導電性高分子ナノ微粒子及び当該導電性高分子ナノ微粒子の製造方法
【課題】界面活性剤の存在がなく、導電性に優れた導電性高分子ナノ微粒子及び当該導電性高分子ナノ微粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、平均粒子径が10〜1000nmであり、微粒子中に界面活性剤が取り込まれておらず、当該界面活性剤による導電率の低下を招くこともなく導電性に優れるため、機能性電子材料ないし電子センシングマテリアルとして有用である。また、かかる導電性高分子ナノ微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーを酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素で混合して重合することにより、簡便かつ効率よく得ることができる。
【解決手段】本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、平均粒子径が10〜1000nmであり、微粒子中に界面活性剤が取り込まれておらず、当該界面活性剤による導電率の低下を招くこともなく導電性に優れるため、機能性電子材料ないし電子センシングマテリアルとして有用である。また、かかる導電性高分子ナノ微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーを酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素で混合して重合することにより、簡便かつ効率よく得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子ナノ微粒子及び当該導電性高分子ナノ微粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、導電性に優れ、電子センシングマテリアルとして最適な導電性高分子ナノ微粒子及び当該導電性高分子ナノ微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリチオフェン(Pth)類、ポリピロール(PPy)類、ポリアニリン類(PAn)等に代表されるπ−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなる導電性高分子は、電子センシングマテリアル(電子機能性材料)への応用が期待されている。一方、これらの導電性高分子は、そのπ−共役二重結合の強固さのために水や有機溶媒に対する溶解性が低く、成形加工が困難であるといった問題があった。
【0003】
よって、これらの導電性高分子を微粒子状態で合成・重合することが検討されており、例えば、モノマーに対して、水や有機溶媒といった助溶媒とノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の界面活性剤を分散剤として適用し、酸化剤を使用しない電解重合で、π−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなるナノサイズの導電性高分子微粒子(導電性高分子ナノ微粒子)を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、溶媒として、超臨界状態の二酸化炭素とエタノールを用い、酸化剤として塩化鉄(FeCl3)、及び界面活性剤を適用したポリピロールの製造方法も提案されている(例えば、非特許文献1を参照。)
【0004】
【特許文献1】特開2003−119080号公報
【非特許文献1】Tanら、「Ionic Hydrocarbon Surfactants for Emulsification and Dispersion Polymerization in Supercritical CO2」、American Chemical Society(米国)、Macromolecules 2006,39,p7471−7473
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、重合の際に界面活性剤を使用した場合には、得られる導電性高分子ナノ微粒子に界面活性剤が残留することになる一方、界面活性剤の存在は導電率の低下を招くことになり、好ましくなかった。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、界面活性剤の存在がなく、導電性に優れた導電性高分子ナノ微粒子及び当該導電性高分子ナノ微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る導電性高分子ナノ微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなる導電性高分子ナノ微粒子であって、平均粒子径が10〜1000nmであり、界面活性剤が存在しないことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る導電性高分子ナノ微粒子は、前記した請求項1において、ポリチオフェン類であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、π−共役二重結合を有するモノマーを、酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素と混合して重合することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、前記した請求項3において、前記π−共役二重結合を有するモノマーがチオフェンまたはチオフェン誘導体であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、前記した請求項3または請求項4において、収率が50〜75%の時点で重合を終了させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、前記した請求項3ないし請求項5のいずれかにおいて、前記酸化剤が超原子価ヨウ素化合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る導電性高分子ナノ微粒子は、平均粒子径が10〜1000nmであり、微粒子中に界面活性剤が取り込まれておらず、当該界面活性剤による導電率の低下を招くこともなく導電性に優れるため、機能性電子材料ないし電子センシングマテリアルとして有用であり、例えば、半導体材料、導電性塗料、防錆塗料をはじめとして、耐電防止材、電解コンデンサ、高分子有機EL素子、二次電池、電磁波遮蔽材、有機トランジスタ、電子写真用感光体、有機半導体レーザー、有機太陽電池、キャパシタ、燃料電池、アクチュエータ、センサー、ナノワイヤ、インテリジェント材料、液晶性有機半導体等、あるいは、他の有機半導体、有機エレクトロニクス等の材料等として使用することができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る導電性高分子ナノ微粒子は、チオフェンまたはその誘導体の重合体であるポリチオフェン類であるので、導電性、軽量性、可塑性に優れ、半導体材料、導電性塗料、防錆塗料をはじめとして、耐電防止材、電解コンデンサ、高分子有機EL素子、二次電池、電磁波遮蔽材、有機トランジスタ、電子写真用感光体、有機半導体レーザー、有機太陽電池、キャパシタ、燃料電池、アクチュエータ、センサー、ナノワイヤ、インテリジェント材料、液晶性有機半導体等、あるいは、他の有機半導体、有機エレクトロニクス材料等の用途に最適である。
【0015】
本発明の請求項3に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、π−共役二重結合を有するモノマーを、酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素と混合して重合するようにしており、重合に際して界面活性剤を用いないため、生成物である導電性高分子ナノ微粒子に界面活性剤が存在(残留)することもなく、導電性に優れたナノ微粒子を提供することができる。また、酸化剤を用いた酸化重合を実施するに際して、溶媒として超臨界状態の二酸化炭素を使用するので、界面活性剤を使用した場合と同様に、平均粒子径が揃った球状の導電性高分子ナノ微粒子を簡便に提供することができる。
【0016】
本発明の請求項4に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、π−共役二重結合を有するモノマーとしてチオフェンまたはチオフェン誘導体を採用するので、前記した効果を享受するポリチオフェン類を提供することができる。
【0017】
本発明の請求項5に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、収率が50〜75%の時点で重合を終了させるようにしているので、高分子の鎖間での反応による粒子同士の凝集を防止することができ、平均粒子径の揃った反応生成物(導電性高分子ナノ微粒子)を得ることができる。
【0018】
本発明の請求項6に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、重合の際に使用される酸化剤として超原子価ヨウ素化合物を採用しており、当該化合物は、超臨界状態の二酸化炭素に可溶であり、金属酸化剤と同等の反応性を示すので、本発明の酸化剤として最適であり、重合が効率よく進行する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を説明する。本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなり、平均粒子径が10〜1000nmであり、界面活性剤が存在しないものである。
【0020】
本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーの重合体であり、使用できるモノマーとしては、例えば、チオフェン、3−アルキルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−アセチルチオフェン、3−フェニルチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体、ピロール、3−アルキルピロール、3−メトキシピロール、3−アセチルピロール、3−フェニルピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−メチルアニリン及びm−メチルアニリン等のアニリン誘導体等を使用することができる。そして、これらの重合体として、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−アセチルチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等のポリチオフェン類、ポリピロール、ポリ(3−アルキルピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−アセチルピロール)、ポリ(3−フェニルピロール)等のポリピロール類、ポリアニリン、ポリ(o−メチルアニリン)及びポリ(m−メチルアニリン)等のポリアニリン類等を導電性高分子ナノ微粒子として提供することができる。
【0021】
また、本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、前記したように微粒子中に界面活性剤が取り込まれていないので、当該界面活性剤による導電率の低下を招くこともなく、例えば、当該導電率を10−6〜100S/cm−1となる導電性高分子ナノ微粒子を提供することができる。
【0022】
このような、界面活性剤が存在せず、導電性にも優れた本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、例えば、π−共役二重結合を有するモノマーを酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素と混合して重合することにより、簡便にかつ効率よく得ることができる。かかる製造方法では、重合に際して界面活性剤を用いないため、生成物である導電性高分子ナノ微粒子に界面活性剤が存在(残留)せず、非共役系の化合物の存在による導電性の低下もなく、導電率を10−6〜100S/cm−1となる導電性に優れたナノ微粒子となる。また、水や有機溶媒といった助溶媒を用いないので、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)の排出がない環境調和型の合成プロセスとなるというメリットもある。そして、酸化剤を用いた酸化重合を実施するに当たって、溶媒として超臨界状態の二酸化炭素を使用するので、界面活性剤を使用した場合と同様に、平均粒子径が10〜1000nm(好ましくは20〜500nm)に揃った球状の導電性高分子ナノ微粒子を得ることができる。
【0023】
図1は、二酸化炭素の状態図である。二酸化炭素は、三重点(−56.6℃、0.52MPa)以上の温度と圧力条件下では液体化する場合があるが、温度と圧力が臨界点(31.1℃、7.38MPa)を超えると、液体と気体の特徴を兼ね備えた「超臨界流体」となる。一般に、超臨界状態の流体は速い物質移動や強い浸透性を有するため、溶解力を連続的に変化させることができ、特に、超臨界状態の二酸化炭素は、臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38MPaといった比較的穏和な条件で超臨界状態とすることが可能である。また、超臨界状態の二酸化炭素は、毒性もなく、化学的に不活性であり、高純度なものが安価で入手できるため、超臨界状態の二酸化炭素を溶媒として用いることは、安全面及びコスト面においても優れた手段であるといえる。
【0024】
二酸化炭素は、臨界点を超えた温度では、高密度に圧縮しても液化しない「非凝集性の高圧・高密度流体」となる。圧力と温度で分子間距離を調整でき、密度を希薄な状態から液体に近いところまで変化させることができ、超臨界流体への溶質の溶解度等を変化させることができる。π−共役二重結合を有するモノマーの重合に際して、超臨界状態の二酸化炭素を溶媒として用いることにより、密度のゆらぎによりモノマーの溶解性に部分的な差が生じる。これを反応系内で撹拌して混合することにより、微細な反応場を作ることができ、界面活性剤を使用しなくとも、界面活性剤を使用したと同様に粒子状(球状)の反応生成物(導電性高分子ナノ微粒子)を得ることができる。
【0025】
また、前記したように、二酸化炭素は、臨界点を超えた温度では、高密度に圧縮しても液化しない「非凝集性の高圧・高密度流体」となるため、圧力と温度で分子間距離を調整でき、密度を希薄な状態から液体に近いところまで調整することにより、超臨界流体への溶質の溶解度等を変化させることができる。本発明にあっては、超臨界状態の二酸化炭素の密度を制御することができるので、かかる二酸化炭素の密度の制御を利用して、生成される導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径を制御することが可能となる。
【0026】
すなわち、重合における超臨界状態の二酸化炭素は、概ね0.5〜1.0g/cm3程度で推移し、本発明にあっても、かかる範囲の密度で実施することができ、平均粒子径が10〜2000nmの範囲の導電性高分子ナノ微粒子を得ることが可能となるが、二酸化炭素の密度を高くすると、導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径を小さくすることができ、例えば、密度を0.75〜0.95g/cm3とすることにより、得られる導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径を30〜200nm程度とすることができる。二酸化炭素の密度を高くすることで、モノマーが反応系内で安定に分散することができ、反応生成物である導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径を小さくすることができる。
【0027】
臨界状態の二酸化炭素の密度は、二酸化炭素の温度と圧力により決定される。臨界状態の二酸化炭素の温度は、臨界点(31.1℃)以上の温度であればよいが、二酸化炭素の温度を高くするほど密度が低くなり、平均粒子径は大きくなる。また、臨界状態の二酸化炭素の圧力も、臨界点(7.38MPa)以上の圧力であればよいが、圧力を高くするほど密度は高くなり、平均粒子径は小さくなる。超臨界状態の二酸化炭素の温度は、概ね40〜80℃程度とすればよく、また、圧力は、15〜25MPa程度とすればよい。
【0028】
本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法において、π−共役二重結合を有するモノマーとしては、導電性高分子を製造するために使用されるモノマーであれば特に限定されないが、例えば、ポリチオフェン類を製造するのであれば、チオフェン、3−アルキルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−アセチルチオフェン、3−フェニルチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体、ポリピロール類を製造するのであれば、ピロール、3−アルキルピロール、3−メトキシピロール、3−アセチルピロール、3−フェニルピロール等のピロール誘導体、ポリアニリン類を製造するのであれば、アニリン、o−メチルアニリン及びm−メチルアニリン等のアニリン誘導体等を使用することができる。本発明にあっては、この中でも、好ましくは、チオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン等に代表されるチオフェン誘導体、ピロール及びアニリン等が挙げられる。
【0029】
モノマーの濃度は、製造しようとするポリマー(導電性高分子ナノ微粒子)の種類、導電率や平均粒子径等により決定すればよいが、概ね1〜1000mM(0.001〜1M)の範囲内で選択することが好ましい。なお、本発明にあっては、モノマーの濃度は、反応生成物である導電性高分子ナノ微粒子に影響し、一般に、モノマーの濃度を高くするほど、導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径は大きくなる。
【0030】
また、使用できる酸化剤としては、超臨界状態の二酸化炭素に可溶であればよく、いわゆる「超原子価ヨウ素化合物」と呼ばれる化合物を酸化剤として酸化剤を使用することができる。超原子化ヨウ素化合物としては、例えば、(ペルフルオロ−n−オクチル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(ペルフルオロヘキシル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(ペルフルオロイソプロピル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(ペルフルオロプロピル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ヨードメシチレンジアセタート、フェニル[2−(トリメチルシリル)フェニル]ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン、[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ペンタフルオロベンゼン等の酸化剤が挙げられる。これらの酸化剤は、1種類を単独で使用してもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0031】
なお、かかる超原子化ヨウ素化合物は、下記式(I)または下記式(II)で表される。ここで、式(I)または式(II)において、R1は、H、CH3またはF、R2は、フェニル、アルキル、パーフルオロアルキル、Aは、アルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、テトラフルオロボレートのようなアニオン、R2’、R3’は、アルキルスルホン酸、パーフルオロスルホン酸、アルキルエステル、パーフルオロエステルの1つまたは2つで、上記が1つのものは他に1つ、アルキル、パーフルオロアルキル、あるいはフェニルを有する。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
これらの超原子価ヨウ素化合物は、超臨界状態の二酸化炭素に可溶であることに加え、化合物中に金属元素を含まないにもかかわらず、金属酸化剤と同等の反応性を示し、また、ドーピング剤としての性質も併せ待っているので、本発明の製造方法に使用される酸化剤として好ましい。また、これらの超原子価ヨウ素化合物は、フッ素基を含むことにより、超臨界状態の二酸化炭素との親和性が高くなり可溶となる。一方、例えば塩化鉄(FeCl2)等の遷移金属を含む酸化剤の場合、超臨界状態の二酸化炭素に不溶となり、結果的に有機溶媒を添加しないといけないため、本発明の製造法に使用される酸化剤としては好ましくない。
【0035】
使用する酸化剤の濃度は、モノマーの種類や濃度、また、使用する酸化剤の種類等に対応させて決定すればよく、概ね1〜1000mM(0.001〜1M)(あるいは、モノマー1Mに対して概ね0.05〜0.5M)程度とすればよい。
【0036】
前記の酸化剤を用いた酸化重合は、酸化剤、π−共役二重結合を有するモノマー、及び溶媒となる超臨界状態の二酸化炭素を混合するが、撹拌状態で実施することが好ましい。撹拌は、マグネットスターラー、ホモジナイザー、撹拌機等の公知の撹拌手段を用いて行うことができ、撹拌速度としては、例えば、100〜1000rpmとすることができる。
【0037】
重合時間は、使用されるモノマーの種類、濃度、及び量等によって適宜決定すればよいが、概ね30分以上とすればよく、30〜120分とすることが好ましい。なお、重合を過度に進行させると、高分子の鎖間での反応により粒子同士の凝集が起こり、平均粒子径の揃った導電性高分子ナノ微粒子が得られない場合があるため、例えば、収率が50〜75%(重合時間としては、概ね40〜80分程度)のところで重合を終了させると、粒子同士の凝集を防止することができ、平均粒子径の揃った反応生成物(導電性高分子ナノ微粒子)を得ることができる。
【0038】
なお、反応系には、前記のモノマー、酸化剤、及び超臨界状態の二酸化炭素といった必須成分のほか、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、各種の添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。添加剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリルといった有機溶剤等が挙げられる。
【0039】
図2は、本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法を実施する製造装置の一態様を示した概略図である。図2に示す製造装置1において、高圧セル10は、原料を導入して重合反応を実施するものであり、高圧セル10の周囲には、高圧セル10を加熱するためのヒーター11(リボンヒーター)が配設され、また、高圧セル10の内部には、撹拌用のスターラー13が載置されている。高圧セル10の温度及び圧力は、設置される熱電対14及び圧力計15により確認することができる。なお、高圧セル10は、サファイアガラスからなる観察窓17を介して、外部から高圧セル10の内部の状態を確認することができる。
【0040】
重合の溶媒として使用される二酸化炭素は、二酸化炭素ボンベ21に貯蔵され、図2にあっては、経路Aを通過して高圧セル10の内部に導入される。また、原料となるπ−共役二重結合を有するモノマーは、図2の製造装置1にあっては経路Bに仕込まれ、二酸化炭素によって高圧セル10の内部に圧入される。ヒーター12(リボンヒーター)は、通過する二酸化炭素を加熱する。なお、高圧セル10の内部を含めた反応系内の圧力は、ポンプ22の駆動により調整され、系内の圧力は圧力計16により測定される。また、経路内及び高圧セル10にはバルブVが配設されている。
【0041】
図3を用いて、本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法の一態様を説明する。図3は、本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法のフローチャートを示した図である。まず、高圧セル10の内部に酸化剤を導入し(S1)、高圧セル10を密閉状態として臨界点以上の温度(例えば、40〜80℃)とする(S2)。次に、二酸化炭素ボンベ21から二酸化炭素を、経路Aを通過させてセル内に導入した後(S3)、高圧セル10を臨界点以上の圧力(例えば、15〜25MPa)として超臨界状態とし(S4)、暫く撹拌する。この際、系を安定させるため暫く(30〜120分程度)放置するようにしてもよい。
【0042】
経路Bにπ−共役二重結合を有するモノマーを仕込み、酸化剤と超臨界状態の二酸化炭素が混合された高圧セル10の内部にモノマーを、経路Bから高圧セル10内に導入した後(S5)、さらに撹拌、混合して重合を進行させる(S6)。重合終了後、高圧セル10の内部を減圧して(S7)、導電性高分子ナノ微粒子を得ることができる。
【0043】
得られた導電性高分子ナノ微粒子は、減圧後、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールといったアルコール類等で遠心分離等により洗浄して精製することが好ましい(S8)。なお、精製後の導電性高分子ナノ微粒子は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールといったアルコール類等の溶媒に再分散させることも可能であるので、これらの溶媒の分散溶液(導電性高分子ナノ微粒子分散溶液)として使用することができる。
【0044】
本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、界面活性剤の存在がなく優れた導電性を備えているので、機能性電子材料ないし電子センシングマテリアルとして有用であり、例えば、半導体材料、導電性塗料、防錆塗料をはじめとして、耐電防止材、電解コンデンサ、高分子有機EL素子、二次電池、電磁波遮蔽材、有機トランジスタ、電子写真用感光体、有機半導体レーザー、有機太陽電池、キャパシタ、燃料電池、アクチュエータ、センサー、ナノワイヤ、インテリジェント材料、液晶性有機半導体等、あるいは、他の有機半導体、有機エレクトロニクス等の材料等として使用することができる。
【0045】
また、本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、有機溶剤に分散可能であり、分散安定性も良好であるため、導電性高分子ナノ微粒子をメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、あるいは、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等の有機ホルムアミド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等の有機スルホキシド類、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル類、アセトン、ジエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のフラン類等の有機溶媒に分散させ、キャスト法、ディップ法、スピンコート法、アプリケータ法、インクジェット法等の公知の製膜手段を用いて所定の基材上にコーティング、乾燥することにより、導電性高分子ナノ微粒子からなる薄膜を当該基材上に簡便に形成させることができる。
【0046】
なお、本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、いわゆるコア−シェル型複合粒子として使用するようにしてもよい。導電性高分子ナノ微粒子は、コア−シェル型複合粒子のコア部、シェル部のいずれにも適用することができ、例えば、金、銀、白金等の貴金属、カーボン類、ポルフィリン、フタロシアニン等の錯体類、テトラフェニルベンジジン類、芳香族アミン類、スチリルベンゼン類等のモノマー及びオリゴマー等をコア部、導電性高分子ナノ微粒子をシェル部として適用した複合粒子や、導電性高分子ナノ微粒子をコア部、他のπ−共役系高分子、ポルフィリン、フタロシアニン等の有機化合物等をシェル部として適用した複合粒子として使用することができる。また、ヨウ素、低分子アニオン、アニオン系オリゴマー、アニオン系高分子等を導電性高分子ナノ微粒子にドープした複合材料として使用することもできる。
【0047】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記し
た実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる
範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。ま
た、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達
成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実
施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本
発明に含まれるものである。
【0048】
例えば、前記した実施形態では、導電性高分子ナノ微粒子の製造方法として、図2に示した製造装置1を使用する例を示して説明したが、導電性高分子ナノ微粒子の製造方法の実施としてはこれには限定されず、他の構成の製造装置を使用して当該製造方法を実施するようにしても問題はない。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範
囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)の重合:
図2に示した製造装置1を用いて、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の重合を行った。観察窓17付きのSUS316製高圧セル10(容量:50cm3)中に酸化剤(重合開始剤)として、フッ素基を有した超原子価ヨウ素化合物であり、超臨界状態の二酸化炭素に可溶な[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(BTI)(濃度:0.05M)を導入し、高圧セル10を密封した後、スターラー13で撹拌しながら、経路Aより二酸化炭素(CO2)を導入し、圧力を20MPa、温度を40℃まで上昇させ、二酸化炭素を超臨界状態として、系を安定させるため30分放置した。
【0051】
次に、経路Bの管内にπ−共役二重結合を有するモノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)(濃度:0.05M)を仕込み、バルブVにより経路を切り替え、その差圧を利用することで高圧セル10の内部に当該モノマーを圧入して、撹拌、混合した。高圧セル10の内部に3,4−エチレンジオキシチオフェンを導入した時を重合開始時間として、反応時間60分で重合して、重合体であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を得た。なお、得られた重合体には界面活性剤は存在しなかった。また、酸化剤として使用した[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(BTI)は、反応後CF3COO−となってポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)に取り込まれ、ドープ材の一部として作用している。
【0052】
得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)は、減圧して回収後、遠心分離(回転数:15000rpm)によりエタノール洗浄して精製した後、動的光散乱(Dynamic Light Scattering:DLS)による平均粒子径測定、及び走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)による粒子形状の観察を行った。
【0053】
なお、遠心分離によって回収したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、超音波処理によってメタノールに再分散させることが可能であった。また、得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の導電率を、ドープ材としてヨウ素を用いて、抵抗率測定器で四端子法により測定した結果、約3.3×10−2S/cmであった。
【0054】
前記した条件(超臨界状態の二酸化炭素の温度を40℃、圧力を20MPa、酸化剤の濃度を0.05M、モノマー濃度を0.05M、重合時間を60分、圧力を20MPa、二酸化炭素の密度を0.84g/cm3)において重合したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)微粒子の動的光散乱(DLS)における測定結果を図4に示した。図4に示したように、得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)微粒子の平均粒子径(平均1次粒子径)は約100nmであった。なお、このように、本発明に係る導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径(平均1次粒子径)は、例えばDLSを用いて測定した値とすればよい。
【0055】
また、図5は、実施例1で得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。図5に示すように、得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)微粒子の形状は、粒子径(平均粒子径)が揃った球形状の微粒子であることが明らかとなった。これは、超臨界状態の二酸化炭素を溶媒に用いた場合、密度のゆらぎにより3,4−エチレンジオキシチオフェンの溶解性に部分的な差が生じ、これを撹拌、混合することで、微細な反応場を作ることができ、界面活性剤を用いた場合と同様に粒子状の生成物が得られたと考えられる。
【0056】
次に、重合条件による平均粒子径の制御の検討をした。具体的には、前記した実施例1の条件において、温度を一定(40℃)にして、圧力を調整して密度を変化させた場合におけるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の平均粒子径への影響を確認した。
【0057】
図6は、温度一定下(40℃)における二酸化炭素の密度と得られたポリエチレンジオキシチオフェンの平均粒子径の関係を示した図である(二酸化炭素の条件を表1に示す。)。図6に示すように、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)微粒子の大きさは超臨界状態の二酸化炭素の密度に依存し、密度が高いほど得られるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の平均粒子径は小さくなっていることが確認できた。この理由は、二酸化炭素の密度が高くなることで、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)微粒子が安定に分散しているためと考えられる。
【0058】
(二酸化炭素の条件)
【表1】
【0059】
[実施例2]
ポリピロール(PPy)の重合:
モノマーとして、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の代わりにピロール(Py)を用い、酸化剤の濃度を0.05Mから0.005Mとした以外は、実施例1に示した方法と同様な方法を用いて、重合体であるポリピロール(PPy)を製造した。なお、得られた重合体には界面活性剤は存在しなかった。
【0060】
得られたポリピロールを走査型電子顕微鏡(SEM)による粒子形状の観察を行った。図7は、実施例2で得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。図7に示すように、実施例1のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)と同様、比較的ナノオーダーの大きさに揃ったポリピロール微粒子が得られたことが確認できた。また、微粒子の形状は球形状であった。なお、得られたポリピロール(PPy)の導電率を、実施例1と同様に四端子法により測定した結果、約2.1×10−1S/cmであった。
【0061】
次に、重合時間に対する平均粒子径の変化を確認した。具体的には、前記した実施例2の条件(実施例1の条件と共通)において、重合時間を30分、60分(前記した条件)、180分、360分とした場合のポリピロールの平均粒子径の変化を確認した。
【0062】
図8は、重合時間を60分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図、図9は、重合時間を180分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図、図10は、重合時間を360分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。図8ないし図10に示したように、重合時間の経過とともに一次粒子径が増加し、粒子同士の凝集によりさらに大きな粒子となることが確認できた。
【0063】
また、図11は、重合時間と収率との関係(経時変化)を示した図である(二酸化炭素の温度を40℃、圧力を20MPa、密度を0.84g/cm3)。図11に示したように、重合時間が30分の時点で収率が約50%まで達しており、重合の初期において急激に反応が進行することが確認できた。これらの結果より、本実施例において、最適な反応時間は60分程度であると考えられる。
【0064】
さらに、実施例1と同様に、重合条件による平均粒子径の制御の検討をした。具体的には、前記した実施例2(実施例1と共通)の条件において、温度を一定(40℃)にして、圧力を調整して密度を変化させた場合におけるポリピロールの平均粒子径への影響を確認した。
【0065】
図12は、温度一定下(40℃)における二酸化炭素の密度と得られたポリピロール(PPy)の平均粒子径の関係を示した図である(二酸化炭素の条件を表2に示す。)。図12に示すように、実施例1のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の場合と同様、ポリピロール微粒子の大きさは超臨界状態の二酸化炭素の密度に依存し、密度が高いほど得られるポリピロールの平均粒子径は小さくなっていることが確認できた。
【0066】
(二酸化炭素の条件)
【表2】
【0067】
また、実施例2(実施例1と共通)の条件において、圧力を一定(20MPa)重合温度を40℃から50℃、80℃に変更した場合における平均粒子径の変化を確認した(二酸化炭素の条件を表3に示す。)。図13は、重合温度とポリピロールの平均粒子径の関係を示した図である。図13に示したように、重合温度が高いほど、すなわち、超臨界状態の二酸化炭素の密度が低くなるほど、得られるポリピロールの平均粒子径は大きくなることが確認できた。
【0068】
(二酸化炭素の条件)
【表3】
【0069】
そして、使用したモノマーであるピロール(Py)の濃度、酸化剤である[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(BTI)の濃度を変化させた場合における、得られるポリピロール(PPy)の平均粒子径への影響を確認した。具体的には、ピロールの濃度を0.05M、0.1M、0.25M、及び[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼンを0.0025M、0.005M、0.01Mとした場合におけるポリピロールの平均粒子径の変化を確認した。
【0070】
図14は、ピロール及び[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼンの濃度とポリピロール(PPy)の平均粒子径との関係を示した図である(二酸化炭素の温度を40℃、圧力を20MPa、密度を0.84g/cm3)。図14に示したように、酸化剤である[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼンの濃度を変化させても平均粒子径にはほとんど影響がないことが確認できた。一方、モノマーであるピロール濃度が高くなると、それに応じて平均粒子径は大きくなった。
【0071】
[実施例3]
ポリ(3−アセチルチオフェン)の重合:
モノマーとして、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の代わりに3−アセチルチオフェンを用いた以外は、実施例1に示した方法と同様な方法を用いて、重合体であるポリ(3−アセチルチオフェン)を製造した。なお、得られた重合体には界面活性剤は存在しなかった。得られたポリ(3−アセチルチオフェン)の導電率を、実施例1と同様に四端子法により測定した結果、4.0×10−2S/cmであった。
【0072】
[実施例4]
ポリ(3−アセチルピロール)の重合:
モノマーとして、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の代わりに3−アセチルピロールを用いた以外は、実施例1に示した方法と同様な方法を用いて、重合体であるポリ(3−アセチルピロール)を製造した。なお、得られた重合体には界面活性剤は存在しなかった。得られたポリ(3−アセチルピロール)の導電率を、実施例1と同様に四端子法により測定した結果、5.0×10−2S/cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、電子機能性材料等として適用される導電性高分子ナノ微粒子として有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】二酸化炭素の状態図である。
【図2】本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法を実施する製造装置の一態様を示した概略図である。
【図3】本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法のフローチャートを示した図である。
【図4】実施例1で得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)微粒子の動的光散乱(DLS)における測定結果を示した図である。
【図5】実施例1で得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図6】二酸化炭素の密度とポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)の平均粒子径の関係を示した図である。
【図7】実施例2で得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図8】重合時間を60分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図9】重合時間を180分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図10】重合時間を360分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図11】重合時間と収率との関係を示した図である。
【図12】二酸化炭素の密度とポリピロール(PPy)の平均粒子径の関係を示した図である。
【図13】重合温度とポリピロール(PPy)の平均粒子径の関係を示した図である。
【図14】ピロール及び[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼンの濃度とポリピロール(PPy)の平均粒子径との関係を示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1 製造装置
10 高圧セル
11,12 ヒーター(リボンヒーター)
13 スターラー
14 熱電対
15,16 圧力計
17 観察窓
21 二酸化炭素ボンベ
22 ポンプ
V バルブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子ナノ微粒子及び当該導電性高分子ナノ微粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、導電性に優れ、電子センシングマテリアルとして最適な導電性高分子ナノ微粒子及び当該導電性高分子ナノ微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリチオフェン(Pth)類、ポリピロール(PPy)類、ポリアニリン類(PAn)等に代表されるπ−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなる導電性高分子は、電子センシングマテリアル(電子機能性材料)への応用が期待されている。一方、これらの導電性高分子は、そのπ−共役二重結合の強固さのために水や有機溶媒に対する溶解性が低く、成形加工が困難であるといった問題があった。
【0003】
よって、これらの導電性高分子を微粒子状態で合成・重合することが検討されており、例えば、モノマーに対して、水や有機溶媒といった助溶媒とノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の界面活性剤を分散剤として適用し、酸化剤を使用しない電解重合で、π−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなるナノサイズの導電性高分子微粒子(導電性高分子ナノ微粒子)を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、溶媒として、超臨界状態の二酸化炭素とエタノールを用い、酸化剤として塩化鉄(FeCl3)、及び界面活性剤を適用したポリピロールの製造方法も提案されている(例えば、非特許文献1を参照。)
【0004】
【特許文献1】特開2003−119080号公報
【非特許文献1】Tanら、「Ionic Hydrocarbon Surfactants for Emulsification and Dispersion Polymerization in Supercritical CO2」、American Chemical Society(米国)、Macromolecules 2006,39,p7471−7473
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、重合の際に界面活性剤を使用した場合には、得られる導電性高分子ナノ微粒子に界面活性剤が残留することになる一方、界面活性剤の存在は導電率の低下を招くことになり、好ましくなかった。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、界面活性剤の存在がなく、導電性に優れた導電性高分子ナノ微粒子及び当該導電性高分子ナノ微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る導電性高分子ナノ微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなる導電性高分子ナノ微粒子であって、平均粒子径が10〜1000nmであり、界面活性剤が存在しないことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る導電性高分子ナノ微粒子は、前記した請求項1において、ポリチオフェン類であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、π−共役二重結合を有するモノマーを、酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素と混合して重合することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、前記した請求項3において、前記π−共役二重結合を有するモノマーがチオフェンまたはチオフェン誘導体であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、前記した請求項3または請求項4において、収率が50〜75%の時点で重合を終了させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、前記した請求項3ないし請求項5のいずれかにおいて、前記酸化剤が超原子価ヨウ素化合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る導電性高分子ナノ微粒子は、平均粒子径が10〜1000nmであり、微粒子中に界面活性剤が取り込まれておらず、当該界面活性剤による導電率の低下を招くこともなく導電性に優れるため、機能性電子材料ないし電子センシングマテリアルとして有用であり、例えば、半導体材料、導電性塗料、防錆塗料をはじめとして、耐電防止材、電解コンデンサ、高分子有機EL素子、二次電池、電磁波遮蔽材、有機トランジスタ、電子写真用感光体、有機半導体レーザー、有機太陽電池、キャパシタ、燃料電池、アクチュエータ、センサー、ナノワイヤ、インテリジェント材料、液晶性有機半導体等、あるいは、他の有機半導体、有機エレクトロニクス等の材料等として使用することができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る導電性高分子ナノ微粒子は、チオフェンまたはその誘導体の重合体であるポリチオフェン類であるので、導電性、軽量性、可塑性に優れ、半導体材料、導電性塗料、防錆塗料をはじめとして、耐電防止材、電解コンデンサ、高分子有機EL素子、二次電池、電磁波遮蔽材、有機トランジスタ、電子写真用感光体、有機半導体レーザー、有機太陽電池、キャパシタ、燃料電池、アクチュエータ、センサー、ナノワイヤ、インテリジェント材料、液晶性有機半導体等、あるいは、他の有機半導体、有機エレクトロニクス材料等の用途に最適である。
【0015】
本発明の請求項3に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、π−共役二重結合を有するモノマーを、酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素と混合して重合するようにしており、重合に際して界面活性剤を用いないため、生成物である導電性高分子ナノ微粒子に界面活性剤が存在(残留)することもなく、導電性に優れたナノ微粒子を提供することができる。また、酸化剤を用いた酸化重合を実施するに際して、溶媒として超臨界状態の二酸化炭素を使用するので、界面活性剤を使用した場合と同様に、平均粒子径が揃った球状の導電性高分子ナノ微粒子を簡便に提供することができる。
【0016】
本発明の請求項4に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、π−共役二重結合を有するモノマーとしてチオフェンまたはチオフェン誘導体を採用するので、前記した効果を享受するポリチオフェン類を提供することができる。
【0017】
本発明の請求項5に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、収率が50〜75%の時点で重合を終了させるようにしているので、高分子の鎖間での反応による粒子同士の凝集を防止することができ、平均粒子径の揃った反応生成物(導電性高分子ナノ微粒子)を得ることができる。
【0018】
本発明の請求項6に係る導電性高分子ナノ微粒子の製造方法は、重合の際に使用される酸化剤として超原子価ヨウ素化合物を採用しており、当該化合物は、超臨界状態の二酸化炭素に可溶であり、金属酸化剤と同等の反応性を示すので、本発明の酸化剤として最適であり、重合が効率よく進行する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を説明する。本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなり、平均粒子径が10〜1000nmであり、界面活性剤が存在しないものである。
【0020】
本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーの重合体であり、使用できるモノマーとしては、例えば、チオフェン、3−アルキルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−アセチルチオフェン、3−フェニルチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体、ピロール、3−アルキルピロール、3−メトキシピロール、3−アセチルピロール、3−フェニルピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−メチルアニリン及びm−メチルアニリン等のアニリン誘導体等を使用することができる。そして、これらの重合体として、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−アセチルチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等のポリチオフェン類、ポリピロール、ポリ(3−アルキルピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−アセチルピロール)、ポリ(3−フェニルピロール)等のポリピロール類、ポリアニリン、ポリ(o−メチルアニリン)及びポリ(m−メチルアニリン)等のポリアニリン類等を導電性高分子ナノ微粒子として提供することができる。
【0021】
また、本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、前記したように微粒子中に界面活性剤が取り込まれていないので、当該界面活性剤による導電率の低下を招くこともなく、例えば、当該導電率を10−6〜100S/cm−1となる導電性高分子ナノ微粒子を提供することができる。
【0022】
このような、界面活性剤が存在せず、導電性にも優れた本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、例えば、π−共役二重結合を有するモノマーを酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素と混合して重合することにより、簡便にかつ効率よく得ることができる。かかる製造方法では、重合に際して界面活性剤を用いないため、生成物である導電性高分子ナノ微粒子に界面活性剤が存在(残留)せず、非共役系の化合物の存在による導電性の低下もなく、導電率を10−6〜100S/cm−1となる導電性に優れたナノ微粒子となる。また、水や有機溶媒といった助溶媒を用いないので、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)の排出がない環境調和型の合成プロセスとなるというメリットもある。そして、酸化剤を用いた酸化重合を実施するに当たって、溶媒として超臨界状態の二酸化炭素を使用するので、界面活性剤を使用した場合と同様に、平均粒子径が10〜1000nm(好ましくは20〜500nm)に揃った球状の導電性高分子ナノ微粒子を得ることができる。
【0023】
図1は、二酸化炭素の状態図である。二酸化炭素は、三重点(−56.6℃、0.52MPa)以上の温度と圧力条件下では液体化する場合があるが、温度と圧力が臨界点(31.1℃、7.38MPa)を超えると、液体と気体の特徴を兼ね備えた「超臨界流体」となる。一般に、超臨界状態の流体は速い物質移動や強い浸透性を有するため、溶解力を連続的に変化させることができ、特に、超臨界状態の二酸化炭素は、臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38MPaといった比較的穏和な条件で超臨界状態とすることが可能である。また、超臨界状態の二酸化炭素は、毒性もなく、化学的に不活性であり、高純度なものが安価で入手できるため、超臨界状態の二酸化炭素を溶媒として用いることは、安全面及びコスト面においても優れた手段であるといえる。
【0024】
二酸化炭素は、臨界点を超えた温度では、高密度に圧縮しても液化しない「非凝集性の高圧・高密度流体」となる。圧力と温度で分子間距離を調整でき、密度を希薄な状態から液体に近いところまで変化させることができ、超臨界流体への溶質の溶解度等を変化させることができる。π−共役二重結合を有するモノマーの重合に際して、超臨界状態の二酸化炭素を溶媒として用いることにより、密度のゆらぎによりモノマーの溶解性に部分的な差が生じる。これを反応系内で撹拌して混合することにより、微細な反応場を作ることができ、界面活性剤を使用しなくとも、界面活性剤を使用したと同様に粒子状(球状)の反応生成物(導電性高分子ナノ微粒子)を得ることができる。
【0025】
また、前記したように、二酸化炭素は、臨界点を超えた温度では、高密度に圧縮しても液化しない「非凝集性の高圧・高密度流体」となるため、圧力と温度で分子間距離を調整でき、密度を希薄な状態から液体に近いところまで調整することにより、超臨界流体への溶質の溶解度等を変化させることができる。本発明にあっては、超臨界状態の二酸化炭素の密度を制御することができるので、かかる二酸化炭素の密度の制御を利用して、生成される導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径を制御することが可能となる。
【0026】
すなわち、重合における超臨界状態の二酸化炭素は、概ね0.5〜1.0g/cm3程度で推移し、本発明にあっても、かかる範囲の密度で実施することができ、平均粒子径が10〜2000nmの範囲の導電性高分子ナノ微粒子を得ることが可能となるが、二酸化炭素の密度を高くすると、導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径を小さくすることができ、例えば、密度を0.75〜0.95g/cm3とすることにより、得られる導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径を30〜200nm程度とすることができる。二酸化炭素の密度を高くすることで、モノマーが反応系内で安定に分散することができ、反応生成物である導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径を小さくすることができる。
【0027】
臨界状態の二酸化炭素の密度は、二酸化炭素の温度と圧力により決定される。臨界状態の二酸化炭素の温度は、臨界点(31.1℃)以上の温度であればよいが、二酸化炭素の温度を高くするほど密度が低くなり、平均粒子径は大きくなる。また、臨界状態の二酸化炭素の圧力も、臨界点(7.38MPa)以上の圧力であればよいが、圧力を高くするほど密度は高くなり、平均粒子径は小さくなる。超臨界状態の二酸化炭素の温度は、概ね40〜80℃程度とすればよく、また、圧力は、15〜25MPa程度とすればよい。
【0028】
本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法において、π−共役二重結合を有するモノマーとしては、導電性高分子を製造するために使用されるモノマーであれば特に限定されないが、例えば、ポリチオフェン類を製造するのであれば、チオフェン、3−アルキルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−アセチルチオフェン、3−フェニルチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体、ポリピロール類を製造するのであれば、ピロール、3−アルキルピロール、3−メトキシピロール、3−アセチルピロール、3−フェニルピロール等のピロール誘導体、ポリアニリン類を製造するのであれば、アニリン、o−メチルアニリン及びm−メチルアニリン等のアニリン誘導体等を使用することができる。本発明にあっては、この中でも、好ましくは、チオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン等に代表されるチオフェン誘導体、ピロール及びアニリン等が挙げられる。
【0029】
モノマーの濃度は、製造しようとするポリマー(導電性高分子ナノ微粒子)の種類、導電率や平均粒子径等により決定すればよいが、概ね1〜1000mM(0.001〜1M)の範囲内で選択することが好ましい。なお、本発明にあっては、モノマーの濃度は、反応生成物である導電性高分子ナノ微粒子に影響し、一般に、モノマーの濃度を高くするほど、導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径は大きくなる。
【0030】
また、使用できる酸化剤としては、超臨界状態の二酸化炭素に可溶であればよく、いわゆる「超原子価ヨウ素化合物」と呼ばれる化合物を酸化剤として酸化剤を使用することができる。超原子化ヨウ素化合物としては、例えば、(ペルフルオロ−n−オクチル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(ペルフルオロヘキシル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(ペルフルオロイソプロピル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(ペルフルオロプロピル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ヨードメシチレンジアセタート、フェニル[2−(トリメチルシリル)フェニル]ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン、[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ペンタフルオロベンゼン等の酸化剤が挙げられる。これらの酸化剤は、1種類を単独で使用してもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0031】
なお、かかる超原子化ヨウ素化合物は、下記式(I)または下記式(II)で表される。ここで、式(I)または式(II)において、R1は、H、CH3またはF、R2は、フェニル、アルキル、パーフルオロアルキル、Aは、アルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、テトラフルオロボレートのようなアニオン、R2’、R3’は、アルキルスルホン酸、パーフルオロスルホン酸、アルキルエステル、パーフルオロエステルの1つまたは2つで、上記が1つのものは他に1つ、アルキル、パーフルオロアルキル、あるいはフェニルを有する。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
これらの超原子価ヨウ素化合物は、超臨界状態の二酸化炭素に可溶であることに加え、化合物中に金属元素を含まないにもかかわらず、金属酸化剤と同等の反応性を示し、また、ドーピング剤としての性質も併せ待っているので、本発明の製造方法に使用される酸化剤として好ましい。また、これらの超原子価ヨウ素化合物は、フッ素基を含むことにより、超臨界状態の二酸化炭素との親和性が高くなり可溶となる。一方、例えば塩化鉄(FeCl2)等の遷移金属を含む酸化剤の場合、超臨界状態の二酸化炭素に不溶となり、結果的に有機溶媒を添加しないといけないため、本発明の製造法に使用される酸化剤としては好ましくない。
【0035】
使用する酸化剤の濃度は、モノマーの種類や濃度、また、使用する酸化剤の種類等に対応させて決定すればよく、概ね1〜1000mM(0.001〜1M)(あるいは、モノマー1Mに対して概ね0.05〜0.5M)程度とすればよい。
【0036】
前記の酸化剤を用いた酸化重合は、酸化剤、π−共役二重結合を有するモノマー、及び溶媒となる超臨界状態の二酸化炭素を混合するが、撹拌状態で実施することが好ましい。撹拌は、マグネットスターラー、ホモジナイザー、撹拌機等の公知の撹拌手段を用いて行うことができ、撹拌速度としては、例えば、100〜1000rpmとすることができる。
【0037】
重合時間は、使用されるモノマーの種類、濃度、及び量等によって適宜決定すればよいが、概ね30分以上とすればよく、30〜120分とすることが好ましい。なお、重合を過度に進行させると、高分子の鎖間での反応により粒子同士の凝集が起こり、平均粒子径の揃った導電性高分子ナノ微粒子が得られない場合があるため、例えば、収率が50〜75%(重合時間としては、概ね40〜80分程度)のところで重合を終了させると、粒子同士の凝集を防止することができ、平均粒子径の揃った反応生成物(導電性高分子ナノ微粒子)を得ることができる。
【0038】
なお、反応系には、前記のモノマー、酸化剤、及び超臨界状態の二酸化炭素といった必須成分のほか、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、各種の添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。添加剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリルといった有機溶剤等が挙げられる。
【0039】
図2は、本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法を実施する製造装置の一態様を示した概略図である。図2に示す製造装置1において、高圧セル10は、原料を導入して重合反応を実施するものであり、高圧セル10の周囲には、高圧セル10を加熱するためのヒーター11(リボンヒーター)が配設され、また、高圧セル10の内部には、撹拌用のスターラー13が載置されている。高圧セル10の温度及び圧力は、設置される熱電対14及び圧力計15により確認することができる。なお、高圧セル10は、サファイアガラスからなる観察窓17を介して、外部から高圧セル10の内部の状態を確認することができる。
【0040】
重合の溶媒として使用される二酸化炭素は、二酸化炭素ボンベ21に貯蔵され、図2にあっては、経路Aを通過して高圧セル10の内部に導入される。また、原料となるπ−共役二重結合を有するモノマーは、図2の製造装置1にあっては経路Bに仕込まれ、二酸化炭素によって高圧セル10の内部に圧入される。ヒーター12(リボンヒーター)は、通過する二酸化炭素を加熱する。なお、高圧セル10の内部を含めた反応系内の圧力は、ポンプ22の駆動により調整され、系内の圧力は圧力計16により測定される。また、経路内及び高圧セル10にはバルブVが配設されている。
【0041】
図3を用いて、本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法の一態様を説明する。図3は、本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法のフローチャートを示した図である。まず、高圧セル10の内部に酸化剤を導入し(S1)、高圧セル10を密閉状態として臨界点以上の温度(例えば、40〜80℃)とする(S2)。次に、二酸化炭素ボンベ21から二酸化炭素を、経路Aを通過させてセル内に導入した後(S3)、高圧セル10を臨界点以上の圧力(例えば、15〜25MPa)として超臨界状態とし(S4)、暫く撹拌する。この際、系を安定させるため暫く(30〜120分程度)放置するようにしてもよい。
【0042】
経路Bにπ−共役二重結合を有するモノマーを仕込み、酸化剤と超臨界状態の二酸化炭素が混合された高圧セル10の内部にモノマーを、経路Bから高圧セル10内に導入した後(S5)、さらに撹拌、混合して重合を進行させる(S6)。重合終了後、高圧セル10の内部を減圧して(S7)、導電性高分子ナノ微粒子を得ることができる。
【0043】
得られた導電性高分子ナノ微粒子は、減圧後、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールといったアルコール類等で遠心分離等により洗浄して精製することが好ましい(S8)。なお、精製後の導電性高分子ナノ微粒子は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールといったアルコール類等の溶媒に再分散させることも可能であるので、これらの溶媒の分散溶液(導電性高分子ナノ微粒子分散溶液)として使用することができる。
【0044】
本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、界面活性剤の存在がなく優れた導電性を備えているので、機能性電子材料ないし電子センシングマテリアルとして有用であり、例えば、半導体材料、導電性塗料、防錆塗料をはじめとして、耐電防止材、電解コンデンサ、高分子有機EL素子、二次電池、電磁波遮蔽材、有機トランジスタ、電子写真用感光体、有機半導体レーザー、有機太陽電池、キャパシタ、燃料電池、アクチュエータ、センサー、ナノワイヤ、インテリジェント材料、液晶性有機半導体等、あるいは、他の有機半導体、有機エレクトロニクス等の材料等として使用することができる。
【0045】
また、本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、有機溶剤に分散可能であり、分散安定性も良好であるため、導電性高分子ナノ微粒子をメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、あるいは、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等の有機ホルムアミド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等の有機スルホキシド類、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル類、アセトン、ジエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のフラン類等の有機溶媒に分散させ、キャスト法、ディップ法、スピンコート法、アプリケータ法、インクジェット法等の公知の製膜手段を用いて所定の基材上にコーティング、乾燥することにより、導電性高分子ナノ微粒子からなる薄膜を当該基材上に簡便に形成させることができる。
【0046】
なお、本発明の導電性高分子ナノ微粒子は、いわゆるコア−シェル型複合粒子として使用するようにしてもよい。導電性高分子ナノ微粒子は、コア−シェル型複合粒子のコア部、シェル部のいずれにも適用することができ、例えば、金、銀、白金等の貴金属、カーボン類、ポルフィリン、フタロシアニン等の錯体類、テトラフェニルベンジジン類、芳香族アミン類、スチリルベンゼン類等のモノマー及びオリゴマー等をコア部、導電性高分子ナノ微粒子をシェル部として適用した複合粒子や、導電性高分子ナノ微粒子をコア部、他のπ−共役系高分子、ポルフィリン、フタロシアニン等の有機化合物等をシェル部として適用した複合粒子として使用することができる。また、ヨウ素、低分子アニオン、アニオン系オリゴマー、アニオン系高分子等を導電性高分子ナノ微粒子にドープした複合材料として使用することもできる。
【0047】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記し
た実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる
範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。ま
た、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達
成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実
施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本
発明に含まれるものである。
【0048】
例えば、前記した実施形態では、導電性高分子ナノ微粒子の製造方法として、図2に示した製造装置1を使用する例を示して説明したが、導電性高分子ナノ微粒子の製造方法の実施としてはこれには限定されず、他の構成の製造装置を使用して当該製造方法を実施するようにしても問題はない。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範
囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)の重合:
図2に示した製造装置1を用いて、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の重合を行った。観察窓17付きのSUS316製高圧セル10(容量:50cm3)中に酸化剤(重合開始剤)として、フッ素基を有した超原子価ヨウ素化合物であり、超臨界状態の二酸化炭素に可溶な[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(BTI)(濃度:0.05M)を導入し、高圧セル10を密封した後、スターラー13で撹拌しながら、経路Aより二酸化炭素(CO2)を導入し、圧力を20MPa、温度を40℃まで上昇させ、二酸化炭素を超臨界状態として、系を安定させるため30分放置した。
【0051】
次に、経路Bの管内にπ−共役二重結合を有するモノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)(濃度:0.05M)を仕込み、バルブVにより経路を切り替え、その差圧を利用することで高圧セル10の内部に当該モノマーを圧入して、撹拌、混合した。高圧セル10の内部に3,4−エチレンジオキシチオフェンを導入した時を重合開始時間として、反応時間60分で重合して、重合体であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を得た。なお、得られた重合体には界面活性剤は存在しなかった。また、酸化剤として使用した[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(BTI)は、反応後CF3COO−となってポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)に取り込まれ、ドープ材の一部として作用している。
【0052】
得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)は、減圧して回収後、遠心分離(回転数:15000rpm)によりエタノール洗浄して精製した後、動的光散乱(Dynamic Light Scattering:DLS)による平均粒子径測定、及び走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)による粒子形状の観察を行った。
【0053】
なお、遠心分離によって回収したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、超音波処理によってメタノールに再分散させることが可能であった。また、得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の導電率を、ドープ材としてヨウ素を用いて、抵抗率測定器で四端子法により測定した結果、約3.3×10−2S/cmであった。
【0054】
前記した条件(超臨界状態の二酸化炭素の温度を40℃、圧力を20MPa、酸化剤の濃度を0.05M、モノマー濃度を0.05M、重合時間を60分、圧力を20MPa、二酸化炭素の密度を0.84g/cm3)において重合したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)微粒子の動的光散乱(DLS)における測定結果を図4に示した。図4に示したように、得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)微粒子の平均粒子径(平均1次粒子径)は約100nmであった。なお、このように、本発明に係る導電性高分子ナノ微粒子の平均粒子径(平均1次粒子径)は、例えばDLSを用いて測定した値とすればよい。
【0055】
また、図5は、実施例1で得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。図5に示すように、得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)微粒子の形状は、粒子径(平均粒子径)が揃った球形状の微粒子であることが明らかとなった。これは、超臨界状態の二酸化炭素を溶媒に用いた場合、密度のゆらぎにより3,4−エチレンジオキシチオフェンの溶解性に部分的な差が生じ、これを撹拌、混合することで、微細な反応場を作ることができ、界面活性剤を用いた場合と同様に粒子状の生成物が得られたと考えられる。
【0056】
次に、重合条件による平均粒子径の制御の検討をした。具体的には、前記した実施例1の条件において、温度を一定(40℃)にして、圧力を調整して密度を変化させた場合におけるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の平均粒子径への影響を確認した。
【0057】
図6は、温度一定下(40℃)における二酸化炭素の密度と得られたポリエチレンジオキシチオフェンの平均粒子径の関係を示した図である(二酸化炭素の条件を表1に示す。)。図6に示すように、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)微粒子の大きさは超臨界状態の二酸化炭素の密度に依存し、密度が高いほど得られるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の平均粒子径は小さくなっていることが確認できた。この理由は、二酸化炭素の密度が高くなることで、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)微粒子が安定に分散しているためと考えられる。
【0058】
(二酸化炭素の条件)
【表1】
【0059】
[実施例2]
ポリピロール(PPy)の重合:
モノマーとして、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の代わりにピロール(Py)を用い、酸化剤の濃度を0.05Mから0.005Mとした以外は、実施例1に示した方法と同様な方法を用いて、重合体であるポリピロール(PPy)を製造した。なお、得られた重合体には界面活性剤は存在しなかった。
【0060】
得られたポリピロールを走査型電子顕微鏡(SEM)による粒子形状の観察を行った。図7は、実施例2で得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。図7に示すように、実施例1のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)と同様、比較的ナノオーダーの大きさに揃ったポリピロール微粒子が得られたことが確認できた。また、微粒子の形状は球形状であった。なお、得られたポリピロール(PPy)の導電率を、実施例1と同様に四端子法により測定した結果、約2.1×10−1S/cmであった。
【0061】
次に、重合時間に対する平均粒子径の変化を確認した。具体的には、前記した実施例2の条件(実施例1の条件と共通)において、重合時間を30分、60分(前記した条件)、180分、360分とした場合のポリピロールの平均粒子径の変化を確認した。
【0062】
図8は、重合時間を60分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図、図9は、重合時間を180分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図、図10は、重合時間を360分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。図8ないし図10に示したように、重合時間の経過とともに一次粒子径が増加し、粒子同士の凝集によりさらに大きな粒子となることが確認できた。
【0063】
また、図11は、重合時間と収率との関係(経時変化)を示した図である(二酸化炭素の温度を40℃、圧力を20MPa、密度を0.84g/cm3)。図11に示したように、重合時間が30分の時点で収率が約50%まで達しており、重合の初期において急激に反応が進行することが確認できた。これらの結果より、本実施例において、最適な反応時間は60分程度であると考えられる。
【0064】
さらに、実施例1と同様に、重合条件による平均粒子径の制御の検討をした。具体的には、前記した実施例2(実施例1と共通)の条件において、温度を一定(40℃)にして、圧力を調整して密度を変化させた場合におけるポリピロールの平均粒子径への影響を確認した。
【0065】
図12は、温度一定下(40℃)における二酸化炭素の密度と得られたポリピロール(PPy)の平均粒子径の関係を示した図である(二酸化炭素の条件を表2に示す。)。図12に示すように、実施例1のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の場合と同様、ポリピロール微粒子の大きさは超臨界状態の二酸化炭素の密度に依存し、密度が高いほど得られるポリピロールの平均粒子径は小さくなっていることが確認できた。
【0066】
(二酸化炭素の条件)
【表2】
【0067】
また、実施例2(実施例1と共通)の条件において、圧力を一定(20MPa)重合温度を40℃から50℃、80℃に変更した場合における平均粒子径の変化を確認した(二酸化炭素の条件を表3に示す。)。図13は、重合温度とポリピロールの平均粒子径の関係を示した図である。図13に示したように、重合温度が高いほど、すなわち、超臨界状態の二酸化炭素の密度が低くなるほど、得られるポリピロールの平均粒子径は大きくなることが確認できた。
【0068】
(二酸化炭素の条件)
【表3】
【0069】
そして、使用したモノマーであるピロール(Py)の濃度、酸化剤である[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(BTI)の濃度を変化させた場合における、得られるポリピロール(PPy)の平均粒子径への影響を確認した。具体的には、ピロールの濃度を0.05M、0.1M、0.25M、及び[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼンを0.0025M、0.005M、0.01Mとした場合におけるポリピロールの平均粒子径の変化を確認した。
【0070】
図14は、ピロール及び[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼンの濃度とポリピロール(PPy)の平均粒子径との関係を示した図である(二酸化炭素の温度を40℃、圧力を20MPa、密度を0.84g/cm3)。図14に示したように、酸化剤である[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼンの濃度を変化させても平均粒子径にはほとんど影響がないことが確認できた。一方、モノマーであるピロール濃度が高くなると、それに応じて平均粒子径は大きくなった。
【0071】
[実施例3]
ポリ(3−アセチルチオフェン)の重合:
モノマーとして、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の代わりに3−アセチルチオフェンを用いた以外は、実施例1に示した方法と同様な方法を用いて、重合体であるポリ(3−アセチルチオフェン)を製造した。なお、得られた重合体には界面活性剤は存在しなかった。得られたポリ(3−アセチルチオフェン)の導電率を、実施例1と同様に四端子法により測定した結果、4.0×10−2S/cmであった。
【0072】
[実施例4]
ポリ(3−アセチルピロール)の重合:
モノマーとして、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の代わりに3−アセチルピロールを用いた以外は、実施例1に示した方法と同様な方法を用いて、重合体であるポリ(3−アセチルピロール)を製造した。なお、得られた重合体には界面活性剤は存在しなかった。得られたポリ(3−アセチルピロール)の導電率を、実施例1と同様に四端子法により測定した結果、5.0×10−2S/cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、電子機能性材料等として適用される導電性高分子ナノ微粒子として有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】二酸化炭素の状態図である。
【図2】本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法を実施する製造装置の一態様を示した概略図である。
【図3】本発明の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法のフローチャートを示した図である。
【図4】実施例1で得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)微粒子の動的光散乱(DLS)における測定結果を示した図である。
【図5】実施例1で得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図6】二酸化炭素の密度とポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)の平均粒子径の関係を示した図である。
【図7】実施例2で得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図8】重合時間を60分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図9】重合時間を180分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図10】重合時間を360分として得られたポリピロール(PPy)微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による形態写真を示した図である。
【図11】重合時間と収率との関係を示した図である。
【図12】二酸化炭素の密度とポリピロール(PPy)の平均粒子径の関係を示した図である。
【図13】重合温度とポリピロール(PPy)の平均粒子径の関係を示した図である。
【図14】ピロール及び[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼンの濃度とポリピロール(PPy)の平均粒子径との関係を示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1 製造装置
10 高圧セル
11,12 ヒーター(リボンヒーター)
13 スターラー
14 熱電対
15,16 圧力計
17 観察窓
21 二酸化炭素ボンベ
22 ポンプ
V バルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
π−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなる導電性高分子ナノ微粒子であって、
平均粒子径が10〜1000nmであり、界面活性剤が存在しないことを特徴とする導電性高分子ナノ微粒子。
【請求項2】
ポリチオフェン類であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子ナノ微粒子。
【請求項3】
π−共役二重結合を有するモノマーを、酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素と混合して重合することを特徴とする導電性高分子ナノ微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記π−共役二重結合を有するモノマーがチオフェンまたはチオフェン誘導体であることを特徴とする請求項3に記載の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法。
【請求項5】
収率が50〜75%の時点で重合を終了させることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記酸化剤が超原子価ヨウ素化合物であることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法。
【請求項1】
π−共役二重結合を有するモノマーの重合体からなる導電性高分子ナノ微粒子であって、
平均粒子径が10〜1000nmであり、界面活性剤が存在しないことを特徴とする導電性高分子ナノ微粒子。
【請求項2】
ポリチオフェン類であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子ナノ微粒子。
【請求項3】
π−共役二重結合を有するモノマーを、酸化剤とともに超臨界状態の二酸化炭素と混合して重合することを特徴とする導電性高分子ナノ微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記π−共役二重結合を有するモノマーがチオフェンまたはチオフェン誘導体であることを特徴とする請求項3に記載の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法。
【請求項5】
収率が50〜75%の時点で重合を終了させることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記酸化剤が超原子価ヨウ素化合物であることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の導電性高分子ナノ微粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−215424(P2009−215424A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60190(P2008−60190)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成19年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成19年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
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