導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させる方法
ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し、フィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させることを含む、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーフィルムの製造方法を記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、共に係属し同じ譲受人に譲渡された代理人書類番号19506/09108を有する2007年10月24日出願の米国特許出願11/977,184への優先権を主張する。
【0002】
本発明は、導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させる方法、より詳しくは有機溶媒から施されたドープされた導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどのような本質的に導電性のポリマーは、多くの用途において導電性素子として用いられている。最近、バルブメタルキャパシタにおけるカソードとして用いるための導電性ポリマーフィルムが報告された。とりわけ、米国特許7,271,994及び7,233,484にはタンタルキャパシタにおいて、米国特許7,215,534にはアルミニウムキャパシタにおいて、そして米国特許7,274,552及び7,236,350にはニオブキャパシタにおいて用いるための導電性ポリマーフィルム電極が記載されている。
【0004】
幾つかの場合において、導電性ポリマーフィルム電極は、例えばキャパシタを回路基板上にハンダ付けする際のような熱応力中、或いはリフローハンダ付け処理中に劣化するか又は特性を変化させると報告されている。これらの変化としては、等価直列抵抗(ESR)の増加、キャパシタンスの減少、短絡の増加、及び/又は漏れ電流の増加の1以上を挙げることができる。
【0005】
米国特許7,265,965において、発明者らは、炭素層にドーパントを加えることによって、隣接するドープされた導電性ポリマー層及び炭素層を有するキャパシタにおけるESRシフトが減少することを報告している。米国特許7,262,954においては、バルブメタル酸化物誘電層と導電性ポリマー電極層との間にプロピレングリコールの層を挿入することによってESRシフトが減少したことが報告されている。米国特許6,982,865に報告されている他のアプローチでは、増加した耐熱性及び低いESRのための水溶性の酸アニオンであるテトラヒドロナフタレンスルホネートとナフタレンスルホネート又はベンゼンスルホネートのいずれかとのドーパントの組み合わせが特許請求されている。米国特許6,912,118においては、ドーパントとして少なくともフルオロアルキルナフタレンスルホン酸を含むが、更にテトラヒドロナフタレンスルホネート又はベンゼンスルホネート又はナフタレンスルホネートをドーパントとして含んでいてもよい導電性ポリマーを含む固体電解質層を有するキャパシタが記載されており、この材料は低いESR及び良好な耐熱性を与えるものとして示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許7,271,994
【特許文献2】米国特許7,233,484
【特許文献3】米国特許7,215,534
【特許文献4】米国特許7,274,552
【特許文献5】米国特許7,236,350
【特許文献6】米国特許7,265,965
【特許文献7】米国特許7,262,954
【特許文献8】米国特許6,982,865
【特許文献9】米国特許6,912,118
【発明の概要】
【0007】
したがって、簡単に言うと、本発明は、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;そして、このフィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;ことを含む、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーフィルムの新規な製造方法に関する。
【0008】
本発明は、また、バルブメタルのアノード、誘電性金属酸化物層、及び、熱安定性を有し、導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される十分量の第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーを含む導電性ポリマーフィルムカソードを含むキャパシタ体を提供し;そして、フィルムを第2のプロトン酸を含む第2の有機溶媒と接触させる;ことを含む、バルブメタルキャパシタにおける固体電解質として改良された熱特性を有する導電性ポリマーフィルムを使用する新規な方法にも関する。
【0009】
本発明は、また、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;そして、フィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;ことを含み、ここで第2の有機溶媒との混合物中の第2のプロトン酸の濃度及び接触時間は、フィルムを260℃の温度に15秒間かけた際に約5mΩ未満のΔESRを与えるように選択する、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーフィルムの新規な製造方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ブチルセロソルブ(BC)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びメタノール(MeOH)などの種々の有機溶媒又は溶媒混合物で処理した、ジノニルナフタレンスルホン酸をドープしたポリアニリンのフィルム(PANi/DNNSAフィルム)の導電率を示す。
【図2】図2は、ブチルセロソルブ(BC)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びメタノール(MeOH)などの種々の有機溶媒又は溶媒混合物で処理したPANi/DNNSAフィルムの厚さを示す。
【図3】図3は、未処理のPANi/DNNSAフィルム及びn−ブタノール(nBuOH)で処理したPANi/DNNSAフィルムの200℃における等温熱重量分析(TGA)の結果を示し、溶媒で処理したフィルムが未処理のフィルムよりも非常に熱的により安定であることを示す。
【図4】図4は、ブチルセロソルブ(BC)中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液による処理の前後の、それぞれ同じようにして調製した4つのPANi/DNNSAフィルムの導電率を示す。
【図5】図5は、ブチルセロソルブ(BC)中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液による処理の前後の4つのPANi/DNNSAフィルムの厚さを示す。
【図6】図6は、未処理のPANi/DNNSAフィルム及びブチルセロソルブ中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液で処理したPANi/DNNSAフィルムの200℃における等温熱重量分析(TGA)の結果を示し、PTSAで処理したフィルムが未処理のフィルムよりも非常に熱的により安定であったことを示す。
【図7】図7は、ブチルセロソルブ(BC)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びメタノール(MeOH)などの種々の溶媒によって他に示さない限りにおいて30秒間処理した、4,4’−スルホニルジフェノールを加えたジノニルナフタレンスルホン酸をドープしたポリアニリンのフィルム(PANi/DNNSA−SDPフィルム)の処理前及び処理後のフィルム厚さを示す。
【図8】図8は、ブチルセロソルブ(BC)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びメタノール(MeOH)などの種々の溶媒中に他に示さない限りにおいて30秒間浸漬したPANi/DNNSA−SDPフィルムの処理前及び処理後のフィルム導電率を示す。導電率は、表面抵抗及び図7におけるフィルム厚さから、次の等式:σ=1/SR・d(式中、SRは表面抵抗であり、dはフィルム厚さである)を用いて算出した。
【図9】図9は、種々の温度における未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの2時間の等温熱重量分析(TGA)の結果を示す。それぞれの試料に関する約10%の初期重量損失は残留溶媒に起因することを留意すべきである。
【図10】図10は、150℃又は170℃における未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの5時間の等温TGAの結果を示す。約10%の初期重量損失は残留溶媒に起因することを留意すべきである。
【図11】図11は、未処理、並びに以下の溶媒:3:1のブチルセロソルブ−メタノール(BC/MeOH)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びキシレンで処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムの2時間の200℃等温TGAスキャンの結果を示す。
【図12】図12は、PANi/DNNSA−SDPフィルムの厚さに対する酸処理の効果を示す棒グラフであり、示されるようにブチルセロソルブ(BC)又はn−ブタノール(nBuOH)のいずれかの中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)又は4−スルホフタル酸(4−SPHA)による処理によってフィルム厚さが半分を超えて減少することを示す。
【図13】図13は、示されるようにブチルセロソルブ(BC)又はn−ブタノール(nBuOH)のいずれかの中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)又は4−スルホフタル酸(4−SPHA)のいずれかによる酸処理の、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する効果を示す棒グラフである。
【図14】図14は、ブチルセロソルブ中のp−トルエンスルホン酸の5重量%溶液による処理の前後のPANi/DNNSA−SDPフィルムのUV−可視光スペクトルを示す。500nmと1100nmとの間の自由キャリアのテール部の強度が高くなることは、フィルムの導電率が増加したことの証拠である。
【図15】図15は、未処理フィルムのTGAスキャンと比較した、ブチルセロソルブ(BC)中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液によって処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムの等温200℃熱重量分析(TGA)の結果を示す。
【図16】図16は、異なる濃度のブチルセロソルブ(BC)中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の溶液で処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムに関する処理前及び処理後の導電率を示す。
【図17】図17は、BC処理溶液中の異なる濃度のPTSAに関する処理後のPANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率を示すグラフである。
【図18】図18は、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対するブチルセロソルブ(BC)中5重量%の溶液で用いる酸のタイプの効果を示す。ここで、PTSA=p−トルエンスルホン酸;BA=ベンゼンスルホン酸;CSA=カンファースルホン酸;PA=フェニルホスホン酸;H3PO4=リン酸;である。
【図19】図19は、ブチルセロソルブ(BC)中のフェニルホスホン酸(PA)又はベンゼンスルホン酸(BA)のいずれかの5重量%溶液を含む酸/有機溶媒溶液とフィルムを接触させる時間(15秒又は30秒のいずれか)の、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する効果を示す。
【図20】図20は、未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルム(対照)の導電率と比較した、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する異なるpHレベルの水性緩衝溶液による45℃における30分間の処理の効果を示す。
【図21】図21は、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する5重量%水溶液の種々の酸による処理の効果を示す。ここで、DBSA=ドデシルベンゼンスルホン酸;4−SPHA=4−スルホフタル酸;PSSA=ポリ(スチレンスルホン酸);PTSA=p−トルエンスルホン酸;である。
【図22】図22は、PANi/DNNSA−SDPフィルムのフィルム厚さにおける5重量%酸水溶液による処理の効果を示す。ここで、DBSA=ドデシルベンゼンスルホン酸;4−SPHA=4−スルホフタル酸;PSSA=ポリ(スチレンスルホン酸);PTSA=p−トルエンスルホン酸;である。
【図23】図23は、非ポリアニリンの本質的に導電性のポリマー(ICP)の内部及び外部被覆を有する対照アノード;非ポリアニリンICPの内部被覆及びp−トルエンスルホン酸(PTSA)処理を行わないPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムで被覆されているアノード;並びに、非ポリアニリンICPの内部被覆及びブチルセロソルブ(BC)又はn−ブタノール(nBuOH)のいずれかの中の5重量%PTSAによる処理を行ったPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムで被覆されているアノード;に関する、200℃における時間の関数としての、470μF、2.5Vのタンタルキャパシタの等価直列抵抗(ESR)を示すグラフである。非ポリアニリンICPの内部被覆及びPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムを有するが、更なるPTSA処理を行わないアノードは、200℃において2時間後に約80mΩのESR値を有する。
【図24】図24は、非ポリアニリンの本質的に導電性のポリマー(ICP)の内部及び外部被覆を有する対照アノード;非ポリアニリンICPの内部被覆及びp−トルエンスルホン酸(PTSA)処理を行わないPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムで被覆されているアノード;並びに、非ポリアニリンICPの内部被覆及びブチルセロソルブ(BC)又はn−ブタノール(nBuOH)のいずれかの中のPTSAによる処理を行ったPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムで被覆されているアノード;を有するキャパシタに関する、200℃における時間の関数としての、470μF、2.5Vのタンタルキャパシタの等価直列抵抗におけるシフト(ΔESR、最終ESR値と初期ESRとの間の差)を示すグラフである。BC中の5%4−スルホフタル酸(SPHA)溶液で処理し、それぞれの被覆の後に5%PTSA−BC処理を行ったPANi/DNNSA−SDPフィルムの2つの被覆を有するアノードに関するデータもプロットしている。非ポリアニリンICPの内部被覆及びPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムを有するが、更なるPTSA処理を行わないアノードは、200℃において2時間後に約50mΩのΔESR値を有する。
【図25】図25は、キャパシタの種々の部品を示すバルブメタルキャパシタの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;そして、このフィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;ことによって、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーのフィルムを製造することができることが見出された。
【0012】
これは、第1の有機溶媒と、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーとの混合物を表面に施し;そして、第1の有機溶媒を除去し、ドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する;ことによって表面上に形成される高い完全性の導電性フィルムの熱安定性を向上させるために特に有用であることが見出された。
【0013】
ジノニルナフタレンスルホン酸をドープし、4,4’−スルホニルジフェノールを含むポリアニリンのフィルムを固体電解質タンタルキャパシタ用のカソードとして適用する本方法の一態様においては、フィルムをブチルセロソルブ中のp−トルエンスルホン酸の5重量%溶液中に浸漬し、フィルムを乾燥することによって、フィルムの熱安定性が大きく改良されたことが示された。また、この処理により、260℃で15秒間の熱応力条件によって引き起こされる等価直列抵抗におけるシフト(ΔESR)が劇的に減少し、キャパシタの漏れ電流及び導電性ポリマーの導電率を許容できるレベルに保持しながら、ΔESRは約5mΩ未満であった。
【0014】
ここで用いる「電気伝導性ポリマー」、「本質的に導電性のポリマー(ICP)」、又は「導電性ポリマー」という用語は、複共役結合系を含み、電子ドナードーパント又は電子アクセプタードーパントをドープして少なくとも約10−8S/cmの導電率を有する電荷移動コンプレックスを形成することができる有機ポリマーを指す。本明細書において電気伝導性ポリマー、ICP、又は導電性ポリマーに言及する場合には常に、この物質はドーパントと会合していると理解されよう。
【0015】
ここで用いる「ドーパント」という用語は、導電性ポリマーと塩を形成してポリマーの導電性形態を与える任意のプロトン酸を意味する。ドーパントとして単一の酸を用いることができ、或いは2種類以上の異なる酸をポリマー用のドーパントとして作用させることができる。
【0016】
任意の導電性ポリマーを本発明において用いることができるが、有用なポリマーの例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)などが挙げられる。置換又は非置換のアニリン、ピロール、又はチオフェンのポリマーを本発明の導電性ポリマーとして用いることができる。一態様においては、導電性ポリマーはポリアニリンである。
【0017】
ポリアニリンは少なくとも4つの酸化状態:ロイコエメラルディン、エメラルディン、ニグラニリン、及びペルニグラニリン:で存在する。エメラルディン塩は、安定な導電状態を示すポリマーの形態である。ポリアニリンのエメラルディン塩の形態においては、プロトン酸ドーパント(対イオン)の存在又は不存在によって、ポリマーの状態をそれぞれエメラルディン塩からエメラルディン塩基へ変化させることができる。したがって、かかるドーパントの存在又は不存在によって、ポリマーを可逆的に導電性又は非導電性にすることができる。ポリアニリンのような導電性ポリマー用のドーパントとしてプロトン酸を用いることは公知であり、HCl及びH2SO4のような単純なプロトン酸を用いるか、或いはこれをp−トルエンスルホン酸(PTSA)又はドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)のような官能化有機プロトン酸と共に用いることによって導電性ポリアニリンを形成させることができる。
【0018】
導電率はしばしば導電性ポリマーの最終生成物の重要な特性であるが、導電性形態の導電性ポリマーはしばしば処理するのが困難である。例えば、ドープされたポリアニリンは通常は全ての有機溶媒中に不溶であり、一方、自然形態はN−メチルピロリドンのような高度に極性の溶媒中にしか可溶でない。しかしながら、所定の合成法、及び所定の官能化有機酸ドーパントを用いることによって、導電性ポリアニリンが有機溶媒中により可溶になる。例えば、米国特許5,863,465及び5,567,356(極性有機液体を用いる乳化重合において疎水性の対イオンを用いる)、並びにWO−92/22911及び米国特許5,324,453及び5,232,631(非極性有機液体を用いる乳化重合において界面活性特性を有する対イオンを用いる)を参照。
【0019】
上記で簡単に議論したように、有機溶媒中のポリマーの混合物を表面に施し、溶媒を除去することによって、導電性ポリマーのフィルムを与えることができることが見出された。多くの用途において、この工程に関して有機溶媒を用いることは有利である。有機溶媒を用いる場合には、第1の有機溶媒を、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーと混合することが有利であることが見出された。溶媒/ポリマー混合物を表面に施した後、溶媒を除去し、それによってドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する。
【0020】
本発明の第1の有機溶媒は、室温において約20より低い誘電率を有する有機溶媒であってよい。或いは、第1の有機溶媒は、10未満、或いは5未満、4未満、又は3未満の誘電率を有していてよい。
【0021】
第1の有機溶媒は単一の物質であってよく、あるいは2種類以上の有機溶媒の混合物であってもよい。本発明において第1の有機溶媒として用いるのに好適な溶媒の例としては、キシレン、又はキシレン類の混合物が挙げられる。複数の有機溶媒の混合物である好適な第1の有機溶媒の他の例は、ブチルセロソルブとキシレン(類)との混合物である。一例として、ブチルセロソルブ−キシレンの約1:1.2〜約1:1.5(重量比)の混合物が第1の有機溶媒として有用である。
【0022】
ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸は、ポリアニリン用のドーパントとして用いることができ、1種類又は複数のバインダーを加えて用いることなく約10ミクロン以下の厚さの自立性フィルムであるフィルムを混合物から形成する(スピンコート、ドローダウン、又は他の被覆法による)ことを可能にするのに十分なドープされた導電性ポリマーの室温における混合キシレン類中での可溶性を与える任意の有機プロトン酸であってよい。
【0023】
一般に、第1のプロトン酸は、アルキル化芳香族モノスルホン酸又はアルキルモノスルホン酸であってよい。二、三、又は多官能性スルホン酸は、ゲルネットワークの形成を導くので一般に有用でない。第1のプロトン酸として有用な特定の物質の例は、米国特許4,983,322、5,006,278、5,567,356、5,624,605、及び5,863,465に記載されている。第1のプロトン酸として有用な物質の特定の例としては、カンファースルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)が挙げられる。
【0024】
第1の有機溶媒と、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーとの好適な混合物の1つの例は、(重量%で)
ポリアニリン:3.6%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:21.4%;
キシレン類(混合異性体):44.4%;
ブチルセロソルブ:30.6%;
である。
【0025】
また、第1のプロトン酸ドーパントに加えて4,4’−スルホニルジフェノール(CAS RN 80−09−1)を更に含む導電性ポリマーのフィルムを提供することが有用であることも見出された。4,4’−スルホニルジフェノールは、SDP、スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビスフェノールS、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−スルホニルジフェノール(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンビスフェノールS、又は4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)と呼ぶこともできる。第1の有機溶媒と、好適な第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーとの混合物(SDPを含む)の例は、(重量%で)
ポリアニリン:3.3%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:19.7%;
4,4’−スルホニルジフェノール:2.6%;
キシレン類(混合異性体):41.1%;
ブチルセロソルブ:33.4%;
である。
【0026】
導電性ポリマーの説明に関連してここで用いる「フィルム」という用語は、ポリマーの固体形態を意味する。他に記載しない限りにおいて、フィルムは殆どの任意の物理的形状を有していてよく、シート状の形状又は任意の他の特定の物理的形状に限定されない。通常は、導電性ポリマーのフィルムは固体電解キャパシタの誘電層の表面に適合させることができる。
【0027】
材料を説明するためにここで用いる「熱安定性」とは、等温重量分析によって測定される、昇温温度に長時間曝露した際に分解又は劣化に耐える材料の能力を意味する。「改良された熱安定性」という用語は、どんなに小さくても材料の熱安定性における改良があることを意味する。
【0028】
ここで用いる「混合物」という用語は、2種類以上の材料の物理的配合を指し、限定なしに、溶液、分散液、エマルジョン、ミクロエマルジョンなどが挙げられる。
本方法においては、第1のプロトン酸ドーパントを有する導電性ポリマーのフィルムを、第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる。
【0029】
第2のプロトン酸は、導電性ポリマー用のドーパントとして作用させることができる任意のプロトン酸であってよい。第2のプロトン酸は第1のプロトン酸と同一であってよく、或いは異なるプロトン酸であってもよく、或いは第1のプロトン酸と異なるプロトン酸との混合物であってもよく、或いはその任意の1つが第1のプロトン酸と同一であっても又は異なっていてもよい2種類以上のプロトン酸の混合物であってもよい。
【0030】
本発明の一態様においては、第2のプロトン酸は、導電性ポリマーと組み合わせると導電性を与えるだけでなく導電性ポリマーの熱安定性も向上させるドーパントとして作用させることができる。
【0031】
本発明の第2のプロトン酸として用いるのに好適な物質の例としては、限定なしに、とりわけ4−スルホフタル酸(4−SPHA)、p−トルエンスルホン酸(PTSA)、ベンゼンスルホン酸(BA)、フェニルホスホン酸(PA)、リン酸(H3PO4)、及びカンファースルホン酸(CSA)が挙げられる。第2のプロトン酸として有用な酸の更なる例は米国特許5,069,820に記載されている。一態様においては、第2のプロトン酸は有機スルホン酸を含む。酸は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のスルホネート基を有していてよい。好適な有機スルホン酸の例は、式:
R1HSO3
(式中、R1は置換又は非置換の有機基である)
を有する化合物である。
【0032】
第2のプロトン酸ドーパントとして用いるのに好適な物質の他の例は、式:
【0033】
【化1】
【0034】
(式中、oは、1、2、又は3であり;r及びpは、同一か又は異なり、0、1、又は2であり;R5は、アルキル、フルオロ、又は1以上のフルオロ若しくはシアノ基で置換されているアルキルである)
を有する化合物である。
【0035】
上記の構造において、oが1又は2であり;r及びpが、同一か又は異なり、0又は1であり;R5が、アルキル、フルオロ、又は1以上のフルオロ若しくはシアノ基で置換されているアルキルである;場合もまた好適である。
【0036】
一態様においては、第2のプロトン酸ドーパントはp−トルエンスルホン酸を含む。
本発明の第2の有機溶媒は、その中において第1のプロトン酸が少なくとも部分的に可溶である有機溶媒又は複数の有機溶媒の混合物である。一態様においては、第2の有機溶媒は、その中において第1のプロトン酸がドープした導電性ポリマーよりも可溶である液体である。これにより、ドープされた導電性ポリマーの溶媒和に対して過剰量の第1のプロトン酸の選択的溶媒和が可能になり、これによってドープされた導電性ポリマーから過剰量の第1のプロトン酸を選択的に除去することが可能になる。一態様においては、第2の有機溶媒は第1の有機溶媒よりも高い誘電率を有する液体である。
【0037】
一般に、第2の有機溶媒は、第2のプロトン酸及び第1のプロトン酸の両方を溶解するように選択する。したがって、第2の有機溶媒は、p−トルエンスルホン酸を溶解するのに十分に極性で且つジノニルナフタレンスルホン酸を溶解するのに十分に非極性であるブチルセロソルブ(誘電率(DC)=9.4)、n−ブタノール(DC=17.8)などのように少なくとも軽度に極性でなければならない。
【0038】
本発明の好適な第2の有機溶媒の例としては、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、及びこれらの混合物が挙げられる。
本方法においては、第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物は、一般に、導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させ、熱応力(キャパシタにおける等価直列抵抗のシフト(ΔESR)を減少する)によって引き起こされる導電率の損失を減少させるように選択される量の第2のプロトン酸を含む。
【0039】
通常は、第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物は、約0.5%〜約25%の量の第2のプロトン酸を含んでいてよい。また、この混合物は、全て重量%で、約1%〜約15%、又は約3%〜約7%の量の第2のプロトン酸を含んでいてもよい。
【0040】
第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物には接触プロセスの有効性を向上させる殆どの任意の他の添加剤を更に含ませることができるが、通常は、導電性ポリマーのモノマーを含まず、且つドープされた導電性ポリマーフィルムと接触させる前は導電性ポリマーを含まない。場合によって、混合物は第2の有機溶媒と第2のプロトン酸とから実質的に構成することができる。
【0041】
第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物をドープした導電性ポリマーフィルムと接触させる際は、任意のタイプの接触を用いることができる。例えば、混合物をフィルム上に噴霧するか又はフィルム上に塗装することができ、或いはフィルムを混合物中に浸漬することができる。一例においては、フィルムを混合物中に浸漬し、約1秒〜約120秒の間保持する。この時間は、約5秒〜約60秒、又は約10秒〜約30秒であってよい。
【0042】
接触プロセス中において、フィルム及び混合物の温度は、約5℃〜約50℃であってよく、或いは約10℃〜約30℃であってよく、或いはほぼ室温であってよい。
一態様においては、第2の有機溶媒中の第2のプロトン酸の濃度及び混合物を導電性ポリマーフィルムと接触させる時間(接触条件)は、熱安定性を向上させて、200℃において120分間処理した導電性ポリマーフィルムの重量損失が約20%未満であり、導電率の損失が同じ処理後に30%を下回るように選択する。或いは、接触条件は、同じ処理後に、重量損失が約10%未満で導電率の損失が20%を下回り、或いは重量損失が約5%未満で導電率の損失が10%を下回るように選択する。
【0043】
上述したように、本発明の1つの特定の用途は、固体電解質バルブメタルキャパシタのカソードとして作用する導電性ポリマーフィルムの処理に関する。
ここで用いる「バルブメタル」という句は、上記で言及した文献を含む文献においてそれに与えられているものと同じ意味を有し、具体的にはチタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、ハフニウム、ニオブ、又はジルコニウム(これらの合金を含む)が挙げられる。
【0044】
本方法においては、バルブメタルのアノード、誘電性金属酸化物層、並びに、熱安定性を有し、ポリアニリンを第1の有機溶媒中に可溶化するのに十分な量の第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーを含む導電性ポリマーフィルムのカソードを含むキャパシタ体を提供し;フィルムを第2のプロトン酸を含む第2の有機溶媒と接触させる。
【0045】
一態様においては、第1のプロトン酸は、ドープされた導電性ポリマーよりも第2の有機溶媒中により可溶である。上記で議論したように、導電性ポリマーのフィルムを提供する工程には、第1の有機溶媒、及び導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーの混合物を誘電性金属酸化物層の上に施し;そして、第1の有機溶媒を除去し、誘電性金属酸化物層の上にドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する;ことを含ませることができる。
【0046】
本方法の特に有用な例は、第1のプロトン酸ドーパントがジノニルナフタレンスルホン酸を含み、第2のプロトン酸ドーパントがp−トルエンスルホン酸を含む場合である。また、第1の有機溶媒がキシレンを含み、第2の有機溶媒がn−ブタノール、ブチルセロソルブ、又はこれらの混合物を含む例も有用である。
【0047】
この適用の一例には、以下の工程を含ませることができる。要素の付番は図25に示す付番に対応する。
・焼結タンタル体を含むアノード(101)を提供する。アノード体は、アノードに接続され、キャパシタのアノード側を電子回路に接続するように設計されているアノードリード線(111)を有していてよい。
【0048】
・アノード体を酸浴中で陽極酸化処理して、酸化タンタルの誘電層(102)でタンタルを被覆する。
・誘電性金属酸化物層を有するアノードを、SDPを加えるか又は加えずにジノニルナフタレンスルホン酸をドープしたポリアニリン(PANi/DNNSA又はPANi/DNNSA−SDP)の溶液中に浸漬被覆する。SDPを加えない溶液は以下の組成:
ポリアニリン:3.6%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:21.4%;
キシレン類(混合異性体):44.4%;
ブチルセロソルブ:30.6%;
を有していてよく、SDPを加える溶液は以下の組成:
ポリアニリン:3.3%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:19.7%;
4,4’−スルホニルジフェノール:2.6%;
キシレン類(混合異性体):41.1%;
ブチルセロソルブ:33.4%;
を有していてよい。
【0049】
アノードを溶液中に30秒間浸漬して導電性ポリマーのフィルムを堆積させる。
・アノードを室温において30分間空気乾燥する。
・アノードを150℃において30分間オーブン乾燥して、ドープされた導電性ポリマーの固体フィルム(103)を形成する。
【0050】
・アノードを室温に最小で30分間冷却し;場合によっては
・アノードを、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、又はこれら2つの混合物のような有機溶媒中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)のような第2のプロトン酸の5重量%溶液であってよい「処理溶液」中に30秒間浸漬する(アノードを酸/有機溶媒工程で処理する場合には、処理したアノードを室温において10〜30分間空気乾燥し、次に150℃において30分間オーブン乾燥する)。
【0051】
更なる場合によって用いる工程としては以下の工程を挙げることができる。
・場合によっては、上記に示す工程の一部又は全部を繰り返す。
・場合によっては、処理したアノードを、最終「すすぎ」溶液、通常はキシレンのような有機溶媒の中に30秒間浸漬する。
【0052】
・アノードをカーボンインク中に30秒間浸漬し、室温において10分間空気乾燥し、100℃において30分間オーブン乾燥し、室温に最小で30分間冷却することによってアノードに炭素層(104)を施す。
【0053】
・アノードを銀インク中に30秒間浸漬し、室温において30分間空気乾燥し、150℃において30分間オーブン乾燥し、室温に最小で30分間冷却することによってアノードに銀層(105)を施す。
【0054】
・キャパシタ100のカソード側を電子回路に接続するためのカソードリード線(110)を施す。
幾つかの固体電解キャパシタの製造中においては、ポリピロールのような導電性ポリマーの1以上の層を多孔質バルブメタルアノードの金属酸化物誘電層に直接施すことが通常である。次に、同じか又はポリアニリンのような異なる導電性ポリマーの最終層を、先に形成した導電性ポリマー層の上に施すことができる。本発明は、導電性ポリマーの層のいずれか1つ又は全部に本方法を提供することを包含する。
【0055】
以下の実施例は本発明の好ましい態様を示す。特許請求の範囲内の他の態様は、ここで開示する本発明の仕様又は実施を考察することによって当業者に明らかとなろう。本明細書は実施例と共に例示のみのものとみなされ、本発明の範囲及び精神は、実施例に続く特許請求の範囲によって示される。実施例においては、全てのパーセントは他に示さない限りにおいて重量基準で与える。
【実施例】
【0056】
実施例1:
本実施例は、異なる有機溶媒を用いて、ジノニルナフタレンスルホン酸をドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA)のフィルムを処理する効果を示す。
【0057】
スピンコートによってガラススライド(2×3in2)の上にPANi/DNNSAフィルムを調製した。次に、フィルムを150℃において30分間乾燥した。フィルムを種々の有機溶媒中に浸漬し、150℃において30分間再び乾燥し、次に一対の銀棒状部材をフィルム上にスクリーン印刷した。堆積し硬化したフィルムを完全に溶解除去することなく過剰のDNNSAを溶解及び除去する有機溶媒を選択する目的で、以下の有機溶媒:ブチルセロソルブ(BC;2−ブトキシエタノールとしても知られている)、n−ブタノール(nBuOH)、イソプロパノール(iPrOH)、メタノール(MeOH)、キシレン類(異性体の混合物)、及びこれらの選択された混合物:を評価した。
【0058】
それぞれのフィルムのフィルム厚さ及び表面抵抗を実験で測定し、これらの測定値を用いて、等式:σ=1/SR・d(式中、SRは表面抵抗であり、dはフィルム厚さである)によってフィルムのバルク導電率(σ)を算出した。
【0059】
未処理のPANi/DNNSAフィルムは約0.06S/cmの導電率を有していたが、フィルムを上記に示す有機溶媒及び溶媒混合物中に浸漬すると、フィルム導電率が2〜6S/cmの値に2桁以下まで増加した。図1に、種々の有機溶媒で処理したPANi/DNNSAフィルムの導電率を示す。溶媒処理によってPANi/DNNSAフィルムの厚さが半分以上減少したことも示され(図2参照)、これはドーパントの相当部分がフィルムから除去されたことを示した。
【0060】
等温熱重量分析(TGA)によってnBuOHで処理したPANi/DNNSAフィルムの熱安定性を求め、同じタイプの未処理のフィルムの熱安定性と比較した。フィルム試料の温度を速やかに200℃に昇温し、次に200℃において2時間保持した。図3に示す結果は、200℃において未処理のPANi/DNNSAフィルムの劣化及び重量損失が迅速であり、溶媒で処理したPANi/DNNSAフィルムは非常により小さい重量損失を有し、より良好な熱安定性を示したことを示した。それぞれの試料に関して、捕捉溶媒又は他の揮発性物質の蒸発によって4〜8重量%の初期重量損失が観察されたことが注目された。
【0061】
導電性ポリマーフィルムを溶媒のみ(酸なし)と接触させると、フィルムの完全性が低下し、分解して強度及び耐性にかけるフィルムが得られることが注目された。
実施例2:
本実施例は、有機溶媒中の5重量%のp−トルエンスルホン酸(PTSA)を用いて、ジノニルナフタレンスルホン酸をドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA)のフィルムを処理することの効果を示す。
【0062】
高い導電率及び処理性/被覆性を有するPANi/DNNSA材料は有用なキャパシタの製造のために重要であるが、昇温温度(200℃以下)での長時間の加熱下で安定な材料を提供することも重要である。
【0063】
ポリアニリンヒドロクロリド中のドーパントイオンをp−トルエンスルホネートアニオンと交換することによってPTSAをドープしたポリアニリンを製造することができることは、米国特許5,160,457から公知である。得られるPTSAをドープしたポリアニリン化合物は、熱重量分析(TGA)によって測定して、300℃に加熱した際に2%の重量損失、及び400℃に加熱した際に5%の重量損失しか有しないことが報告されている。この特許における実施例では、水溶液中における塩化物のPTSAへのイオン交換を行うことが教示されている。
【0064】
PTSAをドープしたポリアニリンの報告されている改良された熱安定性を考慮して、本PANi/DNNSA材料の熱安定性を向上させるための修正イオン交換法を提案した。本修正イオン交換法においては、最終目標は、同時にDNNSAドーパントをPTSAと交換しながら、過剰のDNNSAの多くをフィルムから除去することである。また、PANi/DNNSA及びその成分(PANi/DNNSA及びDNNSA)は水溶性ではないので、この目的のためには水溶液ではなく有機溶媒を用いることが望ましいとも考えられていた。しかしながら、PTSAは水溶液中よりも有機溶媒中において非常にイオン化しないので、有機溶液でのイオン交換が可能であるかどうかは知られていなかった。実際、選択された有機溶媒のタイプがプロセスの成功のために重要であることが見出された。PTSA及びDNNSAの両方を溶解してイオン交換を可能にするが、堆積し硬化したPANi/DNNSAフィルムを完全に溶解除去する程には強溶媒でない有機溶媒を選択することが必要であることが見出された。
【0065】
実施例1に記載のようにしてスピンコートによってガラススライド(2×3in2)の上にPANi/DNNSAフィルムの4つの試料を調製し、フィルムを150℃において30分間乾燥した。次に、それぞれのフィルムの半分をブチルセロソルブ(BC)中PTSAの5重量%溶液中に浸漬し、150℃において30分間再び乾燥した。次に、一対の銀接点用棒状部材を、それぞれのフィルム試料の半分の上にスクリーン印刷した。フィルム厚さ及び表面抵抗を測定し、それぞれのフィルムの導電率を算出した。
【0066】
結果を図4に示す。これは、処理PANi/DNNSAフィルムのそれぞれが100〜200S/cmの範囲の導電率を示した。これは未処理のPANi/DNNSA(約0.06S/cm)、又は実施例1において示す溶媒のみで処理したPANi/DNNSAフィルム(約2〜6S/cm)、並びに4,4’−スルホニルジフェノール(SDP)を加えた未処理のPANi/DNNSAフィルム(約20〜40S/cm)のものよりも遙かに高いものである。導電率の向上は、少なくとも一部のDNNSAがPTSAに交換され、これが処理されたフィルム中に移動してフィルムの導電率を向上させたことを示した。更に、図5に示されるように処理されたフィルムはその厚さの半分を失い、これは過剰のドーパントが有意に除去されたことを示した。
【0067】
上記に記載の方法によって処理したPANi/DNNSAフィルムの熱安定性を、未処理のPANi/DNNSAフィルムの熱安定性と比較した(図3)。試料の温度を速やかに200℃に昇温し、次に200℃において2時間保持することを含む等温熱重量分析によって熱安定性を求めた。図6に示すように、200℃において未処理のPANi/DNNSAフィルムの劣化及び重量損失が迅速であったが、PTSAで処理したPANi/DNNSAフィルムは非常により良好な熱安定性を示したことが分かった。捕捉された溶媒又は他の揮発性物質の蒸発のために4〜8重量%の初期重量損失が観察されたことが注目された。
【0068】
実施例3:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及び4,4’−スルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)のフィルムの溶媒処理を示す。
【0069】
ブチルセロソルブ及び混合キシレンの混合物中のSDPを加えたPANi/DNNSAの溶液からスピンコートすることによって、ガラススライド(2×3in2)の上にPANi/DNNSA−SDPフィルムを調製した。フィルムを150℃において30分間乾燥した。キシレン1.5部に対してブチルセロソルブ1部(重量部)の混合物中のPANi/DNNSAの25(重量)%溶液に2.5重量%のSDPを加えることによってPANi/DNNSA−SDP溶液を調製した。フィルムを種々の有機溶媒中に浸漬し、150℃において30分間再び乾燥し、次に1対の銀棒状部材をフィルム上にスクリーン印刷した。PANi/DNNSAフィルムを用いた検討と同様に、堆積し硬化したフィルムを完全に溶解除去することなく過剰のDNNSAを溶解除去(又は中和)する溶媒を見出す試験のために有機溶媒を選択した。以下の溶媒:ブチルセロソルブ(BC)(2−ブトキシエタノールとしても知られている);n−ブタノール(nBuOH);イソプロパノール(iPrOH);メタノール(MeOH);キシレン類(異性体の混合物);水性緩衝系(DNNSAを中和するため);及びこれらの選択された混合物;を試験した。
【0070】
それぞれの処理されたフィルムのフィルム厚さ及び表面抵抗を実験で求め、これから上記に記載のようにしてフィルムのバルク導電率を算出した。処理の前後のフィルム厚さを図7に示し、選択された導電率の結果を図8に要約する。
【0071】
アルコールベースの溶媒(例えばnBuOH)を処理のために用いた場合には、それぞれのフィルムは未処理のPANi/DNNSA−SDPの値(20〜40S/cm)よりも小さい10〜16S/cmの範囲の導電率を示したことが分かった。更に、未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムと比較して、処理されたフィルムの厚さは半分以上減少した。これは溶媒処理によってドーパントの相当部分がフィルムから除去されたことを明確に示す。
【0072】
しかしながら、溶媒処理のためにキシレン類を用いた場合には、フィルムの導電率は20〜30S/cmから40〜50S/cmに増加し、一方、フィルム厚さは半分以上減少した。この理論又はいかなる他の理論にも縛られないが、SDPはキシレン類中に可溶でないので、溶媒処理のためにキシレン類を用いるとフィルム中に予め形成されている導電性ネットワークが変化しなかったと考えられた。したがって、導電率の増加はフィルム厚さの減少に起因するものであった。これに対して、SDPはアルコール中に可溶であるので、アルコールによる溶媒処理は、過剰のDNNSAを除去するだけでなく、導電性ネットワークも部分的に付与する。
【0073】
水性緩衝系による同じフィルムの処理も評価した。これらの結果は下記実施例8において議論する。
処理及び未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの熱安定性を熱重量分析(TGA)によって評価した。まず、150℃〜200℃の間の幾つかの異なる温度での等温TGAによって未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの安定性を評価した。試験は、試料を所望の温度に速やかに昇温し、次にその温度に2時間(結果を図9に示す)又は5時間(結果を図10に示す)保持することによって行った。未処理のフィルムは150℃において重量損失に対して比較的安定であったが、150℃より高い温度においては、フィルムは間断なく相当の重量を損失し、フィルムの劣化が示されたことが分かった。200℃においては、未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの劣化及び重量損失が迅速であった。
【0074】
等温TGAによって検討した全てのフィルムにおいて、捕捉された溶媒又は他の揮発性物質の蒸発のために4〜8重量%の初期重量損失が観察された。図9に示す結果は、重量損失が加熱時間に比例し、定量化できるであろうということも示唆している。表1にフィルム重量の情報を要約する。ここで示す結果は、200℃において2時間加熱した後にフィルムがそれらの元々の重量のほぼ半分を失ったことを示す。
【0075】
【表1】
【0076】
フィルムを等温の2時間TGAスキャンにかけることによって、幾つかのタイプのフィルムの熱安定性を比較した。未処理のPANi/DNNSA−SDPのフィルム、抽出したPANi/DNNSA粉末(過剰/遊離のDNNSA酸を有しない「純粋」なポリアニリンエメラルディン塩)、及び過剰のDNNSAを除去するように選択された溶媒で処理したフィルムに関するTGAの結果を図11に示す。PANi/DNNSA粉末が最も安定であることが分かった。溶媒処理によってPANi/DNNSA−SDPフィルムの熱安定性が向上し、幾つかの溶媒は他のものよりも有効であった。例えば、3:1の比のBC及びMeOHはフィルムの安定性を大きく向上させたが、キシレン類は幾分より有効ではなかった。
【0077】
実施例4:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)のフィルムの、有機溶媒中の5重量%p−トルエンスルホン酸(PTSA)による処理を示す。
【0078】
実施例3において上記したようにスピンコートによって、PANi/DNNSA−SDPフィルムをガラススライド(2×3in2)の上に調製し、フィルムを150℃において30分間乾燥した。次に、それぞれのフィルムの半分を有機溶媒中のPTSAの5重量%溶液中に浸漬し、150℃において30分間再び乾燥した。比較のために、4−スルホフタル酸(4−SPHA)の2.5重量%溶液も評価した。次に、一対の銀接点用棒状部材をそれぞれのフィルム試料の半分の上にスクリーン印刷した。それぞれのフィルムのフィルム厚さ及び表面抵抗を測定し、導電率を算出した。PTSA処理のための溶媒として、ブチルセロソルブ(BC)及びn−ブタノール(nBuOH)の両方を評価した。
【0079】
図12及び図13に示す結果は、PANi/DNNSA−SDPフィルムをPTSAの5重量%溶液で処理すると、フィルム厚さが約半分まで減少し、導電率が100〜200S/cmの範囲の値に増加したことを示す。これらの導電率は、未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムに関して通常観察されるもの(約20〜40S/cm)よりも非常に高く、PTSAで処理したPANi/DNNSAフィルムにおいて観察されるものと同等であった。
【0080】
UV−可視光分光法を用いて、PTSA処理によって観察されたフィルム導電率の増加を確認又は定量化することができる。図14は、BC中PTSAの5重量%溶液による処理を行った場合と行わなかった場合のPANi/DNNSA−SDPフィルムに関する一連のUV−可視光スペクトルである。自由キャリア又は伝導帯と関係する500〜1100nmの吸収テール部は、PTSA処理によって強度増加した。この結果は、観察されたフィルム導電率の増加と合致する。PANi/DNNSA−SDPフィルムを、BC中5重量%リン酸及び/又はBC中5重量%カンファースルホン酸のような有機溶媒中の他の酸で処理した場合に同様の挙動が観察された。
【0081】
PTSAで処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムの熱重量分析(TGA)(図15)は、フィルムが200℃において2時間の等温加熱下で適度な熱安定性を示したことを示す。更に、4−SPHAで処理したフィルムのTGAは、フィルムが良好な熱安定性を示し、200℃において2時間の等温加熱の後に約10%以下の重量損失を与えたことを示す。
【0082】
実施例5:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)の処理されたフィルムの導電率及び熱安定性に対する、有機溶媒処理溶液中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の濃度の効果を示す。
【0083】
実施例4において上記したようにPANi/DNNSA−SDPフィルムを調製し、種々の濃度のブチルセロソルブ(BC)中のPTSAの溶液で処理した。導電率に関する試験によって、PTSA濃度が少なくとも0.05Mであると導電率が劇的に増加したことが示された(図16及び図17)。上記に記載した検討において用いた5重量%レベルに近接する0.25MのPTSA濃度においては、導電率は最高で約150S/cmに達した。PTSA濃度を更に増加させると、フィルム導電率の増加はより小さかった。
【0084】
実施例6:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)の処理されたフィルムの導電率に対する、処理において用いる酸のタイプの効果を示す。上記し、図12及び図13に示すように、PTSAのより小分子の代替物である4−スルホフタル酸(4−SPHA)を用いると、PTSAを用いた場合に見られるものに非常に類似した結果が導かれたことが示された。これは、有機溶媒中の種々の小分子有機酸を用いてフィルムの導電率を向上させることができることを示唆する。以下の酸:ブチルセロソルブ(BC)中のベンゼンスルホン酸(BA);BC中のフェニルホスホン酸(PA);BC中のリン酸(H3PO4);及びBC中のカンファースルホン酸(CSA);を評価した。
【0085】
BC中の0.25M−PTSA、並びに上記に示すそれぞれの溶液で処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムに関するフィルム導電率の結果の比較を、図18及び表2に示す。一般に、この結果は、フィルムの導電率が未処理のフィルムのものの3倍乃至7倍以上増加し、PTSAがBC中5重量%溶液として試験した他の酸よりも優れていることが分かることを示す。PTSA又はBAと比較して弱い酸であるPAを用いると、フィルム導電率は50〜60S/cmにしか増加しなかった。しかしながら、処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率は、溶媒(BC)のみで処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムのもの(10〜16S/cm)よりもなお遙かに高かった。これは、スルホン酸よりも弱い酸を用いて処理後のフィルムの導電率を向上させることができることを示唆する。H3PO4は、安価で、多くの有機酸よりもより毒性が低いか又は危険性が低く、非酸化性であるので、キャパシタ用途において用いるための魅力的な候補物質である。
【0086】
【表2】
【0087】
実施例7:
本実施例は、導電率に対する、酸/有機溶媒溶液と、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)のフィルムとの間の接触時間の効果を示す。
【0088】
PANi/DNNSA−SDPのフィルムを、浸漬によってブチルセロソルブ中の5重量%のフェニルホスホン酸(PA)又はベンゼンスルホン酸(BA)の溶液と接触させた。フィルムを有機酸溶液と接触させる時間は最終の導電率に対する効果を有することが分かった。15秒間又は30秒間のいずれかの浸漬を用いたPA及びBAによる結果を図19に要約する。したがって、導電性ポリマーフィルムを、有機溶媒中の第2のプロトン酸と熱安定性及び電気特性における望ましい向上を達成するのに十分な時間接触させることが好ましい。
【0089】
実施例8:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)のフィルムを、水性緩衝溶液及び有機酸の水溶液で処理することの効果を示す。
【0090】
水性緩衝溶液によるPANi/DNNSA−SDPフィルムの処理:
2、7、及び11のpH値の水性緩衝溶液を調製した。それぞれの場合において、PANi/DNNSA−SDPフィルムを45℃において緩衝溶液中に30分間浸漬した。浸漬後にフィルムの収縮は観察されず、これはDNNSAがフィルムから除去されなかったことを示唆していた。DNNSAもその塩も水溶性でないということを考えれば、この結果は驚くべきものではない。しかしながら、驚くべきことは、接触によってフィルム導電率の著しい低下が引き起こされたことである。図20に、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する緩衝溶液のpHの効果を示す。処理されたフィルムは、対照例のもの(22S/cm)よりも遙かに小さい0.4〜3.4S/cmの範囲の導電率を示した。2のpHを有する酸性水性緩衝溶液でさえも、フィルム導電率の2.3S/cmへの低下を引き起こした。
【0091】
有機酸の水溶液によるPANi/DNNSA−SDPフィルムの処理:
以下の酸:p−トルエンスルホン酸(PTSA);ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA);4−スルホフタル酸(4−SPHA);及びポリ(スチレンスルホン酸)(PSSA);の5重量%水溶液を用いて、実施例4において上記したようにPANi/DNNSA−SDPフィルムを処理した。
【0092】
PSSAは、その繰り返し単位構造がPTSAに類似し、フェニル環に直接結合しているスルホン酸基を有するポリマースルホン酸である。DBSAは、メチル置換基の代わりにドデシル(C12)基を有する以外はPTSAと同様の小分子スルホン酸である。DBSAのより長いn−ドデシル基により、この酸はPTSAよりも疎水性になっているので、本発明者らは、DBSAがPANi/DNNSA−SDPフィルム中のDNNSAと有利に相互作用してフィルムの導電率及び厚さを改良すると考えた。4−SPHAはそのスルホン酸基に加えて2つのカルボン酸基を有しているので、より親水性の代替物質である。
【0093】
PANi/DNNSA−SDPのフィルムをガラススライド上にキャストし、次にそれぞれの試料の半分を酸水溶液中に30秒間浸漬し、一方、他の半分は未処理のままとした。乾燥後、フィルム試料のそれぞれの半分の上に銀棒状部材を印刷して、フィルムの抵抗及び厚さを測定できるようにした。それぞれの酸水溶液処理の後の導電率の変化を図21に示す。DBSA水溶液又はPTSA水溶液のいずれかによる処理によってフィルム導電率が僅かに増加したが、その増加はブチルセロソルブ中PTSAによる処理と比較して有意なものではなかった。同様に、フィルム厚さ(図22に示す)は、変化しなかったか又は僅かしか減少しなかった。予期しなかったことに、4−SPHA水溶液又はPSSA水溶液のいずれかによる処理によってフィルム導電率が僅かに減少した。
【0094】
実施例9:
本実施例は、固体電解質としてタンタル(Ta)アノードキャパシタ体上に堆積させた導電性ポリマーフィルムの、有機溶媒中の酸の溶液による処理を示す。
【0095】
現在の最新のTa−ポリマー固体電解キャパシタは、通常、導電性ポリマーをベースとする電解質の内部被覆(内部カソード)、及び導電性ポリマーをベースとする電解質の外部被覆(外部カソード)を有する。これらのキャパシタにおいて用いられる幾つかの代表的な導電性ポリマーは、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、及び/又はポリアニリンをベースとするものである。導電性ポリマーカソードは、次に(1)炭素層及び(2)銀層で更に被覆することができる。銀層は電気接点として機能する。固体Ta−ポリマー電解キャパシタの特に重要な電気特性は、それらの低い及び極めて低い等価直列抵抗(ESR)であり、これによってこれらのキャパシタが高周波数用途において有用になる。
【0096】
キャパシタ実験に関する基本手順:
全てのケースにおいて、内部導電性ポリマー電解質で予め被覆した470μF、2.5Vの固体Taアノード体を、キャパシタ試験用の基材として用いた。
【0097】
基本手順は以下の通りであった:
1.以下の溶液の1つの中に30秒間浸漬被覆することによって、スルホニルジフェノールを加えるか又は加えずにジノニルナフタレンスルホン酸をドープしたポリアニリン(PANi/DNNSA又はPANi/DNNSA−SDP)によってアノードを被覆した。
【0098】
PANi/DNNSA溶液:
ポリアニリン:3.6%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:21.4%;
キシレン類(混合異性体):44.4%;
ブチルセロソルブ:30.6%。
【0099】
PANi/DNNSA−SDP溶液:
ポリアニリン:3.3%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:19.7%;
4,4’−スルホニルジフェノール:2.6%;
キシレン類(混合異性体):41.1%;
ブチルセロソルブ:33.4%。
【0100】
2.アノードを室温において30分間空気乾燥した。
3.アノードを150℃において30分間オーブン乾燥した。
4.アノードを室温に最小で30分間冷却した;そして場合によっては
5.通常は有機溶媒か又は有機溶媒中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)のような有機酸の5重量%溶液である「処理溶液」中にアノードを30秒間浸漬した。
【0101】
(工程5を用いる場合には、処理したアノードを室温において10〜30分間空気乾燥し、次に150℃において30分間オーブン乾燥した)
更なる場合によって用いる工程としては、
a.工程1〜7を繰り返す;
b.処理したアノードを、最終「すすぎ」溶液、通常はキシレンのような有機溶媒の中に30秒間浸漬する;
c.アノードをカーボンインク中に30秒間浸漬し、室温において10分間空気乾燥し、100℃において30分間オーブン乾燥し、室温に最小で30分間冷却することによって、アノードに炭素層を施す;
d.アノードを銀インク中に30秒間浸漬し、室温において30分間空気乾燥し、150℃において30分間オーブン乾燥し、室温に最小で30分間冷却することによって、アノードに銀層を施す;
ことを挙げることができる。
【0102】
上記に記載の処理工程(5)を用いない場合、被覆されたTaキャパシタは、PANi/DNNSA−SDPの25重量%溶液で被覆すると、通常は18〜25mΩの範囲の等価直列抵抗(ESR)を示した。キャパシタが使用中にしばしば経験するソルダーリフロー温度を模擬する意図で260℃において15秒間更なる高温処理を行った後は、ESRは通常は更に5mΩ以上増加し、これではキャパシタは幾つかの商業的用途に関して不的確となる可能性があった。
【0103】
本方法により、ソルダーリフロー条件を模擬する意図の熱処理後にESRの絶対値及びESRの増加量(ΔESR)が減少したという点で、導電性ポリマーフィルムカソードを有するキャパシタの電気特性が改良されることが分かった。
【0104】
PANi/DNNSA又はPANi/DNNSA−SDP電解質フィルムで被覆したタンタルキャパシタアノードの、有機酸を用いるか又は用いない溶媒による処理:
上記に記載の導電性ポリマーフィルムで被覆したタンタルキャパシタアノードを、工程5に記載のようにして、表3に示す有機溶媒中の酸の溶液による処理にかけた。
【0105】
【表3−1】
【0106】
【表3−2】
【0107】
試験した条件の中で、最良の結果を与えた処理は、PANi/DNNSA−SDP被覆に対する処理としてPTSAの5重量%溶液を用いることであった。この処理の結果は以下のように要約することができる。
【0108】
260℃において15秒間の熱応力の後のESRの増加量であるΔESRは2〜3mΩに減少した。
「短絡」キャパシタの割合は<10%に減少した。ここで記載する実験に関連して、「短絡」キャパシタは、キャパシタの定格電圧において試験した際に漏れ電流が11,500μAを超えたものである。
【0109】
それぞれ5重量%PTSAの処理を行ったPANi/DNNSA−SDPフィルムの多重被覆によって、「短絡」キャパシタの割合を改良することができるが、ESR及びΔESRに対する効果は存在しても最小であると考えられる。
【0110】
初期ESRは19〜22mΩの範囲であり、これは商業的用途のために十分であると考えられる。
キャパシタンスは470μFの製品定格値に近接して保持された。
【0111】
少なくとも2種類の異なる有機溶媒がPTSA処理溶液のために首尾よく用いられたことが示され、他のアルコール及び極性溶媒も同様に好適であると考えられる。
有機溶媒処理溶液中の有機酸の好ましい重量%は少なくとも0.1重量%であり、少なくとも1%、又は少なくとも5%がより好ましい。より低い濃度は、30秒間の固定した浸漬時間を考えるとイオン交換においてあまり有効でない。より高い濃度は、平衡をフィルム中により多くのPTSAが含まれる方向に望ましく移動させると考えられる。
【0112】
DNNSAよりも熱的に安定で、DNNSAも溶解する有機溶媒中に可溶である他の有機及び無機酸をPTSAと置き換えることができる。例えば、4−スルホフタル酸(4−SPHA)及びリン酸(H3PO4)は、代替物質として有効であり、より高いフィルムの熱安定性及びより低いESRを導く。
【0113】
実施例10:
本実施例は、タンタル(Ta)キャパシタ体上の外部カソードとして施した、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープしたポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)の処理したフィルムの長時間加熱下での熱安定性を示す。
【0114】
有機溶媒中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液で処理した際のPANi/DNNSA−SDPフィルム電極の改良された熱安定性を示すために、被覆し処理したTaキャパシタ体を200℃のボックスオーブン内に種々の時間配置する実験を行った。この実験において試験した4つのタイプのアノードに関する200℃における等価直列抵抗(ESR)及びESRの変化(ΔESR)の時間経過の比較を、それぞれ図23及び24に示す。ΔESRは、最終ESR値(200℃曝露後)と初期ESRとの間の差である。
【0115】
制限なしに全ての論文、公報、特許、特許出願、プレゼンテーション、テキスト、報告書、原稿、パンフレット、書籍、インターネット投稿、雑誌記事、定期刊行物などの本明細書中に引用する全ての参考文献は、参照としてその全てを本明細書中に包含する。参考文献の議論は、単にそれらの著者によってなされる主張を要約することを意図するものであり、いかなる参考文献も先行技術を構成することを認めるものではない。本出願人は引用されている参考文献の正確性及び妥当性を変更する権利を留保する。
【0116】
上記を考慮すると、本発明の幾つかの有利性が達成され、他の有利な結果が得られたことが明らかである。
当業者によって本発明の範囲から逸脱することなく上記の方法及び組成において種々の変更を行うことができるので、上記の記載に含まれ、図面において示される全ての事項は、例示として解釈され、限定の意味を有しないと意図される。更に、種々の態様の形態は全体か又は部分的に置き換えることができると理解すべきである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、共に係属し同じ譲受人に譲渡された代理人書類番号19506/09108を有する2007年10月24日出願の米国特許出願11/977,184への優先権を主張する。
【0002】
本発明は、導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させる方法、より詳しくは有機溶媒から施されたドープされた導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどのような本質的に導電性のポリマーは、多くの用途において導電性素子として用いられている。最近、バルブメタルキャパシタにおけるカソードとして用いるための導電性ポリマーフィルムが報告された。とりわけ、米国特許7,271,994及び7,233,484にはタンタルキャパシタにおいて、米国特許7,215,534にはアルミニウムキャパシタにおいて、そして米国特許7,274,552及び7,236,350にはニオブキャパシタにおいて用いるための導電性ポリマーフィルム電極が記載されている。
【0004】
幾つかの場合において、導電性ポリマーフィルム電極は、例えばキャパシタを回路基板上にハンダ付けする際のような熱応力中、或いはリフローハンダ付け処理中に劣化するか又は特性を変化させると報告されている。これらの変化としては、等価直列抵抗(ESR)の増加、キャパシタンスの減少、短絡の増加、及び/又は漏れ電流の増加の1以上を挙げることができる。
【0005】
米国特許7,265,965において、発明者らは、炭素層にドーパントを加えることによって、隣接するドープされた導電性ポリマー層及び炭素層を有するキャパシタにおけるESRシフトが減少することを報告している。米国特許7,262,954においては、バルブメタル酸化物誘電層と導電性ポリマー電極層との間にプロピレングリコールの層を挿入することによってESRシフトが減少したことが報告されている。米国特許6,982,865に報告されている他のアプローチでは、増加した耐熱性及び低いESRのための水溶性の酸アニオンであるテトラヒドロナフタレンスルホネートとナフタレンスルホネート又はベンゼンスルホネートのいずれかとのドーパントの組み合わせが特許請求されている。米国特許6,912,118においては、ドーパントとして少なくともフルオロアルキルナフタレンスルホン酸を含むが、更にテトラヒドロナフタレンスルホネート又はベンゼンスルホネート又はナフタレンスルホネートをドーパントとして含んでいてもよい導電性ポリマーを含む固体電解質層を有するキャパシタが記載されており、この材料は低いESR及び良好な耐熱性を与えるものとして示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許7,271,994
【特許文献2】米国特許7,233,484
【特許文献3】米国特許7,215,534
【特許文献4】米国特許7,274,552
【特許文献5】米国特許7,236,350
【特許文献6】米国特許7,265,965
【特許文献7】米国特許7,262,954
【特許文献8】米国特許6,982,865
【特許文献9】米国特許6,912,118
【発明の概要】
【0007】
したがって、簡単に言うと、本発明は、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;そして、このフィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;ことを含む、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーフィルムの新規な製造方法に関する。
【0008】
本発明は、また、バルブメタルのアノード、誘電性金属酸化物層、及び、熱安定性を有し、導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される十分量の第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーを含む導電性ポリマーフィルムカソードを含むキャパシタ体を提供し;そして、フィルムを第2のプロトン酸を含む第2の有機溶媒と接触させる;ことを含む、バルブメタルキャパシタにおける固体電解質として改良された熱特性を有する導電性ポリマーフィルムを使用する新規な方法にも関する。
【0009】
本発明は、また、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;そして、フィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;ことを含み、ここで第2の有機溶媒との混合物中の第2のプロトン酸の濃度及び接触時間は、フィルムを260℃の温度に15秒間かけた際に約5mΩ未満のΔESRを与えるように選択する、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーフィルムの新規な製造方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ブチルセロソルブ(BC)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びメタノール(MeOH)などの種々の有機溶媒又は溶媒混合物で処理した、ジノニルナフタレンスルホン酸をドープしたポリアニリンのフィルム(PANi/DNNSAフィルム)の導電率を示す。
【図2】図2は、ブチルセロソルブ(BC)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びメタノール(MeOH)などの種々の有機溶媒又は溶媒混合物で処理したPANi/DNNSAフィルムの厚さを示す。
【図3】図3は、未処理のPANi/DNNSAフィルム及びn−ブタノール(nBuOH)で処理したPANi/DNNSAフィルムの200℃における等温熱重量分析(TGA)の結果を示し、溶媒で処理したフィルムが未処理のフィルムよりも非常に熱的により安定であることを示す。
【図4】図4は、ブチルセロソルブ(BC)中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液による処理の前後の、それぞれ同じようにして調製した4つのPANi/DNNSAフィルムの導電率を示す。
【図5】図5は、ブチルセロソルブ(BC)中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液による処理の前後の4つのPANi/DNNSAフィルムの厚さを示す。
【図6】図6は、未処理のPANi/DNNSAフィルム及びブチルセロソルブ中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液で処理したPANi/DNNSAフィルムの200℃における等温熱重量分析(TGA)の結果を示し、PTSAで処理したフィルムが未処理のフィルムよりも非常に熱的により安定であったことを示す。
【図7】図7は、ブチルセロソルブ(BC)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びメタノール(MeOH)などの種々の溶媒によって他に示さない限りにおいて30秒間処理した、4,4’−スルホニルジフェノールを加えたジノニルナフタレンスルホン酸をドープしたポリアニリンのフィルム(PANi/DNNSA−SDPフィルム)の処理前及び処理後のフィルム厚さを示す。
【図8】図8は、ブチルセロソルブ(BC)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びメタノール(MeOH)などの種々の溶媒中に他に示さない限りにおいて30秒間浸漬したPANi/DNNSA−SDPフィルムの処理前及び処理後のフィルム導電率を示す。導電率は、表面抵抗及び図7におけるフィルム厚さから、次の等式:σ=1/SR・d(式中、SRは表面抵抗であり、dはフィルム厚さである)を用いて算出した。
【図9】図9は、種々の温度における未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの2時間の等温熱重量分析(TGA)の結果を示す。それぞれの試料に関する約10%の初期重量損失は残留溶媒に起因することを留意すべきである。
【図10】図10は、150℃又は170℃における未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの5時間の等温TGAの結果を示す。約10%の初期重量損失は残留溶媒に起因することを留意すべきである。
【図11】図11は、未処理、並びに以下の溶媒:3:1のブチルセロソルブ−メタノール(BC/MeOH)、イソプロパノール(iPrOH)、n−ブタノール(nBuOH)、及びキシレンで処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムの2時間の200℃等温TGAスキャンの結果を示す。
【図12】図12は、PANi/DNNSA−SDPフィルムの厚さに対する酸処理の効果を示す棒グラフであり、示されるようにブチルセロソルブ(BC)又はn−ブタノール(nBuOH)のいずれかの中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)又は4−スルホフタル酸(4−SPHA)による処理によってフィルム厚さが半分を超えて減少することを示す。
【図13】図13は、示されるようにブチルセロソルブ(BC)又はn−ブタノール(nBuOH)のいずれかの中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)又は4−スルホフタル酸(4−SPHA)のいずれかによる酸処理の、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する効果を示す棒グラフである。
【図14】図14は、ブチルセロソルブ中のp−トルエンスルホン酸の5重量%溶液による処理の前後のPANi/DNNSA−SDPフィルムのUV−可視光スペクトルを示す。500nmと1100nmとの間の自由キャリアのテール部の強度が高くなることは、フィルムの導電率が増加したことの証拠である。
【図15】図15は、未処理フィルムのTGAスキャンと比較した、ブチルセロソルブ(BC)中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液によって処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムの等温200℃熱重量分析(TGA)の結果を示す。
【図16】図16は、異なる濃度のブチルセロソルブ(BC)中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の溶液で処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムに関する処理前及び処理後の導電率を示す。
【図17】図17は、BC処理溶液中の異なる濃度のPTSAに関する処理後のPANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率を示すグラフである。
【図18】図18は、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対するブチルセロソルブ(BC)中5重量%の溶液で用いる酸のタイプの効果を示す。ここで、PTSA=p−トルエンスルホン酸;BA=ベンゼンスルホン酸;CSA=カンファースルホン酸;PA=フェニルホスホン酸;H3PO4=リン酸;である。
【図19】図19は、ブチルセロソルブ(BC)中のフェニルホスホン酸(PA)又はベンゼンスルホン酸(BA)のいずれかの5重量%溶液を含む酸/有機溶媒溶液とフィルムを接触させる時間(15秒又は30秒のいずれか)の、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する効果を示す。
【図20】図20は、未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルム(対照)の導電率と比較した、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する異なるpHレベルの水性緩衝溶液による45℃における30分間の処理の効果を示す。
【図21】図21は、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する5重量%水溶液の種々の酸による処理の効果を示す。ここで、DBSA=ドデシルベンゼンスルホン酸;4−SPHA=4−スルホフタル酸;PSSA=ポリ(スチレンスルホン酸);PTSA=p−トルエンスルホン酸;である。
【図22】図22は、PANi/DNNSA−SDPフィルムのフィルム厚さにおける5重量%酸水溶液による処理の効果を示す。ここで、DBSA=ドデシルベンゼンスルホン酸;4−SPHA=4−スルホフタル酸;PSSA=ポリ(スチレンスルホン酸);PTSA=p−トルエンスルホン酸;である。
【図23】図23は、非ポリアニリンの本質的に導電性のポリマー(ICP)の内部及び外部被覆を有する対照アノード;非ポリアニリンICPの内部被覆及びp−トルエンスルホン酸(PTSA)処理を行わないPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムで被覆されているアノード;並びに、非ポリアニリンICPの内部被覆及びブチルセロソルブ(BC)又はn−ブタノール(nBuOH)のいずれかの中の5重量%PTSAによる処理を行ったPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムで被覆されているアノード;に関する、200℃における時間の関数としての、470μF、2.5Vのタンタルキャパシタの等価直列抵抗(ESR)を示すグラフである。非ポリアニリンICPの内部被覆及びPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムを有するが、更なるPTSA処理を行わないアノードは、200℃において2時間後に約80mΩのESR値を有する。
【図24】図24は、非ポリアニリンの本質的に導電性のポリマー(ICP)の内部及び外部被覆を有する対照アノード;非ポリアニリンICPの内部被覆及びp−トルエンスルホン酸(PTSA)処理を行わないPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムで被覆されているアノード;並びに、非ポリアニリンICPの内部被覆及びブチルセロソルブ(BC)又はn−ブタノール(nBuOH)のいずれかの中のPTSAによる処理を行ったPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムで被覆されているアノード;を有するキャパシタに関する、200℃における時間の関数としての、470μF、2.5Vのタンタルキャパシタの等価直列抵抗におけるシフト(ΔESR、最終ESR値と初期ESRとの間の差)を示すグラフである。BC中の5%4−スルホフタル酸(SPHA)溶液で処理し、それぞれの被覆の後に5%PTSA−BC処理を行ったPANi/DNNSA−SDPフィルムの2つの被覆を有するアノードに関するデータもプロットしている。非ポリアニリンICPの内部被覆及びPANi/DNNSA−SDPの外部フィルムを有するが、更なるPTSA処理を行わないアノードは、200℃において2時間後に約50mΩのΔESR値を有する。
【図25】図25は、キャパシタの種々の部品を示すバルブメタルキャパシタの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;そして、このフィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;ことによって、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーのフィルムを製造することができることが見出された。
【0012】
これは、第1の有機溶媒と、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーとの混合物を表面に施し;そして、第1の有機溶媒を除去し、ドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する;ことによって表面上に形成される高い完全性の導電性フィルムの熱安定性を向上させるために特に有用であることが見出された。
【0013】
ジノニルナフタレンスルホン酸をドープし、4,4’−スルホニルジフェノールを含むポリアニリンのフィルムを固体電解質タンタルキャパシタ用のカソードとして適用する本方法の一態様においては、フィルムをブチルセロソルブ中のp−トルエンスルホン酸の5重量%溶液中に浸漬し、フィルムを乾燥することによって、フィルムの熱安定性が大きく改良されたことが示された。また、この処理により、260℃で15秒間の熱応力条件によって引き起こされる等価直列抵抗におけるシフト(ΔESR)が劇的に減少し、キャパシタの漏れ電流及び導電性ポリマーの導電率を許容できるレベルに保持しながら、ΔESRは約5mΩ未満であった。
【0014】
ここで用いる「電気伝導性ポリマー」、「本質的に導電性のポリマー(ICP)」、又は「導電性ポリマー」という用語は、複共役結合系を含み、電子ドナードーパント又は電子アクセプタードーパントをドープして少なくとも約10−8S/cmの導電率を有する電荷移動コンプレックスを形成することができる有機ポリマーを指す。本明細書において電気伝導性ポリマー、ICP、又は導電性ポリマーに言及する場合には常に、この物質はドーパントと会合していると理解されよう。
【0015】
ここで用いる「ドーパント」という用語は、導電性ポリマーと塩を形成してポリマーの導電性形態を与える任意のプロトン酸を意味する。ドーパントとして単一の酸を用いることができ、或いは2種類以上の異なる酸をポリマー用のドーパントとして作用させることができる。
【0016】
任意の導電性ポリマーを本発明において用いることができるが、有用なポリマーの例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)などが挙げられる。置換又は非置換のアニリン、ピロール、又はチオフェンのポリマーを本発明の導電性ポリマーとして用いることができる。一態様においては、導電性ポリマーはポリアニリンである。
【0017】
ポリアニリンは少なくとも4つの酸化状態:ロイコエメラルディン、エメラルディン、ニグラニリン、及びペルニグラニリン:で存在する。エメラルディン塩は、安定な導電状態を示すポリマーの形態である。ポリアニリンのエメラルディン塩の形態においては、プロトン酸ドーパント(対イオン)の存在又は不存在によって、ポリマーの状態をそれぞれエメラルディン塩からエメラルディン塩基へ変化させることができる。したがって、かかるドーパントの存在又は不存在によって、ポリマーを可逆的に導電性又は非導電性にすることができる。ポリアニリンのような導電性ポリマー用のドーパントとしてプロトン酸を用いることは公知であり、HCl及びH2SO4のような単純なプロトン酸を用いるか、或いはこれをp−トルエンスルホン酸(PTSA)又はドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)のような官能化有機プロトン酸と共に用いることによって導電性ポリアニリンを形成させることができる。
【0018】
導電率はしばしば導電性ポリマーの最終生成物の重要な特性であるが、導電性形態の導電性ポリマーはしばしば処理するのが困難である。例えば、ドープされたポリアニリンは通常は全ての有機溶媒中に不溶であり、一方、自然形態はN−メチルピロリドンのような高度に極性の溶媒中にしか可溶でない。しかしながら、所定の合成法、及び所定の官能化有機酸ドーパントを用いることによって、導電性ポリアニリンが有機溶媒中により可溶になる。例えば、米国特許5,863,465及び5,567,356(極性有機液体を用いる乳化重合において疎水性の対イオンを用いる)、並びにWO−92/22911及び米国特許5,324,453及び5,232,631(非極性有機液体を用いる乳化重合において界面活性特性を有する対イオンを用いる)を参照。
【0019】
上記で簡単に議論したように、有機溶媒中のポリマーの混合物を表面に施し、溶媒を除去することによって、導電性ポリマーのフィルムを与えることができることが見出された。多くの用途において、この工程に関して有機溶媒を用いることは有利である。有機溶媒を用いる場合には、第1の有機溶媒を、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーと混合することが有利であることが見出された。溶媒/ポリマー混合物を表面に施した後、溶媒を除去し、それによってドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する。
【0020】
本発明の第1の有機溶媒は、室温において約20より低い誘電率を有する有機溶媒であってよい。或いは、第1の有機溶媒は、10未満、或いは5未満、4未満、又は3未満の誘電率を有していてよい。
【0021】
第1の有機溶媒は単一の物質であってよく、あるいは2種類以上の有機溶媒の混合物であってもよい。本発明において第1の有機溶媒として用いるのに好適な溶媒の例としては、キシレン、又はキシレン類の混合物が挙げられる。複数の有機溶媒の混合物である好適な第1の有機溶媒の他の例は、ブチルセロソルブとキシレン(類)との混合物である。一例として、ブチルセロソルブ−キシレンの約1:1.2〜約1:1.5(重量比)の混合物が第1の有機溶媒として有用である。
【0022】
ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸は、ポリアニリン用のドーパントとして用いることができ、1種類又は複数のバインダーを加えて用いることなく約10ミクロン以下の厚さの自立性フィルムであるフィルムを混合物から形成する(スピンコート、ドローダウン、又は他の被覆法による)ことを可能にするのに十分なドープされた導電性ポリマーの室温における混合キシレン類中での可溶性を与える任意の有機プロトン酸であってよい。
【0023】
一般に、第1のプロトン酸は、アルキル化芳香族モノスルホン酸又はアルキルモノスルホン酸であってよい。二、三、又は多官能性スルホン酸は、ゲルネットワークの形成を導くので一般に有用でない。第1のプロトン酸として有用な特定の物質の例は、米国特許4,983,322、5,006,278、5,567,356、5,624,605、及び5,863,465に記載されている。第1のプロトン酸として有用な物質の特定の例としては、カンファースルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)が挙げられる。
【0024】
第1の有機溶媒と、ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーとの好適な混合物の1つの例は、(重量%で)
ポリアニリン:3.6%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:21.4%;
キシレン類(混合異性体):44.4%;
ブチルセロソルブ:30.6%;
である。
【0025】
また、第1のプロトン酸ドーパントに加えて4,4’−スルホニルジフェノール(CAS RN 80−09−1)を更に含む導電性ポリマーのフィルムを提供することが有用であることも見出された。4,4’−スルホニルジフェノールは、SDP、スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビスフェノールS、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−スルホニルジフェノール(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンビスフェノールS、又は4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)と呼ぶこともできる。第1の有機溶媒と、好適な第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーとの混合物(SDPを含む)の例は、(重量%で)
ポリアニリン:3.3%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:19.7%;
4,4’−スルホニルジフェノール:2.6%;
キシレン類(混合異性体):41.1%;
ブチルセロソルブ:33.4%;
である。
【0026】
導電性ポリマーの説明に関連してここで用いる「フィルム」という用語は、ポリマーの固体形態を意味する。他に記載しない限りにおいて、フィルムは殆どの任意の物理的形状を有していてよく、シート状の形状又は任意の他の特定の物理的形状に限定されない。通常は、導電性ポリマーのフィルムは固体電解キャパシタの誘電層の表面に適合させることができる。
【0027】
材料を説明するためにここで用いる「熱安定性」とは、等温重量分析によって測定される、昇温温度に長時間曝露した際に分解又は劣化に耐える材料の能力を意味する。「改良された熱安定性」という用語は、どんなに小さくても材料の熱安定性における改良があることを意味する。
【0028】
ここで用いる「混合物」という用語は、2種類以上の材料の物理的配合を指し、限定なしに、溶液、分散液、エマルジョン、ミクロエマルジョンなどが挙げられる。
本方法においては、第1のプロトン酸ドーパントを有する導電性ポリマーのフィルムを、第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる。
【0029】
第2のプロトン酸は、導電性ポリマー用のドーパントとして作用させることができる任意のプロトン酸であってよい。第2のプロトン酸は第1のプロトン酸と同一であってよく、或いは異なるプロトン酸であってもよく、或いは第1のプロトン酸と異なるプロトン酸との混合物であってもよく、或いはその任意の1つが第1のプロトン酸と同一であっても又は異なっていてもよい2種類以上のプロトン酸の混合物であってもよい。
【0030】
本発明の一態様においては、第2のプロトン酸は、導電性ポリマーと組み合わせると導電性を与えるだけでなく導電性ポリマーの熱安定性も向上させるドーパントとして作用させることができる。
【0031】
本発明の第2のプロトン酸として用いるのに好適な物質の例としては、限定なしに、とりわけ4−スルホフタル酸(4−SPHA)、p−トルエンスルホン酸(PTSA)、ベンゼンスルホン酸(BA)、フェニルホスホン酸(PA)、リン酸(H3PO4)、及びカンファースルホン酸(CSA)が挙げられる。第2のプロトン酸として有用な酸の更なる例は米国特許5,069,820に記載されている。一態様においては、第2のプロトン酸は有機スルホン酸を含む。酸は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のスルホネート基を有していてよい。好適な有機スルホン酸の例は、式:
R1HSO3
(式中、R1は置換又は非置換の有機基である)
を有する化合物である。
【0032】
第2のプロトン酸ドーパントとして用いるのに好適な物質の他の例は、式:
【0033】
【化1】
【0034】
(式中、oは、1、2、又は3であり;r及びpは、同一か又は異なり、0、1、又は2であり;R5は、アルキル、フルオロ、又は1以上のフルオロ若しくはシアノ基で置換されているアルキルである)
を有する化合物である。
【0035】
上記の構造において、oが1又は2であり;r及びpが、同一か又は異なり、0又は1であり;R5が、アルキル、フルオロ、又は1以上のフルオロ若しくはシアノ基で置換されているアルキルである;場合もまた好適である。
【0036】
一態様においては、第2のプロトン酸ドーパントはp−トルエンスルホン酸を含む。
本発明の第2の有機溶媒は、その中において第1のプロトン酸が少なくとも部分的に可溶である有機溶媒又は複数の有機溶媒の混合物である。一態様においては、第2の有機溶媒は、その中において第1のプロトン酸がドープした導電性ポリマーよりも可溶である液体である。これにより、ドープされた導電性ポリマーの溶媒和に対して過剰量の第1のプロトン酸の選択的溶媒和が可能になり、これによってドープされた導電性ポリマーから過剰量の第1のプロトン酸を選択的に除去することが可能になる。一態様においては、第2の有機溶媒は第1の有機溶媒よりも高い誘電率を有する液体である。
【0037】
一般に、第2の有機溶媒は、第2のプロトン酸及び第1のプロトン酸の両方を溶解するように選択する。したがって、第2の有機溶媒は、p−トルエンスルホン酸を溶解するのに十分に極性で且つジノニルナフタレンスルホン酸を溶解するのに十分に非極性であるブチルセロソルブ(誘電率(DC)=9.4)、n−ブタノール(DC=17.8)などのように少なくとも軽度に極性でなければならない。
【0038】
本発明の好適な第2の有機溶媒の例としては、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、及びこれらの混合物が挙げられる。
本方法においては、第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物は、一般に、導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させ、熱応力(キャパシタにおける等価直列抵抗のシフト(ΔESR)を減少する)によって引き起こされる導電率の損失を減少させるように選択される量の第2のプロトン酸を含む。
【0039】
通常は、第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物は、約0.5%〜約25%の量の第2のプロトン酸を含んでいてよい。また、この混合物は、全て重量%で、約1%〜約15%、又は約3%〜約7%の量の第2のプロトン酸を含んでいてもよい。
【0040】
第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物には接触プロセスの有効性を向上させる殆どの任意の他の添加剤を更に含ませることができるが、通常は、導電性ポリマーのモノマーを含まず、且つドープされた導電性ポリマーフィルムと接触させる前は導電性ポリマーを含まない。場合によって、混合物は第2の有機溶媒と第2のプロトン酸とから実質的に構成することができる。
【0041】
第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物をドープした導電性ポリマーフィルムと接触させる際は、任意のタイプの接触を用いることができる。例えば、混合物をフィルム上に噴霧するか又はフィルム上に塗装することができ、或いはフィルムを混合物中に浸漬することができる。一例においては、フィルムを混合物中に浸漬し、約1秒〜約120秒の間保持する。この時間は、約5秒〜約60秒、又は約10秒〜約30秒であってよい。
【0042】
接触プロセス中において、フィルム及び混合物の温度は、約5℃〜約50℃であってよく、或いは約10℃〜約30℃であってよく、或いはほぼ室温であってよい。
一態様においては、第2の有機溶媒中の第2のプロトン酸の濃度及び混合物を導電性ポリマーフィルムと接触させる時間(接触条件)は、熱安定性を向上させて、200℃において120分間処理した導電性ポリマーフィルムの重量損失が約20%未満であり、導電率の損失が同じ処理後に30%を下回るように選択する。或いは、接触条件は、同じ処理後に、重量損失が約10%未満で導電率の損失が20%を下回り、或いは重量損失が約5%未満で導電率の損失が10%を下回るように選択する。
【0043】
上述したように、本発明の1つの特定の用途は、固体電解質バルブメタルキャパシタのカソードとして作用する導電性ポリマーフィルムの処理に関する。
ここで用いる「バルブメタル」という句は、上記で言及した文献を含む文献においてそれに与えられているものと同じ意味を有し、具体的にはチタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、ハフニウム、ニオブ、又はジルコニウム(これらの合金を含む)が挙げられる。
【0044】
本方法においては、バルブメタルのアノード、誘電性金属酸化物層、並びに、熱安定性を有し、ポリアニリンを第1の有機溶媒中に可溶化するのに十分な量の第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーを含む導電性ポリマーフィルムのカソードを含むキャパシタ体を提供し;フィルムを第2のプロトン酸を含む第2の有機溶媒と接触させる。
【0045】
一態様においては、第1のプロトン酸は、ドープされた導電性ポリマーよりも第2の有機溶媒中により可溶である。上記で議論したように、導電性ポリマーのフィルムを提供する工程には、第1の有機溶媒、及び導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーの混合物を誘電性金属酸化物層の上に施し;そして、第1の有機溶媒を除去し、誘電性金属酸化物層の上にドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する;ことを含ませることができる。
【0046】
本方法の特に有用な例は、第1のプロトン酸ドーパントがジノニルナフタレンスルホン酸を含み、第2のプロトン酸ドーパントがp−トルエンスルホン酸を含む場合である。また、第1の有機溶媒がキシレンを含み、第2の有機溶媒がn−ブタノール、ブチルセロソルブ、又はこれらの混合物を含む例も有用である。
【0047】
この適用の一例には、以下の工程を含ませることができる。要素の付番は図25に示す付番に対応する。
・焼結タンタル体を含むアノード(101)を提供する。アノード体は、アノードに接続され、キャパシタのアノード側を電子回路に接続するように設計されているアノードリード線(111)を有していてよい。
【0048】
・アノード体を酸浴中で陽極酸化処理して、酸化タンタルの誘電層(102)でタンタルを被覆する。
・誘電性金属酸化物層を有するアノードを、SDPを加えるか又は加えずにジノニルナフタレンスルホン酸をドープしたポリアニリン(PANi/DNNSA又はPANi/DNNSA−SDP)の溶液中に浸漬被覆する。SDPを加えない溶液は以下の組成:
ポリアニリン:3.6%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:21.4%;
キシレン類(混合異性体):44.4%;
ブチルセロソルブ:30.6%;
を有していてよく、SDPを加える溶液は以下の組成:
ポリアニリン:3.3%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:19.7%;
4,4’−スルホニルジフェノール:2.6%;
キシレン類(混合異性体):41.1%;
ブチルセロソルブ:33.4%;
を有していてよい。
【0049】
アノードを溶液中に30秒間浸漬して導電性ポリマーのフィルムを堆積させる。
・アノードを室温において30分間空気乾燥する。
・アノードを150℃において30分間オーブン乾燥して、ドープされた導電性ポリマーの固体フィルム(103)を形成する。
【0050】
・アノードを室温に最小で30分間冷却し;場合によっては
・アノードを、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、又はこれら2つの混合物のような有機溶媒中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)のような第2のプロトン酸の5重量%溶液であってよい「処理溶液」中に30秒間浸漬する(アノードを酸/有機溶媒工程で処理する場合には、処理したアノードを室温において10〜30分間空気乾燥し、次に150℃において30分間オーブン乾燥する)。
【0051】
更なる場合によって用いる工程としては以下の工程を挙げることができる。
・場合によっては、上記に示す工程の一部又は全部を繰り返す。
・場合によっては、処理したアノードを、最終「すすぎ」溶液、通常はキシレンのような有機溶媒の中に30秒間浸漬する。
【0052】
・アノードをカーボンインク中に30秒間浸漬し、室温において10分間空気乾燥し、100℃において30分間オーブン乾燥し、室温に最小で30分間冷却することによってアノードに炭素層(104)を施す。
【0053】
・アノードを銀インク中に30秒間浸漬し、室温において30分間空気乾燥し、150℃において30分間オーブン乾燥し、室温に最小で30分間冷却することによってアノードに銀層(105)を施す。
【0054】
・キャパシタ100のカソード側を電子回路に接続するためのカソードリード線(110)を施す。
幾つかの固体電解キャパシタの製造中においては、ポリピロールのような導電性ポリマーの1以上の層を多孔質バルブメタルアノードの金属酸化物誘電層に直接施すことが通常である。次に、同じか又はポリアニリンのような異なる導電性ポリマーの最終層を、先に形成した導電性ポリマー層の上に施すことができる。本発明は、導電性ポリマーの層のいずれか1つ又は全部に本方法を提供することを包含する。
【0055】
以下の実施例は本発明の好ましい態様を示す。特許請求の範囲内の他の態様は、ここで開示する本発明の仕様又は実施を考察することによって当業者に明らかとなろう。本明細書は実施例と共に例示のみのものとみなされ、本発明の範囲及び精神は、実施例に続く特許請求の範囲によって示される。実施例においては、全てのパーセントは他に示さない限りにおいて重量基準で与える。
【実施例】
【0056】
実施例1:
本実施例は、異なる有機溶媒を用いて、ジノニルナフタレンスルホン酸をドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA)のフィルムを処理する効果を示す。
【0057】
スピンコートによってガラススライド(2×3in2)の上にPANi/DNNSAフィルムを調製した。次に、フィルムを150℃において30分間乾燥した。フィルムを種々の有機溶媒中に浸漬し、150℃において30分間再び乾燥し、次に一対の銀棒状部材をフィルム上にスクリーン印刷した。堆積し硬化したフィルムを完全に溶解除去することなく過剰のDNNSAを溶解及び除去する有機溶媒を選択する目的で、以下の有機溶媒:ブチルセロソルブ(BC;2−ブトキシエタノールとしても知られている)、n−ブタノール(nBuOH)、イソプロパノール(iPrOH)、メタノール(MeOH)、キシレン類(異性体の混合物)、及びこれらの選択された混合物:を評価した。
【0058】
それぞれのフィルムのフィルム厚さ及び表面抵抗を実験で測定し、これらの測定値を用いて、等式:σ=1/SR・d(式中、SRは表面抵抗であり、dはフィルム厚さである)によってフィルムのバルク導電率(σ)を算出した。
【0059】
未処理のPANi/DNNSAフィルムは約0.06S/cmの導電率を有していたが、フィルムを上記に示す有機溶媒及び溶媒混合物中に浸漬すると、フィルム導電率が2〜6S/cmの値に2桁以下まで増加した。図1に、種々の有機溶媒で処理したPANi/DNNSAフィルムの導電率を示す。溶媒処理によってPANi/DNNSAフィルムの厚さが半分以上減少したことも示され(図2参照)、これはドーパントの相当部分がフィルムから除去されたことを示した。
【0060】
等温熱重量分析(TGA)によってnBuOHで処理したPANi/DNNSAフィルムの熱安定性を求め、同じタイプの未処理のフィルムの熱安定性と比較した。フィルム試料の温度を速やかに200℃に昇温し、次に200℃において2時間保持した。図3に示す結果は、200℃において未処理のPANi/DNNSAフィルムの劣化及び重量損失が迅速であり、溶媒で処理したPANi/DNNSAフィルムは非常により小さい重量損失を有し、より良好な熱安定性を示したことを示した。それぞれの試料に関して、捕捉溶媒又は他の揮発性物質の蒸発によって4〜8重量%の初期重量損失が観察されたことが注目された。
【0061】
導電性ポリマーフィルムを溶媒のみ(酸なし)と接触させると、フィルムの完全性が低下し、分解して強度及び耐性にかけるフィルムが得られることが注目された。
実施例2:
本実施例は、有機溶媒中の5重量%のp−トルエンスルホン酸(PTSA)を用いて、ジノニルナフタレンスルホン酸をドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA)のフィルムを処理することの効果を示す。
【0062】
高い導電率及び処理性/被覆性を有するPANi/DNNSA材料は有用なキャパシタの製造のために重要であるが、昇温温度(200℃以下)での長時間の加熱下で安定な材料を提供することも重要である。
【0063】
ポリアニリンヒドロクロリド中のドーパントイオンをp−トルエンスルホネートアニオンと交換することによってPTSAをドープしたポリアニリンを製造することができることは、米国特許5,160,457から公知である。得られるPTSAをドープしたポリアニリン化合物は、熱重量分析(TGA)によって測定して、300℃に加熱した際に2%の重量損失、及び400℃に加熱した際に5%の重量損失しか有しないことが報告されている。この特許における実施例では、水溶液中における塩化物のPTSAへのイオン交換を行うことが教示されている。
【0064】
PTSAをドープしたポリアニリンの報告されている改良された熱安定性を考慮して、本PANi/DNNSA材料の熱安定性を向上させるための修正イオン交換法を提案した。本修正イオン交換法においては、最終目標は、同時にDNNSAドーパントをPTSAと交換しながら、過剰のDNNSAの多くをフィルムから除去することである。また、PANi/DNNSA及びその成分(PANi/DNNSA及びDNNSA)は水溶性ではないので、この目的のためには水溶液ではなく有機溶媒を用いることが望ましいとも考えられていた。しかしながら、PTSAは水溶液中よりも有機溶媒中において非常にイオン化しないので、有機溶液でのイオン交換が可能であるかどうかは知られていなかった。実際、選択された有機溶媒のタイプがプロセスの成功のために重要であることが見出された。PTSA及びDNNSAの両方を溶解してイオン交換を可能にするが、堆積し硬化したPANi/DNNSAフィルムを完全に溶解除去する程には強溶媒でない有機溶媒を選択することが必要であることが見出された。
【0065】
実施例1に記載のようにしてスピンコートによってガラススライド(2×3in2)の上にPANi/DNNSAフィルムの4つの試料を調製し、フィルムを150℃において30分間乾燥した。次に、それぞれのフィルムの半分をブチルセロソルブ(BC)中PTSAの5重量%溶液中に浸漬し、150℃において30分間再び乾燥した。次に、一対の銀接点用棒状部材を、それぞれのフィルム試料の半分の上にスクリーン印刷した。フィルム厚さ及び表面抵抗を測定し、それぞれのフィルムの導電率を算出した。
【0066】
結果を図4に示す。これは、処理PANi/DNNSAフィルムのそれぞれが100〜200S/cmの範囲の導電率を示した。これは未処理のPANi/DNNSA(約0.06S/cm)、又は実施例1において示す溶媒のみで処理したPANi/DNNSAフィルム(約2〜6S/cm)、並びに4,4’−スルホニルジフェノール(SDP)を加えた未処理のPANi/DNNSAフィルム(約20〜40S/cm)のものよりも遙かに高いものである。導電率の向上は、少なくとも一部のDNNSAがPTSAに交換され、これが処理されたフィルム中に移動してフィルムの導電率を向上させたことを示した。更に、図5に示されるように処理されたフィルムはその厚さの半分を失い、これは過剰のドーパントが有意に除去されたことを示した。
【0067】
上記に記載の方法によって処理したPANi/DNNSAフィルムの熱安定性を、未処理のPANi/DNNSAフィルムの熱安定性と比較した(図3)。試料の温度を速やかに200℃に昇温し、次に200℃において2時間保持することを含む等温熱重量分析によって熱安定性を求めた。図6に示すように、200℃において未処理のPANi/DNNSAフィルムの劣化及び重量損失が迅速であったが、PTSAで処理したPANi/DNNSAフィルムは非常により良好な熱安定性を示したことが分かった。捕捉された溶媒又は他の揮発性物質の蒸発のために4〜8重量%の初期重量損失が観察されたことが注目された。
【0068】
実施例3:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及び4,4’−スルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)のフィルムの溶媒処理を示す。
【0069】
ブチルセロソルブ及び混合キシレンの混合物中のSDPを加えたPANi/DNNSAの溶液からスピンコートすることによって、ガラススライド(2×3in2)の上にPANi/DNNSA−SDPフィルムを調製した。フィルムを150℃において30分間乾燥した。キシレン1.5部に対してブチルセロソルブ1部(重量部)の混合物中のPANi/DNNSAの25(重量)%溶液に2.5重量%のSDPを加えることによってPANi/DNNSA−SDP溶液を調製した。フィルムを種々の有機溶媒中に浸漬し、150℃において30分間再び乾燥し、次に1対の銀棒状部材をフィルム上にスクリーン印刷した。PANi/DNNSAフィルムを用いた検討と同様に、堆積し硬化したフィルムを完全に溶解除去することなく過剰のDNNSAを溶解除去(又は中和)する溶媒を見出す試験のために有機溶媒を選択した。以下の溶媒:ブチルセロソルブ(BC)(2−ブトキシエタノールとしても知られている);n−ブタノール(nBuOH);イソプロパノール(iPrOH);メタノール(MeOH);キシレン類(異性体の混合物);水性緩衝系(DNNSAを中和するため);及びこれらの選択された混合物;を試験した。
【0070】
それぞれの処理されたフィルムのフィルム厚さ及び表面抵抗を実験で求め、これから上記に記載のようにしてフィルムのバルク導電率を算出した。処理の前後のフィルム厚さを図7に示し、選択された導電率の結果を図8に要約する。
【0071】
アルコールベースの溶媒(例えばnBuOH)を処理のために用いた場合には、それぞれのフィルムは未処理のPANi/DNNSA−SDPの値(20〜40S/cm)よりも小さい10〜16S/cmの範囲の導電率を示したことが分かった。更に、未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムと比較して、処理されたフィルムの厚さは半分以上減少した。これは溶媒処理によってドーパントの相当部分がフィルムから除去されたことを明確に示す。
【0072】
しかしながら、溶媒処理のためにキシレン類を用いた場合には、フィルムの導電率は20〜30S/cmから40〜50S/cmに増加し、一方、フィルム厚さは半分以上減少した。この理論又はいかなる他の理論にも縛られないが、SDPはキシレン類中に可溶でないので、溶媒処理のためにキシレン類を用いるとフィルム中に予め形成されている導電性ネットワークが変化しなかったと考えられた。したがって、導電率の増加はフィルム厚さの減少に起因するものであった。これに対して、SDPはアルコール中に可溶であるので、アルコールによる溶媒処理は、過剰のDNNSAを除去するだけでなく、導電性ネットワークも部分的に付与する。
【0073】
水性緩衝系による同じフィルムの処理も評価した。これらの結果は下記実施例8において議論する。
処理及び未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの熱安定性を熱重量分析(TGA)によって評価した。まず、150℃〜200℃の間の幾つかの異なる温度での等温TGAによって未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの安定性を評価した。試験は、試料を所望の温度に速やかに昇温し、次にその温度に2時間(結果を図9に示す)又は5時間(結果を図10に示す)保持することによって行った。未処理のフィルムは150℃において重量損失に対して比較的安定であったが、150℃より高い温度においては、フィルムは間断なく相当の重量を損失し、フィルムの劣化が示されたことが分かった。200℃においては、未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムの劣化及び重量損失が迅速であった。
【0074】
等温TGAによって検討した全てのフィルムにおいて、捕捉された溶媒又は他の揮発性物質の蒸発のために4〜8重量%の初期重量損失が観察された。図9に示す結果は、重量損失が加熱時間に比例し、定量化できるであろうということも示唆している。表1にフィルム重量の情報を要約する。ここで示す結果は、200℃において2時間加熱した後にフィルムがそれらの元々の重量のほぼ半分を失ったことを示す。
【0075】
【表1】
【0076】
フィルムを等温の2時間TGAスキャンにかけることによって、幾つかのタイプのフィルムの熱安定性を比較した。未処理のPANi/DNNSA−SDPのフィルム、抽出したPANi/DNNSA粉末(過剰/遊離のDNNSA酸を有しない「純粋」なポリアニリンエメラルディン塩)、及び過剰のDNNSAを除去するように選択された溶媒で処理したフィルムに関するTGAの結果を図11に示す。PANi/DNNSA粉末が最も安定であることが分かった。溶媒処理によってPANi/DNNSA−SDPフィルムの熱安定性が向上し、幾つかの溶媒は他のものよりも有効であった。例えば、3:1の比のBC及びMeOHはフィルムの安定性を大きく向上させたが、キシレン類は幾分より有効ではなかった。
【0077】
実施例4:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)のフィルムの、有機溶媒中の5重量%p−トルエンスルホン酸(PTSA)による処理を示す。
【0078】
実施例3において上記したようにスピンコートによって、PANi/DNNSA−SDPフィルムをガラススライド(2×3in2)の上に調製し、フィルムを150℃において30分間乾燥した。次に、それぞれのフィルムの半分を有機溶媒中のPTSAの5重量%溶液中に浸漬し、150℃において30分間再び乾燥した。比較のために、4−スルホフタル酸(4−SPHA)の2.5重量%溶液も評価した。次に、一対の銀接点用棒状部材をそれぞれのフィルム試料の半分の上にスクリーン印刷した。それぞれのフィルムのフィルム厚さ及び表面抵抗を測定し、導電率を算出した。PTSA処理のための溶媒として、ブチルセロソルブ(BC)及びn−ブタノール(nBuOH)の両方を評価した。
【0079】
図12及び図13に示す結果は、PANi/DNNSA−SDPフィルムをPTSAの5重量%溶液で処理すると、フィルム厚さが約半分まで減少し、導電率が100〜200S/cmの範囲の値に増加したことを示す。これらの導電率は、未処理のPANi/DNNSA−SDPフィルムに関して通常観察されるもの(約20〜40S/cm)よりも非常に高く、PTSAで処理したPANi/DNNSAフィルムにおいて観察されるものと同等であった。
【0080】
UV−可視光分光法を用いて、PTSA処理によって観察されたフィルム導電率の増加を確認又は定量化することができる。図14は、BC中PTSAの5重量%溶液による処理を行った場合と行わなかった場合のPANi/DNNSA−SDPフィルムに関する一連のUV−可視光スペクトルである。自由キャリア又は伝導帯と関係する500〜1100nmの吸収テール部は、PTSA処理によって強度増加した。この結果は、観察されたフィルム導電率の増加と合致する。PANi/DNNSA−SDPフィルムを、BC中5重量%リン酸及び/又はBC中5重量%カンファースルホン酸のような有機溶媒中の他の酸で処理した場合に同様の挙動が観察された。
【0081】
PTSAで処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムの熱重量分析(TGA)(図15)は、フィルムが200℃において2時間の等温加熱下で適度な熱安定性を示したことを示す。更に、4−SPHAで処理したフィルムのTGAは、フィルムが良好な熱安定性を示し、200℃において2時間の等温加熱の後に約10%以下の重量損失を与えたことを示す。
【0082】
実施例5:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)の処理されたフィルムの導電率及び熱安定性に対する、有機溶媒処理溶液中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の濃度の効果を示す。
【0083】
実施例4において上記したようにPANi/DNNSA−SDPフィルムを調製し、種々の濃度のブチルセロソルブ(BC)中のPTSAの溶液で処理した。導電率に関する試験によって、PTSA濃度が少なくとも0.05Mであると導電率が劇的に増加したことが示された(図16及び図17)。上記に記載した検討において用いた5重量%レベルに近接する0.25MのPTSA濃度においては、導電率は最高で約150S/cmに達した。PTSA濃度を更に増加させると、フィルム導電率の増加はより小さかった。
【0084】
実施例6:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)の処理されたフィルムの導電率に対する、処理において用いる酸のタイプの効果を示す。上記し、図12及び図13に示すように、PTSAのより小分子の代替物である4−スルホフタル酸(4−SPHA)を用いると、PTSAを用いた場合に見られるものに非常に類似した結果が導かれたことが示された。これは、有機溶媒中の種々の小分子有機酸を用いてフィルムの導電率を向上させることができることを示唆する。以下の酸:ブチルセロソルブ(BC)中のベンゼンスルホン酸(BA);BC中のフェニルホスホン酸(PA);BC中のリン酸(H3PO4);及びBC中のカンファースルホン酸(CSA);を評価した。
【0085】
BC中の0.25M−PTSA、並びに上記に示すそれぞれの溶液で処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムに関するフィルム導電率の結果の比較を、図18及び表2に示す。一般に、この結果は、フィルムの導電率が未処理のフィルムのものの3倍乃至7倍以上増加し、PTSAがBC中5重量%溶液として試験した他の酸よりも優れていることが分かることを示す。PTSA又はBAと比較して弱い酸であるPAを用いると、フィルム導電率は50〜60S/cmにしか増加しなかった。しかしながら、処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率は、溶媒(BC)のみで処理したPANi/DNNSA−SDPフィルムのもの(10〜16S/cm)よりもなお遙かに高かった。これは、スルホン酸よりも弱い酸を用いて処理後のフィルムの導電率を向上させることができることを示唆する。H3PO4は、安価で、多くの有機酸よりもより毒性が低いか又は危険性が低く、非酸化性であるので、キャパシタ用途において用いるための魅力的な候補物質である。
【0086】
【表2】
【0087】
実施例7:
本実施例は、導電率に対する、酸/有機溶媒溶液と、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)のフィルムとの間の接触時間の効果を示す。
【0088】
PANi/DNNSA−SDPのフィルムを、浸漬によってブチルセロソルブ中の5重量%のフェニルホスホン酸(PA)又はベンゼンスルホン酸(BA)の溶液と接触させた。フィルムを有機酸溶液と接触させる時間は最終の導電率に対する効果を有することが分かった。15秒間又は30秒間のいずれかの浸漬を用いたPA及びBAによる結果を図19に要約する。したがって、導電性ポリマーフィルムを、有機溶媒中の第2のプロトン酸と熱安定性及び電気特性における望ましい向上を達成するのに十分な時間接触させることが好ましい。
【0089】
実施例8:
本実施例は、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープし、過剰のジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を有するポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)のフィルムを、水性緩衝溶液及び有機酸の水溶液で処理することの効果を示す。
【0090】
水性緩衝溶液によるPANi/DNNSA−SDPフィルムの処理:
2、7、及び11のpH値の水性緩衝溶液を調製した。それぞれの場合において、PANi/DNNSA−SDPフィルムを45℃において緩衝溶液中に30分間浸漬した。浸漬後にフィルムの収縮は観察されず、これはDNNSAがフィルムから除去されなかったことを示唆していた。DNNSAもその塩も水溶性でないということを考えれば、この結果は驚くべきものではない。しかしながら、驚くべきことは、接触によってフィルム導電率の著しい低下が引き起こされたことである。図20に、PANi/DNNSA−SDPフィルムの導電率に対する緩衝溶液のpHの効果を示す。処理されたフィルムは、対照例のもの(22S/cm)よりも遙かに小さい0.4〜3.4S/cmの範囲の導電率を示した。2のpHを有する酸性水性緩衝溶液でさえも、フィルム導電率の2.3S/cmへの低下を引き起こした。
【0091】
有機酸の水溶液によるPANi/DNNSA−SDPフィルムの処理:
以下の酸:p−トルエンスルホン酸(PTSA);ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA);4−スルホフタル酸(4−SPHA);及びポリ(スチレンスルホン酸)(PSSA);の5重量%水溶液を用いて、実施例4において上記したようにPANi/DNNSA−SDPフィルムを処理した。
【0092】
PSSAは、その繰り返し単位構造がPTSAに類似し、フェニル環に直接結合しているスルホン酸基を有するポリマースルホン酸である。DBSAは、メチル置換基の代わりにドデシル(C12)基を有する以外はPTSAと同様の小分子スルホン酸である。DBSAのより長いn−ドデシル基により、この酸はPTSAよりも疎水性になっているので、本発明者らは、DBSAがPANi/DNNSA−SDPフィルム中のDNNSAと有利に相互作用してフィルムの導電率及び厚さを改良すると考えた。4−SPHAはそのスルホン酸基に加えて2つのカルボン酸基を有しているので、より親水性の代替物質である。
【0093】
PANi/DNNSA−SDPのフィルムをガラススライド上にキャストし、次にそれぞれの試料の半分を酸水溶液中に30秒間浸漬し、一方、他の半分は未処理のままとした。乾燥後、フィルム試料のそれぞれの半分の上に銀棒状部材を印刷して、フィルムの抵抗及び厚さを測定できるようにした。それぞれの酸水溶液処理の後の導電率の変化を図21に示す。DBSA水溶液又はPTSA水溶液のいずれかによる処理によってフィルム導電率が僅かに増加したが、その増加はブチルセロソルブ中PTSAによる処理と比較して有意なものではなかった。同様に、フィルム厚さ(図22に示す)は、変化しなかったか又は僅かしか減少しなかった。予期しなかったことに、4−SPHA水溶液又はPSSA水溶液のいずれかによる処理によってフィルム導電率が僅かに減少した。
【0094】
実施例9:
本実施例は、固体電解質としてタンタル(Ta)アノードキャパシタ体上に堆積させた導電性ポリマーフィルムの、有機溶媒中の酸の溶液による処理を示す。
【0095】
現在の最新のTa−ポリマー固体電解キャパシタは、通常、導電性ポリマーをベースとする電解質の内部被覆(内部カソード)、及び導電性ポリマーをベースとする電解質の外部被覆(外部カソード)を有する。これらのキャパシタにおいて用いられる幾つかの代表的な導電性ポリマーは、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、及び/又はポリアニリンをベースとするものである。導電性ポリマーカソードは、次に(1)炭素層及び(2)銀層で更に被覆することができる。銀層は電気接点として機能する。固体Ta−ポリマー電解キャパシタの特に重要な電気特性は、それらの低い及び極めて低い等価直列抵抗(ESR)であり、これによってこれらのキャパシタが高周波数用途において有用になる。
【0096】
キャパシタ実験に関する基本手順:
全てのケースにおいて、内部導電性ポリマー電解質で予め被覆した470μF、2.5Vの固体Taアノード体を、キャパシタ試験用の基材として用いた。
【0097】
基本手順は以下の通りであった:
1.以下の溶液の1つの中に30秒間浸漬被覆することによって、スルホニルジフェノールを加えるか又は加えずにジノニルナフタレンスルホン酸をドープしたポリアニリン(PANi/DNNSA又はPANi/DNNSA−SDP)によってアノードを被覆した。
【0098】
PANi/DNNSA溶液:
ポリアニリン:3.6%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:21.4%;
キシレン類(混合異性体):44.4%;
ブチルセロソルブ:30.6%。
【0099】
PANi/DNNSA−SDP溶液:
ポリアニリン:3.3%;
ジノニルナフタレンスルホン酸:19.7%;
4,4’−スルホニルジフェノール:2.6%;
キシレン類(混合異性体):41.1%;
ブチルセロソルブ:33.4%。
【0100】
2.アノードを室温において30分間空気乾燥した。
3.アノードを150℃において30分間オーブン乾燥した。
4.アノードを室温に最小で30分間冷却した;そして場合によっては
5.通常は有機溶媒か又は有機溶媒中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)のような有機酸の5重量%溶液である「処理溶液」中にアノードを30秒間浸漬した。
【0101】
(工程5を用いる場合には、処理したアノードを室温において10〜30分間空気乾燥し、次に150℃において30分間オーブン乾燥した)
更なる場合によって用いる工程としては、
a.工程1〜7を繰り返す;
b.処理したアノードを、最終「すすぎ」溶液、通常はキシレンのような有機溶媒の中に30秒間浸漬する;
c.アノードをカーボンインク中に30秒間浸漬し、室温において10分間空気乾燥し、100℃において30分間オーブン乾燥し、室温に最小で30分間冷却することによって、アノードに炭素層を施す;
d.アノードを銀インク中に30秒間浸漬し、室温において30分間空気乾燥し、150℃において30分間オーブン乾燥し、室温に最小で30分間冷却することによって、アノードに銀層を施す;
ことを挙げることができる。
【0102】
上記に記載の処理工程(5)を用いない場合、被覆されたTaキャパシタは、PANi/DNNSA−SDPの25重量%溶液で被覆すると、通常は18〜25mΩの範囲の等価直列抵抗(ESR)を示した。キャパシタが使用中にしばしば経験するソルダーリフロー温度を模擬する意図で260℃において15秒間更なる高温処理を行った後は、ESRは通常は更に5mΩ以上増加し、これではキャパシタは幾つかの商業的用途に関して不的確となる可能性があった。
【0103】
本方法により、ソルダーリフロー条件を模擬する意図の熱処理後にESRの絶対値及びESRの増加量(ΔESR)が減少したという点で、導電性ポリマーフィルムカソードを有するキャパシタの電気特性が改良されることが分かった。
【0104】
PANi/DNNSA又はPANi/DNNSA−SDP電解質フィルムで被覆したタンタルキャパシタアノードの、有機酸を用いるか又は用いない溶媒による処理:
上記に記載の導電性ポリマーフィルムで被覆したタンタルキャパシタアノードを、工程5に記載のようにして、表3に示す有機溶媒中の酸の溶液による処理にかけた。
【0105】
【表3−1】
【0106】
【表3−2】
【0107】
試験した条件の中で、最良の結果を与えた処理は、PANi/DNNSA−SDP被覆に対する処理としてPTSAの5重量%溶液を用いることであった。この処理の結果は以下のように要約することができる。
【0108】
260℃において15秒間の熱応力の後のESRの増加量であるΔESRは2〜3mΩに減少した。
「短絡」キャパシタの割合は<10%に減少した。ここで記載する実験に関連して、「短絡」キャパシタは、キャパシタの定格電圧において試験した際に漏れ電流が11,500μAを超えたものである。
【0109】
それぞれ5重量%PTSAの処理を行ったPANi/DNNSA−SDPフィルムの多重被覆によって、「短絡」キャパシタの割合を改良することができるが、ESR及びΔESRに対する効果は存在しても最小であると考えられる。
【0110】
初期ESRは19〜22mΩの範囲であり、これは商業的用途のために十分であると考えられる。
キャパシタンスは470μFの製品定格値に近接して保持された。
【0111】
少なくとも2種類の異なる有機溶媒がPTSA処理溶液のために首尾よく用いられたことが示され、他のアルコール及び極性溶媒も同様に好適であると考えられる。
有機溶媒処理溶液中の有機酸の好ましい重量%は少なくとも0.1重量%であり、少なくとも1%、又は少なくとも5%がより好ましい。より低い濃度は、30秒間の固定した浸漬時間を考えるとイオン交換においてあまり有効でない。より高い濃度は、平衡をフィルム中により多くのPTSAが含まれる方向に望ましく移動させると考えられる。
【0112】
DNNSAよりも熱的に安定で、DNNSAも溶解する有機溶媒中に可溶である他の有機及び無機酸をPTSAと置き換えることができる。例えば、4−スルホフタル酸(4−SPHA)及びリン酸(H3PO4)は、代替物質として有効であり、より高いフィルムの熱安定性及びより低いESRを導く。
【0113】
実施例10:
本実施例は、タンタル(Ta)キャパシタ体上の外部カソードとして施した、ジノニルナフタレンスルホン酸及びスルホニルジフェノールをドープしたポリアニリン(PANi/DNNSA−SDP)の処理したフィルムの長時間加熱下での熱安定性を示す。
【0114】
有機溶媒中のp−トルエンスルホン酸(PTSA)の5重量%溶液で処理した際のPANi/DNNSA−SDPフィルム電極の改良された熱安定性を示すために、被覆し処理したTaキャパシタ体を200℃のボックスオーブン内に種々の時間配置する実験を行った。この実験において試験した4つのタイプのアノードに関する200℃における等価直列抵抗(ESR)及びESRの変化(ΔESR)の時間経過の比較を、それぞれ図23及び24に示す。ΔESRは、最終ESR値(200℃曝露後)と初期ESRとの間の差である。
【0115】
制限なしに全ての論文、公報、特許、特許出願、プレゼンテーション、テキスト、報告書、原稿、パンフレット、書籍、インターネット投稿、雑誌記事、定期刊行物などの本明細書中に引用する全ての参考文献は、参照としてその全てを本明細書中に包含する。参考文献の議論は、単にそれらの著者によってなされる主張を要約することを意図するものであり、いかなる参考文献も先行技術を構成することを認めるものではない。本出願人は引用されている参考文献の正確性及び妥当性を変更する権利を留保する。
【0116】
上記を考慮すると、本発明の幾つかの有利性が達成され、他の有利な結果が得られたことが明らかである。
当業者によって本発明の範囲から逸脱することなく上記の方法及び組成において種々の変更を行うことができるので、上記の記載に含まれ、図面において示される全ての事項は、例示として解釈され、限定の意味を有しないと意図される。更に、種々の態様の形態は全体か又は部分的に置き換えることができると理解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;そして
このフィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;
ことを含む、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーフィルムの製造方法。
【請求項2】
導電性ポリマーのフィルムを提供する工程が、
第1の有機溶媒、及びドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーの混合物を表面に施し;そして
第1の有機溶媒を除去し、ドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する;
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のプロトン酸ドーパントが、ドデシルベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、又はジノニルナフタレンスルホン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2のプロトン酸が、式:
R1HSO3
(式中、R1は置換又は非置換の有機基である)
を有する化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2のプロトン酸ドーパントが、式:
【化1】
(式中、
oは、1、2、又は3であり;
r及びpは、同一か又は異なり、0、1、又は2であり;
R5は、アルキル、フルオロ、又は1以上のフルオロ若しくはシアノ基で置換されているアルキルである)
を有する化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2のプロトン酸ドーパントがp−トルエンスルホン酸を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
導電性ポリマーのフィルムを提供する工程が、4,4’−スルホニルジフェノールを含むフィルムを提供することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の有機溶媒が約10より低い誘電率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1の有機溶媒がキシレンとブチルセロソルブとの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第2の有機溶媒が第1の有機溶媒の誘電率よりも高い誘電率を有する液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第2の有機溶媒がn−ブタノール及びブチルセロソルブの一方又は両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物が約1重量%〜約10重量%の量の第2のプロトン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物が約3重量%〜約7重量%の量の第2のプロトン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
フィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる工程が、フィルムを、第2の有機溶媒を含む混合物中に、導電性ポリマーフィルムの熱安定性を上昇させる量の第1のプロトン酸を抽出するのに十分な時間浸漬することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
フィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる工程が、フィルムを、第2の有機溶媒を含む混合物中に、少なくとも約10重量%の第1のプロトン酸を抽出するのに十分な時間浸漬することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
導電性ポリマーが、置換又は非置換のアニリン、ピロール、又はチオフェンの重合モノマー単位から形成されるポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
導電性ポリマーがポリアニリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
導電性ポリマーがポリアニリンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
表面に施す工程が、誘電性金属酸化物を含む表面、又は誘電性金属酸化物の上に形成されている導電性ポリマーの1以上の層を含む表面に施すことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
バルブメタルのアノード、誘電性金属酸化物層、及び、熱安定性を有し、ポリアニリンを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される十分な量の第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーを含む導電性ポリマーフィルムカソードを含むキャパシタ体を提供し;
フィルムを第2のプロトン酸を含む第2の有機溶媒と接触させて、それによって導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させる;
ことを含む、バルブメタルキャパシタにおける固体電解質として改良された熱特性を有する導電性ポリマーフィルムを使用する方法。
【請求項21】
第1のプロトン酸が導電性ポリマーよりも第2の有機溶媒中により可溶である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
導電性ポリマーのフィルムを提供する工程が、
第1の有機溶媒、及び導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーの混合物を誘電性金属酸化物層の上に施し;そして
第1の有機溶媒を除去し、誘電性金属酸化物層の上にドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する;
ことを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第1のプロトン酸ドーパントがジノニルナフタレンスルホン酸を含み、第2のプロトン酸ドーパントがp−トルエンスルホン酸を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1の有機溶媒がキシレンとブチルセロソルブとの混合物を含み、第2の有機溶媒が、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、又はこれらの混合物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;
フィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;
ことを含み、
ここで第2の有機溶媒との混合物中の第2のプロトン酸の濃度及び接触時間は、フィルムを260℃の温度に15秒間かけた際に約5mΩ未満の等価直列抵抗の増加(ΔESR)を与えるように選択する、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーフィルムの製造方法。
【請求項1】
ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;そして
このフィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;
ことを含む、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーフィルムの製造方法。
【請求項2】
導電性ポリマーのフィルムを提供する工程が、
第1の有機溶媒、及びドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーの混合物を表面に施し;そして
第1の有機溶媒を除去し、ドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する;
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のプロトン酸ドーパントが、ドデシルベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、又はジノニルナフタレンスルホン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2のプロトン酸が、式:
R1HSO3
(式中、R1は置換又は非置換の有機基である)
を有する化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2のプロトン酸ドーパントが、式:
【化1】
(式中、
oは、1、2、又は3であり;
r及びpは、同一か又は異なり、0、1、又は2であり;
R5は、アルキル、フルオロ、又は1以上のフルオロ若しくはシアノ基で置換されているアルキルである)
を有する化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2のプロトン酸ドーパントがp−トルエンスルホン酸を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
導電性ポリマーのフィルムを提供する工程が、4,4’−スルホニルジフェノールを含むフィルムを提供することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の有機溶媒が約10より低い誘電率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1の有機溶媒がキシレンとブチルセロソルブとの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第2の有機溶媒が第1の有機溶媒の誘電率よりも高い誘電率を有する液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第2の有機溶媒がn−ブタノール及びブチルセロソルブの一方又は両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物が約1重量%〜約10重量%の量の第2のプロトン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第2の有機溶媒と第2のプロトン酸との混合物が約3重量%〜約7重量%の量の第2のプロトン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
フィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる工程が、フィルムを、第2の有機溶媒を含む混合物中に、導電性ポリマーフィルムの熱安定性を上昇させる量の第1のプロトン酸を抽出するのに十分な時間浸漬することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
フィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる工程が、フィルムを、第2の有機溶媒を含む混合物中に、少なくとも約10重量%の第1のプロトン酸を抽出するのに十分な時間浸漬することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
導電性ポリマーが、置換又は非置換のアニリン、ピロール、又はチオフェンの重合モノマー単位から形成されるポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
導電性ポリマーがポリアニリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
導電性ポリマーがポリアニリンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
表面に施す工程が、誘電性金属酸化物を含む表面、又は誘電性金属酸化物の上に形成されている導電性ポリマーの1以上の層を含む表面に施すことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
バルブメタルのアノード、誘電性金属酸化物層、及び、熱安定性を有し、ポリアニリンを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される十分な量の第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーを含む導電性ポリマーフィルムカソードを含むキャパシタ体を提供し;
フィルムを第2のプロトン酸を含む第2の有機溶媒と接触させて、それによって導電性ポリマーフィルムの熱安定性を向上させる;
ことを含む、バルブメタルキャパシタにおける固体電解質として改良された熱特性を有する導電性ポリマーフィルムを使用する方法。
【請求項21】
第1のプロトン酸が導電性ポリマーよりも第2の有機溶媒中により可溶である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
導電性ポリマーのフィルムを提供する工程が、
第1の有機溶媒、及び導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーの混合物を誘電性金属酸化物層の上に施し;そして
第1の有機溶媒を除去し、誘電性金属酸化物層の上にドープされた導電性ポリマーのフィルムを形成する;
ことを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第1のプロトン酸ドーパントがジノニルナフタレンスルホン酸を含み、第2のプロトン酸ドーパントがp−トルエンスルホン酸を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1の有機溶媒がキシレンとブチルセロソルブとの混合物を含み、第2の有機溶媒が、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、又はこれらの混合物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ドープされた導電性ポリマーを第1の有機溶媒中に可溶化するように選択される第1のプロトン酸をドーパントとして有する導電性ポリマーのフィルムを提供し;
フィルムを第2の有機溶媒及び第2のプロトン酸の混合物と接触させる;
ことを含み、
ここで第2の有機溶媒との混合物中の第2のプロトン酸の濃度及び接触時間は、フィルムを260℃の温度に15秒間かけた際に約5mΩ未満の等価直列抵抗の増加(ΔESR)を与えるように選択する、改良された熱安定性を有する導電性ポリマーフィルムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
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【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2011−501379(P2011−501379A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531000(P2010−531000)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/011621
【国際公開番号】WO2009/054890
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510113287)ルミムーブ,インコーポレーテッド,ア・ミズーリ・コーポレーション,ディービーエイ・クロスリンク (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/011621
【国際公開番号】WO2009/054890
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510113287)ルミムーブ,インコーポレーテッド,ア・ミズーリ・コーポレーション,ディービーエイ・クロスリンク (1)
【Fターム(参考)】
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