説明

導電性インキ及び導電性パターン形成方法

【課題】 良好な導電性細線パターンを形成することができ、低温焼成もしくは紫外線照射による硬化が可能な導電性インキ組成物、該導電性インキ組成物を用いて良好な導電性細線パターンを簡便に印刷することができる印刷方法、及び該印刷方法により形成された印刷物を提供する。
【解決手段】 導電性粉末(A)、25℃において固体である樹脂(B)、カチオン重合性を有するオキセタン系モノマー、エポキシ系モノマー及びビニルエーテル系モノマーから選ばれる1種以上のモノマー成分(C)、重合開始剤(D)、及び、20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)を含有し、25℃に於ける粘度が3〜30Pa・sであることを特徴とする導電性インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インキの組成、印刷方法及び印刷物に関し、より詳しくは、良好な導電性細線パターンを形成することができ、低温もしくは紫外線により硬化させることができる導電性インキの組成、該導電性インキを用いた印刷方法、該印刷方法により形成された導電性パターン印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで各種電気部品の導電性パターン形成には、各種金属蒸着膜の形成、レジスト膜のパターン化、不要な蒸着金属膜のエッチング、レジスト膜の除去という工程を経る必要があった。詳細には各種金属膜を蒸着した基材上にフォトレジストを全面に塗布し、マスクを用いて露光し、未硬化部のフォトレジストを除去した後、エッチングで不要な金属膜を除去し、さらに使用済みのフォトレジストを除去する工程を要している。しかしながら、このようなフォトリソ法では、生産工程が長くなること、マスク使用や露光が必要であること、高価なフォトレジストを全面塗工する必要があることのために、ランニングコストが増大することなど、多くの問題がある。そこで、ランニングコストを削減するため、印刷法による各種電気部品の導電性パターン形成が望まれている。また、フィルムを用いたロール・ツー・ロール印刷に対応させるために基材変形を起こさない低温焼成、もしくは紫外線照射による硬化が望まれている。
【0003】
印刷法による各種電気部品の導電性パターン形成に関連する技術として、配線回路パターンをスクリーン印刷、グラビア印刷、もしくはグラビアオフセット印刷で形成する手法が知られており、これらの印刷法向けの導電性インキとして、種々のバインダー樹脂と導電性粉末を含む導電性インキが開発されている(例えば特許文献1〜5参照)。特許文献1ではグラビア印刷用UV硬化型銀インキの組成について記載されている。該インキ組成には硬化前に高ガラス転移温度の樹脂、高分子量の樹脂等の成膜性を有する樹脂を含まないため、ブランケットから非印刷基材への完全転写が不可能であり、該インキをグラビアオフセット印刷に転用することはできない。特許文献2では積層セラミックコンデンサ用配線形成に用いるグラビア印刷用ニッケルインキについて記載されている。該インキは硬化前に成膜性を付与する高分子量樹脂を含有しており、ブランケットから非印刷基材への完全転写、グラビアオフセット印刷への転用が期待されるが、0.1〜1.0Pa・sのインク粘度では粘度が低く、フォトリソ法に匹敵する細線形成、画線直線性を得ることはできない。特許文献3では活性エネルギー線硬化型導電性インキの組成について記載しており、各種印刷に使用できるとしている。しかし、該インキで望ましいとされているフレーク状の銀粉末では銀粉末間での層間剥離の可能性が高く、ブランケットから被印刷基材への完全転写を特徴とするグラビアオフセット印刷への転用は困難であると考えられる。特許文献4、および特許文献5ではグラビアオフセット印刷用銀インキの組成について記載されている。特許文献4に記載されているインキにおいて望ましいとされる粘度範囲のうち、30Pa・s以上ではグラビア凹版上でのドクタリングが困難であり、非画線部へのインキ付着という問題がある。また、特許文献5に記載されているインキは焼成が150℃で行われており、非印刷基材がPET等のフィルムである場合には基材変形の問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2008−260938号公報
【特許文献2】特開2005−97326号公報
【特許文献3】特開2007−169462号公報
【特許文献4】特開2006−282912号公報
【特許文献5】特開2009−62523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、良好な導電性細線パターンを形成することができ、低温焼成もしくは紫外線照射による硬化が可能な導電性インキ組成物、該導電性インキ組成物を用いて良好な導電性細線パターンを簡便に印刷することができる印刷方法、及び該印刷方法により形成された印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導電性粉末(A)、25℃において固体である樹脂(B)、カチオン重合性を有するオキセタン系モノマー、エポキシ系モノマー、ビニルエーテル系モノマーから選ばれる1種以上のモノマー成分(C)、重合開始剤(D)、および20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)を含有し、25℃に於ける粘度が1〜30Pa・sであることを特徴とする導電性インキを提供する。
【0007】
導電性粉末(A)として平均粒径が100nm以上3μm以下である球状銀粉末を1種類以上含有することが好ましい。
【0008】
25℃において固体である樹脂(B)が、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂などから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0009】
重合開始剤(D)としては、ヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)が特に好ましい。
【0010】
20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート又はジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートあることが特に好ましい。
【0011】
本発明に於いて、有機溶剤のシリコーンブランケット膨潤率とは、2cm角のシリコーンブランケット(金陽社製シリコーンブランケット T−60 C/C)を、該溶剤に、25℃環境下、10時間浸漬した後のブランケットの質量増加率を言う。
【0012】
本明細書において、銀インキの粘度は、ラレー粘度計により測定した値で定義する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性インキは、グラビアオフセット印刷によりブランケットから被印刷基材へ完全転写させ、良好な導電性細線パターンを形成し、150℃未満の焼成もしくは紫外線照射により硬化させることができる。該導電性インキ組成物を用いてグラビアオフセット印刷を行うことで各種電気部品の導電性パターン形成にかかるコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、最良の形態に基づいて本発明を説明する。
【0015】
(導電性インキ)
導電性粉末(A)、25℃において固体である樹脂(B)、カチオン重合性を有するオキセタン系モノマー、エポキシ系モノマー及びビニルエーテル系モノマーから選ばれる1種以上のモノマー成分(C)、および20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)を含有し、25℃に於ける粘度が3〜30Pa・sであることを特徴とする
【0016】
(導電性パターン形成方法)
本発明の導電性パターン形成方法は、前記した本発明の導電性インキを用い、少なくとも、導電性パターンを有する凹版印刷版に導電性インキを供給する工程、シリコーンブランケットを押圧し、導電性インキを該ブランケット上に転移する工程、該ブランケット上の導電性インキを基板上に転写する工程を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の導電性インキに用いる導電性粉末(A)は、平均粒径が100nm以上3μm以下である球状銀粉末を1種類以上含有することが望ましい。中でも1μm以下である球状銀粉末と1μm以上3μm以下である球状銀粉末とを組み合わせることが良好な導電性細線パターン形成と150℃未満の焼成、もしくは紫外線照射による十分な導電性付与の観点から特に望ましい。平均粒径が100nm以上3μm以下である球状銀粉末としては、SPQ03S(三井金属鉱山(株)製、平均粒径D50:0.5μm)、EHD(三井金属鉱山(株)製、平均粒径D50:0.5μm)、シルベストAgS−050((株)徳力化学研究所製、平均粒径D50:1.4μm)、シルベストC−34((株)徳力化学研究所製、平均粒径D50:0.6μm)などが挙げられる。
【0018】
導電性粉末(A)の導電性インキ中の含有率は、60質量%から95質量%が好ましく、75質量%から90質量%であればさらに好ましい。60質量%以上の場合、塗膜中の導電性粉末密度が十分であり良好な導電性を得ることができる。また、95質量%以下の場合、ペースト状のインキを作製することが容易となる。
【0019】
本発明の導電性インキに用いる、25℃において固体である樹脂(B)は、樹脂単独で良好な膜を形成でき、導電性インキがブランケット上で良好な膜を形成すること、および導電性インキ膜がブランケットから被印刷基材への完全転写することを可能にするものであれば特に種類を選ばないが、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂などから選ばれる1種以上であることが望ましい。被印刷基材がPETである場合、PETへの密着性が良好であるポリエステル樹脂が好適に使用される。ポリエステル樹脂の例としては東洋紡株式会社製のバイロンシリーズ(バイロン200など)が挙げられる。
【0020】
25℃において固体である樹脂(B)の導電性インキ中の含有率は、1質量%から40質量%が好ましく、2質量%から20質量%であればさらに好ましい。1質量%以上の場合、ブランケット上で良好な導電性インキ膜を形成することが容易になり、導電性インキ膜がブランケットから被印刷基材への完全転写することが容易になる。また、40質量%以下の場合、インキ粘度がより適正になり、導電性パターンを有する凹版印刷版に導電性インキを供給する工程が容易になる。
【0021】
本発明の導電性インキに用いる、カチオン重合性を有するオキセタン系モノマー、エポキシ系モノマー、ビニルエーテル系モノマーから選ばれる1種以上のモノマー成分(C)は、本発明の導電性インキに用いる重合開始剤(D)により重合が進行するものであれば種類を選ばない。これらの中でも、特にオキセタン系モノマー、エポキシ系モノマーが好適に用いられる。オキセタン系モノマーの例としては東亞合成株式会社製のアロンオキセタンシリーズ(OXT221など)、エポキシ系モノマーとしてはダイセル化学工業株式会社製のセロキサイドシリーズ(セロキサイド2021Pなど)が挙げられる。
【0022】
カチオン重合性を有するオキセタン系モノマー、エポキシ系モノマー、ビニルエーテル系モノマーから選ばれる1種以上のモノマー成分(C)の導電性インキ中の含有率は、1質量%から40質量%が好ましく、2質量%から20質量%であればさらに好ましい。1質量%以上の場合、150℃未満での焼成も、紫外線照射による硬化も可能になる。また、40質量%以下の場合、インキ粘度がより適正になり、画線のコーナー部分やマトリックスの交差点にピンホール欠陥を起こすことなく、良好な導電性パターンを形成することができる。
【0023】
本発明の導電性インキに用いる重合開始剤(D)は、本発明の導電性インキに用いるモノマー成分(C)の重合を進行させるものであれば種類を選ばない。重合開始剤(D)としてスルホニウム塩系開始剤、ヨードニウム塩系開始剤、非イオン系開始剤などから選ばれる1種以上が用いられるが、特にヨードニウム塩系開始剤が好適に用いられる。ヨードニウム塩系開始剤としてはチバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250、日本曹達株式会社製のCI−5102、和光純薬工業株式会社製のWPI−113、WPI−116などが挙げられる。特に好ましくは、ヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)(チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250)である。
【0024】
重合開始剤(D)の導電性インキ中の含有率は、0.1質量%から10質量%が好ましく、1質量%から5質量%であればさらに好ましい。0.1質量%以上の場合、導電性塗膜の硬化が十分に進行し、良好な導電性インキ膜を形成することが容易である。この場合、充分な導電性を得ることが出来る。また、10質量%以下の場合、硬化後の導電性塗膜強度が充分であり、各種耐性をもった良好な導電性インキ膜を形成することができる。
【0025】
本発明の導電性インキに用いる、有機溶剤は、20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)である。20℃に於ける蒸気圧が0.02kPaを超える有機溶剤を用いると、印刷機上でインキの増粘が起こり安定的な連続印刷適性を出すことが出来ない。
【0026】
本発明の導電性パターン形成方法において、シリコーンブランケットには、凹版からの転写性、及び、基材への転写性が求められる。特に、基材への十分な転写性を得るためには、ブランケット表面で、導電性インキ中の有機溶剤を一定割合で吸収することが必要である。吸収が不十分であると基材への転写時に導電性インキ層が層間剥離を起こし易く、逆に、一定割合を超えて吸収するとブランケット表面で導電性インキが乾燥し、基材への転写不良を起こし易い。本明細書では、シリコーンブランケットへの有機溶剤の吸収度合いを前述の「膨潤率」で定義するものである。
【0027】
すなわち、シリコーンブランケット膨潤率が5%未満の有機溶剤を用いると、シリコーンブランケットから基材への転写工程で、導電性インキ層が層間剥離を起こし易くなり、シリコーンブランケット膨潤率が20%を超える有機溶剤を用いると、ブランケット表面で導電性インキが乾燥し過ぎ、転写不良を起し易くなる。斯様な状況の下、シリコーンブランケットを用いた導電性パターン形成方法に、最も適する導電性インキを提供することが本発明の目的の一つである。
【0028】
このような有機溶剤としては、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤として、特に好ましくは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート又はジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートである。数種の溶剤を組合せた場合でも、シリコーンブランケットの膨潤率は5〜20%であることが必要である。
【0029】
さらに、本発明の導電性インキは、25℃に於ける粘度が3〜30Pa・sであることを特徴としている。粘度が3Pa・s未満であると、画線のコーナー部分やマトリックスの交差点にピンホール欠陥を起こし易く、良好な導電性細線パターンを形成することができない。また、粘度が30Pa・sを上回ると、凹版へのインキング性、凹版からブランケットへの転移性の問題が生じる。
【0030】
本発明の導電性インキでは、上述の成分以外にも、分散剤、消泡剤、可塑剤などの各種添加剤を適宜適量配合することができる。
【0031】
本発明の導電性インキは、上述の原料を混練し、均一化することで製造することができる。
【0032】
本発明の導電性パターン形成方法は、凹版印刷版の溝部に導電性インキ供給する工程、シリコーンブランケットを凹版印刷版表面に押圧し、凹版印刷版溝部の導電性インキをブランケット表面に転写する工程、ブランケット表面の導電性インキを基材に転写する工程を有する。
【0033】
本発明の導電性パターン形成方法に用いる凹版印刷版としては、通常のグラビア版、ガラス板上の感光性樹脂を露光、現像、洗浄により形成した凹版、ガラス板をケミカルエッチングおよびレーザーエッチングにより形成した凹版が使用できる。
【0034】
本発明の導電性パターン形成方法に用いるシリコーンブランケットは、シリコーンゴム層、PET層、スポンジ層の様な層構造を有するシートである。通常、ブランケット胴と称される剛性のある円筒に巻きつけた状態で使用する。
【0035】
(基材)
この導電性インキを用いて導電性パターンを形成する基材は、特に限定はなく、例えばプラスチック、紙、ガラス、セラミックス、金属などが挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。ここで「%」は、特に断らない限り「質量%」である。
【0037】
(有機溶剤の選択)
2cm角に切り出したシリコーンブランケット(金陽社製シリコーンブランケット T−60 C/C)の重量を測定した後に、25℃環境下で、各溶剤50gに10時間浸漬させ、表面に付着した溶剤を拭き取りブランケットの質量を測定した。溶剤浸漬前後のブランケットの質量変化をブランケット膨潤率として算出した。
【0038】
【表1】

【0039】
(実施例1インキの調製)
導電性粉末(A)として、シルベストAgS−050((株)徳力化学研究所製)3.97g、シルベストC−34((株)徳力化学研究所製)3.97g、25℃において固体である樹脂(B)としてバイロン200(東洋紡(株)製)の固形分54%溶液(溶媒/プロピレンカーボネート)0.75g、モノマー成分(C)としてOXT221(東亞合成(株)製)0.67g、重合開始剤(D)としてイルガキュア250(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.23g、および20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業社製:20℃に於ける蒸気圧、0.01kPa、シリコーンブランケット膨潤率、11%)0.28g、およびプロピレンカーボネート0.14gを混合、練肉することで実施例1インキを得た。
【0040】
(比較例1インキの調製)
導電性粉末(A)として、シルベストAgS−050((株)徳力化学研究所製)3.97g、シルベストC−34((株)徳力化学研究所製)3.97g、25℃において固体である樹脂(B)としてバイロン200(東洋紡(株)製)の固形分54%溶液(溶媒/プロピレンカーボネート)0.75g、モノマー成分(C)としてOXT221(東亞合成(株)製)0.67g、重合開始剤(D)としてイルガキュア250(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.23g、および20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業社製:20℃に於ける蒸気圧、0.51kPa、シリコーンブランケット膨潤率、34%)0.28g、およびプロピレンカーボネート0.14gを混合、練肉することで比較例1インキを得た。
【0041】
(比較例2インキの調製)
導電性粉末(A)として、シルベストAgS−050((株)徳力化学研究所製)3.97g、シルベストC−34((株)徳力化学研究所製)3.97g、モノマー成分(C)としてOXT221(東亞合成(株)製)1.23g、重合開始剤(D)としてイルガキュア250(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.42g、および20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業社製:20℃に於ける蒸気圧、0.01kPa、シリコーンブランケット膨潤率、11%)0.28g、およびプロピレンカーボネート0.14gを混合、練肉することで比較例2インキを得た。
【0042】
(比較例3インキの調製)
導電性粉末(A)として、シルベストAgS−050((株)徳力化学研究所製)3.97g、シルベストC−34((株)徳力化学研究所製)3.97g、25℃において固体である樹脂(B)としてバイロン200(東洋紡(株)製)の固形分54%溶液(溶媒/プロピレンカーボネート)1.65、および20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業社製:20℃に於ける蒸気圧、0.01kPa、シリコーンブランケット膨潤率、11%)0.28g、およびプロピレンカーボネート0.14gを混合、練肉することで比較例3インキを得た。
【0043】
(凹版印刷版)
本発明の導電性パターン形成方法に用いる凹版印刷版としては、ガラス板をケミカルエッチングすることにより形成した凹版を使用した。尚、細線パターン再現性評価は、100μm幅パターン部分、20μm幅パターン部分でおこなった。
【0044】
(シリコーンブランケット)
本発明の導電性パターン形成方法に用いるシリコーンブランケットは、シリコーンゴム層、PET層、スポンジ層の層構造を有する金陽社製T−60 C/Cブランケットを用いた。
【0045】
上記で形成した凹版に実施例1インキを、ドクターブレードを用いてインキングした後、ブランケットを巻き付けたブランケット胴をニップ幅10cm程度で押圧し、パターン化された実施例1インキを該ブランケット上に転移させた。その後、ITOガラス基板に該ブランケット上の実施例1インキをニップ幅10cm程度で押圧、転写し、転写パターンを形成した。
【0046】
比較例1〜3のインキで同様の操作を行い、転写パターンを得た。未硬化の段階で、以下の評価方法で評価した。評価結果を表2に示す。尚、比較例2はブランケット残渣が不良で、連続印刷適性、機上安定性の評価は出来なかった。又、比較例3は、インキングが出来ず、以下の評価をしなかった。
【0047】
(インキ粘度)
25℃にて、ラレー粘度計で測定した。
【0048】
(インキング可否)
凹版上でインキをブレーディングしたのち、凹版を光学顕微鏡(×1000)で観察した。
【0049】
(細線再現性)
前記した、100μm幅パターン部分、20μm幅パターン部分に対応した転写パターンを光学顕微鏡(×1000)下で目視評価した。
【0050】
(コーナリング)
直角クランクを有する100μm幅の特定転写パターンや100μm幅の直線の終わりの部分を光学顕微鏡(×1000)下で観察し、印刷方向に対して垂直となる部分に発生するピンホール欠陥の有無を目視評価した。
【0051】
(連続印刷性)
転写パターンを10回連続で形成したときの、前記した、100μm幅パターン部分、20μm幅パターン部分に対応した転写パターンを光学顕微鏡(×1000)下で目視評価した。
【0052】
(機上安定性)
インキを厚さ10μm程度に引き伸ばした状態で10時間放置し、その前後でインキの粘度を測定し10%以上の増粘がないかを確認した。
【0053】
(ブランケット残渣)
基材への転写工程時に起こる粘着力不足による転写不良、導電性インキの内部凝集力不足に起因する層間剥離による転写不良をブランケット表面に残る導電性インキ残渣として、目視評価を行った。
【0054】
前記で作製した転写パターンを、120℃10分焼成により硬化させた後、体積抵抗値測定に用いた。体積抵抗値測定は、ロレスタ-GP MCP-T610(三菱化学製)によった。また、同時に作成した転写パターンを120Wメタルハライドランプ(全光照射量;3000mJ/cm)により硬化させた場合にも熱硬化の場合と同等の体積抵抗値が得られることを確認した。
【0055】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、各種の電気部品・電子部品の導電性パターン形成用の導電性インキとして利用することができる。最終製品としては、例えばタッチパネルの取り出し電極やディスプレイの取り出し電極、その他配線等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末(A)、25℃において固体である樹脂(B)、カチオン重合性を有するオキセタン系モノマー、エポキシ系モノマー及びビニルエーテル系モノマーから選ばれる1種以上のモノマー成分(C)、重合開始剤(D)、及び、20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)を含有し、25℃に於ける粘度が3〜30Pa・sであることを特徴とする導電性インキ。
【請求項2】
前記した導電性粉末(A)が、平均粒径が100nm以上3μm以下である球状銀粉末を1種類以上含有する請求項1に記載の導電性インキ。
【請求項3】
前記した25℃において固体である樹脂(B)が、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の導電性インキ。
【請求項4】
重合開始剤(D)がヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)である請求項1〜3の何れかに記載の導電性インキ。
【請求項5】
20℃に於ける蒸気圧が0.02kPa以下、シリコーンブランケット膨潤率が5〜20%である有機溶剤(E)がジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート又はジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートある請求項1〜4の何れかに記載の導電性インキ。
【請求項6】
プラスチックフィルム、セラミックフィルム、ガラス又は金属プレートの何れかの基材上に、請求項1〜5の何れかに記載の導電性インキを用いて、グラビア印刷機又はグラビアオフセット印刷機により印刷することを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の形成方法で形成されたことを特徴とする導電性パターン印刷物。

【公開番号】特開2011−37999(P2011−37999A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187221(P2009−187221)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】