説明

導電性材料の処理方法、導電性材料形成方法及び導電性材料の処理装置

【課題】現像処理後に、現像の局部暴走により導電性材料の銀線エッジ部ににじみ、ギザギザ等の欠陥が発生することを抑制する。
【解決手段】感光ウエブ12の搬送方向に沿って、現像液16Aが貯留された現像処理槽16と、定着液20Aが貯留された定着槽20との間に、現像停止処理槽18を設ける。現像停止処理槽18には、pH5以下の停止液が貯留されている。これにより、現像処理槽16を出た感光ウエブ12は現像停止処理槽18に搬送され、現像停止処理される。このため、感光ウエブ12に同伴した現像液16Aが定着液20Aに接触することがなく、現像の局部暴走による導電性材料の銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の処理方法、導電性材料形成方法及び導電性材料の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀塩感光材料を露光して現像処理した後、表面抵抗低減処理を施した透光性導電膜として、近年PDP(プラズマディスプレイパネル)の電磁波シールド膜が知られている。
【0003】
特許文献1には、細線等のパターンを銀塩感光材料に露光し、現像、めっき処理して導電性膜を得る方法が開示されている。この方法のなかで現像処理については、現像工程、定着工程、水洗・安定化処理工程の順で実施されることが記載されている。また、得られた現像済み材料を活性化処理、無電解銅めっき、連続電解めっきで処理し、最終的に所望の導電性を持つ透明導電性膜が得られることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、乳剤層が実質的に最上層に配置され、乳剤層に酸化防止剤を含有する感光材料が開示されている。この感光材料では、物理現像やめっき処理が速やかに行われるために乳剤層上に保護層を設けないことが有利であることが記載されている。また、保護層を設けない弊害として、外圧による影響を受けやすく、カブリが起きやすいことが示唆されており、乳剤層に酸化防止剤を含有することで、外圧による影響を低減している。
【特許文献1】特開2006−352073号公報
【特許文献2】特開2006−228469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような技術では、以下のような問題点がある。
【0006】
実際に特許文献2(特開2006−228469号公報)に記載された感光材料を用いて、特許文献1(特開2006−352073号公報)で述べられたような現像方法で現像したとき、概ね良好な銀線パターンをもつ透明導電性膜前駆体(めっき前の現像済み品という意味)が得られるが、現像後の定着初期又は現像後の定着槽入口でのスクイズ部において、予期しない現像の局部暴走による銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ、樹状の銀析出、スジムラが発生する。これらの銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥は現像後透過光で見ていてもよく判らない。しかし、透明導電性膜前駆体をめっきすると、上記の銀線エッジ部の欠陥がめっきで増幅され透過でも見えるようになって故障となる。現像装置における感光材料の搬送速度を2m/分、3m/分、12m/分と生産能力向上のために増速すると、特にスジムラが顕著に表れる。PDP(プラズマディスプレイパネル)の電磁波シールドフィルムとするには、透過で目視可能なムラは故障となり、改善が必要である。
【0007】
ここでいう「現像の局部暴走」とは、現像槽から出た感光材料がスクイズ仕切れずに同伴している現像液中にハロゲン化銀が微少量溶け込んでおり、この現像液が定着液と出会って現像液中の銀が感光材料の銀線上に局部的に析出する溶解物理現像の1種と推定している。保護層がない感光材料において特に現像の局部暴走が顕著に発現し、搬送速度が上がるとスクイズしきれず同伴する現像液が増えるので、ムラもひどくなる傾向がある。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥の発生を抑制することができる導電性材料の処理方法、導電性材料形成方法及び導電性材料の処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の処理方法であって、現像処理後、前記導電性材料を定着処理する前に、pH5以下の停止液で満たされた現像停止処理槽に前記導電性材料を導入し、現像停止処理することを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンが形成された導電性材料を得る。この導電性材料の処理方法において、現像処理後、導電性材料を定着処理する前に、pH5以下の停止液で満たされた現像停止処理槽に導電性材料を導入し、現像停止処理する。
【0011】
一般的に、現像後の定着初期又は現像後の定着槽入口でのスクイズ部において、現像液が定着液と出会って現像液中の銀が導電性材料の銀線上に局部的に析出する、いわゆる現像の局部暴走による銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ、樹状の銀析出、スジムラが発生しやすい。本発明では、導電性材料を定着処理する前に、停止液で満たされた現像停止処理槽に導電性材料を導入し、現像停止処理を行うことで、現像の局部暴走による銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥の発生を抑制することができる。
【0012】
また、停止液はpH5以下が好ましく、pH5より大きくなると、現像液中の銀が導電性材料の銀線エッジ部に局部的に析出することを効果的に抑制することができない。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の導電性材料の処理方法において、前記pHが1〜4であることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、停止液のpHが1〜4であるので、現像液中の銀が導電性材料の銀線エッジ部に局部的に析出することをさらに効果的に抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の導電性材料の処理方法において、実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することを特徴としている。
【0016】
実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理する場合、現像液中の銀が導電性材料の銀線上に局部的に析出する、いわゆる現像の局部暴走が発生しやすいが、請求項3に記載の発明では、実質的に表面に保護層を有しない導電性材料前駆体を処理する場合でも、現像の局部暴走による銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥の発生を抑制することができる。ここで「実質的に表面に保護層を有しない」とは、表面の保護層の厚みが0.5μm以下若しくは表面に保護層を全く有しない場合をいう。
【0017】
請求項4に記載の発明に係る導電性材料形成方法は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の導電性材料の処理方法により導電性材料前駆体を処理して発現された銀パターンに、めっき処理によって金属を所定量付与することを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の導電性材料の処理方法により導電性材料前駆体を処理して発現された銀パターンに、めっき処理によって金属を所定量付与することにより、表面抵抗低減処理を施し、電磁波シールド膜を形成する。
【0019】
一般的に、現像後の定着初期又は現像後の定着槽入口でのスクイズ部において、現像の局部暴走による銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ、樹状の銀析出、スジムラが発生した場合、銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥は現像後透過光で見ていてもよく判らないが、銀パターンをめっき処理すると、銀線エッジ部の欠陥がめっきで増幅され透過でも見えるようになる。本発明では、現像処理後の現像停止処理により、銀線エッジ部の欠陥の発生を抑制することができるので、めっき処理により、銀線エッジ部の欠陥が透過で見えるようになることを抑制できる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の処理装置であって、現像処理を行う現像処理槽と前記導電性材料が定着処理される定着処理槽との間に設けられ、前記導電性材料がpH5以下の停止液に浸漬され、現像停止処理される現像停止処理槽を有することを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンが形成された導電性材料を得る。この導電性材料の処理装置において、現像処理後、導電性材料を定着処理する前に、導電性材料を現像停止処理槽内のpH5以下の停止液に浸漬することにより、現像停止処理する。
【0022】
一般的に、現像後の定着初期又は現像後の定着槽入口でのスクイズ部において、現像液が定着液と出会って現像液中の銀が導電性材料の銀線上に局部的に析出する、いわゆる現像の局部暴走による銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ、樹状の銀析出、スジムラが発生しやすい。本発明では、導電性材料を定着処理する前に、停止液で満たされた現像停止処理槽に導電性材料を導入し、現像停止処理を行うことで、現像の局部暴走による銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥の発生を抑制することができる。
【0023】
また、停止液は、pH5以下が好ましく、更に好ましくは4以下である。pH5より大きくなると、現像液中の銀が導電性材料の銀線エッジ部に局部的に析出することを効果的に抑制することができない。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の導電性材料の処理装置において、実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することを特徴としている。
【0025】
実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理する場合、現像液中の銀が導電性材料の銀線上に局部的に析出する、いわゆる現像の局部暴走が発生しやすいが、請求項6に記載の発明では、実質的に表面に保護層を有しない導電性材料前駆体を処理する場合でも、現像の局部暴走による銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、現像処理後に、現像の局部暴走により導電性材料の銀線エッジ部ににじみ、ギザギザ等の欠陥が発生することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1には、本発明に係る導電性材料の処理方法が適用される導電性材料の処理装置が示されている。この処理装置は、支持フィルム上に銀塩含有層としてハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体を露光した後に配置され、露光が施された導電性材料前駆体の現像・定着・洗浄等を行う装置である。
【0029】
図1に示されるように、処理装置10では、帯状の支持フィルム上にハロゲン化銀乳剤層を有する感光ウエブ12が複数の支持ロール14にガイドされた状態で一定方向に搬送される。この感光ウエブ12は、図示しない露光装置により所望の細線状のパターン露光が施されたものである。
【0030】
処理装置10には、感光ウエブ12の搬送方向に沿って上流側から下流側の順に、現像液16Aが貯留された現像処理槽16と、停止液18Aが貯留された現像停止処理槽18と、定着液20Aが貯留された定着槽20と、純水(洗浄液)22Aが貯留された第1水洗槽22と、純水(洗浄液)24Aが貯留された第2水洗槽24と、感光ウエブ12を乾燥させる乾燥装置26と、が配設されている。乾燥装置26には、千鳥状に配置された3本の支持ロール14に感光ウエブ12が巻き掛けられており、3本の支持ロール14より搬送方向上流側と搬送方向下流側で感光ウエブ12の表面に温風を吹き付ける温風発生装置28が配設されている。
【0031】
処理装置10では、感光ウエブ12は現像処理槽16の上部に配置された支持ロール14を経て現像処理槽16に搬送される。現像処理槽16内には、下方側の2本の液中ターンバー30と、上方側の2本の支持ロール32とが千鳥状に配置されている。感光ウエブ12は、搬送方向上流側の液中ターンバー30と2本の支持ロール32と搬送方向下流側の液中ターンバー30に掛け渡された状態で支持されている。その際、2本の液中ターンバー30に対し、感光ウエブ12はハロゲン化銀乳剤層が非接触となるように支持され、方向転換される。
【0032】
液中ターンバー30には、周面に軸方向に複数のスリット(図示省略)が形成されており、複数のスリットから所定量の現像液16Aが噴射されることにより、感光ウエブ12が液中ターンバー30から浮揚し、非接触となる。感光ウエブ12のハロゲン化銀乳剤層はウエット状態で軟膜のため、スリットから噴射される現像液16Aの量が強すぎて軟膜を破壊しないように所定の噴射量に調整することが望ましい。現像処理槽16内を搬送された感光ウエブ12は、現像処理槽16の上部と現像停止処理槽18の上部に配置された2本の支持ロール34を経て次の現像停止処理槽18に導入される。支持ロール34と感光ウエブ12を挟んで対向する位置には押圧ロール36が配設されている。
【0033】
現像停止処理槽18内には、下方側に液中ターンバー38が配置されており、液中ターンバー38で感光ウエブ12はハロゲン化銀乳剤層が非接触となるように支持され、方向転換される。液中ターンバー38には、周面に軸方向に複数のスリット(図示省略)が形成されており、複数のスリットから所定量の停止液18Aが噴射されることにより、感光ウエブ12が液中ターンバー38から浮揚し、非接触となる。現像停止処理槽18内を搬送された感光ウエブ12は、現像停止処理槽18の上部と定着槽20の上部に配置された2本の支持ロール34を経て次の定着槽20に導入される。
【0034】
以下、上記の現像処理槽16と同様に、感光ウエブ12は、定着槽20内に配置された2個の液中ターンバー40でハロゲン化銀乳剤層が非接触の状態で方向転換され、2本の支持ロール34を経て次の第1水洗槽22に導入される。液中ターンバー40は、周面に軸方向に形成された複数のスリットから所定量の定着液20Aが噴射されるものであり、これにより感光ウエブ12が液中ターンバー40から浮揚し、非接触となる。
【0035】
その後、感光ウエブ12は、第1水洗槽22内の液中ターンバー42でハロゲン化銀乳剤層が非接触の状態で方向転換され、第1水洗槽22の上部に配置された支持ロール34を経て第2水洗槽24に導入される。さらに、感光ウエブ12は、第2水洗槽24内の液中ターンバー44でハロゲン化銀乳剤層が非接触の状態で方向転換される。液中ターンバー42、44は、周面に軸方向に形成された複数のスリットから所定量の純水22A、24Aが噴射されるものであり、これにより感光ウエブ12が液中ターンバー42、44から浮揚し、非接触となる。
【0036】
第2水洗槽24の出口には、感光ウエブ12の両面に対向するように複数(本実施形態では2対)のエアーナイフ46が配置されている。第2水洗槽24から出た感光ウエブ12はエアーナイフ46から吹き出されるエアーにより純水24Aが掻き落とされ、上部に配置された支持ロール34を経て乾燥装置26に搬送される。
【0037】
乾燥装置26では、温風発生装置28から発生する温風により感光ウエブ12の両面が乾燥され、感光ウエブ12は乾燥装置26の上部に配置された支持ロール14を経て搬送される。図示していないが処理装置10は感光ウエブ12を一定のテンションで搬送できるようにトルク調整機構を持っている。
【0038】
このような処理装置10では、複数の支持ロール14、32、34と液中ターンバー30、38、40、42、44等によって、感光ウエブ12が現像処理槽16、現像停止処理槽18、定着槽20、第1水洗槽22、第2水洗槽24内を搬送されることで、現像、現像停止、定着、洗浄の各処理が行われる。これによって、細線メッシュ状の現像銀画像(導電膜)が形成された感光ウエブ12が得られる。
【0039】
処理装置10には、現像処理槽16と定着槽20との間に、停止液18Aが貯留された現像停止処理槽18が配置されている。停止液18Aは、pH5以下であり、pH1以上pH4以下が好ましく、pH2以上pH3以下がより好ましい。停止液のpHが、pH1以上pH5以下の範囲を外れると、現像液中の銀が導電性材料の銀線エッジ部に局部的に析出することを効果的に抑制することができなくなる。停止液18Aとして、例えば、酢酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸等が用いられる。本実施形態では、5%酢酸が用いられている。
【0040】
ここで、現像・定着・洗浄の各処理は、銀塩写真フィルム、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる現像処理技術を適用することができる。現像液、定着液、洗浄液もこれらに準じて適宜適用することができる。例えば、現像液としては、特に限定しないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、例えば、富士フイルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72などの現像液、又はそのキットに含まれる現像液、また、D−85などのリス現像液を用いることができる。なお、定着処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる。
【0041】
本実施形態では、感光ウエブ12のハロゲン化銀乳剤層の表面に保護層が設けられていない。また、感光ウエブ12を搬送するときの張力は、3N/m以上、150N/m以下とすることが好ましい。張力を3N/m未満にすると、支持ロール14、34等が回転しなくなり、フィルムに傷がつく場合がある。また150N/mを超えると、感光ウエブ12に皺が発生して液中ターンバー表面にフィルムが接触して現像銀画像に傷をつける場合がある。
【0042】
次に、本実施形態の導電性材料の処理方法が適用される処理装置10の作用について説明する。
【0043】
処理装置10では、複数の支持ロール14、32、34と液中ターンバー30、38、40、42、44等によって、感光ウエブ12が現像処理槽16、現像停止処理槽18、定着槽20、第1水洗槽22、第2水洗槽24内を搬送される。これにより、感光ウエブ12に現像、現像停止、定着、洗浄の各処理が行われる。そして、感光ウエブ12を乾燥装置26により乾燥させることで、細線メッシュ状の現像銀画像(導電膜)が形成された感光ウエブ12(導電性材料)が得られる。処理装置10により処理されて得られた感光ウエブ12は、透光性電磁波シールド膜に好適に使用できる。すなわち、処理装置10により感光ウエブ12を処理して発現された細線メッシュ状の銀パターンに、Cu、Agなどのめっき処理によって金属を所定量付与することで、透光性電磁波シールド膜が形成される。
【0044】
この処理装置10では、現像処理槽16と定着槽20との間に、停止液18Aが貯留された現像停止処理槽18が配置されており、現像処理槽16を出た感光ウエブ12は、現像停止処理槽18内に搬送され、現像停止処理が行われる。
【0045】
現像処理槽16と定着槽20との間に現像停止処理槽18を設けない場合、現像後の定着初期又は現像後の定着槽入口でのスクイズ部において、現像の局部暴走(溶解物理現象の1種)により銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ、樹状の銀析出、スジムラが発生しやすい。これらの銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥は現像後透過光で見ていてもよく判らないが、透明導電性膜前駆体(めっき前の現像済み品)をめっきすると、上記の銀線エッジ部の欠陥がめっきで増幅され透過でも見えるようになる。PDP(プラズマディスプレイパネル)の電磁波シールドフィルムとするには、透過で目視可能なムラは故障となる。特に、保護層がない感光ウエブにおいては、現像の局部暴走が顕著に発現し、搬送速度が上がるとスクイズしきれず同伴する現像液が増えるので、ムラもひどくなる傾向がある。
【0046】
本実施形態の処理装置10では、現像処理槽16と定着槽20との間に現像停止処理槽18が配置されており、現像処理槽16を出た感光ウエブ12は、現像停止処理槽18内に搬送され、現像停止処理が行われる。これにより、現像の局部暴走、すなわち現像液中に微少量溶け込んでいるハロゲン化銀が定着液と接触し、現像液中の銀が感光ウエブ12の銀線上に局部的に析出する現象を抑制できる。このため、感光ウエブ12の銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥の発生を抑制することができ、滑らかな銀線エッジ部を得ることができる。
【0047】
また、感光ウエブ12は、ハロゲン化銀乳剤層の表面に保護層が設けられていない。ハロゲン化銀乳剤層の表面に実質的に保護層を設けない場合には、現像液中の銀が導電性材料の銀線上に局部的に析出する、いわゆる現像の局部暴走が発生しやすい。しかし、処理装置10では、表面に保護層を全く設けない感光ウエブ12、又は保護層の厚みが極めて薄い(例えば、保護層の厚みが0.5μm以下の)感光ウエブでも、現像の局部暴走による銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥の発生を抑制することができる。
【0048】
次に、処理装置10を用いて、感光ウエブ12に銀線エッジ部の状態を調べる実験を行った。
【0049】
処理装置10の現像、現像停止、定着、水洗、乾燥等の各工程は、表1に示す条件等に設定した(水準1)。この条件等にて、現像、現像停止、定着、水洗、乾燥等の各工程を行い、現像後の銀線エッジ部(ふち)のギザギザの発生状態、めっき後の銀線エッジ部(ふち)のギザギザの発生状態を調べた。この実験では、停止液はpH2.5である。また、感光ウエブ12は、ハロゲン化銀乳剤層の表面に保護層を設けないものを用いた。なお、めっきは電解めっきによりCuを析出させた。
【0050】
また、比較例として、現像処理槽16と定着槽20との間に現像停止処理槽18を設けず、現像処理後に現像停止処理を行わない場合についても、同様に現像後の銀線エッジ部(ふち)のギザギザの発生状態、めっき後の銀線エッジ部(ふち)のギザギザの発生状態を調べた(水準2)。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示されるように、現像処理後に現像停止処理を行った場合(水準1)には、現像後、めっき後ともに、銀線エッジ部(ふち)のギザギザが発生しないことが確認された。一方、現像処理後に現像停止処理を行わない場合(水準2)には、現像後、めっき後ともに、銀線エッジ部(ふち)のギザギザが発生することが確認された。従って、処理装置10によれば、現像の局部暴走による感光ウエブ12の銀線エッジ部のギザギザの発生を抑制できることがわかった。
【0053】
一方、特開2000−352826号公報には、平版印刷用原板の現像処理装置において、現像工程を経た原板を停止又は洗浄する手段を設けた構成が開示されている。しかしながら、レントゲン用感材やリスフィルムや黒白ネガ感材のようにハロゲン化銀乳剤を塗布した写真感光材料を現像・定着・水洗・乾燥して銀像を得る自動現像装置においては、現像と定着の間に停止を入れるような自動現像装置は知られていないし、公知資料も無い。銀塩感光材料を現像してめっき工程の前駆体を得るような本発明のような構成では特に見当たらない。
【0054】
写真感光材料では処理後に得られた銀線パターンの上にめっきなどでさらに金属等の導電性物質を付与する後工程がないので、現像から定着への移動時に現像液が残存し定着で溶解物理現像(現像の局部暴走)が起っても後工程で増幅されることがない。保護層があるので、現像液のスクイズムラがあっても溶解物理現像ムラなどが緩和されて目立たない。また、溶解物理現像は均一に起れば現像濃度が向上するというメリットがあり、定着槽に入ると実質的に定着液で停止されるので、従来はレントゲン用感材やリスフィルムを現像処理する自動現像装置の現像と定着の間に停止浴が挿入されることはなかった。
【0055】
しかるに現像後の後工程がめっき工程であり、僅かな現像ムラがめっき工程で増幅され透過光による目視検査で視認されるようになったため、本発明の処理装置10のように現像停止処理槽18を設けることが有効になった。
【0056】
次に、感光ウエブ12について説明する。感光ウエブ12は、例えば、光透過性支持体上に銀塩が含有した銀塩含有層(本実施形態では、ハロゲン化銀乳剤層)を設けた、感光材料からなる長尺幅広フレキシブル基材である。また、本実施形態では、銀塩含有層上には実質的に保護層が設けられていないが、銀塩含有層上には保護層が設けられていてもよく、この保護層とは例えばゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために銀塩含有層上に形成される。保護層の厚みは0.02〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmであり、さらに好ましくは0.3〜3μmである。
【0057】
これらの銀塩含有層や保護層の組成などは、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に適用されるハロゲン化銀乳剤層(銀塩含有層)や保護層を適宜適用することができる。
【0058】
特に、感光ウエブ12(感光材料)としては、銀塩写真フィルム(銀塩感光材料)が好ましく、白黒銀塩写真フィルム(白黒銀塩感光材料)が最もよい。また、銀塩含有層に適用する銀塩としては、特にハロゲン化銀が最も好適である。
【0059】
一方、光透過性支持体としては、単層のプラスチックフィルムや、これを2層以上組み合わせた多層フィルムを適用することができる。プラスチックフィルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
【0060】
これらの中でも、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及び価格の点から、支持体としてのプラスチックフィルムは、銀塩写真フィルム(銀塩感光材料)に通常適用されるポリエチレンテレフタレートフィルムやセルロールトリアセテートフィルム、また、その他、ポリイミドフィルムであることが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが最も好ましい。
【0061】
また、ディスプレイ用の電磁波遮蔽材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合における光透過性支持体の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。
【0062】
感光ウエブ12の幅は、例えば、50cm以上とし、厚みは50〜200μmとすることがよい。
【0063】
なお、本実施形態では、光透過性電磁波遮蔽材料を製造する装置及び製造方法について説明したが、これに限られず、例えば、その他工業品などの微細な導電性金属部からなる細線状パターンを有する光透過性導電性材料の製造装置及び製造方法としても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態における導電性材料の処理方法が適用された処理装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0065】
10 処理装置
12 感光ウエブ(導電性材料前駆体、導電性材料)
16 現像処理槽
16A 現像液
18 現像停止処理槽
18A 停止液
20 定着槽
20A 定着液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の処理方法であって、
現像処理後、前記導電性材料を定着処理する前に、pH5以下の停止液で満たされた現像停止処理槽に前記導電性材料を導入し、現像停止処理することを特徴とする導電性材料の処理方法。
【請求項2】
前記pHが1〜4であることを特徴とする請求項1に記載の導電性材料の処理方法。
【請求項3】
実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性材料の処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の導電性材料の処理方法により導電性材料前駆体を処理して発現された銀パターンに、めっき処理によって金属を所定量付与することを特徴とする導電性材料形成方法。
【請求項5】
支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の処理装置であって、
現像処理を行う現像処理槽と前記導電性材料が定着処理される定着処理槽との間に設けられ、前記導電性材料がpH5以下の停止液に浸漬され、現像停止処理される現像停止処理槽を有することを特徴とする導電性材料の処理装置。
【請求項6】
実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することを特徴とする請求項5に記載の導電性材料の処理装置。

【図1】
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