説明

導電性材料の製造方法

【課題】表面抵抗率が高く、かつ均一な導電性材料を安定して製造する導電性材料の製造方法を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体を像様に露光し、拡散転写法により物理現像核層上に金属銀を析出させて導電性材料を製造する導電性材料の製造方法において、像様に露光する前および/または後に導電性材料前駆体の全面に副露光を与えることを特徴とする導電性材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路、アンテナ回路、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途に用いることができる導電性材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が強く求められる中、プリント基板を始めとする電気回路は益々高密度化、高精細化が求められてきている。
【0003】
電気回路を製造する方法としては例えば、1)銅、金、ITO、酸化スズなどの導電性材料で被覆された絶縁性基板に、2)感光性樹脂などのフォトレジスト剤を塗りつけ、3)所望のパターンのマスクをかけて紫外線などを照射して、4)フォトレジスト剤を硬化させ、5)未硬化部分を取り除いた後、6)化学エッチングなどによって不要な銅箔部分を除去し電気回路を形成する方法(サブトラクティブ法)が知られている。この方法では工程が煩雑で、かつ高精細な画線を描くことは金属のエッチング工程を有している為困難であった。
【0004】
高精細な画線を描く方法としては1)絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)無電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジストを除去する方法(フルアディティブ法)、あるいは1)絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与し、無電解めっきを施し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジスト等を剥離にする方法(セミアディティブ法)なども知られている。しかしこれらの方法も工程が煩雑で、サブトラクティブ法もそうであるが使用したフォトレジスト剤全てを最終的に廃棄せざるを得ないという問題も有していた。
【0005】
簡易な工程で電気回路を製造する方法としては金属ペーストを基板上にスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷し、焼結等させることで電気回路を形成する方法が知られている。しかしながら、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法では50μm以下の高精細な画線を描くことは困難であった。更にスクリーン印刷の場合、高精細な画線を連続して描こうとした場合、高精細な紗を使用しなければならないが、逆にその紗が詰まりやすいという問題を有している。インクジェット法の場合は特に電気回路を製造する場合だけでなく、民生用のインクジェットプリンタを含め、固形分を含有するインク組成物を印刷する場合には常にインクジェットノズルが詰まるという問題を有している。従って印刷法を用いて電気回路を製造する場合には、その安定性に問題を有していた。
【0006】
均一で高精細なパターンを簡易に、かつ安定に作るという観点において、近年導電性材料前駆体としてハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩写真感光材料を使用する方法が提案されている。例えば国際公開第01/51276号パンフレット、特開2004−221564号公報では銀塩写真感光材料を、1)像露光、現像処理した後、2)金属めっき処理を施すことで導電性材料を製造する方法の提案がなされている。同じく銀塩感光材料を使う方法として銀塩拡散転写法を用いる方法も提案されており、例えば特開2003−77350号公報(特許文献1)などがある。これらの方法で得られた導電性材料は銀塩写真法を用いているため、高精細な画線を描くことは容易であり、安定性も高く、工程も簡易で、非常に良好な特性を示す。
【0007】
一方、導電性材料の応用においては、目的に応じて種々の性能が求められ、透明性、導電性などを所望の値に制御する必要がある。例えば抵抗膜式透明タッチパネルなどでは、導電性材料として400〜600Ω/□前後の表面抵抗率が必要とされ、プラズマディスプレイなどに用いられる電磁波シールド材などよりも比較的高い表面抵抗率が求められる。同時に材料内の表面抵抗率の均一性なども重要視され、例えば最大と最小との差が100Ω/□以内であることが求められる。抵抗膜式透明タッチパネルには通常ITOフィルムが透明電極として用いられるが、ITOは資源的枯渇問題に直面しており、その代替品が求められている。
【0008】
上記特開2003−77350号公報に開示された方法で、抵抗膜式透明タッチパネル用途に好適な透明導電性材料を作製する場合、表面抵抗率を高く制御する方法として、得られるメッシュパターン金属銀におけるメッシュパターンの間隔を調整する方法がある。メッシュパターンの間隔を広げると、表面抵抗率は上昇するが、過度に行うとメッシュパターンの存在が認識できるようになり好ましくない。このため、表面抵抗率の調整範囲は限られるのであまり有用ではない。
【0009】
次に表面抵抗率を高くする方法として、メッシュパターンの線幅を細くする方法がある。例えばレーザー光源で走査露光する場合は、走査回数で調整したりレーザー出力を調整する方法があり、密着露光の場合は、マスクの線幅を調整したり露光時間を調整する方法がある。視認されにくいメッシュパターンの間隔で線幅を細くすると表面抵抗率は上昇するが、比較的急激に変化するため、僅かな露光量のフレでも表面抵抗率に大差が生じる。そのため、得られた導電性材料の表面抵抗率が材料内の不均一性を持つことが多く、均一な表面抵抗率を持つ導電性材料を安定して生産することが困難であった。このため表面抵抗率が高く、かつ均一な導電性材料を安定して製造する導電性材料の製造方法が求められていた。
【特許文献1】特開2003−77350号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、表面抵抗率が高く、かつ均一な導電性材料を安定して製造する導電性材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
支持体上に、少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体を像様に露光し、拡散転写法により物理現像核層上に金属銀を析出させて導電性材料を製造する導電性材料の製造方法において、像様に露光する前および/または後に導電性材料前駆体の全面に副露光を与えることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、表面抵抗率が高く、かつ均一な導電性材料を安定して製造する導電性材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いる導電性材料前駆体は支持体上に少なくとも物理現像核層、ハロゲン化銀乳剤層を支持体に近い方からこの順で有する。さらには、非感光性層を支持体から最も遠い最外層及びまたは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間の中間層、あるいは支持体と物理現像核層との間の下引き層として有していても良い。
【0014】
本発明に用いる導電性材料前駆体の支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、などが挙げられる。中でも抵抗膜式透明タッチパネル用途としては全光線透過率が80%以上である光透過性支持体であることが望ましい。
【0015】
本発明に用いる導電性材料前駆体の物理現像核層が含有する物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、コーティング法または浸漬処理法によって、前記下引き層を形成させた支持体上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1m2あたり0.1〜10mg程度が適当である。
【0016】
導電性材料前駆体に用いる物理現像核層には、水溶性高分子を含有することもできる。水溶性高分子を用いる場合の添加量は、物理現像核に対して0〜500質量%程度が好ましい。水溶性高分子としては、アラビアゴム、セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。
【0017】
導電性材料前駆体の物理現像核層は架橋剤を含有することもできる。該架橋剤としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることができる。架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、物理現像核層に含まれる水溶性高分子に対して、0.1〜30質量%を物理現像核層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。
【0018】
物理現像核層の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。
【0019】
本発明に用いる導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術はそのまま用いることもできる。なお、本発明の副露光により前述の優れた効果が得られるハロゲン化銀乳剤はネガタイプのハロゲン化銀乳剤である。
【0020】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)で記載されていような公知の手法を用いることができる。なかでも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明の導電性材料前駆体においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0021】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩、若しくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明に用いる導電性材料前駆体においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる。
【0022】
また、ハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。また、ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀量は銀換算で2〜10g/m2であることが好ましい。
【0023】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0024】
本発明に用いる導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層と物理現像核層の間やハロゲン化銀乳剤層の上の層に非感光性層を設けることができる。これらの非感光性層は、水溶性高分子を主たるバインダーとする層である。ここでいう水溶性高分子とは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0025】
具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい水溶性高分子は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層のバインダー量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0026】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0027】
本発明に用いる導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としては、好ましくは上記した下引き層あるいは物理現像核層、あるいは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に必要に応じて設けられる中間層、または支持体を挟んで設けられる裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのがよい。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、たとえばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1m2あたり、約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における吸光度として0.5以上である。
【0028】
上記導電性材料前駆体を用いて、導電性材料を製造するための方法について説明する。導電性材料として、例えば、網目状パタンの銀薄膜が挙げられる。像様(例えば網目状パタン)に露光後、拡散転写現像液で処理し、その後物理現像核層上の不要な各層を水洗などで除去して網目状パタンの銀薄膜を形成する。本発明の製造方法においては、導電性材料前駆体に網目状のパタンを露光する前および/または後に副露光を実施することを特徴とする。
【0029】
本発明における導電性材料前駆体の露光について説明する。導電性材料前駆体のハロゲン化銀乳剤層は像様に露光されるが、露光方法として、網目状パタンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いることができる。
【0030】
次に副露光について説明する。副露光とは、導電性材料前駆体の全面に均一な比較的弱い露光を与えるもので、網目状パタンの露光の前および/または後に実施することができる。副露光により、銀塩拡散転写現像液の処理で得られる導電性材料の金属銀量を網目状のパタン露光のみで得られる金属銀量よりも少なくすることができる。副露光の光量を調節することで、網目状パタンの金属銀量を任意に変化させ、導電性材料の表面抵抗率を制御することができる。副露光は、導電性材料前駆体の感光波長域に発光スペクトルを持つ光源であるならば、特に限定されるものではなく蛍光灯、各種ランプ、各種レーザー光などでも行うことができる。副露光は導電性材料前駆体の全面にかつ均一に行うことが重要であり、不均一になれば、導電性材料も表面抵抗率が不均一になる。副露光はパタン露光する露光装置を用いてその光量を調節して実施できるが、短時間で均一に行うことができる密着プリンターが好ましい。
【0031】
副露光の光量は導電性材料前駆体の感度により異なるが、像様に露光するときの適正露光量の5〜15%が好ましい。ここで適正露光量とは、例えば透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法ならば現像処理後の線幅が原稿の線幅と等しくなる光量であり、レーザー光で露光する方法ならば現像処理後の線幅が指定した線幅と等しくなる光量のことである。
【0032】
上記のように副露光の目的は、網目状パタンの金属銀量を少なくし、かつ全面の表面抵抗率を均一にすることである。網目状パタンの金属銀量を少なくする方法としては、例えば、導電性材料前駆体のハロゲン化銀乳剤の量を減らす方法がある。しかしながら、ハロゲン化銀乳剤の量を減らして、表面抵抗率を高くした導電性材料は、場所による表面抵抗率の差異が大きく不均一であり望ましい方法ではない。
【0033】
本発明における導電性材料前駆体の銀塩拡散転写現像液による現像処理について説明する。上記のように像様に露光する前および/または後に副露光された導電性材料前駆体のハロゲン化銀乳剤層は、銀塩拡散転写現像液で処理することにより物理現像が起こり、現像可能なだけの潜像核を有さないハロゲン化銀が可溶性銀錯塩形成剤により溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出し例えば網目状パターンの銀薄膜を得ることができる。一方、露光により現像可能なだけの潜像核を有するハロゲン化銀はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、不要になったハロゲン化銀乳剤層(黒化銀もこれに含まれる)及び中間層、保護層等は除去されて、銀薄膜が表面に露出する。
【0034】
現像処理後のハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0035】
本発明における導電性材料前駆体の現像処理において使用する、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0036】
現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0037】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0038】
現像液に用いられる還元剤は、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0039】
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1Lあたり、0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は現像液1Lあたり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0040】
現像液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、リン酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0041】
また、上記現像処理および水洗処理することで得られた導電性材料の銀画像は後処理を施すこともできる。後処理液としては例えば還元性物質、水溶性リンオキソ酸化合物、水溶性ハロゲン化合物などの水溶液が一例としてあげられる。このような後処理液により50〜70℃、更に好ましくは60〜70℃で10秒以上、好ましくは30秒〜3分処理することで、銀画像パターンのX線回折による2θ=38.2°での半値幅が0.35以下となるようにすれば、導電性は向上するが、高温高湿下でもその表面抵抗率が変動しなくなるので好ましい。
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。
【実施例1】
【0043】
導電性材料前駆体を作製するために、透明支持体として全光線透過率が90%、厚み100μmの塩化ビニリデンを含有する下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。物理現像核層を塗布する前に、このフィルムにゼラチンが50mg/m2の下引き層を塗布し乾燥した。
【0044】
次に、硫化パラジウムゾル液を下記の様にして作製し、得られたゾルを用いて物理現像核液を作製した。
【0045】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40mL
蒸留水 1000mL
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000mL
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0046】
<物理現像核液組成/1m2あたり>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08mL
【0047】
この物理現像核液を硫化パラジウムが固形分で0.4mg/m2になるように、下引き層の上に塗布し、乾燥した。
【0048】
続いて、上記物理現像核層を塗布した側と反対側の面に下記組成の裏塗り層を塗布した。
<裏塗り層組成/1m2あたり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料1 200mg
界面活性剤(S−1) 400mg
【0049】
【化1】

【0050】
【化2】

【0051】
続いて、支持体に近い方から順に下記組成の中間層、ハロゲン化銀乳剤層、及び最外層を上記物理現像核層の上に塗布した。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0052】
<中間層組成/1m2あたり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
【0053】
<ハロゲン化銀乳剤層組成/1m2あたり>
ゼラチン 1.0g
ハロゲン化銀乳剤 4.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0054】
<最外層組成/1m2あたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0055】
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで、細線幅20μmで格子間隔300μmの網目パタンの透過原稿を密着させてパタン露光した。そして後述する拡散転写現像液に20℃60秒間浸漬することで現像処理し、細線幅が20μmとなる適正露光量を求めたところ405nm付近で6.0mJ/cm2であった。上記導電性材料前駆体にこの適正露光量の6%に相当する0.36mJ/cm2の光量で密着プリンターにて副露光を与え、その後前記網目パタンの透過原稿を密着させて6.0mJ/cm2でパタン露光した。
【0056】
その後、露光した導電性材料前駆体を下記現像液中に20℃で60秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層、中間層、最外層および裏塗り層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。露光したサンプルからは網目パタン状に銀薄膜が形成された導電性材料を得た。
【0057】
<拡散転写現像液組成>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000mLとする。
pH=12.2に調整する。
【0058】
上記のようにして得られた網目パターン状銀薄膜が形成された導電性材料の後処理として、15質量%リン酸1ナトリウム水溶液を用いて60℃で60秒処理を実施した。
【0059】
上記のようにして得られた網目パターン状銀薄膜が形成された50cm四方の導電性材料について下記の評価を実施した。
【0060】
(1)表面抵抗率
JIS−K7194に準拠し、(株)ダイアインスツルメンツ社製、ロレスターGP/ESPプローブを用いて測定した。測定場所は50cm四方の正方形の四隅(左上、左下、右上、右下)及び中心部の5箇所とした。また、望ましい表面抵抗率は5箇所の平均値が400〜600Ω/□、最大と最小の差Δは100Ω/□以内である。この結果を表1に示す。
【0061】
(2)全光線透過率
光透過性に関してはスガ試験機製、ダブルビーム方式ヘーズコンピューターで網目パタン状銀薄膜の部分の全光線透過率を測定した。測定場所は50cm四方の正方形の中心部とした。この結果を表1に示す。
【実施例2】
【0062】
副露光の光量を0.54mJ/cm2にした以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【実施例3】
【0063】
副露光の光量を0.78mJ/cm2にした以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
副露光を実施しなかった以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【実施例4】
【0065】
副露光をパタン露光後に実施した以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【実施例5】
【0066】
副露光の光量を0.18mJ/cm2としパタン露光前後に実施した以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【0067】
(比較例2)
副露光を実施せず、表面抵抗率の調整のために適正露光量の1.5倍の光量で露光した以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【0068】
(比較例3)
副露光を実施せず、表面抵抗率の調整のために適正露光量の3倍の光量で露光した以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【0069】
(比較例4)
副露光を実施せず、表面抵抗率の調整のために細線幅15μmで格子間隔300μmの網目パタン透過原稿を使用した以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【0070】
(比較例5)
副露光を実施せず、表面抵抗率の調整のために細線幅10μmで格子間隔300μmの網目パタン透過原稿を使用した以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【0071】
(比較例6)
実施例1の導電性材料前駆体の作製において、表面抵抗率の調整のためにハロゲン化銀乳剤層に3.0g/m2銀相当のハロゲン化銀乳剤を用い、副露光を実施しなかった以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【0072】
(比較例7)
実施例1の導電性材料前駆体の作製において、表面抵抗率の調整のためにハロゲン化銀乳剤層に2.0g/m2銀相当のハロゲン化銀乳剤を用い、副露光を実施しなかった以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し実施例1と同様に評価を実施した。この結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
以上の結果から明らかなように、本発明の製造方法により表面抵抗率が高く、かつ均一な導電性材料が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体を像様に露光し、拡散転写法により物理現像核層上に金属銀を析出させて導電性材料を製造する導電性材料の製造方法において、像様に露光する前および/または後に導電性材料前駆体の全面に副露光を与えることを特徴とする導電性材料の製造方法。

【公開番号】特開2009−245748(P2009−245748A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90969(P2008−90969)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】