説明

導電ワイヤの支持碍子

【課題】2本の導電ワイヤを所定間隔を隔てて固定せずに支持可能で、導電ワイヤの取り付けが簡単かつ抜け難い碍子を提供する。
【解決手段】電気柵の支柱に取り付けて使用する導電ワイヤの支持碍子を、一端に支柱に係合するフック部32が形成され、他端にねじ部が形成された軸部31を備える金具本体と、ねじ部に羅合するナット34とから構成される取付金具30と、軸部31を挿通する貫通孔16を備えた碍子本体11と、碍子本体11の上部及び下部にそれぞれ設けられ、貫通孔16に平行な方向に延伸する第1の係止アーム13と、第1の係止アーム13を挟み、第1の係止アーム13に対してそれぞれねじれの位置の関係になるように、碍子本体11の上部及び下部にそれぞれ2本ずつ突設された第2の係止アーム14,15とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電ワイヤの支持碍子に関し、特に、農場において猿、鳥類等の侵入を防止する電気柵に張設して通電する導電ワイヤを支持する碍子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牧場などで牛や馬等の牧畜用の動物を放牧する場所の境界には、動物が放牧地から逃げないように囲い込む用途で電気柵が設置されている。電気柵は、牛や馬等の動物がこの電気柵に触れると、電気柵用電源装置(パワーユニット)から出力された高電圧による電気ショックを受け、以後電気柵に近づかなくなることで、動物の逃走を防止するものである。この電気柵の一般的な構成について、図1を用いて説明する。
【0003】
図1に示すように電気柵6は、所定の距離を隔てて地面1に埋め込まれた絶縁材料製の複数本の支柱(ポスト)4に、地面1から所定の間隔で複数本の導電ワイヤ2が掛け渡されて構成されている。この導電ワイヤ2には、電源5に接続されたパワーユニット3の正極(+)からの高電圧(数千ボルト)が印加されるようになっている。パワーユニット3から出力された高電圧の電気は、導電ワイヤ2に触れた動物の体を抜け、地面1を通ってパワーユニット3の負極(−)に戻るようになっている。
【0004】
一方、電気柵は、前述のように動物を逃がさないようにする用途に使用される他、動物を近づけないようにする用途にも使用される。例えば、農家の畑で栽培する作物が猿や猪などの動物によって荒らされないようにするために、畑の周囲を電気柵で囲ったりすることが行われている。
【0005】
また近年、果樹園等の農家において、野鳥によって果樹が食い荒らされる被害が報告されている。鳥は飛来して電気柵の上方空間より侵入するので、電気柵では鳥の侵入を防止できない。また、鳥が飛来して電気柵の1本の導電ワイヤの上に止まっても、鳥は片方の極にしか触れないので、鳥に電気は流れず電気ショックを与える事はできない。更に、猿は、電気柵に飛びつくことができ、地上に触れることなく電気柵の導電ワイヤの上に乗ることができるので、猿に電気は流れず電気ショックを与える事はできない。よって、果樹園農家においては、果樹園の木の上方に導電ケーブルを網状にして交互に極性を異ならせて張り巡らし、鳥や猿の侵入を防止することが行われている。
【0006】
ところで、導電ワイヤを支柱間に張設する場合には、導電ワイヤには高い電圧が印加されるので、支柱に絶縁材料で構成された碍子を取り付け、この碍子に導電ワイヤを支持させる必要がある。ここで、これまで実用化されている代表的な導電ワイヤの支持用碍子の構造と、その碍子への導電ワイヤの取り付け方法について説明する。
【0007】
図2は、電気柵に張り巡らされる導電ワイヤ2を支柱4に取り付けるための、従来の碍子50の構成を示すものである。碍子50は、支柱4への取付具51と、この取付具51に設けられたワイヤ支持具52とから構成されている。ワイヤ支持具52には、基台53と、この基台53に突設された2つの支持突起54,55がある。支持突起54,55は所定の間隔を隔てて平行の並んでおり、支持突起54には上側に開口するU字溝56があり、支持突起55には下側に開口するU字溝57がある。U字溝56、57は支持突起54,55の側面側から見通せるようになっており、支持突起54,55の間のスペースに導電ワイヤ2を縦方向に入れ、U字溝56、57の開口側にひねると、導電ワイヤ2が2つの支持突起54,55に、外れ難い状態で支持されるようになっている。
【0008】
図3(a)は電気柵の支柱4に導電ワイヤを支持するための、従来の別の例の碍子40の構成を示すものであり、特許文献1に示されるものである。30は取付金具、31はねじが設けられている軸部、32は電気柵の支柱4に係止するフック部、33は合成樹脂等の絶縁体からなるシリンダ状の碍子本体、34は支柱4と碍子本体33を締め付けるために軸部31にねじ込まれる蝶ナット、35は軸部31を挿通する貫通孔である。また、碍子本体33には、導電ワイヤ巻き付け部40a,40b及びスリット部40cが設けられており、そこに導電ワイヤを巻き付けて支持するようになっている。
【0009】
図3(b)は図3(a)に示した碍子40に導電ワイヤ2を巻き付けて支持した状態を示すものである。この例では、導電ワイヤ2は巻き付け部40bから巻き始め、スリット部40cを通して巻き付け部40aを半周させ、更にスリット部40cを通して巻き付け部40bから外部に引き出すようになっている。図3(c)は図3(b)の方法と別の方法で、(a)に示した碍子40に導電ワイヤ2を巻き付けて支持した状態を示すものである。この例では、導電ワイヤ2は巻き付け部40bから巻き始め、巻き付け部40bを半周以上巻いた後にスリット部40cを通して巻き付け部40aを半周させ、巻き付け部40aから外部に引き出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−305307号公報(図6〜図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図2に示される従来の碍子50では、導電ワイヤ2の緩みや、導電ワイヤ2が猿のような手が使える動物によって引っ張られる等、導電ワイヤ2に通常でない特別な外力が加わること等により、導電ワイヤ2が碍子40から外れ易いという問題点があった。また、図3に示される従来の碍子40では、導電ワイヤ2が碍子40に巻き付けられて固定されているので、導電ワイヤ2の張設に手間がかかると共に、張設後の動物の導電ワイヤ2への接触方向によっては、2つの碍子間ではワイヤが伸びないために導電ワイヤ2が断線する、碍子40がもげる、又は支柱4が曲がるという問題点があった。
【0012】
更に、鳥や猿の侵入を防止するための電気柵の場合は、プラスの電圧を印加する導電ワイヤとアースに接続する導電ワイヤとを所定の間隔で並べて支柱間に張設することが行われていたが、図2、図3に示した碍子50,40では導電ワイヤ2が1本しか張設できないという問題点があった。導電ワイヤ2を2本、近接させて並列に張設する理由は、猿が極性の異なる2本の導電ワイヤ2を握らないと感電せず、鳥も2本の導電ワイヤ2に跨って止まらないと感電しないからである。
【0013】
そこで本発明の目的は、電気柵の支柱に碍子を取り付けた後、この碍子に2本の導電ワイヤを所定間隔を隔てて支持させることができ、また、導電ワイヤが碍子によって固定されない状態で支持され、更に、碍子への導電ワイヤの取り付けが簡単でかつ取り付けられた導電ワイヤが碍子から抜け難い構造を有する導電ワイヤの支持碍子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成する本発明の導電ワイヤの支持碍子は、電気柵の支柱に取り付けて使用する導電ワイヤの支持碍子であって、平板状の基台と、この基台上に設けられ、基台の上面に平行な方向に延伸する第1の係止アームと、第1の係止アームを挟み、第1の係止アームに対してそれぞれねじれの位置の関係になるように、基台の上に突設された2本の第2の係止アームと、この基台を支柱に取り付ける取付具とから構成したその基本形態を有することを特徴としている。
【0015】
そして、本発明の導電ワイヤの支持碍子の第1の形態は、この基本形態の碍子を、一方は正立させ、他方は倒立させた状態で、基台の裏面同士を結合し、結合した基台に第1の係止アームの延伸方向に取付具挿通用の貫通孔を開けた碍子本体と、一端に支柱に係合するフック部を有し、他端にねじ部を有する軸部を備える金具本体とねじ部に羅合するナットとを含む取付金具として構成した取付具とを備えて構成することができる。
【0016】
また、本発明の導電ワイヤの支持碍子の第2の形態は、この基本形態の碍子を、第1の係止アームが同軸上に位置するように並列に並べ、基台の上面が1つの面を形成するように基台同士を結合して碍子本体とし、碍子本体の裏面側に支柱に係合する取付具を設けて構成することができる。
なお、前述の第1、第2の形態において、2本の第2の係止アームの自由端を連結する補助アームを設けることも可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、碍子に所定間隔を隔てて2本の導電ワイヤを挿通して支持することができるので、この2本の導電ワイヤに極性の異なる電圧を印加しておけば、2本の導電ワイヤに同時に触れた鳥、猿などの害獣を感電させて撃退することができる。また、本発明の碍子は、導電ワイヤを容易に挿通させることができると共に、一度挿通された導電ワイヤが碍子から抜け難いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の電気柵の構成を示す斜視図である。
【図2】電気柵の支柱に導電ワイヤを支持するための、従来の碍子の一例の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)は電気柵の支柱に導電ワイヤを支持するための、従来の碍子の別の例の構成を示す組み立て斜視図、(b)は(a)の碍子に導電ワイヤを巻き付けて支持した状態を示す正面図、(c)は(b)の方法と別の方法で(a)の碍子に導電ワイヤを巻き付けて支持した状態を示す正面図である。
【図4】(a)は本発明の碍子の基本形態の構成と導電ワイヤのこの基本形態の碍子への挿入方法を説明する斜視図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)の平面図、(d)は(a)に示す碍子の基本形態に導電ワイヤを支持させた状態を示す斜視図、(e)は(d)の側面図、(f)は(d)の平面図である。
【図5】(a)は図4に示した本発明に係る碍子の基本形態を、一方の上下を逆にして接合して構成される第1の形態の構成を示す組立視図、(b)は図4に示した本発明に係る碍子の基本形態を前後を逆にして接合して構成される第2の形態の構成を示す組立視図である。
【図6】(a)は本発明に係る碍子の第1の形態の第1の実施例の構成を示す斜視図、(b)は本発明に係る碍子の第1の形態の第2の実施例の構成を示す斜視図である。
【図7】(a)は本発明に係る碍子の第1の形態の第3の実施例の構成を示す組立斜視図、(b)は(a)の碍子を組み立てた状態の平面図である。
【図8】(a)は図7(a)、(b)に示した碍子に2本の導電ワイヤを挿通して支持させた状態を示す斜視図、(b)は(a)に示した碍子を用いた電気柵の構成を示す斜視図である。
【図9】(a)は本発明に係る碍子の第1の形態の第4の実施例の構成を示す組立斜視図、(b)は(a)の碍子を組み立てた状態の平面図、(c)は(a)、(b)に示した碍子の押さえ片の変形例を示す平面図である。
【図10】(a)は図9(a)に示した第1の碍子の正面図、(b)は第1の碍子の平面図、(c)は図9(c)に示した第2の碍子の背面図、(d)は図10(a)、(b)に示した碍子の本体に図9(c)に示した第2の碍子を取り付けた後の一部断面を含む側面図である。
【図11】(a)は支柱にネットをクランパを用いて固定する直前の様子を示す組立斜視図、(b)はクランパを用いてネットが支柱に固定されている状態を示す斜視図である。
【図12】図11(a)、(b)に示したクランパの胴体部分を、本発明に係る第2の形態の碍子の取付部とした碍子の構成を示す斜視図である。
【図13】(a)は図4(d)に示した碍子の基本形態の変形例を示す斜視図、(b)は図6(b)に示した本発明に係る碍子の第1の形態の第2の実施例の変形例の構成を示す斜視図、(c)は図9(c)に示した碍子の押さえ片の別の変形例を示す平面図、(d)は図12に示した本発明に係る第2の形態の碍子の取付部とした碍子の変形例の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を用いて本発明の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、図1〜3で説明した従来の電気柵及び碍子と同じ構成部材には同じ符号を付して説明する。また、形状は異なっても同じ部位に使用される同じ機能の構成部材には、同じ符号を付して説明する。
【0020】
図4(a)、(b)、(c)は本発明の碍子10の基本形態の構成を示すものであり、図4(a)が碍子10の斜視図、図4(b)が碍子10の側面図、(c)が碍子10の平面図である。また、図4(a)に碍子10への導電ワイヤ2の挿入方法を示してある。基本形態の碍子10には、平板状のベース板11があり、このベース板11の上に第1の係止アーム13と2本の第2の係止アーム14,15がある。第1の係止アーム13は、ベース板11の端部に突設された支持壁12に支持され、ベース板11に平行に延伸されている。一方、第2の係止アーム14,15は、第1の係止アーム13を挟んで対向する位置にベース板11に突設されており、第1の係止アーム13と第2の係止アーム14,15の間には所定の空隙がある。言い換えれば、第1の係止アーム13と第2の係止アーム14,15は、それぞれねじれの位置の関係にベース板11の上に配置されている。
【0021】
ベース板11、支持壁12、第1の係止アーム13、及び第2の係止アーム14,15で囲まれる空間に、ワイヤ2を挿入する場合は、図4(a)に示すようにワイヤ2を矩形に折り曲げ、折り曲げ部を第1の係止アーム13と第2の係止アーム14,15の間の空隙を通過させた後に、両側から引っ張る。ベース板11、支持壁12、第1の係止アーム13、及び第2の係止アーム14,15で囲まれる空間にワイヤ2が挿入された状態を図4(d)、(e)、(f)に示す。この状態では、図4(e)に示すように、ワイヤ2がどの方向に移動しようとしても、ベース板11、支持壁12、第1の係止アーム13、及び第2の係止アーム14,15に遮られるので、一旦碍子10に挿入されたワイヤ2は、碍子10から外れない。
【0022】
本発明では、ベース板11、支持壁12、第1の係止アーム13、及び第2の係止アーム14,15を絶縁部材から構成して基本形態の碍子10とし、碍子10のベース板11を何らかの取付具を用いて電気柵の支柱に固定する。この基本形態の碍子10では、ベース板11、支持壁12、第1の係止アーム13、及び第2の係止アーム14,15で囲まれる空間に導電ワイヤ2を挿通して保持することができる。導電ワイヤ2としては、ナイロン等の合成樹脂製の撚り線に、導電性の金属線を編みこんだものが使用される。なお、支持壁12の先端部を湾曲させてその先端部に第1の係止アーム13を一体的に形成することもでき、支持壁12を無くして第1の係止アーム13の基部が直接ベース板11に斜めに接続するようにしても良い。
【0023】
本発明では、図4で説明した基本形態の碍子10を2個結合させて2本の導電ワイヤ2を平行に保持することができる2線保持碍子20を構成する。碍子10を2個結合させて2本の導電ワイヤ2を平行に保持するためには、2通りの碍子10の結合方法が考えられるので、以下に2通りの結合方法で構成した第1と第2の形態の2線保持碍子20について説明する。
【0024】
図5(a)は本発明の第1の形態の2線保持碍子20の構成を説明するものである。第1の形態の2線保持碍子20は、図4に示した基本形態の2個の碍子10を、一方はそのまま(正立状態)とし、他方は上下を逆にし(倒立状態)、ベース板11の裏面同士を接合して構成する。この例では、第1の係止アーム13の先端部が同じ方向を向いた状態でベース板11の裏面同士を接合しているが、第1の係止アーム13の先端部を逆方向を向けた状態でベース板11の裏面同士を接合しても良い。第1の形態の2線保持碍子20では、ベース板11に平行な方向に何らかの取付具(ヒートンや洋灯吊り)を取り付けることができる。
【0025】
図5(b)は本発明の第2の形態の2線保持碍子20の構成を説明するものである。第2の形態の2線保持碍子20は、図4に示した基本形態の2個の碍子10を、一方はそのままとし、他方は前後を逆にし、同じ平面上でベース板11の背面同士を接合して構成する。この例では、第1の係止アーム13の先端部が逆方向を向いた状態でベース板11の端面同士を接合しているが、第1の係止アーム13の先端部を対向させた状態でベース板11の裏面同士を接合することもできる。しかし、第1の係止アーム13の先端部を対向させた状態でベース板11の裏面同士を接合させると、導電ワイヤ2の碍子20への挿入時に導電ワイヤ2同士が近づき、接触する可能性があるので、第1の係止アーム13の先端部は逆方向を向けた状態でベース板11の端面同士を接合する方が良い。第2の形態の2線保持碍子20では、ベース板11に垂直な方向に何らかの取付具(木ねじやステープル、或いはボルト)を取り付けることができる。
【0026】
図6(a)は、本発明に係る第1の形態の第1の実施例の碍子21の構成を示すものである。第1の実施例の碍子21では、ベース板11を薄く形成し、碍子21を絶縁性を有する合成樹脂で一体的に成型している。第2の係止アーム14,15は後から取り付けても良い。そして、ベース板11の中央部には、第1の係止アーム13に平行な貫通孔16を設けている。貫通孔16が設けられたベース板11の部位はこの実施例では肉厚になっている。また、この実施例では、第2の係止アーム14,15が円柱状をしており、支持壁12の支柱への取り付け側には湾曲部17が形成されている。貫通孔16には図3(a)で説明した軸部31とフック部32とを有する取付金具30が挿通され、貫通孔16から突出した軸部31に蝶ナット34が取り付けられる。
【0027】
図6(b)は本発明に係る第1の形態の第2の実施例の碍子22の構成を示すものである。第2の実施例の碍子22が第1の実施例の碍子21と異なる点は、ベース板11の構成のみである。第1の実施例ではベース板11が一枚板であったが、第2の実施例では、ベース板11がスリット18を隔てて上下2枚に分割されている。ベース板11にスリット18を設ける理由は、ベース板11、支持壁12、第1の係止アーム13、及び第2の係止アーム14,15で囲まれる空間には高電圧が印加される2本の導体ワイヤ2が挿入されるので、このスリット18により2本の導体ワイヤ2の沿面距離を確保するためである。
【0028】
図7(a)は本発明に係る碍子の第1の形態の第3の実施例の碍子23構成を示すものである。第3の実施例では、碍子23を第1の碍子41と第2の碍子42の2つに分割して構成し、第1の碍子41にベース板11の大部分11Aと第1の係止アーム13を配置し、第2の碍子42にベース板11の一部11Bと第2の係止アーム14,15を配置している。また、第3の実施例では、第1、第2の実施例における支持壁12の部分をシリンダ状のシリンダ部43とし、このシリンダ部43の底面12Aに第1の係止アーム13を突設している。
【0029】
シリンダ部43の自由端側には支柱に係合させるための切欠46が設けられている。そして、第1の係止アーム13の外側の表面は、シリンダ部43の外周面と面一になっており、円弧状に湾曲している。ベース板11Aには第2の実施例同様にスリット18Aがあり、ベース板11Aの中央部にはガイド孔44が設けられている。一方、第2の碍子42には、第1の碍子41にあるガイド孔44に嵌合するスリーブ47と、第2の碍子42を第1の碍子41に結合した時にベース板11Aと一体となってベース板11となるベース板11Bがあり、ベース板11Bの上に第2の係止アーム14,15が突設されている。ベース板11Bにはスリット18Bがあり、スリーブ47には前述の取付金具を挿通するための貫通孔16がある。
【0030】
図7(b)は、図7(a)に示した碍子23を組み立てた状態を平面視したものである。第3の実施例の碍子23の構成は、シリンダ部43の構成を除けば図6(b)で説明した第2の実施例の碍子22と同じである。第3の実施例の碍子23に2本の導電ワイヤ2A、2Bを挿通して支持させた状態を図8(a)に示す。2本の導電ワイヤ2A、2Bは、ベース板11Aによって所定距離隔てられた状態で碍子23に支持される。2本の導電ワイヤ2A、2Bには異なる極性の電圧が印加される。例えば、導電ワイヤ2Aに高電圧の電位が印加され、導電ワイヤ2Bがアースに接続される。
【0031】
図8(b)は、図8(a)に示した碍子23を用いた電気柵7の構成を示すものである。図8(b)に示す電気柵7は、所定の距離を隔てて地面1に埋め込まれた絶縁材料製の複数本の支柱4に、地面1から所定の間隔で複数本の導電ワイヤ2A,2Bの組が掛け渡されて構成されている。この導電ワイヤ2Aには、電源5に接続されたパワーユニット3の正極(+)からの高電圧(数千ボルト)が印加されるようになっている。また、導電ワイヤ2Bは、負極(−)に接続されている。2本の近接する導電ワイヤ2A,2Bの間には高電圧が印加されているので、導電ワイヤ2A,2Bの両方に触れた動物には高電圧の電流が流れ、動物は電気ショックを受けることになる。
【0032】
図9(a)は本発明に係る第1の形態の第4の実施例の碍子24の構成を示すものである。第4の実施例でも第3の実施例同様に、碍子24を第1の碍子41と第2の碍子42の2つに分割して構成している。第4の実施例の第1の碍子41の構成は、第3の実施例の第1の碍子41の構成と殆ど同じであり、ベース板11、第1の係止アーム13、及びシリンダ部43がある。相違点は、第3の実施例ではベース板11の先端部が矩形状に切り欠かれていたのに対して、第4の実施例ではベース板11の先端部が三角形状に切り欠かれている点のみである。よって、第4の実施例の第1の碍子41の構成についてはこれ以上の説明を省略する。
【0033】
一方、第4の実施例の第2の碍子42の構成は、第3の実施例の第2の碍子42の構成と大きく異なる。第4の実施例の第2の碍子42には、第3の実施例と同様に、第1の碍子41のガイド孔44に嵌合されるスリーブ47はあるが、ベース板11の一部はなく、スリーブ47の端部に係止壁48が設けられている。このスリーブ47に前述の取付金具を挿通するための貫通孔16がある点は同じである。そして、この係止壁48の両側にウイング状にガード部45が設けられている。ガード部45の端部は円弧状に湾曲した湾曲部45Aとなっており、この湾曲部45Aが第3の実施例における第2の係止アーム14,15の外周面と同じ位置にあり、第1の係止アーム13は2つの湾曲部45Aに挟まれている。
【0034】
図9(b)は、図9(a)に示した碍子24を組み立てた状態を平面視したものである。この図から分かるように、第4の実施例の碍子24では、第1の碍子41に第2の碍子42を取り付けると、ガード部45の湾曲部45Aが第3の実施例における第2の係止アーム14,15と同じ機能を果たす。更に、図9(c)に示すように、係止壁48とガード部45の両端部にひさし部49を設けて、碍子24から導電ワイヤが一層外れ難くなるようにしても良い。
【0035】
図10(a)は図9(a)に示した碍子24の第1の碍子41を正面から見た状態を示しており、図10(b)は図10(a)に示した碍子24の第1の碍子41を平面視したものである。これらの図に示すように、第1の係止アーム13の外側の面は、先端部に向かっても湾曲させても良く、また、第1の係止アーム13の内側の面も平坦面でなく、湾曲面に形成しても良い。更に、ベース板11は、縁部に向かって板厚が薄くなるように先細に形成しても良い。
【0036】
図10(c)は図9(c)に示した第2の碍子42を背面側から見た図であり、図10(d)は図10(a)、(b)に示した第1の碍子41に図9(c)、図10(c)に示した第2の碍子42を取り付けた後の状態を側面から見たものである。第1の碍子41に第2の碍子42を結合させた時のひさし部49の位置がよく分かるように、図10(d)には第2の碍子42のみ断面で示してある。また、図10(d)には、第4の実施例の碍子24に2本の導電ワイヤ2A,2Bが保持された状態を示している。この図から分かるように、係止壁48とガード部45の両端部にひさし部49が設けられていると、2本の導電ワイヤ2A,2Bが係止壁48側に移動した状態で上下動しても、ひさし部49が係止壁48に沿った通路を塞ぐので、碍子24からの導電ワイヤ2A,2Bの外れが防止される。
【0037】
ここで、本発明の第2の形態の碍子の構成を説明する前に、図11(a)及び(b)を用いて、支柱4にナイロン製等の柔軟で薄いネット8を、固定具(クランパ)60を用いて固定する方法を説明する。支柱4と支柱4の間にネット8を取り付ける場合は、図11(a)に示すようにネット8を支柱4の形状になるように撓ませ、撓ませたネット8の背後から、一部が縦方向に切り欠かれた筒状のクランパ60を押し当てて支柱4に嵌め込み、更に、クランパ60の外周部に設けられた円周溝61にC形状のばね62を嵌め込む。図11(b)に、クランパ60とばね62を用いてネット8が支柱4に固定された状態を示す。
【0038】
本発明の第2の形態の一実施例の碍子25は、例えば、このクランパ60の外周面に形成することができる。これを図12を用いて説明する。図12は本発明の第2の形態の一実施例の碍子25の構成を示すものである。この実施例では、碍子25の支柱4への取付具として、図11に示したクランパ60を使用し、図5(b)で説明したベース板11とベース板11の支柱4への取付具をクランパ60で兼用する。即ち、ベース板11としてクランパ60にある2つの溝部61の間の胴体部分を使用し、この胴体部分に支持壁12を突設し、この支持壁12の自由端部の両側に、クランパ60の軸線方向に平行な第1の係止アーム13を形成する。そして、クランパ60の胴体部分に4本の第2の係止アーム14,15を、これらがそれぞれ第1の係止アーム13とねじれの位置の関係になるように突設する。
【0039】
以上のように構成された碍子25は、図11(b)に示したような状態で支柱4に取り付けることができる。そして、この状態で碍子25の支持壁12、第1の係止アーム12、及び第2の係止アーム14,15で囲まれる空間に導電ワイヤを挿通すれば、支柱4と支柱4の間に平行な2本の導電ワイヤを張設することができる。
【0040】
本発明の第2の形態における取付具はこの実施例に限定されるものではなく、例えば、両端にフック部を備え、2本のワイヤ間に引っ掛けることができる絶縁板の上にも形成することや、第1の形態で説明した第1の碍子41のシリンダ部43の底面12Aに、図12に示した構成の支持壁12、第1の係止アーム12、及び第2の係止アーム14,15を設け、支持壁12に貫通孔16を設けて図6(a)に示した取付金具30で支柱4に取り付けることも可能である。
【0041】
更に、以上説明した2つの実施形態では、第2の係止アームには自由端が存在したが、自由端同士を連結した形態も可能である。この形態について、図13により説明する。図13(a)は図4(d)に示した基本形態の碍子10の変形例を示すものである。この変形例では、第2の係止アーム14,15の自由端部が補助アーム19によって連結されている。図13(b)は図6(b)に示した第1の形態の第2の実施例の碍子22の変形例の構成を示すものである。この変形例でも、2組ある第2の係止アーム14,15の自由端部が、それぞれ補助アーム19によって連結されている。図13(c)は図9(c)に示した第2の碍子42の別の変形例の構成を示すものである。この変形例では、ひさし部49を湾曲部45Aの部分まで延長して、補助アームを兼ねるひさし部49Aが形成されている。図13(d)は図12に示した第2の形態の碍子25の変形例の構成を示すものである。この変形例では、2組ある第2の係止アーム14,15の自由端部が、それぞれ補助アーム19によって連結されている。これら変形例では碍子に導電ワイヤを支持させるのに少々手間がかかるが、碍子に支持された導電ワイヤの外れ難さが向上する。
【符号の説明】
【0042】
1 地面
2 導電ワイヤ
3 パワーユニット
4 支柱
6,7 電気柵
8 ネット
10 本発明の基本形態の碍子
11 ベース板
12 支持壁
13 第1の係止アーム
14、15 第2の係止アーム
16 貫通孔
18 スリット
19 補助アーム
20 2線保持碍子
21〜25 本発明の実施例の碍子
30 取付金具
41 第1の碍子
42 第2の碍子
43 シリンダ部
44 ガイド孔
45 ガード部
47 スリーブ
48 係止壁
49 ひさし部
60 クランパ
61 溝部
62 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気柵の支柱に取り付けて使用する導電ワイヤの支持碍子であって、
平板状の基台と、
前記基台上に設けられ、前記基台の上面に平行な方向に延伸する第1の係止アームと、
前記第1の係止アームを挟み、前記第1の係止アームに対してそれぞれねじれの位置の関係になるように、前記基台上に突設された2本の第2の係止アームと、
前記基台を前記支柱に取り付ける取付具とを備え、
導電性ワイヤを前記第1と第2の係止アームとの間の空隙を通して、前記基台、前記第1の係止アーム及び前記第2の係止アームで囲まれる空間内に挿入して支持することを特徴とする導電ワイヤの支持碍子。
【請求項2】
請求項1に記載の碍子を、一方は正立させ、他方は倒立させた状態で、前記基台の裏面同士を結合して碍子本体を形成し、
前記碍子本体に前記第1の係止アームの延伸方向に貫通孔を開け、
前記取付具を、一端に前記支柱に係合するフック部が形成され、他端にねじ部が形成された軸部を備える金具本体、及び前記ねじ部に羅合するナットとから構成される取付金具として構成し、前記軸部を前記貫通孔に挿通させ、
2本の導電ワイヤを非接触状態で支持可能にしたことを特徴とする導電ワイヤの支持碍子。
【請求項3】
前記第1の係止アームの先端部の方向が一致するように、前記基台の裏面同士を結合して碍子本体を形成したことを特徴とする請求項2に記載の導電ワイヤの支持碍子。
【請求項4】
前記碍子本体の前記貫通孔を除く部分に、前記2本の導電ワイヤ間の沿面距離確保用のスリットを形成したことを特徴とする請求項2又は3に記載の導電ワイヤの支持碍子。
【請求項5】
前記碍子を、前記第1の係止アームを備えた第1の碍子と、前記第2の係止アームを備えた第2の碍子とに分割し、前記第2の碍子は前記第1の碍子に対して前記取付金具によって結合させることを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の導電ワイヤの支持碍子。
【請求項6】
前記第2の碍子を前記第1の碍子に対して垂直な係止板として構成し、前記第2の係止アームは、前記係止板の両側の部分を前記第1の碍子方向に延伸させて形成したことを特徴とする請求項5に記載の導電ワイヤの支持碍子。
【請求項7】
前記係止板の上端部と下端部に、前記第1の碍子方向に延伸させた第2の係止板を形成したことを特徴とする請求項6に記載の導電ワイヤの支持碍子。
【請求項8】
請求項1に記載の碍子を、前記第1の係止アームが同軸上に位置する並列に並べ、前記基台上面が1つの面を形成するように前記基台同士を結合して碍子本体を形成し、
前記碍子本体の裏面側に前記支柱に係合する取付具を設け、
2本の導電ワイヤを非接触状態で支持可能にしたことを特徴とする導電ワイヤの支持碍子。
【請求項9】
前記第1の係止アームの先端部の方向が反対方向を向くように、前記基台同士を結合して碍子本体を形成したことを特徴とする請求項8に記載の導電ワイヤの支持碍子。
【請求項10】
前記第1の係止アームを挟む前記2本の第2の係止アームの自由端を、補助アームで連結したことを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の導電ワイヤの支持碍子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−3411(P2011−3411A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145837(P2009−145837)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000105844)サージミヤワキ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】