説明

導電性被膜付き基材の製造方法および導電性被膜付き基材

【課題】本発明は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を得ることができる導電性被膜付き基材の製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に導電性被膜を有する導電性被膜付き基材の製造方法であって、プライマー組成物を基材上に塗布し、乾燥させてプライマー被膜を形成するプライマー被膜形成工程と、酸化銀と脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物を前記プライマー被膜上に塗布し、加熱することにより硬化させて、導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程とを有する導電性被膜付き基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性被膜付き基材の製造方法および導電性被膜付き基材に関する。
【0002】
従来、ポリエステルフィルム等の合成樹脂基材上に、銀ペースト等の導電性組成物を、スクリーン印刷等の印刷法によって、所定の回路パターンとなるように印刷し、これらを加熱して導体回路をなす導電性被膜を形成し、回路基板を製造する方法が知られている。上記製造方法において、基材と導電性被膜との密着性を得るために、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂等からなるバインダを配合した導電性組成物を用いる方法が一般的である(例えば、特許文献1〜5参照。)。
しかしながら、特許文献1〜5に記載された方法は、基材密着性を上げるために比較的多量のバインダを含有するため、得られる導電性被膜の電気抵抗が高くなるという問題がある。
【0003】
一方、本発明者らは、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を得ることができる導電性被膜付き基材の製造方法として、「導電性組成物を基材上に塗布し、硬化させて、多孔質の導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程と、前記導電性被膜上に接着剤を塗布して前記基材と前記導電性被膜とを接着させて、導電性被膜付き基材を得る接着工程とを具備する導電性被膜付き基材の製造方法。」を提案した(特許文献6参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−88027号公報
【特許文献2】特開昭63−86205号公報
【特許文献3】特開昭60−15474号公報
【特許文献4】国際公開第03/085052号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/051562号パンフレット
【特許文献6】特開2007−317482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献6に記載された導電性被膜付き基材の製造方法は、基材と導電性被膜との密着性を更に向上させる余地があった。特に、特許文献6に記載された方法のように導電性被膜の上から接着剤を塗布する方法では、導電性被膜の電気抵抗をより低くするために導電性被膜の空隙率を小さくすると、導電性被膜上に塗布した接着剤が基材と導電性被膜との界面にまで浸透しなくなり、十分な密着性が得られない。
【0006】
そこで、本発明は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を得ることができる導電性被膜付き基材の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、プライマー組成物を基材上に塗布し、乾燥させてプライマー被膜を形成した後、酸化銀と脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物をプライマー被膜上に塗布し、加熱することにより硬化させて、導電性被膜を形成することにより、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記(1)〜(13)を提供する。
【0009】
(1)基材上に導電性被膜を有する導電性被膜付き基材の製造方法であって、
プライマー組成物を基材上に塗布し、乾燥させてプライマー被膜を形成するプライマー被膜形成工程と、
酸化銀と脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物を前記プライマー被膜上に塗布し、加熱することにより硬化させて、導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程とを有する導電性被膜付き基材の製造方法。
【0010】
(2)前記脂肪酸銀塩が、第二級脂肪酸銀塩および/またはヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩を含む上記(1)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0011】
(3)前記脂肪酸銀塩が、第二級脂肪酸銀塩およびヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩を含む上記(2)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0012】
(4)前記第二級脂肪酸銀塩が、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸を用いて得られる第二級脂肪酸銀塩である上記(2)または(3)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0013】
(5)前記第二級脂肪酸銀塩が2−メチルプロパン酸銀塩であり、前記ヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩が2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸銀塩およびヒドロキシピバリン酸銀塩からなる群から選択される少なくとも1種である上記(2)〜(4)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0014】
(6)前記導電性組成物が、酸化銀(A)と、ヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)と、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸を用いて得られる第二級脂肪酸銀塩(C)と、を含有する導電性組成物である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0015】
(7)前記導電性組成物は、硬化後の空隙率が1〜30%である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0016】
(8)前記プライマー組成物が、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを含有する上記(1)〜(7)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0017】
(9)前記ポリオール化合物が、ポリエステルポリオールである上記(8)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0018】
(10)前記プライマー組成物が、更に、着色剤を含有する上記(1)〜(9)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0019】
(11)前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートまたはポリイミドから形成される基材である上記(1)〜(10)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0020】
(12)前記導電性被膜形成工程において、前記導電性組成物を加熱する際に、前記プライマー被膜の少なくとも一部を溶融させて前記導電性被膜内に浸透させて一体化する、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【0021】
(13)上記(1)〜(12)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法により得られる導電性被膜付き基材。
【発明の効果】
【0022】
本発明の導電性被膜付き基材の製造方法によれば、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を得ることができる。
また、本発明の導電性被膜付き基材は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の導電性被膜付き基材の製造方法(以下「本発明の製造方法」という。)は、基材上に導電性被膜を有する導電性被膜付き基材の製造方法であって、プライマー組成物を基材上に塗布し、乾燥させてプライマー被膜を形成するプライマー被膜形成工程と、酸化銀と脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物を上記プライマー被膜上に塗布し、加熱することにより硬化させて、導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程とを有する導電性被膜付き基材の製造方法である。
【0024】
以下、プライマー被膜形成工程について説明する。
プライマー被膜形成工程は、プライマー組成物を基材上に塗布し、乾燥させてプライマー被膜を形成する工程である。
上記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等のフィルム;銅板、銅箔、ガラス、エポキシ等の基板等が挙げられる。
上記基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリイミドから形成される基材が、柔軟性に優れる点から好ましい。
【0025】
上記プライマー組成物は、特に限定されず、使用する基材の種類等に応じて適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、ウレタン系、アクリル系等のプライマー組成物が挙げられる。中でも、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを含有するプライマー組成物が、接着性に優れ、短時間で硬化できる点から好ましい。一般に、プライマー組成物としては1液型のプライマー組成物が用いられているが、2液型のプライマー組成物が短時間で硬化でき、製造効率を高められる点から好ましい。
【0026】
上記ポリイソシアネート化合物としては、公知のウレタン系プライマー組成物に使用されるものであれば特に限定されない。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のTDI;ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等のMDI;テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ノルボルナン骨格を有するジイソシアネート(NBDI)、および、これらの変成品等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物が、基材密着性に優れるという点から好ましい。
【0027】
上記ポリオール化合物としては、具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール;アジペート系ポリオール;ラクトン系ポリオール;ヒマシ油等のポリエステル系ポリオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリエステルポリオールが、PETフィルム、PENフィルムおよびポリイミドフィルムに対する密着性に特に優れる点から好ましい。
上記ポリオール化合物は、重量平均分子量が500〜10000であるのが好ましく、2000〜6000であるのがより好ましい。
【0028】
上記プライマー組成物において、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを混合する割合は、ポリオール化合物のヒドロキシ基の数に対するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の数の比(NCO/OH)が、0.5〜1.5であるのが好ましく、0.8〜1.2であるのがより好ましい。
【0029】
上記プライマー組成物は、必要に応じて、溶剤、充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0030】
上記プライマー組成物は、上述した各成分の他に、着色剤を含有するのが、例えば反射を嫌うような用途において金属銀のつや消しという点から好ましい態様の1つである。
着色剤としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等のインキに用いられる通常の無機および有機顔料、染料が使用できる。具体的には、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、磁性酸化鉄、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔料、キナクリドン顔料、縮合多環顔料等が挙げられる。
着色剤の含有量は、プライマー組成物の固形分100質量部に対して、1〜100質量部であるのが好ましく、5〜50質量部であるのがより好ましい。
【0031】
上述したプライマー組成物の基材への塗布は、後述する導電性被膜形成工程において形成される導電性被膜の下にプライマー被膜が形成されるように塗布すればよく、基材の表面全体に塗布してもよい。
プライマー組成物の塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
【0032】
プライマー組成物の乾燥は、室温にて乾燥してもよいが、加熱して乾燥することが乾燥時間を短縮できる点から好ましい。
加熱温度および加熱時間は、使用する基材やプライマー組成物の種類に応じて適宜選択すればよい。加熱温度としては、例えば、60〜160℃であるのが好ましく、80〜120℃であるのがより好ましい。
【0033】
得られるプライマー塗膜の融点は、特に限定されないが、後述するように導電性組成物を加熱処理する際に溶融する温度であることが好ましい。例えば、100〜200℃であるのが好ましく、120〜160℃であるのがより好ましい。
【0034】
次に、導電性被膜形成工程について説明する。
導電性被膜形成工程は、酸化銀と脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物を、プライマー被膜形成工程で形成されたプライマー被膜上に塗布し、加熱することにより硬化させて、導電性被膜を形成する工程である。
【0035】
上記導電性組成物は、酸化銀と脂肪酸銀塩とを含有するものであれば特に限定されないが、例えば、特開2007−317535号公報、特開2007−280881号公報や、本願出願人による特願2007−258943号明細書、特願2007−315493号明細書に記載された導電性組成物が挙げられる。
【0036】
上記導電性組成物に用いられる酸化銀は、酸化銀(I)、即ち、Ag2Oである。
本発明においては、酸化銀の形状は特に限定されないが、粒子径が10μm以下の粒子状であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましい。粒子径がこの範囲であると、より低温で自己還元反応が生ずるので、結果的により低温で導電性被膜を形成できる。
【0037】
上記導電性組成物に用いられる脂肪酸銀塩は、第二級脂肪酸銀塩および/またはヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩を含んでいるのが好ましい。
また、上記脂肪酸銀塩は、第二級脂肪酸銀塩およびヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩を含むのが、基材との密着性を維持しつつ、電気抵抗をより低くできる点から好ましい態様の1つである。
【0038】
上記第二級脂肪酸銀塩は、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸を用いて得られる第二級脂肪酸銀塩(即ち、後述する第二級脂肪酸銀塩(C))であるのが好ましい。
上記ヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩は、後述する脂肪酸銀塩(B)と同様である。
【0039】
本発明に用いられる導電性組成物としては、特願2007−315493号明細書に記載された導電性組成物、即ち、酸化銀(A)と、ヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)と、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸を用いて得られる第二級脂肪酸銀塩(C)と、を含有する導電性組成物が、低温かつ短時間で硬化でき、基材との密着性を維持しつつ、電気抵抗をより低くできる点から好適に挙げられる。
【0040】
酸化銀(A)は、上述したものと同様である。
【0041】
脂肪酸銀塩(B)は、ヒドロキシ基を1個以上、好ましくは2個以上有する脂肪酸銀塩であり、具体的には、以下に示すヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものである。
【0042】
上記反応に用いられる脂肪酸は、ヒドロキシ基を1個以上、好ましくは2個以上有する脂肪酸であれば特に限定されず、例えば、下記式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化1】

【0044】
式(1)中、nは1または2の整数を表し、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nが1である場合、複数のR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nが2である場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(2)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(3)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
上記式(1)〜(3)中、R1の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。R1としては、水素原子、メチル基、エチル基であるのが好ましい。
また、上記式(1)中、R2の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基が挙げられる。R2としては、メチレン基、エチレン基であるのが好ましい。
また、上記式(3)中、R3の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基が挙げられる。R2としては、メチレン基、エチレン基であるのが好ましい。
【0046】
上記式(1)で表される化合物としては、具体的には、例えば、下記式(1a)で表される2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸、下記式(1b)で表される2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、下記式(1c)で表されるヒドロキシピバリン酸、下記式(1d)で表されるβ−ヒドロキシイソ酪酸等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
【化2】

【0048】
上記式(2)で表される化合物としては、具体的には、例えば、下記式(2a)で表される2−ヒドロキシ−2−メチル−n−酪酸、下記式(2b)で表される2−ヒドロキシイソ酪酸、下記式(2c)で表されるグリコール酸、下記式(2d)で表されるDL−2−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
【化3】

【0050】
上記式(3)で表される化合物としては、具体的には、例えば、下記式(3a)で表されるDL−3−ヒドロキシ酪酸、下記式(3b)で表されるβ−ヒドロキシイソ吉草酸等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。
【0051】
【化4】

【0052】
これらのうち、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸およびヒドロキシピバリン酸からなる群から選択される少なくとも一種であるのが、得られる脂肪酸銀塩(B)である2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸銀塩およびヒドロキシピバリン酸銀塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する上記導電性組成物を用いて形成される導電性被膜の形成がより低温かつ短時間で可能となる理由から好ましい。
【0053】
一方、上記反応に用いられる酸化銀は、上記導電性組成物で用いる酸化銀(A)と同様、酸化銀(I)、即ち、Ag2Oである。
【0054】
上記導電性組成物で用いる脂肪酸銀塩(B)は、上述したヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られ、以下に示す反応式中の下記式(I)〜(III)で表される化合物であるのが好ましい。
この反応は、例えば、上記式(1)〜(3)で表される化合物を用いた場合は以下に示す反応式で表される反応が進行するものであれば特に限定されないが、上記酸化銀を粉砕しつつ進行させる方法や、上記酸化銀を粉砕した後に上記脂肪酸を反応させる方法が好ましい。前者の方法としては、具体的には、上記酸化銀と、溶剤により上記脂肪酸を溶液化したものとを、ボールミル等により混練し、固体である上記酸化銀を粉砕させながら、室温で、1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間反応させるのが好ましい。
【0055】
【化5】

【0056】
式(I)中、nは1または2の整数を表し、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nが1である場合、複数のR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nが2である場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(II)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(III)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
上記脂肪酸を溶液化する溶媒としては、具体的には、例えば、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール等が挙げれ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
中でも、イソホロンおよび/またはα−テルピネオールを溶媒として用いるのが、上記反応により得られる脂肪酸銀塩(B)を含有する上記導電性組成物のチクソ性が良好となる。
【0058】
このような脂肪酸銀塩(B)を用いた場合、低温かつ短時間で比抵抗の小さい導電性被膜を形成することができ、耐熱性の低い基材にも良好に導電性被膜を形成することができる。
具体的には、160℃程度の温度で1分程度で、比抵抗が10×10-6Ω・cm以下の導電性被膜を形成することができる。ここで、本明細書においては、比抵抗は、160℃で1分間乾燥させた導電性被膜について、低抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製)を用いた4端子4探針法により比抵抗(体積固有抵抗値)を測定した値である。
これは、脂肪酸銀塩(B)が有する分子内のヒドロキシ基の存在により、熱処理による銀への分解(還元)が非常に促進されるためであると考えられる。また、熱重量測定(TGA)の結果からも、ヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩よりも還元されやすいことが明らかとなっている。
【0059】
上記第二級脂肪酸銀塩(C)は、以下に示す沸点が200℃以下の第二級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものである。
【0060】
第二級脂肪酸銀塩(C)の反応に用いられる第二級脂肪酸は、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸であれば特に限定されず、その具体例としては、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
【化6】

【0062】
式中、R4は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0063】
上記式(4)中、R4の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。R4としては、メチル基、エチル基であるのが好ましい。
また、上記式(4)中、R5の炭素数1〜10のアルキル基としては、上記R4の炭素数1〜6のアルキル基以外に、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。R5としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基であるのが好ましい。
【0064】
本発明においては、上記式(4)で表されるカルボン酸しては、具体的には、例えば、2−メチルプロパン酸(別名:イソ酪酸)、2−メチルブタン酸(別名:2−メチル酪酸)、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルブタン酸;等が挙げられる。
これらのうち、2−メチルプロパン酸、2−メチルブタン酸であるのが、得られる第二級脂肪酸銀塩(C)である2−メチルプロパン酸銀塩、2−メチルブタン酸銀塩を含有する上記導電性組成物を用いて形成される導電性被膜の形成がより低温かつ短時間で可能となる理由から好ましい。
【0065】
一方、上記第二級脂肪酸銀塩(C)の反応に用いられる酸化銀は、上記導電性組成物で用いる酸化銀(A)と同様、酸化銀(I)、即ち、Ag2Oである。
【0066】
上記導電性組成物で用いる第二級脂肪酸銀塩(C)は、上述した沸点が200℃以下の第二級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られ、以下に示す反応式中の下記式(IV)で表される化合物であるのが好ましい。
この反応は、例えば、上記式(4)で表される化合物を用いた場合は以下に示す反応式で表される反応が進行するものであれば特に限定されないが、上記酸化銀を粉砕しつつ進行させる方法や上記酸化銀を粉砕した後に上記第二級脂肪酸を反応させる方法が好ましい。前者の方法としては、具体的には、上記酸化銀と、溶剤により上記第二級脂肪酸を溶液化したものとを、ボールミル等により混練し、固体である上記酸化銀を粉砕させながら、室温で、1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間反応させるのが好ましい。
【0067】
【化7】

【0068】
式(IV)中、R4は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0069】
上記第二級脂肪酸を溶液化する溶媒としては、具体的には、例えば、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール等が挙げれ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
中でも、イソホロンおよび/またはα−テルピネオールを溶媒として用いるのが、上記反応により得られる第二級脂肪酸銀塩(C)を含有する上記導電性組成物のチクソ性が良好となる。
【0070】
このような第二級脂肪酸銀塩(C)を用いた場合、低温かつ短時間で比抵抗の小さい導電性被膜を形成することができ、耐熱性の低い基材にも良好に導電性被膜を形成することができる。
具体的には、160℃程度の温度で1分程度で、比抵抗が10×10-6Ω・cm以下の導電性被膜を形成することができる。
これは、第二級脂肪酸銀塩(C)が熱処理により銀に分解されやすく、かつ、分解により生じる第二級脂肪酸またはその分解物が揮発されやすいためであると考えられる。また、熱重量測定(TGA)の結果からも、ヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩よりも還元されやすいことが明らかとなっている。
【0071】
上記導電性組成物は、上述した酸化銀(A)、脂肪酸銀塩(B)および第二級脂肪酸銀塩(C)を含有する組成物であるが、上記脂肪酸銀塩(B)のモル数Bと、上記第二級脂肪酸銀塩(C)のモル数Cとのモル比(B/C)が、1/1〜15/1であるのが好ましく、3/1〜15/1であるのがより好ましい。モル比がこの範囲であると、得られる導電性組成物を用いて形成した導電性被膜の比抵抗がより低くなるため好ましい。
また、同様の理由から、上記酸化銀(A)のモル数Aと、上記脂肪酸銀塩(B)のモル数Bおよび第二級脂肪酸銀塩(C)のモル数Cの合計とのモル比(A/B+C)が、2/1〜25/1であるのが好ましく、2/1〜15/1であるのがより好ましい。
【0072】
上記導電性組成物は、必要に応じて、金属粉、還元剤等の添加剤を含有していてもよい。
上記金属粉としては、具体的には、例えば、銅、銀、アルミニウム等が挙げられ、中でも、銅、銀であるのが好ましい。また、0.01〜10μmの粒径の金属粉であるのが好ましい。
上記還元剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール類等が挙げられる。
また、上記導電性組成物は、接着性を向上させる観点から、上記脂肪酸銀塩(B)および上記第二級脂肪酸銀塩(C)以外に、ネオデカン酸銀塩等のその他の脂肪酸銀塩を上記脂肪酸銀塩(B)および上記第二級脂肪酸銀塩(C)よりも少ないモル数で含有していてもよい。
【0073】
上述した導電性組成物の製造方法は特に限定されず、上記酸化銀および上記脂肪酸銀塩ならびに所望により含有していてもよい添加剤を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合する方法が挙げられる。
また、上述したように、上記脂肪酸銀塩(B)および上記第二級脂肪酸銀塩(C)の反応に用いられる酸化銀は上記酸化銀(A)と同様であるため、上記導電性組成物の製造方法は、予め合成した上記脂肪酸銀塩(B)および上記第二級脂肪酸銀塩(C)と上記酸化銀(A)とを混合する方法以外に、過剰量の上記酸化銀(A)と上記脂肪酸銀塩(B)の生成に用いられるヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸および上記第二級脂肪酸銀塩(C)の生成に用いられる200℃以下の第二級脂肪酸とを混合し、混合中に上記脂肪酸銀塩(B)および上記第二級脂肪酸銀塩(C)を合成する方法であってもよい。
【0074】
上記導電性組成物は、必要に応じて上記で例示したα−テルピネオール等の溶剤を用いて溶液化された後、以下に例示する塗布方法により基材上に塗布され、硬化されて、多孔質の導電性被膜を形成する。
塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
【0075】
上記導電性被膜形成工程において、プライマー被膜上に形成された導電性組成物の塗膜を熱処理することにより、上記脂肪酸銀塩が銀に分解され、分解により生じた脂肪酸またはその分解物が揮発する一方で、分解により生じた一部の脂肪酸と上記酸化銀とが反応し、再び脂肪酸銀塩を生成し、それが還元(銀と脂肪酸への分解)されるサイクルを繰り返すことにより導電性被膜(銀膜)が形成される。
導電性組成物の塗膜を熱処理する際の温度および加熱時間は、使用する基材や導電性組成物の種類等に応じて適宜選択すればよい。導電性組成物の塗膜を熱処理する際の温度は、100〜200℃が好ましく、120〜180℃がより好ましく、140〜160℃が更に好ましい。熱処理の温度がこの範囲であると、耐熱性の低い基材にも導電性被膜を形成することができる。
【0076】
導電性被膜形成工程においては、導電性組成物を加熱する際に、プライマー被膜の少なくとも一部を溶融させて導電性被膜内に浸透させて一体化するのが導電性被膜と基材との密着性がより高くなる点から好ましい。以下、図を用いて本発明の製造方法の好適な態様の一例について説明する。
【0077】
図1は、本発明の製造方法の一例の概念図である。図1に示すように、まず、上記プライマー組成物を基材2の上に塗布し、乾燥させてプライマー被膜4を形成する。次に、プライマー被膜4の上に上記導電性組成物5を塗布し、加熱処理を行うことにより、導電性被膜6を形成すると共に、プライマー被膜4を溶融させて、導電性被膜6の内部に浸透させて一体化させて、導電性被膜付き基材1を得る。このように製造された導電性被膜付き基材1は、基材との密着性に優れる上、従来技術のバインダを含む導電性組成物を用いる方法に比べて電気抵抗を低くすることができる。
【0078】
上記導電性組成物は、硬化後の空隙率が、1〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましく、5〜15%であることが更に好ましい。この範囲であれば、導電性被膜の電気抵抗を低くでき、溶融したプライマー塗膜が導電性被膜の内部に浸透しやすくなるため、導電性被膜と基材との密着性にも優れる。
なお、本明細書において導電性被膜の空隙率は、SEMを用い、表・断面の画像から画像処理を行い、パソコン上で計算を行うことで、空隙分散率を算出して求められる値である。
【0079】
本発明の製造方法は、上記導電性被膜形成工程の後に、更に、導電性皮膜上にコーティング剤を塗布してコーティング膜を形成する工程を有するのが好ましい。
本発明の導電性被膜付き基材が、導電性被膜の表面にコーティング膜を有する場合、導電性被膜の酸化や物理的な損傷を防止できる。
【0080】
上述した本発明の導電性被膜付き基材によれば、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を製造することができる。
本発明の導電性被膜付き基材は、例えば、電子回路、アンテナ等の回路の作製に好適に用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.導電性組成物の調製
(配合例1−1)
酸化銀(I)100g、イソ酪酸銀5gおよびテルピネオール40gをボールミルで24時間粉砕、反応させて導電性組成物を得た。
【0082】
(配合例1−2)
ボールミルに、酸化銀(I)100g、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩10.0gおよび2−メチルプロパン酸銀塩(イソ酪酸銀塩)3.0g、α−テルピネオール33g、ステアリン酸0.15gおよびラウリン酸0.15gを下記表1中に示すグラム数で添加し、これらを混合することにより導電性組成物を調製した。
なお、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩は、脂肪酸である2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸と酸化銀との反応により得られるものである。2−メチルプロパン酸銀塩は、沸点が177℃の第二級脂肪酸銀塩である。
【0083】
2.導電性被膜付き基材の製造
(実施例1)
下記第1表に示す各基材上にプライマー組成物(8600オーバーコートクリヤーNA、セイコーアドバンス社製、以下同じ)を塗布し、オーブンにて80℃で30分間乾燥させてプライマー被膜を形成した。このプライマー被膜の上に、配合例1−1の導電性組成物を塗布し、オーブンにて180℃で3分間加熱して硬化させて、導電性被膜を形成し、導電性被膜付き基材を得た。
得られた導電性被膜付き基材の導電性被膜の比抵抗を抵抗率計により測定し、また、下記の方法により各導電性被膜付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
【0084】
(密着性評価)
密着性の評価は、碁盤目テープはく離試験により行った。
各試料の導電性被膜に1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を付着させ、直ちにテープの一端を直角に保ち、瞬間的に引き離し、剥がれないで残った基盤目の個数を調べた。
【0085】
(実施例2)
導電性組成物として、配合例(1−2)の導電性組成物を用いた点以外は、実施例1と同様に、導電性被膜付き基材を作製し、各導電性被膜の体積抵抗率を測定し、各導電性被膜付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
【0086】
(比較例1)
下記第1表に示す各基材上に、配合例1−1の導電性組成物を塗布し、オーブンにて180℃で3分間加熱して硬化させて、導電性被膜を形成し、導電性被膜付き基材を得た。
実施例1と同様に、各導電性被膜の体積抵抗率を測定し、各導電性被膜付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
【0087】
(比較例2)
下記第1表に示す各基材上に配合例1−1の導電性組成物を塗布した後、オーブン内にて180℃で3分間加熱して硬化させて、導電性被膜を形成した。次に、導電性被膜の上に、ウレタン−エポキシ系接着剤(Y−coat242R、横浜ゴム社製)を塗布し、導電性被膜とフィルムとを接着させて、導電性被膜付き基材を得た。
実施例1と同様に、各導電性被膜の体積抵抗率を測定し、各導電性被膜付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
【0088】
(比較例3)
導電性組成物として、バインダを含有する市販の銀ペースト(FA−353N、藤倉化成社製)を用いた点以外は、実施例1と同様に、導電性被膜付き基材を作製し、各導電性被膜の体積抵抗率を測定し、各導電性被膜付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
第1表に示す各基材は下記のとおりである。
・PETフィルム:ルミラーS56、東レ社製、厚さ100μm
・PENフィルム:テオネックス081、帝人デュポンフィルム社製、厚さ100μm
・ポリイミドフィルム:カプトン、東レ・デュポン社製、厚さ50μm
【0091】
第1表に示す結果から明らかなように、実施例1および2は比抵抗が低く、密着性に優れていた。一方、プライマー組成物を用いない比較例1は密着性が低かった。また、プライマー組成物を用いず、導電性被膜の上から接着剤を塗布した比較例2も密着性が十分ではなかった。バインダを含有する導電性組成物を用いた比較例3は比抵抗が高かった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の製造方法の一例の概念図である。
【符号の説明】
【0093】
1 本発明の導電性被膜付き基材
2 基材
4 プライマー被膜
5 導電性組成物
6 導電性被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導電性被膜を有する導電性被膜付き基材の製造方法であって、
プライマー組成物を基材上に塗布し、乾燥させてプライマー被膜を形成するプライマー被膜形成工程と、
酸化銀と脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物を前記プライマー被膜上に塗布し、加熱することにより硬化させて、導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程とを有する導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項2】
前記脂肪酸銀塩が、第二級脂肪酸銀塩および/またはヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩を含む請求項1に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項3】
前記脂肪酸銀塩が、第二級脂肪酸銀塩およびヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩を含む請求項2に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項4】
前記第二級脂肪酸銀塩が、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸を用いて得られる第二級脂肪酸銀塩である請求項2または3に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項5】
前記第二級脂肪酸銀塩が2−メチルプロパン酸銀塩であり、前記ヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩が2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸銀塩およびヒドロキシピバリン酸銀塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2〜4のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項6】
前記導電性組成物が、酸化銀(A)と、ヒドロキシ基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)と、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸を用いて得られる第二級脂肪酸銀塩(C)と、を含有する導電性組成物である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項7】
前記導電性組成物は、硬化後の空隙率が1〜30%である請求項1〜6のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項8】
前記プライマー組成物が、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを含有する請求項1〜7のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項9】
前記ポリオール化合物が、ポリエステルポリオールである請求項8に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項10】
前記プライマー組成物が、更に、着色剤を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項11】
前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートまたはポリイミドから形成される基材である請求項1〜10のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項12】
前記導電性被膜形成工程において、前記導電性組成物を加熱する際に、前記プライマー被膜の少なくとも一部を溶融させて前記導電性被膜内に浸透させて一体化する、請求項1〜11のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法により得られる導電性被膜付き基材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−252494(P2009−252494A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98136(P2008−98136)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】