説明

導電性パターンの形成方法とその形成装置

【課題】 金属微粒子の分散液を用いて基材に印刷し、この印刷物を加熱し金属微粒子を焼結させる導電性パターン形成方法は、耐熱性の低い樹脂フィルムを基材として使用する場合、金属微粒子の焼結時に基材が溶融し、変形し、また、変色することがあり、その上、金属微粒子の焼結時間を短縮することが困難となっていた。
【解決手段】 金属化合物溶液を用いて非導電性の基材にパターン印刷して生成した印刷物100を予め準備する。そして、この印刷物100は、マイクロ波表面波プラズマを発生させるパターン形成装置の処理室11内でプラズマに晒し、パターン印刷物の金属成分を焼結させて導電性パターンを形成する構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化合物溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画し、その描画パターンをマイクロ波表面波プラズマに晒して焼結処理し、導電性パターンを形成する導電性パターンの形成方法と、その導電性パターンの形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属微粒子を分散させた微粒子分散液を用いて非導電性の基板面にパターンを描画し、このパターンに存在する金属微粒子を焼結させて回路パターンを形成する回路基板については既に知られている。
【0003】
一例を述べれば、金、銀、銅などからなる金属又はそれらの合金からなる金属微粒子を有機溶媒中に安定に分散させたペースト組成物を用い、基板面に描画し、その後、描画した基板に加熱温度を加え、金属微粒子を焼結させて回路パターンを形成する。
【0004】
このような回路パターンの形成方法で用いるペースト組成物は、平均一次粒子径が1〜100nmの金属微粒子の表面を当該金属元素と配位結合が可能な化合物(例えば、アミン、アルコール、フェノール、チオールなどの分散剤)で被覆し、この金属微粒子が有機溶媒中で安定な形で分散して存在するようにしたペースト組成物となっている。
【0005】
また、上記のペースト組成物を用いた描画は、インクジェットやスクリーン印刷などの各種の手法を用いて行っている。
そして、描画パターンに加熱温度を加えて金属微粒子の被覆層を除去し、金属微粒子同士を焼結させ、回路パターンを形成する。
なお、基板には、エポキシ、ポリイミド、熱硬化性樹脂などが用いられている。
【0006】
上記した回路パターンの形成方法によれば、ビルドアップ配線板、プラスチック配線板、プリント配線板などの生産が可能で、例えば、ライン/スペースが25μm/25μm、比抵抗が4×10−5Ωとする微細な回路パターンを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−299833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来の回路パターン形成方法は、耐熱性の低い樹脂フィルムを基材として使用する場合、金属微粒子の焼結時に基材が溶融し、また、変形することがあり、その上、微粒子を被覆する化合物を除去するために加熱時間を長くする必要があり、導電性パターンの形成時間を短縮することが難しい。
【0009】
特に、銅、ニッケルなどの卑金属微粒子や酸化銅などの金属化合物微粒子に対しては、焼結の際に酸化を抑制し、還元させるために、還元性気体の雰囲気の中で焼結を行う必要があるが、還元反応のためには300℃以上の温度が必要であるため、例えば、融点が280℃以下であるような耐熱性の低い樹脂フィルム上の焼結は、例えば、120℃〜150℃の温度で熱変形してしまうため、より難しいという問題があった。
また、還元性気体の雰囲気制御や焼結にかかる時間が長いために、ロール状のフィルムに作製したパターンを焼結するのは、非常に困難であった。
【0010】
さらに、大きい面積のものについては、均一した導電性パターンの形成に難点があり、また、基材が変色することがあるため、高い透過率を必要とする導電性部品の導電性パターン形成には適さない。
本発明はこのような問題を可能なる限り解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、本発明の導電性パターンの形成方法は、溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画した後、描画パターンを焼結処理して導電性パターンを形成する方法に関する。
そして、前記パターンの描画には、溶液として金属化合物溶液を用い、前記焼結処理には、減圧室からなる処理室の照射窓からマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内にマイクロ波表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段を用いる。
このようにして、前記描画パターンを、電子温度が低く、電子密度が高いマイクロ波表面波プラズマに晒して焼結させる構成としてある。
【0012】
上記した金属化合物溶液としては、硫酸銅、濃アンモニア水、水酸化ナトリュム、高純度セルロースの混合物、或いは、水、クエン酸(C)、水酸化銅Cu(OH)にポリビニルアルコール(PVA)を溶かした混合物、または、アセチルアセトン、水酸化銅、グリコールの混合物などを用いることができる。
また、金属化合物溶液としては、金属微粒子を混ぜ合わせた化合物溶液を用いることができる。
【0013】
さらに、基材には、用途に応じて、無機材料基板、合成樹脂基板を使用する。
合成樹脂基板は、フィルム状であってもよい。
また、基材と導電層の密着性を向上させるために、金属化合物溶液でパターンを描画する前に、前記基材にポリビニルアルコール水溶液を塗布することが好ましい。
なお、金属化合物溶液は通常の印刷方法で描画することができ、描画の後、描画パターンを乾燥させる。
【0014】
乾燥させた描画パターンは、マイクロ波表面波プラズマに晒し焼結させる。
そして、この焼結には、照射窓から処理室内にマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内にマイクロ波表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段を用いることができる。
なお、前記プラズマ発生手段としては、処理室の照射窓から周波数2450MHzのマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内には、電子温度が約1eV以下、電子密度が約1×1011〜1×1013cm−3のマイクロ波表面波プラズマを発生させることができる。
【0015】
一方、導電性パターンを形成するパターン形成装置の発明として、次の第1発明、第2発明、第3発明を提案する。
第1の発明のパターン形成装置は、溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画し、前記描画パターンを処理して導電性パターンを形成するパターン形成装置において、金属化合物溶液を用いてパターンを描画した基材と、減圧室として構成した処理室の照射窓からマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内にマイクロ波表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段と、前記パターンを描画した基材を前記処理室内に配置するための処理台とを備え、パターンを描画した基材を前記処理台に配置し、前記描画パターンを処理室内でマイクロ波表面波プラズマに晒し、導電性パターンを形成する構成となっている。
【0016】
第2の発明のパターン形成装置は、溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画し、前記描画パターンを処理して導電性パターンを形成するパターン形成装置において、金属化合物溶液を用いてパターンを描画した基材と、減圧室として構成した処理室の照射窓からマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内にマイクロ波表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段と、前記パターンを描画した基材を前記処理室内に配置するための処理台とを備え、さらに、前記処理室の搬入口に付随させた第1予備室と、その搬出口に付随させた第2予備室と、前記第1予備室を減圧すると共に搬入口を開放させ、パターンを描画した基材を第1予備室から処置室内の処理台上に送り込む搬入機構と、前記第2予備室を減圧すると共に搬出口を開放させ、パターンを描画した基材を処置室内の処理台上から第2予備室に送り出す搬出機構とを備え、前記搬入機構による搬入と、処理台でのプラズマ処理と、前記搬出機構による搬出とを一連に行い、パターンを描画した基材を処理室内でマイクロ波表面波プラズマに晒し、導電性パターンを形成する構成となっている。
【0017】
上記した第1、2の発明では、所定の大きさのガラスや樹脂材などの基材に上記の金属化合物溶液を用いてパターンを描画した基材を予め用意する。
そして、第1の発明のパターン形成装置は、描画した基材を無電極のプラズマ発生手段の処理室に入れ、その処理台に載置し、続いて、マイクロ波エネルギー(マイクロ波電力)を供給する。
これにより、処理室内にはプラズマが発生するが、このプラズマが照射窓の近くとなる処理室内に多く発生する表面波プラズマとなる。
なお、本出願では、この表面波プラズマを、便宜上、マイクロ波表面波プラズマと言う。
したがって、基材の描画パターンが、電子温度が低く、電子密度が高いマイクロ波表面波プラズマに晒され、描画パターンが焼結され、導電性パターンが形成される。
【0018】
第2の発明のパターン形成装置は、パターンを描画した基材を第1予備室に入れると、その基材が搬入手段によって処理室内の処理台上に送り込まれる。
処理室は基材の搬入、搬出にかかわらずマイクロ波表面波プラズマを発生せておく構成としてあり、描画した基材が処理台上でマイクロ波表面波プラズマに晒され、描画パターンの微粒子が焼結して導電性パターンを形成する。
続いて、描画した基材が搬出手段によって第2予備室に送り出されるので、第2予備室から導電性パターンを有する基板を取り出すことができる。
【0019】
上記した第1、第2の発明のパターン形成装置は、描画した基材が処理台上でマイクロ波表面波プラズマに晒されるため、温度上昇によって生ずる変形や溶融などが生じることがあるが、この弊害を防ぐために、処理台には、基材の裏面を冷却する冷却手段を備えることができる。
【0020】
上記した第1、第2の発明のパターン形成装置は、フィルム状の基材に描画すると、基材の湾曲部分のために、処理台面に対し接合した部分と離れた部分が生じることがある。この問題を解決するため、描画した基材を空気吸引して処理台に接合させる吸引保持手段を備えてもよい。
【0021】
上記した第1、第2の発明のパターン形成装置は、描画した基材の接合度合いを高めるため、処理台面を緩やかな膨出面に形成することもできる。
【0022】
上記した第1、第2の発明のパターン形成装置は、マイクロ波表面波プラズマが描画した基材に均一に当たるように、処理台を回転させる駆動手段を備えることができる。
【0023】
なお、マイクロ波表面波プラズマに晒し、描画パターンが焼結して導電性パターンとなった後でも、高い温度状態のままで処理室から取り出すと、導電性パターンが大気に触れて酸化することがあるので、第1の発明のパターン形成装置の場合は、導電性基板の温度が通常温度(室温)に下がってから、処理室から取り出すようにする。
この問題を解決するため、第2の発明のパターン形成装置では、第2予備室に導電性パターンの酸化を抑制する酸化抑制ガスを供給するガス供給手段を備えることが好ましい。
【0024】
また、第3の発明のパターン形成装置は、溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画し、このパターンに存在する金属成分を焼結処理し導電性パターンを形成するパターン形成装置において、金属化合物溶液を用いてパターンを描画した長形のフレキシブル基材と、減圧室として構成した処理室の照射窓からマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内に表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段を備え、さらに、前記処理室内には、パターンを描画した前記フレキシブル基材を巻き込んだ巻込リールと、そのフレキシブル基材を巻き取る巻取リールと、これら2つのリール間に設け描画パターンにマイクロ波表面波プラズマを照射させるプラズマ処理ローラとを備え、巻込リールから供給される前記フレキシブル基材をプラズマ処理ローラを介して巻取リールに移動させる間に、描画パターンをマイクロ波表面波プラズマに晒して焼結処理を連続的に施し、導電性パターンを形成する構成となっている。
【0025】
上記の第3の発明のパターン形成装置は、描画したフレキシブル基板が、プラズマ処理ローラを通過する過程でマイクロ波表面波プラズマに晒されて加熱されるため、プラズマ処理ローラを冷却する冷却手段を設け、フレキシブル基材の裏面を冷やすようにすることが好ましい。
【0026】
さらに、プラズマ処理ローラと巻取リールとの間に冷却ローラを設け、プラズマ加熱で温度上昇した描画付きフレキシブル基材を冷却ローラで冷やし、温度を下げた状態とし巻取リールで巻き取ることが好ましい。
【0027】
また、上記した第1、第2、第3の発明のプラズマ発生手段としては、処理室の照射窓から周波数2450MHzのマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内には、電子温度が約1eV以下、電子密度が約1×1011〜1×1013cm−3のマイクロ波表面波プラズマを発生させることができる。
【0028】
なお、上記した導電性パターンの形成方法とその形成装置は、金属化合物溶液の金属成分が酸化している場合には、水素ガスなどの還元気体をプラズマ発生手段に供給し、描画パターンを還元気体の中で発生したマイクロ波表面波プラズマに晒し、還元処理と焼結処理を行う構成とする。
【発明の効果】
【0029】
上記したように、本発明は、金属化合物溶液を用いて基材に描画パターンをプラズマ発生手段を用いて焼結し、導電性パターン形成する。
プラズマ発生手段は、減圧室からなる処理室の照射窓からマイクロ波エネルギー(マイクロ波電力)を供給し、マイクロ波励起によって生じるマイクロ波表面波プラズマを処理室内に発生させる。
したがって、このマイクロ波表面波プラズマが、無電極で発生させることができること、電子温度が低温であること、電子密度が高いことなどの特質を有することから、次の効果を得ることができる。
【0030】
耐熱性の低い樹脂フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などを基材として使用する場合でも、電子温度が低いので、描画パターンの焼結時に基材が溶融したり、変形するようなことがない。
その上、従来の導電性パターンの形成方法に比べ、マイクロ波表面波プラズマで処理するので、電子密度が高く、焼結時間を極力短縮することができる。
この結果、この種の導電性パターンを有する基板の使用範囲が広がり、また、生産コストのローコスト化に有利となる。
【0031】
さらに、マイクロ波表面波プラズマは無電極のプラズマ発生手段で発生させるので、大きい面積の基材の導電性パターン形成が可能となる上、電極によって集中するプラズマによる基材ダメージ(変形や変色など)がない。
また、マイクロ波表面波プラズマによる焼結は、基材が変色することがないので、基材に高い透過率を必要とする基板の導電性パターン形成には最適となる。
その他、マイクロ波表面波プラズマは、マイクロ波エネルギーを供給する減圧室で発生させることができ、構成が簡単なプラズマ発生手段となることから、実用に供することが容易なものとなる。
【0032】
また、特に、金属成分が酸化されている金属化合物溶液を用いて描画した基材の描画パターンに対しては、水素ガスなどの還元性気体の雰囲気の中で発生させるマイクロ波表面波プラズマに晒すことで、低温でも焼結と同時に還元処理を行うことができる。
【0033】
なお、金属化合物溶液を用いて基材にパターンを描画した後、描画パターンを乾燥させ、乾燥させて描画パターンをマイクロ波表面波プラズマに晒すことが好ましい。
このように、乾燥さることにより、プラズマ処理の間に発生するガスが抑制されるため、焼結された導電性パターンに亀裂が発生したり、導電性パターンが基材から剥がれたりするようなことが防止される。
【0034】
さらに、金属微粒子を含有させた金属化合物溶液を用いて基材にパターンを描画した後、この描画パターンをマイクロ波表面波プラズマに晒して処理することによって、上記同様に導電性パターンを形成することができる。
【0035】
そして、金属微粒子を含有させた金属化合物溶液としては、貴金属微粒子、卑金属微粒子、銅微粒子、少なくとも表面が酸化されている卑金属微粒子または銅微粒子など金属微粒子の一種類または2種類以上の微粒子を混ぜ合わせた金属化合物溶液を用いることができる。
なお、微粒子径は、1〜100nm程度のものが好ましい。
特に、金属微粒子を含有させた金属化合物溶液を用いて描画したパターンからなる導電性パターンは、単位面積当たりの金属量を増加させることができる。
【0036】
したがって、本発明のパターン形成装置によれば、還元処理と焼結処理とを同時に連続して行うことができるので、導電性パターンを有する基板の連続生産に適する他、描画した長形のフレキシブル基材を巻込リールから供給しながらプラズマ処理ローラでプラズマ処理する構成とすれば、長形の描画付き基材の還元処理と焼結処理が可能になり、さらに、描画した基材を冷却しながらプラズマに晒す構成とすれば、基材の熱ダメージを極力少なくすることができる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態として示したパターン形成装置の簡略的な断面図である。
【図2】装置実施例1として示したパターン形成装置の簡略的な斜視図である。
【図3】装置実施例1のパターン形成装置を示す簡略的な断面図である。
【図4】装置実施例1のパターン形成装置に備える処理台、押上杆、搬入移動板と印刷物を示す斜視図である。
【図5】装置実施例1のパターン形成装置における印刷物の搬入動作を示す処理台部分の簡略図である。
【図6】上記した処理台に冷却手段として冷却パイプを設けた一例を示す簡略断面図である。
【図7】上記した押上杆を印刷物の吸引手段に利用した構成を示す処理台部分の簡略図である。
【図8】上記した処理台の表面を緩やかに膨出形成して印刷物をより正確に接合させる構成を示す処理台部分の簡略図である。
【図9】上記した処理台に多数の吸引孔を設けて印刷物を吸引保持する構成を示した処理台部分の簡略図である。
【図10】図9に示す処理台の断面図である。
【図11】装置実施例2として示したパターン形成装置の簡略的な斜視図である。
【図12】装置実施例2のパターン形成装置の簡略的な断面図である。
【図13】装置実施例2の改良例として示したパターン形成装置の簡略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
先ず、導電性パターンの形成方法の実施形態について説明する。
本発明の実施には、金属化合物溶液を使用してパターンを描画した基材を予め準備する。
金属化合物溶液としては、硫酸銅、濃アンモニア水、水酸化ナトリュム、高純度セルロースの混合物を使用することができ、また、パターンを描画する前に、ポリビニルアルコール水溶液を基材面に塗布することによって、基材に対する導電性パターンの密着性を高めることができる。
【0039】
このような金属化合物溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画する。
基材としては、用途に応じて、無機材料基板、合成樹脂基板を使用する。
合成樹脂基板は、フィルム状であってもよい。
【0040】
上記の基材に上記金属化合物溶液を使ってパターンを描画する。
具体的には、形成しようとする導電性パターンに対応するパターンを定め、金属化合物溶液を使って描画する。
この描画には、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷、スピンコート、バーコートなどで実現できる。
【0041】
上記のようにして描画した後は、基材上の描画パターンを乾燥させる。
この乾燥は、通常の方法で乾燥を行ってもよい。例えば、オーブン、赤外線加熱炉を用いて乾燥させることができる。
上記のようにパターンを描画して予め準備した基材は、マイクロ波表面波プラズマに晒して描画パターンの金属成分を融着させ、導電性を実現する。
【0042】
マイクロ波表面波プラズマは、減圧した処理室内にマイクロ波エネルギーを供給して表面波プラズマを発生させるプラズマ発生装置が使用できる。
マイクロ波表面波プラズマは、既に述べたように、電子密度が高く、電子温度が低い特質をもっており、無電極のプラズマであるので、基材にダメージを与えない。
詳しくは、マイクロ波表面波プラズマは、電子密度が1×1011〜1×1013cm−3と高く有機物を除去する作用が強いため、低温で描画パターンの焼結を促進し、導電性パターンを形成する。
【0043】
なお、金属化合物溶液の金属成分が酸化されている場合には、水素、一酸化炭素、アンモニア、窒素などのガス、或いは、これらの混合ガスなどの還元気体を供給し、この還元気体の雰囲気の中で発生させたマイクロ波表面波プラズマに描画パターンを晒し、描画パターンの還元処理と焼結処理を行う。
また、還元性気体には、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスを混合して用いれば、プラズマが発生し易くなるなどの効果がある。
【0044】
続いて、導電性パターンのパターン形成装置の実施形態について、図1を参照しながら説明する。
図1は、パターン形成装置を示す概略構成図であり、処理室11内に設けた処理台12にプラズマ処理する基材(描画した基材)100を載置する。
なお、描画した基材100は、既に述べたように金属化合物溶液を用いてパターンを描画し、描画パターンを乾燥させて予め準備した基材で、処理室11のドア13を開いて処理台12に載置し、また、処理室11内から取り出すようにしてある。
【0045】
処理室11の天井壁には、石英ガラスで密閉したマイクロ波照射窓14を設け、このマイクロ波照射窓14から照射するマイクロ波電力(マイクロ波エネルギー
)によってマイクロ波表面波プラズマを発生させる。
マイクロ波照射窓14には、導波管15に設けた結合孔16からマイクロ波電力を送る。
すなわち、導波管15は、アイソレータ17、パワーモニタ18、チューナー19などと共に導波管系回路を形成しており、マグネトロン20が出力する周波数2450MHzのマイクロ波電力をその導波管系回路を介して送り、結合孔16とマイクロ波照射窓14を通して処理室11内に伝播する。
なお、マイクロ波電力は2450MHzの高周波電力を言うが、マグネトロン20の精度誤差などのために2450MHz/±50MHzの周波数範囲が許されている。
【0046】
また、処理室11には、水素ガスを供給する水素供給経路(パイプ)21が配設してある。なお、この水素供給経路21には流量計22、バルブ23が設けてある。
さらに、処理室11には、処理室11内を減圧するための真空ポンプ経路(パイプ)24が設けてある。なお、この真空ポンプ経路24には、真空ポンプ25、バルブ26が設けてある。
その他、処理室11には、処理室11内の減圧状態を計測する圧力計27などが配設してある。
【0047】
上記したパターン形成装置によれば、処理室11内に供給されたマイクロ波電力が水素ガスの雰囲気の中でプラズマ化し、処理室11内にはマイクロ波照射窓14に沿ったマイクロ波表面波プラズマが発生する。
このマイクロ波表面波プラズマは、電子温度が約1eV以下と低く、電子密度が約1×1011〜1×1013cm−3と高いマイクロ波表面波プラズマとして発生するので、このマイクロ波表面波プラズマに晒される描画した基材100が、そのパターンに存在する金属成分の酸化還元と金属成分同士の融着が短時間で行われ、導電性パターンを形成する。
【0048】
続いて、パターンの形成装置の実施例について装置実施例1、2として図面に沿って説明する。
なお、以下の実施例の説明では、ガラス、樹脂フィルムなどを「基材」、金属化合物溶液を用いてパターンを描画した基材を「印刷物」と言う。
【0049】
装置実施例1
図2は装置実施例1として示したパターン形成装置の簡略的斜視図、図3は同パターン形成装置の簡略的な断面図である。
本実施例は、金属化合物溶液を用いて基材に描画し、描画したパターンを乾燥させた四辺形の印刷物100を予め作成し、この印刷物100を加熱して導電性パターンを形成するものである。
【0050】
図示するように、このパターン形成装置は、マイクロ波表面波プラズマ30を発生させる処理室31内に処理台32を設け、印刷物100をこの処理台32に載置させてプラズマに晒す。
そして、本装置実施例では、3台のマグネトロン33a、33b、33cが出力するマイクロ波電力を各導波管系回路34a、34b、34cを介して処理室31内に送り、広い範囲のマイクロ波表面波プラズマを発生させる。
なお、導波管系回路は、既に述べたように、導波管35a、35b、35cに設けられたアイソレータ、パワーモニタ、チューナーなどの回路系となっている。
【0051】
また、処理室31の天井壁には、平行配置した導波管35a、35b、35cの各々の結合孔に対向させたマイクロ波電力の照射窓36a、36b、36cが設けてある。
なお、これら照射窓36a、36b、36cは石英ガラスで形成して処理室31を密閉する構造としてある。
また、処理室31には、水素ガスを供給する水素供給経路(パイプ)37、真空ポンプ経路38が配設してある。
なお、参照符号39は水素供給経路(パイプ)37に設けたバルブ、参照符号40、41は真空ポンプ経路38に設けたバルブ、真空ポンプである。
【0052】
一方、処理室31には、その搬入口31aに連通可能とした第1予備室42と、その搬出口31bに連通可能とした第2予備室43とが設けてある。
すなはち、第1予備室42は、搬入口31aに備えた常閉構造のシャッタ44を開放させて処理室31と連通させ、第2予備室43は搬出口31bに備えた常閉構造のシャッタ45を開放させて処理室31と連通させる。
【0053】
第1予備室42は、印刷物100を処理室31に搬入させる待機室とも言うべき部室で、これには、密閉することができる蓋板42aが設けてあり、この蓋板42aを開けて印刷物100を第1予備室42内に納入する。
また、この第1予備室42には、印刷物100を載せて処理室31内に運ぶための搬入移動板46が設けてある。
なお、この搬入移動板46については、第1予備室42と処理室31内の処理台32上との間を進退させる駆動機構が備えてあるが、この搬入移動板46は手動で進退操作させる構成としてもよい。
【0054】
また、上記した第1予備室42には、真空ポンプ経路(パイプ)47が配設してあり、蓋板42aを閉めた状態で第1予備室42を減圧してシャッタ44を開き、印刷物100を処理室31内に搬入する。
【0055】
搬入移動板46と処理台32とは図4に示す構成としてある。
すなわち、処理台32の四方位置には貫通孔32aを設けると共に、これら貫通孔32a内を通って印刷物100を一旦押し上げる押上杆48が備えてある。
この押上杆48は、上下方向に進出し、また、後退する構成として処理台32の下側となる処理室部所に設けてある。
【0056】
図5には、印刷物100の搬入動作を示す。
図5(A)に示すように、印刷物100を載せた搬入移動板46が処理台32上に進出したとき、図5(B)に示すように、押上杆48が上昇して印刷物100を押し上げる。
この押し上げ動作で、搬入移動板46が後退し、その後、図5(C)に示すように、押上杆48が下降し、印刷物100が処理台32に載置される。
【0057】
第2予備室43は、処理室31内で焼結された印刷物100を搬出するためのもので、第1予備室42とほぼ同様に構成してある。
すなわち、真空ポンプ経路(パイプ)49によって減圧し、減圧状態でシャッタ45を開放させ搬出移動板50を往復移動させ、印刷物100を第2予備室43内に搬出する。
【0058】
また、搬出時には、図5に示す搬入動作に比べて逆動作となる。
つまり、印刷物100が図5(C)の状態から(B)のように押し上げられ、処理台32と印刷物100との間に搬出移動板50が入り込む。
続いて、押上杆48が下降して印刷物100が搬出移動板50に載せられ、搬出移動板50の後退動によって搬出される。
なお、この搬出移動板50については、第2予備室43と処理室31内の処理台32上との間を進退させる駆動機構が備えてあるが、この搬出移動板50は手動で進退操作させる構成としてもよい。
【0059】
印刷物100を第2予備室43内に搬出した後は、シャッタ45を閉成し、さらに、ガス供給経路51から第2予備室43内に冷却ガスを供給し、印刷物100の温度を下げた後、蓋体43aを開いて印刷物100を取り出す。
これは、焼結直後の印刷物100は温度が上っているため、直ちに印刷物100を第2予備室43から取り出すと、金属化合物の焼結パターンが酸化する恐れがあるからである。
なお、冷却ガスとしては、水素ガス、アルゴンガス、窒素ガス、へリウムガス、二酸化炭素ガスなどが有効である。
【0060】
その他、図3に示す参照符号52、53は第1、第2予備室42、43に空気を送り大気圧とするための空気経路(パイプ)、54は真空ポンプ、55〜59はバルブを示す。
【0061】
上記した通り、装置実施例1のパターン形成装置は、予め作成した印刷物100を第1予備室42に納入して搬入移動板46に載せて蓋体42aを閉めることによって、第1予備室42を減圧すると共に、シャッタ44を開放し、搬入移動板46による印刷物100の搬入が行なわれる。
なお、処理台32に印刷物100を載置した搬入移動板46が後退すると、シャッタ44が閉成し、その後、第1予備室42が常圧(大気圧)に戻される。
【0062】
処理台32に載置された印刷物100がマイクロ波表面波プラズマ30に晒され、印刷物100が加熱されて描画パターンの金属成分が焼結する。
その後、シャッタ45が開放し、減圧されている第2予備室43から搬出移動板50が進出し、第2予備室43内に印刷物100を搬出する。
続いて、シャッタ45が閉成すると共に、導電性パターンを有する基板となった印刷物100が冷却ガスによって冷やされる。
【0063】
以上より、焼結された印刷物100、つまり、導電性パターン形成された基板を第2予備室43から取り出すことができる。
この結果、本装置実施例1によれば、描画パターンの焼結を半自動的に行って導電性パターンを形成することができる。
【0064】
上記した装置実施例1では、処理台32を回転させ、マイクロ波表面波プラズマ30を印刷物100全体に均一に照射させる構成とすることができる。
また、図6に示すように、処理台32には冷水を循環させる冷却パイプ60を設け、マイクロ波表面波プラズマ30よって加熱される印刷物100の裏面から冷却することもできる。
【0065】
他方、印刷物100は、処理台32に載せてあるだけであるので、安定した位置が保てない場合がある。
したがって、押上杆48を吸引パイプとして構成し、印刷物100を処理台32に載置する図5(B)の次のステップとして、図7の動作状態を作り、印刷物100を押上杆48によって吸引して処理台32上に安定に載置させることができる。
【0066】
また、処理台32は、印刷物100を面接合させるために、図8に示すように、表面を緩やかな膨出形状とすることが好ましく、また、押上杆48を利用した吸引パイプで印刷物100を吸引保持することができる。
さらに、空気吸引する手段としては、図9、図10に示すように、処理台32に多数の吸引孔61を設けてもよい。なお、処理台32には空気吸引パイプ62などを備える。
【0067】
装置実施例2
図11は、パターン形成装置の他の実施例を示す簡略的な斜視図、図12は同パターン形成装置の簡略的な断面図である。
本実施例は、金属化合物溶液を用いて所定幅の長形フレキシブル基材に描画し、乾燥させた長形の印刷物200を予め準備し、この印刷物200をマイクロ波表面波プラズマに晒して導電性パターンを形成するものである。
【0068】
図示する如く、この装置実施例2では、長形の印刷物200を巻き込んだ巻込リール72と、印刷物200を巻き取る巻取リール73と、これらリール72、73の間となるようにしたプラズマ処理ローラ74とを処理室71内に配置した構成としてある。
また、本装置実施例2では、ガイドローラ75、76と共に、プラズマ処理ローラ74と巻取リール73との経路間には冷水を循環させる冷却ローラ77、78、79、80が設けてある。
なお、上記のリール72、73やローラ74については、これらを回転制御する駆動機構を備える他、これらリール72、73やローラ74は処理室71から取り出しできる構成としてある。
【0069】
さらに、装置実施例1と同様に、マイクロ波電力を伝送する3つの導波管81a、81b、81cを平行配置し、これら導波管の結合孔から照射窓82a、82b、82cを通して処理室71内にマイクロ波電力を伝播してマイクロ波表面波プラズマを発生させる構成としてある。
その他、本装置実施例2では、水素ガスを供給するガス供給経路83が、導波管81a、81b、81cに対応させた分路パイプ83a〜83dとして配設してあり、同様に真空ポンプ経路84についても、分路パイプ84a〜84dとして配設してある。
【0070】
このように、ガス供給経路83と、真空ポンプ経路84とを分路パイプで配設することで、水素ガスが処理室71内に均等化され、また、図12より分かるように、分路パイプ先端を処理ローラ74の上方向に向けることで、還元性気体としての水素ガスを一層効果的に利用することができる。
【0071】
この装置実施例2のパターン形成装置は、巻込リール72から送り出された印刷物200がプラズマ処理ローラ74に沿って移動する間に、マイクロ波表面波プラズマに晒され、印刷物200の描画パターンの金属成分が焼結される。
その後、冷却ローラのガイドにより移動している過程で印刷物200の温度が下がり、低温となった印刷物200が巻取リール73によって巻き取られる。
【0072】
このように、本装置実施例2によれば、巻込リール72から送り出される印刷物200を連続して加熱し、その描画パターンの金属成分を焼結させることができる。
また、マイクロ波表面波プラズマの加熱で温度上昇した印刷物200は冷却ローラ77〜80を介して送り、温度を下げた印刷物200を巻取リール73によって巻き取るので、巻取リール73が巻き終わりとなれば、巻取リール73を処理室71から取り外すことができる。
なお、巻取リール73に巻かれた焼結済みの印刷物200はその後に適宜加工し、導電性パターンの電気部品とする。
【0073】
図13は、装置実施例2の改良例を示すパターン形成装置の簡略的な断面図である。
この改良例では、3つのプラズマ処理ローラ74a、74b、74cを備え、また、各々の導波管81a、81b、81cには、プラズマ処理ローラ74a、74b、74cに対応させた照射窓85a、85b、85cを設けたことが特徴となっている。
この改良例によれば、印刷物200が移動中に3つのプラズマ処理ローラ74a、74b、74cの各々の部所でマイクロ波表面波プラズマに晒されることから、印刷物200の描画パターンの焼結時間を一段と短縮させることができる。
【0074】
なお、上記した装置実施例2と改良例のパターン形成装置においては、マイクロ波表面波プラズマが印刷物200に均等に晒されるように、リールや処理ローラを正逆転させ、印刷物200を少ない距離で往復動せる正逆転駆動機構を備えることができる。
また、上記装置実施例2と改良例は、プラズマ処理ローラを冷却する冷却手段を備え、印刷物200の裏面を冷しながら、印刷物200をマイクロ波表面波プラズマに晒すようにすることもできる。
【0075】
続いて、パターン形成方法の実施例について説明する。
この方法実施例については、図2、図3に示したパターン形成装置を使用して下記する実験例1、2、3を行った。
方法実施例1
金属化合物溶液としては、
硫化銅(CuSO・5HO):1g、
濃アンモニア水:10ml、
水酸化ナトリユム(2N NaOH):4ml、
高純度セルロース:0.2g、
を混ぜ合わせて製産した。
そして、上記した金属化合物溶液をガラス基材に塗布して描画し、その後、室温で自然乾燥させて印刷物100を作製した。
【0076】
続いて、印刷物100を処理室31に入れ、マイクロ波表面波水素プラズマ(水素ガス雰囲気の中の表面波プラズマ)を、10Pa、マイクロ波電力1000Wの条件で発生させ、印刷物100を1分間マイクロ波表面波水素プラズマに晒した後、処理室31から取り出した。
印刷物100に変形、変色などのダメージはなかった。
上記の処理で、ガラス基材に塗布して乾燥させた金属化合物の還元処理と、焼結処理が行われ、銅(Cu)パターンを有するガラス基材が製造できた。
【0077】
方法実施例2
金属化合物溶液を塗布する前に、ガラス基材にポリビニルアルコール水溶液を塗布し、方法実施例1と同様にして実験した。
この方法実施例2では、銅(Cu)が一段とガラス基材に密着することが確認された。
【0078】
方法実施例3
金属化合物溶液として、
水:20g、
クエン酸(C6H8O7):5g、
水酸化銅 Cu(OH):3g
にポリビニルアルコール(PVA)を溶かして製産した。
そして、この金属化合物溶液をガラス基材に塗布した後、乾燥させて印刷物100を作成し、方法実施例1と同様にマイクロ波表面波水素プラズマに晒して処理した。
この方法実施例3においても、印刷物100に変形、変色などのダメージはなく、銅(Cu)パターンを有するガラス基材が製造できた。
【0079】
方法実施例4
アセチルアセトンと、水酸化銅と、グリコールを混ぜ合わせて金属化合物溶液を製産し、この金属化合物溶液をガラス基材に塗布して印刷物100を作成し、方法実施例1と同様にマイクロ波表面波プラズマで処理することによって、銅(Cu)パターンを有する基材が製造できることが確認された。
この方法実施例によれば、金属化合物溶液に水を使用しないので、印刷物100の乾燥工程を必要としない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
プリント配線基板、RFIDタグアンテナ、メンブレンスイッチの配線、電磁波遮蔽材、フラットパネルディスプレイ用の電極、配線、太陽電池などの電池の電極、電波反射板、アンテナ、曇り防止板などの導電性パターンの形成に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
11 処理室
12 処理台
14 マイクロ波照射窓
15 導波管
21 水素供給経路
24 真空ポンプ経路
31 処理室
32 処理台
35a、35b、35c 導波管
36a、36b、36c 照射窓
37 水素供給経路
38 真空ポンプ経路
42 第1予備室
43 第2予備室
44、45 シャッタ
46 搬入移動板
48 押上杆
50 搬出移動板
71 処理室
72 巻込リール
73 巻取リール
74 処理ローラ
77〜80 冷却ローラ
74a、74b、74c 処理ローラ
100、200 印刷物
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画し、前記描画パターンを処理して導電性パターンを形成する方法であって、
前記溶液には、金属化合物溶液を用い、
前記描画パターンの処理には、減圧室からなる処理室の照射窓からマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内に表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段を用い、
前記描画パターンを、電子温度が低く、電子密度が高いマイクロ波表面波プラズマに晒し、導電性パターンを形成することを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載した導電性パターンの形成方法において、
前記描画パターンの処理には、前記処理室内にマイクロ波エネルギーと共に水素ガス等の還元性気体を供給し、還元性気体の雰囲気の中で、表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段を用い、
前記描画パターンを、還元性気体の雰囲気の中で発生させたマイクロ波表面波プラズマに晒して還元処理と焼結処理とを行なうことを特徴とする導電性パターンを形成する導電性パターンの形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した導電性パターンの形成方法において、
前記溶液には、金属微粒子を含有させた金属化合物溶液を用いたことを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載した導電性パターンの形成方法において、
前記基材に金属化合物溶液を用いて描画したあと乾燥させる工程を備え、乾燥させた描画パターンをマイクロ波表面波プラズマに晒し、導電性パターンを形成することを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載した導電性パターンの形成方法において、
前記金属化合物溶液は、硫酸銅、濃アンモニア水、水酸化ナトリュム、高純度セルロースの混合物、或いは、水、クエン酸(C)、水酸化銅Cu(OH)にポリビニルアルコール(PVA)を溶かした混合物、または、アセチルアセトン、水酸化銅、グリコールの混合物などを用いることを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項6】
請求項3に記載した導電性パターンの形成方法において、
金属微粒子を含有させた金属化合物溶液は、貴金属微粒子、卑金属微粒子、銅微粒子、少なくとも表面が酸化されている卑金属微粒子または銅微粒子など金属微粒子を混ぜ合わせた金属化合物溶液であることを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載した導電性パターンの形成方法において、
前記基材がガラス材又は合成樹脂材からなることを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載した導電性パターンの形成方法において、
パターンを描画する前に、前記基材にポリビニルアルコール水溶液を塗布することを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項9】
溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画し、前記描画パターンを処理して導電性パターンを形成するパターン形成装置において、
金属化合物溶液を用いてパターンを描画した基材と、
減圧室として構成した処理室の照射窓からマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内にマイクロ波表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段と、
パターンを描画した前記基材を前記処理室内に配置するための処理台とを備え、
パターンを描画した基材を前記処理台に配置し、前記描画パターンを処理室内で、マイクロ波表面波プラズマに晒し、導電性パターンを形成することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項10】
溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画し、前記描画パターンを処理して導電性パターンを形成するパターン形成装置において、
金属化合物溶液を用いてパターンを描画した基材と、
減圧室として構成した処理室の照射窓からマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内にマイクロ波表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段と、
パターンを描画した前記基材を前記処理室内に配置するための処理台とを備え、
さらに、前記処理室の搬入口に付随させた第1予備室と、その搬出口に付随させた第2予備室と、
前記第1予備室を減圧すると共に搬入口を開放させ、パターンを描画した前記基材を第1予備室から処置室内の処理台上に送り込む搬入機構と、
前記第2予備室を減圧すると共に搬出口を開放させ、パターンを描画した前記基材を処置室内の処理台上から第2予備室に送り出す搬出機構とを備え、
前記搬入機構による搬入と、処理台でのプラズマ処理と、前記搬出機構による搬出とを一連に行い、パターンを描画した前記基材を処理室内で、マイクロ波表面波プラズマに晒し、導電性パターンを形成することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載したパターン形成装置において、
金属微粒子を含有させた金属化合物溶液を用いてパターンを描画した基材と、
この基材を前記プラズマ発生手段の処理台に載置してマイクロ波表面波プラズマに晒し、導電性パターンを形成することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載したパターン形成装置において、
金属化合物溶液を用いてパターンを描画した基材と、
基材に描画したパターンを乾燥させる乾燥手段と、
この描画を乾燥させた基材を前記プラズマ発生手段の処理台に載置してマイクロ波表面波プラズマに晒し、導電性パターンを形成することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかに記載したパターン形成装置において、
前記処理室にマイクロ波エネルギーと共に水素ガスなどの還元性気体を供給し、還元性気体の雰囲気の中でマイクロ波表面波プラズマを発生させるプラズマ発生手段を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれかに記載したパターン形成装置において、
前記処理台には、パターンが描画された基材の裏面を冷却する冷却手段を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項15】
請求項9乃至13のいずれかに記載したパターン形成装置において、
前記処理台には、前記描画した基材を空気吸引し、処理台に接合させる吸引保持手段を設けたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項16】
請求項9乃至13のいずれかに記載したパターン形成装置において、
前記処理台を回転させる駆動手段を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項17】
請求項10乃至13のいずれかに記載したパターン形成装置において、
第2予備室には、描画した基材を取り出す前に、焼結された導電性パターンの酸化を抑制する酸化抑制ガスの供給手段を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項18】
溶液を用いて非導電性の基材にパターンを描画し、前記描画パターンを処理して導電性パターンを形成するパターン形成装置において、
金属化合物溶液を用いてパターンを描画した長形のフレキシブル基材と、
減圧室として構成した処理室の照射窓からマイクロ波エネルギーを供給し、処理室内にマイクロ波表面波プラズマを発生させる無電極のプラズマ発生手段とを備え、
さらに、前記処理室内には、パターンを描画した前記フレキシブル基材を巻き込んだ巻込リールと、そのフレキシブル基材を巻き取る巻取リールと、これら2つのリール間に設け描画パターンにマイクロ波表面波プラズマを照射させるプラズマ処理ローラとを備え、
巻込リールから供給される前記フレキシブル基材をプラズマ処理ローラを介して巻取リールに移動する間に、描画パターンをマイクロ波表面波プラズマに晒して焼結処理を連続的に施し、導電性パターンを形成することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項19】
請求項18に記載したパターン形成装置において、
金属微粒子を含有させた金属化合物溶液を用いてパターンを描画したフレキシブル基材と、
描画してフレキシブル基材を巻込リールからプラズマ処理ローラを介して巻取リールに移動させる間に、描画パターンをマイクロ波表面波プラズマに晒して焼結処理を連続的に施し、導電性パターンを形成することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項20】
請求項18または19に記載したパターン形成装置において、
長形のフレキシブル基材に金属化合物溶液を用いて描画したパターンを乾燥させる乾燥手段と、
描画を乾燥させたフレキシブル基材を巻込リールからプラズマ処理ローラを介して巻取リールに移動させる間に、描画パターンをマイクロ波表面波プラズマに晒して焼結処理を連続的に施し、導電性パターンを形成することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項21】
請求項18乃至20のいずれかに記載したパターン形成装置において、
前記処理室にマイクロ波エネルギーと共に水素ガスなどの還元性気体を供給し、還元性気体の雰囲気の中でマイクロ波表面波プラズマを発生させるプラズマ発生手段を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項22】
請求項18乃至21のいずれかに記載したパターン形成装置において、
プラズマ処理ローラには、フレキシブル基材の裏面を冷却する冷却手段を設けたことを特徴とするパターン形成装置。


























【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−100918(P2011−100918A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255959(P2009−255959)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(390029012)株式会社エスイー (28)
【Fターム(参考)】