。例えばこの乾燥粉末化したヒゲ人参抽出物の導眠性化粧料中への配合量は、0.05〜5.0重量%、好ましくは0.3〜2.5重量%である。
【0015】
本発明にかかわる導眠性化粧料は、通常の化粧品、医薬部外品の何れの剤型をもとりうるが、最も好ましいのはナイトクリーム、ナイトローション、リップスティック、浴用剤などである。
【0016】
本発明にかかわる導眠性化粧料には、必須成分であるヒゲ人参抽出物の他に、必要に応じ、通常の外用剤に用いられる成分を共配合することができる。例示すれば次の通りであるが各配合量には特に限定はなく、剤型等により任意適宜に調整できる。
例示〜油脂類、ワックス類、炭化水素、脂肪酸類、アルコール類、多化アルコール類、エルテル類、アミン・アミド・金属石鹸類、ガム質及び水溶性高分子化合物、界面活性剤、酸化防止剤、ビタミン、香料、色素、アミノ酸、防腐殺菌剤、有機薬品、無機薬品、金属封鎖剤など。
【0017】
以下、本発明の導眠性化粧料を実施例に基づき詳しく説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例1】
ヒゲ人参抽出物の調製
ヒゲ人参根部乾燥物(水分量10%以下)を細砕し、この75gに50%エタノール溶液1000mlを加え、2時間75度で加熱還流抽出した。この操作を2回繰り返し、ろ過したろ液を1/10に濃縮し、濃縮物を凍結乾燥し、約26gの褐色粉末を得た。
【実施例2】
【0018】
導眠性化粧料の調製、スティック状クリーム
(表2)の処方でスティック状クリームをつくる(口紅状スティック)
(表2)処方
ヘキサデシルアルコール 25.0(重量%〜以下同)
ラノリン 4.0
ミツロウ 5.0
オゾケライト 4.0
キヤンデリラロウ 7.0
カルナウバロウ 2.0
保存剤 適量
香料 微量
実施例1の抽出物 3.5
ヒマシ油 残量
合計 100.0
【実施例3】
【0019】
導眠性化粧料の調製、浴剤、
(表3)の処方でバスソルトをつくる。
(表3)処方
硫酸ナトリウム 45.0(重量%〜以下同じ)
ホウ砂 2.0
カルボキシトチルセルロースナトリウム 1.0
クチナシ青 適量
香料 微量
実施例1の抽出物 3.5
硫酸ナトリウム 残量
合計 100.0
【0020】
〔試験例1〕導眠性化粧料の導眠性テスト
無作為に抽出した40歳代女性、50歳代女性、60歳代女性各7人計21人に実施例3の浴剤を用いて就寝前入浴せしめ、就寝前に実施例2のスティック状クリームを口唇に塗布せしめ、この4週間の継続を経て、睡眠状態の変化を(表4)の基準で比較する。結果を(表7)に示す。
【0021】
〔試験例2〕導眠性化粧料の美白性テスト
試験例1の被験者21人について、この試験例1被験期間前後の肌の色調を(表5)の基準で比較する。結果を(表8)に示す。
【0022】
〔試験例3〕導眠性化粧料の防しわ性テスト
試験例1の被験者21人について、この試験例1被験期間前後の肌のしわの状態を(表6)の基準で比較する。結果を(表4)に示す。
【0023】
〔基準1〕
(表4)睡眠状態について
5.寝付きが悪く、少し眠れてもすぐ目が覚め、その後は目が冴え眠れない。
4.寝付きが悪い。あと眠れるが、朝まで二度以上目覚める。
3.寝付きはよいが、あと朝まで二度以上目覚める。朝はすっきりしない。
2.寝付きはよいが、朝までに必ず一度は目覚める。快眠という感じはない。
1.寝付きはよく、明け方まで目は覚めない。朝もすっきりしている。
評価〜この基準で二段階以上の改善を「有効」、一段階改善を「やや有効」、その他を「無効」とする。
【0024】
〔基準2〕
(表5)肌の色調について
5.顔全体がすすけた感じで、メイキャップ化粧品ののりも悪い。
4.額や頬骨のあたり、日の当たりやすいところが黒い感じがする。
3.午前中はそうでもないが、午後疲れてくると肌はうっすらと黒ずむ。
2.午後から夜にかけ下瞼の内用が少し黒ずむ。
1.肌色は一日を通して気にならない。
評価〜基準1に同じ
【0025】
〔基準3〕
(表6)肌のしわの状態
5.顔全体に貼りが無く、額の横じわ、眉間の縦じわ、目尻の小じわ、下瞼のしわなどが はっきり見える。
4.額、眉間のしわは特に気になるほどでないが、目尻や下瞼のしわが気になる。
3.下瞼のしわは内角の表情しわ、それと目尻の小じわだけが気になる。
2.顔の他の部分のしわは表情を動かせた時だけだが、目尻の小じわが気になる。
1.顔全体に貼りがあり、表情しわなども気になるほどでない。
評価〜基準1と同じ
【0026】
結果〜(表7)導眠性評価(何人中何人と記す)

【0027】
結果〜(表8)肌色調の評価

【0028】
結果〜(表9)肌のしわの状態の評価

【0029】
表7〜9に示された結果から、実施例2,3の本発明のウコギ科植物ヒゲ人参抽出物含有導眠作用性化粧料を用いた場合には、導眠性とそれに伴う美白、防しわ効果がもたらせることがわかる。
【0030】
以下、本発明にかかわる導眠作用性化粧料の処方剤を示す。
処方例1,クリーム
実施例1の抽出物 3.5(重量%以下同じ)
ヒアルロン酸 0.01
グリセリルモノステアレート 3.0
P.O.E(20)ソルビタンモノステアレート 3.0
セタノール 2.0
スクアラン 3.0
2−エチルヘキサン酸グリセリル 10.0
グリセリン 7.0
パラベン 0.1
精製水 残量
合計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウコギ科植物ヒゲ人参のエタノール抽出物を含有する導眠作用性化粧料
【請求項2】
導眠作用性が肌の美白効果をもたらすものである請求項1の導眠作用性化粧料
【請求項3】
導眠作用性が肌の防しわ効果をもたらすものである請求項1の導眠作用性化粧料

【公開番号】特開2007−182416(P2007−182416A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27656(P2006−27656)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(506040320)
【Fターム(参考)】