説明

導電性微粒子、異方性導電材料、及び、接続構造体

【課題】高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供する。
【解決手段】基材微粒子の表面に低融点金属層が形成された導電性基材粒子と、シェルの外表面に極性基を有するフラックス内包マイクロカプセルとを有する導電性微粒子であって、前記フラックス内包マイクロカプセルが、前記低融点金属層の表面に固着しており、かつ、前記フラックス内包マイクロカプセルの含有量が0.04〜4vol%である導電性微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基板において、ICやLSIは、電極をプリント基板にハンダ付けすることによって接続されていた。しかし、ハンダ付けでは、プリント基板と、ICやLSIとを効率的に接続することはできなかった。また、ハンダ付けでは、ICやLSIの実装密度を向上させることが困難であった。
これを解決するためにハンダを球状にした、いわゆる「ハンダボール」でICやLSIを基板に接続するBGA(ボールグリッドアレイ)が開発された。この技術によれば、チップ又は基板上に実装されたハンダボールを高温で溶融し基板とチップとを接続することで高生産性、高接続信頼性を両立した電子回路を製造することができる。
【0003】
また、他の電子回路基板間の接続方法として、絶縁性樹脂バインダー中に導電性微粒子を分散させた異方性導電材料を電極表面に塗布し、熱圧着することにより、隣接しあう電極間の絶縁性は確保したまま複数の電極を一括接続することで高生産性、高接続信頼性を両立した電子回路を製造することもできる。
【0004】
しかし、近年、基板の多層化が進み、多層基板は使用環境の影響を受けやすいことから、基板に歪みや伸縮が発生し、基板間の接続部に断線が発生するという問題があった。
【0005】
このような問題に対し、特許文献1には、樹脂微粒子の表面に、導電性の高い金属が含まれる金属層が形成され、さらに、金属層の表面に、錫等の金属からなる低融点金属層が形成された導電性微粒子が開示されている。このような導電性微粒子を用いれば、柔軟な樹脂微粒子が導電性微粒子に加わる応力を緩和することができ、かつ、最表面に低融点金属層が形成されているため、電極間を容易に導電接続することができる。
【0006】
一方、ハンダによる接合を行う場合は、通常、ハンダの濡れ性を改善させることを目的として、接合部である電極表面にフラックスを塗布することが行われている。
しかしながら、BGAによる接続において、電極に塗布されたフラックスは、電極が接続された後は不要となるばかりか、余分のフラックスは種々の弊害をもたらすことがあるので、洗浄を行ってフラックスの除去を行う必要があった。そのため、フラックスを洗浄するための工程が別途必要となる上に、洗浄工程に有機溶剤を使用しなければならないという問題点があった。
また、異方性導電材料として電極間接続を行う場合、バインダー樹脂の接着を阻害する為、電極にフラックスを塗布することが出来ないという問題点もあった。
【0007】
これらの問題に対して、特許文献2には、金属層を有する基材微粒子の外表面にフラックスを内包するマイクロカプセルを、ホットメルト接着剤を用いて複合化した導電性微粒子が記載されている。このようなフラックスを内包するマイクロカプセルを用いることで最小限量のフラックスを基材微粒子の周囲のみで加熱時に溶出させることが出来る。
しかしながら、このような導電性微粒子では、基材微粒子にマイクロカプセルを複合化する工程において、マイクロカプセル及び導電性微粒子同士が凝集するという問題が生じていた。また、異方性導電材料として電極間接続を行う場合に関し、接着剤が加熱時に揮発し、ボイドの原因となる等の弊害が生じていた。
【0008】
また、異方性導電材料として電極間接続を行う場合に関し、特許文献3には、鉛フリーSnZn系合金と、少なくともエポキシ樹脂および有機カルボン酸を含有するハンダ付け用フラックスとを含有するハンダ組成物が記載されており、このようなハンダ組成物を用いることで、フラックスの洗浄を必要とせず、印刷性やハンダ付け性等の経時変化を防止できるとしている。
しかしながら、フラックスをハンダ組成物中に直接混合させた場合、バインダー樹脂の劣化が進行してしまうという問題があった。また、ハンダ組成物に含まれる各導電性微粒子が充分な濡れ性を発揮するためには多量のフラックスを添加する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−220691号公報
【特許文献2】特開2003−247083号公報
【特許文献3】特開2003−010997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材微粒子の表面に低融点金属層が形成された導電性基材粒子と、シェルの外表面に極性基を有するフラックス内包マイクロカプセルとを有する導電性微粒子であって、前記フラックス内包マイクロカプセルが、前記低融点金属層の表面に固着しており、かつ、フラックス内包マイクロカプセルの含有量が0.04〜4vol%である導電性微粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明の導電性微粒子は、基材微粒子の表面に低融点金属層が形成された導電性基材粒子と、シェルの外表面に極性基を有するフラックス内包マイクロカプセルとを有する導電性微粒子であって、前記フラックス内包マイクロカプセルが、前記低融点金属層の表面に固着している。
本発明の導電性微粒子は、フラックス内包マイクロカプセルが、低融点金属層の表面に固着していることにより、低融点金属層を溶融させて導電接続を行う場合、内包されていたフラックスが外部に溶出する。これにより、従来行われていたフラックスの塗布工程が不要となり、更に、必要最低限のフラックスしか溶出しないため、余剰フラックスの洗浄工程も不要となる。その結果、電極の接続工程を大幅に簡略化することができる。また、余分のフラックスが生じることによって、作業環境の悪化等を招くこともない。
更に、フラックスを内包するマイクロカプセルをホットメルト接着剤で表面に固着させる場合と比較して、容易に製造できるだけでなく、マイクロカプセルの脱離等の不具合の発生を防止することができる。
加えて、フラックスをハンダ組成物中に直接混合させる場合と異なり、バインダー樹脂の汚染を招きにくい。
【0013】
図1は、本発明の導電性微粒子の一例を示す断面図である。図1に示すように、本発明の導電性微粒子は、基材微粒子1と、低融点金属層2と、シェル4内にフラックス3を内包するフラックス内包マイクロカプセル5とから構成されており、低融点金属層2の表面にフラックス内包マイクロカプセル5が固着した構造となっている。
図2は、本発明の導電性微粒子を電極に接続した場合の状態を示す断面図である。図2に示すように、低融点金属層2が熱で溶融する際に、フラックス内包マイクロカプセル5のシェル4も熱により破壊されることで、フラックス3´が電極6上に溶出する。この場合、フラックス3´の量は必要最低限となり、電極6付近上にのみ存在する構成となる。
【0014】
上記基材微粒子は特に限定されず、例えば、樹脂微粒子、無機微粒子、有機無機ハイブリッド微粒子、金属微粒子等が挙げられる。上記基材微粒子としては、特に樹脂微粒子が好ましい。
【0015】
上記樹脂微粒子は特に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等で構成される樹脂微粒子が挙げられる。
上記ポリオレフィン樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。上記アクリル樹脂は特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリメチルアクリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
上記樹脂微粒子を作製する方法は特に限定されず、例えば、重合法による方法、高分子保護剤を用いる方法、界面活性剤を用いる方法等が挙げられる。
上記重合法は特に限定されず、乳化重合、懸濁重合、シード重合、分散重合、分散シード重合等の重合法が挙げられる。
【0017】
上記無機微粒子は特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ等の金属酸化物で構成される微粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド微粒子は特に限定されず、例えば、オルガノシロキサン骨格の中にアクリルポリマーを含有するハイブリッド微粒子が挙げられる。
上記金属微粒子は特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、金、銀等の金属からなる微粒子が挙げられる。なかでも、銅微粒子が好ましい。上記銅微粒子は、実質的に銅金属のみで形成された銅微粒子であってもよく、銅金属を含有する銅微粒子であってもよい。なお、上記基材微粒子が銅微粒子である場合は、後述する導電層を形成しなくてもよい。
【0018】
上記基材微粒子が樹脂微粒子である場合、上記樹脂微粒子の10%K値の好ましい下限は1000MPa、好ましい上限は15000MPaである。上記10%K値が1000MPa未満であると、樹脂微粒子を圧縮変形させると、樹脂微粒子が破壊されることがある。上記10%K値が15000MPaを超えると、導電性微粒子が電極を傷つけることがある。上記10%K値のより好ましい下限は2000MPa、より好ましい上限は10000MPaである。
【0019】
なお、上記10%K値は、微小圧縮試験器(例えば、島津製作所社製「PCT−200」)を用い、樹脂微粒子を直径50μmのダイアモンド製円柱の平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、最大試験荷重10gの条件下で圧縮した場合の圧縮変位(mm)を測定し、下記式により求めることができる。
K値(N/mm)=(3/√2)・F・S−3/2・R−1/2
F:樹脂微粒子の10%圧縮変形における荷重値(N)
S:樹脂微粒子の10%圧縮変形における圧縮変位(mm)
R:樹脂微粒子の半径(mm)
【0020】
上記基材微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は2000μmである。上記基材微粒子の平均粒子径が1μm未満であると、基材微粒子が凝集しやすく、凝集した基材微粒子の表面に低融点金属層を形成した導電性微粒子を用いると、隣接する電極間を短絡させることがある。上記基材微粒子の平均粒子径が2000μmを超えると、回路基板等の電極間の接続に適した範囲を超えることがある。上記基材微粒子の平均粒子径のより好ましい下限は3μm、より好ましい上限は1000μmである。
なお、上記基材微粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の基材微粒子の粒子径を測定し、測定した粒子径を算術平均することにより求めることができる。
【0021】
上記基材微粒子の平均粒子径の変動係数は特に限定されないが、10%以下であることが好ましい。上記変動係数が10%を超えると、導電性微粒子の接続信頼性が低下することがある。なお、上記変動係数とは、粒子径分布から得られる標準偏差を平均粒子径で除して得られる値を百分率(%)で示した数値である。
【0022】
上記基材微粒子の形状は、対向する電極の間隔を維持できる形状であれば特に限定されないが、真球形状であることが好ましい。また、上記基材微粒子の表面は平滑であってもよいし、突起を有していてもよい。
【0023】
本発明の導電性微粒子は、上記低融点金属層の表面に、フラックスを内包するフラックス内包マイクロカプセルが固着している。本発明では、フラックス内包マイクロカプセルが低融点金属層に直接固着した構造であるため、接着剤を使用して接着する場合のような不具合が生じず、実装時やバインダー混合時にマイクロカプセルの脱離に起因する不良が生じにくい。
【0024】
上記フラックス内包マイクロカプセルは、シェルとフラックスとから構成される。
上記フラックス内包カプセルに使用されるフラックスは特に限定されず、例えば、ロジン、ロジン誘導体等のロジン類を主成分とする非活性ロジンフラックス、上記ロジン類と活性化剤とを主成分とする活性ロジンフラックス、カルボン酸、ジカルボン酸を主成分とするフラックス等が挙げられる。
上記活性化剤は特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン塩酸塩、トリエチレンテトラミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、塩酸アニリンなどのアミン化合物の有機酸又は無機酸の塩等が挙げられる。
上記カルボン酸は特に限定されず、例えば、ステアリン酸、アジピン酸、アントラニル酸、ラウリン酸、グリコール酸、アゼライン酸、コハク酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0025】
また、本発明の導電性微粒子では、フラックス内包マイクロカプセルを用いることで、フラックスとして市販のフラックスをそのまま使用することができる。従って、予め活性化等を行われている市販のフラックスを好適に使用できるという利点を有する。
更に、液状、ペースト状等のフラックスの形態を問わず、広範な範囲のフラックスを使用することができる。
【0026】
上記フラックス内包マイクロカプセルのシェルとしては、外表面に極性基を有し、かつ、上記フラックスをその内部に内包でき、低融点金属層の融点以下の加熱で溶融又は破壊される材質であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニリデン等の重合体やこれらの共重合体、ポリビニルアルコール(ポバール)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(エバール)、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビ
ニルエーテル、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等、セルロース誘導体等が挙げられる。
【0027】
また、上記シェル部分がアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニリデン等の重合性モノマーを重合させて得られる重合体や共重合体である場合、多官能重合性モノマーを架橋剤として用いて架橋された架橋体であることが好ましい。
【0028】
上記多官能重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ブタジエン等が挙げられる。
【0029】
上記フラックス内包マイクロカプセルは、シェルの外表面に極性基を有する。上記極性基を有することで、ヘテロ凝集によって低融点金属層に固着され、フラックス内包マイクロカプセルの脱離を防止することができる。
上記極性基としては、例えば、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基及び水酸基からなる群より選択される少なくとも1の官能基が好ましい。
【0030】
上記フラックス内包マイクロカプセルは、例えば、フラックスを溶媒に分散させた後、(メタ)アクリル酸エチル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等の重合性モノマーを添加し、これらの重合性モノマーを重合させることで製造することができる。
【0031】
本発明の導電性微粒子の全体積に対するフラックス内包マイクロカプセルの含有量の下限は0.04vol%、上限は4vol%である。上記フラックス内包マイクロカプセルの含有量が0.04vol%未満であると、溶出されるフラックスの量が少なくなり、ハンダの濡れ性等が不充分となる。上記フラックス内包マイクロカプセルの含有量が4vol%を超えると、余剰のフラックスが多くなるため洗浄工程が必要となる場合や、異方性導電材料として電極間接続を行う場合に関し余剰なフラックス及びカプセルのシェルの揮発分がボイドとなる等を招く。上記フラックス内包マイクロカプセルの含有量の好ましい下限は0.1vol%、好ましい上限は2.5vol%である。
【0032】
上記フラックス内包マイクロカプセルの平均粒子径の好ましい下限0.1μm、好ましい上限は100μmである。
【0033】
また、上記フラックス内包マイクロカプセルの平均粒子径は、導電性基材粒子の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。導電性基材粒子の平均粒子径の1/10を超えると、フラックス内包マイクロカプセルが外力により導電微粒子表面から脱離しやすいことがある。
【0034】
本発明の導電性微粒子は、基材微粒子の表面に低融点金属層が形成されている。上記低融点金属層は、加熱工程により溶融して電極に接合するため、接続信頼性を高めることができる。
【0035】
上記低融点金属層は、錫又は錫と他の金属の合金からなる。上記合金は特に限定されず、例えば、錫−銅合金、錫−銀合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、形成される低融点金属層の融点を低下させることができることから、錫−銀合金が好適である。
【0036】
更に、上記低融点金属層と電極との接合強度を向上させるために、上記低融点金属層に、ニッケル、アンチモン、アルミニウム、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、ガリウム、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム、インジウム等の金属を含有させてもよい。なかでも、上記低融点金属層と電極との接合強度を向上させる効果に優れていることから、上記低融点金属微粒子にニッケル、アンチモン、アルミニウムを含有させることが好適である。
上記低融点金属層に含有される金属の合計に占める上記金属の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.0001重量%、好ましい上限は2重量%である。上記金属の含有量が0.0001重量%未満であると、上記低融点金属層と電極との接合強度が充分に得られないことがある。上記金属の含有量が2重量%を超えると導電性微粒子の融点が変わることがある。
【0037】
上記低融点金属層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は200μmである。上記低融点金属層の厚さが0.1μm未満であると、リフローして溶融させても充分に電極に接合できないことがあり、上記低融点金属層の厚さが200μmを超えると、上記低融点金属層を形成する際に凝集が生じやすく、凝集した導電性微粒子は隣接電極間の短絡を引き起こすことがある。上記低融点金属層の厚さのより好ましい下限は0.2μm、より好ましい上限は50μmである。
なお、上記低融点金属層の厚さは、無作為に選んだ10個の導電性微粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して測定し、測定値を算術平均した厚さである。
【0038】
上記低融点金属層は、上記基材微粒子の表面に直接形成されていてもよい。また、上記低融点金属層は、上記低融点金属層と上記基材微粒子との間に、更に、導電層(下地金属層)が形成されていてもよい。
上記導電層を形成する金属は特に限定されず、例えば、金、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム等が挙げられる。なかでも、導電性に優れることから、上記導電層を形成する金属は、金、銅又はニッケルであることが好ましい。
【0039】
上記基材微粒子の表面に、上記導電層を形成させる方法は特に限定されず、例えば、無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンスパッタリング法等が挙げられる。
【0040】
上記導電層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は100μmである。上記導電層の厚さが0.1μm未満であると、導電性が充分に得られないことがある。上記導電層の厚さが100μmを超えると、導電性微粒子の柔軟性が低下することがある。上記導電層の厚さのより好ましい下限は0.2μm、より好ましい上限は50μmである。
なお、上記導電層の厚さは、無作為に選んだ10個の導電性微粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して測定し、これらを算術平均した厚さである。
【0041】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、上述のような構成の導電性微粒子が得られる方法であれば特に限定されないが、例えば、樹脂微粒子の表面に導電層及び低融点金属層が形成された導電性基材粒子を用いる場合は、以下の方法により製造することができる。
【0042】
まず、樹脂微粒子の表面に導電層を形成させるために、樹脂微粒子の表面に無電解メッキ法により下地メッキ層としてニッケル層(以下、下地ニッケルメッキ層ともいう)を形成させる。次に、下地ニッケルメッキ層の表面に銅等の導電層を形成させる。
上記導電層を形成させる方法は特に限定されず、例えば、電解メッキ法、無電解メッキ法等による方法が挙げられる。
【0043】
次に、上記導電層の表面に錫を含有する低融点金属層を形成することで導電性基材粒子を作製する。
上記低融点金属層を形成させる方法は特に限定されず、例えば、電解メッキ法による方法が挙げられる。
【0044】
次に、低融点金属層の表面に、シェルの外表面に極性基を有するフラックス内包マイクロカプセルを固着させる。
上記低融点金属層の表面にフラックス内包マイクロカプセルを固着させる方法は、特に限定されず、例えば、導電性基材粒子とフラックス内包マイクロカプセルとを水に入れて混合することでヘテロ凝集により固着させる方法等が挙げられる。
なお、上記方法では、混合時の条件を変化させることでフラックス内包マイクロカプセルの固着量を制御することができる。
【0045】
このような製造方法で得られた導電性微粒子は、低融点金属層の表面にフラックス内包マイクロカプセルが固着したものとなる。これにより、BGAによる接続において、低融点金属層を溶融させて導電接続を行う場合、内包されていたフラックスが外部に溶出するため、従来行われていたフラックスの塗布工程が不要となる。また、必要最低限のフラックスしか溶出しないため、余剰フラックスの洗浄工程も不要となり、電極の接続工程を大幅に簡略化することができる。更に、余分のフラックスが生じることによる作業環境の悪化等を招くことを防止することができる。
【0046】
本発明の導電性微粒子をバインダー樹脂に分散させることにより異方性導電材料を製造することができる。このような異方性導電材料もまた、本発明の1つである。
【0047】
本発明の異方性導電材料として、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤、異方性導電フィルム、異方性導電シート等が挙げられる。
【0048】
上記バインダー樹脂は特に限定されないが、絶縁性の樹脂が用いられ、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体、エラストマー等が挙げられる。
上記ビニル樹脂は特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
上記硬化性樹脂は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は硬化剤と併用してもよい。
上記熱可塑性ブロック共重合体は特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。
上記エラストマーは特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
本発明の異方性導電材料は、本発明の導電性微粒子、及び、上記バインダー樹脂の他に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で、例えば、増量剤、可塑剤、粘接着性向上剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、有機溶媒等を含有しても
よい。
【0050】
本発明の異方性導電材料の製造方法は特に限定されず、例えば、上記バインダー樹脂に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に混合して分散させ、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤等を製造する方法が挙げられる。また、上記バインダー樹脂に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に分散させるか、又は、加熱溶解させて、離型紙や離型フィルム等の離型材の離型処理面に所定のフィルム厚さとなるように塗工し、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電シート等を製造する方法も挙げられる。
また、上記バインダー樹脂と、本発明の導電性微粒子とを混合することなく、別々に用いて異方性導電材料としてもよい。
【0051】
本発明の導電性微粒子又は本発明の異方性導電材料を用いてなる接続構造体もまた、本発明の1つである。
【0052】
本発明の接続構造体は、一対の回路基板間に、本発明の導電性微粒子又は本発明の異方性導電材料を充填することにより、一対の回路基板間を接続させた導電接続構造体である。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の導電性微粒子の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の導電性微粒子を電極に接続した場合の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0056】
(実施例1)
(導電性微粒子の作製)
テトラメチロールメタンテトラアクリレートとジビニルベンゼンとの共重合体からなる樹脂微粒子(平均粒子径10μm)の表面に、電気めっきにより厚さ1μmの銅層を形成し、銅層形成樹脂微粒子を得た。得られた銅層形成樹脂微粒子に電気めっきにより厚さ1.5μmの錫層を形成し、導電性基材粒子を得た。
次いで、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジブチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、フラックス(デルタラックス523H、千住金属工業社製)の混合液と、水、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、GM−14(部分けん化ポリビニルアルコール)、亜硝酸ナトリウムの混合液とをそれぞれ調製し、ホモジナイザーを用いて混合乳化することでエマルション液を作製した。
エマルション液を攪拌しながら加熱重合することで、フラックスを内包する平均粒子径1μmのフラックス内包マイクロカプセルを作製した。
その後、得られた導電性基材粒子50gとフラックス内包マイクロカプセル0.0125gとを水中に添加し、ケミカルスターラーを用いて混合することで、フラックス内包マイクロカプセルを表面に固着させた導電性微粒子を得た。なお、導電性微粒子全体に対するフラックス内包マイクロカプセルの付着量は0.1vol%であった。
【0057】
(異方性導電ペーストの作製)
得られた導電性微粒子20g、バインダー樹脂としてエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ
社製「エピコート828」)100g、トリスジメチルアミノエチルフェノール2g、及び、トルエン100gを、遊星式攪拌機を用いて充分に混合し、異方性導電ペーストを得た。
【0058】
(実施例2)
フラックス内包マイクロカプセルの付着量を0.05vol%とした以外は実施例1と同様にして、導電性微粒子及び異方性導電ペーストを作製した。
【0059】
(実施例3)
フラックス内包マイクロカプセルの付着量を2vol%とした以外は実施例1と同様にして、導電性微粒子及び異方性導電ペーストを作製した。
【0060】
(比較例1)
フラックス内包マイクロカプセルの付着量を0.01vol%とした以外は実施例1と同様にして、導電性微粒子及び異方性導電ペーストを作製した。
【0061】
(比較例2)
フラックス内包マイクロカプセルの付着量を5vol%とした以外は実施例1と同様にして、導電性微粒子及び異方性導電ペーストを作製した。
【0062】
(比較例3)
フラックス内包カプセルを表面に固着させなかった以外は実施例1と同様にして、導電性微粒子及び異方性導電ペーストを作製した。
【0063】
(比較例4)
フラックス内包カプセルの表面にホットメルト接着剤(アロンメルトPES120L、東亜合成株式会社製)を塗布した後、導電性微粒子50gとフラックス内包マイクロカプセル0.0125gとを加熱しながら混合し、導電性微粒子表面にフラックス内包カプセルを固着させた以外は実施例1と同様に導電性微粒子及び異方性導電ペーストを作製した。
【0064】
(比較例5)
比較例3で得られた導電性微粒子50g、バインダー樹脂としてエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製「エピコート828」)100g、トリスジメチルアミノエチルフェノール2g、フラックス(千住金属工業社製「デルタラックス523H」)0.125g、及び、トルエン100gを、遊星式攪拌機を用いて充分に混合し、異方性導電ペーストを得た。
【0065】
<評価>
実施例及び比較例で得られた導電性微粒子について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0066】
(1)粘度上昇率
得られた異方性導電ペーストの粘度を25℃、50%環境下にてE型粘度計(商品名:VISCOMETER TV−22、TOKI SANGYO CO.LTD社製、使用ローター:φ15mm)を用いて測定した。その後、同条件で2日間放置した後、更に粘度測定を行い、得られた値から粘度上昇率を測定した。
【0067】
(2)リーク確認
得られた異方性導電ペーストを、線幅50μm及び線間隔50μmのアルミニウム電極を線上に10本有するガラス基板に一定量塗布し、同様のアルミニウム電極を有するガラス
基板を、各電極同士が対向し重なり合う様に位置合わせをし、貼り合わせることで接続構造体を得た。
この接続構造体をガラス基板の両底面から250℃で熱圧着し、低融点金属層の溶融による電極間接合、及び、バインダー樹脂の熱硬化を行った。
次に得られた接続構造体に125℃、250時間の熱疲労試験を行い、試験後の電極間の導通、及び、隣接する電極間のリークの有無を確認した。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、高い接続信頼性を実現することができ、かつ、電極の接続工程を簡略化することが可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材微粒子の表面に低融点金属層が形成された導電性基材粒子と、シェルの外表面に極性基を有するフラックス内包マイクロカプセルとを有する導電性微粒子であって、
前記フラックス内包マイクロカプセルが、前記低融点金属層の表面に固着しており、
かつ、前記フラックス内包マイクロカプセルの含有量が0.04〜4vol%である
ことを特徴とする導電性微粒子。
【請求項2】
極性基は、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基及び水酸基からなる群より選択される少なくとも1の官能基であることを特徴とする請求項1記載の導電性微粒子。
【請求項3】
フラックス内包マイクロカプセルの平均粒子径は、導電性基材粒子の平均粒子径の1/10以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性微粒子。
【請求項4】
フラックス内包マイクロカプセルは、低融点金属層の融点以下の加熱で溶融又は破壊されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電性微粒子。
【請求項5】
低融点金属層は、錫又は錫と他の金属との合金からなることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の導電性微粒子。
【請求項6】
基材微粒子は、樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の導電性微粒子。
【請求項7】
基材微粒子は、銅微粒子であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の導電性微粒子。
【請求項8】
基材微粒子は、更に、基材微粒子と低融点金属層との間に導電層を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の導電性微粒子。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の導電性微粒子がバインダー樹脂に分散されてなることを特徴とする異方性導電材料。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7或いは8記載の導電性微粒子、又は、請求項9記載の異方性導電材料を用いてなることを特徴とする接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−113804(P2011−113804A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268954(P2009−268954)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】