説明

導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置

【課題】初期及び長期にわたって使用しても、像担持体と導電性部材との間に安定した空隙を維持して、像担持体の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層2と、該電気抵抗調整層2の両端部に圧入された空隙保持部材4,4とを、有する導電性部材10であって、前記空隙保持部材4,4の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材10の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、該空隙保持部材4,4の外周面に、前記電気抵抗調整層2の外周面に対して高低差が設けられている導電性部材10において、前記空隙保持部材4,4の導電性支持体1への圧入前のアニール処理と圧入後のアニール処理とによって、前記空隙保持部材4,4の外径の最大径と最小径との差が20μm以内にされているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において用いられる導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体(感光体ドラム)に対して帯電処理を行う帯電部材、及び、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。図8は、従来の帯電ローラを有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【0003】
図8において、120は、従来の電子写真方式の画像形成装置である。従来の電子写真方式の画像形成装置120は、静電潜像が形成される像担持体101、像担持体101に接触して帯電処理を行う帯電ローラ102、レーザ光等の露光手段103、像担持体101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104、帯電ローラ102にDC電圧を印加するためのパワーパック105、像担持体101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106、転写処理後の像担持体101をクリーニングするためのクリーニング装置108、及び、像担持体101の表面電位を測定する表面電位計109から構成されている。
【0004】
また、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、プロセスカートリッジ着脱方式の装置となっている。即ち、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、像担持体101、帯電ローラ102、現像ローラ104、及び、クリーニング装置108を含むプロセス機器を一括して画像形成装置本体に対して着脱自在のプロセスカートリッジ110としている。このプロセスカートリッジ110は、少なくとも、像担持体101及び帯電ローラ102を備えていればよい。このプロセスカートリッジ110は、画像形成装置に対して所定の箇所に装着されることにより、画像形成装置本体側の駆動系及び電気系と接続状態となる。なお、図8では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、本明細書において必要としないので、省略してある。
【0005】
次に、従来の電子写真方式の画像形成装置120の基本的な作像動作について説明する。
【0006】
像担持体101に接触された帯電ローラ102に対してDC電圧をパワーパック105から給電すると、像担持体101の表面は、一様に高電位に帯電する。その直後に、画像光が像担持体101の表面に露光手段103により照射されると、像担持体101の照射された部分は、その電位が低下する。このような帯電ローラ102による像担持体101の表面への帯電メカニズムは、帯電ローラ102と像担持体101との間の微少空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。
【0007】
画像光は、画像の白/黒に応じた光量の分布であるので、かかる画像光が照射されると、画像光の照射によって像担持体101の面に記録画像に対応する電位分布、即ち、静電潜像が形成される。このように静電潜像が形成された像担持体101の部分が現像ローラ104を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電画像を可視像化したトナー像が形成される。かかるトナー像が形成された像担持体101の部分に、記録紙107が所定のタイミングでレジストローラ(図示せず)により搬送され、前記トナー像に重なる。そして、このトナー像が転写ローラ106によって記録紙107に転写された後、該記録紙107は、像担持体101から分離される。分離された記録紙107は、搬送経路を通って搬送され、定着ユニット(図示せず)によって、加熱定着された後、機外へ排出される。このようにして転写が終了すると、像担持体101は、その表面がクリーニング装置108によりクリーニング処理され、さらに、クエンチングランプ(図示せず)により、残留電荷が除去されて、次回の作像処理に備えられる。
【0008】
従来の帯電ローラを用いた帯電方式には、像担持体に帯電ローラを接触させる接触帯電方式のものがある(特許文献1,2を参照。)が、このような従来の接触帯電方式には、
(1)帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、これが被帯電体の表面に付着移行して帯電ローラ跡を残すこと、
(2)帯電ローラに交流電圧を印加したときに、被帯電体に接触している帯電ローラが振動するので、帯電音が発生すること、
(3)像担持体上のトナーが帯電ローラに付着する(特に、上述の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなる。)ので、帯電ローラの帯電性能が低下すること、
(4)帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、
(5)像担持体を長期停止したときに、帯電ローラが永久変形すること、
といった問題があった。
【0009】
このような問題を解決する技術として、帯電ローラを像担持体に近接させるようにした近接帯電方式による帯電装置(特許文献3,4を参照。)が提案されている。この近接帯電方式による帯電装置は、帯電ローラを像担持体に最近接距離(50〜300μm)になるように対向させて、帯電ローラに電圧を印加することにより、像担持体の帯電を行うようにしたものである。この近接帯電方式による帯電装置では、ローラと像担持体とが接触していないので、従来の接触帯電方式による帯電装置において問題となっていた、帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、像担持体が長期停止したときに永久変形すること、といった問題はない。また、この近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるので、像担持体上のトナー等が帯電ローラに付着することが少ない。したがって、近接帯電方式による帯電装置は、優れた帯電装置といえる。
【0010】
前記特許文献3,4に記載された近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラと像担持体との間に空隙を保持するために、スペーサリング層が帯電ローラの両端部に設けられている。しかしながら、これらの近接帯電方式による帯電装置では、空隙を精密に設定する工夫がなされていないので、帯電ローラ及びスペーサリングの寸法精度がばらつくことによって空隙が変動し、そのために、像担持体の帯電電位が変動し、よって、画像形成時に白地にトナーが付着して画像不良が発生する、という問題があった。
【0011】
このような問題を解決するために、所定の厚みを持ったテープ状の空隙保持手段を備えた帯電装置(特許文献5を参照。)が提案されたが、このテープ状の空隙保持手段を備えた帯電装置では、これを長期間にわたって使用すると、テープ状の空隙保持手段が磨耗し、また、帯電ローラとテープ状の空隙保持手段との間にトナーが進入し固着するので、像担持体の表面と帯電ローラの表面との間に空隙を保持できないという問題があった。また、このテープ状の空隙保持手段を備えた帯電装置では、テープ状の空隙保持手段の厚みがばらつくので、像担持体の表面と帯電ローラの表面との間の空隙を高精度に形成することができないという問題もあった。
【0012】
また、このような問題を解決するために、図9に示されるような導電性部材(特許文献6を参照。)が提案された。この導電性部材(帯電部材)210は、導電性支持体201と、該導電性支持体201上に形成された電気抵抗調整層202と、該電気抵抗調整層202の両端に形成された空隙保持部材203とを、有している。そして、前記空隙保持部材203は、(イ)デュロメータ硬さ:HDD30〜HDD70、及び、(ロ)テーバー式磨耗試験機の磨耗質量:10mg/1000サイクル以下、を満たす熱可塑性樹脂で構成されている。また、かかる空隙保持部材203と電気抵抗調整層202とを同時除去加工を行うことにより、像担持体と帯電ローラとの間の空隙を精密に制御する技術(特許文献7を参照。)も提案された。
【0013】
しかしながら、像担持体と導電性部材(帯電ローラ)との間の空隙を高精度に制御するために、切削等の一体除去加工を行ったとしても、電気抵抗調整層の外表面に前記表面層を塗布した後、これに加熱硬化処理を行うと、切削等の一体除去加工によって前記空隙保持部材と電気抵抗調整層との間に高精度に制御された空隙を維持できなくなる、という問題があった。また、導電性支持体が像担持体と当接する際、当接面積が減少するので、導電性支持体(帯電ローラ)と像担持体との間の空隙の精度が低下する、という問題があった。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−267667号公報
【特許文献3】特開平3−240076号公報
【特許文献4】特開平4−358175号公報
【特許文献5】特開2002−139893号公報
【特許文献6】特開2004−354477号公報
【特許文献7】特開2005−91818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0015】
即ち、本発明は、初期及び長期にわたって使用しても、像担持体と導電性部材との間に安定した空隙を維持して、像担持体の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、電気抵抗調整層の外表面に表面層を塗布した後、これに加熱硬化処理を行うと、切削、研削等の一体除去加工によって空隙保持部材と抵抗調整層との間に高精度に制御された空隙を維持できなくなる、という問題が起こる原因について鋭意検討したところ、空隙保持部材の成形時、及び、空隙保持部材の導電性支持体への圧入時に蓄積された内部歪が、塗布された表面層の空隙保持部材の加熱硬化等の熱により内部歪の応力が開放されて、空隙保持部材が微小に変動を起こし、切削、研削等の一体除去加工された空隙保持部材の形状が変動して、空隙保持部材と電気抵抗調整層との間に高精度に制御された空隙が維持できなくなることを見出した。そこで、本発明者らは、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端部に圧入された空隙保持部材とを、有する導電性部材であって、前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、該空隙保持部材の外周面に、前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられている導電性部材において、導電性支持体へ圧入する前の空隙保持部材にアニール処理を施すと共に導電性支持体へ圧入した後の空隙保持部材にアニール処理を施し、その導電性支持体への圧入前のアニール処理と圧入後のアニール処理とによって、前記空隙保持部材の外径の最大径と最小径との差を20μm以内にしたところ、初期及び長期にわたって使用しても、像担持体と導電性部材との間に安定した空隙を維持して、像担持体の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材を提供できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端部に圧入された空隙保持部材とを、有する導電性部材であって、前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、該空隙保持部材の外周面に、前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられている導電性部材において、
前記空隙保持部材の導電性支持体への圧入前のアニール処理と圧入後のアニール処理とによって、前記空隙保持部材の外径の最大径と最小径との差が、20μm以内にされていることを特徴とする導電性部材である。
【0018】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記空隙保持部材を形成する樹脂材料が、吸湿性及び耐摩耗性の小さい合成樹脂で構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記樹脂材料が、高密度ポリエチレン及び高分子量ポリエチレンから選ばれる樹脂材料であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項4に記載された発明は、請求項2又は3に記載された発明において、前記空隙保持部材が、合成樹脂の成形加工により形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載された発明において、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と該導電性支持体上に設けられた該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項6に記載された発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載された発明において、前記電気抵抗調整層上に表面層が形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項7に記載された発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載された発明において、導電性部材が円筒形状であることを特徴とするものである。
【0024】
請求項8に記載された発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載された発明において、前記導電性部材を帯電部材としたことを特徴とするものである。
【0025】
請求項9に記載された発明は、請求項8に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されるように設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0026】
請求項10に記載された発明は、請求項9に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載された発明によれば、前記空隙保持部材の導電性支持体への圧入前のアニール処理と圧入後のアニール処理とによって、前記空隙保持部材の外径の最大径と最小径との差が、20μm以内にされているので、空隙保持部材の平面性が向上し、そのために、像担持体と当接して空隙を形成する際に、当接面積が広くなることにより安定した空隙を維持することができ、よって、初期及び長期にわたって使用しても、像担持体と導電性部材との間に安定した空隙を維持して、像担持体の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材を提供することができる。
【0028】
請求項2,3に記載された発明によれば、前記空隙保持部材を形成する樹脂材料が吸湿性及び耐摩耗性の小さい合成樹脂で構成されているので、該空隙保持部材が像担持体を傷つけることを防止することができ、しかも、トナーが該空隙保持部材に固着することを防止することができる。
【0029】
請求項4に記載された発明によれば、前記空隙保持部材が合成樹脂の成形加工により形成されているので、該空隙保持部材の生産性を高めることができる。
【0030】
請求項5に記載された発明によれば、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と該導電性支持体上に設けられた該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されているので、該空隙保持部材と該電気抵抗調整層との高低差の形成を一体加工で行うことができ、そのために、像担持体の外周面と導電性部材の外周面との間に形成される空隙の変動(振れ)を小さくして空隙の精度をより高めることができる。
【0031】
請求項6に記載された発明によれば、前記電気抵抗調整層上に加熱硬化処理された表面層が形成されているので、経時において、トナ−、及び、トナ−添加剤等が導電性部材表面に付着して空隙量及び電気特性が変化することを防止することができ、しかも、該表面層の定着性を向上させることができる。
【0032】
請求項7に記載された発明によれば、導電性部材が円筒形状であるので、導電性部材を回転させることができ、そのために、同一箇所からの連続放電を防止して長寿命化を図ることができる。
【0033】
請求項8に記載された発明によれば、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性部材を帯電部材としたので、この帯電部材は、像担持体表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0034】
請求項9に記載された発明によれば、請求項8に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジとされるので、長期にわたって安定した画質を得ることでき、且つ、交換もユーザメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0035】
請求項10に記載された発明によれば、請求項9に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置とするので、信頼性が高く、かつ、高画質な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の断面図である。図2は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)を形成する方法を示す説明図であって、(a)は、空隙保持部材の外周面と電気抵抗調整層の外周面とに切削加工、研削加工等の除去加工が施された後の形状を示し、(b)は、除去加工が施された電気抵抗調整層の外周面に形成された表面層に加熱硬化処理を施す前の形状を示し、そして、(c)は、除去加工が施された電気抵抗調整層の外周面に形成された表面層に加熱硬化処理を施した後の形状を示す。図3は、空隙保持部材の拡大説明図であって、(a)は、表面層に加熱硬化処理を施す前の空隙保持部材の最大外径及び最小外径を示し、そして、(b)は、表面層に加熱硬化処理を施した後の空隙保持部材の最大外径及び最小外径を示す。図4は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における導電性支持体へ圧入する前の高密度ポリエチレンで構成される空隙保持部材にアニール処理を施した時に生じる外径変化を説明するグラフであって、(a)は、アニール時間を一定時間:60分とした時のアニール温度[℃]とφ外径収縮量[mm]との関係を示し、そして、(b)は、アニール温度を一定温度:120℃とした時のアニール時間[分とφ外径収縮量[mm]との関係を示す。図5は、導電性部材(帯電ローラ)を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。図6は、本発明の一実施の形態を示す画像形成装置の説明図である。図7は、実施例及び比較例で得た導電性部材(帯電ローラ)における空隙保持部材の外径の測定箇所を示す説明図である。
【0038】
図1において、10は、導電性部材(帯電ローラ)である。導電性部材(帯電ローラ)10は、導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層2と、該電気抵抗調整層2の両端部に圧入された空隙保持部材4,4とを、有しており、また、図5に示されているように、導電性部材(帯電ローラ)10には、前記空隙保持部材4,4の外周面が像担持体5と当接したときに、該像担持体5の外周面と前記導電性部材10の外周面との間に一定間隔の空隙Gが形成されるように、該空隙保持部材4,4の外周面に、前記電気抵抗調整層2の外周面に対して高低差が設けられている。そして、導電性部材(帯電ローラ)10は、前記空隙保持部材4,4の導電性支持体1への圧入前のアニール処理と圧入後のアニール処理とによって、前記空隙保持部材4,4の外径の最大径と最小径との差[図3に(b)を参照。]が20μm以内にされている。本発明においては、前記圧入された空隙保持部材4,4は、これと電気抵抗調整層2との間又はこれと導電性支持体1との間に接着剤を塗布して、長期間にわたって使用した際に空隙保持部材4,4が脱離することを避けることができる。
【0039】
本発明の導電性部材(帯電ローラ)10は、例えば、次のような工程を経て製造される。即ち、本発明の導電性部材(帯電ローラ)10は、図2に示されているように、(a)導電性支持体1へ圧入する前の空隙保持部材4,4にアニール処理を施すと共に導電性支持体1へ圧入した後にも空隙保持部材4,4にアニール処理を施してから、空隙保持部材4,4の外周面と電気抵抗調整層2の外周面とに切削加工、研削加工等の除去加工を施す工程、(b)前記切削加工、研削加工等の除去加工を施した電気抵抗調整層2の外周面に表面層3を形成する工程、及び、(c)切削加工、研削加工等の除去加工が施された電気抵抗調整層2を加熱してその外周面に形成された表面層3に加熱硬化処理を施す工程、を順次経て製造されるが、表面層3に加熱硬化処理を施す前の空隙保持部材(即ち、切削加工、研削加工等の除去加工を施した空隙保持部材)4,4は、図3(a)に示される形状となり、そして、表面層3に加熱硬化処理を施すと同時に空隙保持部材にアニール処理を施した後の空隙保持部材4,4は、図3(b)に示される形状となる。
【0040】
従来の導電性部材(帯電ローラ)においては、空隙保持部材の外径の最大径と最小径との差を20μm以内にしたものは存在していなかった。しかしながら、本発明においては、導電性支持体へ圧入する前の空隙保持部材にアニール処理を施すと共に導電性支持体へ圧入した後にも空隙保持部材にアニール処理を施したので、その空隙保持部材4,4の導電性支持体への圧入前のアニール処理と圧入後のアニール処理とによって、前記空隙保持部材4,4の外径の最大径と最小径との差を20μm以内にすることができた。従来のように、前記空隙保持部材4,4の外径の最大径と最小径との差が20μmを越えると、空隙保持部材4,4の平面性が低下し、像担持体5と当接して空隙Gを形成する際に、当接面積が広くなるので、安定した空隙Gを維持することができなくなるが、本発明によれば、空隙保持部材4,4の外径の最大径と最小径との差を20μm以内にするので、空隙保持部材4,4の平面性が向上し、そのために、像担持体5と当接して空隙Gを形成する際に、当接面積が広くなることにより安定した空隙Gを維持することができる。
【0041】
したがって、本発明のように、前記空隙保持部材4,4の導電性支持体への圧入前のアニール処理と圧入後のアニール処理とによって、前記空隙保持部材4,4の外径の最大径と最小径との差が20μm以内にされていると、空隙保持部材4,4の平面性が向上し、そのために、像担持体5と当接して空隙Gを形成する際に、当接面積が広くなることにより安定した空隙Gを維持することができ、よって、初期及び長期にわたって使用しても、像担持体5と導電性部材10との間に安定した空隙Gを維持して、像担持体5の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材10を提供することができる。
【0042】
空隙保持部材4,4としては、種々の樹脂材料を使用することができる。空隙保持部材4,4を構成する材料の必要な特性としては、絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で1013Ω・cm以上であることが好ましい。電気絶縁性が必要である理由は、像担持体5の基層とのショート電流の発生を無くすためである。また、像担持体5との空隙Gを長期(経時)にわたって安定して維持することであり、そのためには、吸湿性、耐摩耗性が小さい材料が好ましい。このような空隙保持部材4,4を形成する樹脂材料は、好ましくは、吸湿性及び耐摩耗性の小さい合成樹脂で構成されている。このような空隙保持部材4,4を構成する樹脂材料は、種々の条件に応じて適宜選択されるが、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)、PC、ポリウレタン、及び、フッ素樹脂から選ばれた樹脂材料であり、さらに好ましくは、高密度ポリエチレン及び高分子量ポリエチレンから選ばれた樹脂材料である。このように、前記空隙保持部材4,4を形成する樹脂材料が吸湿性及び耐摩耗性の小さい合成樹脂で構成されていると、該空隙保持部材4,4が像担持体5を傷つけることを防止することができ、しかも、トナーが該空隙保持部材4,4に固着することを防止することができる。
【0043】
本発明においては、前記空隙保持部材4,4は、好ましくは、合成樹脂の射出成形、押し出し成形等の成形加工により形成されている。このように、前記空隙保持部材4,4が合成樹脂の成形加工により形成されると、該空隙保持部材4,4の生産性を高めることができる。
【0044】
本発明者らは、導電性部材(帯電ローラ)における導電性支持体へ圧入する前の高密度ポリエチレンで構成される空隙保持部材単品にアニール処理を施した時に生じる外径変化について実験して調べたところ、図4(a)に示すように、アニール温度が高くなるにしたがって外径収縮量が大きくなり(即ち、収縮変化が大きくなり)、そして、アニール時間が長くなるにしたがって外径収縮量が一定になる(即ち、アニール時間が60分より長いと収縮変化が飽和している)ことがわかった。
【0045】
図5は、導電性部材(帯電ローラ)を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。図5に示されているように、導電性部材10は像担持体5に任意の圧力で当接されて配置される。また、空隙保持部材4,4は画像形成領域を外した非画像形成領域に形成されている。この状態で導電性部材(帯電ローラ)10に電圧を印加することにより、像担持体5の帯電を行うことができる。導電性部材10を転写部材として使用する場合も、同様の形態で行うことができる。導電性部材(帯電ローラ)10と像担持体5との間の空隙Gは、所定の値に保つ必要があり、好ましくは、100μm以下である。空隙Gが大きくなると像担持体5の電気的劣化や異常放電が発生しやすくなるので、導電性部材10への電圧印加条件を高くする必要がある。
【0046】
また、図5に示されているように、本発明においては、前記電気抵抗調整層2の外周面に対する前記空隙保持部材4,4の外周面の高低差は、前記導電性支持体1上に設置された該空隙保持部材4,4の外周面と該導電性支持体1上に設けられた該電気抵抗調整層2の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されている。このように、前記電気抵抗調整層2の外周面に対する前記空隙保持部材4,4の外周面の高低差が、前記導電性支持体1上に設置された該空隙保持部材4,4の外周面と該導電性支持体1上に設けられた該電気抵抗調整層2の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていると、該空隙保持部材4,4と該電気抵抗調整層2との高低差の形成を一体加工で行うことができ、そのために、像担持体5の外周面と導電性部材10の外周面との間に形成される空隙Gの変動(振れ)を小さくして空隙Gの精度をより高めることができる。
【0047】
本発明における電気抵抗調整層2は、高分子型イオン導電材料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成されている。電気抵抗調整層2の体積固有抵抗は、好ましくは、106 〜109 Ωcmである。電気抵抗調整層2の体積固有抵抗が109 Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、また、電気抵抗調整層2の体積固有抵抗が106 Ωcm未満であると、像担持体5全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。前記熱可塑性樹脂に用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、及び、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)から選ばれる熱可塑性樹脂、或いは、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール、ポリウレタン、及び、フッ素樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂である。
【0048】
そして、前記高分子型イオン導電材料は、好ましくは、ポリエーテルエステルアミドを主成分とする樹脂である。このように、前記高分子型イオン導電材料がポリエーテルエステルアミドを主成分とする樹脂であると、ポリエーテルエステルアミドを主成分とする樹脂が前記熱可塑性樹脂中に均一にブレンドされるので、像担持体(感光体)5へのリークが生じないし、また、表面へのブリードアウトが生じにくく、しかも、カーボンブラック等の導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う電気抵抗値のばらつきが生じない。一般的にカーボンブラックのような導電剤を用いた場合には、電荷がカーボンブラックを通して像担持体へ放電するので、カーボンブラックの分散状態に起因した微小な放電ムラが生じやすく、高画質化の妨げとなる。特に、高電圧印加時はこの現象が顕著となる。
【0049】
前記熱可塑性樹脂と前記高分子型イオン導電材との配合割合は、好ましくは、前記熱可塑性樹脂:30〜70重量%、及び、高分子型イオン導電材:70〜30重量%である。このような配合割合にすると、電気抵抗調整層2の電気抵抗値を所望の値にすることができる。電気抵抗調整層2を構成する半導電性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。電気抵抗調整層2としての導電性支持体1上への形成は、押出成形や射出成形等の成形手段で導電性支持体1に前記半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0050】
導電性支持体1上に電気抵抗調整層2のみを形成して導電性部材10を構成すると、電気抵抗調整層2にトナー等が固着して性能低下を起こすことがある。このような不具合は、電気抵抗調整層2に表面層3を形成することで、無くすことができる。表面層3の電気抵抗値は、電気抵抗調整層2のそれよりも大きくなるように形成され、それによって像担持体5の欠陥部への電圧集中、異常放電(リーク)を回避することができる。ただし、表面層3の電気抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうので、表面層3と電気抵抗調整層2との電気抵抗値の差を103 Ωcm以下にすることが好ましい。表面層3を形成する材料としては、製膜性が良好であるという点で熱可塑性樹脂が好適である。このような熱可塑性樹脂としては、好ましくは、非粘着性に優れ、しかも、トナー固着防止の面で優れたフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂である。また、このような熱可塑性樹脂は、電気的に絶縁性であるので、これに対して各種導電材料を分散することによって表面層3の電気抵抗を調整する。表面層3の電気抵抗調整層2上への形成は、例えば、前記表面層3を構成する熱可塑性樹脂を有機溶媒に分散して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング等によってコーティングを行う。その膜厚は、好ましくは、10〜30μm程度である。
【0051】
前記電気抵抗調整層2、及び、これに隣接する空隙保持部材4,4は、熱可塑性樹脂で構成されているので、射出成形、押し出し成形等の成形加工によって成形される。そして、前記空隙保持部材4,4をそれぞれ電気抵抗調整層2の端部に圧入した後、これらの空隙保持部材4,4の外表面と電気抵抗調整層2の外表面とを一体除去加工を行い、一定の空隙を設定する為の段差を設ける仕上げ切削を行う。
【0052】
本発明においては、表面層3は、電気抵抗調整層2の上に塗布されるが、この表面層3の定着には、加熱による表面層3を構成する樹脂の硬化により行われる。このように、表面層3を加熱硬化すると、表面層3の定着性が向上する。
【0053】
一般的には、この表面層3の加熱硬化においては、電気抵抗調整層2及び空隙保持部材4,4も加熱されることになる。このように、電気抵抗調整層2及び空隙保持部材4,4が加熱されると、電気抵抗調整層2及び空隙保持部材4,4の一体除去加工によって高精度な空隙Gが形成されたものであっても、空隙保持部材4,4の成形時、又は、空隙保持部材4,4の設置等の加工時に蓄積された内部歪が熱により開放されるので、空隙Gが微小に変動し、そのために、高精度の空隙Gが維持できなくなる。また、導電性部材(帯電ローラ)10が像担持体5と当接する際、当接面積が減少するので、導電性部材(帯電ローラ)10と像担持体5との空隙Gの精度の低下又は長期にわたる使用において安定性、信頼性に問題が生じることになる。
【0054】
それ故、本発明においては、射出成形、押し出し成形等の成形手段により予め任意の形状に形成された空隙保持部材4,4を、所定温度、所定時間内でアニール処理を行うと共に空隙保持部材4,4を導電性支持体1の両端に圧入により設置した状態の空隙保持部材4,4にも再度、所定温度、所定時間内でアニール処理を行う。そして、空隙保持部材4,4及び電気抵抗調整層2の一体除去加工を行い、続いて、電気抵抗調整層2の外表面に表面層3を塗布した後に、該表面層3に加熱硬化処理を施す。
【0055】
この2回のアニール処理により成形時の応力及び加工時の応力が緩和できる。また、製造段階による加熱工程において空隙保持部材に熱が加わった状況下においても高精度の空隙Gを維持することが可能になる。本発明においては、形成する段差を40μmとした。これは、帯電時に帯電部材と像担持体の距離が大きいほど、コロナ帯電によりオゾン、NOx等の発生が問題となるからである。
【0056】
本発明においては、導電性部材10及び像担持体5の形状は特に限定されず、また、像担持体5は、ベルト状、円筒状いずれの形式もとることができる。請求項1〜7のいずれか1項に記載された導電性部材10は、好ましくは、円筒形状である。導電性部材10と像担持体5とを円筒形状にして回転駆動させると、同一箇所からの連続放電を防止することができ、そのために、通電ストレスによる表面の化学的劣化を低減させることができる。例えば、図5に示すように、導電性部材10の回転方向は、像担持体5と同方向、逆方向どちらも選択することができる。また、像担持体5との周速差をつける(像担持体5より速く回転させる、遅く回転させる)ことも可能である。また、像担持体5の回転に対して、間欠回転させることも機能を損なわない範囲において可能である。導電性部材10と像担持体5との間の空隙Gは、所定の値に保つ必要があり、好ましくは、100μm以下である。空隙Gが大きくなると導電性部材10への電圧印加条件を高くする必要があり、像担持体5の電気的劣化や異常放電が発生しやすいためである。
【0057】
請求項1〜7のいずれか1項に記載された導電性部材10は、好ましくは、帯電部材とされる。このように、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性部材10を帯電部材とすると、この帯電部材は、像担持体5の表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0058】
請求項8に記載の導電性部材(帯電部材)10は、被帯電体上に近接配置されるように設けられた着脱可能なプロセスカートリッジ(図8における110を参照。)とする。このように、請求項8に記載の導電性部材(帯電部材)10が被帯電体上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジとすると、長期にわたって安定した画質を得ることができ、且つ、交換もユーザメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0059】
本発明においては、請求項9に記載のプロセスカートリッジ(図8における110を参照。)を有する画像形成装置とする。このように、請求項9に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置とすると、信頼性が高く、かつ、高画質な画像を得ることができる。
【0060】
図6に示すように、本発明の画像形成装置においては、装置本体内の下部に給紙部22、その上方に像担持体5を有する作像部、及び、さらにその上方に排紙部となる対の排紙ローラ26,27をそれぞれ設けて、給紙部22から給紙した転写紙Pの左側の面に対応する作像部で画像を形成し、そして、その転写紙Pを排紙ローラ26,27によりビントレイ20あるいは排紙トレイ21に排出するようにしている。給紙部22には、上下2段にトレイ28,29が設けられていて、その各給紙段には給紙ローラ30がそれぞれ配設されている。23は書込みユニットであり、そこから像担持体5の一様に帯電された表面に光を照射して、そこに画像を書き込む。また、その像担持体5に対して転写紙搬送方向上流側には、転写紙のスキューを補正すると共に、像担持体5上の画像と転写紙の搬送タイミングを合わせるためのレジストローラ対13を設けている。
【0061】
さらに、像担持体5に対して転写紙搬送方向下流側には、定着ユニット25を設けている。作像部には、図6に示すように、前述した像担持体5が矢示A方向に回転可能に設けられており、その周囲には帯電装置(図8における102を参照。)と、その帯電装置により帯電された面に書込みユニット23により書込まれた像担持体5上の静電潜像を顕像化してトナー像とする現像装置(図8における104を参照。)と、そのトナー像を転写紙Pに転写する転写搬送ベルト6と、そのトナー像の転写後に像担持体5上に残った残留トナーを除去するクリーニング装置(図8における108を参照。)と、像担持体5上の不要な電荷を除電する除電ランプ(図示せず)とを、それぞれ配設している。この画像形成装置は、画像形成動作を開始させると、図6に示した像担持体5が矢印A方向に回転し、その表面が除電ランプにより除電されて基準電位に平均化される。次に、その像担持体5の表面は、帯電ローラ(図8における102を参照。)により一様に帯電され、その帯電面は、書込みユニット23から画像情報に応じた光の照射を受け、そこに静電潜像が形成される。その潜像は、像担持体5が矢示A方向に回転することにより現像装置(図8における104を参照。)の位置まで移動されると、そこで現像スリーブ(図示せず)によりトナーが付着されてトナー像(顕像)となる。
【0062】
一方、図6に示した給紙部22のトレイ28,29の何れかから給紙ローラ30により転写紙Pが給紙され、それがレジストローラ対13で一旦停止されて、その転写紙Pの先端と像担持体5上の画像の先端とが一致する正確なタイミングで搬送され、その転写紙Pに転写搬送ベルト6により像担持体5上のトナー像が転写される。その転写紙Pは、転写搬送ベルト6により搬送され、駆動ローラ部6aで転写紙Pの腰による曲率分離で、その転写搬送ベルト6から分離されて、定着ユニット25へ搬送され、そこで熱と圧力が加えられることによりトナーが転写紙Pに融着され、それが指定された排紙場所、すなわち排紙トレイ21あるいはビントレイ20の何れかに排出される。その後、像担持体5上に残った残留トナーは、次工程であるクリーニング位置まで回転移動し、クリーニング装置のクリーニングブレード(図8における108を参照。)により掻き取られ、再び次の作像工程に移る。
【0063】
本実施の形態においては、導電性部材10を具体化した帯電ローラについて主として説明したが、本発明における導電性部材10は、本発明の目的に反しない限り、トナー担持体又は転写部材としてもかまわない。
【0064】
(実施例1)
ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物100重量部にポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モデイパーCL440−G、日本油脂社製)4.5重量部を配合した後、これらを溶融混練して溶融混練樹脂組成物とし、この溶融混練組成物をニッケルメッキされた硫黄快削鋼(SUM)からなる外径10mmの導電性支持体(芯軸)に射出成形により被覆して、電気抵抗調整層(体積固有抵抗:2.1×108 Ωcm)を形成した。そして、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)をリング状に射出成形し、この射出成形した空隙保持部材単体に120℃、1時間のアニール処理をオーブン中において施して、射出成形時の歪みを除去した。次に、このアニール処理を施した空隙保持部材を電気抵抗調整層の両端に挿入接着し、この電気抵抗調整層の両端に挿入接着した空隙保持部材に120℃、1.5時間のアニール処理をオーブン中において施して、電気抵抗調整層の成形時の歪み及び空隙保持部材の挿入時の加工歪みを除去した。次に、切削加工によって、空隙保持部材の外径(最大径)を12.7mm、電気抵抗調整層の外径を12.6に同時仕上げを行った[図2(a)を参照。]後、電気抵抗調整層の表面にアクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる樹脂組成物をスプレイコーテイングして約10μm厚の表面層を形成し[図2(b)を参照。]、続いて、この表面層に80℃、1時間の加熱硬化処理をオーブン中において施して、完成品段差が40±10μmの導電性部材を得た。
【0065】
(実施例2)
電気抵抗調整層の両端に挿入接着した空隙保持部材に120℃、1時間のアニール処理をオーブン中において施した以外は、実施例1と同様にして導電性部材を得た。
【0066】
(実施例3)
射出成形した空隙保持部材単体に120℃、0.5時間のアニール処理をオーブン中において施し、そして、電気抵抗調整層の両端に挿入接着した空隙保持部材に120℃、1時間のアニール処理をオーブン中において施した以外は、実施例1と同様にして導電性部材を得た。
【0067】
(比較例1)
ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物100重量部にポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モデイパーCL440−G、日本油脂社製)4.5重量部を配合した後、これらを溶融混練して溶融混練樹脂組成物とし、この溶融混練組成物をニッケルメッキされた硫黄快削鋼(SUM)からなる外径10mmの導電性支持体(芯軸)に射出成形により被覆して、電気抵抗調整層(体積固有抵抗:2.1×108 Ωcm)を形成した。そして、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)をリング状に射出成形して空隙保持部材を形成し、これを電気抵抗調整層の両端に挿入接着した後、切削加工によって、空隙保持部材の外径(最大径)を12.7mm、電気抵抗調整層の外径を12.6に同時仕上げを行った。次に、切削加工によって、空隙保持部材の外径(最大径)を12.7mm、電気抵抗調整層の外径を12.6に同時仕上げを行った後、電気抵抗調整層の表面にアクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる樹脂組成物をスプレイコーテイングして約10μm厚の表面層を形成し、続いて、この表面層に80℃、1時間の加熱硬化処理をオーブン中において施して、導電性部材を得た。
【0068】
(比較例2)
空隙保持部材として、ポリアセタール樹脂(ユピタールV20−HE、三菱エンギニアリング社製)を使用した以外は、比較例1と同様にして導電性部材を得た。
【0069】
(比較例3)
空隙保持部材として、ABS樹脂(デンカABS GR−3000、電気化学工業社製)を使用した以外は、比較例1と同様にして導電性部材を得た。
【0070】
以上、実施例1〜3及び比較例1〜3で得た導電性部材の電気抵抗調整層について次の試験1及び試験2を行った。
【0071】
(試験1)
実施例1〜3及び比較例1〜3で得た導電性部材(サンプル)各10本につき、一体除去加工により所定段差を設けた直後、及び、表面層を加熱硬化させ所定時間調湿した後において、空隙保持部材の外径をレーザ測定器により測定した。測定ポイントは、空隙保持部材中心位置から0.75mmピッチで左右に2箇所の計5箇所(図7を参照。)で測定し、最大径、最小径の差を確認した。
【0072】
(試験2)
実施例1〜3及び比較例1〜3で得た導電性部材(サンプル)各2本をそれぞれ図8に示す画像形成装置に搭載し、印加電圧をDC=−800V、AC=2400Vpp(周波数=2kHz)に設定して、600,000枚通紙した後の空隙保持部材の状態について評価を行った。評価環境は、23℃、60%RHとし、評価用トナーとしては、PxPトナー(粒径5μm)を用いた。
【0073】
評価結果は、次の表1に示される。
【0074】
【表1】

【0075】
表1における総合判定は、
○;実用上問題がないもの、
×;実用上問題があるもの、
とした。
【0076】
表1から、つぎのことがわかる。即ち、実施例1〜3においては、表面層の加熱硬化前後での空隙保持部材の変動として空隙保持部材内での最大、最小外径の差は、約15μm前後で最大偏差においても20μmを超えるものは確認できなかった。本試験での外径差20μmの持つ意味は、形成段差が40±10μmより公差分を考慮している。また、トナー固着は、空隙保持部材及び表面層ともに見られなかった。
【0077】
これに対して、比較例1〜3においては、空隙保持部材の最大外径、最小外径の最大偏差が20μm以内に収まるものはなかった。その理由は、空隙保持部材のアニール不足により、空隙保持部材が塗料樹脂の加熱硬化工程の熱により内部歪みが開放され、一体除去加工による空隙保持部材の平面性が維持できなくなり、元の形状に対して変動して戻らないからである。また、通紙試験後の空隙保持部材は、外径差が20μm以上あることにより、入り込みトナーによるトナー固着が観察されるサンプルが存在した。さらに、外径差の影響から600,000枚通紙後の空隙保持部材に偏磨耗(フレの変化)が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)を形成する方法を示す説明図であって、(a)は、空隙保持部材の外周面と電気抵抗調整層の外周面とに切削加工、研削加工等の除去加工が施された後の形状を示し、(b)は、除去加工が施された電気抵抗調整層の外周面に形成された表面層に加熱硬化処理を施す前の形状を示し、そして、(c)は、除去加工が施された電気抵抗調整層の外周面に形成された表面層に加熱硬化処理を施した後の形状を示す。
【図3】空隙保持部材の拡大説明図であって、(a)は、表面層に加熱硬化処理を施す前の空隙保持部材の最大外径及び最小外径を示し、そして、(b)は、表面層に加熱硬化処理を施した後の空隙保持部材の最大外径及び最小外径を示す。
【図4】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)における導電性支持体へ圧入する前の高密度ポリエチレンで構成される空隙保持部材にアニール処理を施した時に生じる外径変化を説明するグラフであって、(a)は、アニール時間を一定時間:60分とした時のアニール温度[℃]とφ外径収縮量[mm]との関係を示し、そして、(b)は、アニール温度を一定温度:120℃とした時のアニール時間[分とφ外径収縮量[mm]との関係を示す。
【図5】導電性部材(帯電ローラ)を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施の形態を示す画像形成装置の説明図である。
【図7】実施例及び比較例で得た導電性部材(帯電ローラ)における空隙保持部材の外径の測定箇所を示す説明図である。
【図8】従来の電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【図9】従来の導電性部材(帯電ローラ)の断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 導電性支持体
2 電気抵抗調整層
3 表面層
4 空隙保持部材
5 像担持体
G 空隙
10 導電性部材(帯電ローラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層の両端部に圧入された空隙保持部材とを、有する導電性部材であって、前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、該空隙保持部材の外周面に、前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられている導電性部材において、
前記空隙保持部材の導電性支持体への圧入前のアニール処理と圧入後のアニール処理とによって、前記空隙保持部材の外径の最大径と最小径との差が、20μm以内にされていることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記空隙保持部材を形成する樹脂材料が、吸湿性及び耐摩耗性の小さい合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記樹脂材料が、高密度ポリエチレン及び高分子量ポリエチレンから選ばれる樹脂材料であることを特徴とする請求項2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記空隙保持部材が、合成樹脂の成形加工により形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と該導電性支持体上に設けられた該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記電気抵抗調整層上に表面層が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
導電性部材が円筒形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記導電性部材を帯電部材としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項9】
請求項8に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されるように設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−93885(P2007−93885A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281866(P2005−281866)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】