説明

導電性フィルム成分の組成物及び製造方法

【課題】高導電特性、高再生精度、印刷モデルの多様化を達成でき、かつ環境破壊を生じさせない導電性インク用組成物を提供する。
【解決手段】樹脂と、この樹脂中に分散された導電性物質を含む導電性インク用組成物の、前記導電性物質が、レーザ光線等の放射により、少なくとも部分的に解重合されることができる導電性ポリマーを含む。この導電性組成物はフィルム1に塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インク成分のための組成物及び製法に関する。
【0002】
より詳細には、フィルム等の基体に、印刷や他の類似プロセスにより塗布できるインクの形態の化学的組成物に関する。
【0003】
引き続く処理の後に、本発明の組成物は、線、文字、数、符号、一次元的又は二次元的バーコード、高周波識別(RFID)用アンテナ、幾何的形状等の明確な図形の形態の導電性成分を得るために使用すると有利である。
【背景技術】
【0004】
いわゆる導電性インク用組成物は以前から知られている。これらのインクは、必要な導電性と結合樹脂を与えることのできる化合物を含み、これによりそれが印刷された後に、種々の基体上に印刷特性とインクフィルム抵抗を与える。
【0005】
銀又は錫/鉛のような金属粒子系の導電性インクは、高導電性と約0.2から約50〜60オームの抵抗値の成分を提供する。102メガオームから104メガオームの高抵抗値を有するグラファイト系導電性インクや、該グラファイト系インクより更に高い抵抗値を有する4級アルミニウム塩系のインクも知られている。
【0006】
これらの組成物は、種々の基体、例えばポリエステル上へ、スクリーン印刷やグラビア印刷などの公知の印刷システムで塗布されて、工業的に幅広い用途を有するプリント回路やRFIDアンテナを提供する。
【0007】
公知の導電性インク用組成物は、卓越した導電特性を有する一方で、塗布及び印刷システムのいずれかに関する一連の問題点を有している。
【0008】
利用できる粒度分布と単位当たりの重量に起因して、金属系組成物は、幾分小さいエンドカウントを有するフレームを使用するスクリーン印刷システムによりほぼ独占的に印刷されるために好適であるが、これにより、イメージ印刷の輪郭の再生精度が粗くなるだけでなく、トラックやリードのミニチュア化が容易には行えなくなる。更にスクリーン印刷は高速印刷ができない。
【0009】
グラファイト系インクは、高速印刷が可能で再生精度の高いグラビア印刷システムで使用できる。しかし十分に高い精度を得るためには、高さのある罫線と、浅いエッチング深さのシリンダーを必要とする。
【0010】
これらの制限は、基体上に堆積される厚さを薄くし、トラック部分が減少するとオーム抵抗が増加し、かつグラファイト系インクは導電性が小さいため、前述の回路の導電性は満足できるものではない。
【0011】
特許文献1は、アニリン又はアニリン誘導体から、導電性インク又はペイントを調製する方法を開示している。重合工程後、液体成分を除去することにより、得られたポリアニリンポリマーを塊にし、得られた固体成分を合成樹脂溶液中に分散させる。
【0012】
特許文献2は、アニリン又はアニリン誘導体を酸と反応させて得られるポリアニリンポリマーをベースとする導電性インクを開示している。ポリアニリンポリマーはバインダと混合し、脱水分離工程によりインク成分から水を分離する。このようにして得られた導電性インクは、非接触ICカードやRFID用の物流タグのような導電性部品製造用に使用される。
【0013】
一般に、前記プロセスの欠点は、該プロセスに必要とされる化学的生成物が、システムへの好適な適用性を有している場合にのみ、良好な性能を発揮できる、従来の印刷技術で使用できるように開発されていることである。
【0014】
実際に、この適用性の要件は、同時に、大量の導電性物質を有するインクを生成する必要性と矛盾し、その結果、印刷の必要性と高導電性間の良好な妥協点を探すことが必要になる。
【0015】
前記インクに代えて、約1mm厚のプレートの形状である基体上に、厚さ35ミクロン以上の金属銅で被覆されたフェノール又はエポキシ樹脂から成る特殊な非導電性フォトレジストフィルムの全バックグラウンド付着を行う方法が知られている。
【0016】
これらのレジストフィルムは、光架橋可能であり、基体に塗布されて乾燥され次いでフォトマスクを通してUV光に露出されると、光に当たった部分は重合し、光に当たらなかった部分は初期状態のままで残る。
【0017】
次いでアルカリ浴に浸すと、重合していない可溶性部分が溶解し、光透過性に応じて、当初の銅が選択的に露出し、これは過塩素酸鉄浴で除去される。これにより、マスク上で得られるものに対応して、レジストで保護された、高精度及び卓越した導電特性の銅のトラックが得られる。
【0018】
前記方法は、複雑で高価な生産ラインを使用し、かつ金属、及び金属エッチング用の数種の強い化学薬品の存在に起因して環境破壊が起こることがあり、これを減少させるための多大な努力が要求される。
【0019】
導電性成分を印刷するための公知システムに共通する他の欠点は、印刷の柔軟性がないことである。種々の数のコピーを作成するマスタの使用が要求され、印刷イメージを変えることが要求されるときはいつも他のマスタと置き換えることが要求される。これにより、マスタの置換が増加して稼動効率が減少し、従って時間とコストが上昇する。更にマスタの追加コストも必要である。
【特許文献1】欧州特許公報第1229088号
【特許文献2】特開2004−161842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、高導電特性、高速印刷による製造、高度の柔軟性を有する導電性成分用印刷システムの要請があり、これにより製造ラインを停止せずに、印刷中に種々の構成を画定することを可能にする。
【0021】
本発明の目的は、要求される導電特性、再生精度の必要性、印刷中の印刷モデルの多様化の可能性、環境破壊を考慮して、これらの全てを、工業的に受け入れられるレベルにする必要性を満足することである。
【0022】
この目的は、請求項1記載の導電性インク組成物に関する本発明により達成される。
【0023】
本発明は、請求項9の印刷された導電性成分を製造する方法にも関する。
【0024】
本発明の他の目的は、前記組成物で少なくとも部分的に被覆された基体、つまり導電性エリアの解重合を行わずに、導電性組成物が1又は2以上のエリアに塗布された基体を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、導電性組成物で被覆された前記部分を有し、導電性組成物で被覆された予め定められたゾーンを、レーザ照射又は他の解重合処理により、非導電性又は部分的に導電性にした基体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前述の通り、本発明のインク組成物は、結合マトリックスの機能を有する少なくとも1種の樹脂又は類似生成物と、前記樹脂中に溶解された1又は2以上の導電性物質を含む。導電性物質の1つは、レーザ照射又は他のコヒーレントで収束するエネルギ源のいずれかで少なくとも部分的に解重合できる導電性ポリマー及び/又はコポリマーである。導電性ポリマー及び/又はコポリマーはポリアニリンポリマーであることが好ましい。
【0027】
本発明の組成物は、更にそれ自身が組成物を導電性にしない量の(例えば被覆された雲母のような)導電性無機充填材を含む。換言すると、該充填材は、導電性ポリマーにより、互いに電気的に接続されている。
【0028】
本発明によると、回路に含まれない導電性被覆の部分を解重合することにより、回路(又は他の所望の図形)が得られる。解重合されていない部分は依然として導電性で、必要な回路を形成する。
【0029】
本発明は、従来技術と比較して幾つかの利点を有する。第1に、回路のラインを高精度で形成できることである。更に高速製造、例えばフレキソ印刷機の通常の印刷速度で製造できる。
【0030】
他の利点は、環境的観点からの問題が存在しないことである。実際に所望回路のトラックを形成するために物質を除去することを必要としない。
【0031】
更に他の利点は、異なった最終製品を得るために、導電性エリアのレーザ解重合経路を修正できる可能性があることで、つまり本発明の導電性組成物を基体に塗布するシリンダ(又はスリーブ)を修正することができ、このときにマスタを換える必要はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の組成物で使用する結合マトリックスは、塩素化合物であり、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴムのような天然又は合成ゴムの塩素化で誘導されるか、あるいはポリオレフィンの塩素化で得られる誘導体か、又は2又はそれ以上の前記塩素化樹脂の混合物であることが好ましい。
【0033】
本発明で使用される塩素化樹脂又はゴムの塩素含有量は、50から75重量%、好ましくは61から65重量%である。例えば塩素化合物の例は一般式(1)の通りである。
(−CH2−CCl=CH−CH2−)n (1)
【0034】
本発明の目的に使用できる市販の製品は、例えばカファロ(CAFFARO)社から入手できる種々のタイプのクロルテックス(CLORTEX)、特にクロルテックス20である。
【0035】
それ自身導電性であるポリマーを使用してフィルムに導電性を付与し、ノンストップ導電性フィルムを構成しても良い。本発明では、導電性ポリマーは、入手できる装置により製造されたレーザ光のような位相が揃い殆ど単一の周波数を有する光源で照射されたときに、あるいはレーザ放出ダイオード等で照射されたときに、解重合されるものでなければならない。
【0036】
本発明で使用できる好ましいタイプの導電性ポリマー類は、ポリアニリン類である。これらのポリマーは下記の[化1]で表され、繰り返し数が“y”である還元された基と、繰り返し数が“y−1”である酸化された基を有し、特に両者の基が交互に存在する状態(y=0.5)では、いわゆる「スメラルジン(smeraldine)酸化状態」が形成される。
【0037】
【化1】

【0038】
前記形態の導電性を増加させるために、ポリアニリンと、後述する例示のみを意図するドーピング組成物間の反応生成物を使用できる。
【0039】
【化2】

【0040】
ポリアニリンに関するより以上の情報と特性は、例えば、アメリカ合衆国19104−6323ペンシルベニア州フィラデルフィアのペンシルベニア大学化学科のアラン・G・マクディアミド、及びアメリカ合衆国43210−1106オハイオ州コロンバスのオハイオ州立大学物理化学科のアーサー・J・エプセインの「ポリアニリン:新規なクラスの導電性ポリマー」から容易に得られる。
【0041】
本発明の組成物で使用されるポリアニリンの量は、最終製品に対して0.9から2,1重量%の範囲であり、1,1から1.8重量%の範囲であることが好ましい。
【0042】
ポリアニリンを酸で処理することにより得られる[化2]の生成物の場合、ポリアニリンの好ましい量は、1,2から1.4重量%の範囲であり、より好ましくは約1.25重量%である。
【0043】
ポリアニリンを処理するための酸は、最終製品に対して2から10重量%、好ましくは3,1から4,5重量%の範囲のスルホン酸誘導体である。好ましい酸は、最終製品に対して好ましくは3.4から3.8重量%、より好ましくは約3,65重量%のアルキルベンゼンスルホン酸である。
【0044】
本発明の組成物中で使用できる導電性ポリマーの市販品は、フィンランドの会社であるパニポール・オイ(PANIPOL・OY)社のパニポール(PANIPOL)類、特にパニポールTである。
【0045】
本発明の好ましい態様では、無機充填材特に導電性無機充填材は、前記組成物を基体に塗布することにより得られるフィルムの導電性を改良するために使用される。
【0046】
前記充填材と有機導電性ポリマーを組み合わせると、充填材粒子とポリマーが、前記粒子を包み込んでそれらを互いに緻密かつ連続的に結びつけるため、導電特性を有する連続的な表面が得られる。
【0047】
本発明の組成物で使用できる好ましい導電性無機充填材は、雲母、つまり珪酸アルミニウムとカリウムの複合体で、種々の割合で、マグネシウム、鉄、リチウム、フッ素及び水酸基を含むことがある。天然又は合成雲母のいずれかを使用でき、その分類内での選択は、要求される導電性の要件により決めれば良い。
【0048】
雲母の一般式は例えば式(2)の通りである。
KAl2[(OH,F)2AlSi310] (2)
【0049】
本発明では、錫及び酸化アンチモンを被覆した薄片を有する雲母を使用することが好ましい。
【0050】
雲母薄片の被覆自体は公知の方法で行えば良く、本発明の目的ではない。錫及び酸化アンチモンを被覆した透明で導電性の雲母の分類に属する入手可能な製品としては、例えばメルク(MERCK)社が製造しているミナテック(MINATEC)31がある。
【0051】
ポリアニリンに使用する被覆された雲母の重量は、5から50%の範囲であり、18から27%であることがより好ましい。
【0052】
前述の通り、本発明方法は、好ましくは上述の組成物のフルバックグラウンド被覆を形成し、次いで迅速な乾燥と放射光への露出によるイメージ印刷が続き、前記放射光としては、図形の外のエリアで導電性を減少させることにより所望のイメージを再生するレーザ光線などが使用される。
【0053】
これは、サポートフィルムに塗布される組成物が、レーザにより放出されるエネルギと瞬時に反応することから可能になり、特にエネルギは、導電性ポリマーが導電性をロスしながら少なくとも部分的に解重合するレベルであり、これはポリマー部分だけでなく、最早互いに相互接続されていない雲母粒子にも起因する。光源から放出される電力及び/又は組成物の露出時間を適切に調節することにより、所望の抵抗値を有するエリアが得られる。
【0054】
レーザがヒットするこれらのエリアでは、物理的な切除により物質が「失われる」ことがないことは重要で有利なことであり、これは前記ポリマー鎖の解体により導電性が低下するのが導電性ポリマーであるポリアニリンだからである。
【0055】
本発明方法は、「クリーン」でもあり、これはフォトレジストを使用する場合と異なり、イメージ印刷は現像浴を必要としないからである。実際に、物質が除去されることなく、イメージが導電性フィルムの状態変化により生成するため、印刷工程で付着する全てはベースサポート上に残る。
【0056】
これにより卓越した特性を有するイメージ印刷が確保される。更に処理されたフィルム上に付着することのある燃焼残渣がないことも注目すべきである。
【0057】
前記タイプの組成物を使用して印刷生成物を得るために、本発明は、上述の組成物を基体に塗布し、次いで基体及び/又はそれに付着した組成物を乾燥する方法を提案する。
【0058】
組成物は、予め定められた厚さを有する層の形態で、基体のフルバックグラウンドに塗布しても、基体の予め定められた部分に塗布しても良く、これにより中間生成物が得られ、これは例えば後の処理のためにリールの形態に印刷されたフィルムを巻いて、引き続く用途に使用される。
【0059】
塗布は、従来のインクで既に印刷されていても良い、例えばフィルム等のプラスチック製又は紙製の基体に対して行うことができる。その代わりに、塗布を印刷機の出口から行っても良く、つまり印刷方法とインラインで行われる。
【0060】
最終印刷生成物を得るために、基体に塗布された組成物層の選択された部分を、コヒーレント光源で生成する光線で照射する。照射により選択された部分の導電性ポリマーの少なくとも一部の解重合と、その導電性の低下を可能にする。
【0061】
好ましくは集束レーザ光線源により生じる光線に、前記組成物が露出されるため、表面状態の変化が生じる。組成物が塗布された基体表面に生じたエネルギは、その状態を変化させ、光源及び/又は物質の動きは、状態変化による幾何的形状変化を生じさせる。
【0062】
レーザ光源の放射は、1又は2以上の静的又は動的で、固定され又は可動である焦点レンズシステム(又は群)により組成物表面に焦点が合わされ、これにより焦点直径を異ならせたり、及び/又は異なった厚さの表面に焦点を合わせたりすることが可能になるが、可変でありあるいは複雑であっても表面を画定することは公知である。
【0063】
レーザ源は、固体状態(例えば半導体)の、密閉ガス放出又は開放ガス放出のいずれかである。光放射及び使用のモードは、構築タイプにより特徴付けられるのに対し、放射電力は、表面変化工程で組成物に伝達されるエネルギを決めるために関与する。
【0064】
光放射は、連続的でもパルス状でも良い。後者の場合、脈動は、天然のもの、つまり光源の物理構造により発生するものであっても、キャビティ内又は光源外の変調器により誘発されるタイプであっても良い。
【0065】
纏めると、表面状態の変化は、組成物と、レーザ光源から伝達され表面に集められるエネルギ間の相互作用により生じる。光源の特性、特に波長、光源電力、焦点直径及び露出時間(全てが表面状態変化のエネルギを決定する)は、重要なパラメータで、それらに基づいて、状態変化を生じさせるか否かを決める「組成物」システムと「レーザ」システム間の適合性が確立される。
【0066】
組成物の状態変化の幾何的形状は、集束コヒーレント光源に対する、物質の相対的な動きにより得られる。相対的な動きは、例えば次のような異なった技術により得られる。
【0067】
1)シータレンズ集束による表面の検流走査(検流計又は類似の電気機械アクチュエータにより動くX及びY軸と、光学的なZ軸)。
2)動的集束による表面の検流走査(検流システム又は類似の電気機械アクチュエータにより動く動的なX、Y及びZ軸)。
3)回転する多角形ミラー及び集束シータレンズによる表面走査(X軸は多角形ミラーで走査され、Y軸は物質の動きであり、Z軸はシータレンズによる)。
4)レーザ光源のX−Y軸又はX−Y−Z軸方向の動きによる表面走査。
5)組成物が塗布された表面又は固体又は液体の状態の組成物自身のX−Y軸又はX−Y−Z軸方向の動きによる表面走査。
これらの技術を組み合わせても良い。
【0068】
状態変化の幾何的形状は、例えばレーザ光源の活性エリアを画定する電子情報で形成される。この電子情報は、拡大縮小可能なベクトルの(動きの結果として)形態の、又はラスタの形態(つまり「ピクセル」の図形)である。いずれの場合も、走査ユニットは、組成物の状態変化のイメージを形成するために必要とされる動きを生じさせる。
【0069】
図1に示すように、20から30ミクロン又はそれ以上の厚さを有し、リール状の形態を有する、PVC、PET、PETG及びPESから選択されるプラスチック物質から成るフィルム(数千メートルの長さを有する)である基体1を、公知の方法で、フレキシ印刷機2の上流側に設置する。
【0070】
前記フィルム1を印刷機2に供給し、中央ドラム6の周囲に配置された1又は2以上の印刷ユニット3を通過させる。各ユニット3は、それぞれフィルム1に異なった色を与える、インクタンク4から供給されるマスタ5を有している。
【0071】
印刷速度は通常毎分50から400メートルで、例えば強制熱風換気するステーションである乾燥ステーション(図示せず)は、次の色が塗布される前に、種々の乾燥工程を行う。
【0072】
追加のステーションを印刷機とインラインで配置しても良く、このステーションは、既にグラフィックインクで装飾されたフィルム1の予め定めたエリアに、本発明の対象である組成物を塗布するための少なくとも1個の印刷ユニット7と、乾燥手段9を有している。
【0073】
本発明の導電性インク組成物を塗布するための印刷アセンブリの下流側には、少なくとも1個のレーザ8が配置され、このレーザは、導電性組成物の選択的な解重合により、導電性組成物を有するエリアの印刷を行い、これにより予め定められたコードを印刷する。必要なコードと、予め定められた色が付与されたフィルム1は機械の下流側で再度巻かれる。
【0074】
その代わりに、色印刷され既に導電性組成物のエリアが与えられたフィルムは、最終包装製造後に、再度巻きかつレーザ処理のみを行うようにしても良い。
【0075】
従って、印刷機及び前記解重合アセンブリを有する包装機だけでなく、導電性組成物を塗布するための印刷アセンブリ、及び前記組成物で被覆されたエリアの一部を選択的に解重合するレーザ機器も、本発明の対象である。
【0076】
本発明では、更にインライン又はオフライン操作で、ボトルや容器などの三次元対象物に選択的に解重合されたエリアを形成でき、この場合、処理される対象物は、レーザ光源に対して移動させられる。
【0077】
他の非常に興味深い特徴は、解重合されるエリアは、位置的にだけでなく、定量的にも処理されることができ、つまり電力、周波数、速度及び/又は選択されたエリアのエッチング時間などを適宜定めることにより処理される。
【0078】
これは、隣接又は遠隔エリアを、完全に解重合して導電性のないフィルムとして形成するか、あるいは処理されていないエリアの特定の導電性と完全に解重合されたエリアの導電性の間の中間的な導電性のエリアとして形成する変調された電力で処理するかを可能にする。
【0079】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0080】
[実施例1ー導電性ポリマー組成物の調製]
クロルテックス(CLORTEX)20のような塩化ゴムファミリーの樹脂185.5gを攪拌下で344.5gのトルエンに加え、完全に溶解するまで攪拌を継続する。
【0081】
ミナテック(MINATEC)31のような被覆された雲母227gを、前記溶液に加え、カウレス(Cowless)攪拌器を使用して1200rpmで20分間懸濁させる。
【0082】
20分間の懸濁後、243gのパニポール(PANIPOL)Tのようなスルホン酸塩−ポリアニリン溶液を加え、前述と同じ条件で10分間懸濁を継続する。
【0083】
次いで懸濁生成物をターボミル(TURBOMILL)又はサブミル(SUBMILL)粉砕機に入れ、粒度計でコントロールして、粉砕している生成物の粒度分布が2ミクロン以下になるようにする。粉砕プロセスの間、生成物を50℃未満の温度に維持する。
【0084】
最終的に得られた生成物は、本明細書で述べかつ特許請求した性能を有する生成物に対応する。
【0085】
[実施例2ー可撓性フィルムパッケージへの一次元又は二次元バーコードの形成]
30ミクロン厚のPETフィルムを4色フレキシ印刷機内で、100m/分の速度で印刷し、パッケージ製造用のベースとする。
【0086】
実施例1の導電性組成物を1cm2のエリアが、前記フィルム上に、均一に位置するように塗布し、各最終生成物にこれらのエリアの1つが得られるようにした。
【0087】
乾燥後、YAGレーザー線による処理で、前記エリアを部分的に解重合させる。得られたコードの特性は次の通りである。
−処理残渣がない。
−導電性エリアと絶縁エリアが鮮明に分離される。
−幾何的画定が良好である。
−導電性が変化しない。
【0088】
[実施例3ー厚い組成物層で行うフルバックグラウンド印刷、及び印刷機とインラインでの図形の形成]
プラスチック製フィルムから成り公知方法で乾燥した基体の表面全体に、ローラコータを使用して10ミクロン以上の厚い厚さで導電性組成物を均一に被覆する。
【0089】
機械の出口側で、電力が20Wに調節された、YAG電源からのレーザを使用する、所望の図形を画定するエリア上の組成物中のポリアニリンの選択的な解重合により、連続的に必要な図形を描く。放射されていない部分は、必要な導電性成分を有している。
【0090】
引き続く処理は、切断操作、エンボス加工、転写、及び他のプラスチック又は紙のサポートにフィルムを挿入することを含み、印刷エリアが得られる。
【0091】
被覆工程は、紙のサポート又は他の物質のいずれかの上に、例えばラスタシリンダを有するローラコータ又は多点エッチングのいずれかで、前述とは異なった機械を使用して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明による印刷成分を塗布する装置のダイアグラムである。
【符号の説明】
【0093】
1 フィルム(基体)
2 印刷機
3 印刷ユニット
4 インクタンク
5 マスタ
6 中央ドラム
7 印刷ユニット
8 レーザ
9 乾燥手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合マトリックス機能を有する樹脂、及び該樹脂中に分散された1又は2以上の導電性物質を含んで成る導電性インク用組成物において、
前記導電性物質が、コヒーレント光源により生成する光線の放射により、少なくとも部分的に解重合されることができる導電性ポリマー及び/又はコポリマー、及び導電性無機充填材を含むことを特徴とする導電性インク用組成物。
【請求項2】
前記導電性ポリマー及び/又はコポリマーが、ポリアニリンポリマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリアニリンポリマーが、[化1]の一般式を有することを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【化1】

【請求項4】
前記ポリアニリンポリマーが、ドーピング組成物と反応して[化2]の化合物を生成することを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【化2】

【請求項5】
前記結合樹脂が、塩素化天然ゴム、塩素化合成ゴム、塩素化ポリオレフィン及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記塩素化樹脂が、50重量%から75重量%の範囲の塩素含有量を有することを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記導電性無機充填材が、天然又は合成雲母及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの複合珪酸塩を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記雲母が、錫及び酸化アンチモンで被覆され、5重量%から50重量%存在することを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
印刷により導電性成分を生成させる方法において、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の層を基体に塗布し、
該基体を乾燥し、
コヒーレント光源で生成する光線を、前記組成物層の所要部分に放射して、これにより前記導電性ポリマーを少なくとも部分的に解重合させ、かつ前記所要部分の導電性を低下させることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記コヒーレント光源が、集束レーザー光源である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コヒーレント光源が、少なくとも1つの予め設定された波長の近傍の波長を有する光を放つようにした請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記コヒーレント光源が、固体レーザー及びガス放電レーザーから選択されるレーザー光源である請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記コヒーレント光源が、連続又はパルス状の放射光を生成する請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記パルス状の放射光が、前記コヒーレント光源の固有のパルスにより得られる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コヒーレント光源の光放出量を、放射電力、放射パルス周波数、組成物の露出速度及び/又は時間から選択されるパラメータの少なくとも1つを変化させることにより調節し、これにより処理していないエリアの特定の導電性と完全な解重合が起こるように処理されたエリアの特定の導電性の間にある、導電性を有するエリアが得られるようにした請求項9に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物で被覆された部分を少なくとも有することを特徴とする印刷基体。
【請求項17】
組成物で印刷された前記選択部分が、非導電性で解重合されていることを特徴とする請求項16に記載の印刷基体。
【請求項18】
請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法で得られる印刷生成物。
【請求項19】
請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法で導電性成分を製造する装置であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の層を照射するためのコヒーレント光源を含む解重合ユニットを備えることを特徴とする装置。
【請求項20】
少なくとも1個の請求項19の装置と、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物を基体に塗布するための少なくとも1個の印刷ユニットを備えることを特徴とする印刷機。
【請求項21】
導電性成分に隣接して配置された1又は2以上の非導電性の解重合された部分を含んで成る、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物から得られる導電性成分。

【図1】
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【公表番号】特表2009−520048(P2009−520048A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545138(P2008−545138)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003631
【国際公開番号】WO2007/072148
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508181766)キイアン ソチエタ ペル アツィオーニ (2)
【Fターム(参考)】