説明

導電性ゴムローラー及び転写ローラー

【課題】 転写ローラーや帯電ローラーあるいは現像ローラー等の導電性ゴムローラーにおいて、環境による抵抗値の変動を小さくし、且つ長時間通電によって起こる抵抗変動を小さくした導電性ゴムローラー、及び該導電性ゴムローラーからなる転写ローラーを提供することである。
【解決手段】 導電性芯材上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラーであって、該ゴム層がゴム材料中のポリマー分100質量部に対して、ニトリル含量が15〜43質量%であるアクリロニトリルブタジエンゴムを75〜99.5質量部含み、且つポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を25〜0.5質量部含むことを特徴とする導電性ゴムローラー、電子写真装置に搭載される転写装置の転写ローラーが該導電性ゴムローラーであることを特徴とする転写ローラー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置において、使用される導電性ゴムローラー、特には転写ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター等、電子写真方式の画像形成装置の多くに帯電ローラー、転写ローラー及び現像ローラー等の導電性ゴムローラーが用いられている。従来これらのゴムローラーに導電性を付与するのにカーボンブラック等の導電性の充填材を加える方法、あるいはアクリロニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性のゴム材料を配合する方法が挙げられる(特許文献1)。上記ローラーに導電性を付与するのにカーボンブラック等の導電性の充填材を加える方法は、電圧値による抵抗値の依存性や、ロットによる抵抗値のバラツキが大きいため、その抵抗値が比較的安定した後者のイオン導電性のアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴムや、イオン導電剤を付与したゴム材料を用いる手段が主流となっている(例えば特許文献2)。
【0003】
しかし、これらの材料は環境による抵抗値の変動が大きいという問題がある。特にカラーレーザービームプリンター用の転写ローラー等において比較的低い抵抗値を得ようとする場合、ヒドリンゴムの配合量を多くする必要があり、結果として抵抗値の環境による変動が大きくなってしまうという問題がある。また、長時間通電を行うとアクリロニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリンゴム等の劣化により抵抗変動が大きくなってしまうという問題がある。そのため今後の電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置における高画質化の要求から、抵抗値の環境による変動、長時間の通電による抵抗値の変動をより小さくした導電性ローラーが求められている。
【特許文献1】特開2002−28756号公報
【特許文献2】特開2002−16751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、転写ローラーや帯電ローラーあるいは現像ローラー等の導電性ゴムローラーにおいて、環境による抵抗値の変動を小さくし、且つ長時間通電によって起こる抵抗変動を小さくした導電性ゴムローラー、及び該導電性ゴムローラーからなる転写ローラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従って、導電性芯材上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラーであって、該ゴム層がゴム材料中のポリマー分100質量部に対して、ニトリル含量が15〜43質量%であるアクリロニトリルブタジエンゴムを75〜99.5質量部含み、且つポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を25〜0.5質量部含むことを特徴とする導電性ゴムローラーが提供される。
【0006】
また、本発明に従って、電子写真装置に搭載される転写装置の転写ローラーが、上記導電性ゴムローラーであることを特徴とする転写ローラーが提供される。
【発明の効果】
【0007】
以上に示したように、本発明は抵抗値の環境による変動が小さくなり、長時間通電による抵抗値の変動が小さくなる。従って、上記導電性ゴムローラーは電子写真技術の画像形成に用いられる転写ローラー等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
図2に、本発明に係る導電性ゴムローラーを画像形成装置に利用した一例を示す。ここでは転写ローラーについての説明であるが、帯電ローラーあるいは現像ローラー等の他のローラータイプの部材に対しても適用可能である。同図に示す画像形成装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用したレーザープリンターであり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。また、同図に示す画像形成装置には、転写ローラーを有する転写装置が装着されている。
【0010】
同図に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印のR1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0011】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラー2によって均一に帯電される。帯電ローラー2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印のR1方向の回転に伴って矢印のR2方向に従動回転する。帯電ローラー2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0012】
その静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0013】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラー6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアス印加電源により転写ローラー6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9によって除去される。
【0014】
転写部Tを通った転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体(不図示)外部に排出される。
【0015】
図1に示される本発明にかかる導電性ゴムローラーは以下のようにして作製した。
【0016】
[導電性ゴムローラー]:ゴム組成物は、ゴム材料中のポリマー分100質量部に対して、ニトリル含量が15〜43質量%であるアクリロニトリルブタジエンゴムを75〜99.5質量部含み、且つポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を0.5〜25質量部含有したものの混合物とし、これにカーボンブラック等の充填材や硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、発泡剤を混合したものである。
【0017】
上記において、アクリロニトリルブタジエンゴムが75質量部未満であると抵抗値の環境による変動が大きくなり、99.5質量部を超えると長時間通電による抵抗値の変動が大きくなる。ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が0.5質量部未満であると長時間通電による抵抗値の変動が大きくなり、25質量部を超えると環境による抵抗値の変動が大きくなり過ぎてしまうという問題が生じる。
【0018】
本発明で用いられるアクリロニトリルブタジエンゴムは、ニトリル含量が15〜43質量%である。ニトリル含量が上記範囲内であると安定した電気抵抗値のローラーを得ることができ、更にローラーに加工する際に、押出し性等の加工性の良好なゴム組成物を得ることができるのである。
【0019】
更に、ゴム材料中に、ハロゲンを含有する四級アンモニウム塩又は四級ホスホニウム塩を0.1〜4.0質量部することが好ましい。この範囲内に四級アンモニウム塩又は四級ホスホニウム塩を含有することにより、抵抗値の安定性に優れ、かつ染み出しによる電子写真感光体汚染等の無いローラーを得ることができるのである。
【0020】
押出し機(不図示)を用いてゴム組成物を押出し、未加硫のチューブ状の導電性ゴム成形物を得た後、加硫缶にて160℃で30分間の加硫を行ない弾性層62となるチューブ状の導電性ゴム成形物を作製し、次いでφ4〜10mmの導電性芯材61を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラー状の成形体を得た。この成形体を、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500m/分で外径がφ12mmになるように研磨し、導電性発泡ゴムローラーを作製した。
【実施例】
【0021】
なお、各実施例及び比較例で使用した資材は以下の通りである。
・アクリロニトリルブタジエンゴム [商品名:DN401LL ニトリル含量18質量% 日本ゼオン(株)社製]
・ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体 [商品名:ZSN8030 日本ゼオン(株)社製]
・四級アンモニウム塩 [商品名:アデカサイザーLV−70 旭電化工業(株)社製]
・エピクロルヒドリンゴム [商品名:ゼクロン3106 日本ゼオン(株)社製]
【0022】
(ローラーの電気抵抗及び環境変動量の測定方法)
ローラー抵抗は、導電性ゴムローラーの軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにし、外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、回転させた状態で軸体とアルミニウムドラムとの間に500Vの電圧を印加して測定した。この測定をL/L(15℃/10%RH)、N/N(23℃/55%RH)、H/H(35℃/85%RH)の各環境下にて48時間の放置後に測定した。環境変動量はL/LとH/Hでの抵抗値の違いを桁で表した。変動量は1.8桁以下が好ましい。
【0023】
(ローラーの通電試験方法及び抵抗値の電圧に対する変動量測定方法)
ローラーの通電耐久試験は、N/N環境下でローラーをレーザービームプリンター(商品名:カラーレーザージェット4600 ヒューレット・パッカード社製)を用いて10万枚通紙耐久試験を行った。その後、N/N環境にて1時間放置した後にローラー抵抗を測定した。ここで初期の抵抗値と耐久後の抵抗値の差を桁数で表現したものを耐久変動量とした。これが小さいほど、導電性ゴムローラーの通電耐久性が良いといえる。変動量は0.2桁以下が好ましい。
【0024】
(実施例1〜6)
実施例1〜6は導電性芯材上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラーであって、該ゴム層がゴム材料中のポリマー分100質量部に対して、ニトリル含量が15〜43質量%であるアクリロニトリルブタジエンゴムを75〜99.5質量部含み、且つポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を5〜25質量部含む導電性ゴムローラーである。
【0025】
実施例1、3、6においてはアクリロニトリルブタジエンゴムを多く含んでいるために環境変動が特に小さかった。また、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を含有しているため耐久変動も良好な値を示した。
【0026】
更に、実施例3、4、6はハロゲン系第4級アンモニウム塩2〜4質量部を含有しているが、環境変動、耐久変動ともに良好な値を得ることができた。
【0027】
(比較例1〜6)
比較例としては、アクリロニトリルブタジエンゴムを99.5質量部超える、75質量部未満含有の場合と、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を25質量部超える、0.5質量部未満含むものと、エピクロルヒドリンゴムを用いたものを比較例とした。
【0028】
比較例1ではポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を含有せず、アクリロニトリルブタジエンゴムのみを用いた場合であるが、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を含んでいないため耐久変動が0.7桁と大きく、不良であった。
【0029】
比較例2、3ではアクリロニトリルブタジエンゴムが70質量部と少ないために抵抗値の環境変動が大きくなってしまい不良であった。
【0030】
比較例4ではポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体の代わりにエピクロルヒドリンゴムを配合していることのみが実施例2と異なる点であるが、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を含有していないため、耐久変動が大きくなり不良であった。
【0031】
比較例5は第4級アンモニウム塩を配合した点が比較例4と異なる。しかしながらポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を含有していないため耐久変動が大きくなり不良であった。
【0032】
比較例6も比較例4、5と同様にポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を含有していないため、耐久変動が大きくなってしまい不良であった。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
表1の結果からゴム材料中のポリマー分100質量部に対して、アクリロニトリルブタジエンゴムを75〜99.5質量部含み、且つポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を0.5〜25質量部含む場合、抵抗値の環境による変動が小さくなり、且つ長時間通電による抵抗値の変動が小さくなることがわかる。また、表2に示されるの本発明の範囲外である比較例の場合には環境変動が大きくなる、或いは長時間通電による抵抗値の変動が大きくなることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる転写ローラーの全体断面図である。
【図2】本発明にかかる転写ローラーを具備する画像形成装置の全体断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 感光ドラム
2 帯電装置
3 露光手段
4 現像装置
5 トナー
6 転写ローラー
7 記録媒体
8 クリーニングブレード
9 廃トナー容器
10 定着装置
61 芯材
62 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラーであって、該ゴム層がゴム材料中のポリマー分100質量部に対して、ニトリル含量が15〜43質量%であるアクリロニトリルブタジエンゴムを75〜99.5質量部含み、且つポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を25〜0.5質量部含むことを特徴とする導電性ゴムローラー。
【請求項2】
前記ゴム材料中に、更にハロゲンを含有する四級アンモニウム塩又は四級ホスホニウム塩を0.1〜4.0質量部含む請求項1に記載の導電性ゴムローラー。
【請求項3】
前記ゴム層が発泡体で構成されている請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラー。
【請求項4】
電子写真装置に搭載される転写装置の転写ローラーが、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ゴムローラーであることを特徴とする転写ローラー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−85006(P2006−85006A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271807(P2004−271807)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】