説明

導電性高分子の製造方法および導電性高分子

【課題】液晶電解液を用いた電解重合による新規な構造秩序をもつ導電性高分子の製造方法および導電性高分子を提供する。
【解決手段】共役芳香族モノマーをスメクチック液晶電解液中において電解重合させ、スメクチック液晶の構造を反映した微細なフィブリルによるポリゴナル構造およびフォーカルコニックファンシェイプ構造を有する導電性高分子を合成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子の製造方法および導電性高分子に関するものであり、さらに詳しくは、液晶電解液を用いた電解重合による導電性高分子の製造方法およびそれにより得られる導電性高分子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は、化学および物理の両方の面において、そして半導体デバイスでの応用において多くの注目を集めている。 本発明者らは、これまでにコレステリック液晶場での電解重合による導電性高分子の合成について検討を進めてきた(特許文献1参照)。この技術によれば、合成される共役高分子膜はコレステリック液晶場の影響を受けて規則的な螺旋構造を形成し、これにより高分子膜全体としてキラルな特性が発現することが明らかになっている。また、ネマチック液晶場での電解重合による導電性高分子の合成についても検討も行ってきている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−223016号公報
【特許文献2】特願2009−236492
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような背景において、本発明者らは、これまでに蓄積してきた液晶電解液を用いた電解重合の技術を、未だ十分な検討がなされていないスメクチック液晶電解液に適用することを試み、これまでにない新たな構造秩序を有し、それに基づく電気的、光学的特性を有する導電性高分子の合成について検討を行った。 一般にスメクチック液晶はネマチック液晶と比べて高粘性であるとともに、その液晶転移温度が高い。また、ネマチック液晶に比べて結晶により近く、層状的構造秩序をもつ。そのため、スメクチック液晶を有機反応における溶媒として用いた場合、溶質である反応物質の拡散性が低下し、反応が十分に進行しないことも考えられる。スメクチック液晶系での電解重合においてはこのような点も考慮しなければならない。
【0005】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、液晶電解液を用いた電解重合による新規な構造秩序をもつ導電性高分子の製造方法および導電性高分子を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0007】
第1:共役芳香族モノマーをスメクチック液晶電解液中において電解重合させ、スメクチック液晶の構造を反映した微細なフィブリルによるポリゴナル構造およびフォーカルコニックファンシェイプ構造を有する導電性高分子を合成することを特徴とする導電性高分子の製造方法。
【0008】
第2:スメクチック液晶電解液は、スメクチック液晶相を示す化合物とネマチック液晶相を示す化合物との混合液晶であることを特徴とする上記第1の導電性高分子の製造方法。
【0009】
第3:上記第1または第2の方法により得られる、スメクチック液晶電解液のスメクチック液晶の構造を反映した微細なフィブリルによるポリゴナル構造およびフォーカルコニックファンシェイプ構造を有する導電性高分子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スメクチック液晶の構造を反映して、微細なフィブリルによるポリゴナル構造およびフォーカルコニックファンシェイプ構造を有する導電性高分子を得ることができる。この導電性高分子は、その特異な構造秩序に基づく電気的、光学的性質を有し、例えば、電荷キャリア生成、回折、波長選択的な光の反射等を示す。
【0011】
また、スメクチック液晶電解液として、スメクチック液晶相を示す化合物とネマチック液晶相を示す化合物との混合液晶を用いることで、電解液の粘性を小さくして反応物質の拡散性を確保し反応を十分に進行させることができ、また室温で安定したスメクチック相も形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例の反応に用いるモノマーと支持塩を含むスメクチック液晶の偏光顕微鏡写真である(モノマー:2,3,2’,3’,2’’,3’-hexahydro-[5,5’:7’,5’’]ter[thieno[3,4-b]-[1,4]dioxine] (terEDOT)、支持塩:tetrabutylammonium perchlorate (TBAP)
【図2】図2は、スメクチック液晶中で合成したPEDOTの偏光顕微鏡写真である(鋭敏板は未挿入)。
【図3】図3は、スメクチック液晶中で合成したPEDOTの偏光顕微鏡写真である(鋭敏板を挿入)。
【図4】図4の(a)はPEDOTの偏光顕微鏡写真(鋭敏板は未挿入)、(b)はPEDOTの偏光顕微鏡写真(鋭敏板を挿入)、(c)〜(e)はポリマー表面の走査型電子顕微鏡写真である。(a)と(c)は同一サンプルで別の場所のポリゴナル構造を示す部分、(b)と(d)はフォーカルコニックファンシェイプ構造を示す部分である。(e)は35°の角度から観察したものである。
【図5】図5は、ポリマーのレーザ回折像である。写真右上は白色光を斜め方向から照射したときに見られる選択反射(構造色)を示す。
【図6】図6は、実施例においてSmA電解液中で合成したPEDOTのサイクリックボルタモグラムである。0.1Mアセトニトリル溶液でスキャン速度100mV/sにて測定し、参照電極は銀/塩化銀電極を用いた。
【図7】図7は、(上)terEDOTから常法によりアセトニトリル中で電解合成したPEDOTのサイクリックボルタモグラム (下)スメクチック液晶中で80℃において等方相で重合したPEDOTのサイクリックボルタンメトグラムを示す。いずれもモノマーを含まない0.1Mアセトニトリル溶液で測定し、参照電極は銀/塩化銀電極を用いた。
【図8】図8は、スメクチック相とスメクチック相中で重合したPEDOTの構造を示す。(a)フォーカルコニックファンシェイプ構造の内部構造 (b)スメクチックの層状の微細構造 (c)モノマー、支持塩を含むスメクチック液晶溶媒の室温における偏光顕微鏡写真 (d)スメクチック液晶中で合成したPEDOTのフィブリルの構造 (e)スメクチック液晶中で合成したPEDOTの微細構造 (f)スメクチック液晶中で合成したPEDOTのフォーカルコニックファンシェイプ構造(偏光顕微鏡写真)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、共役芳香族モノマーを、スメクチック液晶電解液中において電解重合させ、スメクチック液晶の構造を反映した微細なフィブリルによるポリゴナル構造およびフォーカルコニックファンシェイプ構造を有する導電性高分子を得ることを特徴としている。
【0015】
共役芳香族モノマーとしては、例えば、次式(I)で表される化合物を用いることができる。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、2つのA1はそれぞれ独立に1価の芳香族環含有基を示し、n個のA2はそれぞれ独立に2価の芳香族環含有基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
式(I)で表される共役芳香族モノマーにおいて、A1の芳香族環含有基は、芳香族環として炭化水素芳香族環または複素芳香族環を有するものである。
【0018】
炭化水素芳香族環としては、六員環等の単環またはこれを含む多環等を挙げることができ、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等のC6-C18の炭化水素芳香族環が挙げられる。
【0019】
複素芳香族環としては、窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を含有する五員環、六員環等の単環またはこれを含む多環等を挙げることができ、例えば、チオフェン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、オキサゾリン環、チアゾール環、ピラゾリン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環等を含む単環または多環のものが挙げられる。
【0020】
これらの炭化水素芳香族環、複素芳香族環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シアノ基、C1-C6アルキル基、C2-C6アルケニル基、C7-C18アリールアルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルコキシカルボニル基、C6-C10アリールオキシ基、C2-C8ジアルキルアミノ基、C2-C8アシル基等が挙げられる。また、炭化水素芳香族環または複素芳香族環の2原子に置換した2価の置換基、例えばC1-C6アルキレン基、あるいはC1-C6アルキレン基の主鎖に1〜3個のヘテロ原子が導入されたもの等であってもよい。
【0021】
また、隣接するA1とA2、あるいはA2とA2の間で、C1-C6アルキレン基、あるいはC1-C6アルキレン基の主鎖にヘテロ原子が導入されたもの等の2価の置換基を共有していてもよい。
【0022】
式(I)で表される共役芳香族モノマーにおいて、A2の芳香族環含有基は、芳香族環として炭化水素芳香族環または複素芳香族環を有するものであり、このような炭化水素芳香族環、複素芳香族環としては、A1について上記に例示したものが挙げられる。
【0023】
共役芳香族モノマーとして、具体的には、例えば、2,7-ジ(2-フリル)フルオレン、ビチオフェン、ターチオフェン、ビピリジン、1,4-ジ(2-チエニル)フェニレン、2,5-ジ(2-チエニル)ピリジン、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)またはその2量体や3量体、4,4’-ジ(2-フリル)ビフェニル等が挙げられる。
【0024】
共役芳香族モノマーとして1種を選択すればホモポリマーが得られ、2種以上とすれば、混合共役系のポリマーが得られる。
【0025】
電解重合に用いられるスメクチック液晶電解液は、スメクチック液晶と支持電解質とを必須成分としている。
【0026】
特に、スメクチック液晶相を示す化合物とネマチック液晶相を示す化合物との混合液晶は、粘性が小さく、室温で安定したスメクチック相を示す点から好適である。
【0027】
スメクチック液晶相を示す化合物としては、例えば、液晶性を発現する物質の末端基の炭素基が長いシアノビフェニル系、アルコキシシアノビフェニル系、シアノターフェニル系、フェニルエステル系、フッ素あるいは塩素を含有する物質等のスメクチックA相を呈する液晶材料等を用いることができる。
【0028】
例えば、下記一般式(I)の化合物を用いることができる。
【0029】
【化2】

【0030】
(式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基またはアルコキシ基を示す。)
また、例えば、下記一般式(II)〜(VII)の化合物を用いることができる。
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R8は、炭素数2〜18のアルキル基を示し、R7、R9、R10は、炭素数2〜18のアルキル基またはアルコキシ基を示し、Xはハロゲン元素を示す。)
上記の化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
スメクチック液晶相を示す化合物とともに用いられるネマチック液晶相を示す化合物としては、粘性を小さくし、混合液晶が室温で安定したスメクチック相を示すようにする点を考慮して、特に限定されず各種のものを用いることができる。例えば、溶媒を包含しなくても液晶形態が実現されるサーモトロピック液晶を用いることができ、また、液晶形成基(メソゲン)については主鎖型、側鎖型のいずれであってもよい。
【0034】
このような液晶の構造も特に限定されず、例えば、2つのベンゼン環をトランス−スチルベンやアゾキシベンゼン、ニトロン等の二重結合を含む連結基やビフェニル、シクロヘキサン等の連結基でつないだものが例示される。
【0035】
さらに、メソゲン基の末端にはアルキル基やアルコキシ基等のフレキシブルな置換基が導入されていることが好ましく、さらに、脂肪族鎖、剛直鎖または非対称構造を有する置換基等が導入されていてもよい。これらの置換基の長さは液晶の転移温度にも影響を及ぼすため、電解重合の温度等も考慮して、適宜に選択すればよい。
【0036】
例えば、6CB(4-シアノ-4’-n-ヘキシルビフェニル)等を用いることができる。その他、例えば、5CB、7CB(これらの頭の数字はアルキル基の炭素数を示す)、アルキルアゾベンゼン、フェニルアゾメチン系化合物等を用いることができる。
【0037】
支持電解質は、電解重合反応を阻害せず、液晶に十分な導電性を与えるものであればよく、一般に電気化学反応に用いられる種々のイオン性の塩等から印加電圧等に応じて適宜に選択することができる。具体的には、例えば、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)や過塩素酸リチウム等が挙げられる。
【0038】
電解重合のための装置としては、例えば実施例のようなセル構造を用いることができるが、これに限定されず、電極を有する各種の構成とすることができる。セル構造の装置としては、例えば、0.1-1mmのテフロン(登録商標)等のスペーサを二枚のITOガラスで挟んだセルを用いることができる。
【0039】
本発明では、以上の芳香族共役モノマー、スメクチック液晶、および支持電解質の配合比は、特に限定されないが、例えば、芳香族共役モノマー:1〜10モル%、スメクチック液晶:90〜96モル%、支持電解質:0.1〜1.0モル%の範囲とすることができる。 電解重合における印加電圧は、共役芳香族モノマーの種類や使用される液晶反応場、電極材料等に合わせて適宜に選択することができ、特に限定されないが、例えば、電圧1〜10V、通電時間1分〜5時間とすることが考慮される。なお、温度はスメクチック液晶相となる温度範囲とされる。
【0040】
重合終了後、重合セルを分解し、電極に析出した高分子を、例えばアセトン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、水、アセトニトリル等の溶媒で洗浄し、オリゴマーと液晶を除去する。
【0041】
このようにして得られるフィルムまたはシートは、特有の分子ケーブル状のフィブリル構造が観察される。そしてこのフィブリルが巨視的にスメクチック液晶の分子配列(ダイレクターの配列)を転写し、スメクチック状の巨視的構造を示す。
【0042】
すなわち、スメクチック液晶中でモノマーをボトムアップ的に液晶構造状に組み上げ、常法で得られるポリマーとは全く異なる分子構造体を作製することができる。
【0043】
図8は、スメクチック液晶中におけるポリマー形成のメカニズムを示す。(a)はスメクチック層のフォーカルコニックファンシェイプ構造を示し、(b)はその微視的な分子配列を示し、それが層状構造をなすことを示している。(c)はスメクチック液晶電解液の室温での偏光顕微鏡写真を示す。このスメクチック液晶電解液中で合成を行うことにより(d)のように高分子のフィブリルが液晶の層構造境界に沿って成長する。その微視的な部分を(e)に示す。そしてスメクチック液晶とよく似たフォーカルコニックファンシェイプ構造をもつポリマーが(f)のように形成される。
【0044】
本発明により得られる導電性高分子は、プラスチックエレクトロニクスや、分子ロボット等の各種の分野における利用が期待できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
スメクチック液晶の4-ヘプチルオキシ-4’-シアノビフェニル(8OCB)を次の手順に従って合成した。4-ヒドロキシシアノビフェニル(5g, 25.6mmol)とK2CO3(3.5g, 25.6mmol)を30mLエタノールに溶かした1-オクチルブロミド(4.95g, 25.6mmol)に加えた。これに触媒量のジベンゾクラウン-6(1mg)を加え、75-78℃で24時間リフラックスした。その後、溶媒をエバポレータで除き、ジエチルエーテルで抽出後、アセトンから再結晶し、5.2gの白色粉末を66%で得た。
【0047】
【表1】

【0048】
得られた8OCBを用いて、重量比で1/5の6CB/8OCB(6CB:ヘキシルシアノビフェニル)を混合液晶として調製した。これは偏光顕微鏡観察下で室温にて安定なSmAのフォーカルコニックファンシェイプ構造、ポリゴナル構造を示した。8OCBはSmA相を54.5℃と67℃の間で示すが、6CBと8OCBの混合液晶は室温で安定なスメクチック相を示すとともに良好な流動性を有していた。
【0049】
この混合液晶0.5gにTBAP(0.1mg)とterEDOT(monomer, 5mg)をアルゴン雰囲気下で加え、溶解した。図1は、これらの支持塩とモノマーを含む電解液の偏光顕微鏡写真である。このようにスメクチック液晶に典型的な扇状構造を示した。
[スメクチック中でのterEDOTからPEDOTの合成]
次のスキームに従ってPEDOTを合成した。
【0050】
【化4】

【0051】
上記において調製したモノマーを含む混合液晶を0.2 mmのテフロン(登録商標)スペーサを二枚のITOガラス(9Ω/cm2)で挟んだセルにゆっくり流し込んだ。
【0052】
これを60℃に昇温し、混合液晶を一旦等方相にした後、徐々に放冷しスメクチック液晶の状態にした。
【0053】
これに4Vの電圧を30分印加して重合を行った。重合終了後、重合セルを分解し、陽極側に析出したポリマーを溶媒で洗浄し、オリゴマーと液晶を除去した。
【0054】
得られたポリマーの偏光顕微鏡写真を図2に示す。このように、スメクチック液晶のポリゴナル組織によく似た光学構造を示した。
【0055】
図3は、鋭敏板を挿入時のポリマーの偏光顕微鏡写真を示す。第一象限、第三象限は青色を示し、第二象限、第四象限は赤色を示している。これは光学的に正で一軸性の結晶の光学的特徴である。またスメクチック液晶も同様の特徴を示す。すなわち、得られたポリマーはスメクチック液晶と同様の光学的特徴をもつことが確認された。
【0056】
図4(a)は、鋭敏板未挿入のポリマーの偏光顕微鏡写真である。スメクチック相に特徴的な扇状のポリゴナル構造を示している。図4(b)は、鋭敏板挿入時の偏光顕微鏡写真である。図3と同様にスメクチック相に特徴的なポリゴナル構造を示している。
【0057】
図4(c)、(d)は、ポリゴナル構造部位での走査型電子顕微鏡写真であり、ポリゴナル構造のドメイン内部が細いフィブリルからなることが確認できる。図4(e)は、斜め方向から観察したポリマーの走査型電子顕微鏡写真である。ドメインの先端部分が同心円状の構造になっていることが分かる。この細いフィブリルは周期的構造をなすことより、回折格子として機能する。
【0058】
図5に示すように、青色レーザをポリマー表面に照射すると、ブラッグの条件により回折が生じるとともに、ドメイン内部はフィブリルの配向がなされているため配向型の回折が見られた。また、周期的な表面構造によりコバルトブルーの選択反射が見られた(図5右上写真)。
【0059】
図6に示すように、0.1M TBAPアセトニトリル溶液中でのサイクリックボルタンメトリー測定(銀−塩化銀参照電極)においては電気化学的なドーピングに基づく酸化波が0V付近にみられ、-0.5V付近に脱ドープによる還元波が見られる。この特徴は図7(上)のアセトニトリル中でterEDOTを重合して得られたPEDOTおよび図7(下)のスメクチック液晶溶媒中80℃の等方相の状態で重合しterEDOTから得られたPEDOTのサイクリックボルタンメトリーの測定結果とほぼ一致する。
【0060】
また赤外線吸収測定では6CBの末端CN基の伸縮運動に由来する2227cm-1の吸収がみられず、またスメクチック液晶状態で合成したPEDOTが、アセトニトリル中でterEDOTを重合して得られたPEDOT、スメクチック液晶溶媒中80℃の等方相の状態で重合し得られたPEDOTと同様のスペクトル形状を示すことから、ポリマーの一次構造は同様であり一方で巨視的構造は大きく異なることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役芳香族モノマーをスメクチック液晶電解液中において電解重合させ、スメクチック液晶の構造を反映した微細なフィブリルによるポリゴナル構造およびフォーカルコニックファンシェイプ構造を有する導電性高分子を合成することを特徴とする導電性高分子の製造方法。
【請求項2】
スメクチック液晶電解液は、スメクチック液晶相を示す化合物とネマチック液晶相を示す化合物との混合液晶であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法により得られる、スメクチック液晶電解液のスメクチック液晶の構造を反映した微細なフィブリルによるポリゴナル構造およびフォーカルコニックファンシェイプ構造を有する導電性高分子。

【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−127033(P2011−127033A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287987(P2009−287987)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】