説明

導電性ローラ

【課題】樹脂筒状部材を芯金上でローラ軸方向に繋ぎ合わされて構成された筒状部材の外径のばらつきを抑えることのできる導電性ローラを提供する。
【解決手段】導電性ローラ10は、導電性筒状部材3を、外周円筒部5と、外周円筒部5を芯金に対して支持する複数のリブ6とで構成するとともに、筒状部材3の長さ方向両端部のそれぞれにおいて、リブ6の少なくとも一部を切り欠いて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ローラに関し、詳しくは、複写機やプリンタ等の画像形成装置において各種ローラ部材として用いられる導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、画像形成の各工程で、転写ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、帯電ローラ、クリーニングローラ、中間転写ローラ、ベルト駆動ローラ等の、導電性を付与した導電性ローラが用いられている。
【0003】
このような導電性ローラは、シャフト部材の外側に導電性の被覆層を形成して構成されているが、このような導電性ローラを軽量にするため、シャフト部材を中空の導電剤入りの樹脂よりなる筒状部材で構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。そして、樹脂の熱収縮による変形を抑えるため、短い長さの筒状部材を成形し、この樹脂筒状部材を芯金上にローラ軸方向に繋ぎ合わせて、所定の長さのシャフト部材とするものも提案されている。
【特許文献1】特開2004−150610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、導電性ローラの外径寸法に対する要求精度はますます高まっており、シャフト部材の外径のバラツキを小さくすることが求められている現状にあって、樹脂筒状部材の外径は、それが短い長さのものであっても、熱収縮の影響によって、長さ方向中央部に対して、両端部での外径が大きくなる傾向があり、このことによって、ローラ長さ方向には外径の大きな部分と小さな部分とが交互に出現して外径精度を悪化させていることがわかってきた。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、樹脂筒状部材を芯金上でローラ軸方向に繋ぎ合わされて構成された樹脂筒状部材の外径のばらつきを抑えることのできる導電性ローラを提供する目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>は、芯金の周上に樹脂よりなる複数の導電性の筒状部材を軸方向に連結して構成されたシャフト部材と、このシャフト部材の周囲に形成された被覆層とを具えてなる導電性ローラにおいて、
前記筒状部材を、外周円筒部と、外周円筒部を芯金に対して支持する複数のリブとで構成するとともに、前記筒状部材の長さ方向両端部のそれぞれにおいて、リブの少なくとも一部を切り欠いてなる導電性ローラである。
【0007】
<2>は、<1>において、前記リブの半径方向内側を相互に連結する内側円筒部を設けてなる導電性ローラである。
【発明の効果】
【0008】
<1>によれば、筒状部材の長さ方向両端部のそれぞれにおいて、リブの少なくとも一部を切り欠いているので、成形後の熱収縮において、両端部にはリブがないことによって半径方向内側への収縮が軸方向中央部に対して大きくなるとともに、筒状部材を芯金に嵌合させて組み付けた状態においては、嵌合部分のない両端部に対して、中央部は、芯金との嵌合により内径が拡径し、その分外径も拡径することにより、軸方向中央部における外径の、両端部におけるそれとの差を小さくすることができ、外径のばらつきを小さくすることができる。
【0009】
<2>によれば、前記リブの半径方向内側を相互に連結する内側円筒部を設けるので、リブの半径方向内側端の変形を防止して周方向の均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図に基づいて説明する。図1は、この実施形態の導電性ローラを示す図であり、図1(a)は、ローラ中心軸を通る断面における断面図、図1(b)は、図1(a)におけるb−b断面に対応する断面図であり、導電性ローラ10は、芯金2の周上に樹脂よりなる複数(図示の場合5個)の導電性の筒状部材3を軸方向に連結して構成されたシャフト部材1と、シャフト部材1の周囲に形成された被覆層4とを具えてなり、筒状部材3は、外周円筒部5と、外周円筒部5を芯金2に対して支持する複数のリブ6と、これらのリブ6を、相互に半径方向内側で繋ぐ内周円筒部7とで構成されている。
【0011】
リブは周方向に、例えば等間隔に配列され、それらのリブ5は、筒状部材3の長さ方向両端部のそれぞれにおいて、少なくとも一部が、外周円筒部5より短い長さに切り欠かれている。
【0012】
このように、筒状部材3の両端部において、リブ6の一部を切り欠くことによって、筒状部材3の両端部と中央部との外径の差を極めて小さくすることができるが、このことについて、以下に説明を加える。
【0013】
図3は、従来の構造の筒状部材93を示し、この場合、リブ96が外周円筒部95と同じ長さとなるよう形成されており、この場合、軸方向中央部と両端部との冷却速度の違いよって、軸方向中央部での外径bは、両端部における外径aより小さい、いわゆる鼓状の形となってしまっていたが、本発明では、リブ6の、筒状部材両端部の一部を切り欠いているので、半径方向の収縮が、軸方向中央部より両端部で大きくなることと、筒状部材3を芯金2に嵌入したとき、中央部の外径がこの嵌入によって拡大するのに対して、両端部ではこの拡径が生じないことの二つの理由によって、軸方向両側の外径を中央部の外径に対し相対的に縮小することができ、その結果、これらの外径差を小さくして外径のばらつきを抑えることができる。
【0014】
ここでリブ6の切欠長さは、リブ6の半径方向延在幅に全幅に亘って切り欠いた場合、外周円筒部5の10〜35%とするのが好ましく、これを、10%未満とした場合には、軸方向両端の外径を中央部に対して十分近づけることができず、一方、切欠長さを外周円筒部5の35%を越えるものとした場合には、リブ6の外周円筒部5に対する支持効果が小さくなり、使用時における変形が大きくなってしまう。
【0015】
図3は、他の実施形態における導電性ローラの筒状部材を示す断面図とその側面図であり、筒状部材13は、外周円筒部15と、リブ16とだけよりなり、この場合、リブ16の半径方向内側端が直接芯金2に接触し、このことによって外径円筒部15を支持することとなる。
【0016】
また、リブの円筒状部材両端部における切欠の幅は、半径方向全幅に亘らなくともよく、例えば図4に示すように、リブ26の一部26Aを残して切り欠くこともできる。
【0017】
筒状部材3、13に用いる樹脂材料としては、適度の強度を有するとともに、射出成型等により成形可能なものであればよく、汎用樹脂やエンジニアリングプラスチックの中から適宜選定することができ、特に制限されるものではない。具体的には、エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール、ポリアミド樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド12、ポリアミド4・6、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド11、ポリアミドMXD6(メタキシレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミド)等)、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレンなどを挙げることができる。また、汎用樹脂としては、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンなどが挙げられる。その他、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等を用いることもできる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記の中でも、特にエンジニアリングプラスチックが好ましく、さらに、ポリアセタール、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネートなどが、熱可塑性で成形性に優れ、かつ、機械的強度に優れる点より、好ましい。特に、ポリアミド6・6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6・12、ポリブチレンテレフタレート、あるいはこれらの混合樹脂が好適である。なお、熱硬化性樹脂を用いることに差し支えはないが、リサイクル性を考慮すれば熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
導電剤としては、樹脂材料中に均一に分散することができるものであれば各種のものを使用することが可能であるが、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、カーボンファイバーやアルミニウム、銅、ニッケルなどの金属粉末、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物粉末、導電性ガラス粉末などの粉末状導電剤が好ましく用いられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この導電剤の配合量は、目的とする導電ローラの用途や状況に応じて適当な抵抗値が得られるように選定すればよく、特に制限されるものではないが、通常は中空部材10の材料全体に対して5〜40重量%、特には、5〜20重量%とすることが好ましい。
【0020】
筒状部材3、13の体積抵抗率については、上述のようにローラの用途等に応じて適宜設定すればよいが、通常は1×100〜1×1012Ω・cm、好ましくは1×100〜1×106Ω・cm、より好ましくは1×100〜1×103Ω・cmとする。
【0021】
筒状部材3、13の材料中には、必要に応じ補強や増量等を目的として各種導電性または非導電性の繊維状物やウィスカー、フェライトなどを配合することができる。繊維状物としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維などの繊維を挙げることができ、また、ウィスカーとしては、チタン酸カリウムなどの無機ウィスカーを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの配合量は、用いる繊維状物やウィスカーの長さおよび径、主体となる樹脂材料の種類や目的とするローラ強度等に応じて適宜選定することができるが、通常は材料全体の5〜70重量%、特には10〜20重量%である。
【0022】
また、芯金2としては、例えば、硫黄快削鋼やアルミニウム、ステンレス鋼等に、ニッケル、亜鉛めっき等を施したものを用いることができる。
【0023】
シャフト部材1は、導電性ローラの芯部を構成するものであるため、ローラとして良好な性能を安定的に発揮させるために十分な強度が必要であり、通常、JIS K 7171に準拠した曲げ強度で80MPa以上、特に130MPa以上の強度を有することが好ましく、これにより良好な性能を長期にわたって確実に発揮することができる。なお、曲げ強度の上限については特に制限はないが、一般的には500MPa以下程度である。
【実施例】
【0024】
図3に示した実施形態の筒状部材13を実施例として、その長さ方向両端部と中央部とにおける外径を測定した。また、図3におけるリブ16が外周円筒部15と同じ長さにまで延在する従来の筒状部材についても、同様の項目に関する測定を行った。表1にその結果を示す。
【0025】
なお、実施例の筒状部材13における全長Aは、58.9mm、リブ13の切欠部の長さBは15mm、芯金2の径dは、5.5mmであり、外径の呼びDは17.4mmであった。また、外径の測定は、筒状部材13を芯金に組み付け後の寸法を測定した。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から明らかなように、実施例の導電性ローラは、従来に対比して、外径のばらつきを大きく減少させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る実施形態の導電性ローラを示す断面図である。
【図2】従来の導電性ローラにおける円筒部材の斜視図である。
【図3】他の実施形態の導電性ローラを示す断面図ある。
【図4】他の実施形態の導電性ローラの変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 シャフト部材
2 芯金
3 筒状部材
4 被覆層
5 外周円筒部材
6 リブ
7 内周円筒部材
10 導電性ローラ
13 筒状部材
15 外周円筒部材
16、26 リブ
26A リブの一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の周上に樹脂よりなる複数の導電性の筒状部材を軸方向に連結して構成されたシャフト部材と、このシャフト部材の周囲に形成された被覆層とを具えてなる導電性ローラにおいて、
前記筒状部材を、外周円筒部と、外周円筒部を芯金に対して支持する複数のリブとで構成するとともに、前記筒状部材の長さ方向両端部のそれぞれにおいて、リブの少なくとも一部を切り欠いてなる導電性ローラ。
【請求項2】
前記リブの半径方向内側を相互に連結する内側円筒部を設けてなる請求項1に記載の導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−138735(P2008−138735A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324033(P2006−324033)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】