説明

導電性樹脂組成物の製造方法、およびこれより得られた導電性樹脂組成物

【課題】感度変動が少なく、良好なパターン形状を形成できる導電性樹脂組成物の製造方法、およびこれより得られた導電性樹脂組成物の提供。
【解決手段】塩基性反応助剤の存在下、酸性基置換アニリンを酸化剤により重合させて導電性樹脂を得る第一の工程と、得られた導電性樹脂を含む反応混合物から塩基性物質を除去する第二の工程と、反応混合物に塩基性添加剤をさらに加える第三の工程とを含む導電性樹脂組成物の製造方法、およびこれより得られた導電性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物の製造方法、およびこれより得られた導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線やイオン線等の荷電粒子線を用いたパターン形成技術は、光リソグラフィーの次世代技術として期待されている。
荷電粒子線を用いる方法においては、レジストの感度向上が生産性向上に有用な手法である。従って、露光部分もしくは荷電粒子線が照射された部分に酸を発生させ、続いてポストエクスポージャーベーク(PEB)処理と呼ばれる加熱処理で架橋反応または分解反応を促進させる、高感度な化学増幅型レジストの使用が主流となっている。
また、近年、半導体デバイスの微細化の流れに伴い、数nmオーダーでのレジスト形状の管理も要求されるようになってきている。
【0003】
ところで、荷電粒子線を用いる方法においては、特に基板が絶縁性の場合に基板が帯電し(チャージアップ)、帯電した電荷によって発生する電界により入射する荷電粒子線の軌道が曲げられ、所望のパターンが得られにくいという課題があった。
そこで、この課題を解決する手段として、水溶性導電性樹脂をレジスト表面に被覆する技術が有効であることが既に知られている。
【0004】
一方、水溶性導電性樹脂としては、ドープ剤を添加することなく導電性を発現できる自己ドープ性の酸性基置換ポリアニリンが提案されている。その合成方法としては、スルホン酸基置換アニリンまたはカルボキシ基置換アニリンなどの酸性基置換アニリンを、塩基性反応助剤の存在下で酸化剤により重合する方法が提案されている(特許文献1参照。)。特許文献1によれば、重合後の反応物を酸処理などして精製し、導電性樹脂の純度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−219739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では導電性樹脂の精製が不十分であった。重合に用いる酸化剤は分解して硫酸塩やアンモニアなどが生じるが、特に、これら硫酸塩等の酸性物質や、アンモニアおよび塩基性反応助剤等の塩基性物質などを十分に除去することができなかった。
そのため、この導電性樹脂を化学増幅型レジストに適用した場合には、レジスト上に導電膜を形成したまま露光、PEB処理および現像を行う際に、微量の酸性物質や塩基性物質がレジスト側へ移行し、パターン形状が変化したり、感度が変動したりするといった課題があった。具体的には、レジストがポジ型の場合、酸性物質がレジスト側へ移行すると、現像時に未露光部のレジストが溶解してしまうため、レジストの膜減り、パターンの細り、高感度側への感度変動などが起こる。一方、塩基性物質がレジスト側へ移行すると、露光部の酸が失活してしまい、パターン形状の変化や低感度側への感度変動などが起こる。また、レジストがネガ型の場合、上記酸性物質と塩基性物質のレジストへの移行は、逆の現象を引き起こすことになる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、感度変動が少なく、良好なパターン形状を形成できる導電性樹脂組成物の製造方法、およびこれより得られた導電性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、酸性基置換アニリンを塩基性反応助剤の存在下で重合した後、塩基性物質を除去し、さらに塩基性添加剤を加えることで、感度変動が少なく、良好なパターン形状を形成できる導電性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の導電性樹脂組成物の製造方法は、塩基性反応助剤の存在下、酸性基置換アニリンを酸化剤により重合させて導電性樹脂を得る第一の工程と、得られた導電性樹脂を含む反応混合物から塩基性物質を除去する第二の工程と、反応混合物に塩基性添加剤をさらに加える第三の工程とを含むことを特徴とする。
ここで、前記塩基性物質の除去が、イオン交換法によることが好ましい。
さらに、前記塩基性添加剤が、第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
また、本発明の導電性樹脂組成物は、前記導電性樹脂組成物の製造方法より得られたことを特徴とする。
ここで、25℃におけるpHが2.5〜6.0であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性樹脂組成物の製造方法によれば、感度変動が少なく、良好なパターン形状を形成できる導電性樹脂組成物が得られる。
また、本発明の導電性樹脂組成物は、感度変動が少なく、良好なパターン形状を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性樹脂組成物の製造方法は、後述する第一の工程と、第二の工程と、第三の工程とを含む。
ここで、本発明において「導電性」とは、10Ω・cm以下の体積抵抗率を有することである。
【0012】
<第一の工程>
第一の工程は、塩基性反応助剤の存在下、酸性基置換アニリンを酸化剤により重合させて導電性樹脂を得る工程である。
酸性基置換アニリンとして代表的なものは、スルホン基置換アニリンまたはカルボキシル基置換アニリンである。好ましくはスルホン基置換アニリンであり、カルボキシル基置換アニリンに比べ高い導電性を示す傾向にある。
【0013】
スルホン基置換アニリンとして代表的なものは、アミノベンゼンスルホン酸類であり、具体的には、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ニトロ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、フルオロアミノベンゼンスルホン酸、クロロアミノベンゼンスルホン酸、ブロムアミノベンゼンスルホン酸などのハロゲン基置換アミノベンゼンスルホン酸類などが挙げられる。
これらの中でも、アルコキシ置換アミノベンゼンスルホン酸が重合率の向上の点で好ましい。
【0014】
アルコキシ置換アミノベンゼンスルホン酸としては、例えば2−アミノアニソール−3−スルホン酸、2−アミノアニソール−4−スルホン酸、2−アミノアニソール−6−スルホン酸、3−アミノアニソール−2−スルホン酸、3−アミノアニソール−4−スルホン酸、3−アミノアニソール−5−スルホン酸などが挙げられる。
【0015】
塩基性反応助剤としては特に限定されないが、アンモニア、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類などが好ましく用いられる。これらの中でも、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類が好ましい。
【0016】
脂式アミン類としては、下記一般式(1)で表される化合物、または下記一般式(2)で表される第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基、−CHOHおよび−CHCHOHよりなる群から選ばれた基である。
【0019】
【化2】

【0020】
式(2)中、R〜Rは、各々独立に、水素、炭素数1〜3のアルキル基、−CHOHおよび−CHCHOHよりなる群から選ばれた基である。
【0021】
環式飽和アミン類としては、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジンおよびこれらの骨格を有する誘導体、ならびにこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリンおよびこれらの骨格を有する誘導体、ならびにこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
【0022】
上述した塩基性反応助剤の中でも、特にメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリンが好ましく用いられる。
塩基性反応助剤としてこれらを用いれば、重合の進行と共に導電性樹脂が析出し易く、固体回収や、洗浄の観点から有利である。
塩基性反応助剤はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0023】
塩基性反応助剤の濃度は0.1mol/L以上が好ましく、0.1〜10.0mol/Lがより好ましく、0.2〜8.0mol/Lが特に好ましい。塩基性反応助剤の濃度が0.1mol/L以上であれば、導電性樹脂組成物を高収率で得ることができる。一方、塩基性反応助剤の濃度が10.0mol/L以下であれば、得られる導電性樹脂組成物の導電性が向上する傾向にある。
【0024】
酸性基置換アニリンと塩基性反応助剤のモル比は、酸性基置換アニリン:塩基性反応助剤=1:100〜100:1であることが好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、50:50〜90:10が特に好ましい。ここで、塩基性反応助剤の割合が低いと反応性が低下したり、得られる導電性樹脂組成物の導電性が低下したりすることがある。一方、塩基性反応助剤の割合が高いと、導電性樹脂の酸性基と塩基性反応助剤が塩を形成する割合が高くなり、導電性樹脂組成物の導電性が低下することがある。
【0025】
酸化剤としては、標準電極電位が0.6V以上である酸化剤であれば限定はないが、例えばペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸類;過酸化水素等を用いることが好ましい。
これらの酸化剤は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0026】
酸化剤の使用量は、酸性基置換アニリン1モルに対して1〜5モルが好ましく、1〜3モルがより好ましい。
本発明においては、酸性基置換アニリンに対して酸化剤がモル比で等モル以上存在している系にて重合を行うことが重要である。また、触媒として、鉄、銅などの遷移金属化合物を酸化剤と併用することも有効である。
【0027】
重合方法としては、例えば酸化剤溶液中に酸性基置換アニリンと塩基性反応助剤の混合溶液を滴下する方法、酸性基置換アニリンと塩基性反応助剤の混合溶液中に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器等に酸性基置換アニリンと塩基性反応助剤の混合溶液と、酸化剤溶液同時に滴下する反応方法が挙げられる。
【0028】
重合は、重合系内を撹拌しながら行うことが好ましい。重合時の反応温度は50℃以下が好ましく、−15〜50℃がより好ましく、−10〜40℃が特に好ましい。反応温度が50℃以下であれば、副反応の進行や、主鎖の酸化還元構造の変化が起こりにくくなり、得られる導電性樹脂組成物の導電性が低下するのを抑制できる。なお、反応温度が−15℃以上であれば、短時間で反応が完了する。
【0029】
重合に使用する溶媒としては、水、または水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
なお、重合に使用する溶媒として混合溶媒を用いる場合、水と有機溶媒との混合比は任意であるが、水:有機溶媒=1:100〜100:1が好ましい。
【0030】
重合後の反応溶液には、未反応のモノマー(酸性基置換アニリン)が溶解している。そのため、反応溶液から導電性樹脂を含む反応混合物を分離する操作を行うのが好ましい。この際用いる分離装置としては、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離、遠心濾過等が用いられる。特に、遠心分離、遠心濾過などの分離装置を用いることが、高純度のものが得られやすく好ましい。
【0031】
反応溶液から導電性樹脂を含む反応混合物を分離した後、該反応混合物の精製を行ってもよい。精製は洗浄溶媒を用いて実施でき、該洗浄溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、t−ブタノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が、高純度のものが得られるため好ましい。特にメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、アセトニトリルが効果的である。
【0032】
<第二の工程>
第二の工程は、第一の工程で得られた導電性樹脂を含む反応混合物から、塩基性物質を除去する工程である。
第二の工程で除去される塩基性物質は、主に第一の工程で用いられる塩基性反応助剤の残存物や、酸化剤の分解物である。
【0033】
上述したように、レジスト上に導電膜を形成した際に、塩基性反応助剤や酸化剤の分解物である塩基性物質がレジスト側へ移行すると、レジストがポジ型の場合には露光部の酸が失活してしまい、パターン形状の変化や低感度側への感度変動が起こりやすかった。また、レジストがネガ型の場合には逆にパターンの細り、膜減りや高感度側への感度変動が起こりやすかった。
【0034】
しかし、本発明であれば、第二の工程において反応混合物から塩基性物質を除去することで、本発明の導電性樹脂組成物を用いてレジスト上に導電膜を形成した際に、加熱によって導電膜から塩基性物質が揮発するのを抑制できる。よって、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法においては、塩基性物質のレジスト側への移行が抑制され、パターン形状の変化や感度変動を抑制できる。
【0035】
塩基性物質のレジスト側への移行については、加熱発生ガス質量分析(EGA−MS:Evolved Gas Analysis−Mass Spectrometry)法を用いた導電性樹脂組成物の揮発成分分析によって確認できる。
通常、レジストのPEB処理温度が120℃付近であることを考慮すると、導電性樹脂組成物からの塩基性物質の揮発開始温度が120℃未満である場合にはレジスト側への移行が激しく、120℃以上130℃未満の範囲で揮発が始まる場合にはPEB処理温度によってはレジスト側への移行の可能性がある。従って、揮発開始温度は130℃以上が好ましく、140℃以上が特に好ましい。
【0036】
塩基性物質の除去方法としては特に限定されず、イオン交換樹脂を使ったカラム式、バッチ式の処理や、イオン交換膜を使った処理、電気透析法、更にプロトン酸溶液中での酸洗浄、加熱処理による除去、中和析出などあらゆる方法を用いることができるが、特に、イオン交換法が有効である。イオン交換法を用いることにより、導電性樹脂の酸性基と塩を形成した状態で存在する塩基性物質を効果的に除去でき、純度の高い導電性樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
イオン交換法としては、陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、電気透析法が挙げられる。
なお、イオン交換法で塩基性物質を除去する場合は、水性媒体に反応混合物を所望の固形分濃度になるように溶解させ、反応混合物溶液としてから塩基性物質を除去する。
水性媒体としては、水、水溶性有機溶媒、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
水溶性有機溶媒は、水に可溶な有機溶媒であり、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類などが挙げられる。
【0038】
陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換法の場合、陽イオン交換樹脂に対する試料液の量は、例えば固形分濃度5質量%の反応混合物溶液の場合、陽イオン交換樹脂に対して10倍の容積までが好ましく、5倍の容積までがより好ましい。
陽イオン交換樹脂としては、例えばオルガノ株式会社製の「アンバーライトIR−120H」などが挙げられる。
【0039】
電気透析法の場合、電気透析法のイオン交換膜は特に限定はされないが、不純物の拡散による浸透をより抑制するために、一価イオン選択透過処理が施されたイオン交換膜であって、分画分子量が300以下のものを使用することが好ましい。このようなイオン交換膜としては、例えば株式会社アストム製の「ネオセプタCMK(カチオン交換膜、分画分子量300)」、「ネオセプタAMX(アニオン交換膜、分画分子量300)」などが好適である。
また、電気透析法に用いるイオン交換膜として、アニオン交換層、カチオン交換層を張り合わせた構造を持ったイオン交換膜であるバイポーラ膜を用いてもよい。このようなバイポーラ膜としては、例えば株式会社アストム製の「PB−1E/CMB」などが好適である。
電気透析における電流密度は限界電流密度以下であることが好ましい。バイポーラ膜での印加電圧は、10〜50Vが好ましく、25〜35Vがより好ましい。
【0040】
上述したイオン交換法以外の方法、例えばプロトン酸溶液中での酸洗浄により塩基性物質物を除去する場合は、プロトン酸溶液中で反応混合物を攪拌することで塩基性物質を除去することができる。攪拌後は濾過してプロトン酸溶液を除去すればよい。
プロトン酸溶液としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、ホウ化フッ素酸等の鉱酸類、トリフルオロメタンスルホン酸等の超強酸類、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機スルホン酸類、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ−2−メチルプロパン−2−アクリルアミドスルホン酸等の高分子酸類などが挙げられる。これらの中でも塩酸、硝酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸が好ましい。
【0041】
<第三の工程>
第三の工程は、第二の工程の後に、反応混合物に塩基性添加剤をさらに加える工程である。
上述したように、レジスト上に導電膜を形成した際に、酸化剤の分解物等の酸性物質がレジスト側へ移行すると、レジストがポジ型の場合にはパターンの細り、膜減りや高感度側への感度変動が起こりやすかった。また、レジストがネガ型の場合には逆にパターン形状の変化や低感度側への感度変動が起こりやすかった。
【0042】
しかし、本発明であれば、第三の工程において反応混合物に塩基性添加剤を加えることで、酸性物質が塩基性添加剤と塩を形成しやすくなる。その結果、本発明の導電性樹脂組成物を用いてレジスト上に導電膜を形成した際に、加熱によって導電膜から酸性物質が揮発するのを抑制できる。よって、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法においては、酸性物質のレジスト側への移行が抑制され、パターン形状の変化や感度変動を抑制できる。また、第二の工程で塩基性物質を除去して第三の工程で塩基性添加剤を加えることで、系内に存在する塩基性物質の量を制御することができ、感度の変動を抑制することができる。
【0043】
酸性物質のレジスト側への移行については、EGA−MS法を用いた導電性樹脂組成物の揮発成分分析によって確認できる。
通常、レジストのPEB処理温度が120℃付近であることを考慮すると、導電性樹脂組成物からの酸性物質の揮発開始温度が120℃未満である場合にはレジスト側への移行が激しく、120℃以上130℃未満の範囲で揮発が始まる場合にはPEB処理温度によってはレジスト側への移行の可能性がある。従って、揮発開始温度は130℃以上が好ましく、140℃以上が特に好ましい。
【0044】
第三の工程で用いる塩基性添加剤としては特に限定されないが、例えば第一の工程で用いる塩基性反応助剤の説明において例示したものが挙げられる。中でも、酸性物質と形成する塩の揮発温度が高くなり、酸性物質の揮発を抑制できる点から強塩基が好ましく、更に金属元素を含まない点から、上記一般式(2)で表される第4級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、テトラメチルアンモニウムハイドライド、テトラメチロールアンモニウムハイドライド、テトラエチルアンモニウムハイドライド、テトラn−ブチルアンモニウムハイドライド、テトラsec−ブチルアンモニウムハイドライド、テトラt−ブチルアンモニウムハイドライド等のアンモニウムヒドロキシド化合物が挙げられる。
塩基性添加剤は、塩基性反応助剤と同一であってもよいし、異なる種類であってもよい。また、1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0045】
塩基性添加剤を加える際は、第二の工程においてイオン交換法により塩基性物質を除去した場合には、その後の反応混合物溶液をそのまま用いることができる。
また、第二の工程後の反応混合物が固体状である場合は、上述した水性媒体に、反応混合物を所望の固形分濃度になるように溶解させ、反応混合物溶液として用いるのが好ましい。
【0046】
塩基性添加剤の添加方法としては特に限定されず、任意の温度および添加速度で反応混合物に添加することができるが、通常は反応混合物溶液を室温に保持し、攪拌しながら塩基性添加剤を加えるのが好ましい。
なお、本発明において「室温」とは25℃のことである。
【0047】
塩基性添加剤の添加量は、詳しくは後述するが、得られる導電性樹脂組成物のpHが所望の値になるように調節すればよいが、通常は反応混合物100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましく、0.3〜0.9質量部が特に好ましい。塩基性添加剤の添加量が0.1質量部以上であれば、導電性樹脂組成物を用いてレジスト上に導電膜を形成した際に、加熱によって導電膜から酸性物質が発生するのを十分に抑制できる。一方、塩基性添加剤の添加量が50質量部以下であれば、加熱によって導電膜から塩基性物質が発生するのを十分に抑制できる。
【0048】
第三の工程の後の反応混合物は、水性媒体に溶解した状態(反応混合物溶液)であるが、この反応混合物溶液をそのまま導電性樹脂組成物として用いることができる。
また、エバポレータなどで反応混合物溶液から水性媒体を除去して得られる反応混合物を導電性樹脂組成物としてもよいし、さらに、該反応混合物を上述した水性媒体に溶解させて導電性樹脂組成物としてもよい。反応混合物は可溶性を有するので、水性媒体に容易に溶解する。ただし、水性媒体の説明において先に例示した水溶性有機溶媒の中には、1種単独で用いると反応混合物が溶解しにくいものもある(例えばメタノールなど)。そのような場合には、水との混合溶媒に反応混合物を溶解させればよい。
【0049】
このようにして得られる導電性樹脂組成物は、25℃におけるpHが2.5〜6.0であることが好ましい。pHが2.5以上であれば、導電性樹脂組成物を用いてレジスト上に導電膜を形成した際に、加熱によって導電膜から酸性物質が発生するのを十分に抑制できる。一方、pHが6.0以下であれば、加熱によって導電膜から塩基性物質が発生するのを十分に抑制できる。
【0050】
導電性樹脂組成物のpHは、第三の工程で反応混合物に添加する塩基性添加剤の添加量によって調節できる。具体的には、塩基性添加剤の添加量が多くなると導電性樹脂組成物のpHは高くなる傾向にある。
なお、導電性樹脂組成物のpHは、溶媒として水性媒体を含み、固形分濃度が2質量%である導電性樹脂組成物を、液温25℃でpHメータにより測定したときの値である。
【0051】
本発明の導電性樹脂組成物は、一般の塗料に用いられる方法によって基材表面に塗工される。
導電性樹脂組成物の塗工方法としては、例えばグラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の塗布方法、スプレーコーティング等の噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等が挙げられるが、通常はスピンコーターを用いてシリコンウハー、石英マスク基板などに塗布されたレジスト上へ塗工する。
なお、塗工性を向上する目的で、導電性樹脂組成物にアルコール、界面活性剤などを添加してもよい。
【0052】
以上説明したように、本発明によれば、加熱による酸性物質や塩基性物質の発生が少ない導電性樹脂組成物が得られる。該導電性樹脂組成物は、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法において、レジストへの酸性物質および塩基性物質の移行が抑制されるので、感度変動が少なく、良好なレジストパターン形状を形成できる。
【0053】
本発明により得られる導電性樹脂組成物の用途としては、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト表面に用いる帯電防止膜、コンデンサ、透明電極、および半導体材料等が挙げられる。
このうち、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト表面に用いる帯電防止膜として用いる場合は、本発明の導電性樹脂組成物を各種塗工方法にてレジスト表面に塗工した後、荷電粒子線によるパターン形成を行うことで、解像度の高いパターン形状を得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における各種測定・評価方法は以下の通りである。
【0055】
<測定・評価方法>
(pHの測定)
株式会社堀場製作所製のpHメータ(型式F−55S)および超精密用ガラス電極(型式6367−10D)を用い、液温25℃の条件で導電性樹脂組成物のpHを測定した。
【0056】
<揮発成分の分析>
(塩基性物質の評価)
EGA−MS法を用い、塩基性物質の分析を実施した。
具体的には、導電性樹脂組成物を減圧乾燥機により40℃で2時間乾燥して得られた固体物より試料を1mg採取し、試料カップに入れた。ついで、流量50mL/分のヘリウム雰囲気中の熱分解装置(フロンティア・ラボ株式会社製、「PY−2010D」)に導入し、昇温速度5℃/分で50℃から200℃まで昇温させた。このときに発生した熱分解ガスを全量の1/50の量、採取した。そして、1mL/分のヘリウムをキャリアガスとして用いた、300℃のガスクロマトグラフ(Agilent社製、「6890型GC」)のカラムに採取した熱分解ガスを送り込み、質量分析計(Agilent社製、「5973N型」)にて分析を実施した。
カラムとしては、液相なしで長さ2.5m、直径0.15mm(Ultra Alloy DTM)のものを用いた。質量分析は質量範囲(m/Z)=17〜500までを検出範囲とした。各塩基性物質のマススペクトルで特徴的なイオン(ピリジン:m/Z=79、トリエチルアミン:m/Z=86、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)由来成分:m/Z=85、テトラエチルアンモニウムハイドライド(TEAH)由来成分:m/Z=86)の発生(揮発)開始温度を確認し、以下の評価基準にて塩基性物質の発生を評価した。
◎:140℃では、いずれのイオンの揮発も確認されない。
○:130℃以上、140℃未満の間で、いずれかのイオンの揮発が確認された。
△:120℃以上、130℃未満の間で、いずれかのイオンの揮発が確認された。
×:120℃未満で、いずれかのイオンの揮発が確認された。
【0057】
(酸性物質の評価)
塩基性物質の評価と同様にして、EGA−MS法を用い、質量分析計にて酸性物質の分析を実施した。
質量分析は質量範囲(m/Z)=17〜500までを検出範囲とした。酸性物質のマススペクトルで特徴的なイオン(スルホン酸由来成分:m/Z=64)の発生(揮発)開始温度を確認し、以下の評価基準にて酸性物質の発生を評価した。
◎:140℃では、揮発が確認されない。
○:130℃以上、140℃未満の間で、揮発が確認された。
△:120℃以上、130℃未満の間で、揮発が確認された。
×:120℃未満で、揮発が確認された。
【0058】
[実施例1]
<第一の工程>
2−アミノアニソール−4−スルホン酸1molを、4mol/L濃度のピリジンの水/アセトニトリル=3:7の溶液300mL(ピリジン0.36mol)に0℃で溶解し、モノマー溶液を得た。
別途、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1molを、水/アセトニトリル=3:7の溶液1Lに溶解し、酸化剤溶液を得た。
ついで、酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、モノマー溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌して、導電性樹脂を得た。その後、得られた導電性樹脂を含む反応混合物を遠心濾過器にて濾別した。さらに、メタノールにて洗浄した後乾燥させ、粉末状の反応混合物(a−0)を185g得た。
得られた反応混合物(a−0)20gを、純水940gと2−プロパノール40gの混合溶媒に溶解させ、固形分濃度2質量%の反応混合物溶液(a−1)を1000g得た。
【0059】
<第二の工程>
超純水により洗浄した陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライトIR−120H」)500mLをカラムに充填した。このカラムに、反応混合物溶液(a−1)800gを、50mL/分(SV=6)の速度で通過させて、塩基性物質が除去された反応混合物溶液(a−2)を700g得た。
なお、1スベルドラップ(SV)は 1×10/s(1GL/s)と定義される。
【0060】
<第三の工程>
反応混合物溶液(a−2)100gを室温に保持し、攪拌しながらTMAHの10質量%水溶液を3.6g加え、導電性樹脂組成物(A−1)を得た。
【0061】
各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。
また、得られた導電性樹脂組成物(A−1)について、各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
[実施例2]
第三の工程において、TMAHの10質量%水溶液の添加量を5.4gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物(A−2)を調製し、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0063】
[実施例3]
第三の工程において、TMAHの10質量%水溶液の代わりに、TEAHの10質量%水溶液を5.8g加えた以外は、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物(A−3)を調製し、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0064】
[実施例4]
第三の工程において、TMAHの10質量%水溶液の代わりに、TEAHの10質量%水溶液を8.7g加えた以外は、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物(A−4)を調製し、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0065】
[実施例5]
第三の工程において、TMAHの10質量%水溶液の代わりに、TEAHの10質量%水溶液を9.0g加えた以外は、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物(A−5)を調製し、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0066】
[実施例6]
第三の工程において、TMAHの10質量%水溶液の代わりに、TEAHの10質量%水溶液を9.7g加えた以外は、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物(A−6)を調製し、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0067】
[実施例7]
<第一の工程>
塩基性反応助剤として、4mol/L濃度のピリジンの代わりに、4mol/L濃度のトリエチルアミンを用いた以外は、実施例1の第一の工程と同様にして粉末状の反応混合物(b−0)を185g得た。
得られた反応混合物(b−0)20gを、純水940gと2−プロパノール40gの混合溶媒に溶解させ、固形分濃度2質量%の反応混合物溶液(b−1)を1000g得た。
【0068】
<第二の工程>
反応混合物溶液(a−1)の代わりに、反応混合物溶液(b−1)を800g用いた以外は、実施例1の第二の工程と同様にして塩基性物質が除去された反応混合物溶液(b−2)を700g得た。
【0069】
<第三の工程>
反応混合物溶液(a−2)の代わりに、反応混合物溶液(b−2)を100g用い、TMAHの10質量%水溶液の添加量を5.4gに変更した以外は、実施例1の第三の工程と同様にして導電性樹脂組成物(B−1)を調製し、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0070】
[実施例8]
実施例7の第一の工程と同様にして、反応混合物(b−0)を185g得た。
ついで、第二の工程において、反応混合物(b−0)15gを、1mol/L濃度のp−トルエンスルホン酸のアセトン溶液中で1時間攪拌した後、濾別した。さらに、メタノールにて洗浄した後乾燥させ、塩基性物質が除去された粉末状の反応混合物(b−2−1)を14g得た。
得られた反応混合物(b−2−1)2gを、純水98gに室温で溶解させ、固形分濃度2質量%の反応混合物溶液(b−2−2)を100g得た。
ついで、第三の工程において、反応混合物溶液(a−2)の代わりに、反応混合物溶液(b−2−2)を100g用い、TMAHの10質量%水溶液の添加量を5.4gに変更した以外は、実施例1の第三の工程と同様にして導電性樹脂組成物(B−2)を調製し、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0071】
[比較例1]
実施例1で得られた反応混合物溶液(a−1)を導電性樹脂組成物とし、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0072】
[比較例2]
実施例7で得られた反応混合物溶液(b−1)を導電性樹脂組成物とし、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0073】
[比較例3]
実施例1で得られた反応混合物溶液(a−2)を導電性樹脂組成物とし、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0074】
[比較例4]
実施例7で得られた反応混合物溶液(b−2)を導電性樹脂組成物とし、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0075】
[比較例5]
実施例8で得られた反応混合物溶液(b−2−2)を導電性樹脂組成物とし、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0076】
[比較例6]
実施例7の第一の工程と同様にして、反応混合物溶液(b−1)を1000g得た。
ついで、第二の工程は実施せず、第三の工程において、反応混合物溶液(a−2)の代わりに、反応混合物溶液(b−1)を100g用い、TMAHの10質量%水溶液の添加量を5.4gに変更した以外は、実施例1の第三の工程と同様にして導電性樹脂組成物(B−3)を調製し、各種測定および評価を行った。各工程で得られた反応混合物、反応混合物溶液、および導電性樹脂組成物の種類を表1に示す。また、各種測定および評価結果を表2に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表2から明らかなように、第一の工程と、第二の工程と、第三の工程とを経て得られた各実施例の導電性樹脂組成物は、加熱したときに120℃付近において塩基性物質および酸性物質の揮発が抑制された。特に、第二の工程における塩基性物質の除去方法としてイオン交換法を用いた実施例1〜7の場合、130℃未満では塩基性物質が揮発しなかった。
従って、各実施例で得られた導電性樹脂組成物は、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法の場合、PEB処理時における微量な酸性物質や塩基性物質のレジスト側への移行が抑制されることから、感度変動が少なく良好なパターン形状を形成できることが示された。各実施例の結果から、特に、pHが2.5〜6.0である導電性樹脂組成物が好適であると言える。
また、当該導電性樹脂組成物は、その他各種電子デバイス用途等にも適用の可能が広がる。
【0080】
一方、第二の工程および第三の工程を行わずに得られた比較例1、2の導電性樹脂組成物は、加熱したときに120℃未満で塩基性物質および酸性物質が揮発した。
第三の工程を行わずに得られた比較例3〜5の導電性樹脂組成物は、第二の工程で塩基性物質を除去したので、加熱したときに120℃付近における塩基性物質の揮発は抑制できたものの、120℃未満で酸性物質が揮発した。
第二の工程を行わずに得られた比較例6の導電性樹脂組成物は、第三の工程で塩基性添加剤を加えたので、加熱したときに140℃での酸性物質の揮発は抑制できたものの、120℃未満で塩基性物質が揮発した。
従って、各比較例で得られた導電性樹脂組成物は、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法の場合、PEB処理時において微量な酸性物質や塩基性物質がレジスト側へ移行しやすく、感度が変動したり、パターン形状が変化したりしやすいことが示された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性反応助剤の存在下、酸性基置換アニリンを酸化剤により重合させて導電性樹脂を得る第一の工程と、得られた導電性樹脂を含む反応混合物から塩基性物質を除去する第二の工程と、反応混合物に塩基性添加剤をさらに加える第三の工程とを含む導電性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記塩基性物質の除去が、イオン交換法による請求項1に記載の導電性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記塩基性添加剤が、第4級アンモニウム塩である請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物の製造方法より得られた導電性樹脂組成物。
【請求項5】
25℃におけるpHが2.5〜6.0である請求項4に記載の導電性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−219680(P2011−219680A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92362(P2010−92362)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】