説明

導電性粉末

【課題】 導電性、白色度及び分散性に優れ、毒性の危惧がない導電性粉末を提供することを目的とする。
【解決手段】芯材を水中に分散させたスラリーに、水溶性錫化合物を添加後、酸又はアルカリを用いて中和反応を行い、前記芯材の表面に酸化錫水和物からなる被覆層が形成された導電性粉末前駆体を生成し、該前駆体を洗浄し、乾燥した後、酸化性雰囲気中250〜600℃で仮焼して仮焼粉を得、該仮焼粉を粉砕後、非酸化性雰囲気中150〜250℃で焼成して、酸化錫層を還元によりメタル化させずに酸素欠損を形成させて得られる、前記芯材の表面に酸化錫層が形成された導電性粉末であって、前記酸化錫層が実質的にアンチモンを含まず、体積抵抗率が100Ω・cm未満であることを特徴とする導電性粉末を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粉末及びその製造方法に関し、詳しくは、例えば、紙、プラスチック、ゴム、樹脂、塗料等に混入してこれらに導電性を付与する、酸化錫層が実質的にアンチモンを含まない導電性粉末及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、用途により、プラスチックにも導電性が求められてきている。例えば、ハウジング内の電気部品を大きな電磁界から遮蔽したり、帯電した部品を放電させたりする場合、ハウジング等に用いられるプラスチックは導電性のものであることが好ましい。このようにプラスチックに導電性を付与する方法としてはポリマーに導電性粉末を添加する方法が知られており、導電性粉末としては、例えば、金属粉末、カーボンブラック、アンチモン等をドープした酸化錫粉末等が知られている。
【0003】
しかし、金属粉末やカーボンブラックをポリマーに添加すると得られるプラスチックが黒色になり、プラスチックの用途が限定されるため好ましくない。また、アンチモン等をドープした酸化錫粉末をポリマーに添加したものを用いると、導電性が高いためこの点では好ましいが、プラスチックが青黒色に着色するためカーボンブラック等と同様にプラスチックの用途が限定されると共に、アンチモン自体に毒性が懸念されるため、使用することが好ましくない。
【0004】
これに対し、特許文献1(特許第2994020号公報)には、二酸化チタン等の粒子表面に、酸化スズの水和物からなる被覆層を形成され、得られた被覆処理物を非酸化性雰囲気中250〜600℃で加熱処理する導電性二酸化チタン粉末の製造方法が開示されている。該方法によれば、得られる導電性二酸化チタン粉末は、白色度に優れ、毒性の危惧がないものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2994020号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記導電性二酸化チタン粉末は、粉体抵抗が低くてもせいぜい580Ω・cm程度であり、プラスチックの導電性を向上させるためには、粉体抵抗をさらに向上させることが望まれている現状では、導電性が十分に高いとはいえない。また、非酸化性雰囲気中250〜600℃のような高温で焼成すると、導電性二酸化チタン粉末に酸素欠陥が増加するため導電性二酸化チタン粉末の体積抵抗を下げることができる点では好ましいが、一方で、導電性二酸化チタン粉末がメタル化する等により凝集が進んでしまうため塗料として使用する場合に該粉末の分散性が悪く、平滑な塗膜を形成することが困難であるという問題があった。従って、本発明の目的は、導電性、白色度及び分散性に優れ、毒性の危惧がない導電性粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、芯材を水中に分散させたスラリーに、水溶性錫化合物を添加後、酸又はアルカリを用いて中和反応を行い、前記芯材の表面に酸化錫水和物からなる被覆層が形成された導電性粉末前駆体を生成し、該前駆体を洗浄し、乾燥した後、酸化性雰囲気中250〜600℃で仮焼して仮焼粉を得、該仮焼粉を粉砕後、非酸化性雰囲気中150〜250℃で焼成して、酸化錫層を還元によるメタル化をさせることなく酸素欠損を形成させて得られる、前記芯材の表面に酸化錫層が形成された導電性粉末であって、前記酸化錫層が実質的にアンチモンを含まない導電性粉末は、導電性、白色度及び分散性に優れ、毒性の危惧がないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明(1)は、芯材を水中に分散させたスラリーに、水溶性錫化合物を添加後、酸又はアルカリを用いて中和反応を行い、前記芯材の表面に酸化錫水和物からなる被覆層が形成された導電性粉末前駆体を生成し、該前駆体を洗浄し、乾燥した後、酸化性雰囲気中250〜600℃で仮焼して仮焼粉を得、該仮焼粉を粉砕後、非酸化性雰囲気中150〜250℃で焼成して、酸化錫層を還元によりメタル化させずに酸素欠損を形成させて得られる、前記芯材の表面に酸化錫層が形成された導電性粉末であって、前記酸化錫層が実質的にアンチモンを含まず、体積抵抗率が100Ω・cm未満であることを特徴とする導電性粉末を提供するものである。
【0009】
また、本発明(2)は、本発明(1)において、比表面積が5〜300m/gであることを特徴とする導電性粉末を提供するものである。
【0010】
本発明(3)は、本発明(1)又は(2)において、前記芯材の材質が、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミナ又は二酸化珪素であることを特徴とする導電性粉末を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る導電性粉末は、白色度が高いため樹脂、塗料等に添加しても導電性粉末自体の色で着色し難く、分散性が高いため樹脂、塗料等に添加しても平滑な塗膜を形成することができ、アンチモンを実質的に含まないため毒性の危惧がなく、導電性が高い。また、本発明に係る導電性粉末は、仮焼と本焼成との二段焼成を行うことにより得られるので、通常の一段焼成のものに比べて良好な分散性が付与された導電性粉末とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る導電性粉末は、芯材を水中に分散させたスラリーに、水溶性錫化合物を添加後、酸又はアルカリを用いて中和反応を行い、前記芯材の表面に酸化錫水和物からなる被覆層が形成された導電性粉末前駆体を生成し、該前駆体を洗浄し、乾燥した後、酸化性雰囲気中250〜600℃で仮焼して仮焼粉を得、該仮焼粉を粉砕後、非酸化性雰囲気中150〜250℃で焼成して、酸化錫層を還元によるメタル化をさせることなく酸素欠損を形成させて得られる、前記芯材の表面に酸化錫層が形成された導電性粉末であって、実質的にアンチモンを含まず、体積抵抗率が100Ω・cm未満であることを特徴とする。
【0013】
(本発明に係る導電性粉末の実施の形態)
まず、本発明に係る導電性粉末の実施の形態について説明する。本形態で用いられる芯材は、その表面に酸化錫層を形成することが可能な実質的に粒状、フレーク状又は針状の芯材である。芯材の材質としては、例えば、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミナ、二酸化珪素、雲母、タルク、ホウ酸アルミニウム、酸化亜鉛(ZnO)及びチタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
【0014】
芯材は、粒度D50が通常0.01〜100μm、好ましくは0.1〜10μmである。芯材の粒径が該範囲内にあると、酸化錫層を形成して得られる導電性粉末の粒度が樹脂等中に分散し易いものとなるため好ましい。本明細書において粒度D50とは、レーザー回折散乱法で求められる体積平均粒径をいう。
【0015】
芯材は、比表面積が通常0.1〜150m/g、好ましくは10〜50m/gである。芯材の比表面積が該範囲内にあると、酸化錫層を形成して得られる導電性粉末の粒度が樹脂等中に分散し易いものとなるため好ましい。一方、該比表面積が0.1m/g未満であると、導電性粉末の粒子が大きいことから塗料化したときに均一な塗膜を得られ難いため好ましくない。また、該比表面積が150m/gを超えると、酸化錫の粒径と同じ大きさに近くなることから密着性の良いコート層を形成し難くなるため好ましくない。
【0016】
本発明に係る導電性粉末は、上記芯材の表面に酸化錫層が形成される。酸化錫層は、酸化錫SnOの微粒子が芯材の表面を実質的に隙間なく被覆して形成される表面が略平滑な層であって、実質的にアンチモンを含まないものである。なお、本明細書において実質的にアンチモンを含まないとは、アンチモンを不純物として含まないことを意味し、具体的には酸化錫層中のアンチモンの含有量が重量基準で1000ppm未満であることを意味する。本発明に係る導電性粉末は、このように実質的にアンチモンを含まないため、毒性の危惧がないものとなる。
【0017】
本発明に係る導電性粉末は、導電性粉末中における前記酸化錫層の含有量が、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%である。上記含有量が該範囲内にあると、導電性粉末の導電性が高いと共に、芯材と酸化錫層との結合が比較的強く導電性粉末を樹脂等に混練しても酸化錫層が剥離し難いものとなるため好ましい。一方、上記含有量が10重量%未満であると、酸化錫の量が少なく、導電性粉末の導電性が不十分になり易いため好ましくない。また、上記含有量が90重量%を超えると、導電性粉末の凝集が強くなり、塗膜の平滑性が失われることによりコート粉のメリットがなくなり易いため好ましくない。
【0018】
本発明に係る導電性粉末は、粒度D50が通常0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、さらに好ましくは0.1〜10μm、特に好ましくは0.2〜3.0μmである。導電性粉末の粒径が該範囲内にあると、樹脂等中に分散し易いものとなるため好ましい。
【0019】
本発明に係る導電性粉末は、比表面積が通常1〜300m/g、好ましくは5〜200m/g、さらに好ましくは10〜100m/gである。導電性粉末の比表面積が該範囲内にあると、樹脂等中に分散し易いものとなるため好ましい。一方、該比表面積が1m/g未満であると、導電性粉末の粒子が大きいことから塗料化したときに均一な塗膜を得られ難いため好ましくない。また、該比表面積が300m/gを超えると、酸化錫の粒径と同じ大きさに近くなることから密着性の良いコート層を形成し難くなるため好ましくない。本発明に係る導電性粉末は、体積抵抗率が通常100Ω・cm未満、好ましくは50Ω・cm未満にあり、導電性が高い。
【0020】
本発明に係る導電性粉末は、塗膜抵抗が低い。具体的には、塗膜抵抗が、通常1.0×10Ω/□未満、好ましくは6.0×10Ω/□未満である。ここで、塗膜抵抗は、試料粉体を三菱レイヨン株式会社製アクリル樹脂LR167に固形分重量で70重量%混合し、これをペイントシェーカーにて1時間分散した後、バーコーターを用いてPETフィルムの上に塗布し、乾燥して厚さ1μmの塗膜を形成し、該塗膜の表面抵抗を三菱化学株式会社製ロレスタHPを用いて測定した値である。
【0021】
上記本発明に係る導電性粉末は、下記の方法により製造することができる。本発明に係る導電性粉末は、芯材を水中に分散させたスラリーに、水溶性錫化合物を添加後、酸又はアルカリを用いて中和反応を行い、前記芯材の表面に酸化錫水和物からなる被覆層が形成された導電性粉末前駆体を生成し、該前駆体を洗浄し、乾燥した後、酸化性雰囲気中250〜600℃で仮焼して仮焼粉を得、次いで該仮焼粉を粉砕後、非酸化性雰囲気中150〜250℃で焼成して、酸化錫層を還元によるメタル化をさせることなく酸素欠損を形成させる。
【0022】
本形態では、まず、芯材を水中に分散させてスラリーを調製する。ここで、芯材としては、本発明に係る導電性粉末で説明したものと同様のものを用いる。
【0023】
上記スラリーは、例えば、芯材を水に芯材の粗粒がなくなるまで分散させる方法により得られる。該スラリーの生成に用いる水としては、特に限定されないが、純水等を用いると、不純物含有量の少ない酸化錫水和物を生成することにより、最終的に得られる導電性粉末の塗料分散性が良くなるため好ましい。
【0024】
上記スラリー中における水と芯材との配合比率は、水1lに対して芯材が、通常10〜100g、好ましくは30〜80gである。上記配合比率が該範囲内にあると、均一な酸化錫被覆層が得られ易いため好ましい。
【0025】
次に、該スラリーに、水溶性錫化合物を添加する。本形態で用いられる水溶性錫化合物としては、芯材の表面に酸化錫水和物からなる被覆層を形成することができるものであればよく特に限定されないが、例えば、錫酸ナトリウム、四塩化錫等が挙げられる。このうち、錫酸ナトリウム及び四塩化錫は水への溶解が容易であるため好ましい。
【0026】
また、上記スラリー中における水と水溶性錫化合物との配合比率は、水に対する水溶性錫化合物中のSn濃度が、通常1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%である。上記配合比率が該範囲内にあると、均一な酸化錫被覆層が得られ易いため好ましい。
【0027】
次に、水溶性錫化合物を添加したスラリーに、酸又はアルカリを用いて中和反応を行う。中和反応を行う方法としては、該スラリーに酸性物質やアルカリ性物質を添加する方法が挙げられる。ここで、酸性物質としては、例えば、硫酸、硝酸、酢酸等が挙げられる。硫酸は、希硫酸であると均一な酸化錫被覆層が得られ易いため好ましい。希硫酸の濃度は、通常10〜50容量%である。また、アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア水等が挙げられる。このうち、水酸化ナトリウムは濃度を管理し易いため好ましい。
【0028】
中和を行う際、スラリーのpHは、通常pH0.5〜5、好ましくはpH2.0〜4.0、さらに好ましくはpH2.0〜3.0とする。中和の際のpHを該範囲内にすることにより、水溶性錫化合物をスラリーに溶解して得られた錫酸が酸化錫水和物を生成し、芯材の表面に酸化錫水和物(SnO・nHO)からなる被覆層が形成された導電性粉末前駆体が生成する。
【0029】
次に、該導電性粉末前駆体を洗浄する。洗浄した導電性粉末前駆体は、脱水濾過後、乾燥させる。乾燥方法としては特に限定されない。
【0030】
次に、乾燥した導電性粉末前駆体を酸化性雰囲気中で仮焼する。ここで、酸化性雰囲気としては、例えば、大気雰囲気、酸素雰囲気等が挙げられる。このうち、大気雰囲気は、操作が容易であるため好ましい。
【0031】
仮焼温度としては、通常250〜600℃、好ましくは270〜550℃であり、仮焼時間としては、通常5〜180分、好ましくは30〜90分である。仮焼条件が、上記範囲内にあると、十分に酸化でき、且つ凝集を起こし難いため好ましい。上記の工程を行うと、導電性粉末前駆体の表面にある酸化錫水和物(SnO・nHO)からなる被覆層が酸化され、酸化錫からなる被覆層が形成される。該被覆層は、後述の本焼成を行うことにより還元されて酸素欠損を有する酸化錫層を形成するものであるが、本工程の仮焼を行って酸化錫水和物を一旦酸化しておくことにより、次工程の本焼成を低温で行うことができるため、凝集させずに分散性の良い導電性粉末を製造することができる。
【0032】
次に、仮焼した導電性粉末前駆体を適宜粉砕した後、非酸化性雰囲気中で焼成する。ここで粉砕方法としては特に限定されない。また、非酸化性雰囲気としては、例えば、窒素雰囲気、水素を含有した窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等が挙げられる。このうち、水素を含有した窒素雰囲気は、安価であるため好ましい。また、水素を含有した窒素雰囲気の場合、水素の含有量は、通常0.1〜10体積%、好ましくは1〜3体積%である。水素の含有量が該範囲内にあると、酸化錫層について還元によるメタル化をさせずに酸素欠損を形成させ易いため好ましい。
【0033】
焼成温度としては、通常150〜250℃、好ましくは180〜220℃である。上記の工程を行うことにより、本発明に係る導電性粉末を製造することができる。
【0034】
上記本発明に係る導電性粉末は、例えば、紙、プラスチック、ゴム、樹脂、塗料等に混入してこれらに導電性を付与する導電性フィラーとして、また、電池等の電極改質剤として使用することができる。また、本発明に係る導電性粉末の製造方法は、上記本発明に係る導電性粉末の製造に使用することができる。上記樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル等が挙げられる。
【0035】
本発明に係る導電性粉末は、上記樹脂や水等の液状媒体に対する分散性が良好であり、その指標として、導電性粉末を純水に70重量%分散し、ペイントシェーカーを用いて分散処理した場合の分散粒度D50が、通常0.05〜0.45μm、好ましくは0.1〜0.4μmである。分散粒度D50が該範囲内にあると、平滑であり透明性の高い膜が得られ易いため好ましい。また、本発明に係る導電性粉末は、上記樹脂に分散させたときの塗膜抵抗が低くなる。
【0036】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
【実施例1】
【0037】
水3.5lに硫酸バリウム200gを硫酸バリウムの粗粒がなくなるまで分散させてスラリーを生成した。該スラリーにSn含有量41重量%の錫酸ナトリウム384gを投入し、錫酸ナトリウムを溶解させた。該スラリーに20%希硫酸をスラリーのpHが2.5になるまで98分間かけて添加して中和した。該反応液を温水を用いて洗浄した。洗浄終了後は、脱水濾過を行い、濾滓(ケーキ)を回収した。
次に、得られた濾滓を150℃の雰囲気中に15時間放置して、乾燥させた。得られた乾燥ケーキをアトマイザーを用いて解砕し、該解砕物について大気中において、300℃で60分仮焼を行った。得られた仮焼粉を、アトマイザーを用いて粉砕した後、水素を2体積%含有した窒素ガスを流通させながら、230℃で30分間焼成を行った。
得られた粉末について、被覆率(導電性粉末中における酸化錫層の含有量)、体積抵抗率、粒度D50比表面積、分散粒度D50及び塗膜抵抗を下記の方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0038】
(体積抵抗率):試料粉体を三菱化学株式会社製ロレスタPAPD−41を用いて500kgf/cmに加圧した状態で、三菱化学株式会社製ロレスタAPを用いた測定値を体積抵抗率として求めた。
(粒度D50):200ccのサンプル容器に試料約0.1gを採り、0.2g/lのヘキサメタリン酸ソーダを10ml添加混合後、純水90mlを添加し、超音波分散機日本精機株式会社製US−300Tにより10分間分散しサンプル液を調整した。日機装株式会社製マイクロトラックHRAを用いて測定した。
(比表面積):ユアサアイオニクス株式会社製モノソーブを用いて測定したBET比表面積を用いた。
(分散粒度D50):試料粉体を純水に30重量%分散した後、ペイントシェーカーを用いて分散処理を30分間行い、得られたスラリーの分散粒度D50を日機装株式会社製マイクロトラックHRAを用いて測定した。
(塗膜抵抗):試料粉体を三菱レイヨン株式会社製アクリル樹脂LR167に固形分重量で70重量%混合し、これをペイントシェーカーにて1時間分散した後、バーコーターを用いてPETフィルムの上に塗布し、乾燥して厚さ1μmの塗膜を形成し、該塗膜の表面抵抗を三菱化学株式会社製ロレスタHPを用いて測定した。
【実施例2】
【0039】
焼成温度を170℃とし、被覆率が40重量%となるようにした以外は実施例1と同様にして導電性粉末を得た。測定結果を表1に示す。
【実施例3】
【0040】
焼成温度を200℃とし、被覆率が60重量%となるようにした以外は実施例1と同様にして導電性粉末を得た。測定結果を表1に示す。
【実施例4】
【0041】
焼成温度を200℃とし、被覆率が80重量%となるようにした以外は実施例1と同様にして導電性粉末を得た。測定結果を表1に示す。
【実施例5】
【0042】
硫酸バリウム200gに代えて二酸化珪素200gを用い、焼成温度を200℃とし、被覆率が50重量%となるようにした以外は実施例1と同様にして導電性粉末を得た。測定結果を表1に示す。
【実施例6】
【0043】
硫酸バリウム200gに代えて二酸化チタン200gを用い、焼成温度を200℃とし、被覆率が50重量%となるようにした以外は実施例1と同様にして導電性粉末を得た。測定結果を表1に示す。
【比較例】
【0044】
[比較例1]
仮焼を行わず、焼成温度を350℃とし、焼成時間を120分とし、被覆率が50重量%となるようにした以外は実施例1と同様にして導電性粉末を得た。測定結果を表1に示す。
【0045】
[比較例2]
仮焼を行わず、焼成温度を600℃とし、焼成時間を60分とし、被覆率が80重量%となるようにした以外は実施例1と同様にして導電性粉末を得た。測定結果を表1に示す。
【0046】
[比較例3]
硫酸バリウム200gに代えて二酸化珪素200gを用い、仮焼を行わず、焼成温度を600℃とし、焼成時間を60分とし、被覆率が50重量%となるようにした以外は実施例1と同様にして導電性粉末を得た。測定結果を表1に示す。
【0047】
[比較例4]
硫酸バリウム200gに代えて二酸化チタン200gを用い、仮焼を行わず、焼成温度を600℃とし、焼成時間を60分とし、被覆率が50重量%となるようにした以外は実施例1と同様にして導電性粉末を得た。測定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1より、仮焼を行わない比較例の導電性粉末は、体積抵抗が高くて導電性が悪く、分散粒度D50が大きく、塗膜抵抗が高いことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る導電性粉末及びその製造方法は、精密電子機器の静電気障害防止、静電気災害の発生防止、防塵等のためのハウジング、建材、繊維、機械部品;電池等の用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材を水中に分散させたスラリーに、水溶性錫化合物を添加後、酸又はアルカリを用いて中和反応を行い、前記芯材の表面に酸化錫水和物からなる被覆層が形成された導電性粉末前駆体を生成し、該前駆体を洗浄し、乾燥した後、酸化性雰囲気中250〜600℃で仮焼して仮焼粉を得、該仮焼粉を粉砕後、非酸化性雰囲気中150〜250℃で焼成して、酸化錫層を還元によりメタル化させずに酸素欠損を形成させて得られる、前記芯材の表面に酸化錫層が形成された導電性粉末であって、
前記酸化錫層が実質的にアンチモンを含まず、体積抵抗率が100Ω・cm未満であることを特徴とする導電性粉末。
【請求項2】
比表面積が5〜300m/gである請求項1に記載の導電性粉末。
【請求項3】
前記芯材の材質が、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミナ又は二酸化珪素であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性粉末。

【公開番号】特開2011−142097(P2011−142097A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32724(P2011−32724)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2003−342654(P2003−342654)の分割
【原出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】