説明

導電性調合物

【課題】導電性調合物を提供する。
【解決手段】本発明は、有機半導体(OSC:organic semiconductor)および導電性添加剤を含む新規な調合物と、有機電子(OE:organic electronic)装置、特に、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)セルを調製するための導電性インクとしてのそれらの使用と、該新規な調合物を使用してOE装置を調製する方法と、そのような方法および調合物より調製されるOE装置およびOPVセルとに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体(OSC:organic semiconductor)および導電性添加剤を含む新規な調合物と、有機電子(OE:organic electronic)装置、特に、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)セルを調製するための導電性インクとしてのそれらの使用と、該新規な調合物を使用してOE装置を調製する方法と、そのような方法および調合物より調製されるOE装置およびOPVセルとに関する。
【背景技術】
【0002】
OFETまたはOPVセルなどのOE装置、特に、フレキシブル装置を調製する際、通常、インクジェット印刷、ロール・トゥ・ロール印刷、スロットダイ被覆またはグラビア印刷などの印刷技術を使用して、OSC層を塗工する。グラビア印刷などの接触印刷技術は、高速で運転される。しかしながら、OSCインクまたは流体によりプラスチック基板を高速被覆すると、流体が導電性でない場合、静電荷の増加に至ることがある。これよりアークによる静電放電に至ることがあり、溶媒が可燃性の場合、結果として火災または爆発することがある。この危険性は、ティンセルおよび除静電気棒を使用するなどの工学的な解決策によって低減できる。しかしながら、非導電性で可燃性の流体を塗工または印刷ヘッドに高速ポンプ送液しても、静電放電に至る場合がある。
【0003】
静電荷の増加を低減または避けるもう一つの可能性は、導電性溶媒を使用することである。次いで、プリンター上の導電性表面との接触を介して、害を及ぼすことなく静電荷をアースに消散する。結果として静電荷は蓄積せず、アークは発生しない。しかしながら、これにより、OSC流体用の溶媒の可能な選択が著しく制限されることがある。例えば、印刷バルクヘテロ接合ポリマー太陽電池用のOSC流体用のポリチオフェン−フラーレン複合材の溶解性が限られているため、o−キシレンなどの溶媒を使用する必要がある[Waldaufら、Appl.Phys.Lett.89巻、233517頁(2006年)(非特許文献1)参照]。しかしながら、この溶媒は事実上、非導電性であり、従って、静電荷による上述の問題が示唆されるであろう。
【0004】
本発明の発明者らは、印刷または被覆操作の安全性を確実とするために、半導体流体に導電性向上添加剤を含ませることが可能なことを見出した。結果として得られる流体の導電率は、2×10−6〜1×10−8ジーメンス/メートル(S/m)のオーダーでなければならない。添加剤の濃度は、可能な限り低くなければならない。添加剤は、装置の性能および寿命に悪影響を及ぼしてはならない。
【0005】
先行技術において、導電性添加剤をOSC材料に添加することは半導体の導電性を増加させる手法として記載されている。しかしながら、芳香族炭化水素溶媒中においてポリ(3−ヘキシルチオフェン)などの標準的なOSC材料を含む流体を使用する場合、ポリマーを永続的にドープ(例えば、ヨウ素または他の酸化剤によって)することなく必要とされる導電性を達成することは、これまで不可能であった。しかしながら、本発明の使用のためには、OSC装置の性能低下に至るため、永続的なドーピングは望ましくない。
【0006】
例えば、米国特許出願公開第2006/0175582号公報(特許文献1)には、エレクトロルミネセント装置用の正孔注入層(HIL:hole injection layer)または正孔輸送層(HTL:hole transport layer)を調製するための組成物が開示されている。例えば、該組成物は、例えば、ポリ(3−置換チオフェン)などの共役ポリマー、溶媒および酸化剤を含む。酸化剤は、ポリマーの導電性を増加するためポリマーを永続的にドープするために使用される。従って、米国特許出願公開第2006/0175582号公報(特許文献1)には、好ましくは高濃度において高酸化添加剤および/または加工後にポリマー中に残存する添加剤より選択される酸化剤を使用することが示唆されている。しかしながら、これは、まさしく、本発明において使用される材料および方法により避けられるべき効果である。
【0007】
欧州特許出願公開第0 822 236号公報(特許文献2)には、フィルムを形成するポリマーマトリクス、前記マトリクス中に分散された本質的に導電性のポリマーおよび前記組成物における導電性を制御する材料を含む組成物が開示されており、該材料は、アミン類、アンモニア、有機ヒドロキシル化合物、エポキシド類、エトキシレートおよびプロポキシレート化合物、アクリレート類、メタクリレート類、pHが約7より大きい界面活性剤およびそれらの混合物から成る群より選択される。これらの材料は、堆積フィルムまたは導電性ポリマー被覆の導電性を増加するために使用され、フィルムの形成後にポリマーブレンドに添加することもできる。再度、これは、本発明において使用される材料および方法により避けられるべき事項である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0175582号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 822 236号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Waldaufら、Appl.Phys.Lett.89巻、233517頁(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、OE装置、特にOPVセルの調製に適するOSCを含む流体を入手することが望まれ、それにより可能な溶媒をより広く選択でき、上で述べた通りの静電荷の問題に至ることなく、OSCの永続的なドーピングに至ることなく、そうでなくとも、装置の性能および寿命に悪影響を及ぼさない。本発明の1つの目的は、そのような改良された流体を提供することである。もう一つの目的は、そのような流体よりOE装置を調製する改良された方法を提供することである。もう一つの目的は、そのような流体および方法より入手される改良されたOE装置を提供することである。更なる目的は、以下の記載より当業者には直ちに明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、本発明において特許請求される通りの方法、材料および装置を提供することにより、特に、非導電性溶媒を基礎とする低導電性インクを使用してOE装置を調製する方法を提供することにより、これらの目的を達成でき、上述の問題を解決できることを見出した。特に、本発明の発明者らは、OE装置上にOSCを堆積するために使用される印刷工程において静電荷の増加を避けるには十分高いが、また、OE装置の性能における著しい負の影響を避けるには十分低い低導電性のインクを提供可能であることを見出した。これは、OSC材料および非導電性有機溶媒、好ましくは、芳香族溶媒を含み、および、少量の1種類以上の導電性向上剤、即ち、調合物の導電性を増加させる添加剤(以降、短く「導電性添加剤」とも言う)を更に含むインクを提供することによって達成される。使用される導電性添加剤は、装置上にOSC層を堆積後に溶媒と共に蒸発し、よってOSC層中に残存しないように揮発性である。あるいは、使用される導電性添加剤は、OSC材料に対して酸化効果を有していないかの何れかである。結果として、OSCが導電性と成り過ぎ、そのため、所望のOE装置の特性に悪影響を与える可能があるOSC材料の永続的な電気的ドーピングが避けられる。
【0012】
本発明は、1種類以上の有機半導体(OSC:organic semiconducting)化合物と、1種類以上の有機溶媒と、調合物の導電性を増加する1種類以上の添加剤(導電性添加剤)とを含む調合物に関し、ただし、前記導電性添加剤は揮発性であるか、および/またはOSC化合物と化学的に反応できないか、および/または0.5重量%未満の総濃度で存在している。
【0013】
本発明は、更に、特にOEデバイスの調製用の、特にはフレキシブル有機光起電(OPV:organic photovoltaic)セルおよび装置用の被覆または印刷インクとしての上および下に記載される通りの調合物の使用に関する。
【0014】
本発明は、更に、
a)上および下に記載される通りの調合物を基板上に堆積して、好ましくはフィルムまたは層を形成する工程と、
b)溶媒(1種類または多種類)および揮発性またはOSC化合物と化学的に反応できる任意の導電性添加剤を、例えば、蒸発により除去する工程と
を含む有機電子(OE:organic electronic)装置の調製方法に関する。
【0015】
本発明は、更に、調合物よりおよび/または上および下に記載される通りの方法により調製されるOE装置に関する。
【0016】
OE装置としては、限定することなく、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、集積回路(IC:integrated circuit)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)、無線識別(RFID:Radio Frequency Identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、有機発光トランジスタ(OLET:organic light emitting transistor)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)セル、有機太陽電池(O−SC:organic solar cell)、フレキシブルOPVおよびO−SC、有機レーザーダイオード(O−レーザー:organic laser)、有機集積回路(O−IC:organic integrated circuit)、照明装置、センサー装置、電極材料、光導電体、光検出器、電子写真記録装置、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基板、導電性パターン、光導電体、電子写真装置、有機記憶装置、バイオセンサーおよびバイオチップが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態によるOPV装置を示す。
【図2】本発明の第2の好ましい実施形態によるOPV装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1種類以上のOSC化合物から成るOSC材料の永続的なドーピングを避けるために、導電性添加剤を揮発性であるか、および/またはOSC化合物と化学的に反応できない化合物から成る群より選択する。特に、それらは、OSC材料に対して永続的なドーピング効果(例えば酸化によるか、その他OSC材料との化学的反応による)を有していない化合物より、または揮発性化合物より、または両者より選択される。従って、調合物は、好ましくは、イオン性生成物を形成することによってOSC材料と反応する添加剤、例えば、酸化剤またはプロトンまたはルイス酸などを含有してはならない。また、調合物は、好ましくは、揮発性でなく加工後に固体のOSC材料より除去できない添加剤を含有してはならない。カルボン酸などのようなOSC材料を電気的にドープすることがある添加剤を使用する場合、OSCフィルムの堆積後にOSCフィルムより添加剤を除去できるように、好ましくは、添加剤を揮発性化合物より選択しなければならない。
【0019】
また、例えば、酸化剤、ルイス酸、プロトン性無機酸または不揮発性プロトン性カルボン酸などの導電性添加剤を調合物に加えることも容認できる。しかしながら、調合物におけるこれらの添加剤の総濃度は、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0.01重量%未満でなければならない。しかしながら、好ましくは、調合物は、この群より選択されるドーパントを含有しない。
【0020】
よって、好ましくは、導電性添加剤がOSCを永続的にドープしないか、および/または、加工後(ただし、加工とは、例えば、基板上にOSC材料を堆積するか、または、それの層またはフィルムを形成することを意味する。)にOSC材料より導電性添加剤を除去するか、および/または、例えば永続的なドーピングにより引き起こされるOSC特性に対する著しい影響を避けるのに十分低い濃度において導電性添加剤が存在するように導電性添加剤を選択する。更に好ましくは、OSC材料またはそれを含むフィルムまたは層に導電性添加剤は化学的に結合しない。
【0021】
好ましい導電性添加剤は、OSC材料を酸化しない化合物、または、その他の、OSC材料と化学的に反応しない化合物から成る群より選択される。上および下で使用する際、用語「酸化」および「化学的に反応」は、調合物およびOE装置の製造、保管、輸送および/または使用のために使用される条件下におけるOSC材料との導電性添加剤の可能な酸化または他の化学的反応を指す。
【0022】
更に好ましい導電性添加剤は、揮発性化合物から成る群より選択される。上および下で使用する際、用語「揮発性」は、OSC材料を基板またはOE装置上に堆積後、OSC材料またはOE装置に著しい損傷を与えない条件(温度および/または減圧など)において、蒸発によりOSC材料より添加剤を除去できることを意味する。好ましくは、これは、用いられる圧力において、非常に好ましくは大気圧(1013hPa)において、300℃未満、より好ましくは135℃以下、最も好ましくは120℃以下の沸点または昇華温度を添加剤が有することを意味する。また、例えば、熱および/または減圧を適用することで蒸発を加速することもできる。
【0023】
OSC材料を酸化したり、その他の化学的反応をしない適切で好ましい導電性添加剤は、例えば、永久第4級アンモニウムまたはホスホニウム塩、イミダゾリウムおよび他のヘテロ環塩などの可溶性有機塩から成る群より選択され、ただし、アニオンは、例えば、ハライド、サルフェート、アセテート、ホルメート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、メタンスルホネート、トリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドおよび他から成る群より選択され、カチオンは、例えば、テトラアルキルアンモニウム、テトラアリールアンモニウムまたは混合テトラアルキル−アリールアンモニウムイオンから成る群より選択され、ただし、アルキルまたはアリール基は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、更に、ヘテロ環式アンモニウム塩(例えば、イオン性液体)、プロトン化アルキルまたはアリールアンモニウム塩またはジラウリルアンモニウム塩などの他の窒素系塩である。更に好ましい導電性添加剤は、アルカリ金属ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド塩などのアルカリ金属塩または無機塩から成る群より選択される。
【0024】
非常に好ましい有機塩は、例えば、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリデシルアンモニウムベンゼンサルフェート、ジフェニルジドデシルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、N−メチル−N−トリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドまたは、それらの混合物である。
【0025】
揮発性有機塩が更に好ましい。適切で好ましい揮発性有機塩は、例えば、トリメチルアンモニウムアセテート、トリエチルアンモニウムアセテート、ジヘキシルアンモニウムメタンスルホネート、オクチルアンモニウムホルメート、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン)アセテートまたはそれらの混合物または前駆体などのアンモニウムアセテート、ホルミエート、トリフレートまたはメタンスルホネートである。このタイプの好ましい添加剤は、例えば、調合物においてトリブチルアンモニウムトリフルオロアセテートを生成するトリブチルアミンおよびトリフルオロ酢酸の混合物、または、短鎖トリアルキルアミン(好ましくは、沸点が200℃以下、非常に好ましくは135℃以下)および揮発性有機酸(好ましくは、沸点が200℃以下、非常に好ましくは135℃以下、および、酢酸のpKa値以上のpKa値)の混合物である。
【0026】
更に好ましい導電性添加剤は、アルコール類、好ましくは揮発性アルコール類、揮発性カルボン酸および有機アミン類、好ましくは揮発性有機アミン類、非常に好ましくはアルキルアミン類である。
【0027】
適切で好ましいアルコール類または揮発性アルコール類は、例えば、イソプロピルアルコール、イソ−ブタノール(2−ブタノール)、ヘキサノール、メタノールまたはエタノールである。
【0028】
適切で好ましい揮発性カルボン酸は、例えば、(大気圧において)135℃以下、非常に好ましくは120℃以下の沸点を有するものであり、例えば、ギ酸、酢酸、ジ−またはトリフルオロ酢酸などである。プロピオン酸またはより高級酸、ジ−またはトリクロロ酢酸またはメタンスルホン酸などの他のカルボン酸も、それらの濃度がOSC材料の著しいドーピングを避けるのに十分低く選ばれるのであれば容認および使用でき、好ましくは0より高く0.5重量%未満、好ましくは0.25重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満である。
【0029】
適切で好ましい有機アミン類または揮発性有機アミン類はアルキルアミン類であり、例えば、n−ジブチルアミン、エタノールアミンまたはオクチルアミンなどの第1級または第2級アルキルアミン類である。
【0030】
OSC層の堆積後にOSC材料から除去されない導電性添加剤、例えば、上述の通りの可溶性有機塩または不揮発性アルコール類またはアミン類などの場合、例えば装置を通って流れる捕獲電荷により導電性添加剤がOSC層を酸化したり、その他の反応をしないのであれば、これらの化合物が永続的なドーピング効果を有していても構わない。従って、これらの添加剤の濃度は、装置の性能が著しく負の影響を受けないように十分低く保たれなければならない。調合物におけるこれらの添加剤のそれぞれに対する許容可能な濃度の最大値は、それぞれの添加剤がOSC材料を永続的にドーピングする能力に依存して選ぶことができる。
【0031】
可溶性有機塩より選択される導電性添加剤の場合、調合物における導電性添加剤の濃度は、好ましくは1重量ppm〜2重量%、より好ましくは50重量ppm〜0.6重量%、最も好ましくは50重量ppm〜0.1重量%である。
【0032】
揮発性有機塩より選択される導電性添加剤の場合、調合物における導電性添加剤の濃度は、好ましくは1重量ppm〜2重量%、より好ましくは50重量ppm〜0.6重量%、最も好ましくは50重量ppm〜0.1重量%である。
【0033】
アルコール類または揮発性アルコール類より選択される導電性添加剤の場合、調合物における導電性添加剤の濃度は、好ましくは1〜20重量%、非常に好ましくは2〜20重量%、最も好ましくは5〜10重量%である。
【0034】
揮発性カルボン酸より選択される導電性添加剤の場合、調合物における導電性添加剤の濃度は、好ましくは0.001%以上、非常に好ましくは0.01%以上、および、好ましくは2%以下、非常に好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%未満(全て重量パーセンテージ)である。
【0035】
アミン類または揮発性アミン類より選択される導電性添加剤の場合、調合物における導電性添加剤の濃度は、好ましくは0.001%以上、非常に好ましくは0.01%以上、および、好ましくは2%以下、非常に好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%未満(全て重量パーセンテージ)である。
【0036】
ヨウ素およびヨウ素化合物などの導電性添加剤も使用でき、例えば、IBr、酸化状態が+3のヨウ素、または他の穏和な酸化剤などで、導電性添加剤が固体のOSCフィルムをドープしないように、例えば、乾燥段階において加熱および/または真空により固体のOSCフィルムより除去できる。しかしながら、これらの添加剤は、0より高く0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0.05重量%未満の濃度において好ましくは使用される。
【0037】
調合剤は、好ましくは1〜5種類の導電性添加剤、非常に好ましくは1種類、2種類または3種類の導電性添加剤、最も好ましくは1種類の導電性添加剤を調合物は含む。
【0038】
本発明の調合物の導電率は、好ましくは10−4〜10−10S/m、非常に好ましくは10−5〜10−9S/m、より好ましくは2×10−6〜10−9S/m、最も好ましくは10−7〜10−8S/mである。
【0039】
他に明言しない限り、パラメータ分析器を使用して導電性を決定する。既知の寸法のセル中にテストされるサンプルを置く。これらの寸法より、セル定数を決定する。次いで、分析器を使用し、必要に応じて−1V〜1Vまたは0V〜2Vで電圧を走査する際の通過電流を記録する。標準溶液について記録されるデータはオーミックである。この場合、このオーミックな線の勾配を取ることで、抵抗を知ることができる。この抵抗をセル定数で割ることにより、導電率の逆数である抵抗率を与える。
【0040】
溶媒は、好ましくは、トルエン、o−、m−またはp−キシレン、トリメチルベンゼン、テトラリン、アニソール、アルキルアニソール(例えば、メチルおよびジメチルアニソールの異性体)、ナフタレンおよびアルキルナフタレンなどの芳香族炭化水素から成る群より選択される。
【0041】
揮発性添加剤を使用する場合、被覆または印刷されたOSC層より添加剤と共に、好ましくは同一の加工工程において蒸発できるように溶媒を選択しなければならない。溶媒および揮発性添加剤を除去するために使用される加工温度は、OSC層が損傷を受けないように選択しなければならない。好ましくは、堆積加工温度は室温〜135℃、より好ましくは室温〜80℃である。
【0042】
導電性添加剤として使用する多くのイオン性化合物にとって、例えば、o−キシレンなどの幾つかの溶媒は貧溶媒であることが観察された。しかしながら、時間が経つと溶液より析出する導電性添加剤は、被覆および印刷の際に問題を生じることがあり、OPVセルにおいて短絡の可能性がある。従って、本発明の好ましい実施形態において、調合物は、OSC化合物に対する良好な溶解力を有する第1溶媒と、第1溶媒と混和性であり導電性添加剤に対する良好な溶解力を有する第2溶媒(以降、「担体溶媒」とも言う)とを含む。第1溶媒は、好ましくは、非導電性であるか、または、低い導電性を有し、担体溶媒は、好ましくは、第1溶媒よりも高い導電性を有する。
【0043】
好ましくは、0.6未満のlogPを有する担体溶媒を使用し、ただし、logPは分配係数であり、log[n−オクタノール中の材料濃度]/[水中の材料濃度]と定義される。他に明言しない限り、等しい容量の水およびオクタノールにおける希釈溶液を平衡化後、それぞれの層における濃度を測定して(例えば、GC、HPLC、UV/可視などにより)、logPを測定する。あるいは、分子計算によってlogPを測定できる。
【0044】
非導電性の第1溶媒と混和性であり導電性添加剤に対する良好な溶解力を有する適切で好ましい担体溶媒としては、ケトン類、エステル類、ニトロ化合物、ニトリル類、アミド類、ウレア類、エーテル類、ポリエーテル類、アルコール類およびポリオール類、酸、スルホキシド類などのクラスより選択される比較的極性な溶媒が挙げられ、例えば、シクロペンタノン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、テトラヒドロフランおよびアセトンである。
【0045】
担体溶媒の割合は、好ましくは、調合物の総容量の5〜25容量%である。
【0046】
OSC化合物は、当業者に既知で文献に記載される標準的な材料より選択できる。
【0047】
OSC化合物は、少なくとも3個の芳香環を含有する任意の共役芳香族分子で構わない。OSC化合物は、好ましくは、5員、6員または7員の芳香環を含有し、より好ましくは、5員または6員の芳香環を含有する。該材料は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーでよく、混合物、分散物、ブレンドを含む。
【0048】
芳香環のそれぞれは、Se、Te、P、Si、B、As、N、OまたはS、好ましくはN、OまたはSより選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。
【0049】
芳香環は、アルキル、アルコキシ、ポリアルコキシ、チオアルキル、アシル、アリールまたは置換アリール基、ハロゲン、特に、フッ素、シアノ、ニトロまたは置換されていてもよい第2級または第3級アルキルアミンまたは−N(R)(R)で表されるアリールアミンで置換されていてよく、式中、RおよびRは、それぞれ独立に、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、アルコキシまたはポリアルコキシ基である。RおよびRがアルキルまたはアリールの場合、これらはフッ素化されていてもよい。
【0050】
環は縮合していてもよく、または、−C(T)=C(T)−、−C≡C−、−N(R’)−、−N=N−、(R’)=N−、−N=C(R’)−などの共役連結基と連結していてもよい。TおよびTは、それぞれ独立に、H、Cl、F、−C≡N−または低級アルキル基、好ましくはC1〜4アルキル基を表し;R’は、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールを表す。R’がアルキルまたはアリールの場合、これらはフッ素化されていてもよい。
【0051】
好ましいOSC材料としては、共役炭化水素ポリマーで、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレンなどで、それらの共役炭化水素ポリマーのオリゴマーを含み;縮合芳香族炭化水素で、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、または、これらの可溶性置換誘導体など;パラ位が置換されているフェニレン類のオリゴマーで、p−クアテルフェニル(p−4P)、p−キンクフェニル(p−5P)、p−セキシフェニル(p−6P)、または、これらの可溶性置換誘導体など;共役ヘテロ環式ポリマーで、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(2−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレンなど;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン類;置換されている金属ポルフィリンまたは金属を含まないポルフィリン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン類、ナフタロシアニン類またはフルオロナフタロシアニン類;C60およびC70フラーレン類またはそれの誘導体;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびフルオロ誘導体;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バトフェナントロリン;ジフェノキノン類;1,3,4−オキサジアゾール類;11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン;α,α’−ビス(ジチエノ[3,2−b2’3’−d]チオフェン);2,8−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2,2’−ビベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンから成る群より選択される化合物、ポリマー、オリゴマーおよび化合物の誘導体が挙げられる。好ましい化合物は上のリストからのもの、および、可溶性のそれらの誘導体である。
【0052】
特に好ましいOSC材料は、例えば、米国特許第6,690,029号明細書または国際特許出願公開第2005/055248号パンフレットに記載される通りの6,13−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセンまたはそれの誘導体などの置換ポリアセン類である。更に好ましいOSC材料はポリ(3−置換チオフェン)であり、非常に好ましくはポリ(3−アルキルチオフェン類)(P3AT)であり、ただし、アルキル基は好ましくは直鎖状で、および、好ましくは1〜12個、最も好ましくは4〜10個のC原子を有し、例えば、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)などである。
【0053】
国際特許出願公開第2005/055248号パンフレットに記載される通り、レオロジー特性を調節するために、好ましくはバインダーのOSC材料に対する比率が重量で20:1〜1:20、好ましくは10:1〜1:10、より好ましくは5:1〜1:5で、OSC層は1種類以上の有機バインダー、好ましくは重合体バインダーを含んでもよい。
【0054】
調合物におけるOSC化合物の総濃度は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0055】
調合物は、p型半導体およびn型半導体、またはアクセプターおよびドナー材料を好ましくは含むか含有し、より好ましくは本質的に、非常に好ましくは排他的にこれらから成る。このタイプの好ましい材料は、国際特許出願公開第94/05045号パンフレットに記載される通り、ポリ(3−置換チオフェン)またはP3ATの、C60またはC70フラーレンまたはPCBM[(6,6)−フェニルC61−酪酸メチルエステル]などの変性C60分子とのブレンドまたは混合物であり、ただし、好ましくは、P3ATのフラーレンに対する比率は、重量で2:1〜1:2、より好ましくは重量で1.2:1〜1:1.2である。
【0056】
本発明による調合物は、例えば、表面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、接着剤、流動性改良剤、消泡剤、脱気剤、反応性または非反応性のいずれでもよい希釈剤、助剤、着色剤、色素または顔料、増感剤、安定剤、ナノ粒子または禁止剤などの1種類以上の更なる成分を追加的に含んでよい。しかしながら、これらの更なる成分はOSCを酸化してはならず、または、その他の化学的反応ができてはならず、またはOSCに対して電気的ドーピング効果を有してはならない。
【0057】
OE装置の調製加工の際、OSC層を基板上に堆積し、続いて、存在する任意の揮発性導電性添加剤と共に溶媒を除去して、フィルムまたは層を形成する。
【0058】
基板はOE装置の調製に適する任意の基板でよく、または、OE装置またはそれの部品でも構わない。適切で好ましい基板は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミドのフレキシブルフィルム、または、平坦化Siガラスである。
【0059】
OSC層の堆積は、当業者に既知で文献に記載される標準的な方法により達成できる。適切で好ましい堆積方法としては、液体被覆および印刷技術が挙げられる。非常に好ましい堆積方法としては、限定することなく、浸漬被覆、スピン被覆、インクジェット印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、ドクターブレード被覆、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリソグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、噴霧被覆、はけ塗り被覆、スロットダイ被覆またはパッド印刷が挙げられる。グラビア印刷が特に好ましい。
【0060】
溶媒および任意の揮発性導電性添加剤の除去は好ましくは蒸発、例えば、堆積層を高温および/または減圧に、好ましくは50〜135℃において曝露することにより達成される。
【0061】
OSC層の厚みは好ましくは10nm〜50ミクロン、より好ましくは50nm〜1ミクロンである。
【0062】
上および下で記載される通りの材料および方法より更に、OE装置およびその部品を、当業者に既知で文献に記載される標準的な材料および標準的な方法により調製できる。
【0063】
図1および図2に、本発明による典型的で好ましいOPV装置を例示および模式的に示す(Waldaufら、Appl.Phys.Lett.第89巻、第233517頁(2006年)も参照)。
【0064】
図1に示される通りのOPV装置は、好ましくは、
−どちらか一方が透明である低仕事関数電極(1)(例えば、アルミニウムなどの金属)および高仕事関数電極(2)(例えば、ITO)と、
−電極(1、2)の間に配置され、好ましくはOSC材料より選択される正孔輸送材料および電子輸送材料を含む層(3)(「活性層」とも言う)とで;例えば、pおよびn型半導体の二重層または2つの異なる層またはブレンドまたは混合物として活性層は存在してもよく、
−任意の構成要素として、正孔に対するオーミック接触を与えるよう高仕事関数電極の仕事関数を改変するために、活性層(3)および高仕事関数電極(2)の間に配置される、例えば、PEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート))のブレンドを含む導電性ポリマー層(4)と、
−任意の構成要素として、電子に対するオーミック接触を与えるために、低仕事関数電極(1)の活性層(3)に面する側上の被覆(5)(例えば、LiFの)と
を含む。
【0065】
図2に示される通りの反転OPV装置は、好ましくは、
−一方が透明である低仕事関数電極(1)(例えば、金などの金属)および高仕事関数電極(2)(例えば、ITO)と、
−電極(1、2)の間に配置され、好ましくはOSC材料より選択される正孔輸送材料および電子輸送材料を含む層(3)(「活性層」とも言う)とで;例えば、pおよびn型半導体の二重層または2つの異なる層またはブレンドまたは混合物として活性層は存在してもよく、
−任意の構成要素として、電子に対するオーミック接触を与えるための、活性層(3)および低仕事関数電極(1)の間に配置される、例えば、PEDOT:PSSのブレンドを含む導電性ポリマー層(4)と、
−任意の構成要素として、正孔に対するオーミック接触を与えるために、高仕事関数電極(2)の活性層(3)に面する側上の被覆(5)(例えば、TiOの)と
を含む。
【0066】
正孔輸送ポリマーは、例えば、ポリチオフェンである。電子輸送材料は、例えば、酸化亜鉛またはセレン化カドミウムなどの無機材料、またはフラーレン誘導体(例えば、PCBMなど)またはポリマー(例えば、Coakley、K.M.およびMcGehee、M.D.、Chem.Mater.2004年、16巻、4533頁参照)などの有機材料である。二重層がブレンドの場合、装置性能を最適化するために、任意工程としてアニーリング工程が必要となることがある。
【0067】
本発明の前述の実施形態は、本発明の範囲内にありながら変更できると理解される。他に明言しない限り、本明細書において開示されるそれぞれの特徴を、同一、同等または同様の目的に働く代替の特徴で置き換えても構わない。よって、他に明言しない限り、開示されるそれぞれの特徴は、包括的で一連の同等または同様な特徴の一例に過ぎない。
【0068】
本明細書において開示される特徴の全ては、その様な特徴および/または工程の少なくとも幾つかが互いに排他的である組み合せを除いて、任意の組み合わせで組み合わせて構わない。特に、本発明の好ましい特徴は本発明の全ての様態に適用可能であり、任意の組み合わせにおいて使用できる。同様に、本質的でない組み合わせで記載される特徴は、個別に(組み合わせずに)使用できる。
【0069】
上記の特徴、特に好ましい実施形態の多くは、それ自体で発明性があり、本発明の実施形態の単に一部というわけではないと理解される。本特許請求される任意の発明に加えるか代えて、これらの特徴に対して独立の保護を請求できる。
【0070】
文脈が明らかに別の意味を示さない限り、本明細書で用いられる場合、本明細書における用語の複数形は単数形を含むものと解釈されることとし、逆もまた同様である。
【0071】
本明細書の記載および請求項を通して、「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という言葉、および、これらの言葉の変化形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「限定されないが、挙げられる」を意味し、他の成分を排除することを意図としない(排除しない)。
【0072】
用語「ポリマー」は、ホモポリマーおよびコポリマーを含み、例えば、統計的、交互またはブロックコポリマーを含む。加えて、以下本明細書で用いる用語「ポリマー」はデンドリマーも含み、例えば、M.FischerおよびF.Vogtle、Angew.Chem.、Int.Ed.1999年、38巻、885頁に記載される通り、典型的には、多官能性のコア基から成る分岐状の高分子化合物であり、このコア基に更に分岐状のモノマーが規則的な方式で付加され、樹状構造が与えられている。
【0073】
用語「共役ポリマー」は、その骨格(または主鎖)中に主としてsp−混成またはsp−混成でもよいC原子を含有するポリマーを意味し、ヘテロ原子で置き換えられていてもよく、介在するσ−結合を越えて一方のπ−軌道がもう一方と相互作用できる。最も単純な場合、これは、例えば、炭素−炭素(または炭素−ヘテロ原子)単結合と、多重(例えば、二重または三重)結合とが交互する骨格であるが、1,3−フェニレンなどの単位のポリマーも含まれる。これに関連して、「主として」は、共役の遮断に至ることのある自然発生的な(自発的な)欠陥を有するポリマーであっても、共役ポリマーと見なすことを意味する。また、この意味には、骨格が、例えば、アリールアミン類、アリールホスフィン類、および/または、ある種のヘテロ環(即ち、N−、O−、P−またはS−原子を介した共役)、および/または、金属有機複合体(即ち、金属原子を介した共役)などの単位を含むポリマーも含まれる。用語「共役連結基」は、sp−混成またはsp−混成のC原子またはヘテロ原子から成る2個の環(通常、芳香環)をつなぐ基を意味する。「IUPAC Compendium of Chemical terminology、Electronic version」も参照。
【0074】
他に明言しない限り、分子量は数平均分子量Mまたは重量平均分子量Mとして与えられ、他に明言しない限り、ポリスチレン標準に対するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0075】
重合度(n)は数平均重合度を意味し、他に明言しない限り、n=M/Mとして与えられ、ただし、Mは、単一の繰り返し単位の分子量である。
【0076】
用語「小型分子」は、モノマー、即ち非重合体化合物を意味する。
【0077】
他に明言しない限り、固体のパーセンテージは重量パーセント(重量%)であり、液体のパーセンテージまたは比率(例えば、溶媒混合物におけるなど)は容量パーセント(容量%)であり、全ての温度は摂氏度(℃)で与えられる。
【0078】
他に明言しない限り、パーセンテージまたはppmで与えられる、導電性添加剤などの混合物成分の濃度または割合は、溶媒を含む調合物全体に関する。
【0079】
化合物または材料の分配率logP(文献においては、「分配係数」とも呼ばれる)は、式(1)によって与えられる。
【0080】
【数1】

式中、[A]octはオクタノール中の化合物または材料の濃度であり、[A]aqは水中の化合物または材料の濃度である。
【0081】
(IUPAC Compendium of Chemical Terminology、Electronic version、http://goldbook.iupac.org/P04440.html、PAC 1993年、65巻、2385頁、および、C.Hansch、Acc.Chem.Res.2巻、232頁、(1969年)参照)。
【0082】
2種類以上の溶媒を含む溶媒ブレンドの場合、ブレンドの分配率は、式(2)によって与えられる通り、ブレンドに含有される全ての溶媒の分配率の重量平均(logP)で定義される。
【0083】
【数2】

式中、nは溶媒の数、logPは溶媒ブレンド中の単一溶媒のlogP値、およびwは溶媒ブレンド中の前記溶媒の重量分率(重量%の濃度/100)である。
【0084】
他に明言しない限り、等しい容量の水およびオクタノールにおける希釈溶液を平衡化後、それぞれの層における濃度を測定して(例えば、GC、HPLC、UV/可視などにより)logP値を測定するか、あるいは、Cambridge Softが製造および販売している「Chem Bio Draw Ultra version 11.0(2007年)」ソフトウェアを使用し、分子計算によりlogPを計算する。
【0085】
他に明言しない限り、それぞれの溶液を円筒型バイアル中に入れて溶液の導電率を測定する。セル定数が0.1cm−1で、平行な白金化白金プレートから成る導電性プローブを、プレートが完全に浸漬されるようにバイアル中に配置する。Agilent E3611A DC Power Supplyを使用してDC電圧をセルに印加し、Keithley Picoammeter、モデル6485によって電流を測定する。ある範囲の電圧(典型的には、0.1〜2ボルト)を印加して、電流応答の線形性を確かめる。オームの法則を使用して、電流より溶液の抵抗を計算する。抵抗およびセル定数を使用して、溶液の導電率を決定する。
【0086】
以下の略称を使用する:
oc 開回路電圧[V]
sc 短絡回路電流[A]
sc 短絡回路電流密度[mA/cm
η エネルギー変換効率[%]
最大出力点[W]
E 照射[W/m
太陽電池表面積[m
FF 電気的曲線因子
照射された装置の電流−電圧曲線を走査して、上に列記されるパラメータを決定する。他に明言しない限り、照明光源は、1SunにおいてOriel(Newport Physics)Class B Solar Simulatorセットで、VocでバイアスされたAM1.5G(Air Mass 1.5 Global)Devicesである。
【0087】
太陽電池を電気回路に接続する際に、変換(吸収された光から電気的エネルギーへ)され回収される出力のパーセンテージとして、エネルギー変換効率ηが与えられる。それは、式(1)に従い、最大出力点Pを「標準的」なテスト条件下における入力光照射Eおよび太陽電池の表面積Aの積で割った比として与えられる。
【0088】
【数3】

曲線因子FFは、式(2)に従い、Pを開回路電圧Vocおよび短絡回路電流Iscで割った比として与えられる。
【0089】
【数4】

ここで以下の例を引用して本発明をより詳細に記載するが、それらは説明のみであり本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0090】
<例1>
下の表1に示す通り、OSC化合物として分子量Mが10,000〜100,000のポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、有機溶媒および導電性添加剤より、各種の導電性溶液を調製する。
【0091】
それぞれの溶液を円筒型測定セル中に入れて導電率を測定する。導電性セルは内部が円筒型で白金黒被覆の鋼電極から成り、それの下半分は外部白金黒被覆の鋼電極で囲まれている。この外部電極の上は薄いPTFEスペーサーで分離されており、外部電極と同一の直径で白金黒被覆の保護リングであり、測定におけるフリンジ場の影響を最小としている。電極は、全て、PTFEスペーサーで間隔がとられている。次いで、交流電界をセルに印加し、Novacontrol ALHPA A高周波数インピーダンスアナライザーを使用して、周波数を2×10Hzから1Hzの範囲まで下げて走査する。並列インピーダンスの実部の値を測定するが、これは低周波限界において直流抵抗の傾向がある。次いで、これを使用して、溶液の導電率を計算する。結果を表1にまとめる。
【0092】
【表1】

導電性添加剤を含有するサンプル(ポリマー有りまたは無し)は、導電性添加剤を含有しない対応する対照サンプルよりも高い導電率を有する。
【0093】
<例2>
1779ppmの濃度でN−メチル−N−トリオクチル−アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドをo−キシレンに溶解する。結果として得られる溶液の導電率は3.3×10−7S/mである。
【0094】
332ppmの濃度でN−メチル−N−トリオクチル−アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを10容量%のシクロペンタノン(担体溶媒)および90容量%のo−キシレンの混合物中に溶解する。結果として得られる溶液の導電率は1×10−6S/mである。
【0095】
これは、担体溶媒を使用することで、導電性添加剤の濃度を減少させ、同時に調合物の導電性を増加させることが可能であることを示す。
【0096】
<例3>
4.5重量%の濃度でP3HT/PCBM半導体ブレンド(重量で1:0.9)を、10容量%のシクロペンタノンおよび90容量%のo−キシレンの混合物中に溶解する。導電剤であるN−メチル−N−トリオクチル−アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを、647ppmの濃度で添加する。結果として得られる溶液の導電率は1.1×10−6S/mである。
【0097】
Waldaufら、Appl.Phys.Lett.89巻、233517頁(2006年)に記載される通り、この溶液を含むOPV装置(テスト装置)を反転セルとして組み立て、それの電流密度−電圧(J/V)特性を測定する。結果を下の表2に示す。
【0098】
比較の目的のために対照装置を調製し、それのJ/V特性を上記の通り測定するが、ただし、溶液は導電性添加剤を含有していない。
【0099】
【表2】

テスト光起電装置効率の効率は、装置性能として許容可能な分散内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の有機半導体(OSC:organic semiconducting)化合物と、1種類以上の有機溶媒と、調合物の導電性を増加する1種類以上の添加剤(導電性添加剤)とを含む調合物であって、前記導電性添加剤は揮発性であるか、および/またはOSC化合物と化学反応ができないか、および/または0.5重量%未満の総濃度で存在している調合物。
【請求項2】
該導電性添加剤は、非酸化有機塩、揮発性有機塩、アルコール類、揮発性カルボン酸類および有機アミン類から成る群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の調合物。
【請求項3】
該導電性添加剤は、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩および他のヘテロ環塩から成る群より選択され、ただし、アニオンは、ハライド、サルフェート、アセテート、ホルメート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、メタンスルホネート、トリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)およびビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドから成る群より選択されることを特徴とする請求項2に記載の調合物。
【請求項4】
該導電性添加剤は、イソプロピルアルコール、イソ−ブタノール、ヘキサノール、メタノール、エタノール、ギ酸、酢酸、ジ−またはトリフルオロ酢酸、および第1級または第2級アルキルアミン類から成る群より選択されることを特徴とする請求項2に記載の調合物。
【請求項5】
該導電性添加剤(1種類または多種類)の濃度は、
可溶性有機塩の場合、1重量ppm〜2重量%であり、
揮発性有機塩の場合、1重量ppm〜2重量%であり、
揮発性カルボン酸類の場合、0.001〜2重量%であり、
有機アミン類の場合、0.001〜2重量%であり、
アルコール類の場合、5〜10重量%である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項6】
10−6〜10−9S/mの導電率を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項7】
OSC化合物に対する良好な溶解力を有する第1溶媒と、該第1溶媒と混和性であり該導電性添加剤に対する良好な溶解力を有する第2溶媒(「担体溶媒」)とを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項8】
該第1溶媒は、トルエン、o−、m−またはp−キシレン、トリメチルベンゼン、テトラリン、アニソール、アルキルアニソール類、ナフタレンおよびアルキルナフタレンから成る群より選択されることを特徴とする請求項7に記載の調合物。
【請求項9】
該担体溶媒は、シクロペンタノン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、テトラヒドロフランおよびアセトンから成る群より選択されることを特徴とする請求項7または8に記載の調合物。
【請求項10】
該担体溶媒の割合は、該調合物の総容量の5〜25容量%であることを特徴とする請求項7〜8のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項11】
該OSC化合物は、置換ポリアセン類またはポリ(3−置換チオフェン)から成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項12】
p型OSC化合物およびn型OSC化合物を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項13】
ポリ(3−置換チオフェン)と、C60またはC70フラーレンまたは変性C60分子との混合物を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項14】
該調合物における該OSC化合物の総濃度は0.1%〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項15】
被覆または印刷インクとしての、または、有機電子(OE:organic electronic)装置のための請求項1〜14のいずれか一項に記載の調合物の使用。
【請求項16】
a)請求項1〜14のいずれか一項に記載の調合物を基板上に堆積して、フィルムまたは層を形成する工程と、
b)溶媒(1種類または多種類)および揮発性またはOSC材料と化学的に反応できる任意の導電性添加剤を、例えば、蒸発により除去する工程と
を含むOE装置の調製方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法により、または請求項1〜14のいずれか一項に記載の調合物より調製されるOE装置。
【請求項18】
有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、集積回路(IC:integrated circuit)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)、無線識別(RFID:Radio Frequency Identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、有機発光トランジスタ(OLET:organic light emitting transistor)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)セル、有機太陽電池(O−SC:organic solar cell)、フレキシブルOPVおよびO−SC、有機レーザーダイオード(O−レーザー:organic laser)、有機集積回路(O−IC:organic integrated circuit)、照明装置、センサー装置、電極材料、光導電体、光検出器、電子写真記録装置、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基板、導電性パターン、光導電体、電子写真装置、有機記憶装置、バイオセンサーおよびバイオチップより選択されることを特徴とする請求項17に記載のOE装置。
【請求項19】
−どちらか一方が透明である低仕事関数電極(1)および高仕事関数電極(2)と、
−正孔輸送材料および電子輸送材料を含む活性層(3)と、
−任意の構成要素として、正孔に対するオーミック接触を与えるために該高仕事関数電極の仕事関数を改変するために、該活性層(3)および該高仕事関数電極(2)の間に配置される導電性ポリマー層(4)と、
−任意の構成要素として、電子に対するオーミック接触を与えるために、該低仕事関数電極(1)の該活性層(3)に面する側上の被覆(5)と
を含むことを特徴とする請求項17または18に記載のOE装置。
【請求項20】
−どちらか一方が透明である低仕事関数電極(1)および高仕事関数電極(2)と、
−正孔輸送材料および電子輸送材料を含む活性層(3)と、
−任意の構成要素として、電子に対するオーミック接触を与えるために、該活性層(3)および該低仕事関数電極(1)の間に配置される導電性ポリマー層(4)と、
−任意の構成要素として、正孔に対するオーミック接触を与えるための、該高仕事関数電極(2)の該活性層(3)に面する側上の被覆(5)と
を含むことを特徴とする請求項17または18に記載のOE装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−504650(P2011−504650A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529254(P2010−529254)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007896
【国際公開番号】WO2009/049744
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【出願人】(510108353)コナルカ テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】