説明

導電性ペースト

【解決手段】(a)アスペクト比xが60≦x<120であるフレーク状銀粉および(b)飽和ポリエステルを含むことを特徴とする導電性ペースト。
【効果】本発明の導電性ペーストは、銀粉以外の他の導電性粒子や導電性ポリマーなどを含有しなくても、実用上十分大きな導電性を有する。このため本発明の導電性ペーストは、タッチパネル用電極などの電子部品に好適に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストに関し、さらに詳しくは、導電性が大きく、タッチパネルの電極などの電子部品に好適に使用できる導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の実装分野においては、導線性粒子として銀粒子を含有した導電性ペーストが広く使用されている。銀を主成分とする導電性ペーストは、導電率が高く、また柔軟性があるため、フレキシブルな配線に好適に使用することができる。銀粒子の中でもフレーク状銀粉は、比表面積が大きくしかも見掛密度が低いので、フレーク状銀粉を配合した導体ペーストは優れた導電性を発現することが知られている。
【0003】
しかし、導電性ペーストには、導電性以外に基板密着性や耐溶剤性などの性能が求められる。導電性ペーストにこれら導電性以外の性能を付与させるためには、導電性金属粒子以外に密着性や耐溶剤性などを向上させるバインダー樹脂や硬化剤などを添加する必要がある。しかしこれらバインダー樹脂等は絶縁物質であるので、これらを導電性ペーストに添加すると、導電性ペーストの抵抗値が上昇し、導電性が低下する。このため、単に導線性粒子としてフレーク状銀粉を使用しただけでは実用上十分な導電性が確保できないという問題があった。
【0004】
特開2003−55701号公報には、導電性ペーストの導電性を向上させるために、導線性粒子として、レーザー回折法50%粒径が3〜8μmであり、見掛密度が0.4〜1.1/cm3 であり、BET法比表面積値が1.5〜4.0m2 /gであるフレーク状銀粉を使用した導電性ペーストが開示されている。
【0005】
特開平10−261318号公報には、導電性粒子、結合剤及び溶剤を主成分とする導電性ペーストにおいて、結合剤中に導電性高分子を含有する導電性ペーストが開示されている。
【0006】
また特開2008−97949号公報には、導電性粒子とバインダーとを含む導電性ペーストにおいて、当該バインダーが当該バインダーに対して重量比で1.0%未満での導電性高分子を含む導電性ペーストが開示されている。
【0007】
しかし、これら公報に開示された導電性ペーストにおいても、タッチパネル用電極などの電子部品に実用する上で満足できるほどの導電性はいまだ実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−55701号公報
【特許文献2】特開平10−261318号公報
【特許文献3】特開2008−97949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の事情の下になされたものであって、銀粉以外の他の導電性粒子や導電性ポリマーなどを併用しなくても、電子部品等の製造に使用する上で十分な導電性を有する導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本発明者らは鋭意研究した結果、フレーク状の銀粉の中でも特にアスペクト比の高い銀粉を導電性粒子として用い、さらに密着助剤として飽和ポリエステル樹脂を用いることにより、導電性に優れた導電性ペーストが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、
(a)アスペクト比xが60≦x<120であるフレーク状銀粉および
(b)飽和ポリエステル樹脂
を含むことを特徴とする導電性ペーストである。
【0012】
前記導電性ペーストは、さらに(c)導電性ポリマーを含むことが好ましく、
さらに(d)熱硬化性樹脂を含有することが好ましく、
さらにアルミニウム粉末を含むことが好ましく、
さらにグラファイト粉末を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性ペーストは、銀粉以外の他の導電性粒子や導電性ポリマーなどを含有しなくても、実用上十分大きな導電性を有する。このため本発明の導電性ペーストは、タッチパネル用電極などの電子部品に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、PC用のタッチパネル1の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の導電性ペーストは、(a)アスペクト比xが60≦x<120であるフレーク状銀粉および(b)飽和ポリエステル樹脂を含み、さらに必要に応じて(c)導電性ポリマーおよび(d)熱硬化性樹脂を含むことができる。以下、本発明の導電性ペーストに含まれる各成分について説明する。
【0016】
銀粉
本発明の導電性ペーストに含まれる銀粉(以下、銀粉(a)という)は、フレーク状銀粉、すなわちフレーク状(薄片状)の粒子径を有する銀粉である。さらに、銀粉(a)はアスペクト比xが60≦x<120である。
【0017】
ここでアスペクト比xとは、銀粉(a)の厚さ方向の形状を囲む最小長方形における短辺の長さ(A)に対する長辺の長さ(B)の比を意味する。
つまり、このアスペクト比xは、レーザー粒度測定で測定した長辺の長さB(平均粒子径)を、下記の計算式により算出した短辺の長さAで割った値で表される。下記の式中でSは比表面積(cm2/g)、Vは1g当たりの体積(cm3)、ρは比重(g/cm3)を示す。
1g当たりの体積V=1/ρ
V=S/2×A
A=2/S×V=2/S×1/ρ
ここで、比表面積はBET法により測定された数値である。
【0018】
通常のフレーク状銀粉のアスペクト比xは、1<x<60であるから、銀粉(a)は通常のフレーク状銀粉よりアスペクト比xが大きい。つまり銀粉(a)は極薄のフレーク状銀粉であるといえる。フレーク状銀粉のアスペクト比xが60より小さいと、200℃以下の低温焼成条件下では銀粉同士が焼結せず、導電性膜が得られない。一方120以上の銀粉は原理的に製造することが困難であり、製造出来たとしてもその形状を維持出来ずに変形したり凝集することがあるため、導電性ペーストに用いるには不適当である。
【0019】
銀粉(a)のレーザー粒度測定法による平均粒子径は、2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは3〜8μmであり、さらに好ましくは4〜7μmである。銀粉(a)の平均粒子径が、2μmより小さいと、銀粉同士の接着面積が小さいため、焼結性に劣り導電性が低下する場合がある。一方10μmより大きいと、銀粉同士の接着面積が大きいため、焼結性に優れ導電性が増加するが、スクリーン印刷機で塗膜を形成する際に印刷版に目詰まりするなどの問題が生じ、均一な塗膜を形成することが困難となる場合がある。
【0020】
銀粉(a)の見掛密度は0.3〜1.6g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.3g/cm3であり、さらに好ましくは0.5〜0.9g/cm3である。銀粉(a)の見掛密度が、0.3g/cm3より小さいと、導電性ペースト中への銀粉の添加量が制限され、良好な導電性を付与することが困難となる。一方1.6g/cm3より大きいと、良好な導電性を付与させるためには導電性ペースト中へより多くの銀粉を添加する必要があり、コストがかかるという問題が生じる。
【0021】
銀粉(a)の比表面積は1.0〜3.0cm2/gであることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.7cm2/gであり、さらに好ましくは1.4〜2.4cm2/gである。銀粉(a)の比表面積が、1.0cm2/gより小さいと、銀粉同士の接着面積が小さいため、焼結性に劣り導電性が低下する場合がある。一方3.0cm2/gより大きいと、銀粉同士の接着面積が大きいため、焼結性に優れ導電性が増加するが、スクリーン印刷機で塗膜を形成する際に印刷版に目詰まりするなどの問題が生じ、均一な塗膜を形成することが困難となる場合がある。前記比表面積は、気体吸着法(BET多点法)により求められた数値である。
【0022】
銀粉(a)としては、市販品を用いることができ、たとえば福田金属箔粉工業株式会社製ナノメルトAg−XF301やAg−XF301H等を挙げることができる。
本発明の導電性ペースト中の銀粉(a)の含有量は、30〜80質量%が好ましく、より好ましくは33〜75質量%であり、さらに好ましくは35〜70質量%である。銀粉(a)の含有量が、30質量%より少ないと、良好な導電性を付与することが困難となる。一方80質量%より多いと、得られる導電性ペーストの流動性が急激に低下し、スクリーン印刷機で塗膜を形成する際に印刷版に目詰まりするなどの問題が生じることがある。更に、コストがかかるという問題も生じる。
【0023】
飽和ポリエステル樹脂
本発明の導電性ペーストに含まれる飽和ポリエステル樹脂(以下、飽和ポリエステル樹脂(b)という)は、密着助剤として機能する。密着助剤として飽和ポリエステル樹脂を使用すると、抵抗値の増大を抑止でき、密着性の低下を抑制することができる。また銀粉(a)と飽和ポリエステル樹脂(b)とを組み合わせて使用すると、ペーストの導電性がきわめて良好になるとともに、スクリーン印刷性に優れたペーストを得ることが出来る。具体的には、得られる導電性ペースト中で銀粉が良好な分散性を示すことが可能となり、ペーストに流動性を付与出来る。これに伴い、スクリーン印刷時にペーストがローリングし、目詰まりすることなく塗出できるため、均一な塗膜を形成することが出来る。更に、良好な版離れ性も付与出来るなどスクリーン印刷適正に優れたペーストが得られる。
【0024】
飽和ポリエステル樹脂(b)としては、主としてジカルボン酸とアルキレングリコールとを重縮合して得られたものを挙げることができる。
前記ジカルボン酸としては、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、ドデシルコハク酸、オクチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、炭素数12〜28の2塩基酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールA、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールS、ダイマー酸、水素添加ダイマー酸、水素添加ナフタレンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0025】
前記アルキレングリコールとしては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、トリシクロデカンジメタノール等を挙げることができる。また、本発明の趣旨を損なわない範囲でトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリンなどの多価ポリオールが併用されたものでもよい。
【0026】
得られる導電性ペーストに流動性を付与でき、また基板との密着性を高められるという点で、ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸の組み合わせが好ましく、アルキレングリコールとしては、ネオペンチルグリコール、炭素数5〜10の長鎖脂肪族ジオールが好ましい。これらの中でも、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等が特に好ましい。
【0027】
飽和ポリエステル樹脂(b)の重量平均分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは2,000〜20,0000である。前記分子量が1,000より小さいと、得られる導電性ペーストの粘度が低下しスクリーン印刷性が低下するという問題が生じることがある。また、導電性膜の強度が低下する恐れがある。一方1,000,000より大きいと、得られる導電性ペーストの粘度が上昇し、流動性を付与出来ないために、スクリーン印刷性を低下させたり、また導電性粒子の配向性を悪化させ良好な導電膜を形成出来ないという問題が生じることがある。更に、この流動性の低下により基板との密着性も低下することから、目的の性能を発揮出来ない場合がある。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で得られた数値である。
【0028】
飽和ポリエステル樹脂(b)のガラス転移点としては、5〜90℃が好ましく、より好ましくは10〜80℃である。前記ガラス転移点が5℃より低いと、得られる導電性ペーストの粘度が低下しスクリーン印刷性が低下するという問題が生じる。また、導電性膜の強度が低下する恐れがある。一方90℃より高いと、得られる導電性ペーストの粘度が上昇し、流動性を付与出来ないために、スクリーン印刷性を低下させたり、また導電性粒子の配向性を悪化させ良好な導電膜を形成出来ないという問題が生じることがある。更に、この流動性の低下により基板との密着性も低下することから、目的の性能を発揮出来ない場合がある。
【0029】
飽和ポリエステル樹脂(b)の含有量は、銀粉(a)100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、より好ましくは8〜40質量部であり、さらに好ましくは10〜30質量部である。飽和ポリエステル樹脂(b)の前記含有量が、5質量部より少ないと、導電性粉体が分散されず凝集体となってペーストとして成り立たない場合が多い。一方50質量部より多いと導電性ペーストが焼結する際に導電性粉体同士のパッキングが阻害され良好な導電性を示すことが困難となる。
【0030】
導電性ポリマー
本発明の導電性ペーストに含まれる導電性ポリマー(以下、導電性ポリマー(c)という)は、電子伝導性を有するポリマーである。本発明の導電性ペーストが導電性ポリマー(c)を含有していると、導電性ペーストの導電性を高めることができる。
【0031】
導電性ポリマー(c)としては、たとえばポリアニリン(ドデシルベンゼンスルホン酸がドープ)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリアズレン、ポリフラン、ポリフェノール、ポリアセチレン等を挙げることができる。これらの中で、一般的な環境下で比較的安定的に存在できるという点でポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンが好ましい。また、導電性以外に防錆剤としての役割も示すという点で、ポリアニリンが特に好ましい。さらに ポリアニリンにドデシルベンゼンスルホン酸がドープされているものを用いることが好ましい。
【0032】
本発明の導電性ペーストが導電性ポリマー(c)を含有する場合、導電性ポリマー(c)の含有量は、銀粉(a)100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜4質量部であり、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。導電性ポリマー(c)の前記含有量が、0.05質量部より少ないと、 これを添加しない場合と同等の導電性しか示さない。一方5質量部より多いと導電性ポリマーがペースト中で溶解せず、導電性は悪化する傾向がある。
【0033】
熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂(以下、熱硬化性樹脂(d)という)は、加熱反応により樹脂中で架橋構造を形成するため、導電性ペーストが熱硬化性樹脂を含有すると、この導電性ペーストを焼結して得た導電性膜に溶剤耐性を付与することが出来る。
【0034】
熱硬化性樹脂(d)としては、たとえばエポキシ樹脂、ノボラック樹脂、イソチシアシネート樹脂、メラミン樹脂、シアネート樹脂、グアナミン樹脂、ユリア樹脂、チオウレタン樹脂、イミド樹脂、芳香族ポリカルボジイミド樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、レゾール樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリアゾメチン樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、導電性ペースト中の他の成分との相溶性、低温硬化性の点で、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、イソシアシネート樹脂、メラミン樹脂等が好ましい。
【0035】
本発明の導電性ペーストが熱硬化性樹脂(d)を含有する場合、熱硬化性樹脂(d)の含有量は、銀粉(a)100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜4質量部であり、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。熱硬化性樹脂(d)の前記含有量が、0.05質量部より少ないと、得られる導電性ペーストに溶剤耐性を付与することが出来ず、一方5質量部より多いと、導電性ペーストが焼結する際に導電性粉体同士のパッキングが阻害され良好な導電性を示すことが困難となる。
【0036】
その他の成分
本発明の導電性ペーストは、さらに必要に応じて、銀粉以外の導電性粒子として銀メッキ銅、銅、金、ニッケル、パラジウム、アルミニウム及びこれらの合金類、グラファイト、金属酸化物等の粉末、溶剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、分散安定剤、揺変剤等を含有することができる。
【0037】
特に、アルミニウムまたはグラファイトの粉末を銀粉100質量部に対して5〜70質量部、好ましくは5〜60質量部添加することが好ましい。アルミニウムの形状は球状でもフレーク状でもよい。
【0038】
(溶剤)
本発明の導電性ペーストにおいては、溶剤を、主に導電性粒子を他の成分中へ分散させるという目的のために含有させる。
【0039】
前記溶剤としては、その種類についてはその種類に制限はなく、エステル系、ケトン系、エーテル系、アルコール系、エーテルエステル系、炭化水素系等の溶剤が挙げられる。これらの中でもスクリーン印刷をする場合には、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メトキシプロピルアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル−2−ピロリドン(NMP)、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、イソホロン、トリメチルベンゼン、ナフタレンなどの高沸点溶剤が好ましい。
本発明の導電性ペーストが溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、銀粉(a)100質量部に対して1〜60質量部が好ましく、より好ましくは5〜40質量部である。
【0040】
本発明の導電性ペーストの製造方法および使用方法
本発明の導電性ペーストは、銀粉(a)および飽和ポリエステル樹脂(b)、必要に応じて導電性ポリマー(c)および熱硬化性樹脂(d)、さらにその他の成分を、攪拌脱泡装置、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミルなどの混練機を用いて混練することにより調製することができる。
【0041】
上記のようにして調製される導電性ペーストは、たとえば公知の膜形成材料層の形成方法、すなわち、スクリーン印刷法などによってガラス基板等の表面に直接塗布される。塗布された導電性ペーストは、通常100〜150℃で10〜30分間焼成することにより導電性塗膜ないしパターンとなる。
【0042】
本発明の導電性ペーストの用途
本発明の導電性ペーストは、電子部品等において広く利用可能であり、その中でもタッチパネルの電極等の製造に好適に使用することができる。
【0043】
図1にPC用タッチパネルの概略断面図を示した。タッチパネル1においては、ガラス基板2上にITO膜3Aが形成され、ITO膜3A上の一端部にシール4Aが設けられ、他端部にシール4Bが、さらにシール4B上にコネクタ5が設けられている。シール4Aおよびコネクタ5上にITO膜3Bが形成され、ITO膜3Bの上に上ガラス6が設けられている。つまりタッチパネル1においては、ITO膜3AおよびITO膜3Bが、その両端部にシール4A、シール4Bおよびコネクタ5を挟んで、向かい合わせに配置されており、ITO膜3AとITO膜3Bとの間に空間8が形成されている。空間8内の、ITO膜3A上にドットスペーサー7が、ITO膜3Bに接触しないように形成されている。このドットスペーサー7を、本発明の導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0044】
ドットスペーサー7が本発明の導電性ペーストによって形成されていると、塗膜への密着性が高いという利点がある。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、「質量部」および「質量%」を示す。
実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行った。
【0046】
(1)抵抗値測定
各実施例および比較例で得られた硬化膜の体積抵抗値を、抵抗値測定装置(NPS(Receptivity Proccessor Model Σ-5))を用いて測定した。
【0047】
(2)基板密着性
各実施例および比較例で得られた硬化膜に対してJIS K5400に準拠したクロスカットテストを実施して、下記の基準で各硬化膜の基板密着性を評価した。
○:剥離無し
×:剥離有り
【0048】
(3)耐溶剤性
各実施例および比較例で得られた導電性ペーストをAGC旭硝子製の基板上にスクリーン印刷により塗布して、L/S=500/500μmのパターンを基板上に形成した。このパターンを120℃で20分間ベークした後、ベークされたパターンに溶剤EDM(ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)を滴下した。このパターンを再度120℃で20分間ベークした後、パターンが剥れているかを観察し、下記の基準で耐溶剤性を評価した。
○:剥離無し
×:剥離有り
次に実施例および比較例で用いた原料を示す。
【0049】
導電性粒子
極薄フレーク銀粉(a−1):レーザー粒度測定法による平均粒径:6.0μm、アスペクト比:75、見掛密度:0.67g/cm3、比表面積:1.8m2/g、福田金属箔粉工業株式会社製ナノメルトAg−XF301
極薄フレーク銀粉(a−2):レーザー粒度測定法による平均粒径:4.1 μm、アスペクト比:65、見掛密度:0.83g/cm3、比表面積:3.2m2/g、福田金属箔粉工業株式会社製ナノメルトAg−XF301K
フレーク銀粉1:レーザー粒度測定法による平均粒径:7.2μm、アスヘ゜クト比:20、昭栄化学工業株式会社製:Ag-531
フレーク銀粉2:レーザー粒度測定法による平均粒径:1.2μm、アスペクト比:55、メタロー社製AC-4048
アルミニウム粉:レーザー粒度測定法による平均粒径:2.0μm、球状アルミ粉、東洋アルミニウム株式会社製
グラファイト粉:レーザー粒度測定法による平均粒径:8.8μm、球状グラファイト、伊藤黒鉛工業株式会社製SG−BH8
【0050】
密着助剤
飽和ポリエステル樹脂(b−1):荒川化学工業株式会社製アラキード7005
飽和ポリエステル樹脂(b−2):荒川化学工業株式会社製アラキードKA-2101
飽和ポリエステル樹脂(b−3):日本合成化学社製LP-035
シランカップリング剤:γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0051】
熱硬化性樹脂
エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製E P-152
メラミン樹脂:日本サイテックインダストリー株式会社製サイメル325
導電性ポリマー
ポリアニリン:Panipol社製Panipol-T(ドデシルベンゼンスルホン酸ドープ品)
溶剤
N-メチル−2−ピロリドン(NMP)
【0052】
(実施例1〜9)
実施例1および2、5〜7においては、極薄フレーク銀粉、密着助剤、熱硬化性樹脂および溶剤を、実施例3および4においては、極薄フレーク銀粉、密着助剤、熱硬化性樹脂、導電性ポリマーおよび溶剤を、実施例8においては、極薄フレーク銀粉、アルミニウム粉、密着助剤、熱硬化性樹脂および溶剤を、実施例9においては、極薄フレーク銀粉、グラファイト粉、密着助剤、熱硬化性樹脂および溶剤を表1に示した割合で配合し、攪拌脱泡装置により1000rpmで10分間攪拌して導電性ペーストを作製した。
【0053】
この導電性ペーストをAGC旭硝子製の基板上にスクリーン印刷により塗布し、120℃で20分間ベークすることにより硬化膜を作製した。得られた硬化膜の膜厚を表1に示した。
上記硬化膜を用いて上記方法により抵抗値および基板密着性を評価した。また上記導電性ペーストを用いて上記方法により耐溶剤性を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0054】
(比較例1〜4)
フレーク銀粉、密着助剤、熱硬化性樹脂および溶剤を表2に示した割合で配合した以外は実施例1と同様にして導電性ペーストおよび硬化膜を作製した。この硬化膜の膜厚を表2に示した。
【0055】
さらに実施例1と同様にして抵抗値、基板密着性および耐溶剤性を評価した。これらの結果を表2に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

表1から明らかなように、アスペクト比が65または75である極薄フレーク銀粉と飽和ポリエステルとを組み合わせた実施例1〜7では、アスペクト比が20であるフレーク銀粉と飽和ポリエステルとを組み合わせた比較例1〜3と比較して、体積抵抗値が大幅に小さくなっている。このことから、上記極薄フレーク銀粉を用いれば、銀粉以外の他の導電性粒子や導電性ポリマーなどを併用しなくても、導電性の優れた導電性ペーストが得られていることが確認された。また、上記極薄フレーク銀粉および飽和ポリエステルを用いた実施例1〜7では、上記極薄フレーク銀粉を用いているが、密着助剤として飽和ポリエステル以外の密着助剤を用いた比較例4と比較して、良好な基板密着性を示すことが確認された。また比較例4のペーストは、実施例1〜4のペーストと同様の極薄フレーク銀粉を含んでいるが、体積抵抗値が実施例1〜4のペーストより10倍以上大きい。以上より、上記極薄フレーク銀粉と飽和ポリエステルとを組み合わせることにより、特に導電性の優れたペーストが得られることが確認された。
【符号の説明】
【0058】
1 タッチパネル
2 ガラス基板
3A、3B ITO膜
4A、4B シール
5 コネクタ
6 上ガラス
7 ドットスペーサー
8 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アスペクト比xが60≦x<120であるフレーク状銀粉および
(b)飽和ポリエステル樹脂
を含むことを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
さらに(c)導電性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
さらに(d)熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
さらにアルミニウム粉末を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
さらにグラファイト粉末を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペースト。

【図1】
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【公開番号】特開2011−34869(P2011−34869A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181390(P2009−181390)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】