説明

導電性パターンシートの作製方法

【課題】十分な電気伝導性を有し、高精細であり、且つ導電性パターンと基材との密着性が向上した導電性パターンシートの作製方法を提供すること。
【解決手段】基材上に光触媒活性材料を含有する層を設け、該層に金属化合物を含む溶液を配置し、露光工程によって該金属化合物中の金属を光還元することで配線となる金属パターンを形成することを特徴とする導電性パターンシートの作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒活性材料の存在で光還元することで配線となる金属パターンを形成する導電性パターンシートの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細な導電性パターンを有する電子回路等を作製するには、導電層が形成された基材にレジスト層を積層し、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射し、次いで現像した後、不要なレジスト層を除去するフォトリソグラフによる方法が行われていた。しかしながら、このフォトリソグラフによる方法は、多数の工程が必要であるため煩雑である上にコスト的にも問題があり、更には除去したレジスト層の廃棄は環境に負荷を与えるという問題もあった。
【0003】
このような問題を解決するために、インクジェット装置などの印字装置を用いて、導電性インクを基材面に直接射出して導電性パターンを形成する方法が提案されている。例えば、基材面の所定部に光重合開始剤含有インクジェットインクからなる導電回路形成用パターンを設け、そして前記パターン上に光重合開始剤を含まない紫外線硬化型導電性インク層を設け、紫外線を照射して前記パターンに対応する部分の前記紫外線硬化型導電性インク層を硬化させることで、基材とインクの密着性を向上させようというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
別の例として、基板上に非導電性の溝構造を形成した後に、該基板上の溝にインクジェット法で無電解メッキ触媒含有溶液をパターニングし、更に無電解メッキ法または無電解メッキ法に続く電解メッキ法により、該溝構造の開口部に導電性物質を析出させることで、導電性パターンの精度を向上させようというものである(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
本発明者は上記技術を鋭意検討した結果、特許文献1に提案されている方法は基板との密着性は向上するものの、インクに含有されている紫外線硬化型の樹脂が配線中に残留するために抵抗値が十分に下がらないという課題があった。また、特許文献2に提案されている方法は導電性パターンの精度は向上するものの、本来配線には不要な非導電性の溝構造のため高解像度化には向かず、更には導電性材料と基板との密着性が悪いという課題があった。
【特許文献1】特開2004−152805号公報
【特許文献2】特開2005−50969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は十分な電気伝導性を有し、高精細であり、且つ導電性パターンと基材との密着性が向上した導電性パターンシートの作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0008】
1.基材上に光触媒活性材料を含有する層を設け、該層に金属化合物を含む溶液を配置し、露光工程によって該金属化合物中の金属を光還元することで配線となる金属パターンを形成することを特徴とする導電性パターンシートの作製方法。
【0009】
2.前記金属化合物を含む溶液をインクジェット記録装置を用いて射出描画するインクジェット記録で配置することを特徴とする前記1に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【0010】
3.前記インクジェット記録が圧力印加手段と電界印加手段とを用いた方法であることを特徴とする前記3に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【0011】
4.前記金属化合物を含む溶液を光触媒活性材料を含有する層全面に配置することを特徴とする前記1に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【0012】
5.前記金属化合物を含む溶液の金属が銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、亜鉛から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【0013】
6.前記露光工程の後に無電解メッキ処理工程または電解メッキ処理工程を有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【0014】
7.前記露光工程の後に光触媒活性材料を含有する層を洗浄する工程を有することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【0015】
8.前記光触媒活性材料が二酸化チタンであることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、十分な電気伝導性を有し、高精細であり、且つ導電性パターンと基材との密着性が向上した導電性パターンシートの作製方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の導電性パターンシートの作製方法は、基材に光触媒活性材料を含有する層を設け、該層に金属化合物を含んだ溶液を配置し、露光工程によって該金属化合物中の金属を光還元し、配線を形成するための金属パターンを形成することを特徴とする。
【0019】
〔基材〕
本発明に用いられる基材としては、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基板、シリコン基板、セラミックス基板、ガラス基板等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる樹脂フィルムの材質としては、特に限定はないが、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリレート系フィルム、ポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。これらの素材を主成分とする異なる材質のフィルムを積層したフィルムであってもよい。
【0021】
また、本発明においては、基材とその上に設ける光触媒活性材料を含有する層との密着性を高める観点から、基材表面に予め表面をコロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、プライマー処理、デスミア処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、シランカップリング剤や酸やアルカリや界面活性剤等を含む化学薬品処理を施すことが好ましい。
【0022】
密着性を高める機構としては、接着阻害となる表面付着の異物を取り除き表面をクリーンにする、部材界面の凹凸によるアンカー効果を用いる、両部材との界面に接着化合物を挿入する、等が挙げられる。また、光触媒活性材料を含有する層に含有するバインダーは、予め基材とバインダーとの接着性が良い化合物を選択することが好ましい。例えば、ポリエステル系の基材にはポリウレタン系バインダー、ポリイミド系の基材、ガラス繊維練りこみエポキシ系基板にはポリアクリル系バインダーやポリエポキシ系バインダー等が挙げられる。
【0023】
〔光触媒活性材料を含有する層〕
本発明に係る光触媒活性材料を含有する層は、光触媒活性材料を含む化合物から構成される。本発明における光触媒活性材料は、光を照射することにより周囲の物質を還元する機能を有する材料を指し、該層は光触媒活性材料とともに必要に応じて、層の強度を高める目的で高分子バインダー等を有していてもよい。バインダーは基材と光触媒活性材料との間に介在して物理的強度を与える機能、金属形成時に生じる応力を緩和させる機能、基材と光触媒活性材料を含有する層との密着性を向上させる機能等を有する。
【0024】
本発明に係る光触媒活性材料を含有する層の好ましい形態は、多孔質形状である。
【0025】
本発明に係る光触媒活性材料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、SrTiO3、Ag−NbO2F、CdS、ZnS等の酸化物や硫化物が挙げられる。本発明に係る光触媒活性材料としては、二酸化チタンが好ましい。
【0026】
(バインダー)
本発明に係るバインダーは、基材、金属酸化物、金属皮膜等を結着できるものであれば、既知の高分子化合物を用いることができる。好ましく用いられるバインダーしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0027】
ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0028】
更にリサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載されたもの、また米国特許第4,960,681号明細書、特開昭62−245260号公報等に記載の高吸水性ポリマー、即ち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0029】
これらのバインダーは硬化されていてもよい。硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号、同4,791,042号の各明細書、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号の各公報等に記載の硬膜剤が挙げられる。
【0030】
より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ホウ酸、メタホウ酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号公報に記載の化合物)が挙げられる。水系化合物としてゼラチンを用いる場合は、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合は、ホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0031】
これらの硬膜剤は水系化合物1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため、熱処理や硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0032】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子の内、特開平10−76621号公報に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
〔金属化合物を含む溶液〕
本発明に係る金属化合物を含む溶液としては、金属イオンや金属微粒子、金属錯体等を含む溶液であればいかなる組成であってもよい。好ましく用いられる金属種としては、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、亜鉛、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0034】
本発明に係る金属化合物を含む溶液をインクジェット記録のインクとして用いる場合、インクに水溶性有機溶媒を用いることができる。水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0035】
インクには、その他には、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。
【0036】
具体的には、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号の各公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号の各公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号の各公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤等を挙げることができる。
【0037】
インクの調製については特に制限はないが、各種添加剤を含むインクの調製を行う場合、調製過程での凝集、沈降が生じないようにインクを調製することが好ましい。必要に応じて、添加物の添加順序、添加速度を調節する等の調合方法を取ることができる。
【0038】
インクの粘度は特に制限はないが、25℃における粘度が2mPa・s以上、10mPa・s以下であることが好ましい。また、インクの粘度はシェアレート依存性がない方が好ましい。
【0039】
また、インクにおいては、表面張力が40mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは25〜35mN/mである。本発明で言うインクの表面張力(mN/m)は25℃で測定した表面張力で値であり、その測定法は一般的な界面化学、コロイド化学の参考書等において述べられているが、例えば、新実験化学講座第18巻(界面とコロイド)、日本化学会編、丸善株式会社発行:P.68〜117を参照することができる。
【0040】
また、インク保存安定性の観点から、電気伝導度が1mS/m以上、500mS/m以下であることが好ましく、より好ましくは1mS/m以上、200mS/m以下であり、更に好ましくは10mS/m以上、100mS/m以下である。また、インクの調製においては、イオン濃度を適宜調整することが好ましい。
【0041】
〔金属化合物を含む溶液の配置方法〕
本発明に係る金属化合物を含む溶液の光触媒活性材料を含有する層への配置は、層全面に配置しても、所望のパターンで配置してもよい。
【0042】
配置方法としては、ディップ塗布方式、スプレー方塗布式、気相を介する噴霧方式として圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0043】
また、印刷方式としてはスクリーン印刷、フレキソ印刷、凸版や凹版印刷を挙げることができる。塗布方式としては公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0044】
本発明においては、露光工程の光照射パターンの線幅と同等以下の線幅で金属化合物を含む溶液を配置できる方が好ましいため、これらの内インクジェット記録装置を用いたインクジェット記録が好ましく、更には電気回路等に使用される線幅が20μm以下の細線を高精度に形成できる観点から、インクジェット記録装置による導電性インクの吐出方法が、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた方法であることが好ましい。
【0045】
以下、圧力印加手段と電界印加手段とを用いたインクジェット記録について説明する。
【0046】
一般に、電子回路等で要求されている微細な線幅のパターンを高精細に描画するには、インクジェット記録装置から射出するインク液滴をより微細化する必要がある。しかしながら、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)や電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)のみの出力手段を用いて、極微小インク液滴を吐出した場合、ノズルから吐出したインク液滴に付与される運動エネルギーは、インク液滴の半径の3乗に比例して小さくなるため、微小液滴は空気抵抗に耐えるほどの十分な運動エネルギーを確保できず、空気対流などによる擾乱を受け、正確な着弾が困難となる。
【0047】
更にインク液滴が微細になるほど表面張力の効果が増すために、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が激しくなる。このため微細液滴は飛翔中の著しい質量の消失を招き、着弾時に液滴の形態を保つことすら難しいという問題があった。このように着弾位置の高精度化はインク液滴の微細化と相反する課題であり、これら2つを同時に実現することに対し障害を抱えていた。
【0048】
本発明においては、上記課題を解決する方法として圧力印加手段と電界印加手段とを用いた射出方法を適用することが好ましい。
【0049】
この射出方法は、0.1〜100μmの内径の吐出口を有するノズルを用い、導電性インクに任意波形の電圧を印加して、この導電性インクを帯電させることにより、そのインク液滴を吐出口から、樹脂層を有する基材に吐出する方法である。即ち、この射出方法はノズルの吐出口の内径が0.1〜100μmであり、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内に供給された導電性インクに任意波形の電圧を印加することにより電界を集中させることができる。
【0050】
その結果、形成されるインク液滴を微小で、且つ形状の安定化したものとすることができる。従って、従来よりも微細な、例えば、1pl(ピコリットル)未満の複数のインク液滴からなるインク液滴パターンを樹脂層表面に形成することができる。また、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内の導電性インクに印加する総印加電圧を低減することができる。
【0051】
また、インク液滴はノズルから吐出された直後、電界と電荷の間に働く静電力により加速されるが、ノズルから離れると電界は急激に低下するので、その後は空気抵抗により減速する。しかしながら、微小液滴で且つ電界が集中したインク液滴は、樹脂層に近づくにつれ鏡像力により加速される。この空気抵抗による減速と鏡像力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることが可能となる。
【0052】
図1は、本発明に好ましく適用できる圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置の一例を示した概略断面図である。
【0053】
図1において、インクジェット記録装置20は、帯電可能な導電性インクの液滴を先端部から樹脂層を有する基材Kに向かって吐出する超微細径のノズル21と、ノズル21の先端部に対向する面側に配置され、その対向面で基材Kを支持する対向電極23と、ノズル21内の流路22に導電性インクを供給する導電性インク供給手段と、ノズル21内の導電性インクに任意波形の吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段(電圧印加手段)25とを備えている。なお、上記ノズル21と導電性インク供給手段の一部の構成と吐出電圧印加手段25の一部の構成とは、ノズルプレート26と一体的に形成されている。
【0054】
ノズル21はノズルプレート26の下面層26cから垂設され、この下面層26cと一体的に形成されている。ノズル21の先端部は対向電極23に指向している。ノズル21の内部には、その先端部からその中心線に沿って貫通するノズル内流路22が形成されている。
【0055】
ノズル21は、例えば、ガラスなどの電気絶縁体により、超微細径で形成されている。ノズル21の各部の寸法の具体例を挙げると、ノズル内流路22の内部直径は1μm、ノズル21の先端部における外部直径は2μm、ノズル21の根元、即ち、上端部の直径は5μm、ノズル21の高さは100μmに設定されている。また、ノズル21の形状は限りなく円錐形に近い円錐台形に形成されている。このようなノズル21は、その全体がノズルプレート26の下面層26cと共に絶縁性の樹脂材により形成されている。
【0056】
なお、ノズル21の各寸法は上記一例に限定されるものではない。特に吐出口の内径については、電界集中の効果により液滴の吐出を可能とする吐出電圧が1000V未満を実現する範囲であって、例えば、100μm以下であり、より望ましくは20μm以下であって、現行のノズル形成技術により溶液を通す貫通穴を形成することが実現可能な範囲である内径、例えば、0.1μmをその下限値とする。
【0057】
導電性インク供給手段は、ノズルプレート26の内部であってノズル21の根元となる位置に設けられると共にノズル内流路22に連通する溶液室24と、図示しない外部の導電性インクタンクからインク室24に導電性インクを導く供給路27と、インク室24への溶液の供給圧力を付与する図示しない供給ポンプとを備えている。
【0058】
上記供給ポンプはノズル21の先端部まで導電性インクを供給し、当該先端部からこぼれ出さない範囲の供給圧力を維持して導電性インクの供給を行う。
【0059】
吐出電圧印加手段25は、ノズル21内の導電性インクに吐出電圧を印加してこの導電性インクを帯電させることにより、この導電性インクの液滴をノズル21の吐出口から基材Kに向かって吐出させるものである。この吐出電圧印加手段25は、ノズルプレート26の内部であってインク室24とノズル内流路22との境界位置に設けられた吐出電圧印加用の吐出電極28と、この吐出電極28に常時、直流のバイアス電圧を印加するバイアス電源30と、吐出電極28にバイアス電圧に重畳して吐出に要する電位とするパルス電圧を印加する吐出電圧電源29とを備えている。
【0060】
吐出電極28は、インク室24内部において導電性インクに直接接触し、導電性インクを帯電させると共に吐出電圧を印加する。
【0061】
バイアス電源30によるバイアス電圧は、導電性インクの吐出が行われない範囲で常時電圧印加を行うことにより、吐出時に印加すべき電圧の幅を予め低減し、これによる吐出時の反応性の向上を図っている。一例を挙げると、バイアス電圧はDC300Vで印加され、パルス電圧は100Vで印される。従って、吐出の際の重畳電圧は400Vとなる。
【0062】
ノズルプレート26は、最も上層に位置する上面層26aと、その下に位置する導電性インクの供給路を形成する流路層26bと、この流路層26bの更に下に形成される下面層26cとを備え、流路層26bと下面層26cとの間には、吐出電極28が介挿されている。
【0063】
対向電極23はノズル21に垂直な対向面を備えており、かかる対向面に沿うように基材Kの支持を行う。ノズル21の先端部から対向電極23の対向面までの距離は、例えば、100μm等一定に保持されている。
【0064】
また、対向電極23は接地されているため、常時、接地電位を維持している。従って、パルス電圧の印加時にはノズル21の先端部と対向面との間に生じる電界による静電力により吐出された液滴を対向電極23側に誘導する。
【0065】
なお、インクジェット記録装置20は、ノズル21の超微細化による当該ノズル21の先端部での電界集中により電界強度を高めることで液滴の吐出を行うことから、対向電極23による誘導がなくとも液滴の吐出を行うことは可能ではあるが、ノズル21と対向電極23との間での静電力による誘導が行われた方が望ましい。この場合、ノズル21から吐出され空気抵抗により減速する液滴を、鏡像力により加速することができる。従って、これら空気抵抗による減速と鏡像力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることができる。またなお、帯電した液滴の電荷を、対向電極23の接地により逃がすことも可能である。
【0066】
以上のようなインクジェット記録装置20は、図示しない駆動機構により、基材Kの搬送方向に対して直交する方向に走査自在とされた走査型のインクジェット記録装置としてもよい。この場合において、インクジェット記録装置20に複数のノズル21を配列するようにしてもよい。また、インクジェット記録装置20は、基材Kの搬送方向に対して直交する方向に多数のノズル21を配列してなるライン型のインクジェット記録装置としてもよい。
【0067】
〔露光工程〕
本発明に係る露光工程は、光触媒活性材料を含有する層に含まれる光触媒活性材料を活性化し、周囲の金属化合物中の金属を還元する工程のことを言う。
【0068】
露光工程でパターン状の光を照射することによって、光照射された領域の金属のみが選択的に還元され、光触媒活性材料を含有する層内または光触媒活性材料を含有する層上に金属パターンが形成されるため、高精細、且つ高密着性の導電性パターンを作製することができる。露光工程は基材全面に照射してもよいし、配線パターン状に照射してもよい。
【0069】
配線パターン状に露光する方法としては、クロム等の金属パターンが配置された石英ガラス基板を光触媒活性材料を含有する層に密着させて露光する方法や、レンズやミラー等を利用して縮小投影して露光する方法や、電子線等で直接描画する方法が挙げられる。
【0070】
光源は可視光、紫外光のどちらであってもよいが、光触媒活性材料を十分に活性化する観点からは紫外光が好ましい。
【0071】
露光工程の光照射は、金属化合物を含む溶液を光触媒活性材料を含有する層に配置する同じタイミングで光照射を行っても、金属化合物を含む溶液を光触媒活性材料を含有する層に配置した後に光照射を行ってもよい。
【0072】
〔無電解メッキ処理工程または電解メッキ処理工程〕
本発明においては、金属パターンの導電性の向上、線幅や膜厚の調整を目的として、無電解メッキ処理工程や電解メッキ処理工程を行ってもよい。
【0073】
以下、本発明に適用可能なメッキ処理方法について説明する。
【0074】
本発明においては、従来公知のメッキ法を適用できるが、その中でも低抵抗の導電性パターンを煩雑な工程なしに簡便、低コストでメッキ処理することができる観点から、無電解メッキ法を適用することが好ましい。
【0075】
無電解メッキ法によるメッキ処理は、上述の方法に従ってメッキ触媒として作用する金属微粒子を含有する導電性パターンにメッキ剤を接触させる方法である。これにより、メッキ触媒である金属微粒子とメッキ剤とが接触し、導電性パターン部に無電解メッキが施されて、より優れた導電性を得ることができる。
【0076】
本発明に係るメッキ処理で使用できるメッキ剤としては、例えば、メッキ材料として析出させる金属イオンが均一溶解された溶液が用いられ、金属塩とともに還元剤が含有される。ここで通常は溶液が用いられるが、無電解メッキを生じさせるものであればこれに限らず、ガス状や粉体のメッキ剤を適用することも可能である。
【0077】
具体的に、この金属塩としては、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Feから選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などが適用可能である。また、還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン塩、ボロハライド塩、次亜リン酸塩、次亜硫酸塩、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸塩などが適用可能である。なお、これらの還元剤に含有されるボロン、燐、窒素などの元素が析出する電極に含有されていても構わない。あるいは、これらの金属塩の混合物を用いて合金が形成されていても構わない。
【0078】
メッキ剤は上記金属塩と還元剤とが混合されたものを適用するようにしてもよいし、あるいは金属塩と還元剤とを別個に適用するようにしてもよい。ここで、導電性パターンをより鮮明に形成するためには、金属塩と還元剤とが混合されたものを適用することが好ましい。また、金属塩と還元剤とを別個に適用する場合には、導電性パターン部にまず金属塩を配した後、還元剤を配することでより安定した導電性パターンを形成することができる。
【0079】
メッキ剤には、必要があればpH調整のための緩衝剤、界面活性剤などの添加物を含有させることができる。また、溶液に用いる溶媒としては、水以外にアルコール、ケトン、エステルなどの有機溶剤を添加するようにしても構わない。
【0080】
メッキ剤の組成は、析出させる金属の金属塩、還元剤、及び必要に応じて添加物、有機溶媒を添加した組成で構成されるが、析出速度に応じて濃度や組成を調整することができる。また、メッキ剤の温度を調節して析出速度を調整することもできる。この温度調整の方法としては、メッキ剤の温度を調整する方法、また、例えば、メッキ剤中に浸漬する場合、浸漬前に基材を加熱、冷却して温度調節する方法などが挙げられる。更にメッキ剤に浸漬する時間で析出する金属薄膜の膜厚を調整することもできる。
【0081】
〔光触媒活性材料を含有する層を洗浄する工程〕
本発明においては、露光工程によって金属パターンを形成した後に、導電性の向上、不要な金属化合物の除去を目的として、光触媒活性材料を含有する層内または光触媒活性材料を含有する層上を洗浄する工程を行ってもよい。洗浄工程によって除去される物質は、光触媒活性材料を含有する層のバインダーや光触媒活性材料や金属化合物等が挙げられる。
【0082】
本発明に係る導電性パターンシートは構成が簡単で安価であり、接触型、非接触あるいはハイブリッド型のICカード、ICラベル、ICタグ、ICフォームなどの情報記録媒体やペーパーコンピュータなどとして用いられる他、プリント基板など一般の導電回路として用いることができる。また、基材として透明フィルムを用いて、電磁波遮蔽フィルムとして用いることもできる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0084】
実施例1
〔導電性パターンを有する試料の作製〕
《試料1の作製》
(インク1の調製)
水/エチレングリコール=1/3の混合溶液に、塩化銀と塩化パラジウムをそれぞれ45mmol/Lと5mmol/Lになるように分散させインク1を調製した。
【0085】
(無電解銅メッキ液)
硫酸銅 0.04モル
ホルムアルデヒド(37質量%) 0.08モル
水酸化ナトリウム 0.10モル
トリエタノールアミン 0.05モル
ポリエチレングリコール 100ppm
水を加えて全量を1Lとする。
【0086】
(導電性パターンの形成)
上記調製したインク1を表面に12W・min/m2のコロナ放電処理を2秒間施した市販のガラス−エポキシ基板上に、インクジェット法にてラインアンドスペース5〜100μmで吐出した後、インク1の溶媒を乾燥させた。次に上記無電解銅メッキ浴中に浸漬し、75℃で20分間の無電解メッキ処理を行って、平均膜厚が4.5μmのラインアンドスペースが異なる配線を複数種有する導電性パターン(図2)を形成し、これを試料1とした。
【0087】
《試料2の作製》
試料1の作製において、インク1を下記インク2に代え、無電解銅メッキ処理を行わなかった以外は、同様にして試料2を作製した。
【0088】
(インク2の調製)
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)44質量部とメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)36質量部、それにロジン系オリゴマー<商品名:ビームセット102(荒川化学工業社製)>7質量部を混合する。これに導電性物質として銀粉13質量部を加えて、インク2を調製した。
【0089】
《試料3の作製》
(光触媒活性材料を含有する層の作製)
表面に12W・min/m2のコロナ放電処理を2秒間施した市販のガラス−エポキシ基板上に、石原産業製二酸化チタンST−01(平均粒子径7nm)を10%、クラレ製ポリビニルアルコールPVA−235を3%含んだ水溶液を乾燥膜厚が0.8μmになるように塗布して乾燥させ、多孔質状の光触媒活性材料を含有する層を作製した。
【0090】
(導電性パターンの形成)
上記光触媒活性材料を含有する層を有するガラス−エポキシ基板の背面から、ラインアンドスペース5〜100μmの配線パターンを有するCr/石英ガラスマスクを通して紫外線を照射しながら、該光触媒活性材料を含有する層上にインクジェット法にて紫外線照射パターンに合わせて試料1におけるインク1を吐出した後に、インク1の溶媒を乾燥させた。
【0091】
次に、試料1における無電解銅メッキ浴中に浸漬し、75℃で20分間の無電解メッキ処理を行って、平均膜厚が4.5μmのラインアンドスペースが異なる配線を複数種有する導電性パターンを形成し、これを試料3とした。
【0092】
《試料4の作製》
試料3において、インクの溶媒を乾燥させる工程と無電解銅メッキ工程の間に試料全体を60℃の温水中で5分間超音波洗浄する工程を挟んだ以外は、同様にして試料4を作製した。
【0093】
《試料5の作製》
インクの付与を図1に記載の圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置による付与に変更した以外は、試料3と同様にして試料5を作製した。
【0094】
《試料6の作製》
インクの付与を図1に記載の圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置による付与に変更した以外は、試料4と同様にして試料6を作製した。
【0095】
《試料7の作製》
(インク3の調製)
水/エチレングリコール=1/3の混合溶液に、硫酸銅を50mmol/Lになるように分散させインク3を調製した。
【0096】
試料5において、インク1をインク3に変更し、無電解銅メッキ工程を除いた以外は、同様にして試料7を作製した。
【0097】
《試料8の作製》
試料5において、インク1をインク3に変更した以外は、同様にして試料8を作製した。
【0098】
《試料9の作製》
試料8において、インクの溶媒を乾燥させる工程と無電解銅メッキ工程の間に試料全体を60℃の温水中で5分間超音波洗浄する工程を挟んだ以外は、同様にして試料9を作製した。
【0099】
《試料10の作製》
試料7において、インクの配置方法をシルクスクリーン法に変更した以外は、同様にして試料10を作製した。
【0100】
《試料11の作製》
試料7において、光触媒活性材料を含有する層の二酸化チタンを酸化亜鉛に変更した以外は、同様にして試料11を作製した。
【0101】
《試料12の作製》
試料7において、光触媒活性材料を含有する層の二酸化チタンをSrTiO3に変更した以外は、同様にして試料12を作製した。
【0102】
《試料13の作製》
試料3おいて作製した光触媒活性材料を含有する層を有するガラス−エポキシ基板側に、インク1をディップ法によって塗布し、乾燥させ、背面からラインアンドスペース5〜100μmの配線パターンを有するCr/石英ガラスマスクを通して紫外線を照射した。得られた試料をエタノール溶媒中で5分間超音波洗浄し、不要なインクを洗い出した。
【0103】
次に、試料1における無電解銅メッキ浴中に浸漬し、75℃で20分間の無電解メッキ処理を行って、平均膜厚が4.5μmのラインアンドスペースが異なる配線を複数種有する導電性パターンを形成し、これを試料13とした。
【0104】
〔評価〕
(密着性)
指の腹で試料表面にセロハンテープ(CT24、ニチバン(株)製)を密着させた後にセロハンテープを一気に剥離して、剥離された導電性のパターンの面積比率を求め、下記の基準に従って、密着性を評価した。
【0105】
◎:導電性パターンの剥離が全くない(試験結果分類0相当)
○:導電性パターンの剥離面積が0%より大きく、1.0%以下
△:導電性パターンの剥離面積が1.0%より大きく、5.0%以下
×:導電性パターンの剥離面積が5.0%より大きい。
【0106】
(細線再現性)
キーエンス社製マイクロスコープVHX−600で試料表面を観察して、下記の基準に従って、細線再現性を評価した。
【0107】
◎:線幅及び線の間隔が±10%以内の精度で再現されている
○:線幅及び線の間隔が±20%以内の精度で再現されている
△:線幅及び線の間隔が±50%以内の精度で再現されている
×:線幅及び線の間隔の再現精度が±50%を超える。
【0108】
(導電性)
ラインアンドスペース100μmに相当する配線の線抵抗率を求め、導電性の評価とした。
【0109】
各試料の評価結果を表1に示す。表1において、IJ方式はインクジェット法を、SIJ方式は圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット法を、シルクはシルクスクリーン法をそれぞれ表す。
【0110】
【表1】

【0111】
表1より、本発明の構成を満たす試料は、密着性、細線再現性及び導電性の点で優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に好ましく適用できる圧力印加手段と電界印加手段と備えたインクジェット記録装置の一例を示した概略断面図である。
【図2】ラインアンドスペースが異なる配線を複数種有する導電性パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0113】
20 インクジェット記録装置
21 ノズル
22 ノズル内流路
23 対向電極
24 インク室
25 吐出電圧印加手段
26 ノズルプレート
27 供給路
28 吐出電極
30 バイアス電源
K 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に光触媒活性材料を含有する層を設け、該層に金属化合物を含む溶液を配置し、露光工程によって該金属化合物中の金属を光還元することで配線となる金属パターンを形成することを特徴とする導電性パターンシートの作製方法。
【請求項2】
前記金属化合物を含む溶液をインクジェット記録装置を用いて射出描画するインクジェット記録で配置することを特徴とする請求項1に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【請求項3】
前記インクジェット記録が圧力印加手段と電界印加手段とを用いた方法であることを特徴とする請求項3に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【請求項4】
前記金属化合物を含む溶液を光触媒活性材料を含有する層全面に配置することを特徴とする請求項1に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【請求項5】
前記金属化合物を含む溶液の金属が銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、亜鉛から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【請求項6】
前記露光工程の後に無電解メッキ処理工程または電解メッキ処理工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【請求項7】
前記露光工程の後に光触媒活性材料を含有する層を洗浄する工程を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性パターンシートの作製方法。
【請求項8】
前記光触媒活性材料が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性パターンシートの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−81244(P2009−81244A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248811(P2007−248811)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】